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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

781 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/06/25 02:05:54.972 ID:YcJ1wk56o
ミス
>>778
俺⇒ワシ だったわんわんワシわん

782 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/18 12:32:13.487 ID:4fe4A8w20
小ネタこーなー

・【大戦年表編纂室】 その2
超高度魔法『メルティカース』により、大戦世界から隔離された部屋。wiki図書館のはるか地下階層に存在し、外部からの歴史改変を受けない。
術者は無口兵士だが、無口自身はK.N.C47年に消失しているため、いまなお術者無しに自律的に編纂室は動き続けている。
部屋の中に誰かいる限りは、正史と改変後の歴史を知覚できるが、ひとたび全員が外界に出てしまうと歴史がいつ変わったのかわからなくなる。
そのため、DB騒動時には常に編纂室に人を立てなければならないという苦肉の策を取っていた(集計班、オニロ)


・【避難所の避難所】
大戦世界のどこかにあるといわれる、会議所とは別の運営詰め所。
会議所が大戦運営に従事しているのに対し、避難所の避難所は大戦世界全体を監視している。
昔は地上のどこかにあったが、無口兵士の気まぐれによりいつからか空中要塞となった。秘密結社的イメージ。
存在を知る者は極僅かで、メンバーとなっている者はいずれも地上からは消失してしまった者がほとんどを占める。集計班は地上にいる兵士でその存在を知る数少ない兵士だった。
DB、軍神といった現人神もかつては所属メンバーだったがいずれも物語開始時には既に追放されている。

・【神】
最初期の大戦世界の兵士たちが創造し、いつの間にか忘れ去られてしまった存在。
超常的な現象や人知を超えた事態に対し、兵士たちが縋り付くための存在として生み出され担ぎ上げられた。
最盛期には数百もの神が大戦世界に点在したと言われるが、物語開始時にはほぼ全ての神が忘れ去られ消失してしまっている。人々の活力、情熱が年を経るにしたがって失われていき、信仰が薄れていったためである。
高い信仰心や多くの兵士の関心を集める神は偶像崇拝等を経て具現化することがある。軍神や恥辱の神 DBが代表例。
大戦への情熱も失われていった結果、いつからか階級制には【軍神】階級が消えてしまっていた。


近いうちに更新しまーす。




783 名前:791:2017/09/18 13:49:08.743 ID:DOH3S10ko
>>782
乙!
こういう設定読むの好き

更新楽しみ!

784 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その1:2017/09/20 00:42:36.912 ID:6O1.YhIko
【K.N.C180年 会議所地下 大戦開発室】

アイム「爺さん…あんたなのか?」

竹内「ハハッ。年寄りもたまには身体を動かさねばな。ボケてしまう」

刀の切っ先に付いたチョコを軽快に払うその姿は、K.N.C28年での青年竹内を彷彿とさせる軽快さだった。

DB「貴様らァ、俺様を無視するなッ!どうして“負のオーラ”を浴びながら、平然と立っていられるッ!」

竹内「負だかふ菓子だか知らんが、ワシはただ後進の兵士のために、この老体に鞭打つだけよ」

喋りながらも、竹内は襲いかかってきた筍魂と791を難なく一振りで斬り伏せた。
地面に倒れた二人は、沸騰音を出しながら劇薬が蒸発したかのように消えてしまった。
アイムとオニロはそこで初めて、二人の師匠がDBの創り出した幻影だったと気がついた。

DB「俺様の力を使って創り出した“分身”がァ…これでまた、“負のオーラ”を集めなくてはいけなくなったァ」

二人の幻影の後からゆらゆらと上空へ向かう暗紅色の霧を見て、DBはそれを目で追いながら悲しげにつぶやいた。
その霧が“負のオーラ”そのものであることは明らかで、元々のDBの身体に戻らず霧散してしまっては弱体化してしまうのだ。
だがDBは続いてアイムとオニロをじろりと睨んだ。

DB「ちょうどいたなァ。“希望”を身にまとった、正義の味方サマがよォ」


785 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その2:2017/09/20 00:42:55.756 ID:6O1.YhIko
オニロ「くっ…竹内さん下がってください。かくなる上は、私が師匠から教わった“秘技”で…」

衰えても未だDBが強大な力を有しているのは、軍神<アーミーゴッド>の力を有すオニロには痛いほど理解できた。
通常の兵士が立ち向かえる強さでない。まるで地球が宇宙に挑むようなもので、竹内の一撃は暖簾に腕押しのようにオニロには思えた。

竹内「敵もろとも自爆するとでも?バカを言うな、老人を残して若い兵士(もの)が死んだら顔向けできんだろ――」

竹内「――古い友人にな」

竹内はハッと独り気を吐き、目にも留まらぬ速さで跳んだ。流れるような所作に一瞬呆気に取られたDBだったが、すぐに竹内へ臭い息を吐き出したのは歴戦の兵士としての第六感がそうさせたのだ。
しかし、通常の兵士なら気を失う上に吹き飛ばされる威力の噴流も、いともたやすく竹内は袈裟斬りで払い、肩を突き出しながらDBに突進した。
竹内ごと再び壁に叩きつけられたDBは、苦悶の表情を浮かべ口からチョコの代わりに暗紅色の霧を吐出した。

DBは困惑していた。軍神<アーミーゴッド>以外にまともに攻撃の通る相手など、想像もしていなかったためだ。
その後も竹内の攻撃の手は緩むことなく、自ら溜め込んでいる“負のオーラ”を吐き出していることも気づかず、DBは防戦一方になっていた。


786 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その3:2017/09/20 00:50:59.342 ID:6O1.YhIko
オニロ「すごい。竹内さんの動きはいつもとは別人だ。それに若返っているような気が…」

アイム「DBの元である“負のオーラ”を直に浴びて立っていられる兵士はいないと思っていたが…竹内さんは例外中の例外というわけか。シューさんも呼び戻したわけだ」

竹内は初代DB討伐隊隊長 黒砂糖の後を次いで、長年に渡りDBを追い続けてきた第一線級兵士である。
DBと事あるごとに対峙する度、竹内の身体は変化を帯びてきた。その結果、通常では数秒も経たないうちに事切れてしまうDBの臭気に対する耐性ができてしまった。
陰陽師が異変を解決せんがために悪鬼に近づきすぎたがゆえに、結局は怪異と同等の存在になってしまった例と同じである。
参謀は竹内のことを“最後の希望”と紹介した。図らずとも、”希望の星”であるアイムとオニロが砕け散る寸前になった今、DBに立ち向かえる兵士は“最後の希望”しかいなかった。

竹内「どうしたDB!昔を思い出すなッ!また吊るし上げられたいか?あぁ!?」

DB「はァはァ…貴様はいつも俺様の邪魔ばかりしやがる。折角、俺様の手で憎っくき“玩具”を潰せると思っていたところにィ!またしても、またしてもォ!!」

竹内に足蹴にされうつ伏せに倒れたDBは、アイムとオニロを地面から睨み上げ、拳を強く握りしめた。


787 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/20 00:55:07.263 ID:6O1.YhIko
とりあえず眠いのでここまで。またすぐ更新します。
当初、竹内さんはDBの臭気にあてられると若返る設定にしていました。だけど、ダンディおじいちゃん兵士の活躍かっこいいなあてユリガミss見て思ったので変更しますた。
791さんと筍魂さんは操られてませんでした、よかったよかった。

788 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その4:2017/09/23 19:30:20.816 ID:vbUhPLDko
オニロ「竹内さんッ!そいつは危険な存在ですッ!今この場で処断しないと後々どんな大災害を引き起こすかわかりませんッ!」

竹内「わかっておる。おいDB、昔を思い出すな。昔は黒砂糖さんがお前を抑えつけた。その後、ワシだけがお前を長年追い続けた。ずっとだ。そのカシをいま返してやる」

DB「転がしてやる。転がしてやる。転がしてやる。転がしてやる」

DBの怨嗟を含んだ繰り返される独り言に、オニロとアイムは背筋がゾッとした。竹内に身体を抑えつけられながら、二人を見つめるDBの目は諦めの色を見せるどころか、異様なまでにギラついていたからだ。
恨み、怒り、快楽、様々な要素を包括した歪んだ生命力を彷彿とさせる色をその眼は見せていた。

オニロ「竹内さん、はやくッ!」

DB「遅いッ!」

オニロの叫び声と同時に、DBは握りしめていた拳の中の砂を背中越しの竹内に向かって開き投げつけた。竹内が一瞬怯んだスキを、DBは逃さなかった。


789 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その4:2017/09/23 19:33:16.199 ID:vbUhPLDko
DB「ゲゲゲッゲハハハハハハッ」

短時間で吐き出したDBの息は瞬く間に紫煙の煙幕となり、部屋全体を妙な色で包みこんだ。

アイム「しまったッ!奴は出口から外に出る気だッ!オニロ、竹内さんを援護するんだッ!」

オニロ「わかってるよッ!『キシリフレッシュ』!これで煙幕が晴れますッ!」

竹内「くッ、ワシとしたことがッ!」

煙幕により方向感覚を失う中、退路を断つために部屋の唯一の出口へ向かったオニロと竹内の前に、倒れていたはずの兵士たち<操り人形>が対峙した。

オニロ「こんな時にDBの野郎、ボクたちの仲間を使って許さないッ!竹内さん、離れていてくださいッ!『アポロソーラ・レイ』!」

オニロの杖先から閃光が発せられ、放たれた熱光線が兵士たちを貫いた。兵士たちは身体から暗紅色の煙霧を出しながら倒れていった。

竹内「DBはッ!」

気絶した兵士たちを跨ぎながら、二人は外に出たがDBの姿は既になかった。
兵士たちが足止めをしている間に、まんまとDBは会議所を脱出してしまったのだった。

790 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その6:2017/09/23 19:44:24.859 ID:vbUhPLDko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

その後の捜索でも結局DBは見つからず、オニロと竹内は負傷していたアイムに加え、倒れていた会議所兵士たちを集め、編纂室へ連れて行った。
殆どの会議所兵士たちが集結した編纂室は、未だにアイムを含む数名の兵士の手当が行われており、さながら野戦病院のような体をなしていた。

someone「ごごめんなさいッ!みんなにプッカライトニングを射つだなんてどうかしていた…」

アイム「someoneさんの責任じゃない。みんなDBに操られていただけさ」

someoneとジンはお詫びとばかりに、簡易ベッドの上で横になっているアイムに回復魔法を乱発している。

¢「うぅ…DBが会議所であやっていたなんて」

加古川「会議所に帰ってきてから記憶がない…不覚だ」

操られていた兵士たちはすぐに意識を取り戻した。外傷のある兵士たちも、オニロたちに気絶させられた際にできたものであり程度はすぐ済むものだった。
しかし、全員が復帰できたわけではなかった。

抹茶「黒砂糖さんと一緒に警護任務に就いていたはずなのに、いつの間にか気絶していたんです…多分、時限の境界近くにDBが潜んでいて連れて行ってしまったんだ…」

操られていた兵士の中で、唯一黒砂糖の姿が消えていた。DBの人質として連れ去られたのではないか、という見方が大勢だった。
抹茶は同僚の危機に、顔を緑ざめている。

791 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その7:2017/09/23 19:46:43.322 ID:vbUhPLDko
参謀「DBはどこに逃げたと思う。大方の予想では時限の境界だと思うが」

参謀の問いに、スリッパが唸った。

スリッパ「その可能性もある。ただ、奴とスクリプトの目論見<歴史改変による負のオーラ集め>が看破された今、再び同じ作戦を取るとも考えにくい」

アイム「同感だ。オレなら敢えてこの時代に潜伏して、会議所乗っ取りの機会を再び狙うな」

791「なるほどね。DBの狙いはあくまで現代<この時代>の支配。無闇に過去の時代へ跳ぶのはDBにもリスクが高いね」

編纂室の入口から、話を聞いていた791は筍魂を担ぎながら会議に参加した。

オニロ「師匠!お身体は大丈夫なんですか」

791「まだ完全には程遠いな。とりあえずクリームソーダを常時補給してるわ」

791は米俵のように筍魂をその辺りに放り、仕事終わりの一杯とばかりにソーダ缶を手に取った。

筍魂「おお、我が弟子よ…なんと情けない姿だ」

アイム「お前ほどじゃねえよ、まず自分の足で歩け」

筍魂はスタミナ切れで中庭にて一歩も動けなくなっていたところを、791に拾われていた。


792 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その8:2017/09/23 19:49:33.018 ID:vbUhPLDko
参謀「話は戻るが、DBは人里に紛れ込んでいる可能性があるということか…黒ちゃんの安否も心配や。誰か里に見張りを立てておきたいが…」

山本「俺とゴダンさんが行こう。ゴダンさんがきのこの山、俺がたけのこの里を見張っておく。危険を感じたらすぐに戻るさ。おっぱい神の加護があらんことを!」

山本はゴダンを引き連れ、いの一番に立ち上がった。外に出る前に、十字架をきる要領でオッパイの輪郭をなぞるように手で線を引くと、さっそうと外に出ていった。
一陣の風のように去っていった山本たちを見て、加古川はポツリと不安を口にした。

加古川「もっさんが一番、DBの洗脳を受けやすい体質に思えてならないんだが」

ビギナー「どうにかなるっしょ」


793 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その9:2017/09/23 19:51:44.581 ID:vbUhPLDko
参謀「さて、DBが捕まるのも時間の問題や。その前に一つハッキリさせておきたいことがある――」

参謀は一度言葉を切り、オニロとアイムに人差し指を突き指した。

参謀「――お前らの記憶についてだ。おそらく、その落ち着き様を見ると、二人とも思いだしたんやな」

アイムとオニロは同時に頷く。

アイム「オレの記憶は、大戦の歴史に直結する――」

オニロ「ボクの記憶は、DB騒動の根幹に繋がる――」

加古川「話してくれ、お前たちが知っていることを」

¢「うぅ怖いんよ。でも、僕たちは知らなければならない」

抹茶「少しでもDB討伐の手がかりになるなら、僥倖です」

アイムとオニロは静かに皆に向かって頷き、同時に黙りこくったままでいる一人の兵士を見つめた。

アイム「オレたちが何者であるかを明かす前に。一人の兵士から今回の真相を話してもらいたい。
一連の騒動がどのように引き起こされたか、そろそろみんなで共有してもいい時だ」

オニロ「前にも言いましたよね。もう話す時じゃないですか――」

オニロ「――社長」

全員の視線は、部屋の端で俯向いたままの社長に集中した。


794 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その10:2017/09/23 19:55:29.822 ID:vbUhPLDko
社長「…」

アイム「オレは――いや“オレたち”は全てを思い出した。オレたちが話してもいいが、それは完全じゃない。
今回の騒動の主役は、おそらく“あんたたち”だろう」

オニロ「怖いのはわかります。ですが、社長の口から説明するべきだと思うんです。貴方の働きを闇に葬り去ることは、“彼”の頑張りを無下にすることと同じ。そうじゃないですか?」

社長「…」

なおも社長は無言を貫いていたが、チラッと一瞬横にあるロッキングチェアを見つめた。
在りし日に持ち主が好んで使っていたロッキングチェアは、今の主人不在の事態をどう見ているだろう。

オニロ「もし“彼”と同じ結末を辿ることに恐怖を感じているのであれば、安心してください。“ボクたち”が全力で貴方を守ると誓いましょう」

アイム「既に【裁き】とやらは終わった。ここはあくまで地上の【大戦世界】であり、【避難所の避難所】ではない。一地上の兵士が【天上世界】の奴らに、何を配慮することがある?」

全員が息を呑んで社長と二人を見つめている。

795 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その11:2017/09/23 20:03:35.704 ID:vbUhPLDko
社長「だけど、私のせいであの人は――」

オニロ「誰も悪くないんです。ボクもアイムも、みんなも、さらにいえばDBも。みんな【決められた通り】に動いていただけ」

アイム「それを正そうとしていたあんたたちの判断は間違っていなかった。結果として、混乱を招いたとしても――」

オニロ「――あなたの“責任”じゃない」

━━
━━━━

「計画は順調です。ですが…たとえ、順調に立ち回らなかったとしても、
それはあなたの“責任”じゃない。
私が保証します。
なにか問題が発生した時。慌てないことです。
私に頼ろうとせず、まずは自分で事態の本質を見極めることです」

━━━━
━━

社長はハッとしたように二人に向かい顔を上げた。オニロの言葉に唐突に記憶がフラッシュバックしのただ。
最後に同じ編纂室で彼と会話を交わした時、たしかに彼は“見極めろ”と社長にそう告げた。今まで誰かを頼りながら生きてきた社長にとって容易ではなかった。
しかし、忠実にその言葉を守り動いてきた。マラソンランナーのように、周りを振り返らず彼が消えてからは突っ走ってきたのだ。

―― もう、話してもいいのかもしれない。

走ることを止めたランナーは、周りを見渡してみると多くの仲間が心配していることに気がついた。
頼ってもいいのだろうか。居もしない兵士に決断を縋るように、社長は不安げに再びロッキングチェアを見た。
不安げな社長を笑うように、チェアはゆらゆらと愉快げに揺れている気がした。妙な安心感を覚え、社長は遂に決心した。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

796 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/23 20:06:01.769 ID:vbUhPLDko
ここにきてようやく言えますが、この物語のキーマンは社長です。実はまだもうふたりいますが、それはまた今度。

797 名前:社長:2017/09/24 02:14:55.088 ID:GBvzXfaY0
どのシーンで竹内さんの設定が変わったんだろう?更新乙

798 名前:791:2017/09/24 10:50:27.566 ID:rW0AVfB2o
更新乙
おお、いよいよ社長の話が聞ける
気になる

799 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その1:2017/10/01 01:35:31.285 ID:o
初めて社長が大戦に参加したのはK.N.C2年だった。

スリッパ『突き進む!突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

多くの兵士が試行錯誤していた時期、銃の使い方さえ覚束ないような兵士たちの戦いの中で、スリッパの一挙手一投足は一際輝いていた。
追い詰められたきのこ軍兵士を大量撃破で鮮やかに終戦させた英雄スリッパの一連の行動は、多くの兵士にその掛け声とともに強烈な印象を残した。
一時はスリッパによる英雄ブームが巻き起こり、不安定な大戦の恒久的な継続を決定づけた。目の前で英雄の活躍を見ていた若き社長も、彼に刺激と感銘を受けた兵士の一人だった。

社長「あの時は感動した…」

感慨深げに語る社長と罰が悪そうに押し黙っているスリッパの姿が、アイムには対称的に映った。


800 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その1:2017/10/01 01:36:07.628 ID:o
>>799
訂正
スリッパ『突き進む!突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

スリッパ『突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

801 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その2:2017/10/01 01:40:18.614 ID:o
以来、社長は最古参兵として会議所設立からK.N.C180年まで一部の期間を除きずっと大戦に関わってきた。
会議所に留まる最古参兵士はK.N.C180年時点で4人しかいなかった。知の参謀、発の¢、静の集計班、そしてバグの社長の4人である。
社長は本来大戦の重鎮として会議所を突き動かす兵士になるはずだった。

アイム「社長は重鎮っていう感じでもないだろう」

オニロ「こ、こらアイム。失礼なことを…」

アイムの率直な意見に、そうだな、と社長は素直に認めた。
ある時を境に社長は会議で意見を出さなくなった。否、意見を出すことができなくなった。

社長「あの日、あの時から私の運命は変わったのだ」

全員が、言葉を発さずに社長の説明を聞いている。
その奇異に満ちた行動から社長は“バグ兵士”としてばかりクローズアップされ、会議所設立の中心メンバーであることを理解している兵士はほんの一握りだった。
会議所の生き字引だった兵士が、いつから色物兵士へと転換したのか。そもそもなぜ転換したのか。



きっかけは、一つの【お告げ】だった。



802 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その3:2017/10/01 01:57:18.772 ID:o
社長「【お告げ】があった。ある日突然、百合神様から…」

社長は兼ねてより【百合神】という創造神に縋っていた。多くの兵士は社長のバグ発言の一環だろうと取り合っていなかったが、アイムたちの前で語る社長の顔は常に真剣そのものだった。
この場で再びその神の名前が出て突拍子のなさに全員が驚いたが、社長は構わず続きを話し続けた。

ある日、社長の夢の中で現れた【百合神】は、“大戦世界に関する秘密”を社長に語ったのだという。

―― 大戦世界には【避難所の避難所】という別の運営拠点がある。その観測所には過去にいなくなった重鎮兵士たちが集い、秘密裏に大戦を操っている。
―― そして、全ての過去現在未来の歴史は【預言書】と呼ばれる古ぼけた本の通りにするべく暗躍している。そのためなら、たけのこが不利に負けようが、きのこが惨めに負けようが構わない。

初めは社長も驚いたが、【百合神】の真剣な口調のトーンに圧倒されつつも、最終的には信じざるを得なかった。
始祖まいう、図書館館長の無口、きのこ軍のエースアルカリ。気がつけば大戦世界創世記にいた兵士たちは姿を消してしまい、誰しも口には出さずともそこに奇妙な違和感を持っていた。
もし彼女の話の通りそうした兵士たちが本当は【避難所の避難所】に移り、世界を監視しているとしたら空恐ろしいと社長は感じた。
亡者が実は生きていたという感動よりも、大戦世界に巣食う暗部を垣間見た気がして、今までの日常が保てなくなってしまうのではないかという恐怖がはるかに上回っていたのである。

朝目が覚めると、彼は真っ先に集計班に相談した。
会議所に係る問題は、当時から会議を束ねていた彼に相談するのが全兵士の暗黙の了解となっていた。
集計班ならば親身に相談に乗ってくれるだろう、もしくは突拍子もない話を笑い飛ばしてくれるのではないか。
どちらでもよいという思いを持って、社長は図書館に駆け込んだ。自身の気持ちを他者へ共有したかっただけなのだ。


社長の希望は、直後にコナゴナに粉砕されることになった。

803 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その4:2017/10/01 02:11:36.835 ID:o
静かに社長のトンデモ話を聞いていた集計班は、社長が話し終わると長い間考え込んでいたが、その後静かに問いかけた。

集計班「どこで、その話を?」

社長「いや、だから【百合神】様が――」

思わず社長は二の句が継げなくなった。集計班の明らかな異常な睨みに、社長の身体は硬直した。蛇に睨まれた蛙とは正に今の自身だと直感した。
乱暴なまでに野性的に濁った紅の瞳を向けられた社長は、そこで初めて集計班も件の観測所のメンバーなのだと悟った。

集計班が嘆息し椅子から立ち上がっても、社長は集計班から視線を外すことさえできず、自らの生命がここで尽きるのではないかと怯えていた。
彼はずいっと社長に向かい顔を突き出した。いつもの穏やかな表情を殺し無表情を顔にはりつけ、次のように語った。

集計班「あなたは【知る必要のない】情報を手に入れてしまった。いや、この際どうやって手に入れたかは重要ではないのです。ただ、貴方はもう逃げられません。
生きるか無くなるかなんて陳腐な選択肢も用意しません。貴方には事の最後まで付き合ってもらおう」

集計班の口調はあくまで冷徹で事務的だった。
見えない刃を首に突きつけられたかのように怯えていた社長だったが、気力を振り絞り微かに首を縦に一度振り微かに応えた。


804 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その5:2017/10/01 02:22:11.163 ID:o
『バグトラダムスの預言書』

大戦世界が一つの古ぼけた預言書通りに進められていると話され、誰が信じるだろうか。
その預言書にはK.N.C1年から遙か先の未来までの歴史が事細かに書かれているのだという。
識者はその預言書に従い、【避難所の避難所】を造り、混迷に満ちていた世界を預言書通りに修正するように務めるようにした。
預言書に従えば、遙か先でも大戦の継続は保証され、大戦世界は反映し続けるからである。

集計班「私は【避難所の避難所】から、大戦世界が預言書に書いている通り、“世界にとって”正しい方向に進むように監視役を申し付けられています。
関係者曰く『バグトラダムスの預言書』には大戦世界を良くするための未来が全て書かれているとか」

集計班曰く監視の役目はトップシークレットであり、大戦世界では本人以外に誰も知らないという。
なぜ、『バグトラダムスの預言書』に大戦世界の過去、現在、未来が全て予言されているのか。誰が書いた書なのか当時も今も社長にもわからない。
ただ、はた迷惑な物があったものだ、と当時の社長は自分の置かれた立場を置いてそう感じた。

通常であれば正体を知られた時点で始末しないといけませんが――と、集計班は前置きした上で、次のように語った。

集計班「貴方の命運は私が握りました。ちょうどいい、一人じゃ“仕事”が回らなかったんです。今後は、私のお手伝いをしてもらいましょう」

最悪を超える未来が社長の脳裏に浮かんだ。希望から絶望への突き落としに思わず乾いた嗤いが出てしまいそうになるのを集計班に覚られないように口を抑えた。
いっそこの時点で狂ってでもしまえば楽になれたのかもしれない。しかし、最も信頼していた兵士に目の前で裏切られてもなお、社長は現実を直視し運命に身を委ねた。
この場で狂人になれるほど弱い兵士ではなかったのである。


805 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/01 02:23:16.306 ID:o
ひとまずここまで。
本物の社長はしっかり重鎮兵士なのでご安心を。バグトラダムスの預言書、一冊ください!

806 名前:社長:2017/10/01 12:56:12.417 ID:0
ついに終盤へ・・・

807 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その1:2017/10/15 15:51:37.198 ID:hcxs5DM2o
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

抹茶「この世界は預言書に管理された世界ってことか…?」

参謀「そんな阿呆な。信じられん。シューさんの行動もそうやし、【避難所の避難所】なんて知らん」

¢「せっかく僕が作った多くのルールが無くなってしまったのも預言書通りってことか。びええええええん」

社長の話を聞いていた兵士たちは全員が驚愕の思いを隠しきれない様子だった。特に古参組の反応が顕著だった。

アイム「気持ちはわかる。誰か¢さんにちり紙を用意してやってくれ」

オニロ「ひとまず話の続きを聞いてみようよ」

オニロの視線に社長は頷き、続きを語り始めた。



━━
━━━━

社長「内容については異論ありません。ですが、少し一人にさせてください」

急転直下の展開に頭がついていかず、気持ちを整理するための時間がほしい。社長の恐る恐るといった頼みを、その考えは最もだと集計班は二つ返事で了承した。
てっきり渋られると思っていた社長は、集計班のあっさりとした様子に戸惑った。
だが、どうせ自分が会議所の暗部から逃げられるはずもなく、また集計班も自身を逃がすつもりもないことを見越されているのだと思うと、社長は暗澹たる気持ちになった。


808 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その2:2017/10/15 15:55:06.050 ID:hcxs5DM2o
それから暫く、社長はたけのこの里から離れた山中で大戦とは無縁の生活を送った。あまりにも大きな世界の闇を目の当たりにし、彼の心は平穏でいられなかった。
大戦と会議所は当時の兵士たちが全て0から苦労して創り上げた上の産物で、当時の一員だった社長自身も誇りを持っていた。

それが、何処にあるかもわからない【避難所の避難所】の思惑通りに造られた物だと気がついたら、彼には途端に目の前の世界が空虚に映った。
これまでの行動が、あまりにも虚しく思えてしまったのだ。

味方だと思っていた兵士に裏切られたことも彼の喪失感を増大させていた。
特に睨まれた集計班の紅い瞳は、夢の中で何度も出てきては社長をすくみあがらせた。

眼前に広がる晴れ晴れとした青空さえまやかしではないかと疑心暗鬼に陥った。
心配して彼の下を訪れた兵士に対しても集計班の時の二の舞いを恐れるあまり心を開かない本人に対し、兵士たちは次第に社長を忘れ、社長も極力忘れるように努めた。


そんな少しずつ別の生活に慣れ大戦を忘れかけてきた頃、社長は再び夢の中で【お告げ】をきいた。


―― 自らの使命を思い出せ。苦しみに耐えることは死ぬよりも勇気がいる。
―― どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない。
―― もし耐えることを諦めたら、その瞬間に地獄へ送る。

夢の中で百合神から半ば説教を食らい、目覚めたばかりの社長は顔面蒼白だったが、次第に意識が覚醒してからはすぐさま会議所帰還への支度を始めた。
今の生活は仮初めで自分自身は大戦から逃げられない運命であることを彼自身は理解していた。
百合神からの最後の一押しが彼自身を運命へ立ち向かう決断をさせた。
夢の中の神へ感謝と畏怖を感じながら、社長は小屋を離れ会議所へ復帰した。

809 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その3:2017/10/15 15:59:57.413 ID:hcxs5DM2o
集計班「お帰りなさい。“旅行”は楽しめましたか?」

会議所へ戻り、社長は早々に集計班に会った。編纂室でロッキングチェアをゆらゆらと揺らしながら、彼は余裕綽々といった面持ちで社長を迎えた。
自身の行動を予測されているようで思わず腹が立ったが、社長はぐっとこらえ百合神のお告げから考えた末に出した決意を述べた。

社長「私の命運は貴方が握ったと言いましたね。大いに結構です。ならば、私は預言書の通り、【世界の命運】を預かることにしましょう」

社長の言い回しに集計班は可笑しくなったのか声を出して笑った。

集計班「お元気になったようでなによりです。ですが大言壮語を吐く割に、貴方は怯えているように見える。それが少し滑稽に見えて笑ってしまったのです」

しかし、と集計班は続けた。

集計班「その度胸は武器になる。心得なさい、貴方は今日から大戦世界の安定のためにその身を私に預けました。
【避難所の避難所】に知られることなく、私は全力で貴方を守ることを誓いましょう。貴方は貴方で自身を守る術を身につけなさい」

これ以後、社長は【きれぼし語】という言語を用い、一方的な話しで周りを困惑させるようになった。
以前にも増して兵士たちは社長に変人のレッテルを貼り、その反応が増えるほど社長は流暢に【きれぼし語】を操りバグった姿を見せつけた。
その振る舞いが、他者からの翻弄を一切許さず預言書通りに【世界】を護らんとする社長の決意の現れだと、集計班を除いて誰も知る由はなかった。


810 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/15 16:01:16.592 ID:hcxs5DM2o
ひとまずここまで。近いうちに残りを投稿します。

811 名前:社長:2017/10/16 23:06:33.784 ID:88boJ95A0
あの人つよい!

812 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その1:2017/10/22 23:50:57.961 ID:ywvP1kCco
社長と集計班の【会合】は大抵、丑三つ時に人目の付かない場所で行われた。
集計班が持ってきた預言書が書かれた紙の切れ端を互いに目を通し、未来を正しい方向に導くための確認をするのだ。
会合は不定期で、集計班の思いつきで突然呼び出されることが多かった社長としては、内心穏やかではない日々が続いていた。

彼は預言書を丸ごと地上に持ち込むことはせず、なぜか決まって預言書の内容をコピーした紙の切れ端だけを社長の前に持参した。
その方がワクワクするでしょうと真顔でその理由を告げられた時には、睡眠不足だった社長は思わず目の前の集計係を殴ってやろうかと思ったほどだ。

人の気持ちがわからない兵士だと【会合】に加わってから都度、社長は心の中でパートナーを何度も毒づいた。預言の内容について彼に食いかかったことも数度だけではない。
【会合】に参加してからというものの、社長の集計班への評価は180度転換した。それほど彼と社長の馬は合わなかった。

この日も、二人は夜中に人気のない場所で話をしていた。

集計班「王様制のルール凍結は預言書通り、これで実行完了しました」

社長「¢さんの頑張りが報われませんね。あれだけルール作成に躍起になっていたのに」

社長の皮肉に、彼は一切動じることはなかった。

集計班「仕方がないことです」

他人行儀な集計班の言動に、社長はカチンときた。


813 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その2:2017/10/22 23:55:26.963 ID:ywvP1kCco
社長「仕方がない?貴方は定着しつつあった王様制を、会議所内部から反対意見を出させて潰したんです。少しは責任を感じないのですか?」

集計班「仕事ですから」

意に介さず集計班は涼しい顔をして、ただ――と言葉を続ける。

集計班「この王様制に関する議論が今後の大戦繁栄のためには不可欠。預言書にはそう書かれているので」

社長「預言書、預言書と。本当に預言書通りに進めば世界は安定するんですか?私には未だに信じられない事が多い」

集計班「…あなたはただ監視していればいい」

唐突に集計班は読み終わった預言書の切れ端を跡形もなく燃やして立ち去っていった。
それがいつも一方的な終了の合図だった。

814 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その3:2017/10/23 00:03:29.971 ID:o4m7nuLYo
彼は平時とは違い監視役の仕事に関しては一切の私情を持ち込まない主義のようだった。
表での彼の姿を知っていただけに、当初は社長も彼の裏の顔に面食らった。

会議所では仲間とともに運営のために各地を奔走し時には心を痛める顔をしながら、裏では一連の首謀者として躊躇なく全てを切り捨てる決断を下す。
会議所の内乱を表では鎮圧しながら、裏では焚き付ける工作活動をする。
社長の目には、集計班という兵士が預言書を体現するための悪魔の化身にさえ映った。
目の前で蒼い瞳を宿す兵士の真の姿を見て、狂っているとさえ思ったことも少なくない。

社長自身も、自身をバグで狂わせていなければ良心の呵責に苛まれとうに発狂していただろう。
淡々と与えられた任務をこなす非道な彼の精神状態を、社長はある種の尊敬を抱きながらも、それを大きく上回る恐怖感と嫌悪感を持っていた。

そして、幾度の歴史が流れた。
最初は工作活動に反抗的で何度も反発していた社長も、自らの生命を集計班に握られている立場上、嫌々ながらも活動に従事してきた。
すると次第に感覚は麻痺して、ある程度感情を圧し殺すこともできるようになってしまった。

自らが嫌う相棒と同じ姿に変化しつつあった社長はふとこれまでを立ち返ったときに自己嫌悪に陥るも、
心の底では【工作活動】にある種楽しみを見出すようになっていた。


そんな時、一つの預言が二人の運命をこれまで以上に変えていくことになった。

815 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その4:2017/10/23 00:09:00.959 ID:o4m7nuLYo
その日、珍しく集計班は【会合】に遅れて到着した。
彼曰く【避難所の避難所】の会議が長引き、預言書の内容を地上に持ち出すのに時間がかかったという。
彼自身もまだ預言の内容を見られていないというのだから、まるでおみくじの結果を開けて待つような、社長はどこか生の預言を見ることへの奇妙な連帯感と高揚感に支配されていた。

―― 集計班「私は【避難所の避難所】ではペーペーですから預言を見せてくれないんですよ」

かつてどうして数年毎の預言しか持ってこないのかという問いに、彼が社長にそう語ったことがある。
未だに避難所の避難所のメンバーが誰なのか把握しておらず、特段知りたくもなかった社長だが、彼が下座に位置する会議とは一体どれ程の規模なのか想像もつかなかった。

集計班「DBが地下牢から逃げ出したことは知っていますね」

社長「ええ。まさか本当に預言書通りになるとは。てっきり私が檻を解き放つ役目だと思っていましたよ」

改めて預言書の正確性に驚く社長に、何をいまさら――と集計班は呆れながら言葉を続ける。

集計班「近々、DBが暴走し世界を巻き込む大騒動が起きます」

社長「本当ですか」


816 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その5:2017/10/23 00:14:04.458 ID:o4m7nuLYo
集計班「DBが兵士の【負のオーラ】を集め強大化して、会議所を制圧しようとするのです。DBから活力を吸われた世界は衰退し、暫くの大戦休止に追い込まれる。世界の危機を迎えます」

まるで朗読の一説のように感情を込めず、集計班は預言書の切れ端を読み上げていった。

社長「このままではDBにやられてしまいます」

それに対し、社長もひどく無機質な相槌をうった。
その問いに対し、急いで文字を追いながら集計班は続きを読み上げた。

集計班「安心なさい。直に、窮地を救う“希望の星”が会議所に到着します。その英雄とDBを戦わせるのです」

社長「それならば安心だ。して、その正体は?」

話の内容は現実離れしているのに、不思議と社長は冷静になりつつあった。

集計班「軍神<アーミーゴッド>の生まれ変わりです。覚えていますか?」

彼の口から出るまで、社長は軍神<アーミーゴッド>の存在を忘れていた。そんな社長の様子に、“彼”も寂しがるでしょうに、と集計班は漏らした上で預言書の続きを読み始めた。

集計班「DBはまず自身と対極に位置する軍神<アーミーゴッド>を壊しに行きます。その際に危険を察知した軍神が、自らの魂を宿した器を大戦世界へ投げ込む。
それが“希望の星”の正体です。私たちがその器を回収し一人前の兵士に育てあげます」


817 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その6:2017/10/23 00:15:58.817 ID:o4m7nuLYo
途方もない話だが、かつてこうした突拍子もないことを幾多もやり遂げてきた二人にはすんなりと腑に落ちた。

社長「久方ぶりに会議所にもニューホープの登場ですね。DBを倒し英雄になった彼は正に【軍神】として今後も会議所を引っ張り続けるでしょう」

集計班「ええ。――いや」

社長の言葉に頷きながら預言書の切れ端を読んでいた集計班の動きが止まった。
その様子に訝しんで彼の顔を覗き込んだ社長は、そこで初めて戸惑いと苦悶の表情を浮かべる彼の顔を見た。

集計班「英雄<希望の星>はDBと相打ちになります。預言書にそう書かれている」

社長「え?」

集計班「私たちは赤子同然の新参兵士を育て我々の代わりにDBと戦わせ、そして役目が終わればその場で消失させると。そう書いてあります…」

言い終えるや否や、集計班は切れ端を強く握りつぶし手のひらの中で消し炭にしてしまった。
彼の背中は怒りで小刻みに揺れていた。

社長は唖然とした気分になった。
係る未来の悲惨さに唖然としたのではない。目の前で憤る相棒に対し、他人を慮るほどの一人前の人情があったのか、と社長は真っ先に衝撃を受けたのだった。


818 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その7:2017/10/23 00:17:21.860 ID:o4m7nuLYo
加古川「アイムとオニロは、軍神<アーミーゴッド>の生まれ変わりだって…?」

¢「軍神<アーミーゴッド>、久しく聞いてなかった言葉なんよ。階級制でずっと使っていた制度のはずなのに、いつの間にか無くなっていた…」

軍神制度を形にした立役者のはずの¢も、軍神という存在を忘れていたようだった。

アイム「昔は軍神制度により大味な展開で、逆転に次ぐ逆転、先の読めない展開に大戦は大いに盛り上がった。
だが、いつしか兵士たちはマンネリを感じるようになり、兵士たちからの支持を失った軍神も消えてしまった」

オニロ「ボクたちが――ええっと便宜上、軍神<アーミーゴッド>と呼ぶね――軍神<アーミーゴッド>は【避難所の避難所】に事実上幽閉されてしまったんです。
兵士の願いがなければ、彼は世界に姿を現せられない」

アイム「そんな鬱屈とした日々を避難所の避難所で過ごす中、“アイツ”が悪魔のような囁きで軍神<アーミーゴッド>に語りかけてきた」


―― 行っただろう、“迎えに行く”となァ。さァ、大戦に帰ろう。


819 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その8:2017/10/23 00:19:16.727 ID:o4m7nuLYo
>>818
書き忘れました。>>818では現代に話が戻ってます。一時回想中断中

820 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その8:2017/10/23 00:19:37.061 ID:o4m7nuLYo
会議所に幽閉されていたはずのDBからの突然の連絡に、不審感を抱きつつも忘れられない大戦への憧れから、軍神<アーミーゴッド>は結果的にDBの提案を受け入れてしまった。
その結果、彼は地下の大戦開発室へと誘い込まれDBの策略により瀕死寸前まで追い詰められた。

アイム「そこで軍神<アーミーゴッド>は、近くにあった【圧縮装置】を使い自らの魂を分けることにした」

参謀「【圧縮装置】って¢さんが作った機械か。確か大戦の長期化に対応するために、でかすぎる大戦場の大きさを狭める次元装置だったか」

¢「そんな大それたものじゃないけど。実際は黎明期に誰かが魔法で作った大戦場の区域を制限するトリガーをつけただけなんだ。
例えるならサッカーコートをフットサルコートの大きさに変える装置みたいなもんだな」

オニロ「そうです。軍神<アーミーゴッド>はその機能を逆手に取り、自らの魂を圧縮しその結果、魂は四散したんです。」

筍魂「なんとまあギャンブルを…」

社長「いま正に二人が語った内容は、K.N.C174年に起こった出来事です。アイム君とオニロ君が来る1年前の出来事でした。そして先の預言について、私とあの人はある決意を固めます――」

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821 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その9:2017/10/23 00:26:58.331 ID:o4m7nuLYo
【K.N.C??年 会議所 大戦年表編纂室】

社長「どうでしたか?【上申】は」

集計班「…ダメでした。預言書の内容は変更できない、と突き返されるばかりで」

拳をテーブルに叩き集計班は珍しく悔しさを露わにした。先日の希望の星の預言から彼はひどく感情的になり、明らかに工作活動に私情を挟んでいるように社長には見えていた。
この日、集計班は預言書の内容の変更を訴えるべく【避難所の避難所】へ直談判をしに行った。
未だ現れていない“希望の星”をDB騒動後も生かすように、歴史を修正したいと申し出たのだ。

集計班「なぜ、彼らが犠牲にならないといけないんだ…」

社長「…」

預言の内容に食い下がる彼と、酷く冷静な自分自身。一時とは立場が真逆だな、と社長は奇妙な違和感を持った。
彼が熱くなれば熱くなるほど、社長の心は急激に冷めていった。

工作活動で誰かを殺めたことはないにせよ、いつも預言で世界の発展を促すときには他方で立場の弱い何らかを虐げてきた。
進化とは成長の裏で悲劇が起こり得るものなのだと社長は既に納得していた。
自分は誰かに不幸を植え付ける死神だ、と社長は自身の役割を認知していた。

そのもう一人の死神が、なぜかとある兵士の不幸に哭いている。
愚かだ、と社長は彼を憐れんだ。
“たかが兵士の死”ぐらいで、なにをそこまで叫んでいるんだと軽蔑に似た感情を目の前の集計係に向けた。

822 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その9:2017/10/23 00:27:37.500 ID:o4m7nuLYo
>>821
修正

集計班「なぜ、彼らが犠牲にならないといけないんだ…」

集計班「なぜ、彼が犠牲にならないといけないんだ…」

この時点では希望の星が二人になることを知らないので修正

823 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その10:2017/10/23 00:29:41.392 ID:o4m7nuLYo
社長「貴方は、今までどんな汚い仕事でもこなしてきた…教えてください、なにが今の貴方をそこまで突き動かすんですか」

彼を突き放すような冷めた自身の声に、社長は内心で驚いた。

集計班「…私たちの目的はなんですか?」

質問を質問で返され、面食らいながらも社長は当然のように答えた。

社長「『預言書通り』に大戦世界を構築し、維持し続けることです」

集計班は静かに頭を振った。

集計班「違いますよ。私たちの目的はあくまで『大戦世界』の繁栄と発展を支え続けること。預言書はそれを達成するための一つの手段にすぎないんです」

頭をガツンと殴られたような衝撃を社長は受けた。


824 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その11:2017/10/23 00:44:13.831 ID:o4m7nuLYo
その夜、久々に夢に現れた神に社長は事の次第を話しすと、百合神は彼を張り手、貫手、正拳突き、目突、あらゆる手段で彼をふっ飛ばし、後は自分で考えろと早々に去ってしまった。

独り残された暗い夢の空間で、起き上がれずに仰向けに転がりながら、夢の中で社長は考え始めた。

集計班という兵士は、自身が工作活動に協力するようになってから残忍で冷徹な面ばかりが映った。
間近で彼の仕事ぶりを見れば彼への拒否感が増し、その度に社長自身は彼を反面教師として、工作活動にも人情だけは持ち続けなければいけないと思っていた。
ルールをお蔵入りにされ、大戦は一時休止に追い込まれ、クリスマス聖戦では結婚ルールという摩訶不思議ルールで大戦は混迷し、多くの兵士が苦しんできた。

全て預言の内容に沿うために、社長は仕方なく裏工作に勤しんだ。だがその度に、社長は常に未来で苦しむことになる兵士に心のなかで謝罪をしながら、
常に贖罪を背負っている気持ちで今日までを過ごしてきた。一方で彼を見ていると、そのような事を微塵も感じてないような振る舞いをする。
社長自身は常に預言書の内容を疑い、彼の預言書への傾倒具合と行動姿勢に真っ向から対立することで、自身の存在価値の重要性を確認してきた。
確認してきたはずだった。

――“たかが兵士の死”ぐらいで、なにをそこまで叫んでいるんだ。

そこで社長は、今日自身が抱いた思いを振り返り、背筋を凍らせた。

―― いつからだろう、工作活動を強制ではなく自発的に行うようになったのは。
少し前までは嫌々行っていたはずの作業を、何の躊躇いもなく実行できるようになったのは。

変わっていないと信じていたはずの自身の思考が、いつの間にか“慣れ”という毒蟲に感覚を蝕まれ、いつしか自身から人情を破壊し非情さだけを増大させていた。
社長は思わず怖くなり声を上げて叫んだ。叫び、叫び、叫び続けたが、叫んでも心のなかに在る自身の残忍な部分が口から外に出ていくわけでもなく、そのうち気分が悪くなり嗚咽混じりに小さくうずくまった。

825 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その12:2017/10/23 00:54:17.336 ID:o4m7nuLYo
―― 私たちの目的はあくまで『大戦世界』の繁栄と発展を支え続けること。預言書はそれを達成するための一つの手段にすぎないんです。

彼の発した言葉が、社長の頭のなかに繰り返しこだました。

頭痛がひどくなる中、彼を理解しようと百合神の教え通り社長は考えた。
てっきり彼は預言書の内容が絶対だと思いこんでいるものばかりだと思っていた。しかし、彼は常に預言書の書かれた未来と、大戦世界の繁栄を願う自身の信念を天秤にかけていたのではないか。
今までは預言書の未来が世界の繁栄へ繋がると信じていたから、何の疑問も持たずに工作活動を実行してきた。

しかし、今回ばかりは預言書の内容を信じきれなくなったのではないか。
彼の真意が次第にわかってきた。

自らが作り出したDB騒動劇を、新参兵士が相打ちになりながらも沈める。描かれる未来は世界を救う英雄の崇拝だ。
会議所はDB討伐により英雄を奉り、それに触発された多くの兵士が大戦へ一時復帰するかもしれない。

だが、軍神を失ってしまったことへの喪失感は戻ってくることはない。
いくら兵士たちの感情が正負で表され、DBの持つ“負のオーラ”が解放されたとしても、同時に“正のオーラ”を創り出す軍神も居なくなっては意味がない。
恒久的に続く大戦を考えると軍神の存在が不可欠であると、彼は結論付けのではないか。

否、寧ろそのような複雑な事情を抜きに“新参兵士を生贄にすることへのやるせなさ”が、彼を預言修正へと突き動かしているのかもしれない。
それでもいいかもしれない、社長からしたらどちらでもよかった。
どちらも真理だと思った。

社長「ずっと変わってないのは彼のほうじゃないか…」

夢の中でポツリと呟いた言葉はどこにも反響すること無く、泡のように闇の中に溶けて消えていった。
頭痛は収まった。心のなかにあったチクチクした思いもいつの間にか消えてしまった。
どうすればいいか再び社長は考える。自身が取る最善の行動とはいったい何か――


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

826 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その13:2017/10/23 00:57:31.624 ID:o4m7nuLYo
集計班「『預言書』の内容には従わず、私で新たな未来をつくります」

突拍子のない集計班の発言にも、夢の中で考え抜いた末の社長にはその内容が胸にストンと落ちた。

社長「ご一緒しますよ」

以前では考えられないほど、社長は自然に同調できた。
てっきりいつものように突き放されるものだとばかり思っていたのか、声高に宣言したはずの彼はなぜか面食らう格好となった。

集計班「これは危険な賭けです。【避難所の避難所】に気づかれないように、新たな未来の道筋をつくらないといけない。
バレればおじゃんだ、私ひとりでやります」

彼の言葉に、さすがに社長は嗤った。

社長「いまさらそんな言葉は止めてください。事に巻き込んだ張本人じゃないですか」

それに私が否定しても付き合わせる気でしたでしょう、との社長の言葉に集計班は言葉をつまらせた。

社長「それに、私も見てみたくなったんです。【預言に縛られない未来】というやつをね」

集計班「…ですが」


827 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その14:2017/10/23 01:39:59.512 ID:o4m7nuLYo
なおも煮え切らない集計班に、社長は予てより恐れて口に出せなかった自身の思いを伝えてみることにした。

社長「この際だからはっきり言います。

私は貴方が嫌いです。
私を変えたすべての元凶は貴方であり、貴方には私を変えたことへの重い責任がある。
純粋に大戦を楽しめなくなった事への責任、会議で予定調和の発言しかできず皆への贖罪で胸を痛めた事への責任、それに私をバグらせた事への責任。
この他にも挙げればごまんとあります。その全ての責任を貴方は背負っている。

そもそも貴方の非道っぷりも虫酸が走ります。
その度に私は心を痛めてきた。

さらに貴方はいつも唐突だ。
貴方の一挙手一同に付き合わされる私の身にもなってください。何度尻拭いの役割に徹したか、数え切れません。

貴方と付き合えば付き合うほど、預言書という存在を恨んだし世界を恨んだりもした。
その中で、私は工作活動のせいで貴方の性格が豹変したと勝手に決めつけ、貴方をこき下ろし蔑むことで自身の自我を保ってきたんです。
貴方を見る度に自分自身は絶対に貴方みたいにならない、なってはいけないと。この思いだけは絶やさないようにしてきたつもりだった」

集計班「…」

社長の独白に、集計班は目を閉じて俯向いた。その姿を一瞥しながら社長は、ですが、と続けた。

社長「変わったのは私の方だった。
いつからか私は工作活動の内容に疑問を持たず流れ作業のように活動を続けるようになってしまった。
そこに、大戦を良くしようという感情は一切なかった。

変わっていないのは貴方のほうだった。貴方は常に預言書の内容が大戦への繁栄に繋がるかどうかを考え、決断を下していた。
貴方はずっと大戦の事を考えていた。誤っていたのは私の方だったと気づきました」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

828 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その15:2017/10/23 01:45:32.134 ID:o4m7nuLYo
社長「いつか私は、世界の命運を握っていると言いましたね。その気持ちは今も変わらない」

頭を上げると鳩が豆鉄砲を食ったように慌てている彼と目があった。間抜けな面だ、と素直に社長は思った。
こんな奴に今まで指図を受けていたのか、という感情がふつふつと湧いてきたが今は抑えることにした。目の前の小事より大事に目を向けた。

社長「繰り返しますが私は貴方が嫌いです。
貴方は卑怯だ。
私が逆らえないことをいいことに、最後は自分の意見を押し通す。そうやって先程から否定していても、最後は貴方の思い通りになるべく私は付き合うしかない。
これまで何度も何度も経験してきた。もういい加減うんざりだ。


だから、今度ばかりは私が決断します。
自分の判断で、自分の意志で、貴方の考えに同調し付き従うことを約束します。


貴方の片腕となりましょう。
大戦世界を恒久的な繁栄継続に導くため。なにより“希望の星”を救うため。
どんな危険も覚悟の上です」

集計班「いや、だから…貴方は参加する必要はない。今日はお別れの挨拶なんです、今までご苦労様でした」

これほどまでに慌てふためく兵士を翻弄するのは楽しいものだ、と社長は愉悦気に笑った。
特に今までやり込められていた存在を出し抜いた時の充足感は何事もにも代え難い嬉しさだ、と社長は感じた。

これこそが自身の目指す道だと社長はその場で直感した。


829 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その16:2017/10/23 01:54:03.921 ID:o4m7nuLYo
社長「貴方の驚く顔を見れて、これほど“してやったり”と思える時が来るなんて不思議ですね。
考えてみれば貴方も、預言書というどこの馬の骨とも知れない奴が書いた未来予想図に付き合わされて、内心腹立たしかったでしょう」

集計班「…私は――」

社長「【避難所の避難所】が全て悪いとは言いません。ですが地上と天空との板挟みにされた貴方にも同情の余地はある」

社長は晴れ晴れとした気持ちだった。明快な一本の道筋が見えたのだ。

社長「未来は、預言書なんてカビの生えた本に決められるほど単純なモノじゃない。
貴方が一番よく理解してるはずだ。

やってやりましょう。
【避難所の避難所】を出し抜いて、後塵へ希望を託しましょう」

すっと社長は集計班に向かって手を差し出した。
彼は意味が分からず暫くじっと差し出された社長の手を見つめていたが、すぐに全てを理解しホウと一息つき頭を垂れた。

集計班「全てを許してくれとはとても言えません。ただ、私は貴方を信じきれなかったのかもしれない。もっと早くこの考えに至れば良かった――」

そうして、再び集計班が顔を上げた時。社長は彼の蒼い瞳が熱意に燃えていることを悟った。
彼は社長の手をがっちりと掴み、不敵に笑った。

集計班「一世一代の大勝負ですよ」

社長「もとより覚悟の上です」

二人は声を出して笑いあった。【会合】で二人がこうして心から意思を通わせたのは初めてだった。


830 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その17:2017/10/23 02:10:18.272 ID:o4m7nuLYo
社長「私が手伝えることといえば、誰にも気づかれず皆を誘導することぐらいしかできない。ただし、それも私はバグっているため正攻法ではないでしょう。
時間がない今回の預言破棄に関して、私の直接的な行動は役に立たないかもしれません。

それでは、私は敢えて道化師となりましょう」

集計班「道化師?」

ニヤリとして社長は頷いた。先程、社長が彼を出し抜いた時、もし彼ではなく【避難所の避難所】を出し抜けるとしたら、どれほど可笑しいか。
恐ろしい事を想像してしまったのだ。

社長「私が貴方の信念を皆に伝える水先案内人となりましょう。
そうですね、【占い師】なんてどうですか。私は今このときより【占い師】となりましょう。きれぼし語で預言書通りの内容を占うんです。
怪しくて胡散臭くて、とても中身がなく根拠のない役割に見える。

ただそれは仮初めの姿にすぎない。
誰しもが安心して気がつかない中、貴方が変えたいと思う未来を秘密裏に導く。そのために私が矢面に立ち皆の注目を逸らせ、時には呆れさせ、笑わせ続けるのです。
皆に誰も知らない未来を前もって案内するための先導も兼ねて」

831 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その18:2017/10/23 02:13:30.095 ID:o4m7nuLYo
集計班「それはあまりにも危険だ。貴方のこれまでの行動は【避難所の避難所】に認知されていないんです。わざわざ危険に身を置く必要はないのでは」

社長「危険に身を置いたピエロは虚言を織り交ぜながら可笑しなショーを続ける。一際輝きますよ。
【避難所の避難所】は始めこそ私を疑うかもしれないが、そのうち害がないとわかれば放置をする。
見方を変えれば、世界に忠誠を誓っているピエロでもあるのです。そうすると、私の振る舞いを知らず知らずのうちに【避難所の避難所】は黙認するというわけです。

だからこそ、こちらが預言を破棄したと奴らが気がついたときには、既に預言の未来などどこへやら。取り返しの付かないことになる。
これほど痛快なことはないでしょう?

私の行動はただの自己満足に過ぎません、ただ貴方と私の決意の表れを形に残したいんです。
この狂った世界で踊り続けた私たち二人の勇姿を、そしてこれから世界に産み落とされる悲しき英雄にエールを贈りたいのです。

大戦世界という大舞台で私は見事に道化師を演じてみせましょう。

道化師はなにも人を笑わせるだけでなく奇術も行うものです。
奇術というものは皆を心底驚かせて初めて成功なんです。


失われるはずの生命を救う。


全てが変わった時、貴方と私の一世一代のショーは終焉を迎えカーテンコールに応えるというわけです。いかがですか?」

ぼうと呆けていたままの集計班は、“可笑しな話だ”と笑った。
その後の決意に満ちた瞳を見て、言葉に出さずともその時から二人は真の同士となった。

832 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/23 02:16:37.519 ID:o4m7nuLYo
長かったですが、社長回想編は以上です。
当初正体のしれなかった二人は、明確な意志があって行動してたんですねってお話でした。
社長のキャラがかなり踏み込んでいますが、お許しください〜 最初からこう描きたかったんです

833 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/23 02:17:25.028 ID:o4m7nuLYo
社長の占いも次回の更新でようやくご紹介できます。3年ぶりに日の目を浴びます。

834 名前:社長:2017/10/23 16:20:10.807 ID:/wucmrI20
更新乙。色々と明らかになる感じがいいすね

835 名前:社長:2017/11/03 23:15:30.246 ID:0
アイム/オニロ
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/954/wars01.jpg

軍神/DB
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/955/wars02.jpg

オニロ君は中性的なイメージがあるけどどうも女の子っぽくなってしまう・・・
DBは本編描写では人間よりでかいって描いてるにも関わらず軍神よりちっちゃくなってるけどそこは遠近法みたなものだと・・・

836 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/04 01:08:42.642 ID:o
>>835
おいおい神か
オニロ君は元々そんなイメージで書いたキャラなんでイメージ通りだと思います。アホ毛は正義。
アイムくんは思ったより凛々しくてかっこいいでつね。
DB死すべし

837 名前:社長:2017/11/05 00:05:53.614 ID:0
魔王791/筍魂
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/956/wars03.jpg

魔王様は閉眼キャラって感じに。開眼したら強い感じだけど、魔王様に限っては開眼しなくても強いよね…。あと服装は参謀の書いた奴とほぼ一緒。(魔王っぽい)
魂さんはフィリピン・パブ店長っぽい感じに。ポーズはアイム君といっしょ。(戦闘術魂の構え?)


838 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/05 01:08:07.396 ID:o
>>837
うおおおおおおおおおお
魂さんがあやしい感じになってていいね!魔王はくそつよそう

839 名前:名無しのきのたけ兵士:2017/11/05 01:18:31.441 ID:o
>>835
可愛い弟子を持ったなぁ

840 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その1:2017/11/06 00:26:45.172 ID:o
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

社長の独白が終わり、編纂室は暫く静寂に包まれた。
アイムとオニロの正体、大戦世界を監視する側の目論見、そして集計班と社長の叛逆とその結末。
殆どの会議所兵士は一度に流し込まれた大量の情報を整理するためか、沈黙するしかなかった。

その中で、事の次第を“思い出した”アイムとオニロだけが、社長を気遣うように心配そうな視線を彼に送った。
まるで走り終えた後のように肩で息をしていた社長が二人の視線に気が付いたのか、ぎこちなく口角を上げ笑みを浮かべた。


841 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その2:2017/11/06 00:32:17.559 ID:o
参謀「色々あったということか」

一言で片付けられず率直であやふやな感想を述べた参謀の言葉にも意味は幾らかあった。
多くの兵士が意識を現実に戻し再び社長とアイムたちに注目した。

参謀「アイムとオニロ、お前たちの正体にも驚かされたが。まさか社長が【占い師】に突然なったのは、そういう経緯があったとはな」

社長「これまで大戦世界に関する4度の占いをしました。
1度目は英雄登場の占いを、2度目はDB襲来とオニロ君・アイム君が相打ちとなってしまう占い。3度目は時限の境界の予告の占いをしました」

アイム「全く気づかなかったぞ…」

全く意味がない占いだと思っていた、と言外に含んだニュアンスの言葉をアイムが発したことで、その場の空気は幾分か和らいだ。

スリッパ「4度目は?」

社長「…本当は預言書の未来から外れた瞬間に占いを出して奴らを欺いてやろうとシューさんと企んでいた。
私たちは溜飲を下げたかった。何よりアイム君とオニロ君を救いたかった。
そして、目論見通りシューさんは引退していた竹内さんを独自に呼び戻した」

竹内「ワシに白羽の矢が立ったというわけじゃな」

結構なことだ、と好々爺は声を上げて笑った。


842 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その3:2017/11/06 00:35:14.029 ID:o
社長「預言書には竹内さんの存在について一切書かれていなかった。
シューさんと私は、竹内さんの存在こそが今回の騒動のキープレイヤーであると確信していた。
DBの腐臭に唯一抵抗を持つ【第二の希望】を招集することで、DB討伐隊は預言書が示す戦力内容から大幅に増強されることになり、
その時点で本来の預言<DBと軍神の相打ち>は打ち消されたはずだ。未来は不確定となった。ただ…」

アイム「それと引き換えにシューさんは既にいなくなっていた、か…」

アイムの言葉に、社長は唇を噛み締めた。

社長「覚悟はしていたはずだ。竹内さん招集の暴挙を奴らが見逃すはずもなかった」

筍魂「こうなることを予期して、シューさんは社長の存在を隠し続けていたんだろうな」

¢「いつまでも不器用な兵士だ…」

社長はふうと深く息を吐いた。憑き物が落ちたように、全てを語り終えた社長は晴れ晴れとした顔だ。

美しい。

オニロは社長の姿を見て素直にそう感じた。
葛藤を乗り越えた純粋で澄んだ兵士の心は、本来その極地に達しているはずの軍神<アーミーゴッド>の魂を受け継ぐオニロでさえ眩しく見えた。
バグという抜け殻を破った本来の社長の姿は、まるで雨上がりにかかる虹のように軍神の二人には眩く映った。


843 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その4:2017/11/06 00:47:03.123 ID:o
社長の勇姿を見届けたアイムとオニロは、顔を見合わせ互いに頷いた。

―― 社長は自分の戦いを今終えた。次はボクたちの番だよ。

言葉を発さずとも、オニロの決意をアイムはすぐに察知した。
もとより同じ存在であるがゆえ、ここにきて互いの考えはすぐに分かるようになっていた。
だが、ここまで心が通じ合えるのは、筍魂が与えたあの戦闘術・魂の試練があったからだ、とアイムは感じた。

―― ここからはオレたちの仕事だ。社長が、集計班が必死に繋いだバトンのリレーを受け取って走らないといけない。
    軍神<アーミーゴッド>として皆を鼓舞し、無き兵士が救ってくれた生命を最大限活用する場がきた。

軍神としての第一声はアイムから発せられた。

アイム「社長、いままで辛かっただろう。ありがとう。そしてごめんな」

アイムは社長に深々と頭を下げた。
今まで叩くだの斬るだの言われていた当の本人は、幾らアイムが自身の存在を思い出したとはいえ予想をかけ離れた行動を目の前に慌ててしまった。

社長「あ、頭を上げるあひゃよッ!あっ」

きれぼし語が自然と出てしまい、社長は思わず口を抑えた。

途端にアイムは顔を上げた。
先程までの真面目な顔はどこへやら、アイムはニヤニヤと笑っていた。
してやったり、という悪戯っ子の顔を社長に向けている。

アイム「あんたはやっぱりバグってる姿のほうが向いてるよ。そんなシューさん2号みたいな慇懃無礼な口調は調子が狂っちまうぜ。
まあ今までが狂わされてなかったと言ったら嘘になるけどな」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

844 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その5:2017/11/06 00:58:57.023 ID:o
オニロ「ボクたちは命の恩人である会議所の皆さんを見て育ちました。
今ここに忠誠を誓います。ボクたちを育ててくれた師匠を含めた恩人たち、そして自らの危険を顧みず全てを語ってくれた社長。
全員を守ることをここに誓います」

オニロは一度言葉を切り、兵士全員の顔を見回した。
自身に満ちたオニロの表情に、全員の表情が引き締まったものになっていく。
最後に、オニロは空席になったままのロッキングチェアをじっと見つめた。

オニロ「ボクたちの生命を救ってくれた存在を忘れることはありません。
そして自らの存在を賭してまでボクたちに託した使命を…恥辱の神DBの討伐を、成し遂げてみせます」

アイム「DBはいま、兵士たちから奪った心の頁<士気>を食いつないで必死に生き長らえている。
討伐隊の活躍で溜め込んでいた士気を放出し、奴の存在は風前の灯だ。とはいえ、奴は負のオーラの権化。
いくら皆の活躍で弱体化に追い込んでも、すぐに心の頁<士気>を奪って奴は肥大化する。
まだまだ強敵だ。
それに、いくら厳しい訓練に耐えたからといってオレたちもまだまだヒヨッコだ」

二人の師匠はアイムの言葉に苦笑した。

オニロ「お願いします。討伐には、皆さんの力が必要なんです。
皆さんの力を、勇気をかしてください。
新しい歴史を、皆さんで創っていきましょうッ!!」

オニロの叫びに、その場に居た全員が深く頷き何名かは呼応するように雄叫びを上げた。

兵士たちの心の本に再び頁<士気>が戻っていく様子を、アイムは目を細めて見つめていた。
失われていた兵士たちの頁は、過去の大戦の中で自然に兵士自身が放出し雲散霧消してしまったモノだ。
兵士たちはそれをマンネリ、飽きと呼んでいた。
それをアイムたちが再びかき集め、元々あった場所に戻したのだ。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

845 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その6:2017/11/06 01:00:16.106 ID:o
【K.N.C180年 会議所 ??】

DB「待っていろよォ会議所」

遠くにそびえ立つ会議所を睨み、急速に傷を癒やしていたDBは独り舌舐めずりをした。

DB「時は一刻を争う。すぐに始めるぞォ」

背後に控えていた黒砂糖と山本は御意とばかりに片膝をついたのだった。


846 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/06 01:06:53.620 ID:o
3年越しに設定公開です。
社長の占いの意味を公開しまーす。実は秘密裏に、社長に占いへの変換を依頼していました。

第一の占い <<アイムとオニロの登場を予言した占い>>
『アァー!(甲高い喘ぎ) 下から突いてくるなんて思っていなかったもの//
 チョ!チョーク!(甲高い喘ぎ) なかっそこち崎哲夫 テイルアタックきた!?』

⇒ 意味:会議所は想定し得ないミスを犯す。それを帳消しにするために、窮地を救う英雄が舞い降りる
★社長的ポイント: ちなみにアァー!からチョークまでは失敗した時の喘ぎ声
             テイルアタックきたはバグメモよりの引用


第二の占い <<DB襲撃と英雄消滅を予言した占い>>
『だが、あるひ… ゆうしょうこんらんです。みごとライアンはかちのこった!
そしてこの納豆美味しいよね〜←※大勢の兵士に向かって 
う〜ん、どうかなぁ?←※アイムとオニロに向かって
こうして森部拳は 永遠にその姿を消した……』
⇒意味:会議所は近々、誰も想定していないような動乱(悪しき時空の潮流者による襲撃)が起きる。
      大戦の救世主たちは時空に囚われ二度と戻ってこない
★社長的ポイント: 納豆をみんなの前に並べておいてこの納豆美味しいよね〜と言うと謎度が深まるんじゃないかな

847 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/06 01:10:36.124 ID:o
第三の占い <<過去と未来を跳躍できる時限の境界発見を喜び予言した占い>>
『ピッコロだいまおうとのせいぜつ
ちかづいてくる…まさか!ソン・ゴクウか!?
ちかづいてくる…
ちかづいてくる… まさか!ソン・ゴクウか!?
ちかづいてくる… まさか!ソン・ゴク
ちかづいてくる… まさか!ソン・ウか!?
むすこ ジョンである。 うれもし、カンっキィー!』

⇒意味:もうそろそろだね。そろそろ現在と過去を行き来できるようになるよ。やったぜ。
★社長的ポイント:もうそろそろだね=ちかづいてくる…!
             過去と未来=ターミネーター→むすこ ジョン
             やったぜ=うれもし

第四の占い <<ハッピーエンドを予想した占い>>
『おきのどくです!!!!!
ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ!
預言?しらね^^
皆食べようぜ〜☆
アア オワッタ・・・・・・・・!』

⇒意味:預言は打ち消され。外部の予想を覆し、大戦の救世主たちはここに集結した。
      会議所と彼の者たちは、必ずや幸せな結末を迎える。


そろそろ決戦です。

848 名前:社長:2017/11/06 01:11:15.337 ID:0
山本さんもう捕まってるじゃねーか。

849 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その1:2017/12/31 00:01:57.876 ID:OwfCxvgko
【K.N.C180年 きのこの山】
その日、仕事を終えたじゃがバター兵士は鬱屈とした思いで帰路に就こうとしていた。
目に刺さる夕陽を嫌うように手で日除けを作りながら、じゃがバターは陽の方向にある古ぼけた建物のある一点を見つめていた。

かつて、あの建物<会議所>の中に自分がいたことが今でも不思議だと、じゃがバターは思っている。
大戦初期、自分自身は会議所の中心に居た。集計班の代わりとして大戦の集計係まで務めたこともある。
あの日あの時、大戦に対する情熱は誰よりも強かった。
しかし、ある時を境に自分の心の中から大戦への情熱の火がふっと消えてしまい、気がつけば会議所はおろか大戦場へ立ち寄ることすらなくなっていた。

感慨に耽っていた時間を取り戻すように、じゃがバターは早足で自宅へ歩を進めた。
じゃがバターの周りにも大戦への興味が無くなってしまった者は多い。そうした者は大戦への参加すらも敬遠することが殆どだが、全く生活と縁がなくなるかといわれればそうではない。
きのこの山の住民の多くは大戦関連の産業で生計を立てている。じゃがバターも勿論その例外ではなく、大戦で使用される銃器の生産工場で働いていた。

一時は残業をしても生産数が追いつかないほど大戦の特需に湧いた武器界隈だが、今は閑古鳥が鳴く不況具合だ。それもその筈、大戦自体が暫く開催されていないためだ。
時間通りに帰れることの安心はあるものの、手取りが減ってしまったため日々の生活は苦しい。

大戦に参加するほどのやる気はもう無い、しかし大戦が開催されないと困ってしまう。
やり場のない怒りをどこにぶつけていいかわからず、じゃがバターは暗澹たる思いで広場を通りかかった。


850 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その2:2017/12/31 00:03:04.907 ID:OwfCxvgko
??「…私たちは今まで信じれば救われると信じてきた。信じた結果、どうなったッ!!」

じゃがバターの耳にある兵士の演説が聞こえてきた時、彼は興味本位で広場の集会で行われている奇妙な集会に近寄ってみた。
広場の中心で喋る一人の兵士の姿とそれを取り巻く兵士たちから奇妙な熱気を感じたのだ。
中心の兵士は身振り手振りを交え、熱心に何かを訴えているようだった。

??「大地は荒れ果てェ文化と生活は荒廃し、兵士たちは考えることを止め生活は貧しくなったッ!この間、“夜のきのこ”きのこ軍は一体何をやっていたのかッ!
“常勝”たけのこ軍もだ!私たちはァ猛省しないといけない!」

壇上に立つ兵士の熱心な演説に、周りの兵士たちはたまらず拍手と歓声を浴びせた。よく見ると、山の殆どの住民が彼の演説を聞き入っていた。
さらに、群衆の中にはたけのこ軍兵士も多く混ざっていた。どうやらたけのこの里で既に同じ演説を行い、支援者を引き連れきのこの山へ乗り込んできたらしい。


851 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その3:2017/12/31 00:04:41.648 ID:OwfCxvgko
??「貴方達は覚えているかァ!かつて大戦世界には数多の神が存在したことをッ!その中に軍神<アーミーゴッド>という現人神が大戦に居たことをッ!」

群衆の多くはハッとしたように息を呑んだ。じゃがバターも兵士の言葉で、初めて軍神<アーミーゴッド>の存在を思い出した。
あれ程戦場を賑やかした存在のはずなのに、今ではその存在に靄がかかったように思い出せない。じゃがバターは途端に不安になった。
壇上の兵士は戸惑う兵士たちを導くように、力強く演説を続ける。

??「久しく軍神<アーミーゴッド>を忘れていた者も多いだろゥ。それもその筈、奴は大戦をインフレへと引き上げバランスをめちゃくちゃにした暗黒の象徴なのだァ!」

突拍子もない話だ。決して軍神<アーミーゴッド>は目の前の兵士の語るような存在でないはずなのに、他方で話の通りとんでもない大悪党であると確信する思いも持っている。
じゃがバターは自身の相反する思いが交錯していることにたちまち不安が増大された。

??「貴方達はいま知られざる軍神<アーミーゴッド>の正体をきき、混乱しているだろゥ。無理もない、光の象徴 軍神<アーミーゴッド>の姿は奴が捏造して洗脳してつくりあげた存在。
貴方達は必死に抵抗しようと、今まで軍神<アーミーゴッド>の存在を記憶から封印してきたのだ」

おかしな話だが、たしかに辻褄は合うかもしれない。
先ほどと打って変わって優しげに語りかけてくる兵士の言葉が、じゃがバターの葛藤する胸中にストンと落ちた。


852 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2017/12/31 00:06:45.434 ID:OwfCxvgko
??「貴方達は今まで邪悪の化身である軍神<アーミーゴッド>から必死に身を守ってきたのだ。忘れていたのは恥ではない、誇りだ。
そして今、その誇りを勇気へと変える時が来た。軍神<アーミーゴッド>が再び現世に復活したのだァ」

群衆の多くから悲鳴とも取れる叫び声があがった。兵士は両手を群衆に向け落ち着かせる仕草を取った。

??「会議所が軍神<アーミーゴッド>を匿っている。奴を使い、会議所は貴方達を再び洗脳し世界を支配しようとしているゥ」

会議所というフレーズにじゃがバターを含め、全員が息を呑んだ。大戦世界を支える運営所たる会議所は、山里の住民にとって感謝こそすれど批判の的にはできない聖域だったのだ。
そんな群衆の態度を見越し、壇上の兵士は囁くように話を続けた。

??「怖がるゥ気持ちはわかる。だが、これは真実だ。

考えてもみろ、会議所は君たちになにを与えた?

どうして私達の生活はここまで苦しいんだ?それは大戦が開かれないからだ。そもそも大戦はどうして開かれない?

私達の努力不足もある、だがそれ以上に会議所の怠慢が原因だァ…」

嘆きから怒りへ、群衆の表情が一斉に切り変わったのを壇上の兵士は見逃さなかった。畳み掛けるように兵士は声を荒げ力説する。

??「会議所は【意図的に】大戦を開催していない。わざと私達を苦しめているゥ!!

なぜか?

会議所に力を集約させ、私達を奴隷みたいに指図するためだッ!

こんな蛮行を許しておけるのかッ?」

群衆から怒りにも似た声が次々に上がった。明らかに会議所に対する拒絶の声だった。


853 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その5:2017/12/31 00:08:50.144 ID:OwfCxvgko
??「こんな生活に誰がしたッ?誰が悪いんだッ!!」

群衆「会議所だッ!!」

全員は声を揃え、兵士の呼びかけに呼応した。

??「この現状を生み出した諸悪の根源はなんだッ?」

群衆「軍神<アーミーゴッド>だッ!!」

??「軍神<アーミーゴッド>を匿う会議所に、我々はどう立ち向かう?」

群衆「襲撃だッ!!」

耳をつんざくほどの大声で全員は答えた。

??「襲撃だけでいいのか?」

群衆「軍神<アーミーゴッド>を引きずり出して、その場で処刑だ!」

壇上の兵士は満足するように一度うなずき、握りこぶしを振りかざした。

??「民衆よ、チョコと槍を取れ。今こそ両軍の垣根を超え、真の敵へと立ち向かうときだッ!
進めェ!
この日が暮れるまで一人でも多くの賛同者とともに真の自由を取り戻す戦いをするのだッ!」

854 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その6:2017/12/31 00:10:30.168 ID:OwfCxvgko
「戦え!」「進め!」「根絶やしだ!」

群衆は鼻息荒く、壇上から下りた兵士を先頭に輪はうねりとなり、会議所まで行進を始めた。
興奮したじゃがバターもその場で鞄を放り出し、神父の格好をした兵士から支給されたチョコ剣を手に取り輪に加わった。
洗脳されたじゃがバターの耳に、微かに他の兵士の声も聞こえてきていたがもう彼の理性には届かなかった。

山本「我々が信じていた神は死んだ!今こそ民衆よ!
疫病神・軍神<アーミーゴッド>を打ち倒し真の平和を取り戻せッ!
日暮れまでに少しでも多くの同志をかき集め会議所へ討ち入りだッ!
この【きのこ軍 真参謀 B’L様】が我々をお救いなされる!
心配は無用だ!進め!進め!進め!」

B’L「終わりだ、軍神<アーミーゴッド>ォ」

先頭に居たB’Lは卑しい笑みを隠しきれないように口角を釣り上げ、勝利を確信したように歩を進めた。


855 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その6:2017/12/31 00:10:51.035 ID:OwfCxvgko
じゃあ来週から最終決戦ぽいのはじまりまーす。良いお年を

856 名前:社長:2017/12/31 00:12:53.502 ID:MfcE4qxs0
こわいよお

857 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/02 03:26:44.030 ID:xXkcYgXko
warsまとめ
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%a4%de%a4%c8%a4%e1

近々更新を再開できる見込みなので、まとめてみました。

858 名前:791:2020/02/03 16:31:05.103 ID:vT6dWXqIo
>>857
まとめお疲れさまです!
予言の解説とか内容改めて面白かった!続きが楽しみ

859 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 11:37:48.174 ID:xXkcYgXko
本当にお久しぶりです。というわけでさっさと更新していきます。
信じられないぐらい長いのでこれまでの簡単なあらすじは>>757-759>>857のwikiを見るといいんじゃないかな。ここからも結構長いので飽きたら寝ましょう。

860 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その1:2020/02/10 11:42:48.025 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

オニロの言葉で改めて一致団結した会議所では、DBを偵察しに出かけた山本が未だに戻らないことに対する対応策とDBの今後の行動に対する検討をしていた。

791「山本さんはあの最低な乙牌教の教祖ということもあって、煩悩に人一倍に弱い。洗脳されていると考えたほうが自然じゃないかな?」

筍魂「あの山本さんがDBに洗脳されているなんて!…ありえるな」

抹茶「DBの目的は大戦世界の“負のオーラ”を集めて自身を強大にすることですよね。そのためにスクリプトを使い過去大戦の歴史を改変していたけど、それもできない」

オニロ「だから現代に留まるしかないDBは、いま”負のオーラ“集めをするしかない。そうすると各地で厭戦感情を高める行動や暴動を起こすか…」

――さもなくば、DBと対極の位置にいる“正のオーラ”を持つ軍神<アーミーゴッド>を破壊して人々を絶望させるか。

皆の混乱を抑えるため、オニロは敢えて口には出さなかったがDBの真の狙いは軍神<アーミーゴッド>の消滅であることを軍神の二人は本能的に理解していた。


861 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その2:2020/02/10 11:44:29.559 ID:xXkcYgXko
そして開いた口をぎゅっと結び、オニロは横にいるアイムをチラリと見やった。

互いの性格は真反対、さらに最初は彼から”自分のような甘ちゃんなど大嫌い“と明言され、オニロ自身も彼の傍若無人な態度に何度も嫌気がさしてきた。
それ程までに真逆だった二人が実は同じ一人の人物と―正確には神だが―わかった瞬間に、オニロは隣りにいたアイムがまるで実の兄弟なように懐かしくなり、不可思議な事態にもすぐに腑に落ちたのだ。

オニロが持つ慈愛、優柔不断さとアイムが持つ冷徹さと自信過剰は全て同じ軍神<アーミーゴッド>が持つ個性が分裂したもので、
それぞれの個性の強さに大小の違いはあれ、オニロから見たもうひとりの片割れを兄弟のように愛おしく思う気持ちが強まった。

アイムは周りの兵士たちと会議所の今後の対応について話している最中だった。アイムも横目でチラリとオニロを見て視線があったのが気恥ずかしかったのか、すぐにふいと視線を外した。
そんな様子が可笑しく、オニロは結んでいた口元を緩め柔らかに笑った。


862 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その3:2020/02/10 11:47:42.700 ID:xXkcYgXko

皆がオニロの言葉に鼓舞され士気を高めていた中、きのこ軍兵士¢は周りから相反するように円卓テーブルの端で独り震えていた。
自らの行いを独り悔い、それでも皆と同じような希望に足を踏み出せずにいる自らの意志の薄弱さに心のなかで泣いていたのだ。

  集計班『とびきり邪悪な怪物をつくっていただけませんか。それを会議所で討伐するんですよ、どうですか楽しいと思いません?』

若かりし頃の¢は当時の集計班の言葉にしたがい、圧縮装置で負のオーラを集め邪悪な怪物DBをつくりあげたが、その事実を知る者は実は殆どいない。
¢の発明品の中でも自我を持ち想定外の動きを頻発するDBはとりわけ”優秀“だった。
会議所の古参としてよりも開発者としての矜持を忘れられなかった¢は、K.N.C28年での初の討伐戦で討伐予定だったDBを秘密裏に解放し世に解き放った。
¢は悩み苦しんでいる。DBの生みの親である自身が皆を苦しめているという事態に、それを公表できない心の弱さに、そして――

アイム「¢さん。少しだけ時間いいか?」

本来であれば気がつける筈のアイムの気配にも気づけないほど、歴戦のエース¢は周りへの罪悪感と自らのDBに対する愛憎が入り混じり極限にまで追い込まれていた。

アイム「会議所の行動についてあんたの確認を取りたかった。加古川さんとも話していたが山本さんの野郎は十中八九DBに捕まっている。
罠も考慮し市井の様子を探りに何人か偵察に行かせてもいいよな?」

¢「ぼくはそれで異論ないんよ…」

目を合わせず¢はポツリとつぶやいた。自らの意思など気にせず続けてくれと言わんばかりの弱々しさだった。

アイムはそんな彼の様子を数秒ほど見ていたが――

アイム「¢さん。いままで悪かった」

突然¢に頭を下げた。¢は吃驚して顔を上げた。

863 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その4:2020/02/10 11:49:45.099 ID:xXkcYgXko

¢「ど、どうしたんよいきなり」

アイム「オレはあんたを疑っていた。DBの一味なんじゃないかと思っていた」

¢「…」

アイム「でもそれは誤りだった。あんたはあんたなりの信念で動いていたんだな。それを理解できなかった、だから謝る。ごめん」

軍神<アーミーゴッド>の頃の記憶が戻り、¢が葛藤していた様子も気がついたのかもしれない。アイムの真っ直ぐな気持ちに圧され、¢も本音で返さざるをえなかった。

¢「信念なんてそんな大層なものじゃない。俺は弱い兵士なんだ」

アイム「弱さと強さは両立する。
確かにあんたの言うように固執する心は周りが見えなくなり弱くなるかもしれない。
でも、それがあんたを強くしている原動力でもあるんだ。少なくともオレは¢さんの強さを知っている」

アイムは頭を上げた。キザな悪戯っ子のように口元をつりあげて笑っている。

864 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その5:2020/02/10 11:50:57.219 ID:xXkcYgXko
アイム「気持ちを圧し殺すんじゃない。”認める“んだ。そのうえで何が正しいか、その時々で判断すればいい。オレはそう学んだ」

¢「…それは軍神<アーミーゴッド>としてか、それともアイム自身の意見か?」

アイム「前者さ…と言いたいところだが、そんな御高説たれるほどできた兵士じゃないよ、オレは。いまのはどちらかというと後者からの意見さ」

アイムは背後にいるオニロと筍魂をチラリと見やり、視線を再び¢に戻した。

¢「社長のときと同じで兵士を立ち直らせるのがうまいんよ、アイムは。さすがは軍神<アーミーゴッド>の化身といったところか」

アイム「暗いところでウジウジしてないで¢さんもこいよ。オレも一人のほうが好きだが、たけのこ軍のやつらとバカをやるのも、まあたまにはわるくない」

アイムはすっと¢に手を差し伸べた。¢から見てもアイムは変わったと思う。本来の性格はそのままに、兵士たちを導いていく力が目に見えて増した実感がある。
軍神<アーミーゴッド>のオーラが戻っただけなく、これまでの経験がアイムをここまで強くしたのだ。

― これがアイムの言う乗り越えた力か。

自分もいつか乗り越えることができるだろうか。
未だ不安を残したまま前進をしようと、¢がアイムの手をつかみかけた正にその瞬間、突然、最終決戦の合図は告げられた。
編纂室の扉が勢いよく放たれ、ビギナーが息も絶え絶えながら叫んだ。

ビギナー「大変だッ!!!会議所の周りを大勢のデモ隊が取り囲んでいるッ!軍神<アーミーゴッド>を出せと民衆が血眼になって会議所に押し寄せてきているぞッ!!」


865 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その1:2020/02/10 11:52:28.133 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 wiki図書館】

普段は静寂を保っているwiki図書館にもデモ隊の騒動は伝わってきた。
地上に戻ってきたアイムとオニロたちを地上兵士たちが待ち構えていた。

抹茶「これはいったい何事ですかッ!?」

ゴダン「ふと外が騒がしいと思って会議所から覗いてみたら、きのこの山とたけのこの里の方から大量の住民がこちらに向かってくるのが見えて…」

埼玉「慌てて会議所の門を閉めたんだたまッ!でもそれもいつまで持つか…」

図書館から外の様子を窺い知ることはできないが、取り囲んでいるデモ隊はおそらくきのこの山とたけのこの里のほぼ全住民ではないかと、埼玉は付け加えた。

参謀「こちらから偵察を送る手間が省けたな。デモ隊の要望はなんや?」

「会議所は軍神<アーミーゴッド>を匿っているッ!俺たちの生活をめちゃくちゃにした軍神<アーミーゴッド>を出せッ!!」

拡声器か魔法で増大された怒りの声がwiki図書館にも届いた。


866 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その2:2020/02/10 11:54:54.135 ID:xXkcYgXko
791「軍神<アーミーゴッド>を標的にしたデモとはこのタイミングで不自然だよね」

¢「そもそもぼくたちも含めてみんな軍神<アーミーゴッド>のことを忘れていたのに、突然軍神<アーミーゴッド>のデモを起こすなんておかしいんよ」

社長「それは一理ありますね。」

オニロ「DBの仕業ということだね」

誰もが疑念を抱いていた言葉をオニロが最初に口にした。

アイム「DBの洗脳能力を使い、山本さんや黒砂糖さんに加えて全世界の住民を巻き込んだというわけか」

抹茶「全世界…今までとは規模が違いすぎる。これがDBの本気なのか」


867 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その3:2020/02/10 11:56:11.262 ID:xXkcYgXko

抹茶の言葉に全員が言葉を飲んだ。これまで数人単位での洗脳が瞬く間に数千、数万倍ベースで一般兵士にされDB勢力になったのだ。予備兵の会議所兵士たちをあわせても兵力の差は歴然だった。
そんな皆の不安を他所に、アイムは気にすること無いとばかりにポンと一度手を叩いた。

アイム「怯えることはないよ抹茶さん。ヤツもそれだけ本気ということだけど、その分力は使っている。あいつは自分で集めた負のオーラを消耗することで洗脳しているんだ」

オニロ「ということは、今回の洗脳はだいぶDB自身を弱体化させているんだ。正にこの戦いに賭けているというわけだね」

アイムの言葉にオニロが補足して付け加えた。

抹茶「なるほど。逆にDBも追い詰められているということですね。なんか勇気わいてきた…かも?」

¢「ただ依然として兵力の差は圧倒的なんよ。会議所で籠城しても勝ち目があるかどうか…」

オニロ「その話だけど、ボクとアイムにいい案がある。そうだよねアイム?」

オニロの言葉にアイムは深く頷いた。

アイム「¢さん、頼みがある」

アイムとオニロは¢に向き直り深々と頭を下げた。


868 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その4:2020/02/10 11:57:35.694 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 地下室】

薄暗い地下室でぼうと光る圧縮装置の前で、アイムとオニロは決意に満ちた表情で地下から上がってきた会議所兵士たちと相対していた。

¢「本当にいいんだな?」

アイム「ああ、頼む」

オニロ「DBに勝つためにはこれしかないよ」

― オレたちを軍神<アーミーゴッド>に戻してほしい。

アイムの頼みは周りを大いに驚愕させた。
DBが負のオーラを結集させ過去最悪の力を手に入れているとするならば、正のオーラを纏う軍神<アーミーゴッド>で対抗し、民衆の目を覚ますことができれば形勢は一気に逆転する。
アイムとオニロの“欠けたピース”のままではDBとの完全決戦に挑むのはどうしても不完全なのだ。

ただしDBに扇動されている民衆は軍神<アーミーゴッド>に対し強い敵意を抱いているため、ひと度軍神<アーミーゴッド>が民衆の前に表れれば標的にされ何が起きるかわからない。
圧縮装置での軍神<アーミーゴッド>の復帰はDB討伐戦を会議所勝利の終結に導くか、さもなくば歴史がDBの手に落ちるか究極の二択を迫られる危険な賭けでもあった。


869 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その5:2020/02/10 11:59:38.206 ID:xXkcYgXko
¢は一瞬、逡巡した後に装置のボタンを一度だけ押した。
圧縮装置がおもむろに機械音を発し始めたと同時に、二人の身体が白く光り始めた。

抹茶「もう二人には会えないんですか?」

アイム「バカだな抹茶さん。姿形は変わったとしても心は同じ、オレとオニロ。生きている」

アイムはそう言って、自らの胸を拳で二度叩いた。

オニロ「ボクとアイムがご迷惑をおかけしました、これからは軍神として皆さんを導きます」

アイム「おいオレを巻き込むんじゃねえ」

二人の変わらない掛け合いに周りの兵士たちからは思わず笑みがこぼれた。当人たちも軽口を言い合いながら互いに顔を見合わせた。
当初は誰にも馴染まず一匹狼を貫いた冷静沈着なアイムと、柔和ながら芯の強さを秘め歴史家としての才能を開花させた温厚で直情的なオニロ。
性格が真反対なきのたけの“希望の星”は、軍神<アーミーゴッド>の性格を分け与えられた“欠けたピース”ながら、それぞれが会議所で成長しともに師を持ち世界を大いに盛り上げた。


オニロは、窮地に追い込まれながらも不思議と心地の良い気持ちに、目を瞑りその時を待った。
アイムは、来る最後の戦いへの興奮と早る気持ちを抑えるために、目を瞑りその時を待った。




              そして、救世主が現れた。




870 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その5:2020/02/10 12:01:23.104 ID:xXkcYgXko
まばゆい光が徐々に消え去り、アイムとオニロが立っていた場に一人の長身の兵士が現れた。
黒を貴重としたマントを羽織り、両軍服のモチーフカラーをあしらった専用の軍服はシワひとつなく清潔感を与える。
幼さの残る顔立ちの割に立ち振舞いに威厳があり、穏やかながら人を貫かんとする意志の強い目はアイムとオニロの名残を感じさせる。
紛れもない軍神<アーミーゴッド>、その兵士だった。

軍神「皆、待たせてすまなかった」

軍神<アーミーゴッド>の第一声に、止まっていた時間が動き出したように会議所兵士たちは慌ててピンと背を張った。

軍神「時間がもうない。すぐに我は外に出るぞ、付いてこい」

優しげな声色の内に秘めた強烈な力強さは、会議所兵士たちを鼓舞するには十二分だった。


871 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その7:2020/02/10 12:02:52.768 ID:xXkcYgXko
参謀「よっしゃあ!いくぞッ!ほぼ全ての会議所兵士を会議所防衛に投入する。会議所への侵入を試みるデモ隊を軍神が食い止める。そして、デモ隊の中心にいると思われるDBを発見し討伐するッ!
ただ、DBを含めその周りにいる黒砂糖さんと山本さんは特に強力や。個別に対応する兵士をつけたほうがいい」

軍神<アーミーゴッド>の声に反応したように、討伐隊隊長の参謀は矢継ぎ早に指示を出し皆に意見を仰いだ。会議所が徐々に団結していく。

791「黒砂糖さんの対応は私に任せてもらってもいいかな?前回、魔法の使いすぎで先に寝て負けちゃったから今回はおまけで抹茶も引き連れていくよ」

抹茶「えっ」

指名された抹茶はただでさえ緑がかった顔色をさらに真緑にした。

筍魂「山本さんは俺で引き受けるゾ」

参謀「決まりやな。黒砂糖さんには791さんと抹茶で、山本さんには筍魂が相対しDBから引き離す。常人が近づけない対DBには竹内さんの存在が必要不可欠や。
まだ地下で茶でも飲んでるだろうから連れてきてくれ。負けられない戦いになるなッ!」

ビギナー「報告。いま入った情報によると、DBはきのこ軍 真参謀 B’Lと、参謀に似た名前を騙ってデモ隊の中に化けているらしい」

参謀「訂正じゃ…この戦い、死んでも負けるんじゃねえぞッ!!DBの野郎を討伐やッ!!!」

威勢のいい声とともに湿った地下は途端に大戦場のような熱気を帯びた。
最後の戦いの火蓋がここに切って落とされた。


872 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 12:04:31.684 ID:xXkcYgXko
軍神の設定は>>835で社長が描いてくれたものを逆輸入しました。マジサンクスです。

873 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その1:2020/02/10 12:06:06.195 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所】

「会議所の中に入れろッ!どうなっているんだッ!」

「俺たちの生活を返せッ会議所ッ!!」

「軍神<アーミーゴッド>を出せッ!!」

会議所を取り巻くとてつもない規模の民衆からの声は広がり重なりながらも反射し増幅された怨嗟の地鳴りとなり会議所に届いていた。
デモ隊から必死に門を抑えている会議所の地上兵士たちは、その地鳴りに耐えるには限界だった。

そのデモ隊たる民衆の中心に首謀者は居た。

黒砂糖「DB様…おっと失礼しました、真参謀 B’L殿。この様子ならばァ、会議所への突入も時間の問題と思われます」

きのこ軍兵士に化けたDBに、黒砂糖はそっと耳打ちした。

DB「それは僥倖ゥ。籠城などさせぬ、民衆が黙ってはおらぬからなァ!ゲゲッゲゲハハハッ」

端正な顔立ちからは似つかない下卑た笑いは民衆の声にすぐかき消された。

山本「ほぼ全住民が参加しておりますゥ、いかに籠城しようといつか門は破られましょう」

同じくDBの傍に立つ山本も乙牌を見つけた時と同じように眼光をギラつかせ嗤っている。


874 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その2:2020/02/10 12:08:04.412 ID:xXkcYgXko
DBは勝利の前に自らの人生を振り返った。
彼はこの世界に生まれ落ちてから、兵士の士気向上のためにと幾多にも会議所に私利私欲目的で戦いと捕縛を続けられた。
大戦世界から戦の士気が無くなるや否や幽閉され長い年月を会議所の地下で過ごすこととなった。本来、“負のオーラ”はDBにとって何よりの馳走なのにそれを喰らうことのできない苛立ち、
喰らっても暴れることのできないもどかしさが会議所への恨みをより一層強くした。

そして時がきたら、“計画通り”に隣りにいたスクリプトを引き連れ檻を脱出し、“謎の声”の指示通りに時限の境界を用いた歴史改変を決行した。
心地よく大戦世界に厭戦気分が広がり、“希望-心の本-”を喰らいDBは生き繋いだ。しかし、会議所にすぐ作戦を看破され相棒だったスクリプトは姿を消し、DB自身も窮地に追い込まれた。
それでも策を巡らせ過去に巻いた種を回収するように、黒砂糖を洗脳しアイムとオニロをあと一歩まで追い詰めた。
竹内というイレギュラーな存在により軍神破壊はならなかったが、再突入間近でいま正に会議所の灯は消えようとしている。

目に見えない負のオーラの増大を実感し、食べられもしないのにDBは馳走をくらうように空に向かって大口をあけた。
DBの力は過去最高にみなぎっていた。

山本「DB様ッ!ご覧くださいッ!!」

悦に浸っていたDBを引き戻したのは、山本の叫び声に加え驚嘆した民衆の息を呑む声だった。


875 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その3:2020/02/10 12:10:05.446 ID:xXkcYgXko
軍神が会議所のバルコニーに立ち眼下の民衆と相対す形となると、あれ程煩かった民衆は水を打ったように静まり返った。
軍神がそれ程までに威厳を放っていたためである。

軍神「諸君、我は軍神<アーミーゴッド>だ。君たちが待ち焦がれた軍神<アーミーゴッド>そのものだ」

静かに語り始めた軍神の声は不思議とよく通った。

軍神「今回のこのような事態に一重に胸を痛めている。現状を鑑み、非常の措置をもって時局の収拾にあたるべく、これより善良なる両軍兵士に告ぐ」

誰も声を発すことができなかった。軍神の一挙手一投足にDBも含めた全員が釘付けとなった。

軍神「一刻も早くこの集会を解散せよ。映えあるきのこたけのこ大戦世界に暮らす勇猛果敢な兵士諸君は某かの不幸を願うためにその力を使うのではなく、大戦場で戦ってこそのものである」

「ふ、ふざけるなッ!その大戦を開かないのはお前達だろうがッ!ま、貧しい暮らしに喘ぐ俺たちの気持ちがわかるのかッ!」

誰もが口を開けない中、民衆の最前列にいた一人の兵士が勇敢にも軍神<アーミーゴッド>に意見した。
途端に啖呵を切ったように同調勢力が広がり、再び会議所前は怒りの喧騒に包まれた。

「そうだそうだッ!」

「軍神<アーミーゴッド>が意図的に大戦を延期させているに違いないッ!やっちまえッ!」

「軍神<アーミーゴッド>と会議所をただで許しておくなッ!処刑だッ!」

軍神「静まれいッ!!!」

一通り無言で聴衆の声を聴いていた軍神の一喝は、再び民衆を瞬時に黙らせた。


876 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2020/02/10 12:13:28.419 ID:xXkcYgXko
最初に声を上げた兵士に軍神が鋭い目線を送り、顔を向けた。見つめられた兵士は途端に威勢さを失い怯えるように肩を震わせた。
すると、瞬時に軍神はニカッと微笑った。

軍神「剛毅果断な兵士だッ!素晴らしい、君のような兵士が大戦で誰よりも活躍するんだッ!」

すぐにキッと顔を上げ、拳を振り上げ軍神は民衆に語りかけた。

軍神「会議所とは大戦世界を生きながらえさせる生命の拍動そのものであるッ!兵士諸君が大戦を開催したいと強く願えば、会議所は直ちに君たちの願いを叶えるだろう」

軍神「会議所は兵士諸君の力と意思と情熱で成り立っているッ!時局を読み、何より君たちの意慾を組み大戦開催の判断を行っている」

軍神「なぜ大戦が開催されていないか。意図的にか?はたまた会議所の権力を集中させるため焦らしているのか?ふざけるのもいい加減にしろッ!全てが馬鹿げた戯言だッ!!」

軍神の叫びに、徐々に民衆がざわつき始めた。しかしそれは先程のような怨嗟の声ではなく、ただただ戸惑い迷う民衆の声だった。

軍神「果たしてどれ程大戦復帰を願う者がいたか。答えは我自身が示しているッ!皆が両軍への怒りを忘れ、仮初の平穏を望み戦いから目を背けたことで軍神<アーミーゴッド>は一度大戦世界から消滅したッ!
それが諸君らの大戦への取り組みの意志表示だッ!それが答えだッ!!」

話を続けながら軍神は、民衆たちの失われた心の本の頁<士気>が漠然と眼前に広がりつつあるように見えた。


877 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2020/02/10 12:16:05.078 ID:xXkcYgXko
軍神「だが、我がいまここに存在しているという事実が、また別の解を示している。善良なる両軍兵士が如何のような形であれ大戦復活を切に望んでいるッ!
両軍共栄の楽を共にするため、軍神<アーミーゴッド>は此処に復活したッ!会議所は必ずや諸君らの声を聞き行動に起こすだろう」

民衆の上空でキラキラと薄い膜のように漂っていた本の頁<士気>が、徐々に形を帯びてくる。

軍神「君たちの内なる魂に、情熱の灯を、消えかけた情熱の灯を再び灯すのだッ!大戦世界の心臓部として拍動を続けんとあがく会議所に、君たちが血となり後押しをするのだッ!」

軍神の叫びに、その本の頁<士気>は持ち主に還っていくように―

軍神「感じろッ!大戦で得たあの高揚感と充足感をッ!」

一人、また一人へ―

軍神「目を覚ませッ!勇猛果敢なきのこ軍兵士よッ!百戦錬磨のたけのこ軍兵士よッ!」

その数は瞬く間に広がり―

軍神「思い出せッ!185回にも続く大戦の偉大なる軌跡をッ!!」

パァンと空一面に広がった本の頁<士気>が弾ける音を軍神だけが聴いた。次の瞬間、洗脳が解け本の頁<士気>が戻った兵士たちは一斉にその場で倒れていった。
その数は民衆の大多数を占めた。
軍神が民衆の士気を急激に取り戻した瞬間だった。



その光景を誰よりも許せない兵士がいた。

DB「アアアアアアァァァァアミイイイイイイイイィィィゴッドオオオオオオオオオォォォォッッッ!!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

878 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その6:2020/02/10 12:18:37.956 ID:xXkcYgXko
DBは力を振り絞り禍々しいオーラを発散した。瞬く間に倒れていた兵士たちの中から選りすぐりの者がカクンと人形のように起き上がった。

DB「黒飴くゥゥゥゥん。プランを変更だァ。俺様に相応しい最高の“舞台”に、あの哀れな英雄<ヒーロー>を招待しろォ。
二度仕留め損ねたが、最後に悪は勝つということを歴史に魅せつけてやろゥ」

黒砂糖「御意」

DBと幹部の黒砂糖と山本、そして数は減ったにせよ未だ洗脳された多くの兵士を引き連れ、黒い渦たるDB集団は会議所の正門へ向かい愚直に走り出した。

軍神「『ポイフルバースト』」

軍神の突き出した利き手から幾多の光弾が発せられ、DB隊に向かって勢いよく飛んでいった。オニロとアイムの力が合わさり、光弾は烈火の如く連射された。

山本「いくぞッ神父黒飴ッ!」

黒砂糖「任せろッ!」

集団から山本と黒砂糖が飛び出し光弾に相対した。
山本は自然な体捌きと自らの拳で次々と光弾をはたき落とし、黒砂糖は対抗呪文で次々と軍神のポイフルバーストを撃ち落とした。
熟練の兵士二人が相対すことで軍神の力と互角になり、ポイフルバーストを打ち消したのだった。

DB「悪意に満ちた悪がどれ程強大かということを、その身をもって教えてやるよォォッ!」

軍神「敵が来るぞッ!全員構えろッ!」

咆哮と悪意を撒き散らしながら、DBたちは会議所の正門に激突し破壊した。


879 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 12:20:18.086 ID:xXkcYgXko
ここから最終決戦。

880 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その1:2020/02/10 12:22:24.732 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所】

雪崩のようにDB隊は会議所の中に飛び込んだものの、巨大な正門を抜けた先は誰もおらずもぬけの殻だった。

加古川「やれッ!」

DB隊全員が入り込んだと同時に正門は閉ざされDB隊は閉じ込められた。
そして、加古川の命令が下されると正門の見張り塔に隠れていた兵士たちが次々と姿を現し、矢を放った。

DB「チッ!各自散開して軍神<アーミーゴッド>を討ち取れェ!」

黒砂糖「DB様ッ!御声を出してはバレてしまいますッ!」

中心で号令を発した兵士をDBと発見した会議所兵士の攻撃は激しさを増した。
すぐに散り散りとなったDB隊たちの中で、DBと思わしき兵士は黒砂糖に護衛されながら中庭に向かって走り去っていった。

791「黒砂糖とおそらくDBは中庭に移動ッ!行くよ二人ともッ!」

見張り塔から見ていた抹茶と竹内は頷き、二人の後を追った。


881 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その2:2020/02/10 12:25:03.786 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大廊下】

軍神はバルコニーから移動し大廊下にさしかかったところで二人の兵士に出くわした。

じゃがバター「いたなァ軍神<アーミーゴッド>」

リコーズ「お前の首をとりDBォ様に届けるのだ」

過去、会議所に参加し歴戦の兵士に数えられたきのこ軍 じゃがバターと、たけのこ軍 リコーズの二人が軍神に向かい舌なめずりするように口角をつりあげ嗤った。

軍神「歴戦の過去兵士も操られているとは、DBの力は存外強すぎるな…」

軍神の正のオーラを持ってもなお二人は動じてないことから、DBの洗脳の強さに二人の地力の強さがあわさっていることが伺えた。
軍神はマントをひらりとはためかせた。

リコーズ「いくぞォォォォ」

それが合図になったのか、リコーズは手にもった巨大なバズーカ砲を構えると間髪入れず発射した。

同時に軍神は音もなく姿を消し、目にも留まらぬ速さで次の瞬間、リコーズの背後に現れた。

リコーズ「なんだとッ…」

軍神「戦闘術・魂『きあいパンチ』」

リコーズの鳩尾をトンと拳で一度軽く突くと、リコーズは意識を失いはたとその場に倒れた。

882 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その3:2020/02/10 12:26:34.273 ID:xXkcYgXko
じゃがバター「なんという力だァ…」

過去に撃破王に輝いたことのあるリコーズがものの数秒で倒れたことに、じゃがバターは恐怖で逃げ出したくなったが既のところで耐えた。
この逆境を自らの力に変えるのが歴戦の会議所兵士と一般兵士の違いなのだ。

じゃがバター「次は俺だ、うおおォ!!!」

じゃがバターは手に持ったククリ刀で軍神に斬りかかった。軍神もすぐさま抜刀し応じる。
刀の擦れた金属音が通路に響き渡った。ジリジリとじゃがバターが押し、軍神は冷静に少し後退した。
後退する中でカチッと軍神の足元でなにか音を発した。シメたとばかりに、じゃがバターはすぐに半歩後ろへ跳んだ。

じゃがバター「かかったなッ!俺を突撃兵だと思ったか?」

じゃがバターは用意した起動スイッチを押すと、軍神の足元にある地雷爆弾が起動し轟音とともに通路の壁を破壊するほど激しい爆発を引き起こした。

パラパラと壁が四散し崩れ落ちる。粉塵でじゃがバターの眼前は曇ったが、今の爆発に軍神は巻き込まれたことは確実と勝利を疑わなかった。


883 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その4:2020/02/10 12:28:41.768 ID:xXkcYgXko
じゃがバター「現役時代もこの爆撃兵スタイルで撃破を量産した。戦から遠のいた軍神<アーミーゴッド>がこの奇襲に耐えられるはずがァ―」

じゃがバターのは絶句した。煙が晴れ無傷で立っている軍神を視認したからだ。

軍神は抜身の刀で呆気にとられたじゃがバターに切りかかると、彼が回避行動を取る前に一瞬で斬り伏せた。

軍神「戦から遠のいたのはどちらだろうな?」

悲鳴を上げる間もなくじゃがバターは地面に突っ伏し倒れた。
ホワイトチョコでコーティングされた刀を鞘に納めると、早足で軍神は歩みを再開した。

すると、すぐに二人の兵士が目の前の通路から走ってきた。その出で立ちから会議所兵士のようだった。

「報告いたします軍神<アーミーゴッド>様ッ!」

「DBらしき兵士を見かけました!wiki図書館の隠し階段を地下に下っていた姿が目撃されていますッ!案内いたしますッ!」

軍神「…承知した」

若干の不可思議さを覚えながらも神妙に軍神は頷いた。


884 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その5:2020/02/10 12:31:37.388 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

黒砂糖「はァはァ…しつこいぞ手前らッ!」

DBと思わしききのこ軍兵士を庇いながら追手から逃げていた黒砂糖だが、いよいよ諦めたのか中庭に付くと見えない追手を罵った。
それに呼応するように791、抹茶に加え竹内が姿を現した。

791「黒砂糖さんにはこの間の貸しがあるしね」

先日の死闘では黒砂糖との戦いで大魔法を誘発され魔力切れで先に791の体力が尽きてしまったのだ。

抹茶「黒砂糖さん、目を覚ましてください…私は同期のあなたと戦いたくありません」

黒砂糖「俺の名前はァ神父 黒飴。抹茶ァ、また裏切られに来たとはお前も哀れなやつだ」

黒砂糖は挑発的に語りかけると途端に黒砂糖とDBの間に魔法の防護壁を作り上げた。


885 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その6:2020/02/10 12:34:20.695 ID:xXkcYgXko

黒砂糖「今ですDB様ッ!お逃げくださいィィッ!」

竹内「ホッホッホッ。逃さぬぞ」

占めたとばかりに黒砂糖の後ろに居たDBが逃げ出すと、瞬時に反応したのは竹内だった。

戦いの中で老兵は老体を感じさぬ機敏な動きで瞬時に走り出しDBと思わしき兵士の後を追い、姿を消した。

抹茶「僕たちも竹内さんの後を―」

黒砂糖「おっと逃さんぞ!」

三人の周りに巨大な火壁が地面から伸び、ぐるりと彼らを囲むように覆いつくした。黒砂糖はその身を挺し、二人の足止めに成功したのだ。
黒砂糖と791、抹茶は相対すこととなった。

791「抹茶、気をつけろ。黒砂糖さんは、元々は超・優秀な工作兵(補助魔法タイプ)だけど、突撃兵の心得もある厄介な兵士だよッ!」

抹茶「黒砂糖さんの強さを僕は誰よりも知っています…心してかかりましょう」

黒砂糖「敵に不足なし。久々に血湧くなァ!!」

黒衣を身に纏った黒砂糖はただ強者に出会った喜びからか、肩を震わせ感激に打ち震えた。


886 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その7:2020/02/10 12:35:43.220 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 教練棟】

山本は軍神を探しに一人教練棟に入ると、そこには先約が居た。

筍魂「よお、元気にしてたか」

椅子に腰掛けていた筍魂の存在に気がつくと、山本は露骨に顔をしかめた。

山本「強敵にィ会いたくはなかったが…致し方ない。やるかッ」

両の拳を上げ、山本は静かにファイティングポーズを取った。

筍魂「強敵と認められるとは嬉しいねぇ鬼教官。共に同じ弟子を持った師として負けられんなあ」

ゆらりと気だるそうに筍魂は立ち上がると瞬時に腰を低くし跳んだ。

山本「させるかッ!」

対して山本は自らの拳で目の前の机を砕き、障害を作った。
ここに二人の激闘が始まった。


887 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その8:2020/02/10 12:38:11.188 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

「こちらでございます軍神<アーミーゴッド>様ッ!」

軍神「…ご苦労」

二人の兵士に案内を受け軍神が大戦年表編纂室に到着すると、一人の兵士が興味深げに周囲を見渡していた。
その傍には編纂室で待機していた斑虎ときのきのが倒れていた。

??「大戦年表編纂室とはここかァ。随分といい部屋を誂えたものだなァ会議所は」

軍神「汚い手で書物に触るな、DB<ダイヴォー>」

DBは手に持った歴史書を閉じると無造作に放り捨てた。そして、指をパチンと鳴らすと軍神を案内した二人の兵士たる幻影は跡形もなく消え去った。


888 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その9:2020/02/10 12:39:23.700 ID:xXkcYgXko

DB「先程の蛮行は見事だったなァ軍神<アーミーゴッド>。お陰で俺様の兵隊が大分減らされてしまった」

見事だ、と兵士の変装を解いたDBは、持ち前の下卑た笑いで軍神と相対した。

軍神「貴様が此処にいるということは分かっていた」

DB「のこのこ一人で来てくれるとはありがたい。黒飴くんも“予定通り”戦い始めたはずだ。事態はここまで俺様の思ったどおりに進んでいる」

DBは途端に笑みを消し般若のような形相になった。

DB「後は貴様を消すだけだ、軍神<アーミーゴッド>ォ!!」

軍神「それはこちらの台詞だ。これで最後の戦いにしよう」


両雄が、激突した。



889 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その9:2020/02/10 12:41:19.158 ID:xXkcYgXko
黒砂糖 VS 791、抹茶
山本 VS 筍魂
DB VS 軍神<アーミーゴッド>

はてさて結果は?

890 名前:Chapter4.大戦に愛を :2020/02/10 12:42:43.112 ID:xXkcYgXko
少し休憩

891 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その1:2020/02/10 18:36:26.085 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

黒砂糖「作戦は成功した。あとはこちらで時間をかせぐだけだァ」

791「『チョコベビークラスター』」

黒砂糖の上空からチョコ型のクラスター爆弾が襲いかかるも、黒砂糖は巧みな身のこなしで攻撃を避け続ける。

抹茶「くらえっ『出来たてツールV1.40』ッ!!」

未完成品の集計ツールを投げつけるも黒砂糖に叩かれてツールは粉々に砕け散った。

黒砂糖「まだまだァ!こちらから行くぞォ『バーナーショット』ッ!」

791「『スーパーカップバリア』ッ!」

魔法で出した銃火器の火炎放射を791と魔法は防壁で守るも、戦いは黒砂糖の鬼神の如き活躍に劣勢になりつつあった。

肩で息をする二人に対し、黒砂糖はまだまだ余裕ありといった体で肩を回して次の攻撃に備えている。


892 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その2:2020/02/10 18:38:47.935 ID:xXkcYgXko

抹茶「黒砂糖さん…なんて力だ。同期として誇らしい限りだよ」

791「彼の狙いは私のMPを枯らすことだ。抹茶、私の盾になって死んでね」

抹茶「えぇ…」

黒砂糖「喋っている暇があるかなァ!?」

二人の背後の炎壁から火炎玉が飛び出し、既のところで二人は避けた。
続いて間髪入れずに黒砂糖は手に用意した大太刀で二人に斬りかかる。抹茶が791の前に立ち、湯呑みで太刀を防ぎきった。

抹茶「黒砂糖さん、目を覚ましてください。昔はあれほど二人でDBを討伐しようと息巻いていたじゃないですかッ!」

鍔迫り合いの中、抹茶は悲痛な面持ちで黒砂糖に訴えかけた。二人は会議所の同期で軍の垣根を超えた親友だった。
抹茶の悲痛な叫びに黒砂糖の顔は一瞬曇ったが、その後すぐにDB教信者特有の不穏な笑みを戻した。


893 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その3:2020/02/10 18:40:18.243 ID:xXkcYgXko
黒砂糖「『トールディレイ』ッ!」

抹茶の頭上から激しい雷が打ち付ける。避けようとしたがまともに雷を喰らい、抹茶はその場で倒れた。

791「抹茶ッ!」

抹茶「大丈夫ですよ。こんなのかすり傷です…」

腰に携えた携帯ポン酢を飲み干し抹茶は体力を回復した。
黒砂糖は悠然と抹茶を見下ろしている。

791「親友の呼びかけにも応じないどころか騙し討ちなんて、私はちょっと許せないな」

抹茶「待ってください791さん。黒砂糖さんは一瞬ですが迷いを見せました。彼も完全には洗脳にかかっていない、そこが勝機です」

黒砂糖「いくらでも時間はかけていい…あのお方が軍神<アーミーゴッド>を直々に成敗してくれるゥ」


894 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その4:2020/02/10 18:45:51.742 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

同時刻に編纂室でも激戦が繰り広げられていた。

軍神「『アポロソーラ・レイ』ッ!」

軍神の手から放たれた熱光線がDBに向かうもDBはひらりと避けた。熱光線はそのまま奥の書棚にあたり、そのまま熱で溶けてしまった。

軍神「ッ!」

軍神は顔をしかめた。オニロの歴史家としての記憶を軍神は勿論覚えている。
編纂室で過ごした過去を、目の前の宝物を自らの手で無くしてしまった後悔をしてしまった。

DB「どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!こちらからいくぞォォォ!」

DBは高く跳び上がり、自らの毒素で創り上げた手裏剣を投げた。
軍神は抜刀し弾くも、弾かれた手裏剣はその場で四散し毒を撒き散らした。

軍神「ッ!」

顔を伏せながら後退する軍神に、けたたましい笑いを上げながら浮遊したままのDBが追い打ちのように雛あられ形のホーミングミサイルを次々に打ち込んだ。
軍神は疾走る。追尾を振り切られたホーミングミサイルは次々にその場で爆発していく。最初に円卓のテーブルが、続いて書棚が木っ端微塵になっていった。

軍神「くッ!」

皆で額を寄せ合って会議をした空間が、思い出の場所が壊れていく。


895 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その5:2020/02/10 18:51:25.333 ID:xXkcYgXko

軍神「戦闘術・魂『くさむすび』ッ」

DBの周りに巨大な樹木が現れ、伸びた枝葉が彼を捕らえようとするがDBの毒素で彼に辿り着く前に次々と枯れてしまった。

DB「ゲハハハハッ!!どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!随分と精細をかいているな!ええッ!?」

DBは手に持ったでんでん太鼓をけたたましく鳴らし、音波の真空波を繰り出した。
しかしでんでん太鼓の音で逆に幾分か冷静になった軍神は、その攻撃を逆手に取るように真空波に“乗り”、跳躍を利用し空であぐらをかいたDBの眼前まで跳んだ。

DB「なにッ!」

手に持った刀で払い、軍神はDBを地面に叩き落とした。

DB「やるなァ。それでこそ狩り甲斐があるというとものだァ」

DBは地面に打ち付けられ口からチョコを吐き出したが、不敵な笑みは崩さない。
今の軍神は、戦闘術・魂を会得し敵の攻撃をも利用しようとする細かな攻撃型のアイムと、791の教えで魔法使いとしての力量を最高にまで引き伸ばした大味の攻撃型のオニロのどちらの特性も引き継いでいる。
器用な援護兵タイプの完全上位互換である明治兵タイプに昇華し、いまや攻守に隙がないのだ。

いくらDBでも構わない存在にまで会議所が彼の化身を育て上げた。
だがその事実を知ってもなお、DBは自らの勝利を揺るがなく確信していた。

軍神に致命的な弱点があることを知っていたからである。


896 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その6:2020/02/10 18:53:45.597 ID:xXkcYgXko
DBはすくっと立ち上がり、地面に降りた軍神には目もくれず、眼前の書物棚に狙いを定めた。

DB「これから新たな歴史を築き上げる俺様の前に、古い過去の遺産など一切不要ッ!」

幻影の術によりDBは瞬く間に増殖し、一様に書棚に狙いを定め攻撃の準備に移った。

軍神「やめろッ!『ビッグサンダー』」

横方向に放たれた雷撃が幻影のDBたちに直撃し吹っ飛ぶも、みな一様に書棚にぶつかり、ある棚は木っ端微塵に粉砕し、
ある棚は轟音を立てて他の棚を巻き込みながら横倒しになって倒壊していった。

軍神「なんてことだッ!」

明らかに軍神には焦りが見えた。軍神の中にあるオニロの歴史家としての感情が、歴史書と編纂室を守らねばならないという使命感を抱かせ、それが却って彼の行動を大きく制限させていた。

DB「守ってみろォ!守ってみろよォ!」

そうした間にもDBはまた幻影で数を増やし、軍神には目もくれず歴史を破壊し始めた。
爆裂音、書棚の倒壊音、書物の破れる音。
その全てが編纂室の悲鳴に聞こえ、軍神は全てのDBを瞬時に片付けるためその場で跳び状況を確認しようとした。

その行動が大きな悪手だった。


897 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その7:2020/02/10 18:56:26.511 ID:xXkcYgXko
DB「―君は本当に馬鹿だな」

軍神の背後から本物のDBの囁き声が聴こえてきたとき、DBの飛び膝蹴りで彼の身体は既に空中でねじ曲っていた。

軍神「ぐはッ!!」

DB「馬鹿めッ!馬鹿めッ!馬鹿めェッ!!貴様が受け継いだのは何も戦闘力だけじゃないッ!アイムとオニロの不完全な性格、心の弱さも受け継いでいるんだよォォ!!」

次々と空中で幻影のDBが現れて軍神を殴打しタコ殴りにしていく。猛烈な速攻にさしもの軍神も防ぎようがなく、次第にその身は終わりの見えない天井に放られていった。

DB「悪腫『裏切りの妖怪けむり』ッ!」

粘着性のある糸からできた蜘蛛の巣が霧の粒を宿して空中に姿を現し、その中心に軍神は捕らわれた。

DB「ゲハハハッ!再三、俺様との戦いに敗れるとは軍神<アーミーゴッド>の名折れだなァ!?」

軍神「誰が負けたと言った?戦いは終戦まで分からない、大戦の鉄則だろう。長い幽閉で元から弱い知能がさらに低下してしまったのか?」

両の手足ともに蜘蛛の糸にがんじがらめにされ、なお軍神は気落ちすることなく挑発的にDBを上空から憐れんだ。

DBはその言葉に一瞬顔を歪ませたが、すぐに自らの絶対的優位を再確認しニタニタと笑い出した。

DB「この間の地下室では貴様を破壊することに急ぎすぎたから失敗した。だが今回はどうだ。
俺様が用意した最高の舞台だァ。これから行われる貴様の処刑は、演出にも気を使ったんだァ」


898 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その8:2020/02/10 18:58:35.845 ID:xXkcYgXko

得意げに喋り続けるDBを虎視眈々と狙っている者がまだいた。

DB「この場で貴様を処刑しそれを会議所内外にアピールすることで貴様を端とした正のオーラは完全に消滅するッ。
これからは俺様の時代が始まるというわけだァ――なにをするッ!」

軍神「おい、やめろッ!」

未だ部屋に残っていた天高くうねる大戦年表紙が突如揺らめく動きを止め、瞬時にDBに向かったと思うと彼の胴体に蛇のように巻き付きはじめた。
自らの意思でDBを窒息させ暴漢を排除しようとしたのだ。
とてつもない速さで大戦年表はDBの身体に何重にも何重にも巻き付いていく。しかし、今の強大なDBには何ら脅威のない攻撃だった。

DB「グアアアアアアッ!この、小癪なァァァァァァ」

DBは自らの身に貼り付いていた大戦年表紙を真っ二つに引き裂いた。
悲鳴にも似た激しい紙面の破れる音とともに、大戦年表紙は息を引き取るようにその場にハラリと落ちていった。
続くように自動筆記ペン『オリバー』も仇を取らんとする勢いで自らの切っ先をDBに向け突進していったが―

DB「ふんッ小賢しい魔法の器具がッ!!」

いとも容易くDBに振り払われ、オリバーは壁に打ち付けられ静止した。

DB「ゲハハハハハハッ!もう終わりだな軍神<アーミーゴッド>!」

編纂室は大戦場でも見ない程、荒廃の様相を呈していた。
粉砕された家具、倒壊する書棚、燃え盛る炎、そして編纂室の象徴だった大戦年表紙は破られ他の書物に折り重なるようにその身を地に投げていた。


大戦世界の歴史が、終わろうとしていた。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

899 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 18:59:39.101 ID:xXkcYgXko
DB、強い。

900 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その1:2020/02/10 19:01:44.332 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

791「『トッポレールガン』」

抹茶「『おっとっとカイザー』ッ!!」

791が後方から雷の魔法を放ち、間髪入れずに抹茶が接近攻撃をしかけるも慌てることなく黒砂糖はまず抹茶をいなしてから791の魔法を自身の魔法で無力化した。

791「私の魔法まできかないなんて、黒砂糖さんすごいね。本来以上の力を発揮しているねッ」

黒砂糖「791さんと互角で戦えているなんて、後世に誇れるなッ!」

791「フフフ。それは私に勝ってからにしなよ?抹茶、下がってッ!」

791の足元に強大な魔法陣が展開される。

791「『シトラス』ッ!!」

黒砂糖の頭上に幾多ものレモンが降りかかり、大爆発を巻き起こした。
砂埃による嵐が巻き起こり791と抹茶に襲いかかった。

抹茶「791さんの大魔法をくらって生き残る兵士はいないはず…」

791「ハァ…さすがに一回のMPの消費量が激しすぎるなぁ。加減したからまだ生きているとは思うけど、ちょっと目眩がするよ」

砂嵐が晴れると黒砂糖が立っていた場所には巨大なクレーターが空いていた。だが黒砂糖の姿はない。


901 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その2:2020/02/10 19:03:21.972 ID:xXkcYgXko
791「黒砂糖さんがいない…まさか、やりすぎてしまッ――」

瞬間、791の背後の炎の壁からヌッと黒砂糖が姿を現した。

黒砂糖「大魔法使い791、覚悟ッッ!」

791は枯渇気味のMP回復を図っていたため若干の隙が生まれていた。黒砂糖は手にした大太刀で791の背後から奇襲を狙った。その狙いは成功した。
振り返った791が黒砂糖の存在に気づいてもなお、791には次の詠唱までの時間が無く防衛の手段がなかったのである。

抹茶「『完成ツールkinotake total tool Ver0.10』ッ!!」

絶体絶命の窮地を救ったのは咄嗟の抹茶の反応だった。
抹茶の投げた完成集計ツールは黒砂糖の前でパチパチとワタアメのように弾け、黒砂糖は不意をつかれ動きを止めた。

791「『コエダバースト』ッ!」

すぐに詠唱し終えた791が間髪入れずに黒砂糖に向かい攻撃魔法を放った。大量の小枝が矢のように放たれ、まともに全てを受けた黒砂糖は吹っ飛ばされた。

791「助かったよ抹茶。私の奴隷としては申し分ない働きだね」

抹茶「うん、それは喜んでいいのかな?」

黒砂糖が地面に膝を付いた。見ると、黒衣はボロボロになりむき出しになった肌からは血が滴っている。

黒砂糖「魔法の炎壁に身を忍ばせたまではよかったが、シトラスの威力の高さと抹茶の存在が予定外だったな…」

自らの戦いを考察するように、頭を垂れた黒砂糖は悔しげに地面に向かいつぶやいた。


902 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その3:2020/02/10 19:05:29.374 ID:xXkcYgXko

抹茶「黒砂糖さん、いい加減目を覚ましてくださいッ!初代・討伐隊隊長のあなたが、なぜDBの手に落ちたのですかッ!」

黒砂糖「力が欲しかったのさ。その油断が甘さを生みDBに洗脳された」

黒砂糖は顔を上げず淡々と答えた。

抹茶「それが分かっているのならば洗脳は振り払えるはずッ!親友としてのお願いです、正気に戻ってくださいッ!」

791「いや、抹茶。黒砂糖さんはもう正気に戻っている。そうだよね?」

抹茶は驚きの顔で黒砂糖を見た。黒砂糖はなおも顔を上げようとしない。

791「恐らく先程の攻撃かその少し前からもう黒砂糖さんは洗脳を振り払って正気に戻っているよ。オーラで分かる」

黒砂糖は自虐的に嘲笑い、791さんには敵わないなぁ、とつぶやいた。

抹茶「黒砂糖さんッ!今すぐ炎壁の魔法を解いてください。竹内さんがDBと交戦しているから助けに行かないとッ!」

黒砂糖「竹内さん?ああ、竹内さんが追ったDBは偽物だ。俺が具現の魔法で、とある兵士にDBの顔を描いて変装させたんだ。竹内さんの力を恐れたDBの命で彼を遠ざけた。
本物は別の場所で、恐らく軍神<アーミーゴッド>と戦っている」

抹茶「なんですってッ!?」

黒砂糖「…なあ抹茶、791さん。一つ頼みがある。俺はとんでもない大馬鹿野郎だ。会議所を一度だけでなく二度も窮地に追い込んだ。その責任を取りたい。だから―」


―俺を討伐してくれ

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903 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その4:2020/02/10 19:08:02.641 ID:xXkcYgXko
791「黒砂糖さんはそれでいいの?」

黒砂糖「…俺は洗脳が解けた今でも力を欲している。周りは俺を“画家”やら“絵師”と持て囃すが、その前に俺は一人の兵士なんだッ!
自らの拳で、力で強敵を打ち破りたい。それが喩え仲間であったとしても」

“鉄人”黒砂糖はふらりと立ち上がった。その目は笑っている。

黒砂糖「洗脳が解けた今でも、俺は最後までDB側に付く。軍神<アーミーゴッド>を救いたかったら俺を倒していけ。
俺なりの道義だ。
それが討伐の根拠だ。分かってくれ抹茶」

黒砂糖は落ちていた大太刀を拾い静かに構え直した。そんな黒砂糖に抹茶はほうと溜息を付いた。

抹茶「…黒砂糖さんは大バカヤロウです。この戦いが終わったら黒砂糖さんには僕の作った新作ゲームのテスターになってもらいますよ」

黒砂糖「悪くないなッ―」

儚げに黒砂糖は嗤い、喋り終わると同時に大太刀を振るった。抹茶は片手に持つ湯呑みで斬撃を受け、もう片手で目潰しのために茶葉を投げつけた。

黒砂糖「『ミールメイルストロム』」

半歩下がり攻撃を避けた黒砂糖は、二人に溶解したミルクキャラメルの大波を浴びせた。

791「『ファイアジュール』ッ!」

炎の魔法で、二人に襲いかかったキャラメルの波は溶けて消えてしまった。
抹茶は後ろを振り返り791と目をあわせ一度だけ頷く。作戦が定まった。


904 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その5:2020/02/10 19:12:25.652 ID:xXkcYgXko
抹茶「『超高速湯呑みスロー』」

黒砂糖は屈んで攻撃を避けた。彼の背後でパリンと湯呑みの割れる音が響いた。

黒砂糖「遅い!くらえッ!」

半身のままの黒砂糖が目の前の親友を仕留めるべく再度大太刀を振るった。

791「抹茶ッ!翔べッ!」

詠唱の終わった791の具現化魔法で抹茶の背に羽が生え、勢いよく抹茶が飛翔した。
上空に逃れた抹茶は黒砂糖の攻撃を寸前で避けた。
その姿は、以前黒砂糖自身がアイムとオニロに描いた絵に酷似していた。

黒砂糖「あれは、“羽抹茶”…相変わらず羽のシワの部分がよく描けているな」

上空に浮かぶ彼に見惚れていたその一瞬が、勝敗の分かれ目となった。

791「『ヨーグセット』ON!」

ガチャリいう撃鉄の音。黒砂糖が意識を戻すと、791の目の前には漆黒の禍々しい魔法の大筒が表れ、巨大な砲弾が独りでにセットされていた。
黒砂糖はこの魔法を知っていた。急いで疾走ろうとするも―

黒砂糖「足が、動か、ないッ!」

抹茶「さっきの湯呑みの中に強力なしびれ粉を入れていましてね。いかに“鉄人”黒砂糖さんでも吸引した数秒間は動けませんよ」

強烈な痺れに手足が硬直する中、黒砂糖は数秒後に訪れるだろう敗北を噛み締めるべく目を閉じた。

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905 名前:Chapter4.大戦に愛を :2020/02/10 19:13:47.726 ID:xXkcYgXko
鉄人、散る。

906 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その1:2020/02/10 19:18:59.195 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

DB「邪魔が入ったが、これより軍神<アーミーゴッド>の処刑を行うゥ。目撃者は歴史の観測所たる編纂室だァ。
とはいっても、歴史そのものはもう破壊されてしまったがなァ!!」

下卑た笑いでDBは高笑いし、捕らわれたままの軍神に向き直った。

DB「なにか後世に言い残すことはあるか、軍神<アーミーゴッド>?」

軍神「歴史は“死んでなどいない”。我が消えたとしても戦いの記録は消えやしない。誰かが意志を継ぐ限り、戦いは終結しない」

DB「ほざけェ!」

DBは指でピストルの形を作った。指先に光が溜まる。

DB「あばよォ軍神<アーミーゴッド>!理想を胸に抱えながら息絶え、俺様の作る新たな世界を見ているがいいッ!!」

光が充填され、軍神を射抜かんとした正にその刻――



??「待ってほしいんよッ!!」



編纂室の扉が勢いよく放たれ、一人の兵士が叫んだ。ギョッとした面持ちでDBは顔を向けたが、その兵士の顔を見て途端に安堵した。

DB「なんだァ¢くんじゃないかァ、ビックリさせないでくれたまえよォ」

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907 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その2:2020/02/10 19:22:50.438 ID:xXkcYgXko
DB「その物騒な銃を仕舞ってくれよォ。頼むよォ」

途端に猫なで声で懇願するDB。しかし、¢は動じない。

¢「DB<ダイヴォー>。俺が間違っていた。お前を生み出したのは紛れもなくこの俺だがッ!お前を野放しにさせすぎたッ!」

¢の構える銃を持つ手が強くなり、途端にわざとらしくDBは悲鳴を上げた。

DB「そんなひどィ!ぼくが活躍するたびに諸手を挙げて喜んでいたのは¢くん!きみ自身じゃァないかッ!」

DBは人知れず負のオーラを放出する。誰にも気付かれないように静かに、そして狡猾に。

DB「あの頃、討伐戦が終わるたびに、捕えられたぼくを秘密裏に放してくれていたのは¢くんだろォ!
ぼくの活躍をきみ自身の“最大の発明品”の活躍と重ね合わせて見ていた。そうだよね?」

¢がビクリと肩を震わせた。DBは心の中で舌なめずりした。

DB「だから討伐戦で活躍できるように、きみはぼくを逃し続けた。そうだろう?」


908 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その3:2020/02/10 19:25:42.797 ID:xXkcYgXko
¢「ちがう…ちがうんよ」

DB「違わないよォ。結局、幽閉された後も君はぼくとスクリプトの様子を確かめに人知れず何度も檻の前に足を運んでいたよね?
そのときに自分でも気づかないうちに、脱走の手引をしていた。だからぼくとスクリプトが檻を抜け出せた。それに負い目を感じているんだよねェ?」

¢「違う、違うッ!!」

DBの言葉には語弊がある。¢がDBとスクリプトを気にかけて檻を訪れていたのは本当だが、¢の弱さを知るDBは彼に気づかれぬように小さい洗脳を繰り返し施していた。
そして、K.N.C174年に檻の鍵を持ってこさせ、スクリプトとともに脱走したのだ。
¢は当然この事実に気がついていないが、自らが逃してしまったのではないかと人知れず悩んでいた。

DB「でも、ぼくがきみの“最大で最高の発明品”であることに変わらないから、この窮地に追い込まれてもきみはぼくの討伐を決心できなかった。
そうだよねェ?“親”が“子”を想うのは当たり前だもんねェ?」


―― たけのこ軍 オニロ「…しかし、このまま現代に留まり続けてもDBは見つけられません。
ボクたちはDBを必ず見つけ、討伐しなければいけないんです」

―― きのこ軍 ¢「だからッ!“討伐”ではなくて“捕獲”だと言っているだろ。
集計さんもいた以前の会議で捕獲をメインに据えることは決定されていたはずだ!何度言えばわかるんだッ」



909 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その4:2020/02/10 19:28:57.010 ID:xXkcYgXko

K.N.C180年にて周囲が討伐を主張した際も、¢は頑なに討伐を拒否した。
頭の中では討伐が正しいと分かっていたが、DBが奇行と悪行を重ねるほどに自らの開発品の完成度の高さを実感し、¢は自らの叡智の結集体であるDBに誇らしさを持つようにもなってしまった。
そんな気持ちを逆手に取り、子が親を裏では馬鹿にし利用されていたとしても¢はそれでいいと諦観した。
それは誰が見ても明らかな、歪な愛だった。

¢は事実から逃げるようにDBから目を背けた。
DBは勝利を確信した。¢を負のオーラで包み込み、洗脳もきき、敵が居なくなったことを確信した。

DB「わかる、わかるよォ¢くん。ぼくはそんなきみがかわいくて大ァァァイ好きなんだァ。だから、いまこの瞬間が子の一番の晴れ舞台だからさァ。

親はァァ黙って見ていてよねェェェェ!」

再び指先に貯めた光の充填が完了した。
顔を伏せたままの¢を蔑むような視線で一瞥し、DBは黙ったままの軍神にニタニタと笑う。


DB「あばよォ軍神<アーミーゴッド>ォォ―――」










 ―― パァンッ
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910 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その5:2020/02/10 19:30:41.527 ID:xXkcYgXko

乾いた銃声音が部屋に響き渡り、構えていたはずのDBの手は吹き飛んだ。
痛みを感じるよりも早く、DBは信じられないといった面持ちで銃口を向けた兵士に驚愕の目を向けた。

¢「“親”だから、“子”の不始末にはケジメをつけるんだッ」

¢は凛とした眼でDBを射抜き、すぐさま撃鉄を引いた。

¢「俺は勘違いしていた。DB、俺は確かに愛情を抱いていた」

間髪入れずに二発の銃を発射する。流石のDBも今度は弾を受けること無く避けた。

DB「¢ォォォォォ貴様ァァァァァァ!!」


911 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その5:2020/02/10 19:33:05.870 ID:xXkcYgXko

DBは負のオーラで結集した二本の触手を地から伸ばした。急ぎガードした¢だが、触手の攻撃で両の手に持つ銃を弾かれ武器を失ってしまった。

¢「お前の言う通りだッ、俺は愚かな兵士だ。
自分の功績を誇るためにお前を生かし続けた。心の拠り所だった。


でも違うッ!


俺が本当に愛していたのはお前じゃない――」

DB「死ねェェ¢ォォ!!」

¢の独白を聞くこともなく、DBは丸腰の¢に向かい鋼鉄の触手を向かわせた。¢は構うことなく喋り続けた。

¢「俺が本当に愛していたのは――――







――――― きのこたけのこ大戦なんだッ!!」




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912 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その7:2020/02/10 19:36:06.459 ID:xXkcYgXko
¢の頭上から彼を称える声が届いたかと思うと、次の瞬間DBは大量の書物の渦に巻き込まれ吹っ飛ばされていた。¢を襲う触手も直前で消え去った。

DB「グハァッ!!」

軍神「君はきのこ軍兵士古参として、大戦世界の継続と会議所の発展を強く願い、皆と一致団結するべく仮想の敵DB<ダイヴォー>を創り上げた。
君が本当に守りたかったのはDBじゃない、大戦世界そのものだ。



それこそが【大戦への愛】だ」


拘束の解けた軍神が壊れかけのテーブルの上にひらりと舞い降りた。

DB「なにが起こっているゥ!ふざけるなァァァ!」

憎しみの怨嗟を撒き散らすDBに軍神は見下ろしながら相対した。

軍神「貴様は決戦の地にこの編纂室を選んだ。その目論見は分かった。だが、同時に貴様はとんでもない阿呆だ。なぜ敵のホームグラウンドを決戦の地に選んだ?」


―――オニロ「天井近くにある本はどうやって取ればいいんですか?」

―――集計班「祈れば勝手に本が来てくれます」

―――そう答え、集計班は両の手を組んで目を閉じた。
―――すると、天井近くのはるか遠くの本棚から、するすると一冊の本がアイムたちに向かって飛んできた。

―――集計班「ね、簡単でしょ?」
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913 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その8:2020/02/10 19:39:01.633 ID:xXkcYgXko
軍神「オニロはこの編纂室にある本をほとんど読み切り、全ての本の名前を把握している。心のなかで呼べば本はすぐに付いてくる」

軍神の周りにすぐに数十冊の書物が浮遊した。自分たちも戦いとばかりにそれぞれの本がカタカタと震えている。

軍神「同時にアイムの会得した戦闘術・魂も我を救った。会議所での【我々】の行動は全て無駄ではない。今に繋がっている」

DB「ふざけるなァ、ふざけるなァ、ふざけるなァァァァァァ――」

先程のリプレーを見ているかのように、DBは次々に軍神に招集された書物たちの突進にあいタコ殴りにされていった。
口からチョコを放出し、同時に負のオーラも吐き出していく。DBの力が弱まり、地上にいたDB隊の兵士たちの洗脳も徐々に解けていった。

軍神「『ユリガミノカナタニ』『百合ノ季節』『儒艮漂フ海界』『邪神スピリットJ』『すべて陰陽のもの』『chocolate market』、来いッ!」

呼ばれた書物はすぐに集まり回転しながら、よろめくほど弱っているDBの身体に当たり彼をふっとばした。


914 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その9:2020/02/10 19:40:57.285 ID:xXkcYgXko
DB「グアアアアアアッ!!」

軍神「歴史が死んだ?大嘘を付くなッ。見ろッ!この通り歴史は生きている。貴様が戦っている相手が、正に我々の【歴史】だッ!!」

軍神の願いとともに全ての書物が宙に浮く。
天井を覆い尽くすほどの大量の書物は目を細めてみるとまるで夜空に浮かぶ星々のように輝いて見えた。
軍神は戦場に出たときの指揮官と同じように、優雅に片手を振り上げた。


DB「やめろォ…やめてくれェ!!!」



軍神「終わりだ。『きのたけ流星群』ッ!!」



上げた手を振り下ろすと、数え切れないほど大量の書物はすさまじい勢いで上空から龍のようにDBを飲み込み牙を剥いた。

DB「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

大量の書物がDBに当たり、DBは泡を食いながら事切れた。



悪しき時空の潮流者は歴史に飲まれ、戦いの幕は閉じられた。




915 名前:Chapter4.大戦に愛を :2020/02/10 19:44:40.487 ID:xXkcYgXko
すみませんまだもうちょっとだけ続くのじゃ。

916 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その1:2020/02/10 19:47:34.674 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

参謀「戦いはどうなったッ!?軍神<アーミーゴッド>は無事か!?」

DBが事切れたことでDB隊の洗脳が解け、戦いは会議所の勝利に終わった。参謀を始めとする会議所兵士たちは急ぎ編纂室に向かい、崩壊した室内を見て愕然とした。

¢「大丈夫なんよ。軍神<アーミーゴッド>がDBをやっつけた」

壁に背を預け身体を休めていた¢が事の次第を告げ、同時に軍神が皆に親指を突き立て笑った時、会議所は勝利の歓喜に湧いた。

加古川「うおおおおおおッ!やったッ!」

someone「成し遂げましたねッ!やったね零歌!」

竹内「フォフォフォッフォ。最後に正義は勝つとな」

抹茶「やったッ!黒砂糖さん起きてくださいッ!あ、疲れて寝てるか…」

皆は武器を捨て、お互いに抱き合い歓喜した。

791と筍魂は軍神に近づき握手した。

791「オニロ…いや、軍神<アーミーゴッド>さん。最高の兵士に育ってくれて嬉しいよ」

筍魂「アイムこと軍神<アーミーゴッド>よ。俺も嬉しいぞ、特別に筍魂<バンブースピリット>様と呼ぶことを許す。そこで寝てる山本さんも嬉しいに違いない」

軍神「よしてください791師匠。こんな姿になっても心はオニロの時のままなんです。あ、筍魂。テメーはダメだ」

筍魂「心の中のアイム、ダダ漏れだぞ」
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917 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その2:2020/02/10 19:51:41.919 ID:xXkcYgXko

皆が勝利に酔いしれる中、冒険家スリッパとサラは室内の少し離れた所からその様子を眺めていた。

スリッパ「終わったな…これでよかったんだ」

スリッパは独り淋しげに呟いた。討伐隊の目的は達成されもう時限の境界に向かうこともないだろう。
最後まで自らを取り巻く【謎】は残ったが、それは些細な問題だ。
悪用を防ぐためにも時限の境界の今後の使用を禁じなくてはいけないし研究課題は増えるだろう。未開の地の調査もまた再開しなくてはいけない。

大戦を引退して冒険家に成りたてだったあの頃のように新たな目的ができ意気高揚する場面で、だがなぜかスリッパは気乗りしなかった。
理由はわかっていたものの、彼は敢えて理解していないふりをした。

スリッパ「また冒険に行かないとな、サラッ!これからまた忙しくなるぞッ」

気を紛らすために背後のサラに声をかけた。
思えばサラとの付き合いも長い。
冒険家に成り立ての頃、家に戻るとどこかで捨てられたのか家の前にサラが置いてあった。以来、スリッパはサラを全ての冒険に連れ出し、サラも無言で主人を守るために付いてきた。
謂わば二人は一心同体。言葉が無くても二人は意思を疎通できるし、互いの考えていることが分かる。

そう思っていた。

いつもならば二つ返事で頷くメイドロボのサラは、この時ばかりは彼の言葉に逡巡する様子を見せ、一瞬の間を置いて静かに首を横に振った。

スリッパ「どういうことだサラ?――」

彼の言葉は突如として発生した背後の轟音とともに遮られた。DBが埋まっていた書物群が突如間欠泉が湧いたように上空に巻き上がったのだ。


918 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その3:2020/02/10 19:54:09.538 ID:xXkcYgXko
DB「コワシテヤルコワシテヤルコワシテヤルコワシテヤルコワシテヤル…スベテスベテコワシテヤルゥ」

DBは書物から勢いよく抜け出し、その身が半壊の状態ながら必死の形相で疾走った。

軍神「往生際の悪い奴めッ!」

とどめを刺そうと軍神が構えるも、DBは歓喜に湧く会議所兵士たちの中に紛れて走り容易に狙いが定められなかった。
会議所兵士たちが一様に集まっているのも災いした。全員が武器を捨てていたため一瞬の隙を付かれ、咄嗟に攻撃に移るのに時間がかかった。

DB「ユルサナイユルサナイユルサナイィィィ」

DBは未だ残っていた入口前の転移魔法陣に飛び乗り、時限の境界フィールドへワープした。
歴戦の兵士がこれほどいながらの逃走劇は、残ったDBの最後の力を見せ付けたといっていいほど鮮やかなものだった。

椿「まずいですよ!DBが時限の境界へいけば再度歴史改変が繰り返されますッ!」

参謀「慌てるなッ!こんなこともあろうかと時限の境界前には社長をはじめとした会議所兵士たちを配置しているッ!
DBはもう虫の息だッ!
そのまま放っておいても斃れるだろうが時限の境界に入れるのはあかんッ!俺たちもすぐに部隊を再編し時限の境界前でDBを討ち取るぞッ!」

参謀は会議所兵士たちを落ち着け、部隊を再編しようと動き出した。


919 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その4:2020/02/10 19:58:02.656 ID:xXkcYgXko

その光景を見ながら、スリッパは迷った。
願ってもない機会に早まる胸の鼓動を必死に落ち着かせる。

ただ、仮にもう一度時限の境界に行けたとしてもどうしたらいいのか分からない。

そもそも、あの場に自分は居なかったはずなのに何故か自分が英雄として崇められた。
ただその理由を知りたいだけなのにリスクの高い時限の境界で過去に行く必要があるのか。


何をすればいい。分からない、分からない――


迷う彼の肩に手を置いたのはサラだった。
スリッパは目を見開きサラの顔をまじまじと見つめる。
彼の命令以外にサラが自発的に動いたことはこれまで無かったからだ。


サラ「スリッパ、全てはこの時のためにあった。君の目的を今の討伐隊の目的と重ねるんだ」



優しげな声色が彼の耳に届く。サラは確かに、ハッキリと彼にそう告げた。

途端、スリッパの頭の中の靄が晴れた。点と点が全て繋がったのだ。

そういうことか、と彼は呟いた。
第二次大戦から今まで彼は目に見えない時間の鎖に縛られていた。その鎖の正体がわかったのだ。

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920 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その5:2020/02/10 19:59:44.860 ID:xXkcYgXko
参謀「それでは発表するッ。これよりフィールドへ向かってもらうのは――」

スリッパ「ちょっと待ったぁッ!」

参謀の声をかき消すようにスリッパが制止し、全員の視線が彼へ向いた。
スリッパはこれから起こる出来事を想像し心のなかで微笑った。誰も想像し得ない長きに渡る旅が始まるのだ。

スリッパ「みんなきいてくれ。長い間、DBとの戦いご苦労だった。みんなが英雄級の活躍をした」

スリッパ「だがしかし!英雄は複数もいらない!今次討伐戦にふさわしい英雄は一体誰だ?」

スリッパは親指を自らの胸につけた。

スリッパ「そうだ!英雄にふさわしいのは初代英雄の 元・たけのこ軍兵士、現冒険家のスリッパ。この俺だッ!」

皆は呆気にとられ言葉を発せずにいる。スリッパはその様子が可笑しくてますます微笑ってしまった。


921 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その6:2020/02/10 20:01:29.039 ID:xXkcYgXko
スリッパ「俺は今日この時のために討伐隊に参加してきた。予想はしていなかったがここからが俺の【役割】だといま気がついたんだ。
歴史を変えずに歪んだ時間の流れを“元に戻す”ためにはこれしかない」

スリッパは転移魔法陣の前に移動し改めて皆を見渡した。この面子とも暫くお別れだと思うと物悲しさも人一倍増す。
悲しさを振り切るように、彼はさらに声を張り上げた。

スリッパ「時限の境界に向かうのはこの俺、ただ一人だ。
向こうにいる社長と協力しDBを【時限の境界へ招き入れて】俺だけが【時限の境界へと入る】。そこで俺がDBを討伐するッ!」

参謀「ま、待ってくれッ!まるでわけがわからんッ!」

¢「そうなんよッ!突然どうしたスリッパさんッ!」

軍神も説得しようと前に出たが、サラがスリッパと軍神の間に入り込んだ。

サラ「すまない。わかってくれないか」

軍神「!!」

サラの声に軍神は目を見開き、直後に全てを察した。

軍神「…スリッパさん、貴方は会議所の、大戦世界の誇りです。軍神の名のもとに命ず。


【DBを討伐】せよ」

スリッパ「承知ッ!後を頼んだぞ…サラ」

サラはスリッパに向かい一度頷き、それを見た彼は転移魔法で時限の境界へと向かい姿を消した。
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922 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その7:2020/02/10 20:10:59.812 ID:xXkcYgXko
参謀「なんでスリッパさんを行かせたんや軍神<アーミーゴッド>!」

抹茶「あの話しぶりだとスリッパさんはDBと時限の境界に入ります。DBはその場で討伐できたとしても、スリッパさんは何らかの歴史改変をしないと現代に帰ってこられないということですよね?」

軍神「いや、スリッパさんは歴史改変を【行わない】。この時代には【もう戻ってこない】」

皆は一様に驚いた。

加古川「それじゃあスリッパさんはどうなるんだッ!?」

軍神はサラに目を向けた。サラはスリッパが消えた転移魔法陣の前で静かに佇んでいる。





軍神「事の真相はそこのサラが――いや、【スリッパさん】が話すだろう」


皆はさらに驚いた。



923 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その8:2020/02/10 20:13:35.356 ID:xXkcYgXko
サラ「長かったな、ここまで」

サラは指をパチンと一回鳴らした。自らの身体が光り始め、メイドロボの装飾がボロボロと剥がれ始めた。
漏れ出る光の中から現れたのは紛れもないスリッパ、まさしくその人だった。

軍神以外、驚きで誰も声を発せない中、791が思った疑問を口にした。

791「サラは本当のメイドロボというわけではなく、スリッパさんが魔法で変装した姿だったということ?
でもそうしたら、ついさっきのスリッパさんは偽物ということ?」

スリッパ「偽物ではない。【今の時代】を生きていたスリッパ本人さ。私は事情があって今の時代を【二度】生きていた」

先程のスリッパよりさらに老けたように見えるが、スリッパは元気そうに髪をかきあげた。

スリッパ「安心してほしい。過去改変が起きていないこと、あくまで私が今も現代に存在し続けていることがDBを無事討伐できたことへの裏返しになる」

筍魂「勿体ぶらずにそろそろ教えてもらえないか。いったい何が合ったのかを」




スリッパ「そうだな。正確には、【これから何が起こる】のか、だが。全てを語ろう」





老兵は皆の前で語り始めた。或る一人のたけのこ軍兵士の英雄譚を。

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924 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その1:2020/02/10 20:17:36.739 ID:xXkcYgXko

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スリッパが大戦世界に生まれ落ちた時、数多くの兵士と同じように彼には名前がなかった。

名前とは他者を識別する大事な符号であり、名前がない限り彼もその他多くの兵士と同じく、ただ敵軍との戦いに身を投じることでしか自身を輝かすことができなかった。

一人のたけのこ軍兵士がきのこ軍に宣戦布告をし、突如として世界の創造とともに始まった第一次大戦。
その大戦もたけのこ軍の勝利に終わり、世界は束の間の休息に入るはずだった。
しかし、今とは違い血気盛んで加減を知らない兵士たちは時期を置かずに連続で戦いを始めてしまった。


第二次大戦の始まりである。


若きスリッパは丁度その時、第一次大戦を終え自らの家に戻り休息を取っている最中だった。
逸る気持ちを抑えベッドで横になった。次の大戦ではより多くの戦果を上げようと誓い、いつの間にか眠りこけてしまった。
彼が眠っている間に第二次大戦は始まり、終戦した。




彼は第二次大戦には参加していなかった。





925 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その2:2020/02/10 20:20:23.317 ID:xXkcYgXko
翌朝、ねぼけたまま外に出てみると周りの住民から自らを取り巻く環境が一変していた。
第二次大戦の終結と、参加してもいないその戦いで自らが大戦を終結させた英雄なのだと皆口々に語り、スリッパはすぐに目が覚めた。
さらに終戦時に名乗った自身の名前がスリッパであるとその時に初めて周りに聞かされた。

彼は戦意など消え失せ、途端に怖くなった。

人違いだと何度説明しても周りは納得しない。
“きのこ軍をあの一言で葬り去った横顔は忘れない”だの“窮地に追いやられたたけのこ軍を救った英雄はお前しかいない”だの、人々は彼を勝手に英雄に祭り上げた。


純粋に戦いに参加し武功を上げたかっただけなのに、どうして。


スリッパの叫びは誰の耳にも届くことはなかった。

数多くの取材を受け、その度に話をせがまれた。
彼の影響で多くの兵士が名前の重要性に気が付き、名を付け始めたのだと誇らしげに語られた。全て違うと彼は説明したが誰も信じる者はいなかった。


926 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その3:2020/02/10 20:22:04.395 ID:xXkcYgXko

そんな出来事を忘れようと、彼は何度も出撃した。

しかし、彼の名は世界に轟きすぎていた。
一度出撃すれば周りのたけのこ軍兵士からは羨望の的となり、きのこ軍兵士からは目の敵にされ落ち着いて武功など全然立てられなかった。

我慢の限界を悟り、第二十二次大戦をもって、彼は大戦を引退した。
一人の兵士は知らない間に誰かの手により英雄に仕立て上げられ、その存在だけを利用されたのである。



―― アイム「大戦世界発展の第一人者というわけか。そりゃあ各所で神格化されるわな。そんなあんたが、どうしてすぐに大戦をやめたんだ?」

―― スリッパ「…理由なんてないさ。いや、強いて言えば……【理由を知りたくなったんだ】」




927 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その4:2020/02/10 20:23:07.675 ID:xXkcYgXko
スリッパは引退後、冒険家へと転身した。

大戦への未練を捨て去り、ある日家の前に捨てられていたメイドロボ・サラとともに各地を旅した。
自らが見て聞いた体験に彼は心底胸を踊らせた。冒険の手記も貯まり、知名度も手伝ってか冒険譚を書いてほしいとの声も多く上がった。
彼もその気になり、過去を忘れるように熱心に各地を旅して回った。


そんな時に、【時限の境界】の噂を耳にした。

普段であれば笑い飛ばしていたような眉唾ものの噂話に、スリッパは忘れていたはずの過去の記憶を重ね合わせた。
過去をやり直せるタイムマシンフロアという響きに執着し、いつの間にか時限の境界探しのみに没頭する日々が続いた。


928 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その5:2020/02/10 20:24:36.957 ID:xXkcYgXko
かくしてスリッパ著の【きのたけ見聞録】は出版された。

そして事実のみを記すはずの冒険譚の中に、時限の境界という“デタラメ”を執拗に多く盛り込んだことからスリッパは学会から追放され、公の舞台から姿を消した。
周りからも “スリッパは終わった兵士”との烙印を下され、次第に人々の記憶からも消えていった。



――たけのこ軍 抹茶「すごい本じゃないですか…でもそんな本の名前、聞いたこともなかった」

――きのこ軍 集計班「誰も地図上の歴史に興味を示さなかったために
本の存在価値が薄れてしまっていたことが一つ。
なにより、当時の識者たちがこの本を丸っきりの出鱈目が書かれた書物だとして、
端から評価の対象にしていなかった」

―― きのこ軍 きのきの「え、どうして?」

―― きのこ軍 集計班「…単純な歴史書物とは評価し難い『重大な欠陥」があったからですよ」




929 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その6:2020/02/10 20:26:19.610 ID:xXkcYgXko
冒険家としての意欲も消え、人里離れた未開の地で彼はサラと二人で隠遁の生活を始めた。
【時限の境界】がある未開の地を敢えて選んだのは、こんな状況に陥っても少しでも【時限の境界】に近づきたいという自身の潜在意識の現れではないかと、スリッパは夜な夜な思い返しては苦しんだ。
だが、それでも未開の地を離れることはできなかった。


止まったはずのスリッパの歯車が動き出したのはK.N.C180年、討伐隊の面子がスリッパの家を訪ねてきた頃からだった。
そしてひょんなことから、一行は【時限の境界】を発見する。



―― スリッパ「なあサラ。俺は冒険家だったよな。今も昔も夢を追い続けてきた。それを忘れていたようなんだ。
俺はもう一度、あの頃に戻ってもいいんだよな?」



逸る気持ちをスリッパは必死に抑えつけた。終わりかけていた自らの情熱の炎が再度灯り始めた瞬間だった。


930 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その7:2020/02/10 20:27:55.448 ID:xXkcYgXko


―― スリッパの態度も少しおかしい。念願の宝の山たる時限の境界を見つけた時の反応は予想外に淡白なものだった。
だが時限の境界の奥に進むにつれ、緊張で顔がこわばってきている。
時限の境界を発見すること自体が目的ではないということなのだろうか。アイムにはわからない。
例えるならば、獲物の小動物が罠にかかるのをひたすら待っている獰猛な獣のような感じなのだ。



そして今、DBは軍神によって成敗され真の最終戦が時限の境界を経て始まろうとしている。
サラからかけられた言葉にスリッパは確信した。


第二次大戦の真相を、自らがこれから長きに渡る歴史の観測者を務めなくてはいけないということを。




931 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その8:2020/02/10 20:30:41.861 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 時限の境界前】

スリッパは転移魔法でのワープを終え、時限の境界の入口前に走った。
そこでは社長を始めとした数人の兵士が、疲弊しきったDBを相手に善戦している最中だった。
社長はスリッパを見つけるとホッと胸をなでおろした。

社長「スリッパさんッ!DBの野郎、時限の境界に入ろうとしてるんですがここで食い止めていますッ!スリッパさんが止めを…」

スリッパ「社長、いままでご苦労。あとは俺に任せて皆は会議所に戻ってよしッ!これは軍神の命であるッ!」

呆気にとられた社長の脇を、瀕死のDBが死にものぐるいですり抜け、時限の境界へと入っていった。
スリッパがそのあとに続く。

社長「あワお〜っ!!どうしたらいいんだ!」

遠くに木霊する社長の慌てふためく声に微笑いながら、“あとはしっかりやれよ”とスリッパは一人呟き扉をパタリと閉めた。


932 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その9:2020/02/10 20:32:25.572 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 時限の境界】

DBの生命の灯はもうすぐ消えようとしている。
だが、走る速さだけは衰えない。その原動力は激しい憎しみ、そして怨嗟。
巨大な悪だけが生命尽きようとしている彼を突き動かしている。

DB「ニクイニクイ…会議所ニクイィ、大戦がニクイ」

DBはうわ言のように恨みつらみを口にしながら疾走る。
向かう場所はK.N.C1年。第一次大戦をめちゃくちゃにして大戦の基礎の礎が出来る前に兵士の士気を根こそぎ削いで大戦世界を根本から破壊する。
世界が自分のものにならなければ破壊してしまえばいい。
DBの極端な思考と行動は、僅かではあるが大戦世界に危機をもたらしていた。

スリッパ「どこへ行くつもりだDB?」

DBが息を切らしながらもK.N.C1年の扉があるフロアについた時、既にスリッパは先回りし待ち構えていた。

DB「貴様は…たしか…」

スリッパ「俺が誰かなんてどうだっていいことだ。お前が向かう場所はもう決まっているッ!」

スリッパは失われていないDBの片手を掴むと、既に開け放っていたK.N.C2年の扉へDBを投げ入れた。

抗う気力もなくDBはK.N.C2年へ吸い込まれていく。それを確認してから、スリッパも扉の前に立った。

ほんの少し、僅かではあるがK.N.C180年への名残を感じながら、彼もすぐさまK.N.C2年へと向かった。


933 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その10:2020/02/10 20:34:12.501 ID:xXkcYgXko
【K.N.C2年 第二次きのこたけのこ大戦】

大戦は既に終盤を迎えていた。
大戦場は今とは違い、喧騒に包まれていた。集計係もいるが現代のように確固として確率された仕組みではなく、有志が行っていた。


「ほらほら現在は5:23でたけのこ軍が有利だよ。きのこ、負けんじゃねえぞ!!」


戦場の中央付近で銅鑼をしきりに鳴らしながら、集計結果を叫んでいるきのこ軍兵士の名は確かアルカリという名前だったはずだ。
ただ、この時代にはまだ彼にも名前はない。第二次大戦を期に【スリッパの活躍で】皆が名乗り始めるのだ。

「アンチきのこマシンが作動している!ウィーン・・・キノコキノコキノコキノコオラオラオラオラオラオラオラ!」

社長はいつの時代になっても変わらないなあと、先程別れを告げたはずの兵士が好き勝手に戦っているさまを見てスリッパは少し安心した。

この時代に兵の統率など無いに等しく、各々が個人の戦果のために戦っていたのだ。


―― 歴史を変えてはいけない。過去改変を起こさずに、大戦年表に書かれている通りの内容を起こし世界を持続させる。


強い決意を胸に時限の境界から大戦上に到着したスリッパは、この時代の彼自身になりきる必要があった。

934 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その11:2020/02/10 20:37:30.822 ID:xXkcYgXko
スリッパ「みんな、キノコ狩りに興味はないか?」

たけのこ軍兵士たちはキョトンとした表情でスリッパを見た。
スリッパはポケットに入っていた大尉のバッジをあわてて付けた。

スリッパ 大尉‡「皆の衆ご苦労ッ!一旦、手を止め聞いてくれッ!敵軍の前線に大将格の兵士がいるとの情報が入ったッ!」

スリッパ 大尉‡「我軍の勝利は近いが敵の息の根を完全に止めなければ意味がないッ!
これより単身で乗り込み大将格を討ち取ってくるッ!」

一瞬の間を置いて、途端にたけのこ軍は色めき立った。


「お気をつけて大尉!」

「うおおお、負けねえぞきのこの野郎!」

「アンチきのこマシンが作動している!ウィーン・・アンチきのこマシンが作動している!ウィーンウィーン・・」


スリッパの鼓舞に当てられたか、たけのこ軍は俄然勢いに乗った。

彼もすぐに歩みを進めようとするが、おっと忘れていた、と足を止めスリッパは皆にきこえるように叫んだ。

スリッパ 大尉‡「皆の者、よく覚えておけ。俺たちの軍を勝利に導く兵士の名をッ!
俺の名はスリッパ大尉ッ!大戦が終わったら皆も名前をつけろよ!存外悪くないものだぞッ!」



935 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その12:2020/02/10 20:39:40.935 ID:xXkcYgXko
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DBは命からがら時限の境界を離れ、大戦場にやってきた。

どこかで傷の手当をしたいが目の前の混戦の中だと休める場所はない。
何よりもスリッパに追われている身だ、まずは隠れないといけない。

DB「俺様の力をなめるなよ…まずはこの大戦をめちゃくちゃにして、その後は大戦世界を破壊してやるゥ」

DBは最後の力を振り絞り再びきのこ軍兵士に化けた。
きのこ軍陣内に行き、近くの高台に飛び移り、DBは周りの兵士の前で高々と宣言した。

DB「おいみんなァ!実は集計係はきのこ軍ではなくたけのこ軍のスパイだァ!あいつの言う情報はめちゃくちゃだッ!まずはあいつを始末してたけのこ軍を始末しようッ!」

「なんだと!?それは本当か!」

「ふざけるなッ!俺の集計にケチをつけるのはどこのどいつだッ!」

騒然とするきのこ軍陣内の様子にDBは満足げに頷く。力こそ奪われても、他者を利用して自らの思い通りに動かす力は彼の天賦の才だ。
それさえ失わなければ自分は消えることなど絶対に無い。

DBは自らの才能に受けた傷も忘れ一人高笑いをした。







(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

936 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その13:2020/02/10 20:41:56.334 ID:xXkcYgXko
「みろ!たけのこ軍だ!」

「げ、迎撃の準備をしろ!」

慌てふためくきのこ軍を尻目に、スリッパは詠唱を始めた。

DB「ま、待てスリッパ。俺様が悪かった。見逃してくれェ…」


虚しいDBの懇願はもうスリッパの耳には届かない。


スリッパは大魔法を唱えるべく、空中へ跳び上がった。
こういう時はインパクトを与えるほうがいい結果を生む。過去の歴史が証明している。

詠唱の最中、チラリと、かつて自身が住んでいたたけのこの里の方を見やる。
当時の自分は何も知らずにスヤスヤと寝ているんだろう。
きっと明日から事態は一変し、終いには嫌気が差し大戦から逃げ出してしまうことだろう。



だから、自分がサラというメイドロボになり若き自分を支えて上げよう。全ては今日この時を迎えるために。



これから頑張れよ、とスリッパははるか遠くにいる自分に届きもしないエールを送った。



937 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その13:2020/02/10 20:46:59.814 ID:xXkcYgXko





スリッパ「突き進む!そのさきが闇だったとしても!!」







DB「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!」








スリッパの上空から放たれた巨大な火炎玉は瞬く間に脂ののったDBを飲み込み燃やし尽くした。
割れんばかりの大歓声が上がる中、創り上げた巨大な火炎柱と獄炎は、どこまでも青く澄んだ空に一際よく映えた。





(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

938 名前:Epilogue. :2020/02/10 20:48:11.954 ID:xXkcYgXko





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きのたけWARS 〜DB討伐〜
Epilogue.

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939 名前:Epilogue. その1:2020/02/10 20:53:11.844 ID:xXkcYgXko

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頬をなでるようなそよ風がこそばゆく、アイムは静かに目を覚ました。

自分の隣で立派に咲き並んでいた草花が風になびき、起きなさい、と囁いているように聞こえたのだ。
気のせいかもしれない。最近、ロマンティックな表現が頭に多く浮かぶようになったのはオニロにオススメの小説を多く借りすぎてるせいだな、と気恥ずかしさを隠すようにアイムは人のせいにした。

寝ぼけ眼で半身を起こすと、少し離れた丘の上からでも会議所はハッキリと視認でき、復興の様子が進んでいることが分かった。

以前のDB隊の突入により会議所は隅々まで破壊され、当初その復興には多大な時間がかかると予想された。
しかし、会議所兵士だけでなく両軍の一般兵士の力も進んで加わり手を貸すことで復興は着実に進んでいた。
一般兵士の中には元・会議所兵士も多く居て、皆との久々の再会を経て、次は戦場での再会だ、と約束した者までいると聞く。

建材の運ばれる運搬器材の作業音と、釘を打ち付けるコンコンという小気味良い音が響き渡る。アイムはその音を聞くのが好きだった。
活気あふれる会議所を象徴する調音を耳にしながら、アイムはもう一眠りつこうかと目を閉じた。



――『やあ、久しぶりだね』


アイム「久々という程、オレとそんなに面識はないだろあんたは」

アイムの頭の中に響いてきた【謎の声】は、今次討伐戦の中で時限の境界の【制約】をアイムに唯一告げてきた声と同じだった。


940 名前:Epilogue. その2:2020/02/10 20:54:12.412 ID:xXkcYgXko

――『そういえばそうだね。というか軍神<アーミーゴッド>のままじゃなくて、またアイムとオニロに戻っちゃったんだ?』

あっけらかんとした口調で声は続ける。アイムも大して気にせず、フンと一息ついて寝返りをうった。

アイム「あれから軍神<アーミーゴッド>の中でオニロとも話し合ったが、こうしたほうがそれぞれの軍の【希望の星】として、大戦を引っ張っていけるんじゃないかって思ってさ」

討伐戦後、軍神は¢に再度頼み込み圧縮装置でアイムとオニロに戻った。
今は二人ともきのこ軍、たけのこ軍に戻りそれぞれ希望の星として会議所になくてはならない存在となっている。


941 名前:Epilogue. その3:2020/02/10 20:55:42.666 ID:xXkcYgXko
――『そうなんだ。まあ何はともあれうまくいって良かったよ』

どこまでも他人事のような声に、アイムは少し黙っていたが意を決して口を開いた。


アイム「なぁ。オレからも質問していいか?」

一陣の風がアイムの頬を再び撫でた。先程とは違い少し警告するように強くだ。

――『なんだい?』




アイム「【預言書】を書いたのはお前だな?」

――『そうだよ』

あっさりと声は認めた。



942 名前:Epilogue. その4:2020/02/10 20:57:57.513 ID:xXkcYgXko

――『うまいストーリーだと思ったんだけどなあ。DBの存在は目に余っていたし、軍神<アーミーゴッド>も皆から忘れられてしょぼくれていたし。
お互い最期に活躍させるにはうってつけの機会だと思ったんだけどねえ』

アイムが軍神の“欠けたピース”でも構わず、声は自身の考えを述べた。

アイム「シューさんの行動はお前でも予想外だったんだな」

――『そうだねえ。あの兵士にも困ったもんだよ。地上と【避難所の避難所】という重要な連絡役を任せていたのに、こっちの予定外の動きをされちゃあ困っちゃうよねえ』

アイム「それでもシューさんを消すまでしなくても良かったんじゃないのか?」

――『あれは無口さんが強行したことだけど、まあどの道彼の動きを封じなくてはいけなかったから遅かれ早かれではあったけどね。
まあまた【策】は練らないとだけどね』

君たちがきてから全てめちゃくちゃだよ。謎の声はそういいからからと笑った。
怒りはなく、ただ本当におもしろがっているだけのようだ。


943 名前:Epilogue. その5:2020/02/10 20:59:41.326 ID:xXkcYgXko
アイム「編纂室もめちゃくちゃになったが、幸い大戦年表は無事だったようだ。テープで紙同士をつなぎ合わせているからちょっとみすぼらしいけどな」

アイムは喉の渇きを感じ、持ってきたチョコを口に含んだ。

――『時限の境界も編纂室もこの戦いの後にまだ使う予定があったけど、預言書が使えなくなっちゃったからね。まあ好きに使ってよ』

アイム「編纂室はともかく、時限の境界はもう使わねえよ、あんなところ。懲り懲りだ…」

アイムは再び草むらにその身を落とした。
木陰から零れる木漏れ陽を浴びながら、筍魂程ではないが最近はひなたぼっこの良さを分かってきた、これも戦闘術・魂の教えかな、と見当違いの冗談をアイムは考えた。
こんなくだらない考えができるようになったのも、目の前の謎の声とも平気で話していられるのも、全て平和が戻ってきたからだと実感した。


944 名前:Epilogue. その6:2020/02/10 21:02:06.313 ID:xXkcYgXko


アイム「なあ、これだけは一つ言っておく」

――『なんだい?』

アイムは暫く陽を浴びながら黙っていたが再び口を開いた。
謎の声は興味津々とばかりに聞き返してきた。

アイム「兵士にもよるだろうが、会議所の中にはあんたらを許してない兵士も多い」

――『まあそうだろうねえ』

DBと軍神<アーミーゴッド>を相打ちさせて世界を操っているなんて、いかにも悪の親玉みたいだものねえ。
屈託ない笑い声を上げながら謎の声は同調した。

アイム「だけど少なくともオレとオニロはあんたらのことを嫌ってはいない」

――『へえ。君たちを消そうとした張本人なのにかい?』

アイム「やり方に違いはあれど、テメエも大戦世界の継続、発展を願っているんだろう?皆と考えに違いはない、同士さ」

――『…』

初めて声は押し黙った。押し黙ったように聞こえただけかもしれないが、アイムは構わず続けた。


945 名前:Epilogue. その7:2020/02/10 21:02:59.847 ID:xXkcYgXko
アイム「オレとオニロはこれからも軍神の“欠けたピース”として、会議所を率いていく。
テメエらが裏で世界をより良くするようにこれまで通りコソコソ動き回るのは別にいい。
だけど、もし会議所で起こそうとしている案とテメエらの案が相反して、自分たちの案を押し通そうと騒乱を起こそうというのなら―」






― その時は世界の創始者であろうが容赦なく叩き斬るからな。








946 名前:Epilogue. その8:2020/02/10 21:05:44.769 ID:xXkcYgXko

アイムの最後の言葉に、謎の声こと大戦世界の創始者・たけのこ軍 まいうは少し黙った後、実に愉快そうに笑い始めた。


――『あはははは。やはり君たちはおもしろいねえ。見ていて飽きない。君たちに任せていれば会議所も大戦世界も安泰だッ。
そう考えると預言書を破棄して君たちを生き残らせた会議所の判断は間違ってなかったのかな』

アイム「あんたもたまには遊びに来いよ」


――『ふふ、考えておくよ。さて、そろそろお別れだ。こちらはこちらで忙しいんだよ。じゃあねアイム』


アイム「じゃあな、まいうさん」



――『大戦に幸あれ』



947 名前:Epilogue. その9:2020/02/10 21:07:23.884 ID:xXkcYgXko

声は途絶え、辺りには再び静けさが戻った。
さてと、と一人息を吐き、アイムは日課の昼寝に戻ろうとした。

すると、間髪入れずに丘を登ってくる一人のたけのこ軍兵士の姿が見えた。オニロだ。
オニロが走ってきた。何やら少し怒っている。

オニロ「やっぱりここにいたねアイムッ!定例会議の時間はもうすぐだっていうのに、サボって昼寝してッ!」

アイム「ゲッ。なんで此処が分かった、誰にも言ってなかったのにッ」

オニロ「ボクはアイムと同じ軍神<アーミーゴッド>の片割れだからね。アイムの考えることくらいお見通しさッ!」

アイム「気色の悪いことを言うな…眠気がふっとんだじゃねえか」


948 名前:Epilogue. その10:2020/02/10 21:10:14.207 ID:xXkcYgXko

オニロ「ほら戻るよ、アイムッ!今日は今度開かれる大戦に向けた新ルールの策定と、復興に向けた新プランを改めて考えないと」

アイムは渋々といった様子で起き上がる。

アイム「へいへい。段々、議長っぷりが板に付いてきたな。どっかにいるシューさんも浮かばれるなこりゃ」

オニロ「なんかシューさんの怠け癖をアイムが引き継いでいる気がするけどね…ほら、さっさと行くよッ!」



アイムとオニロの二人は会議所へ戻っていく。




二人のいた場所に再び、さあとそよ風が吹いた。
咲いていた草花が、二人を見送るようにゆらゆらと揺れていた。





Fin.


949 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 21:12:54.350 ID:xXkcYgXko
2014/01/11の投稿開始からなんとほぼ6年。
待ってくれていた方には大変申し訳無いと思いつつ、なんとか完結いたしました。
本当にありがとうございます。詳しい裏設定はこれよりwikiの方で公開したいと思いますが。

まずは、本当にありがとうございました。

950 名前:たけのこ軍:2020/02/10 21:18:28.075 ID:Ionp5xOk0
長年の投稿乙。
謎の声の正体、残ってそうなところから考えたけどまぁ順当?
ユリガミサマの外伝はあるのかなぁ?

951 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 21:39:52.538 ID:xXkcYgXko
>>950
ありがとうございます。ユリガミサマを昨日改めて読み返しましたが快作ですね、あれは。
最後の投稿を大いにアシストしました。ありがとうございます。お待ちしています。

ということで設定資料集を公開します。
結構盛りだくさんにしてみたのでお時間ある時にみてください。

wars設定(ネタバレ)
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%c0%df%c4%ea%a1%ca%a5%cd%a5%bf%a5%d0%a5%ec%a1%cb#history



952 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 21:40:22.518 ID:xXkcYgXko
>>951
すみませんURLはこちらのほうがいいかも。
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%c0%df%c4%ea%a1%ca%a5%cd%a5%bf%a5%d0%a5%ec%a1%cb


953 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 23:22:18.156 ID:xXkcYgXko
warsまとめ
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%a4%de%a4%c8%a4%e1

wikiにも投下終わりました。
まだサイドストーリーとか書きたいものはあるけどとりあえずまずは一区切り。

954 名前:791:2020/03/12 23:06:03.020 ID:mSt92ZoMo
ss本当に本当にお疲れさまでした!!!
すごく面白かった!

955 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/03/15 23:25:15.111 ID:MbDkBLmQo
>>954
うれしい。ありがとうございます。791さんの応援もあり最後までがんばれました。

次回作も予定していますのでよかったらみてね。warsよりは短くします。
きのたけカスケード ss風スレッド
http://kinohinan4.s601.xrea.com/test/read.cgi/prayforkinotake/1584282254/


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