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ユリガミノカナタニ2

1 名前:社長:2016/09/04 00:44:24.091 ID:PNG5mMkE0
邪神スピリットJ あらすじ

鬼のマタギ、ディアナは人魚を狩る狩人を殺すとともに、襲われかけていた幼い人魚ネプトゥーンを助けた。
そして数十年後―――再び狩人を殺したディアナだが、最後の一人の自爆で大怪我を負って海の底に沈んでしまった。

そこには、ネプトゥーンの親が治める竜宮があり、ディアナも人魚の肉を狙った存在と勘違いされた。
それをネプトゥーンは訂正しようとしたが聞き入れられず、ディアナを助けて駆け落ちしようとした。

ディアナに人魚の血を飲ませ、傷を癒したネプトゥーン。
ネプトゥーンは助けられた時から好きになったとディアナに告白し、二人は逃げることにした。

そして―――無事に逃げ、海岸まで上がることができた。

2 名前:社長:2016/09/04 01:13:44.476 ID:PNG5mMkE0
さて――海の底と、地上とでは時の流れは違う。
竜宮での、たった少しの時間は、地上の世界の流れを大きく変えていた。


取り敢えず、ディアナはネプトゥーンと共に、情報屋―長老のもとへ向かった。
依頼自体は終わらせているが、自身は行方不明と扱われていると思われるため、顔見せぐらいは必要だと思ったからだ。

3 名前:社長:2016/09/04 01:19:03.891 ID:PNG5mMkE0
だが、長老は、病気をこじらせ、死にかけていた―――。

長老「………うむ、すまんな…お前が戻らん間に、病魔に蝕まれてしまってな……
   最近は人間がこのあたりに住み着き、鬼達も元居た場所へ帰り――後釜も居ないから、お前に頼む依頼もない……」

ディアナ「そう……取り敢えず、あの依頼は終わったと見なしていいか?」

長老「ああ………報酬額を念のため取っておいてよかった、これだ…」

ディアナ「うむ……」

長老は、その後、ディアナの袖を掴み、後ろに隠れていたネプトゥーンに気が付いた。

4 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:20:40.990 ID:PNG5mMkE0
長老「そちらの嬢ちゃんは、…恋人、か……?」

ディアナ「そのような存在かもしれないな」
ネプトゥーン「はっ、はい…」

ネプトゥーンは、ディアナ以外に初めて話す、外界の存在に緊張していた。
その長老の目は、ネプトゥーン自身が人魚であると理解しているようであり、なおさら―――。
選んで外に来たけれど、やはり自身は人魚だから―――。

5 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:22:02.006 ID:PNG5mMkE0
長老「……いい目をしている、ディアナともずっと生きていけるだろう…」
だが、長老は少し呟いただけだった。突っ込みもせず、深くも聞かず。

ネプトゥーン「あ、ありがとう…」
その反応に、少し驚きながらも返答し、ネプトゥーンは頭を下げた。

長老「ディアナよ、お前は元気でやってくれ…ネプトゥーンも、な」

ディアナはその言葉に一礼し、ディアナ達は長老のもとを後にした。

6 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:31:40.354 ID:PNG5mMkE0
次にディアナ達は、ディアナの隠れ家へと行った。
ディアナの隠れ家は、時の流れによって少し古びたところもあったが、
あらかた問題ないままで、武器なども其のまま残っていた。

ディアナ「ふむ……少々ガタがきているのもあるが……問題ないようだ」
その後ディアナは、冷静に武器の様子を確認した。


そんなディアナの姿に、ネプトゥーンは見惚れていた。
その手慣れた動きが、どれだけマタギとして生きてきたかを表している。

7 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:40:11.459 ID:PNG5mMkE0
そうこうするうち、ディアナは武器の点検を終えたようで、ネプトゥーンを見つめた。
ネプトゥーン「ど、どうしたの、ディアナ?」

ディアナ「俺を、じいっと見ていたが……此れらの武器に、興味があるのかい?」

本当はそれよりも、ディアナに興味があったけれど、実は武器にも興味があった。

ネプトゥーン「わぁ……ディアナ、これはなあに?」
ネプトゥーンは、もともと好奇心で海の底からこっそり抜け出したほど、好奇心が強い。
だから、見た事もない武器ひとつひとつに、子供の様に目を輝かせた。

ディアナ「ああ、此れは―――」
そして、其の度に、ディアナはネプトゥーンに丁寧に教えてあげた。

8 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:42:33.510 ID:PNG5mMkE0
其の後、二人は禊をした。

ネプトゥーンの身体は、ザンの名に違わぬ、美しく透き通った白い肌と、しなやかな線から成っていた。
一方、ディアナの身体は、過剰でも過少でもない、程よい筋肉が付き、体中に傷痕のある、
―――まさに、鬼と言われて思い浮かぶ身体をしていた。


9 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:43:23.859 ID:PNG5mMkE0
ディアナは別段、他人の身体について、戦いでどう動くか、ぐらいしか考えない性分な為か、
ネプトゥーンの身体を見ても何も感じなかったけれど、ネプトゥーンはディアナの身体を見て、心をきゅんっとさせた。

その筋肉と身体の傷が、格好良く見え、其処に相見える女らしい身体の線が美しかったからだ―――。

10 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:48:14.611 ID:PNG5mMkE0
また、ディアナはネプトゥーンの其の感情に気付くことはなかった。
ネプトゥーンが顔を赤らめていたのも、水に囲まれない生活で、禊をしたためと考え、さっさと禊を済ませた。

ネプトゥーンは、ぼうっとしていたけれど、ディアナに肩を叩かれ、はっと気が付いた。

ディアナ「ネプトゥーン、ぼうっとしていたようだけど……」

ネプトゥーン「あ、あっ、だ、大丈夫っ」

ディアナ「そうかい…?外で禊をすることは、慣れないだろうから、手伝おうか?」
顔を赤らめて慌てるネプトゥーンの手を、ディアナは優しく握ってあげた。

ネプトゥーン「ほ、本当に、大丈夫だからっ」
ネプトゥーンは、慌てながら、禊を済ませた。

11 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:48:55.873 ID:PNG5mMkE0
そうしていると、やがて夜が更けた。

初めて見る月にもネプトゥーンは心を躍らせ、ディアナはその様子を優しい目で眺めていた。

12 名前:社長:2016/09/04 01:52:04.660 ID:PNG5mMkE0
更新終わり。今更だけどディアナは俺っ娘です。

13 名前:社長:2016/09/04 02:12:25.370 ID:PNG5mMkE0
ディアナ
・身長  :183cm
・体重  :73kg
・スリーサイズ:108-63-97
・髪色  :金
・目の色 :黒
・利き手 :両利き
・一人称 :俺
・得意なこと :銃などの、遠距離攻撃をする武器の扱い
・不得意なこと:恋の行方を読む事

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/836/diana.jpg

14 名前:社長:2016/09/04 02:20:23.272 ID:PNG5mMkE0
ネプトゥーン
・身長  :157cm
・体重  :49kg
・スリーサイズ:80-57-79
・髪色  :青
・目の色 :緑
・利き手 :右利き
・一人称 :わたし
・得意なこと :泳ぎ、家庭的なこと
・不得意なこと:戦い

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/837/neptune.jpg

ネプトゥーンの【力】
壁を泳ぐことができる。対象は自身と、自身が触れているもの。
あくまで自身が壁と認識したものが限定で、例えば壁から空中に飛び出すと普通に転落する。

>>13
あとディアナの眼は青色の設定だった。

15 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:43:28.491 ID:t43rV0Uw0
ディアナは、これまで孤独に生きていたから、何にでも興味を示すネプトゥーンが新鮮だった。
新しいものを見て、心踊らせる気持ちよりも、冷静に見る性格であるため、なおさら――。


ネプトゥーンは、空に浮かぶ月を見ていたが、ふとディアナの優しい横顔が目に留まった。
格好良い、凛々しい顔貌の、其の鬼の表情が、その姿が、心を揺さぶってたまらない。

ネプトゥーンの頬は、紅色に染まり、其れを隠すように両手で頬を抑えた。

16 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:45:29.032 ID:t43rV0Uw0
ディアナ「ん……?」

その視線にディアナも気が付き、ネプトゥーンをじいっと見つめた。

ネプトゥーン「あ、あの……ディアナっ」
ネプトゥーンは、恥ずかしそうに、ディアナの手をぎゅうっと握りしめた。

ディアナ「ん……?どうかしたかい?」
其の行動に、ディアナは優しい声色でネプトゥーンに話しかけた。

ネプトゥーン「そ、そのっ
       子供っぽいお願いかもしれないけれど、そのっ、一緒の、一緒のお布団で寝たいんだけれど…」

ディアナ「わかった、布団に行こう」

二人は、寝床に行った。


17 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:51:02.297 ID:t43rV0Uw0
寝床で、一つの布団にディアナとネプトゥーンは、くっついて入った。

ディアナは布団を仰向けになり、頭の後ろで手を組んでいると、ネプトゥーンがじっとディアナの顔を見た。
何か―――とディアナが問おうとするが、それは声にならなかった―――。


ネプトゥーン「ん……っ……」
ネプトゥーンは、ディアナの唇に自分の唇を重ねた。

ディアナ「――――はぁっ、んっ…」
柔らかな唇の感触が、ディアナの唇に伝わり、さらにネプトゥーンの柔らかな舌がディアナの舌をなぞった。
味わったことのない初めての感覚に、ディアナはそのまま、されるがままに舌を絡み合わされた。

18 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:51:40.883 ID:t43rV0Uw0
気が付くと、ディアナとネプトゥーンの口の間に唾液のアーチが出来ていた。
頬を紅潮させたネプトゥーンは、甘えた二つの瞳でディアナを見つめた。

ネプトゥーン「……その、好きな者とは、こうするのが、そのっ、習わしなのっ
       あのっ、だからっ」
ディアナは、恥ずかしがりながら、そう答えるネプトゥーンを見て、其れが求愛行動だと理解し、
自身の仰向けに横たえた身体を起こして、ディアナは、ネプトゥーンの唇に自身の唇を重ねた。

19 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:54:58.354 ID:t43rV0Uw0
ネプトゥーン「えー――?」
紅潮した頬のまま、困惑するネプトゥーンに、

ディアナ「―――なら、俺もそうした方がいいだろう
     俺は、ネプトゥーンが好きなのだから――ね?」
―――そう告げた。


ディアナも、ネプトゥーンの血を貰った時に、恋心を覚えたからだ。
その後、二人は布団の中で、顔を見合わせ、互いに手を重ね、身体の距離を狭め、身体を重ね合った―――。


20 名前:社長:2016/09/22 23:55:51.769 ID:t43rV0Uw0
「ベッドシーンは?」「カットマン」

21 名前:社長:2016/09/25 03:47:10.442 ID:GWlG.Qno0
http://dl1.getuploader.com/g/57e6c9f4-a2a8-40db-9db3-06cbb63022d0/kinotakeuproloader/864/%E3%81%B2%E3%81%A8%E6%99%82%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%8C%E3%81%A1%E3%81%8C%E3%81%84.txt

某氏の要望 ひと時のすれちがいのベッドシーンあり版
まあそこまですごいようなものではないけど。

22 名前:たけのこ軍 791の人:2016/09/25 19:48:02.493 ID:M5f5C5X.0
ありがとう!満足!

23 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:22:46.343 ID:0mx6uDdw0
身体を重ね合った朝、ディアナは朝日が昇るぐらいの刻に起きた。

ディアナは、隣で眠っているネプトゥーンを見つめ、その寝顔をじっと見ていた。

百の年をとうに越している彼女は、自身が産まれ、家族と過ごした事などまるで覚えていなかった。
それに、昔から愛という事柄には興味はないまま生きてきた。

だが、今は、ネプトゥーンという存在が居る。
初めて恋心を覚えた人魚の、優しい寝顔が、何故か心を安らかにさせた。


24 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:23:20.089 ID:0mx6uDdw0
そして、昨日の夜に身体を重ね合わせたまま、いつしか眠ったため、
二人とも生まれたままの姿であった事も相まって、昨夜の様に頬を桜色に染めた。

ネプトゥーン「あっ、あっ……その、こんな、慌てちゃって、えっとっ」

何とか言葉を紡ごうとするも、言葉にならない。

25 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:24:27.528 ID:0mx6uDdw0
ディアナ「大丈夫―――俺は、ネプトゥーン、君の事が好きなんだ
     慌てなくていい、離れたりもしないさ」
そんなネプトゥーンに、ディアナは優しい表情と共にキスをした。

ネプトゥーン「あ――」
ネプトゥーンの、糸が絡まり巻き付いて惑った心は、その言葉と行動で解け、気持ちが解れ――。

ディアナ「さ、服を着て、朝飯にしよう―――」


ネプトゥーン「うんっ!」
笑顔で、ディアナの言葉に応えられるようになった。


いつしか、空には朝日が昇っていた―――。

26 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:28:14.797 ID:0mx6uDdw0
――――それから、ディアナは、マタギの一員として狩りをしていた。
以前と違うことは、かつては専ら長老の依頼で狩りをしていたが、種族を問わず様々な存在から依頼を受けるようになったことだ。

また、ネプトゥーンは、ディアナと一緒に鍛錬するようになった。
その甲斐あってか、ディアナほどではないものの、鍛えた兵士に襲われた時に、即座に反撃できるほどの護身術が身に付いた。

最も――彼女は戦いが好きではないから、其れを積極的に使う事はなかった。
もっぱら彼女は、隠れ家を守り、家事を行い、時々食料の調達をしていた。

27 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:28:47.241 ID:0mx6uDdw0
そして、時の流れと共に銃なる武器も作られた。
ディアナは、遠距離戦用の武器に才能があり、銃の其れも同じくあった。
銃は、攻撃射程距離を飛躍的に伸ばし、ディアナの武器として多く使われるようになった。

ディアナの才能は、唯上手いと言うだけではなく、
遠距離から、針の孔ほどしか見えぬ猛獣の急所を狙い撃ったり、枝葉で隠れた獣を読み撃ちする等、
常人では会得することのできない技術すら可能にするほどに、満ち溢れていた。

28 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:30:27.263 ID:0mx6uDdw0
そうやって、二人は何年過ごしただろう―――。
狩りをする暮らしだけではなく、時には二人はぶらぶらと適当に旅をした。

美しい湧水のある農村、めっぽう強い巫女がならず者を倒した伝説のある村、甘くとろける、お菓子の本場の街―――。
その景色などに触れ、その土地のものを楽しみ、また、二人の愛の絆を、心で、身体で、確かめあったりもした。

29 名前:社長:2016/09/26 00:33:48.835 ID:0mx6uDdw0
ディアナとネプトゥーンの関係というかコンセプトは、
仕事人間と専業主婦みたいな感じだけどディアナはフツウに家事はできる設定。

ちなみにディアナは大戦に参加したら普通にさくっと撃破王取れる実力があるらしい。

30 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:02:33.090 ID:7MO0iTZI0
――――ある日、ディアナは狩りの依頼を受けある山に来た。
標的はある【天狗】―――。人間を獲って喰うらしく、近隣の里の住人が多数死体で見つかったという。
また、きれいだと言われている女は死体すらも見つからないらしい。
里には【天狗】に立ち向かえる人間も居ないため、里の人間の一人が依頼し、ディアナがそれを果たしに行ったのだ。

31 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:02:54.063 ID:7MO0iTZI0
ディアナは武器を懐に仕舞い、険しい岩山を身一つで登って行った。
山の中腹に辿り着いた時、何者かが来る気配を感じ、ディアナは、さっと岩陰に身を潜めた。

32 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:13.850 ID:7MO0iTZI0
ディアナ「………」
上空で、銀髪の天狗が一匹羽ばたいていた。

顔は優男といった風で、一見人喰い天狗の様には見えなかった。
だが、直感的に彼の人が狩る対象だと察知した。


33 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:26.443 ID:7MO0iTZI0
奴からは、血の匂いが―――拭っても消せぬ、命を奪った者だけが分かる独特の匂いがしたからだ。
ディアナの隠れ家には禊をする場所があり、ディアナは毎晩禊をしている。

それは、狩る対象に、自身の匂いを気取られないためだ――。
だが、それでも、時々幾つもの修羅場を経験した獣は、命を奪ったディアナを察知することがある――。

ディアナはマタギとして数々の狩猟をこなし、其れを知っていた。
そして何時しか、ディアナもその血の匂いを理解できるようになったのだ―――。

34 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:48.270 ID:7MO0iTZI0
ディアナは、身を隠しながら、恐らく奴の棲家で在る山の頂上へ登って行った。
其処には、天狗の隠れ家らしき洞穴があった。

ディアナは様子を伺い、中で聞こえる声に耳を傾けていた。

男の声「オラぁッ!いつ産まれるんだァ!さっさと産めっ、このアマァ!」

女の声「っ……うっ、うっ………」

男の声「けッ、俺が帰ってくるまでに産まなかったら、腹の子もろとも殺して喰うからな…
    そして、また里の人間でもさらってやるさ」

35 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:05:12.037 ID:7MO0iTZI0
ディアナ(……標的で、合っているな)

そして、ディアナは洞窟の入り口の近くで身を潜め、
肩を怒らせて外に出た天狗が外に出たのを見て、懐に隠した銃を抜き、天狗の頭を撃ち抜いた。

ディアナ「………脈もなし、息もなし、念のために首の骨を折っておこう……」
そして、天狗が死んだことを確認し、洞穴の中へ入って行った。

36 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:05:31.034 ID:7MO0iTZI0
洞穴の奥には、散らばった人骨、そして、赤ん坊を抱えた女が居た。

女「だ、誰っ……?」
女は怯えた表情で、ディアナを見つめていた―――。

ディアナ「俺は、ディアナ……
     里の人間に頼まれて、天狗狩りをしに来たマタギだ」

女「えっ……
  ま、まさか……あ、あいつを……」

ディアナ「此の手で殺したよ――
     失礼かもしれんが、洞穴に入った時に、会話が聞こえてね

     それで、奴を狩るべき対象と認識した」

37 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:06:38.726 ID:7MO0iTZI0
女「あ、ああ――――
  やっと―――やっと、誰も喰われることが、無くなるんだ――

  ありがとう―――ディアナ、さん……」
女は安堵した表情を見せた。

ディアナ「……そうなるだろう
     ところで、貴女(アンタ)と、その赤子は如何するのかな……

     其の身体では、山を一人では下れんだろう
     俺が手を貸そうか――?」

女「………あ、あの」

ディアナ「ん?」

女「わたしは、もう――もう、疲れてしまいました
  どうか、この赤ちゃんだけ―――赤ちゃんだけを、下山させて……」

38 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:06:56.806 ID:7MO0iTZI0
ディアナ「貴女は、此処で死ぬ――と言う事で、いい?
     それと―――その赤ん坊は、里の誰に渡せばいいのか教えて欲しい」

女「はい……
  でも、赤ちゃんはあいつとの子……だから、羽が生えている……

  里の人は、天狗に恐怖しているし、恨みを晴らすかもしれないから…
  別の、安全なところに、送り届けて……」

ディアナ「分かった―――
     そして――此処で、俺は貴女にとどめを刺すが――それでいい?」

ディアナの問いに、女は無言で頷いた。
ディアナは懐の銃を抜き、一発の弾丸で女を撃ち殺した。
そして、産声をあげている赤子に目をやった。

39 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:07:17.604 ID:7MO0iTZI0
ディアナは、その赤子を拾い上げると、不思議なことに気が付いた。
ディアナ「此の天狗の赤子―――両目の色が、違っている―――
     異相の子、か………」

其の後、ディアナは天狗の赤子を棲家へ持って帰った。

40 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:10:14.388 ID:7MO0iTZI0
ネプトゥーン「お帰り、無事に済んだんだ……え、えと…この赤ちゃんは?」
ネプトゥーンは、突然のことに面食らい、困惑した表情をしていた。

ディアナ「俺が狩りに行った人喰いの天狗が、女に産ませたものらしい―――
     女に赤子を頼まれた―何処か安全な処に送り届けて欲しいと―――」

ネプトゥーン「そうなんだ……で、この赤ちゃんを…どうするの?」

ディアナ「この赤子は、適当な天狗の里に送り届けるのもいいかもしれん――
     だが偶然、俺と出会った―――これも一つの運命だ、と俺は思った

     ならば、何かの縁ということでこの赤子を、育てようと思って、ね―」
ディアナは、優しい表情で赤子を見ていた。

ネプトゥーン「そういうことなら、問題ないよっ
       それに、わたしたちじゃ、子供はできないし―――」
ネプトゥーンは、ディアナの表情を見て、さらに彼女が好きになった。
少し顔を赤らめ、照れた表情を見せながら大きく頷いて、赤ん坊を撫でてあげた。

41 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:10:47.945 ID:7MO0iTZI0
二人は、天狗の赤子を育てることにした。
永久に生きる運命を背負わずに独り立ちさせる為に、余計な事をする【ザン】の血は、使わずに―――。

名は、アポロと名付けた―――。

42 名前:社長:2016/10/02 20:12:21.375 ID:7MO0iTZI0
この天狗は天狗ヶ里殺人事件に出てきた天狗の仲間という裏設定があるらしい
ちなみにまだ姿形出てない百合神様なら式神を使ったおとり作戦を使いそう。

43 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:21:22.352 ID:jaKMg8Jg0
赤子はすくすくと育ち、美しい銀色の髪と、右に琥珀色の、左に翡翠色の瞳を持つ少女になった。
純粋無垢で明るい性格の少女に―――。


アポロ「ねぇ、この恋物語―――胸をわくわくさせるね…
    僕も、この話の様な、綺麗な恋がしたいな……」

読書が好きで、色々な本を読む度に顔を明るくし、その魅力を伝える子。


ディアナ「―――
     ―――――という方法で、此の様にして、獲物を狩った……」

アポロ「成程……やっぱり、獲物の視点で視ると言うことが需要なんだねっ」

また、ディアナの【仕事】の話も聞き、其れにも興味津々の様子だった。


44 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:23:33.690 ID:jaKMg8Jg0
アポロ「う、どうして出ないの……どうしてっ
    精神力を引き出す―――引き出しても、まったく何も使えないのっ――?

    僕は、僕は、天狗として………」

ネプトゥーン「落ち着いてっ……
       焦らないで……わたしたちは、見棄てないからっ…」

だが――アポロは天狗でありながら、空を飛ぶことが出来なかった。
天狗というものは、風の術を用いて空を飛ぶ生き物だが、アポロは何故か、風の術を使うことが出来なかった。

アポロは羽の生えた人間、といえる存在だった。
天狗の里では、不具の者――ずっと飛ぶことのできない者は要らないと、殺す処も多いと聞く。

独り立ちをさせたくとも、難しい―――。

45 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:23:47.929 ID:jaKMg8Jg0
アポロ「ねぇ、ディアナ、ネプトゥーン……僕は……」
ネプトゥーン「大丈夫―――ずっとわたしたちの処に居てもいいから、ねっ」

ディアナとネプトゥーンは、アポロとずっと暮らす事を決めた。


46 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:24:20.407 ID:jaKMg8Jg0
三人は、まるで親子のような関係になっていた。

最も、親にあたるディアナとネプトゥーンは両方とも女だから、一般的な親子とは、少しだけ違うけれども―。

47 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:25:07.217 ID:jaKMg8Jg0
アポロが9歳の頃、旅をしようと三人は色々な処を巡った―――。

そして、とある街に辿り着いた。
街は平和で活気に溢れ、いい宿もあったので、其処を拠点に数日間滞在することにした。

48 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:26:57.659 ID:jaKMg8Jg0
ディアナは武器を買うために一度二人から離れ、ネプトゥーンとアポロはその間、街をぶらぶら歩いた。
―――そんなとき、二人の前に少年たちが現れた。


少年達は、アポロのその眼を見て、「呪われた奴がいるぞ」などと声を荒げ、仕舞には石を投げようとした。
ネプトゥーンは、さっとアポロの前に立ちはだかろうとした―――が、その前に一人の少女が大声を出していた。

49 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:28:57.433 ID:jaKMg8Jg0
少女「―――やめなさいっ、あなたたちっ!」

アポロぐらいの歳の、短めの髪の、美しいみどりの黒髪の、百合の綺麗な髪飾りをした少女が、アポロの前に立った。
どうやら、少女には、少年達は敵わないらしく、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

50 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:29:47.242 ID:jaKMg8Jg0
ネプトゥーン「あ、助けてくれたの…ね、助けてもらってありがとう……
       何とかしようとしたら、貴女が来てくれて、助かったわ
       よそものだから、もし何かやらかしたら、問題になるかもしれないし」
ネプトゥーンは礼の言葉を告げた。

少女「いいんですよ、これぐらい…あいつら、けっこう悪がきで…さっきのも、からかうためにやったのとは、思うんですけどね」
少女は丁寧にネプトゥーンにお礼を言いながら、少年達が逃げて行った方向を見つめた。

そして、アポロも「ありがとう」と、少女に礼を言った。
ネプトゥーンは、其の後、少女と共に喫茶店で休息することを決めた。

51 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:35:00.903 ID:jaKMg8Jg0
アポロと少女――その名はユノ――は、偶然にも同い年だった。
それが故、話も弾み、ネプトゥーンはその様子をにこにこしながら眺めていた。
しかし、その時間は永遠と続かず―――やがて、空が茜色に染まるころには、ユノも家に帰らねばならなかった。

アポロは、まだまだ、ユノとの触れ合いが足りないと思ったのか、ユノに言った。
アポロ「僕たち、しばらくこの街にいるから、ね?一緒に、またお話ししよう?」

ユノ「―――え……うん、わかった、いいよ!」
ユノは、その発言に呆気にとられたようだったが――すぐに、にっこりと笑って、快諾してくれた。

52 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:36:18.937 ID:jaKMg8Jg0
ネプトゥーンとアポロは宿に帰り、ディアナにユノとの出会いを話すと、
ディアナ自身がアポロを守れる位置に居なかったことを自省していたが、アポロとユノとの友情が芽生えた事を祝福してくれた。


53 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:37:35.444 ID:jaKMg8Jg0
そして翌日から、アポロとユノは一緒に遊んだり、話したりするようになった。
ユノは、この街の市長の娘だという―――だから、恐らく件の少年達も逃げたのだろうか。
家族は市長である父と妹ひとり――それと、家政婦―――ユノの母親は、妹を産んだ時に亡くなったという。
彼女の記憶にある母親は、神に仕えるもののような雰囲気を持っていた人らしく、その血が受け継がれているのか、彼女の髪もそう見えた。

また、市長は人柄のいい人物らしく、この街が平穏に保たれているのもその為らしかった。

54 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:40:00.661 ID:jaKMg8Jg0
其の様子を、ディアナとネプトゥーンは見守っていた。
けれども、ユノは人間、アポロは天狗―――アポロの服装は、羽が服装の一部に見えるような服を着ていたから違和感はないけれど、仲が深くなればいずれ分かる。

二人は、此の幸せな時が永久に続かない事に悩みながら、楽しそうなアポロとユノを見守っていた。

55 名前:社長:2016/10/22 01:42:14.527 ID:jaKMg8Jg0
某エヴァーグリーン・ソーマ氏の許可は得ています!

56 名前:社長:2016/10/22 01:54:00.221 ID:jaKMg8Jg0
アポロ
・身長  :132cm
・体重  :30kg
・スリーサイズ:62-49-67
・髪色  :銀
・目の色 :右眼は琥珀色、左眼は翡翠色
・利き手 :左利き
・一人称 :僕
・得意なこと :本を読む事、そして得た知識で思考する事。
・不得意なこと:天狗の風の術

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/886/Apollo.jpg


―アポロは風の術が使えない。
ヤミや、他の話で出てきた天狗は風の術が使え、その力も使って空を舞っている。
何故使えないのか―――それはもう少し先でわかるが、一体如何して、彼女はそうなのか―――。

若しかすれば、天狗と人の間から産まれた子のためなのだろうか?
其の真の理由は、だれにも分からない……。


57 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:32:00.438 ID:EkIxVLm.0
数日が経った。
―――そろそろ街を発たねばならぬ時が来た。

アポロは、永遠に居るという選択肢も考えたが、アポロは自身が天狗で在る事を考え、街を出る事を決めた。


そして、ディアナとネプトゥーンにこの街を経つ前日の日――、ユノに、自身が天狗で在ることを告白していいか―と問うた。
二人は、ユノが秘密を絶対に洩らさないこと――それを約束することを条件に、許可した。


58 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:39:17.990 ID:EkIxVLm.0
次の日―――。

アポロは、ユノに明日街を出て行くこと、そして自身が天狗である事を話した。
ユノ「そっか、さびしくなるね――
   アポロちゃんは、人とは違うイキモノなんだ―――すごいっ」

アポロ「そう言ってもらえるなんて…お世辞でも、うれしいな
    でも、此れは誰にも話しちゃ駄目なことなの…僕たちだけの、秘密だよ?」

ユノ「うん、わかった…秘密だよ―――」
アポロ「ユノちゃん――――」

ユノ「なら、わたしも秘密を…誰にも話してはいけない秘密を、教えるね
   わたしのお母さんは……なんでも、遠い国で神に仕えていたらしいの

   そして、神の【剣】を持ってて、其れが家に封じてあるの……」


アポロ「秘密……僕の秘密と比べると、なんだか大きい秘密だけど
    ありがとう、ユノちゃん……」

そして二人は、秘密を心に仕舞う合図のように―――口づけをした。

59 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:45:26.686 ID:EkIxVLm.0
ユノ「これで、遠くに、行っちゃうんだね――
   また逢えたらいいけれど、難しくなるかもね―」
ユノの顔は、どこか寂しそうだった。

そんなユノの顔を見て、アポロはふと思いついたことを口に出した。

アポロ「そうだね―そうだ、持っているものを交換しよう?」

ユノ「持っている、もの?」
ユノはきょとんとした顔で見つめたけれど、直ぐにその意図を理解したらしい。

ユノ「そうだね、持っているものを見て、想い出すことができれば――」

アポロ「うん―――僕は――持っているというと、変だけど――僕の背中の、此の羽を」

ユノ「うーん……じゃあ、わたしは、この髪飾りを――」

アポロ「ありがとうっ、
    ――ずっと、ずっと友達、だよ?」

ユノ「うんっ!
   そしてもし、大人になった時、また会えたらいいねっ」


ユノは羽を、アポロは髪飾りを受け取り―――別れのさみしさを隠すように、笑顔で別れた。


60 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:46:56.487 ID:EkIxVLm.0
―――その様子を……
遠くから見守っていたネプトゥーンとディアナにも気づかれない死角で、聞いていた【男】が居た。


男「…………くくっ、こんな処で巡り合うとは、な……
  其れにあの少女……いい名前だ……」



61 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:51:38.642 ID:EkIxVLm.0
―――そして、ディアナ達が街を去る前日の夜。

その【男】は、街を歩いていた。


名はユピテル―――筋骨隆々とした体格のいい男だが、その目つきは鋭く、人ではない――悪魔であった。
深緑色のコートを羽織り、そいつは市長の家に乗り込んだ。


ユノとアポロの会話を聞いて知った情報、封印された【剣】―――。
ユピテルは其れを求めて乗り込んだ。

ユピテルは雷を操る力を持ってして、家を荒らし、眠っていた【剣】を掘り起した。



62 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:52:27.166 ID:EkIxVLm.0
―――雷を操る力があるということは、轟音が響き渡るという事であり、街中にも其の音は響いた。
ディアナ達もそれに気が付き、市長の家に辿り着いた時には、家は業火に包まれていた。

それと共に、街の辺りにも雷の力により火が付き、辺りは阿鼻叫喚になってしまった。

アポロは、ディアナ達の制止も振り切り、街へ、市長の家へ駈け出して行った。

63 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:53:46.029 ID:EkIxVLm.0

市長の家は、業火に包まれていた。
業火の中から、アポロの前に、―――緑色の悪魔、ユピテルが、ユノを抱えて現れた。
その顔つきは険しく、頭に生えた猫のような耳をすこし跳ねてアポロを見つめていたが、
邪魔だと言わんばかりに、アポロに雷を飛ばした。


だが―――雷はアポロの身体に当たる前に、消滅した。
二度三度雷を飛ばしても受け付けぬアポロに気味の悪いものを覚えたユピテルは、ユノを投げ捨て、
アポロの注意を逸らした隙に遠く向こうへ逃げて行った。

64 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:54:34.197 ID:EkIxVLm.0
ユノは、まるで人形のように、硝子玉のような目をして、ただ虚空を見つめていた。
其れを見て、アポロは悟った――ユノは魂を抜き取られてしまったのだと。

アポロに遅れ、其処に辿り着いたディアナとネプトゥーンに、アポロは事情を伝えた。
ネプトゥーンには取り敢えずアポロ達を休ませる為に、安全な郊外まで行かせ、ディアナが独りでユピテルを追いかけた。

65 名前:訂正:2016/10/23 21:56:10.434 ID:EkIxVLm.0
>>58>>61
何故か【剣】になっていた……【鏡】だった…。

66 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:58:47.582 ID:EkIxVLm.0
ユピテルは、逃げながらも雷をあらゆるところに発射し、得た【鏡】の力を用い、【幻影】の力を持つ悪魔DBを大量に生み出した。
邪悪な顔貌、不快にさせる臭いと、辺りの動植物を殺す恐ろしい化け物―――。

ディアナは手持ちの武器で其れを蹴散らしながら、遠く向こうを駆けるユピテルを追いかけた―――。

だが、その姿は遠くなり―――そして、DBに足止めを食らっているうちにユピテルの姿が地平の向こうに消え――そして、檸檬色の光が輝いた―――。

ディアナは、その光の眩しさに目を眩ませながらも駆け抜け続けた。

だが、光が晴れた時―――、其処には、何も残っていなかった。
ユピテルの姿形は、全く持って消えていた。

67 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:08:42.643 ID:EkIxVLm.0
―――その時、アポロは、ネプトゥーンと共にユノの様子を見ていた。

ユノは、いまだ虚空を見つめていた。
その身体には、邪悪な瘴気が纏わりついていた。

ネプトゥーン「……【魂】が抜かれているうえに、呪いが込められているのね」

アポロ「……呪い?」

ネプトゥーン「昔、竜宮で聞いたことがある―――
       生き物すべてが欲しいとき、魂魄両方を取るのだと
       其の時、魂は引っこ抜いて自身の身体に入れ、魄は呪いで自身の身体になじむようにしてから取り込まさせるのだと――」

アポロ「つまり……あの、緑色の悪魔になじむ身体に呪われているってこと…?」

ネプトゥーン「そういうことになるね……このままでは、ユノの身体がいずれ崩壊してしまう…
       わたしの血を与えても、呪いの方が強いせいで、血の【力】が消されてしまう…」

アポロ「そんなっ、嫌だよおっ…」
そう言って、アポロはユノを抱きしめた。ユノを支えるように―――。

68 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:13:16.122 ID:EkIxVLm.0
すると、ユノの身体の瘴気が、すべて消え去った。

アポロ「え――っ?」

ネプトゥーン「此の呪いが、消えた―――?
       此の呪いは、非常に強い魔力の筈なのに―――」

ネプトゥーンの呟いた言葉に、アポロは気が付いた。

あの時、ユピテルの発した雷が自身の身体に届かなかったこと。
自身は風の術が使えない事。

アポロ「そうか―――僕は……特殊な体質だったんだ」

アポロ「僕の身体は、呪術、魔力、精神力――そういった類の力を受け付けないんだ
    いいや、僕だけじゃなく、僕に触れているものも」

ネプトゥーン「!
       ―――もしかして、アポロが天狗の術が使えないのも…」

アポロ「………そう、だと思う」

アポロは、皮肉にも、大切な人が眠り姫となった時、自身の【力】に気が付いた―――。


69 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:17:33.640 ID:EkIxVLm.0
ユピテルを逃してしまい、失意の中ディアナはネプトゥーン達のところに帰り、
事の顛末を伝え、またアポロは自身の持つ【力】について伝えた。

呪いの解けたユノは、身体が崩壊することはなくなった。
けれども、【魂】は未だない―――彼女は眠り姫となってしまった。


アポロ「―――あいつが悪いんだ、緑色の悪魔が―――っ!」
そして、アポロたちは名すら知らぬ悪魔―ユピテルをとても憎んだ。

ユピテルの出現によって多くの人間が死に、そして街そのものも燃え尽きてしまった。
そして、ユノの【魂】を奪われてしまった―。

ディアナ「……………俺も、ケリを付けなければならん
     追い付くことさえ、敵わなかった―――」
ネプトゥーン「うん……あの子の【魂】は、残っているから―――」
ディアナやネプトゥーンも熟考していたが、ユノを救わなければならない、という結論に至った。


―――そして、ディアナたちは緑色の悪魔ユピテルを探し、ユノの【魂】を取り戻すことを誓った。

70 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:18:27.965 ID:EkIxVLm.0
しかし―――魂の抜けた身体は、【魂】が在ろうとも何れ老い朽ち果ててしまう。

そこで、アポロが懇願し、少女の身体は、【ザン】の血が流され、永久にその肉体を保つようになった。
其れと同時に、アポロも――何時か【魂】が戻ることを信じ、自身も血を飲み、身体の時も止めた。

71 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:18:55.662 ID:EkIxVLm.0
―――三人は手掛かりを探し続けた。
狩りをしながら、見つからない手掛かりを探し続け、一つの手がかりを得た。

此の事件が起きてもう少し後、暗黒の生命体とも呼ばれ、緑色の悪魔とも呼ばれる存在が生まれたらしい――
―――けれども女神のような存在が退治したらしい事を。

三人は此の事に関わりが在るのかもしれない――と思い、
其の女神のような存在を捜したが、見つからなかった。

72 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:19:13.375 ID:EkIxVLm.0
だが、それと同時に女神として興味深い噂を聞いた。
―――【百合神】の噂を。

真に苦悩した人物――其の対象は、恋の悩みか、復讐が主という―――そういう人物が、
或る時偶然に闇の中に在る神社に辿り着き、適切な布施を渡し、願いを告げ、その女神が了承すると、その通りに叶うらしいと――。

その女神こそが何かの鍵を握っているのかもしれない。
そう思い、三人は【百合神】を探すことを決めた―――そして、【百合神】の噂を、集め続けた―――。

73 名前:社長:2016/10/23 22:19:46.009 ID:EkIxVLm.0
ようやく百合神様登場?
そしてWARSに唐突に出現した滝本みたいなミスを…。

74 名前:社長:2016/10/23 22:27:42.232 ID:EkIxVLm.0
・アポロの能力

アポロ、そしてアポロが触れているものは魔法やそれに準ずるものを受け付けない。
それは受ける分だけではなく、放つ分も―――。
そのため、彼女は天狗としての基本である飛行ができないのである。

簡潔に言えば、一切の魔法は禁じられる―――。
ただし、触れた相手が能力を封じることに対して反撃する力がある場合は、互いの身体は決して近づけない。

例を説明すると―――。
鈴鶴は男に操を奪われるのを防ぎ、吹っ飛ばす――ただし、其れを出来なくするものも吹っ飛ばす力がある。
此の場合、鈴鶴とアポロは決して触れられない。
【力】を封じることに対し、反撃するという【力】があるからだ。

また、魔法を封じるというものはどんなに力が強いものでも封じることが出来る。
あの魔王791のシトラスだろうがなんだろうが、アポロには通じない。
そしてアポロが魔王791に触れれば、魔王791はシトラスなどを唱えられないだろう。

此の【力】の弱点は、物理的な攻撃には無意味である。
そのため、格闘技でも、剣術でも――其の攻撃は防げない。
例えるなら、魔王791の通常攻撃は普通に食らってしまうという事である。

75 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:46:11.597 ID:a.I6dVgg0
そして、一つの情報を得た。
彼の因縁の地、【ワカクサ】にて、百合神が人魚を狙う海賊を退治したということを。

なんでも、表向きに宮処たる会議所の人間が退治したと伝えられているが、海賊の舟に百合神の力で破壊された跡があるらしい。


76 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:46:43.440 ID:a.I6dVgg0
ディアナとネプトゥーンは、因縁のある処であるが故、調べに行くのは少々面倒だと思ったが、アポロの為に調べることにした。
アポロを隠れ家に待機させ、竜宮で捕まったとしても大丈夫なように、充分な武器などの準備をし、海へと潜って行った――。

海に潜るにつれ、太陽が遠くに見えていく。
竜宮に近づくと、もう水面は遥か遥か遠く上に消えた。

さて、竜宮にて――二人は、捕まると予想していたが、ネプトゥーンが出て行った出来事が在った事、
或る人間と人魚の出来事が元で、以前よりも態度が柔らかくなっており、意外にも歓迎された。


77 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:47:16.424 ID:a.I6dVgg0
人魚の長はディアナへの無礼を謝り、ネプトゥーン達は如何するのか、と訊いたが、既にもう地上で長く暮らしているため、地上に戻ると答えた。
人魚の長は、その答えに頷き、ならば如何して此処に来たのかと問うた。

ネプトゥーンは、人魚を狙う海賊を退治した人物の顔を探している、と答えた。
そして予想通り、顔を見た、という人魚がおり、其の特徴を聞き、また似顔絵を描いてもらった。

長く美しい黒髪を携えた、黒い瞳を持ち、巫女服を着ている美しい女性。
傍らには、またも美しい刀を持っている―――。

其れを見聞きし、ディアナとネプトゥーンはその人物が百合神と確信した。
竜宮から地上に戻った二人は、アポロに其の事を教え、対象の人物を探すことにした。
細い糸かもしれないけれど、其れを手繰れば百合神に出会える、そう信じて―――。

78 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:52:21.746 ID:a.I6dVgg0
ある日――――ディアナは、マタギとしての仕事を果たしに行った。
とある山の中に大きな羆が現れ、ピクニックに来ていた家族連れが犠牲となってしまった。
腕利きのマタギ達が対処しに行ったが、そのマタギ達も全滅した。

最終手段として、マタギ達から、ディアナに仕事の依頼が来たのだ。
ディアナは、自身の血をザンの力で持ってして作り変えた時に、たった一人だけで狩りをするようにしてきた。

頼る物は自身の力のみ。其の不利な条件で、致命的な怪我も失敗も犯さずにここまでマタギとして生きられた。
その実力を買われて、ディアナに依頼が来たのだ。


そしてディアナは、其の山へと向かって行った。

79 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:53:22.602 ID:a.I6dVgg0
―――同時刻、とある小さな鍵屋―――。
百合神――鈴鶴は、其処に居た。

此処は、鈴鶴が援助してきた鍵屋だ。
鈴鶴は、此処を援助すると共に、此処で錠前の取り扱い、製作、その特性の知識と技術を会得した。

そして老人の家族が、羆の犠牲となったことを知った鈴鶴は、様子を見に来たのだ。

80 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:53:50.040 ID:a.I6dVgg0
老人「……わしの息子も、その嫁も、孫も一気に殺されてしまった
   マタギが対処しに行っても、そのマタギですら殺されてしまい、未だ山の中に居ると言う………

   鈴鶴……お前はマタギが専門ではないと知っているが、お前の腕で、羆を殺してくれないだろうか……
   お前は、そこらのマタギなんかよりもずっと強いからな……
   わしは、そういった世界は知らん……其れよりも、知っている強さの方を信じたい

   鈴鶴がせっかく目を付けてくれた此の店も、終わりになってしまうのが悔しいが…
   金は、少ないが……此れで、復讐を遂げて欲しい……
   老い先短いわしの、無念をっ……」

鈴鶴「わかったわ……
   技術を教えてくれた恩もあるし、そいつを殺してきましょう……」


81 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:54:00.308 ID:a.I6dVgg0
そして、山で、ディアナと鈴鶴は、何の運命の悪戯か、同じ標的を狙う事となった。

ディアナは自身のマタギの知識で、鈴鶴は人殺しをした者必ず解る血の匂いを辿って、羆の居る場所まで進んでいった。

82 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:54:17.027 ID:a.I6dVgg0
ディアナ「!」
羆の巣を見つけたディアナは、確実に羆を仕留められるように、巣から800m離れた木の上に昇り、猟銃を構えた。

一方の鈴鶴も、血の匂いから、巣の中に潜んでいる事を察知し、巣の近くの木の影で太刀を構えていた。
其の場所は、ディアナからは死角となる場所だ。
鈴鶴はディアナの存在に気が付かず、またディアナも鈴鶴には気が付いていなかった。

83 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:54:35.388 ID:a.I6dVgg0
そして―――羆が巣から出て来た。
勿論――其の巣の近くに居た鈴鶴の匂いを察知し、鈴鶴を喰おうと出て来たのだ―――。

羆が出て来るのを見て、ディアナは銃の引き金に指を掛けた。


飛びかかってきた羆に、鈴鶴は―――。

84 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:56:06.030 ID:a.I6dVgg0
鈴鶴「月影黄泉流―――【姫百合】―――」


奥義【姫百合】―――どんな得物だろうと、刀をも断ち切る、月影黄泉流の奥義。

その剣は羆の両腕を切り裂き、そして胴体をすっ飛ばした。
唯の剣術では、出来ぬその技術――。

その技は、自身の刀と共に、相手の攻撃を相手に投げ返す技――。
相手の力を、傷一つ無く受け流し、自身の力を加えて相手に跳ね返す技――。
其れを持ってして、羆を切り裂いたのだ。

85 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:05.642 ID:a.I6dVgg0
だが―――それと同時に、放たれた銃弾が羆の頭をひとつ、ふたつ、みっつ――貫いた。
いずれも羆の急所を狙う正確な射撃だった。

鈴鶴「!」
鈴鶴は、さっと羆から離れ、銃弾の放たれた方向を見つめていた。


鈴鶴(かなり遠い……腕利きのマタギね……)
鈴鶴は、血の匂いがその羆だけである事、他に羆の仲間がいない事を確認し、辺りの様子を伺っていた。

86 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:18.386 ID:a.I6dVgg0
ディアナは、その羆の巣の方へ、残党に注意を向けながら進んでいった。

鈴鶴は、ディアナ――鈴鶴にとっては名の知らぬマタギ――が近づいてくる事を察知し、太刀に手をかけていた。

87 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:31.967 ID:a.I6dVgg0
ディアナは、鈴鶴の潜んでいる木まで近づくと、持っていた猟銃を、懐に仕舞った銃を、ナイフを――、
全ての武器を其の場に捨て、鈴鶴に語りかけた。

ディアナ「……俺の名は、ディアナ―――
     マタギとして、此の羆を狩る為に此の山に訪れ、そして其れを為し遂げた――」

熊の死臭も、血の匂いもすらも飲み込む緊張感が辺りには在った。

ディアナ「もし違うのなら、聞き流してほしい―――
     此の世には、【百合神】の伝説がある

     俺は、いや…俺の家族ともども、貴女(アンタ)に叶えて貰いたい願いがある
     其之為に、俺は貴女を探していた――ずっと、ずっと―――」


88 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:48.885 ID:a.I6dVgg0
鈴鶴は、其の言葉を聞き、抜身の刀を構えながら、ディアナの前に現れた。

ディアナ「!」

鈴鶴「…………貴女は、わたしが【百合神】だという事を前提に話しかけた
   そして、武器を態々捨てたのも、わたしを狙いに来たことを示す―そういう事ではないみたい―――」

鈴鶴は、刀を鞘に納め、ディアナに歩み寄った。

89 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:58:15.853 ID:a.I6dVgg0
鈴鶴「そう―――わたしは【百合神】――――
   しかし、何処でわたしの人相を聞いた?」

ディアナは、【ワカクサ】の海岸での出来事を話した。

鈴鶴「なるほど―――分かったわ……
   そうまでして、わたしに逢いたい―――其処まで願い事を聞きましょう
   ただし、わたしの正体を漏らさないと確約してほしい―――もし守らなければ、願いは叶えないし、貴女を――」

ディアナ「勿論、確約する――」


90 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:58:28.221 ID:a.I6dVgg0
そして、ディアナは願いの内容を伝えた。
緑色の悪魔の事、ユノの事。何処かに二人が消えてしまった事。ユノの魂を救い出したいこと。
百合神は、確約は出来ないが、その少女を見せて欲しいと言い、ディアナの隠れ家へ向かった。

91 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:58:59.122 ID:a.I6dVgg0
ネプトゥーンとアポロは、百合神が本当に来たことに驚いていたが、直ぐに其の顔を真剣なものにし、ユノを見せた。

百合神は、ユノの様子を見た。
百合神はしばし何かを考えていたようだが、直ぐにディアナ達に向き、真剣な顔つきで言葉を紡いだ。

百合神「……………成程、願いは理解したわ―――引き受けましょう、願いを叶える事を―――
    ただし……此の事は、わたしにはいろいろと抱えている事情もあるから、今すぐには引き受けられない
    時間がかかってもいいならば―――」

ディアナ達は、迷わず其の言葉に頷いた。

92 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:59:30.863 ID:a.I6dVgg0
百合神「分かったわ…時間が来たら、貴女達の処に来る――必ず
    長い時間、待たされるかもしれないけれど、お願いだから信じていて――

    必ず、叶えるから―――」

そして、百合神はディアナの隠れ家を出て行った。

其の背中に、願いから逃げようという意志は感じられなかった。
絶対に叶えるという、心強い意志を秘めていた背中だった――――。

93 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:59:50.343 ID:a.I6dVgg0


                   邪神スピリットJ 完


              To be Continued――――――集計班の遺言

94 名前:社長:2016/10/31 01:01:17.481 ID:a.I6dVgg0
奥義【姫百合】は相手の動きに合わせて切るカウンター技。
過去の描写と矛盾するかもしれないけど気にしてはいけない。

95 名前:きのこ軍:2016/11/01 23:53:38.585 ID:aBfQOwy6o
乙乙。百合神様との邂逅のシーン、いいね。

96 名前:社長:2017/01/19 00:25:17.173 ID:i8ruWCxw0
※この物語は霊歌さんの『Eden of the lily girl』『花咲き誇る世界で』
滝本さんの『きのたけWARS』の設定を滅茶苦茶とは言わないまでも割と使ってます。多分。
そのため物語内の設定と矛盾してるところがあるかもしれませんが
そこは目をつぶってパラレルワールドかなんかと思ってくれて構いませぬ。

97 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:25:51.385 ID:i8ruWCxw0


              集計班の遺言

98 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:30:20.861 ID:i8ruWCxw0
K.N.C.???年、何処かの神社――――。

其の、蒼い目をした、悩める者は、百合神(ツクヨミ)を探していた。
百合神は、悩みを持つものが、どうしても百合神に頼みたい悩みを持つものだけが入れる、闇に居るという。

生半な人間など、そこに入ることすらできない。
その入り口は誰にも見えるけれど、見えることはない。

99 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:34:10.638 ID:i8ruWCxw0
其処に辿りつく為の扉は、悩みがなければ開かない境に隔てられている。

どれだけ探しただろう?
どれだけの路を辿ってきたのだろう?


悩める者「―――!」

―――そして、彼はついに百合神に願いを託せる、闇の中の神社を見つけることができた。

100 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:42:32.105 ID:i8ruWCxw0
辺りは暗黒の宇宙が広がり、その中に神社が立っている。
それは小さな神社だった。
まるで人が一人しか住まえないような小さな社に、小さな砦、小さな賽銭箱――。

けれども、彼は直感的に其処が探し求めていた場所であると理解していたため、言葉を紡ぐ。

悩める者「ようやく―――ようやく、この場所を見つけることができた
     願いを聞いてほしいのです―――」

跪いて、百合神に願いを告げようとする彼は、心から其の女神へ願いを告げた。

101 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:42:50.370 ID:i8ruWCxw0
言葉が紡がれた、その時――。


少女「………」
広く大きく積もる、一面の白銀の雪のような、足まで届くように長い髪と、
まるで珊瑚のように美しい、赤い瞳をした少女が現れた。
その肌も、透き通るように白いけれど、着ている服は対照的に黒を基本とした和装だ。

102 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:06.357 ID:i8ruWCxw0
悩める者「―――貴女が、百合神様ですか?」

少女「…いいえ、わたしは……百合神の使い――」
その問いに、鳥のように透き通る、美しい声で少女は答えた。

悩める者「……百合神様に会う事は、出来ませんか?」
柔らかい言葉と共に、彼の蒼い目が少女を見据える。

103 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:22.979 ID:i8ruWCxw0
少女「―――私は、百合神様に願いを伝えるだけの存在…
   百合神様は、貴方に会わない」
けれども、少女は、真っ直ぐな瞳で問を否定する答えを出す――。

悩める者「……そうですか、しかたありませんね」
悩める者は少し躊躇ってから言葉を紡ぎ、次いで名前を告げた。

集計班「私は集計班―――百合神様にどうしても聞き入れて欲しい願いがり、
    百合神へ願う、何処とも知れぬ此の場所を探し、探し、探し求め―――
    此処へようやく、辿り着きました」

104 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:40.284 ID:i8ruWCxw0
少女「………」
少女は何も語らず、ただ集計班を見つめている。

集計班「私の、願いは―――
    百合神様に叶えてもらいたい願いとは―――」
集計班は、そこで声色を低くし、それと同時に表情を険しくした。

105 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:53.336 ID:i8ruWCxw0
集計班「―――いいや、
    月夜見の遺産であり、神をも殺す剣を纏い、この世界を動かす切欠となった少女――
    ―――鈴鶴、貴女に叶えてもらいたい願いとは―――」

少女「―――」
集計班の言葉を遮って、少女は消え去り、其処には唯の百合の花弁が落ちた。

106 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:22:12.473 ID:i8ruWCxw0
集計班は、動じず、目の前を見据えた。
彼の蒼い瞳を、少女のように赤い瞳に変えて―――。

―――そして、百合の花弁が地面に落ちた時、百合の花びらの吹雪が舞い、
其れが消えた後には、集計班の探す其の人、鈴鶴が社の中に居た。

彼女は、背丈五尺四寸程の、百合神の使いのように足まで届く長い――、
けれど髪色は白銀ではなく、美しく寂しい、黒い色で、その目も同じく黒い少女だった。

107 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:22:57.068 ID:i8ruWCxw0
集計班との出会い。集計班はなんの願いを持ってきたのかな?

108 名前:社長:2017/01/19 01:23:10.650 ID:i8ruWCxw0
名前変えわすれ

109 名前:きのこ軍:2017/01/21 19:20:07.797 ID:fMRR3eJAo
どきどき。

110 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:34:35.301 ID:h1dO0fog0
そして、鈴鶴は何も言わずに、百合の花のように美しい歩き方で、集計班の前に降り立った。

鈴鶴「………何の御用?」
そう言いながら、鈴鶴は右眼を黒く青白く輝かせた。

それは美しく、そしてとても恐ろしい瞳。
集計班はその眼に吸いこまれて、身体を動かすことなど出来ない状況になった。


111 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:34:59.055 ID:h1dO0fog0
集計班は、身体が凍えるように感じた。
その冷たさは、深い海の底や、吹雪の夜のような、生半なものではないものだった。

集計班「………」
けれども、本当に願いがあるからこそ此処に来た集計班は、気力を振り絞り睨み返す。
燃えるような赤い瞳で、鈴鶴の、まさに邪眼と言えるようなその冷たい眼に――。

112 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:35:42.019 ID:h1dO0fog0
―――刹那の如き短い時間か、将又それより長い長い時間か――その睨み合いは、その均衡を破った。

鈴鶴「……どうやら、わたしを脅そうとでも考えた…そういう仕様もない目的で来たのではないようね
   本当に、恐ろしいものを見てしまっても、それでも頼みたい、抜き差しならないことがあるのね」
鈴鶴は、右の眼を、黒々としたものに戻し、そして問うた。

集計班「はい……
    けれどもそれは、噂に聞く貴女のように、一つの事柄ではない―――
    しかも、それは今から、何時になるかも分からぬ未来(さき)のことの……お願いなのです――
    貴女に頼まなければならない願いが―――2つあるのです……」
そして集計班は、燃える赤い瞳で鈴鶴に【願い】を告げた。

113 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:13.368 ID:h1dO0fog0
時代は経て、其れよりはるか先の未来―――――――――。
K.N.C190年頃――――。
この世界の中枢である、きのこたけのこ会議所の一員であるたけのこ軍兵士、社長は、部屋に突如として現れた手紙を読んでいた。

「―――社長へ
 この手紙を読んでいる時、私はもう現世にいない―――
 それは、あの時の選択で決まっていたことです。

 ――――この手紙を呼んだあと、百合神を探し、付記した封筒を渡し――集計班の願いをお願いする――と伝えて欲しい
 どうか、宜しくお願いします」

114 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:28.102 ID:h1dO0fog0
―――それは遺言だった。
集計班は行方不明になった――いいや、もう此の世には居ないと社長は分かっていた。

―――そして、集計班の遺言を、実行しなければならない。
社長は、百合神を探しに行った。


草の根を掻き分け、森を歩き回り、見果てぬ闇に飲まれたかと思えば―――、
百合神―――鈴鶴が社長の目の前に現れた。

115 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:39.037 ID:h1dO0fog0
社長は、集計班に言われた通り封筒を鈴鶴へと渡し、「集計班の願いをお願いする―」と伝えた。

鈴鶴「……分かったわ、もうあなたは帰っていい」
そして、淡々と鈴鶴が言葉と共に、いつの間にか社長は会議所の近くの竹林に居た。

不可思議なことに少し困惑しつつも、
鈴鶴という乙女はとても恐ろしく、そして強いものと知っていた社長は会議所へ戻った。

116 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:48.072 ID:h1dO0fog0
社長は、この世界に居ると言われる女神、百合神が鈴鶴その人だと知っているが、それは一切口にしなかった。
鈴鶴が百合神だと知った後、さらに百合神について調べると、深入りした者の無残な噂を聞いたからだ。

鈴鶴は、一見御淑やかな姿とは裏腹に、社会生活に向かない破滅的な心がある。
彼女にとって、人を殺すことよりも操を奪うことの方がとても重いのだ。

そんな彼女に刃向うのは、得策ではない。
いったい何を頼んだのか……其れは集計班が委ねたことに任せる、と、そう結論付けた。


117 名前:社長:2017/01/25 00:38:04.052 ID:h1dO0fog0
男を吹っ飛ばす能力が産まれるほどに破滅的な心を持っている鈴姫様。

118 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:42:43.028 ID:zD6DyXjs0
何処かの闇の中―――。
鈴鶴は、集計班から願いを聞いたことを思い返していた。

集計班「願い―――この願いが、未来のものというのは、
    本当に未来に、貴女に遂行してもらいたいことがあるから

    破らねばならない運命を、貴女に破ってもらいたい――ということなのです」

鈴鶴「………その前に、どうしてこのわたしが百合神ということを知っているか、教えて欲しい」


集計班「分かりました―――

    私はこの世界の中心である、きのこたけのこ会議所のメンバーです
    そして、其処にある図書館に―――貴女の経歴について書いた本があった…

    巷に溢れる百合神伝説と、共通点があることを発見し、そして貴女だと確信したのです
    その本の題名には、まさにユリガミ―――とあったのですから」

119 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:46:38.178 ID:zD6DyXjs0
鈴鶴「………理由は分かったわ…、その本は、見せて貰う事にして…
   貴方の願いについて教えて頂戴」


集計班「私は――【社長】という協力者と共に、この世界を、
    【預言書】と呼ばれる書物に書かれている通りに動かしてきました

    其処に書かれている、預言に書かれている内容―――
    其れが私の願いに大きく関わっています」

鈴鶴「………突拍子もない話ね、それにその預言書を持ってきているわけでもない――
   信じられるかしら?
   ―――わたしのことについては、兎も角、ね」

集計班「そう、それが問題なのです

    そこで、きのこたけのこ会議所に来て―――預言書を見、そしてそれが本物であると確かめて頂きたい
    加え―――貴女の経歴の本についても見て頂きたい

    そして、其処で私の願いについて聞いてほしい―――」

120 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:47:13.673 ID:zD6DyXjs0
鈴鶴「……預言書、ねぇ
   どういう預言…?わたしが、会議所で何かしでかす預言でも書いているのかしら?」

集計班「いいえ…この世界の根幹、大戦の預言です
    その預言内容は、かいつまんで話せば、強い武人が、きのこ軍の強靭な軍神をも打ち破ると―――」

鈴鶴「………ふむ」

集計班「そして、その武人は、女性であると―――」

鈴鶴「……分かったわ、きのこたけのこ会議所へと行ってみましょう

   ただ、もし嘘ならば、例えこの世界が滅びようとも、嘘をついたあなたを殺す…」

集計班「覚悟しています」

―――。

121 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:48:03.914 ID:zD6DyXjs0

きのこたけのこ会議所、地下編纂室――――。

集計班「これが、【預言書】です―――私の言った通りの内容が、書いてあります………
    こちらは、貴女の事について書かれた本です……」

集計班は、2冊の本を机に置いた。
鈴鶴は、本を手に取り、内容を一瞥し――――。

鈴鶴「……成程、貴方の言った事は嘘じゃあない、みたいね…」
   【預言書】については、理解したわ……

   願いを、聞きましょう―――」

集計班「ありがとうございます…
    と、その前に―――貴女の本の処遇について、それも聞きたかったのですが……」

鈴鶴「この地下室に、仕舞っておいていい、外に出さなければそれで良しとするわ」

122 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:50:46.709 ID:zD6DyXjs0
そして集計班は、第一の願いを鈴鶴に伝えた。

K.N.C146年、軍神をも破る女の武人が、きのこ軍を打ち破る。
女性は明言されていない。

鈴鶴が参戦し、その通りに運命が動くことを確認してほしい―――と。

123 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:53:08.347 ID:zD6DyXjs0
集計班「次いで……貴女の果たす第一の願い用に、一応の参戦用の物語を考えておきました――
    近くの竹林で、兵士に発見され――会議所と言う存在を知り、その後、大戦をする
    ただし、会議所も大戦も、初めて知った風で、お願いします

    大戦内では、先ほど話したことを遂行する―――その後、会議所から去る
    粗が在るかもしれませんが、どうでしょうか?」

鈴鶴「―――大筋は問題ないから、其れで行きましょう」

集計「ただし、此れでは、貴女の正体がバレる恐れがありますが……」

鈴鶴「大丈夫、それはわたしの方で何とかするわ―――
   会議所でそういう動きが在ったら、出来るだけ止めて欲しいけど」

集計班「了承しました――それと、後の布石の為に、予め【社長】と言う兵士に貴女の特徴を調べさせ、
    会議所が干渉しないようにさせておきたいのですが……宜しいでしょうか?

    彼は、貴女の本を初めて見つけた兵士でもあるので、わたしが頼んでも不審さはないですし…」

鈴鶴「構わないわ……
   不測の事態が起きた場合は、わたしが随時対応しておきましょう……」

124 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:53:47.698 ID:zD6DyXjs0
―――――。

そして、鈴鶴は見事に、1つ目の願いを叶えた――――。
集計班の伝えた通りの時の流れがそのまま起き、其れは預言書の力が本物の其れであることを示したのだ。


125 名前:社長:2017/01/30 01:54:21.635 ID:zD6DyXjs0
百合ノ季節の裏側。

126 名前:集計班の遺言:2017/01/31 00:56:36.676 ID:.ZbqFavM0
そして、再び先の世で―――――。
社長が百合神に集計班の遺言を伝えて数日後、会議所は、そして世界は大変な騒ぎになっていた。

「緊急!各地にマチャ・オモラシスが大量発生!」

きのこたけのこ会議所、その他さまざまな地域、きのたけ世界に緑色の悪魔【マチャ・オモラシス】が現れた。

127 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:18:12.820 ID:.ZbqFavM0
其の惨憺たるさまは、其の混沌たる状況は、
きのたけ会議所から遠く離れた、ディアナの隠れ家にも伝わっていた。

ディアナ「――――これは……奴か?」

ディアナは、空を覆う緑色の悪魔たちを見つめながら、そう呟いた。
幸い、険しい岩山の地形にある隠れ家であり、オモラシスに其処は感知されていなかった。

しかし、放送機関から流れる情報では、各地で被害が起きている事が報道されていた。
ディアナが様子を確認しに、空を見ていると―――。

鈴鶴が、ディアナの後ろに現れた。

128 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:33:53.583 ID:.ZbqFavM0
ディアナ「【百合神】―――いや、たしか鈴鶴だったか……」

ネプトゥーン「―――貴女は……!
       貴女が来たということは、つまり―――」

アポロ「時は満ちた―――ということ、ですか?」

鈴鶴の声を聞きつけ、直ぐにネプトゥーンとアポロも其処に駆け付けた。

鈴鶴「長い間、ずうっと待たせてしまってごめんなさい
   ―――単刀直入に言いましょう

   わたしは今ある依頼を受けている――
   其れに、【鏡】に近い存在のもの―――とある【剣】が、関わっている―――

   わたしは、奴の場所が掴めなかった―――。
   おそらく、奴は【鏡】の力を込めて封印されたから……。

   【鏡】と【剣】には、似た性質がある
   【剣】が【鏡】に引きつけられれば、つまりそれは奴に通じることになる
   此の依頼を完了させた時点で、貴女達の願いを叶えられる可能性がある―――」


129 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:39:20.475 ID:.ZbqFavM0
アポロ「本当……ですか?」

鈴鶴「ええ…
   けれど………【剣】を持つ其の存在は、わたしと因縁深いものなの―――
   其の強大なる力は―――悪巧みをする輩が奪いに来る可能性のあるほどに―――

   だから、これはわたしの流儀ではないのだけれど―――
   わたしに、協力してくれないかしら」

ディアナ「勿論だ……」
ネプトゥーン「当然、ですっ」
アポロ「ユノちゃんの為ならばっ」

三人は、鈴鶴の依頼を快く了承した。

130 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:52:19.525 ID:.ZbqFavM0
ディアナ「だが、俺らは具体的に何をすれば良い?」

鈴鶴「…………
   わたしは、【剣】を持った或る少女を追いかける

   其の少女を、第三者が始末しないように……無力化させてほしい
   方法は、一存するわ……
   いらないかもしれないけれど、依頼代も、此処に置いておく…」

ディアナ「分かった―――
     そして、その少女については、何か情報があるか?」

鈴鶴「……ええ」

そして、鈴鶴は懐からその少女の写真を取り出した。

131 名前:集計班の遺言:2017/01/31 02:11:22.745 ID:.ZbqFavM0
写真には、赤い頭巾に赤い服を纏った、金髪青眼の少女が写っていた。

鈴鶴「名前は、ヴェスタ―――
   昔、わたしが、雪降る街で拾った、抹茶売りの少女―――
   何故抹茶売りをしていたのか―――其れは自分でも覚えていなかった

   ………わたしは、この子とずっと過ごしていたけれど
   とある出来事で仲違いをしてしまい、世界を混乱させることになってしまった―――
   だから、闇の彼方へと封じた―――

   其の闇の彼方への入り口は、此の世界の中心たる【会議所】が或る場所―――
   土地を利用した強力な結界を貼っていた―――」

鈴鶴は、向こうの方を見つめながら、話を続けた。

鈴鶴「この子は、どういうわけか、神の持つ【剣】を持ち、封印を破り、顕現する―――
   そして、其れと同時に、あの子と共に封じた抹茶がオモラシスとなり出でる―――

   わたしは、この子を救い出す為に―――追いかけて決着をつける
   ―――おそらく、この子がたどり着く場所は、奴を封印した場所になるでしょう」


132 名前:集計班の遺言:2017/01/31 02:36:50.516 ID:.ZbqFavM0
ヴェスタの写真を見たネプトゥーンは、何かに気が付いた。

ネプトゥーン「この子―――どことなく、ユノに似ているような……」

鈴鶴は、ただ無言で其れを見ている。

鈴鶴「………わたしは、初めてユノを見たとき…
   ヴェスタの面影を感じた
   それは―――つまり―――」

アポロ「ユノちゃんの、妹ということ―――ですか?」

鈴鶴「ええ……」

ユノは、アポロに妹がいると語っていた。
あの惨劇の後、妹の行方は知れない。

また、亡くなった母親は神に仕える雰囲気を持っていたという。
其れが本物であるならば、【剣】を使う資格のある血が流れていることとなり―――
子にも、【剣】を扱う力が或るということになる―――。

だから、ヴェスタは、【剣】を持て、そして其の力で封印を破るのかもしれない。
また、血の力で【鏡】に引き寄せられるかもしれない―――。

鈴鶴「………もっとも、これは憶測
   どちらにせよ、わたしはヴェスタを追いかけにいく

   決着をつけに―――そして切れた縁の糸を繋ぎ戻すために……」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

133 名前:社長:2017/01/31 02:37:04.155 ID:.ZbqFavM0
勝手に設定作ってごめんなさい!

134 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:24:38.055 ID:kthCVMSY0
オモラシスが世界を蹂躙する中を、鈴鶴は駆け抜ける―――。

鈴鶴は、集計班の願いを思い返していた。

135 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:26:41.897 ID:kthCVMSY0
集計班「二つ目の願い……
    それは、来る未来に出現すると言われる、オモラシスの大量発生事件についての願い、なのです―――
    【預言書】のこの欄を見て頂きたいのですが……」

集計班は、【預言書】の当該部分を指でなぞり、鈴鶴に見せた。

神の力を秘めたる【剣】――。
其れは封じられた少女を目覚めさせ、そして少女を封じた乙女との決着を付けに行く―――。

鈴鶴「………
   それが【預言書】に或るなら―――わたしにこうして頼む必要はない―――
   貴方に頼まれなくとも、わたしは決着を着けに行くでしょう―――結果はどうなろうと…」

136 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:27:11.128 ID:kthCVMSY0
集計班「いいえ、頼む理由があるのです―――
    その理由は、【預言書】の、此方にに書いてあるこの部分―――
    きのたけ世界の滅亡を防ぐために、二人の救世主が命にかえて世界を存続させる―――

    わたしは此れを書き換える―――この救世主を死なせないために―――」

集計班は、虚空を見つめながら淡々と語った。

集計班「つまり、其れにより【預言書】も消え去ります」

鈴鶴「……つまり、この【預言】は幻に還るということになるわね
   けれど、それでは此の未来が起きることは分からなくて?」

137 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:29:12.667 ID:kthCVMSY0
集計班「いいえ……此の未来は、いつになるかは分かりませんが、起きる筈です―――」

鈴鶴「……如何して?何処にあるとも知れぬ【剣】が、如何して此処に来ると言える?」

集計班「其れは―――其の【剣】は、私が封印したから―――
    そして、少女のことをわたしは知っているから―――」

鈴鶴「………詳しく教えてもらいましょうか」

集計班「そう……貴女には、全て話さなければなりませんね」
    遙か昔の話です―――」

138 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:29:32.974 ID:kthCVMSY0
そして集計班は、過去を語り始めた。

139 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:32:35.950 ID:kthCVMSY0
此の世界に、大戦を行うという概念が起きる前、集計班はある街の市長と親交があった。
その市長には妻一人、娘二人が居た。最も、其の妻は、二人目の娘を産むと同時に亡くなってしまったが――。


集計班は、市長とは、妻を娶る前から親交があった。
というよりは、市長の妻との出会いにも関わっていた。

集計班は街の小さな役所で、街に関する事柄を処理していた。
その傍らで、二人は此の世界の根幹たる力は何なのかを探求していた。

140 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:32:48.971 ID:kthCVMSY0
そんなある日―――。

二人は、街の近くの砂浜を散歩していた。
その砂浜には、【鏡】を抱えた、黒髪の少女が流れ着いていた。
まるで、神に仕える特別な雰囲気を持った少女だった。

少女はひどく弱っており、二人は街の病院へ少女を運んだ。
話すところによれば、遠い暗闇の中から、此処にやってきた―――と。
そして、ある【剣】も持っていたが、其れは何処かに消えてしまった―――とも言った。

141 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:33:00.721 ID:kthCVMSY0
少女は行くあてがあるわけでもなく、市長がその少女の身柄を引き取った。
そしていつの日か―――市長と少女は結ばれ、子を1人設けた。

けれども―――2人目の子を産む時、少女は黄泉の國へと旅立ってしまった。

142 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:33:22.136 ID:kthCVMSY0
それから5年後――――。
集計班は、出先で此の世界の歴史を動かすものが何なのか、曖昧ながらも手掛かりを掴んでいた。

そして街に帰ってきた時―――街は業火に包まれ、そして住人達が逃げ惑い、死体が重なり、街は消えてしまった。
大切な友が、いなくなってしまった―――。
失意の元、其れでも市長は世界の謎を解き明かせと言うだろうと考えた集計班は、ひたすらに謎を追い求めた。

143 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:34:40.マオウ ID:kthCVMSY0
街が消えてから凡そ1年後―――緑色の悪魔、オモラシスが世界を襲った。
沢山のオモラシスは世界を荒らし、民を荒らした―――だが、突如其れはすべて倒された。

集計班は、その出来事について調べていた。
楽園に住まう二人の少女の争いに起因するものという噂も聞いた―――。

そして調べるうちに、きのことたけのこ―――この二つが起こす争いが、世界の根幹たるものであり、歴史を動かす力だと気が付いた。

144 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:35:21.184 ID:kthCVMSY0
その説に賛同したまいう等の実力者が、大戦を行って其れを確かめてみよう、と提案した。
そして大戦が執り行われ、きのこたけのこ大戦が生まれた。

また、大戦を総括する【会議所】という施設が作られることとなった。

145 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:35:35.625 ID:kthCVMSY0
【会議所】を建設するために、集計班は測量をしていた。
その時―――【剣】を拾った。

禍々しい蛇の鱗が刻まれた、白い【剣】を―――。
昔一度見た【鏡】に似たものを感じた集計班は、此れがあの少女の言っていた【剣】だと実感した。

146 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:35:55.161 ID:kthCVMSY0
其の【鏡】は少女の願いで封じていた。
集計班は、【剣】にも同じ事を施さねばならないだろうと考え、【剣】を強力な封印を込めた箱に詰めた。

其れは、【会議所】が建設された時、其れを自身の部屋で管理していた。

147 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:36:11.814 ID:kthCVMSY0
数年が立ち、wiki図書館に【地下編纂室】が作られたある日―――。
集計班は、【預言書】の指示に従って地下を調べていると其処に突如、闇の狭間が覗いている事を見つけた。

その中には―――本を抱えた幼い少女が、禍々しい瘴気を放ちながら眠っていた。
集計班は幼子に見覚えがあった。

そう―――それは市長の妻となった少女の娘、ヴェスタであった。
集計班は、救いだしたいという気持ちを抑え、【剣】を封じの中に放り込み、そして闇の狭間を閉じた。

148 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:36:22.520 ID:kthCVMSY0
その闇の封印を強固にするために、地形を利用した封じもつけた。
―――全ては、【預言書】に、百合神が少女との決着をつけると書いてあったからだ。

その引き金となる事件は、【封呪の聖晶糖】の破壊―――。
【剣】を握ったヴェスタが、其れを破壊させるように、【剣】の力でwiki図書館に兵を閉じ込めさせる、と―――。

149 名前:社長:2017/02/12 01:36:37.602 ID:kthCVMSY0
集計班さんに謎の設定をつけていくスタイル

150 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:14:56.016 ID:va.rwX9M0
―――。

鈴鶴「事情は分かったわ……
   【剣】が其処に或るならば、いずれ起きるということね
   けれど、【預言書】を書き換えるなら、其れが何時起きるかは分からないわけでしょう?
   どうやって、わたしに合図を送るか、決めているの?」

集計班「ヴェスタを封じるために使った封印の一つは【封呪の聖晶糖】
    貴女に動いてもらう合図は、其れが破壊された時、先ほど話した【社長】に、合図を送るようにします
    封筒に合言葉を入れて、届けさせる手筈です……」

151 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:15:20.739 ID:va.rwX9M0
鈴鶴「わたしに動いてもらうための―――合言葉は、何にしましょうか」

集計班「【集計班の遺言】―――といきましょう」

―――。

152 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:20:57.118 ID:va.rwX9M0
―――。

オモラシスが全てを駆逐し、一時は世界が破壊されかねない―――そんな極限状態にまで陥ろうとしていたが、
きのこたけのこ会議所の兵士の奮闘、そして百合神の手助けで其れはなんとか喰いとめられた。

ヴェスタは、戦場から姿を消し、会議所の向こうへと駆けて行った。
【創世書】を右手に、【剣】を左手に持ち―――ずっとずっと駆け抜けた。

鈴鶴は後を追って行った。
腰には愛刀姫百合を、そして左手に黄泉剣を構えて―――。

153 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:22:38.916 ID:va.rwX9M0
たとえ少女であろうと、オモラシスの元凶かもしれない少女。
ヴェスタを捕らえようとする輩は、鈴鶴が予想した通り存在した。

大抵は公な目的で動いていたが、その中には、肉欲を充たすために彼女を捕えようとする輩も居た。
しかし―――ヴェスタを捕えようとする輩は、誰彼構わずに眠りについた。

154 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:23:23.699 ID:va.rwX9M0
ディアナ「―――ネプトゥーン、まだ居るか?」

ネプトゥーン「10時の方向…!10人、会話内容はこの少女を生け捕りにして売る―――」

ディアナ「了解―――」


そう、ディアナ達が始末をつけていた。
方法はディアナ達に任せる―――鈴鶴はそう彼女たちに願ったため、その依頼を果たしているのだ。

155 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:23:42.300 ID:va.rwX9M0
ネプトゥーンに地面の中を泳いでもらい、其処から敵の粗方の位置、装備、ヴェスタを捕える目的を探らせ――
そして、敵に応じてディアナは弾丸を変えて狙撃した。

世界を脅かす存在を鎮静させる為―――そういう公な目的がある輩は、麻酔弾でしばらく眠ってもらい―――
肉欲で彼女を捕えたりと、欲を充たそうとする輩は、永久の眠りに―――常世に行ってもらった。

156 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:24:22.878 ID:va.rwX9M0
敵1「何処から狙ってるんだっ、敵はっ!?……此処から身を隠せる場所なんて、1キロも離れ―――」
この敵の集団は、常世に行くべき集団だ。其処にロケット弾が、武器を巻き込んで着弾した。

敵2「ぐっ!こんな狙撃が出来る奴なんて―――軍にいたか!?」

敵3「こんなに離れた所から精度の高い狙撃が出来る奴までは…
   いや、待て……聞いたことが或る、ディアナと言う名の女マタギが射撃に秀でていると……」

敵2「馬鹿な!マタギがこんな事に関わ―――」

そして、2つ目の着弾と共にその集団も全滅した。

ネプトゥーン「………しかし、此れほどまでに敵が多いなんて―――」

ディアナ「仕方がない―――俺たちの出会った緑色の悪魔だって、街一つを滅した奴だった
     それほどまでに恐ろしいものをいくらでも呼び出せる少女に、目を付けない奴は少ないだろう」


157 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:25:56.050 ID:va.rwX9M0
――――。

そして―――。

鈴鶴は、件の少女の―――ヴェスタのもとに辿り着いた。
其処は海の上に浮かぶ一枚岩だった。

158 名前:社長:2017/02/25 00:27:20.621 ID:va.rwX9M0
ロケットランチャーも使える系マタギ

159 名前:集計班の遺言:2017/03/06 00:58:58.536 ID:kTjTGIAk0
盾30尺、横36尺ほどのその岩は、天辺はまるで誰かに磨かれたかのように滑らかな平面をとり、
海底から海面まで、一繋ぎに刺さっていた。


鈴鶴「ヴェスタ――――」


黄泉剣を構えた鈴鶴に、ヴェスタは【預言書】を握り締め、左手の【剣】から瘴気を出しながら、見返った。
その顔は―――かつてヴェスタを封印したときのように、変わり果てた姿ではなく―――
それは、想い出の中にあるヴェスタの顔、そのものだった。

眼以外は。

眼は、朽縄のように妖しく輝いていた。
それは蛇眼であり―――邪眼であった―――。

160 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:02:59.172 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「鈴鶴、おねえちゃん―――」
けれども、心は――鈴鶴に対する気持ちは、縁の切れたあの時のままで―――。

ヴェスタ「この世界を創ったのは―――わたし―――」

その言葉と共に、右手に【剣】を構えた。



鈴鶴「何処から持ってきたのかは如何でもいい……
   けれども、その【剣】は―――

   【創世書】よりも、はるかに恐ろしいもの、なのよ――」


ヴェスタ「けれども―――この【剣】は―――
     おねえちゃんにとっての、左目に或るそれと同じようなもの――

    【創世書】と違って、この【剣】はわたしの【血】にとって一番合う―――そう、本能で分かったんだよ?」

161 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:04:06.817 ID:kTjTGIAk0
鈴鶴の言の葉にそう返したヴェスタは、【剣】を鈴鶴に向け、切りかかった。

その刃を、鈴鶴は黄泉剣の刃で受ける。
鈴鶴「っ―――!」

ヴェスタ「ほらほらほらっ!まだまだっ!」
その斬撃の嵐は―――あの時の彼女では出来ない芸当で――決して身に着けてはいない技術で―――。

其れは―――鈴鶴の操る剣術―――月影黄泉流そのものであった。

162 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:07:30.842 ID:kTjTGIAk0
鈴鶴「ちぃっ―――」

また、もう片方の手に持つ【創世書】も、鈴鶴の足止めにはぴったりだった。

鈴鶴に触れられないため、オモラシスは召喚されないものの、辺りに幻を生み出している。
しかも、鈴鶴の記憶の中の、辛く哀しいものの幻を生み出すのだ。

それは唯の幻―――けれども、鈴鶴にとってそれは苦しい幻であった。

163 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:07:58.599 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「おねえちゃん……ふふっ、やっぱり効くよね―――
     おねえちゃんに、過去仕留めた奴の幻なんて見せても、意味がない―――」

其れをヴェスタは、くすくすと笑いながら見つめていた。

鈴鶴「しぇっ!」
鈴鶴が如何にか振り払いながら剣を振るうも、その背中にも幻が纏わりつく。

幻は何も言わず、ただ鈴鶴の身体にしがみ付くだけだ。
だが、其れだけが、鈴鶴にとって一番効くことをヴェスタは感覚で実感していた。

164 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:15:06.715 ID:kTjTGIAk0
幻に翻弄される鈴鶴へと、其処に蟒を殺す程の剣筋を斬撃を、ヴェスタはその小さな身で斬り放つ。
回数を重ねるごとに、まるで其れに慣れたかのように、一振り一振りの速さを増していった。

鈴鶴「ぐぅッ―?!」

嗤いながら最速で斬りかかるヴェスタの【剣】の刃に、遂に鈴鶴は片腕を――右腕を少し、切り裂かれてしまった。

ヴェスタ「お姉ちゃん―――剣の一振りで、わたしは上回った―――
     わたしよりも弱いお姉ちゃんは、ふさわしくない―――創世主に―」

ヴェスタの嗤い声が響く。
走る痛みを感じながら、鈴鶴は後ろに跳び、冷静に考えていた。

165 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:17:02.654 ID:kTjTGIAk0
傷は浅い―――自身の不老不死の身体ならば、いずれ治る――だが、このままでは―――わたしは―――。
あの、【創世書】を消さなければ―――。


ヴェスタ「お姉ちゃん――わたしはお姉ちゃんなんて大嫌いよ
     だから、このまま斬られて御終いになって、ふふ、ふふっ―――

     幻に囚われて、わたしに負けてしまえ―――」

ヴェスタはさらに鈴鶴を挑発する。
そして、その言葉と共に、はるか上空に飛び上がり、そしてそこから鈴鶴に斬りかかった。

166 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:17:34.002 ID:kTjTGIAk0
鈴鶴「――――」

鈴鶴は、ヴェスタを眼で追わずに、眼を閉じた。

鈴鶴「そうはさせない―――」
腕の痛みに歯を食いしばりながら、鈴鶴はそう呟き――。

そして、右腕を無防備に、天に突きだした。

167 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:18:47.230 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「諦めたのね――――
     おねえちゃん―――さよなら―――」

その一言と共に、【剣】の刃が鈴鶴の右手に入った。
激しい痛みが伝わってくる―――。

しかし―――鈴鶴は、その【剣】が身体に触れた一瞬―――其れと同時に―――。


鈴鶴「月影黄泉流―――【姫百合】―――」
自身の右腕だけを切り飛ばされるように身体を折り曲げ、自身の剣術の奥義を、ヴェスタに叩き込んだ。


168 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:20:22.648 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「―――!?」

其れは返し技。

相手の動きに合わせて、それを跳ね返す奥義。

其の性質上、対人での鍛錬のみでしか得られない技―――。
ヴェスタは、その技を見ていない―――。

だから―――ヴェスタは其れを避けられず―――。
その衝撃を受け、ヴェスタは吹き飛んだ。
しかし―――鈴鶴は、ヴェスタを狙って切ったのではない。


その刃は、【創世書】、ただそれだけを消し飛ばした。

169 名前:社長:2017/03/06 01:20:49.951 ID:kTjTGIAk0
なんか勝手に重要なもの壊してごめんなさい。

170 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:01:38.685 ID:/abCs7iU0
鈴鶴「痛い……右の手を犠牲にした……恐ろしく痛いわね……
   神剣と、それに混じる瘴気のせいで、ちぃっと治るまでに時間はかかるかもしれないけれど、その甲斐はあった―――」


ヴェスタ「――――!」
ヴェスタは、呆然とした表情で、消し飛んだ【創世書】の欠片を見つけている。


鈴鶴「……わたしと同じように、左手で【剣】を持っていた
   右手に持っていた【創世書】の位置は、【剣】の位置とあなたの技術を想定すれば、見ずとも―――」

171 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:09:22.252 ID:/abCs7iU0
ヴェスタ「ふふ―――ふふふ
     あはははははははははは―――っ」

ヴェスタの嗤い声が響く。
それは狂気にまみれた嗤い声だった。

172 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:13:07.198 ID:/abCs7iU0
ヴェスタ「なぁんて―――
     おねえちゃん―――

     【創生書】がなくなったから―――わたしを倒せるとでも、思っていた?
     所詮、おねえちゃんを苦しめる幻影も、オモラシスも――――
     小手調べみたいなものだよ」
ひとしきり嗤った後、ヴェスタは淡々とそう告げた。

鈴鶴「分かっているわ―――
   【創世書】なんて、永久にはいらなかった……
   確かにあれがなければ、わたしたちが幸せに暮らす始まりはなかったけれど…
   永久にあれはいらない―――あれは、安置すべきものだった……

   けれど、そうできないから、斬り伏せた」

ヴェスタ「ふふふ―――
     でも―――
     それだけのことするために、腕をひとつ犠牲にした――

     おねえちゃんは、わたしに見せていない奥義をついに見せてくれた―――」

鈴鶴「技術は、わたしと同じ
   貴女はその【剣】を操る資格があり―――そして、【剣】のせいかは知らないけれども
   恐ろしく洗練された技術がある

   多分―――貴女は蟒を斬った海神―――わたしの祖先にとっての弟神――の血でも引いているのでしょう
   其の血を引くならば―――片腕しか使えないわたしを越えられる可能性は充分―――」


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

173 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:13:30.338 ID:/abCs7iU0
鈴鶴は左手で黄泉剣を構え、ヴェスタを見つめた。

ヴェスタも同じく左手で、【剣】を構え、鈴鶴を見つめた。

そしてふたりは同時に斬りかかった。
剣と剣のぶつかる金属音が響いた―――。

174 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:23:43.409 ID:/abCs7iU0
黄泉剣―――。

其れはかつて神を斬り伏せた神剣。
其の剣自体は月女神と同じ――そして其れを支える【勾玉】は【力】の塊―――。

それらが合わさり、強力なる剣となる。


一方、【剣】も其れに負けぬ剣だ。

恐ろしく硬く、恐ろしく切れ、其処から流れる瘴気が斬られた側から入り、常人は狂って死ぬ。
耐えられるのは恐ろしい精神力を持った者のみ―――。

そしてまた、【剣】は素晴らしい剣術を授けてくれる。
そして記憶の中にある剣術を模倣し、最高の状態で扱えるようにしてくれる。


二つの違う剣同士はぶつかりあった。
共通点は、どちらも、不適切な血の持ち主が持つと、【力】に飲まれて狂うことだ―――。

175 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:24:18.446 ID:/abCs7iU0
月影黄泉流―――。

其れは、月の民の間でのみ伝わりし剣術―――。

其処に有る技は百合の華の名を冠している―――。

夕菅、藪萱草、姥百合、山百合、笹百合、袂百合、鬼百合、鉄砲百合、姫小百合―――。
そして、奥義である姫百合―――。

その技同士が、ぶつかり合う。
同じ技量、同じ性質の剣がぶつかり合う。

鈴鶴が技を繰り出せば、ヴェスタが其れに対して技を返して受け流す。
ヴェスタが技を繰り出せば、鈴鶴が其れに対して技を返して受け流す。

闘いは拮抗していた。

しかし、負傷の事を考れば、ヴェスタの方が優勢であった。
そしてヴェスタは、鈴鶴の斬り上げる黄泉剣の刃に向かい、奥義である姫百合を叩き込んだ。



176 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:24:36.213 ID:/abCs7iU0
―――。

――。

―。




177 名前:社長:2017/03/16 23:25:25.104 ID:/abCs7iU0
【剣】を持ったヴェスタならあの魔王様にも勝てそう感。

178 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:36:17.936 ID:4E9Vbmk.0
一瞬の閃光と金属音が、其処に走った―――。

鈴鶴とヴェスタは、背中合わせに其の場で対峙していた。


そして其の一瞬の後に―。

ヴェスタ「あぁああーーーっ!!」

ヴェスタの左腕が掻っ切られていた―――。
血が流れ、そして膝を突き、左手の力を失くしてしまったのか、【剣】を取り落としていた。

179 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:37:38.481 ID:4E9Vbmk.0
鈴鶴は姫百合を姫百合で返したのだ。
姫百合は、本来相手の振りかぶる刃に自発的に切り込みながら、威力を返す技だ。

だが、鈴鶴は―――姫百合を黄泉剣で受けた瞬間に、姫百合を放ったのだ。

其れは鈴鶴が咄嗟に放った一撃だった。
斬られる感覚から斬りこんだあの行動を―――剣の刃で真似たのだ。

180 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:37:56.921 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「っ―――はぁ、っはぁっ―――
     まだ――まだっ―――」


鈴鶴「まだ―――ヴェスタはわたしに斬り込める?
   もう―――その左手では、今のように斬れないわ―――

   右手に持ち変えてもいいけれど、負傷してもなお、斬り込める気概は―――」

181 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:39:50.540 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「っ―――」

鈴鶴は、言葉に詰まりながらも、きっと睨みつけるヴェスタに近寄った。
血の流れる右腕を修復しながら、ヴェスタに歩み寄った。

鈴鶴は、傍らに落ちている【剣】を拾えば直ぐに反撃してくる様に見え、ヴェスタは動けなかった。


鈴鶴は近づいてくる。
鈴鶴はヴェスタに歩み寄る。

黄泉剣を左手に構えた鈴鶴は、ヴェスタの目の前まで近づいてくる。

182 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:43:21.595 ID:4E9Vbmk.0
そして、ヴェスタの後ろに回り込んだ。

ヴェスタは、其れでもなお―――反撃の機会を伺っている。
【剣】を―――利き手ではない右手で、何時掴んでやろうかと思っていた。

183 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:44:28.793 ID:4E9Vbmk.0
鈴鶴は―――黄泉剣を仕舞い、神の力を解き―――。

百合神ではない、鈴鶴自身の姿になって、ヴェスタを抱きしめた。

鈴鶴「ごめんね、ヴェスタ―――
   どうしてわたしは、あの時あんな事を言ってしまったのだろう

   【預言書】は、ヴェスタがいなければできなかった
   世界の創造に、優劣なんてなかった、のに―――」

鈴鶴の涙が、ヴェスタの服に伝う。

鈴鶴「ヴェスタが居なくなって、わたしは初めて分かったの
   優劣がない事に―――

   わたしは如何して、あんな事を言ってしまったのかってずっと思っていたの
   わたしは、ずうっと後悔していたの―――」

鈴鶴は償いの言葉を紡ぎ、ヴェスタを抱きしめた。

184 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:47:26.780 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「え――」
ヴェスタは、戸惑いの表情を見せた。

鈴鶴「お願い―――
   勝手な言い分かもしれないけれど、わたしを、許して―――
   どうか、あの日々に――戻ろう?」

ヴェスタの表情は鈴鶴には見えていない。
けれども、多分―――彼女は、戸惑った表情を見せていると感じていた。


ヴェスタ「………」
ヴェスタは、今【剣】を拾い上げれば――、
傍らの【剣】で斬りつければ、即座に此の勝負に勝てると思っていた。

鈴鶴を超えられるのだと。
ヴェスタの右手は、落ちている【剣】へと伸び―――。

185 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:54:42.214 ID:4E9Vbmk.0
其の手を、鈴鶴は掴んだ。
斬りつけた右手は既に、10歳そこらの少女の肉体を掴むのには申し分ないほどに回復していた。

ヴェスタ「っ―――!」
鈴鶴が、そんな姑息な手に引っ掛かる訳がない―――。

ヴェスタは心の奥底では分かっていた。
曲がりなりにも鈴鶴と過ごし、曲がりなりにも鈴鶴と闘ったから―――。

【剣】を掴むことできず―――わたしは、此のまま鈴鶴に勝てない。
ヴェスタの心は絶望に満ちていた。

186 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:02:26.598 ID:4E9Vbmk.0
ふいに、鈴鶴の手の力が緩んだ。
それと同時に―――鈴鶴は言葉をヴェスタに、ぽつりぽつりとつぶやき始めた。

鈴鶴「貴女がわたしを、許してくれないなら、わたしをその【剣】で貫いても、いいよ―――

   わたしをその【剣】で斬り、そして首を獲ってしまってもいい
   わたしの血を奪い、その傷を癒し、わたしを超えた力を操っていい

   わたしはあなたが好きだから―――
   わたしを乗り越えてくれても―――

   あなたがわたしを嫌い、そして乗り越えるというのなら―――
   わたしは潔く其れを受け容れる―――

   此れがわたしの出来るすべて―――
   貴女を愛しているから、わたしは、貴女の糧となっても―――構わない」

ヴェスタ「あ―――」
ヴェスタは、鈴鶴の言葉に、何故だか涙が止まらなかった。

187 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:10:36.225 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタは、右手で【剣】を握りしめた。
けれども―――もう、鈴鶴を斬りつける気はなかった。


ヴェスタ「おねえちゃん―――
     ごめん―――」
ヴェスタの心にはもう、鈴鶴への怨念は一欠片もなくなっていた。

鈴鶴の身体の温かさが分かる。
鈴鶴の心は、ヴェスタの心を溶かしたのだ。

鈴鶴「ヴェスタ―――
   わたしだって―――ごめんなさい―――」
そして鈴鶴は、再度ヴェスタに償いの言葉をささげた。

188 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:11:07.965 ID:4E9Vbmk.0
しかし―――。

ヴェスタ「―――いいや」
突如、ヴェスタの声色が変わった。

鈴鶴は異変を察知し、其の場を飛びのき、再び黄泉剣を構えた。


189 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:12:22.956 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「ようやく俺の出番が来たぞォ―――
     このガキの恨みが解けやがったから、ようやく来れたな―――」

鈴鶴「貴様、ヴェスタではないわね―――」
ヴェスタの声は、小鳥のさえずりのように美しい声ではなく―――寧ろ、厳めしい男の様な声になっていた。

190 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:14:49.625 ID:4E9Vbmk.0
ユピテル「フハハハハハハハッ―――
     俺の名はユピテル!
     このガキにとりついた、俺の分霊という奴さ―――

     呪いぐらいしか出来なかったが、ようやく俺がここで顕現できる」
ヴェスタの姿形は変わらぬものの、人格は、あの日のヴェスタでも、今闘ったヴェスタでもなく。

其処に現れたのは―――。

ユピテル「貴様の血を流されたら、俺が消滅するところだった―――
     危ない、危ない……
     だが、ここで始末して、その持ってる【勾玉】を奪い、【剣】を併用して封じられた俺を奪いかえしてやるぞ」

鈴鶴「貴様―――」

ユピテル「―――生憎、雷の力はあっちにいっちまったが、式神ぐらいならなんとかなる―――
     【剣】さえあればなァ!!!」

ディアナ達の語った、緑色の悪魔だった―――。

191 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:20:24.513 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタの魄を借り奪った其の緑色の悪魔――ユピテルは、【剣】に念を込めた。

そして其の場には、鈴鶴よりも大きい―――六尺三寸の、乙女の姿をした緑色の悪魔の式神が現れた。

ユピテル「このガキが、お前を消す為に―――使おうとしていた式神だぜェ…
     名は、確かミネルヴァだったかな………
     このガキが心変わりしやがったから、使われる事はなかったがなァ…」

ミネルヴァは、鈴鶴を見下ろし睨みつけていた。

其の眼は月の民の様で―――。
其の髪色は、草原に広がるような緑色で―――。
人間としての耳は無く、猫のような耳が頭にあり―――。
また、顔や手に――ーそして恐らくは衣装で隠れた身体にも――蛇の模様が刻まれていた。

192 名前:社長:2017/03/18 03:25:02.387 ID:4E9Vbmk.0
此の式神の実力やいかに。ちなみに六尺三寸は191cmぐらい。

193 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:36:30.242 ID:TWcZdluA0
ユピテル「さぁ―――その女を倒しちまえ」

ユピテルの命を受け、ミネルヴァは鈴鶴へ向かっていった。
其の速度は、閃光の如き速さだった。

194 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:37:36.027 ID:TWcZdluA0
鈴鶴「ちぃっ!」

鈴鶴はそれをなんとかかわし、返す黄泉剣で脛をえぐるも、かすり傷ほどにしかなっていなかった。


鈴鶴「【剣】の力で、満ちている―――
   斬った手ごたえが―――まるで感じられない―――!」

195 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:39:40.557 ID:TWcZdluA0
目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。

あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。

軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。

そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。


かつてヴェスタが生み出したオモラシスと同じように―――、
式神、ミネルヴァは、それを兼ね揃えた暗黒の生命体だった。
男を吹き飛ばすほどの力を持つ鈴鶴の天敵である、乙女の存在の―――。


196 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:48:44.006 ID:TWcZdluA0

もしミネルヴァに、鈴鶴の操を狙おうとする意志があるなら、発現させたのが男であるユピテルにより吹っ飛ばす。
だが―――この式神は、鈴鶴の命にしか興味はない。


鈴鶴はどうにかその一撃をかわし、ミネルヴァを操る本体をどうにかしようとするが、ミネルヴァはそれを許さない。
こちらが式神を召喚しても、ミネルヴァに比べればちっぽけなものだ。
身一つでかわそうとしても、もともと鈴鶴を超えた存在であるミネルヴァは、鈴鶴を圧倒し始めた。

そして、鈴鶴に向かって振り下ろされた拳をかわしても、地面に訪れた衝撃は鈴鶴に伝わった。


197 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:50:39.179 ID:TWcZdluA0
鈴鶴「ぐぁっ――――」
鈴鶴の身体はバランスをとれずに倒れ込んでしまった。

ユピテル「てめェの眼が閉じられちゃァ悲劇が見せられねェ―――そのまま首以外を潰してやるぞ」

其の言葉と共に、鈴鶴のどてっぱらにミネルヴァの拳が飛んできた。


198 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:51:06.986 ID:TWcZdluA0
だが―――。
鈴鶴の身体には何も衝撃も痛みも来なかった。


鈴鶴の腹の上にはアポロが居て、そしてミネルヴァの片方の拳は消滅していた。

アポロ「鈴鶴、さん―――
    助けに、来ました………

    僕に出来るのは、此れしかないからっ」


199 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:51:34.175 ID:TWcZdluA0
ユピテル「なんだ、このガキっ―――!?」

ユピテルの驚愕の言葉もいざ知らず、アポロはミネルヴァへ突撃していった。


鈴鶴は、ディアナ達に協力を要請していた。
鈴鶴がヴェスタを追い掛けている間、何一つとして邪魔も入らなかったのは、此れによるものだ。

恐らく―――アポロは此の状況を見て、助けに来てくれたものだろう。

ふと鈴鶴が一枚岩の岸を見ると、モーターボートが一隻停まっていた。
どうやらこの一枚岩からわずかに見える、向こう岸の島から、
アポロが此処に船で駆け付けたらしい――。


200 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:54:42.074 ID:TWcZdluA0
アポロの力―――。
それは自身と触れた者が魔力を封じられる力―――。

式神は魔力と依代から創られる。
たとえば刃物を用いて式神を創れば、例え其れが敗れても其れで刺すこともできる。

しかし―――ミネルヴァはヴェスタの【血】と【剣】の瘴気から出来ていた。
それらは魔力に近い存在だ―――。

目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。
あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。
軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。
そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。

そういう性質があろうと―――存在そのものを消し飛ばせるアポロの力の前では全くの無力になってしまう。
アポロは、ミネルヴァに対して無傷で勝つことができるのだ。

201 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:55:33.731 ID:TWcZdluA0
アポロはミネルヴァの片足に思いっ切り抱きつき、其れを消し飛ばした。

ユピテル「クソッ、この地面を抉り取りそれを投げつけ―――」

そして、ユピテルがこの事態を執成そうと、直接的な攻撃を図ろうとした―――。


ヴェスタ「させない―――」
しかし、其れは為されることはなかった。
ヴェスタが、其の心を取り戻していたから。


202 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:57:37.362 ID:TWcZdluA0
式神を操る者は、其の式神の【力】が奪われると急激に気力を消耗する。
分霊としてヴェスタに憑依していたユピテルは、気力のみで存在しているともいって良かった。

そのため―――ユピテルが操るミネルヴァの【力】が削れていくと共に、ユピテルの【力】は弱まっていったのだ。

ユピテル「き、貴様ッ―――今ので、俺の力が失われていたために、出てきやがったか―――
     しかし………てめェのその神の血と【剣】で、此処の封じを解いてやる―――」

ユピテルはなおも抵抗を続けようとした。

鈴鶴は其れをさせまいと、ヴェスタと彼女に憑依したユピテルの元へ駆けた。

203 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:59:46.007 ID:TWcZdluA0
けれども――――。
其れよりも、早く―――。

刃が肉を貫く鈍い音が聞こえ、其れと共に血液が地面へと流れ落ちた。


鈴鶴「っ―――!」
アポロ「えっ―――!?」

鈴鶴とアポロは絶句していた。


ヴェスタは―――。
ヴェスタは、【剣】で己の腹を貫いていた。

204 名前:社長:2017/03/19 03:01:32.051 ID:TWcZdluA0
ミネルヴァ⇒鈴鶴⇒アポロ⇒ミネルヴァ的な相性図。

205 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:28:59.824 ID:CXciAxMo0
ヴェスタ「おねえちゃんを傷つけるのは、もう嫌だ―――
     それが例え、わたしに憑りついていた何かに、拠るものでも―――

     ミネルヴァは、わたしが、おねえちゃんに勝ちたい気持ちで―――
     あの暗闇で念じていたものだから―――
     例え操られて召喚したのだとしても、念じていたわたしにも原因はあるから―――」

ユピテル「や、やめろこのアマ…きさ―――」

ヴェスタ「おねえちゃん、ごめんね
     わたしのために、此処まで来て、此処までしてくれたのに……

     でも、こうしなければ、こいつは消えないから……」
ヴェスタは涙を流しながら、海の中へ其の身を投げた。

ヴェスタは、暗い海の底に沈みながら、【剣】に念を送り込んだ。
【剣】から迸る瘴気は、ヴェスタの身体の中をも包み込み、其れに巻き込まれてユピテルの分霊は消し飛んだ。

206 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:31:11.943 ID:CXciAxMo0
鈴鶴とアポロは呆然として、海の底を見つめていた。
鈴鶴「駄目―――」
鈴鶴は、またたいせつなひとに逝かれると思い―――。

アポロ「そんな―――」
アポロは、如何にもならなかった事に絶望を感じていた―――。

鈴鶴「貴女を、死なせるわけには―――」
そして鈴鶴は、海へと飛び込んだ。

207 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:31:27.397 ID:CXciAxMo0
鈴鶴「ヴェスターーーっ!」
鈴鶴はヴェスタに手を伸ばそうとする。

けれども届かない。
其の手はヴェスタに掠る事すらままならない。

其れは鈴鶴が金槌――泳ぐことに対しては大変不得手だったためだ。
もがきもがいて、果てには、鈴鶴は意識を失ってしまった。

208 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:34:52.847 ID:CXciAxMo0
薄れゆく意識の中、鈴鶴は自身が金槌である理由を感覚で実感した。
鈴鶴の能力は生命を生み出すことに逆らう力―――。

海は生命を生みだす源であり母―――。
生命を生み出すことに逆らう事は、大いなる海に逆らう事に通じる。

鈴鶴の能力の代償は、泳ぐ事を封じることだった―――。
アポロの魔法を封じる力の代償として、自身も魔法を使えないように―――。

けれども―――自身だけならば、自身が触れられないだけ。
其れで大海を彷徨えない代償は、あまりにも大きすぎる。

其処までの代償が或る―――此の能力の真意は―――。
其れは此の力が、血を介してほかの女にも移せるということ。
最も、何処までが操か如何かは、其の女の判断基準に依る―――。
鈴鶴のように恐ろしい心の者はそう居ないから、触れただけで吹き飛ばすことはない。

しかしそれでも、子を為すことは難しい。
やろうと思えば、世界全ての女の血を塗り替え、新たなる命を生みだせぬようにもできる。

此れこそが、大いなる海に逆らうという事なのだ―――。

209 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:35:07.149 ID:CXciAxMo0
――――。

―――

――。

―。

210 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:35:27.147 ID:CXciAxMo0
???「―――」

何処かから、声が聞こえる―――。

???「鈴姫―――」

211 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:36:17.902 ID:CXciAxMo0
其れは夢の中か、其れとも黄泉國(よもつくに)か―――?

???「鈴姫――」

鈴鶴「え…?」

鈴鶴は、何処とも分からない声に、ただ頷いていた。
其の声は初めて聞いた――けれども、とても懐かしい―――そんな声だった。

212 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:37:33.090 ID:CXciAxMo0
イサナ「わたしはイサナ―――
    鈴姫――貴女の双子の姉―――最も、生まれることすら叶わぬ蛭子だったから、
    貴女にこうして憑依している存在だけれど―――

    鈴姫を、ヴェスタを救えるのは―――今わたししか居ないから―――」

鈴鶴「あ……」

イサナ「鈴姫、貴女に一つだけ訊く
    ヴェスタを助ける為なら―――例え不老不死の肉体にしても―――助けたい?」

鈴鶴「もともと其のつもりで、ヴェスタを助けに―――
   でも、もしあの子が其れを嫌がるのなら―――楽にしてあげたい

   不老不死の肉体は、良い肉体ではないから―――」

イサナ「分かった―――」

母に似た声の其の人は、其れだけ言うと、其の場から離れた―――。

213 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:38:10.251 ID:CXciAxMo0
イサナは―――自身を覆う、強靭な鬼の鎧を―――自身の肉片で拵えた其れを、破壊した。

以前はいくらやっても破壊すること叶わなかったその鬼の鎧。
しかし鈴鶴が【剣】で身体を裂かれた余波か、今此の時、其れにひびが入っていた。

だから―――。

ぼろぼろに崩れる鬼の鎧を、自身の能力――触れたものをドロドロに溶かす力で溶かし、ぎゅうっと握り締めた。

そして、自身の魄なき身体で溶かした鎧を抱えながら、ヴェスタの元へ潜って行った。

214 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:38:40.678 ID:CXciAxMo0
イサナ「ヴェスタ―――」

ヴェスタ「おねえちゃん―――いいや、違う―――
     おねえちゃんに、似ているけれど―――」
ヴェスタは目を丸くして、イサナを見つめている。

イサナ「わたしは、鈴姫―鈴鶴の姉、イサナ」

ヴェスタ「おねえちゃんの、おねえちゃんが――
     どうして、こんなところに――」

215 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:38:54.766 ID:CXciAxMo0
イサナ「貴女を助けるために―――海に飛び込んだはいいけれども、上手く潜れなかった鈴姫の代わりに」

ヴェスタ「おねえちゃん、来てくれたんだ――」

イサナ「ヴェスタ、此のままでは―――其の傷のまま、生き永らえる事は叶わない
    鈴姫は―――例え不老不死の肉体にさせてでも、貴女を助けたいと貴女に言う筈―――

    しかし―――その選択は貴女にさせる」

216 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:39:27.560 ID:CXciAxMo0
ヴェスタ「わたしは―――」
ヴェスタはゆっくりと語り始めた。

ヴェスタ「わたしは、おねえちゃんが好き
     こんなばかなわたしを、金槌なのに、無理しても追い掛けてくれるほどに好いているおねえちゃんが、好き

     縁の糸を紡ぎ直しに、痛い想いをしてもあきらめなかったおねえちゃんが―――

     そんなおねえちゃんを支えたい―――
     だから―――」

217 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:40:31.148 ID:CXciAxMo0
イサナ「わかった―――
    鈴姫の不老不死の血を―――貴女に捧げよう―――
    最も、厳密にはわたしの血だから―――月女神だけではなく、太陽之女神のものも混じってしまうけれど―――
    傷は治るし、鈴鶴と共に暮らせることには変わりはない……」

イサナは、鬼の鎧の中に混じる血をすべてヴェスタにゆっくりと飲ませた。
乳呑み児の様に、ヴェスタは其の血をゆっくりとゆっくりと飲み始め、
やがて其れをすべて飲み干した。

218 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:43:29.565 ID:CXciAxMo0
血をすべて飲み干してすぐ、鈴鶴が斬られた腕を治したように
腹の傷は徐々に癒え、【剣】はヴェスタの身体から排出された。

イサナ「【剣】―――此れは、貴女のもの―大切に抱えていて―――」
イサナは、【剣】をヴェスタにしっかりと抱えさせた。

ヴェスタ「うん―――」
ヴェスタは、其の言葉に頷いた。


そしてヴェスタは、イサナに抱えられ鈴鶴のもとまで浮かび上がった。

イサナの出来損ないの肉体は、海の底へ沈んでいった。
もう、鬼の鎧が出来ることはないだろう―――。

鈴鶴に此の魂だけの身を晒すことになるだろう―――。
けれども、そうしようとも―――鈴鶴のたいせつなひとを救えるのならば、其れでいい。

イサナは、そう思いながら、沈む鬼の鎧を見つめていた。

219 名前:社長:2017/03/20 00:44:39.425 ID:CXciAxMo0
男を吹っ飛ばす力がやたら強くなるこの感じ。

220 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:39:31.789 ID:16FDJMqc0
――――。

鈴鶴が気が付くと、一枚岩からぼんやりと見えた向こう岸の上に居た。

鈴鶴が辺りを見回すと、ヴェスタが泣きながら鈴鶴を抱きしめていた。

鈴鶴「あれ―――ヴェスタ―――」
鈴鶴は困惑しながらも、ぎゅうっと自身の身体を抱きしめるヴェスタの頭を撫でていた。

221 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:42:44.260 ID:16FDJMqc0
ヴェスタ「鈴鶴おねえちゃんっ、やっと目覚めたっ
     大丈夫―――わたしは、おねえちゃんと、永久に一緒に居るよ」

ヴェスタの其の言葉に、鈴鶴は自然と涙を流していた。

ヴェスタ「おねえちゃん――――」

鈴鶴「わたしも、貴女を、離さない―――」

鈴鶴とヴェスタは、しばらく抱きしめあっていた。


222 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:44:21.698 ID:16FDJMqc0
ヴェスタと抱きしめあって、少しの時が経った。

鈴鶴「わたし―――海に飛び込んで―――そのまま気絶して――
   あれから、わたしは……とても懐かしい声を聞いて…」
そう言いながら、鈴鶴はふと背後に視線を合わせた。

イサナ「………」
其処には、イサナが目を瞑ったまま座っていた。

鈴鶴「あ………」
鈴鶴は、じっとイサナを見つめていた。

223 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:51:17.527 ID:16FDJMqc0
イサナ「鈴姫―――
    目覚めたみたいだね」

鈴鶴「わたしの、双子の姉…だよね?」

イサナ「ええ……
    あの鬼の鎧はもう、遠い海の底に消え失せた
    在るのは魂だけの、透けたこの姿のみだね」
イサナの声色は、達観したように落ち着いていた。

鈴鶴「ずっと、わたしを見ていたの?」

イサナ「そういうことになるね……
    最も……あの鬼の鎧は破る事出来ぬほど頑丈なものだったから――
    わたしは何もすることはできなかった―――ただ、貴女を見守るだけしか―――」

鈴鶴「そうなんだ………
   わたしの本当の姉―――なんだか、不思議な気分……」


224 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:57:05.588 ID:16FDJMqc0
鈴鶴はふと、目を瞑ったままのイサナに疑問を覚えた。

鈴鶴「そういえば、どうして目を?」

イサナ「……わたしの眼は、二つの瞳が重なり合っているんだ
    あまり―――人には見せたくない―――そんな眼なんだ」

鈴鶴「見たいな、イサナの眼
   そのままじゃ、わたしはイサナの事が分からない」

イサナ「わかった……」
イサナは渋々といった様子で、其の瞳を鈴鶴に見せた。

225 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:57:26.796 ID:16FDJMqc0
鈴鶴「…綺麗」
其の目は、恐ろしくも―――何処か不思議で、そして綺麗な月の民の眼だった。

イサナ「世辞でも―本心でも――そう言ってくれると嬉しいよ」
そう言いながら、イサナは少し頬を染めた。


226 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:01:26.951 ID:c2C.BhFo0
鈴鶴「そういえば、わたしたちは、どうしてこの岸辺に――?」

ヴェスタ「あっ、それは―――」

ディアナ「そこから先は、俺たちが話そう」

鈴鶴が新たな疑問を問うた時、丁度ディアナ達が其処に現れた。

鈴鶴「ディアナ……ネプトゥーン……アポロ……
   今回は、助けてくれて……本当にありがとう」

ネプトゥーン「何……ユノを助けることが、わたしたちの生きる目標みたいなものだから……」

ディアナ「さて、鈴鶴の疑問について語ろうか」

そしてディアナは語り始めた。


227 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:02:00.697 ID:c2C.BhFo0
ディアナ達は、ヴェスタを狙う敵を排除しきり、鈴鶴達が一枚岩の上に来た時には、その対岸で様子を見ていた。
此処までの移動手段として使用した車の中で、ディアナ、ネプトゥーン、アポロ――
そして、隠れ家にそのまま置いておくと危険と判断し、此処まで連れてきた眠り姫、ユノ―――。
この4人は、じっと闘いが終わる其の時を待っていた。

だが、ミネルヴァが登場した時―――アポロは、自身が万が一やられるかもしれないとしても、
此のまま見過ごしてユノを救うことは出来ないと、ディアナとネプトゥーンにユノを任せ、ミネルヴァを消しに行った。

その後イサナがヴェスタを救い、ヴェスタと鈴鶴と共に水面まで浮上した。
そして、アポロの乗って来たモーターボートにアポロ、ヴェスタ、鈴鶴が乗り込み、向こう岸まで帰って来た。

228 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:05:52.306 ID:c2C.BhFo0
鈴鶴が目覚めるまでに―――ヴェスタは、ディアナ達の身の上話を聞いた。
また、ユノの姿を見て―――ヴェスタは全てを思い出した。

自身はユノの妹である事―――。
滅ぼされた街の市長の娘である事―――。

そして、家が焼かれた時にユピテルの分霊に憑りつかれた事を。

ユピテルに憑りつかれたヴェスタは、【勾玉】や【剣】を探す為に抹茶売りの少女になっていたという。
血の力か、其れとも別の力か、鈴鶴に出会い―――そして今に繋がるということだ。

229 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:07:31.004 ID:c2C.BhFo0
ユピテルがヴェスタに憑りついたのは、ユノに近い存在であるからだろう。
万が一の事を考え、保険を作っておいたのだろう。
最も、その保険は消えてしまったが―――。

そして、ディアナの話が終わったと同時に、ヴェスタは言の葉を紡いだ。

ヴェスタ「………わたし、ユノおねえちゃんに、鈴鶴おねえちゃんに、イサナおねえちゃん―――
     たくさんおねえちゃんが居て、不思議な気分なの……
     でも、ユノおねえちゃんを目覚めさせないと、幸せにはなれない
     特に、ユノおねえちゃんが大好きな、アポロちゃんが………」

ヴェスタ「だから、おねえちゃん
     わたしも、おねえちゃんがやろうとしている事を…ユノおねえちゃんを助けることを、手伝ってもいい?」

鈴鶴「ええ……ありがとう……」


気が付くと、地平線からは朝日が昇ろうとしていた。

230 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:08:31.287 ID:c2C.BhFo0
ディアナ「………鈴鶴、このまま向かうのか?」
ディアナは鈴鶴に問うた。

鈴鶴「いいえ……準備をしてから、万全の状態で向かいたいから……
   だから、一度戻りたいの」

ディアナ「俺らの隠れ家か?」

鈴鶴「いえ、そうではない―――
   誰とも知れぬ場所にある、わたしと……ヴェスタの住んでいた家に……」

ディアナ「分かった……俺の車で行くか?」

鈴鶴「………お願いして貰っても、いいかしら?」

ディアナ「構わないさ……」


231 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:09:32.756 ID:c2C.BhFo0
鈴鶴は、窓の外から其の景色を見ていた。
一枚岩が遠ざかってゆく―――。

鈴鶴は其れを見ながら、あることを思っていた。

鈴鶴(集計班―――貴方の遺言は―――【預言】通りになった………)

鈴鶴(例えそれが運命だったのだとしても―――
   其れを導いた貴方には、感謝するわ……)


―――。

気が付くと鈴鶴は、夢の世界へと落ちていた。
また、アポロやネプトゥーンも眠っていた。

232 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:10:56.799 ID:c2C.BhFo0
ヴェスタ「おねえちゃん、寝ちゃったの?」

イサナ「……疲れているみたいだから、鈴姫は此のまま眠っていてもらおう
    あの家の場所は、わたしも知っているから……このままディアナに伝えておくよ」

ヴェスタ「その、ディアナは大丈夫?
     ディアナも、いっぱい仕事してきたんじゃあ…ないのかな?」

ディアナ「此れよりも面倒臭い仕事なんて、ザラさ……
     だから、気にするな―――

     それよりも、ヴェスタは―――大丈夫なのか?
     見た感じ、お前は九つか十の少女の肉体だろうに」

ヴェスタ「おねえちゃんに、【血】の力で助けられて―――疲れも、なんにもないから―――」

ディアナ「そうか―――」


そして車は、其の場所へ向かって走り去って行った。

233 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:11:07.597 ID:c2C.BhFo0
          集計班の遺言 完


234 名前:社長:2017/03/22 00:13:21.252 ID:c2C.BhFo0
いろんな設定を借りて作ったss完。
次回のお話が最終パート的な予定。

235 名前:きのこ軍:2017/03/22 00:24:46.400 ID:LP92FVz6o
乙です。設定を使ってくれて嬉しく思います。
ヴェスタちゃんに泣いた。次回作も楽しみにしております。

ここいらでオリキャラのかんたんまとめ紹介をしてくれると嬉しいなあと思ったりラジパンダリ

236 名前:社長:2017/03/22 00:41:55.579 ID:c2C.BhFo0
キャラまとめしようとは思ってるらしいぞ

237 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:47:39.107 ID:Pe0ksBgA0
――――。

―――百合神は、世界を混乱させた。

其れは恐ろしき力を持ちて、すべてを破壊する事の出来る力を持つ存在だった―――。
神の力を持つその存在を、如何にか出来るならば―――。

其れは、同じ神の力しかない。
百合神は、海神の血を引く少女の操る【鏡】の力によって、闇の中に封じられた。

238 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:49:26.352 ID:Pe0ksBgA0
百合神が封じられて、世界の混乱は防ぐことができた―――。
しかし其れも、永久に、とはいかなかった―――。

百合神は、【勾玉】を持っていた。
少女は、【鏡】を持っていた。

神器は3つ。最後の1つである【剣】は、海の底でずうっと眠り続けていた。

239 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:49:43.983 ID:Pe0ksBgA0
もし、百合神が現れなければ、【剣】は目覚めなかっただろう。
百合神の恐ろしき力が、【剣】を目覚めさせ、其処に宿る蟒の魂は、海から水面へ、水面から陸へと移動した。

蟒の魂は、たまたま其処に居た人間の身体を奪い取り、そして【剣】を引き上げさせ、世界を獲ろうとした。
蟒の魂が宿った人間は、緑色の光を迸る悪魔と成り果てた。

240 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:50:16.766 ID:Pe0ksBgA0
【剣】は、本来触れた者を狂わす魔剣なのだ。
しかし―特別な【血】を持つ者は、其れに呑まれずに振るうことが出来る。
その刃は鋭く、そして手にした者に剣の術が備わる剣―――ー。

しかし、たまたま其処に居た人間は、勿論ながら特別な血など持たぬ者で―。
そして、脅威として世界に顕現した。

241 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:50:43.492 ID:Pe0ksBgA0
其れに気付いた少女は、【鏡】の力と、呪術をもってして如何にか其の人間を打倒した。
だが―――このまま神器を外に出した状態では、何時また混乱が起きるか分からない。

少女は、【鏡】と【剣】を持ちて、自ら闇の中にその身を封じた。
悪魔と成り果てた人間の、亡骸と共に―――。



242 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:50:55.452 ID:Pe0ksBgA0



               すべて陰陽のもの

243 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:52:59.134 ID:Pe0ksBgA0
――――。

ヴェスタを救った、其の後―――。

百合の花の咲き誇る、広い庭―――大きな大きな、和風の屋敷―――。
其の広さは、鈴鶴とヴェスタの二人と、数体の抹茶で住んでいてもなお、過剰に大きい屋敷であった――――。


244 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:56:13.482 ID:Pe0ksBgA0
鈴鶴たちを乗せた、ディアナの運転する車は其処に辿り着いた。
鈴鶴「しまった―――わたし、眠っていたのね……
   其の、ごめんなさい……ヴェスタかイサナが説明してくれたのだろうけれど、ディアナに無理させて―――」

ディアナ「構わない―――貴女と違って、俺は神の力ではなく、有り触れた兵士を片付けただけだから…
     其処まで、疲れなかった…ただ其れだけだ」

鈴鶴「そう言ってもらえると…助かるわ」

そして鈴鶴達は屋敷へ入り、広い浴場で禊を済ませ、眠りについた。

245 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:56:55.312 ID:Pe0ksBgA0
屋敷に来てからの数日は、鈴鶴達は英気を養った。
と言うのも、鈴鶴もヴェスタも、噂になっているからだ。

鈴鶴の方は、人相は充分隠したものの、ヴェスタは完全とは言えないまでも、その姿は断片的に噂として語られていた。
また、ディアナについては、人相は特定されないが、その遠距離射撃の技術からか、僅かながら噂になっていた―――。

246 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:58:11.943 ID:Pe0ksBgA0
人の噂も七十五日―――とは言わないにせよ、しばらくは外に出ず、此処で休養を取ることにしたのだ。
ユノの事はあるが―――ヴェスタの式神を借りて戦っただけとはいえ、分霊でもユピテルは狡猾に動いた。
自身の本体を甦らせるために、何年も其の機会を狙っていた。

何があるか分からない。
万全の状態で、ユピテルに挑まないといけないのだ―――。

247 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 02:59:02.805 ID:Pe0ksBgA0
世界は、オモラシスに蹂躙され、インフラ等が破壊された―――。
しかし、其れも世界の中枢であるきのたけ会議所を中心に、大多数の尽力もあり、世界は復興しつつあった。

ヴェスタ「はぁーーーーっ」
ヴェスタは溜め息をついていた。

鈴鶴「ヴェスタ……だいじょうぶ?」

ヴェスタ「うーん……ユピテルに憑りつかれてたのもあるけれど、こんなに世界を荒らして―――
     わたし、此処に居るだけでいいのかなぁって……」

鈴鶴「気持ちはわかるけれど……貴女が出て行っても、面倒臭い事になるだけ…
   どうしても償いたいというなら……ユピテルを片付けることが、其れに繋がると思うから」

ヴェスタ「……ありがとう、おねえちゃん」


248 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:01:11.843 ID:Pe0ksBgA0
しばらくして、ディアナ達の居る部屋へ、鈴鶴は現れた。

鈴鶴「おはよう―――
   大事な話があるの」

ディアナ「……ユピテル関連、だな?」

鈴鶴「そう……
   奴の封じられた場所は分かった―――
   
   あとは………少々、調べる事さえ済めば、向かう事になるでしょう」

249 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:03:05.448 ID:Pe0ksBgA0
アポロ「ユノちゃん―――
    もうちょっとの、辛抱だよ」
アポロは、眠っているユノを撫でながら、そう呟いていた。

ディアナ「俺たちに、何か手伝える事はないか―――?
     最も……俺らでは、神器に敵わないだろうから、直接戦闘は無理だろうが……」

鈴鶴「そうね……
   此れから、わたしとヴェスタと、イサナとで、向かう前にひと調査をするつもりなんだけど―――
   その間、此の家の…整備をしてもらえないかしら?」

250 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:05:52.448 ID:Pe0ksBgA0
ネプトゥーン「整備?」

鈴鶴「恥ずかしい事だけど―――わたし、此の広い屋敷を最低限維持できるようにしか管理してないの
   だから、埃まみれの部屋とか、そういうのがあって―――
   また、壊れてる場所があるかもしれないから……
   それらの整備―――掃除かもしれないけれど―――を、やってほしいの」

ディアナ「大掃除、ということか―――」

鈴鶴「そうなるわ…
   本当はわたしがしたいのだけれど、其の暇がなさそうだから―――」

ネプトゥーン「大丈夫、わたしたちがちゃんと管理しておくね」

鈴鶴「ありがとう――」

ディアナ達は、鈴鶴のお願いに承諾してくれた。

251 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:07:12.739 ID:Pe0ksBgA0
其の後、鈴鶴はヴェスタに其の事を伝えた。

ヴェスタ「ちょっと、おねえちゃん―――
     何処かに行くって話だけど、わたし、行っても大丈夫なの―――?」

鈴鶴「確証はないけれど―――恐らく大丈夫
   そうじゃなかったら、わたしが何とかするから」
鈴鶴は冷静にそう述べた。

ヴェスタ「……ちょっと不安だけど、おねえちゃんがそう言うなら…」
ヴェスタは少し不安な表情を見せながらも、鈴鶴の冷静な表情を信頼した。

252 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:08:47.720 ID:Pe0ksBgA0
イサナ「さて、鈴姫―――何処に行くつもりなんだ?
    いくら鈴鶴と一緒に居るといっても、其の思考までは分からん――教えてほしい」

鈴鶴「きのこたけのこ会議所―――此の世界の中枢たる場所よ」

ヴェスタ「……えっ!?
     そんな場所に、わたしも行くの―――?」

鈴鶴「其処に、尋ね人が居るのよ―――
   其の人は、一応、信頼できると思うから……」

イサナ「ふむ……
    鈴鶴が信頼するのなら、わたしは其れに従う―――」

ヴェスタ「わたしも――」

253 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:10:04.719 ID:Pe0ksBgA0
ふと、ヴェスタが鈴鶴に尋ねた。

ヴェスタ「おねえちゃん……
     会議所に、【剣】は持っていった方がいい?」

ヴェスタは、肩にかけたハンドバッグの口を開け、【剣】を見せた。
ヴェスタを助けた後、【剣】はヴェスタが持つことになっていた。

曲がりなりにも神器で或る其れは、其れを一番持っていても問題ない者が持つのがいいと考えたからだ。
ちなみに、黄泉剣と違い、【剣】は神の身体からできたものではなく、蟒の尾に眠っていたもの。
其の為、身体に仕舞うということは出来ないため、ヴェスタが血の力を込めたハンドバッグを作ったのだ。

254 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:12:11.317 ID:Pe0ksBgA0
鈴鶴「そうね―――
   目的の一つとして必要でしょうから、持っていった方がいいわ」

ヴェスタ「どんな目的なの―――?」

鈴鶴「其れは―――」
鈴鶴はヴェスタの問いに答えた。

ヴェスタ「なるほど、そうか―――
     わかった、おねえちゃんっ」

そして、鈴鶴達は会議所へと向かった。

255 名前:社長:2017/03/26 03:13:24.118 ID:Pe0ksBgA0
一応すべて陰陽のものが最終話予定。

256 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:44:04.810 ID:6QMucJns0
――――。

百合神―鈴鶴が目覚める、遥か遥か前―――。

悪魔になり果てた人間に憑り付いた、蟒の魂の残滓が目覚めた。

いや、目覚めたというよりは、目覚めさせられた――の方が正しい。

緑色の悪魔ユピテルは、力を求めていた。
そして、この世を彷徨う魂を身体に得て、強さを得ようとしていた。

彷徨う魂を召喚する技を使い、偶然にも蟒の魂の残滓を召喚することができたユピテルは、早速其れを取り込んだ。
その強さは絶大――ユピテルは、雷を操る力を得、もともとあった頑強な肉体は更に強化された。


257 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:45:31.498 ID:6QMucJns0
だが、それでは足りなかった。
蟒の魂を得た時に、神器が或る事を本能的に悟ったからだ。

ユピテルは、それらを得て、世界を獲ろうと考えた。
そして、神器を―【勾玉】【鏡】【剣】を捜す旅へ出た。


長い刻が経過し―――。
とある街で、ユノと呼ばれる少女が【鏡】の話をしているのを耳に挟み―――、
自身の名前と相性のいい名前の少女との運命を感じ―――。
そして―――。


258 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:46:04.347 ID:6QMucJns0
――――。

きのこたけのこ会議所―――。
目的の人物の部屋で、鈴鶴とヴェスタは静かに立っていた―――。

扉の開く音―――。
その兵士は、灯りをつけた。

259 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:47:44.289 ID:6QMucJns0
791「!?」
流石の791も、一度戦った事のあるとの乙女と、見慣れぬ少女が部屋が居た事で、目を丸くして驚いた。

鈴鶴「ごめんなさい―――
   あまり目立ちたくないので、勝手に上がらせてもらったの……」

791「………」
791は、呆然とした表情で、少女を見つめていた。

260 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:48:42.873 ID:6QMucJns0
791「………」
791は、呆然とした表情で、少女を見つめていた。

791「この子は……いや……違う……」
ふと何かを呟いていたが、鈴鶴の方に向き直り―――、

791「私に……何か用?」
鈴鶴に問うた。

鈴鶴「あなたに聞きたい事がひとつ…頼みたい事がふたつ…これが用件ね」

791「ふーん、結構あるね…
   とりあえず、聞きたい事から言ってちょーだい」

261 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:49:39.720 ID:6QMucJns0
鈴鶴「……あなたは、遥か昔―――
   ユピテルという名の緑色の悪魔を、退治…というよりは、封印しなかったかしら……?」

791「………」
791は、その問いに少しばかり沈黙していた。
が、直ぐに答えを発した。

791「その通り…何処で知ったかは知らないけれど、確かに奴を封印したのはこの私だ
   逆に私から質問――如何してそんな事を聞くのか、教えて貰いたい」


262 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:50:23.570 ID:6QMucJns0
鈴鶴「そうね……奴は或る少女の魂を抱えているから、其れを取り戻す為に―――」
其の答えを聞いて、791ははっとした表情で鈴鶴を見つめた。

791「そう、なんだ……あの子を、助けるために……
   あの子、やっと助けられるんだ―――

   ところで、その子は―――」
そして、ヴェスタの方に目をやった。

263 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:52:01.065 ID:6QMucJns0
ヴェスタ「わたしは、ヴェスタ―――
     ユピテルが奪った魂は、わたしのおねえちゃん、ユノのものなんです…」

791「あの子の、妹さんか……
   ところで、鈴鶴…
   如何して、私が奴を封印したって…分かったの?」

鈴鶴「曲がりなりにも、奴は【鏡】持ちだ―――
   其れに対抗できそうな人物は、わたしとヴェスタを除いて…知る限りはあなたしかいないから……」

791「なるほど、私は鈴鶴と互角だからねぇ……
   ………あの頃の話、してもいいかな?」

鈴鶴「あなたが良いのならば……」
そして791は、ユピテルを封印した時の事を語りはじめた。

264 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:52:54.002 ID:6QMucJns0
――――。

話は、ユピテルがディアナを撒いた後に戻る―――。

ユピテル「ふぅぅぅッ……俺の式神を片付けられる奴がいるとは怖い怖い…
     直接やりあっても雷撃で仕留められるだろうが……念には念を入れておかなくては」

ユピテル「さて……この【鏡】
     大気中にある【力】を吸い取ってくれるとはな……

     おかげで、世界を征するに必要な力が着実に溜まりつつある」

265 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:53:07.844 ID:6QMucJns0
ユピテル「さて……適当に街をまた潰し、今度は住んでる奴の生命力も貰ってやろうか……
     しかし……ユノの身体まで貰えなかったのが厳しいな…

     生命力というのは魂魄両方あって初めて成り立つ……特に魂魄が引っ付いてる時が……
     此のままこの餓鬼の魂を抱えたくねえが……さらなる力を得るためには耐えねばなるまいか……」

ユピテルは、自身の力を誇りながら、海の上の一枚岩に出た。

しかし―――。
791「…………」

ユピテルの前に、偶然其処に居た791が立ちはだかった。

266 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:53:34.347 ID:6QMucJns0
ユピテル「なんだァ…テメェ………」
ユピテルは、不満そうな表情で791を見つめた。

791「其の邪悪な波動……そして死の香り……
   あなた、街でもひとつ滅ぼした……?」

ユピテル「ハハハハハハ―――それがどうしたよォ
     俺は…ユピテルは選ばれた存在さ……強くなり世界を獲る為に、街ひとつ潰したって問題はねェよなァ」

791「いいや……少なくとも、私は…そんな奴嫌いだ」

ユピテル「ほざけ…てめェを今ここで潰してくれる…
     見たところ…てめェは魔法使いだなァ……魔法使いさんよォ、負ける覚悟はできたかァ?
     神の力を持ちし緑色の悪魔に勝てる奴なんて、人間だろうと魔族だろうと、いねェからなァ」

そして791とユピテルは激突した。

267 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:54:34.077 ID:6QMucJns0
だが――。
其の拳を、791は自身の拳で殴り返した。

ユピテル「ぐぉっ!?」
その衝撃たるや、まるで鍛え抜いた戦士の拳に匹敵する其れで―――。
ユピテルは咄嗟に飛びのいて、ダメージを抑えた―――。

ユピテル「てめェ……一体何者だ!?」
ユピテルは額に汗を流しながらそう言う―――。

791「私は791、魔法使いだ」
しかし、791は―――冷静に、ただそれだけを言った。

ユピテル「791―――!?貴様、まさか、魔王と呼ばれている……」

791「まぁ、間違ってないけれど…それでも、ただの魔法使いだよ?」

791は微笑みながら、魔法詠唱の構えを取った。

268 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:54:51.729 ID:6QMucJns0
ユピテル「ちぃッ、魔王だとォ
     噂は聞いてたが、よもやここまでとは…
     本気でやらねばならないか……」
ユピテルは雷を791に向かって撃った。


791「シトラス―――」
魔王791の其の詠唱は、無限の檸檬色の魔力の塊を呼び出した。
そして雷に向かってぶち当たり、その雷を掻き消し、そして残った魔力はユピテルに叩き込まれた。

ユピテル「ぐッ…!」
咄嗟に腕で魔力を弾いたが、其れでもなおダメージは小さくない。

791「私は…腕力にも魔力も、ちょこっとだけ、他の人達より強いだけ…
   でも、抹茶に―緑色の悪魔に特化しているんだよ…その魔法はね!」
そして再びシトラスを叩き込む。

269 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:56:08.163 ID:6QMucJns0
無限の檸檬色の魔力はユピテルを包み込み、そしてユピテルを気絶させた。

791「なんか、すごい【鏡】も抱えてるみたいだけど……
   まぁ、私にはいらなさそうなものだ…

   本当はこんなことしたくないんだけど、街滅ぼしてる奴を見過ごして別の被害が出たら構わないからね」

そして791はその拳を振りおろそうとして―――
ある事に気が付いた。

791「……!
   こいつ、女の子の魂を奪ってるッ……!?」
791はユピテルにとどめを刺せなかった。

270 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:56:35.452 ID:6QMucJns0
791「しかも、この魂、身体の方が生きてる…
   私には、魂を取る技術などない……どうすれば……」

そして791は、ユピテルを封印する道を選んだ。
此の方法が最善かどうかは分からない。

791は少女の――ユノの魂もろともユピテルを消すことはできなかった。
しかし、だからといってその身体が何処にあるか分からない。

791は、一枚岩の中にユピテルを封印した。
自身の魔力の半分を使って結界で包み、更にその上に強靭な岩で固めて――。

そして791はユノ――本人は、名前を知らなかったが―――の身体を探す為、長い旅に出た。
だが、彼女の身体は見つからず―――。

そうして幾年立っただろうか―――きのこたけのこ会議所があることを791は知った。
其処で手掛かりがつかめるかもしれないと考え、791は兵士となり―――
そして此の時、ようやく其れを知ることができたのだ。

271 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:57:44.769 ID:6QMucJns0
鈴鶴「……成程
   ありがとう、全てを教えてくれて―――」

791「いえいえ、寧ろ……ようやく此の日が来たんだって、不思議な気分だ」
791は、感慨深い表情で鈴鶴たちを見つめていた。

791「ユノ――ちゃん…を助けるという目的があるなら、封印の破り方を教えるね
   単純明快な方法だ、鈴鶴とヴェスタの二人がかりで封印に攻撃してれば多分破れるよ」

ヴェスタ「えっ……」
791のその答えに、ヴェスタは困惑していた。

272 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:58:03.571 ID:6QMucJns0
791「鈴鶴はわたし並に強いでしょう?
   ヴェスタ…貴女はつい最近の、オモラシスがいっぱい現れた時に居た子よね?
   見た感じすごい力持ってるし、懐に抱えてるものも強力な力を感じるし、合わせれば私を超えるからいけるいけるっ」

ヴェスタは、791の明るい言葉にぎゅっと目を瞑った。

273 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:58:47.715 ID:6QMucJns0
791「そんな怖がらないで…私は、別にあなたをどうこうしようってつもりはない
   あなたを捕えようとした兵士がきのたけにも居たけど、見事に眠らされて…
   ほかの所でもそういうところがあったから、あらゆる機関で貴女を見ても触れないようにしているの

   でも…私は、例え其れが無かったとしても、貴女をどうこうする気はなかったでしょう
   わたしには、ユノちゃんを、助けられなかった負い目があるから……」

791はヴェスタの目線に立ち、子を諭す親の様に優しくそう言った。

791「さて、鈴鶴……
   私に聞きたい事は終わったけど、頼みたい事が2つだよね?
   多分この事に関するものだけど、一体なに?」

鈴鶴「1つは…戦闘術【魂】を学びたいから、伝承者の筍魂に其の旨を伝えてほしい
   わたしも、色々と知り合いはいるけれど、其の手の知り合いがいないから…」

274 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:59:05.094 ID:6QMucJns0
791「……鈴鶴、どうして私に?」

鈴鶴「多分……魂を取る術を持っていなかったあなたは、会議所に来てそれを学ぼうとしたと思うの
   でも、あなたのその戦闘スタイルはと、戦闘術【魂】は致命的に噛み合ってなくて―――」

791「うっ…痛いところを突くね…
   確かに、魂さんはねじ伏せられる戦闘力はあるけど、その通り…私は習えなかったんだよねぇ
   その技術の根幹は分かってはいたんだけどねぇ……」

鈴鶴「それでも、一応戦闘能力としてはあなたの方がある…そういう点で、融通が効きやすいと思ったから」

275 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 01:00:55.726 ID:6QMucJns0
791「はいはい…もう一つは?」

鈴鶴「ヴェスタのこと…
   この子は、確かにわたしに匹敵する力がある

   でも…まだ、力の扱い方が未熟なの
   本来ならわたしがやった方がいいかもしれないけれど
   …戦闘術【魂】を学ぶ時間との兼ね合いもあって、あなたにその指導を頼みたいの」

791「そう来たか……
   まぁ、私は、別にいいけどね…ヴェスタは、いいの?」

ヴェスタ「おねえちゃんを助ける為に、頑張るから、大丈夫!
     話は既に、ついてるからっ」

791「なるほど、じゃあ引き受けよう」

そして話はまとまった。
鈴鶴は、筍魂のもとに向かった―――。

276 名前:社長:2017/03/27 01:03:39.030 ID:6QMucJns0
魔王様がラスボス普通に倒してるけど
緑色の悪魔=オモラシス=抹茶なので負けるわけがない。

277 名前:きのこ軍:2017/03/27 01:39:28.953 ID:JxG3Or5ko
強すぎィ!(賞賛)

278 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 00:39:19.544 ID:86/5W1BQ0
――――。

百合神を封じた少女は、鈴鶴より遅く、海の上で目覚めた。
【鏡】と【剣】を抱えて―。

だが、偶然にも高波に飲まれてしまい、必死で【鏡】と【剣】を抱えていたが、【剣】は波の下に消えてしまった。
気が付いた時には、【鏡】だけを抱えて、何処かの海岸へ流れ着いていた。

279 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 00:43:06.168 ID:86/5W1BQ0
あてもなく海岸を彷徨っていると、二人の青年が少女を見て、「大丈夫か?」と声を掛けてくれた。
少女は、ふるふると首を横に振ると、青年の一人は「私の家に来ないかい?」と言った。

青年たちの瞳に正しき光を感じた少女は、青年たちについて行った。

声を掛けてくれた青年の家は、とある街の町長の家だった。
青年の家族たちも、少女に、優しく接してくれ、少女は幸せに時を過ごした。


280 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 00:45:23.234 ID:86/5W1BQ0
そしてやがて青年と恋に落ち、結婚し、子供を産んだ。名は、ユノ―――。
三人は暖かな日々を過ごし、二人目の子を授かった。

だが―――二人目の子供――ヴェスタを産んだとき、少女は体調を崩してしまい、そのまま常世へ行ってしまった。
死ぬ前に、【鏡】は、地下に、誰の目にも付かないところに封じてくれ、と言い残して―――。


281 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 01:10:31.641 ID:86/5W1BQ0
――――。

筍魂「……あの791さんから直々の頼みとは、驚いた
   しかし…お前は昔、一回大戦に参加して―其の強力な武術できのこ軍を打ち据えたと聞く
   お前の実力を確認した山本さんは、お前以上の奴は見ないとも言っていた…
   精神と肉体の完全な融合を成し遂げる術―そんな技を、お前が必要とは思わんが

   …道楽か?」

筍魂は、椅子に座りながら、訝しげな目で鈴鶴に話しかけた。

鈴鶴「武芸を学ぶからには、其れ相応の金は出すわ…」
鈴鶴は、其の問いに対する答えとして、大量の札束を筍魂の前に置いた。

282 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 01:21:44.342 ID:86/5W1BQ0
筍魂「!
   どうやら、道楽ではないみたいだ……
   何かの目的のため―――らしいな?」

鈴鶴「魂を抜き取る技を覚えるために――
   精神と肉体の完全な融合を成し遂げる術ならば、其の逆も出来ると予想した上での判断よ」

筍魂「確かに出来ん事はないが…
   ……昔791さんが話したのと同じ理由ってのは、どういうことだ?」

鈴鶴「奪われた魂を…引っこ抜く…ただそれだけの為よ
   出来るだけ早く、学び終えると助かるのだけれど」

筍魂「…成程
   791さんの意志を継いでいるというわけか
   まぁ、事情は飲めた………其の技だけでいいんだな?」

鈴鶴「ええ…」

筍魂「よし…」
筍魂は、ぱんと手を叩いた。
その目は、戦士の目になっていた。

283 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 01:35:10.208 ID:86/5W1BQ0
筍魂「まずは、俺の目でお前の実力を見たい―――
   なぁに、すぐ終わ……ぐぁっ!?」
筍魂は鈴鶴を見つめようとした。

だが……鈴鶴を見つめる事は出来なかった。
視界の中にあるべき鈴鶴の姿は、不気味な何かの力によって全く見る事さえ敵わず――そして後方に吹っ飛ばされた。

鈴鶴「………」
鈴鶴は、ただ冷静にその様子を見ていた。

筍魂「いってェ……てめェ…変な力持ってやがるなァ……
   男には、魂魄を分析させんような、そんな強大な…」

鈴鶴「ええ……そうみたいね」
何事もなかったかのように、鈴鶴は答えた。

284 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 02:51:02.469 ID:86/5W1BQ0
筍魂「なるほどなるほど…実に面白れェ
   俺が実戦の中で、お前の力を見たい――
   其れが戦闘術【魂】を操れるかどうか―――

   どうだ?」

鈴鶴「構わないわ――其れが必要と言うのなら」

鈴鶴と筍魂は、中庭へと移動した。

285 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 03:09:56.780 ID:86/5W1BQ0
筍魂「ルールは何でもアリだ―――
   武器も拳も、お前のその強大な変な力も…

   とりあえず此の紛争再現用の魔法陣を、中庭一帯に敷き詰める―――

   そして、互いに容赦なしの闘争だ
   致命傷を負うか、負けを心で認めた方が負け……
   構わないな?」

鈴鶴「…立会人は必要?」

筍魂「いいや…いらんよ」

鈴鶴「そう……余計な心配だったかしら」

筍魂「なぁに、いいさ
   ……この時計が0分の針を刺した時が始まりだ―――」
筍魂は時計を指さしながらそう言った。

時計の針が進む。
50分―――55分―――。
そして―――時は満ちた。

筍魂「はじめェッ!」

―――そして鈴鶴と筍魂の戦いが始まった。

286 名前:社長:2017/04/02 03:10:12.688 ID:86/5W1BQ0
鈴鶴Vs筍魂

287 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:11:07.951 ID:qxlwgJac0
鈴鶴は愛刀、姫百合を抜刀し、ただ冷静に切っ先を前に向けて立っていた。

先に仕掛けたのは筍魂。

筍魂「【居合切り】―――」

其の言葉と共に、筍魂は鈴鶴に向って駆け出した。
そして、まるで居合の達人のように、刃を振るうように腕を振った。

その刃は不可視の刃――。
筍魂の足元の草が斬られ、そしてその刃は鈴鶴へと―――。

288 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:17:34.681 ID:qxlwgJac0
しかし―――。
鈴鶴はその刃を、構えた太刀で受け流した。

筍魂は、【居合切り】が受け流されても気にせず攻撃を続けた。
筍魂「【辻斬り】――――」
斬撃を受け流されたと同時に、鈴鶴の死角にさっと回り込み、此れまた見えない斬撃で斬りつける。


鈴鶴「はっ――」
しかし、月影黄泉流の達人である鈴鶴に、其の程度の不意打ちなど効かぬ。
鈴鶴は其の斬撃を、気合一閃、刀身で弾いた。

さらに鈴鶴は、其れに反撃するように筍魂に刃を振るった。

筍魂「【挟む】―――」

鈴鶴の振るう刃――其れを常人が喰らえば、知らぬ間にその胴は分かれるだろう。
しかし相手もまた、戦闘術【魂】の達人だ。

冷静に、其の刃を指2本で挟み受け止めた。


289 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:23:05.285 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「なかなか、やるわね―――」

鈴鶴は冷静に、刀を構えたままそう言い。

筍魂「お前こそ―――
   確かに、其の剣術…綺麗で、そして実戦的で…
   一番良いのは、其の繰り出す攻めも守りも、理(ことわり)―技で満ち溢れている事だ
   とても、面白い……

   此れは久々に燃えてきた―――あれはアイムを弟子にしたいと思ったあの時以来だッ!!」
筍魂は、其の言葉に返しながら、刀を挟んだ指を解いた。

290 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:24:36.364 ID:qxlwgJac0
そして戦いは再び始まった。

また、筍魂は待つ鈴鶴に突撃した―――。

筍魂「【テレポート】―――」
だが、鈴鶴の刀に触れる寸前で其の姿を消し去って。

筍魂「からのぉッ、【蔓の鞭】ィッ―――」
何時の間にやら掴んだ、蔓の鞭で、鈴鶴の腕を打ち据えにかかった。


鈴鶴「ちぃっ―――」
ギリギリ其れに気が付いた鈴鶴も、完全には其れをかわせず、左手の甲に傷をつけている。

291 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:25:43.542 ID:qxlwgJac0
筍魂「鈴鶴……確かに防御は万全だ
   この技術だけで、俺はほれぼれするぞ…
   だが……俺は攻撃も見たいんだ

   そうでなければ、つまらんぞ?」
筍魂は鈴鶴を【挑発】する―――。


鈴鶴は、普段挑発には乗らない―――。
しかし―――今回は―――。

鈴鶴「そうね……守りだけでは、見極められない
   ただの戦いなら兎も角――これはあくまで、わたしが戦闘術【魂】を得るにふさわしいかを見るための戦い
   技術の見極めの、手伝いをしましょう―――」

あえて、其の挑発に乗った。

292 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:26:28.690 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「ちぇーッ!」
鈴鶴の気合の籠もった声と共に、横薙ぎの刃が筍魂の胴体目がけて飛んで行く。

筍魂「【飛び跳ねる】ッ―――」
しかし其の斬撃を飛び跳ね、そしてまた着地した衝撃で鈴鶴を吹っ飛ばした―――。
地面を転がりながらも鈴鶴は受け身を取り、すっ転ばずに体勢を立て直す―――。

筍魂「【マッハパンチ】―――」」
鈴鶴目がけた、風圧を込めた最速のパンチを、鈴鶴は蹴りで叩き落とし―――。

鈴鶴が地面を蹴りあげ、えぐれた土と草で目潰しをしようとすれば、
筍魂「【リーフストーム】―――」

その草を逆に刃と変えて、土を切り裂き―――鈴鶴の皮膚を、少し切り裂き―――。

293 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:27:25.518 ID:qxlwgJac0
其れから数分か―あるいは数十分か―あるいは数時間か―。
互いに技を出し、受けるという流れが幾度も幾度も行われた。

その均衡が破られたのは筍魂の仕掛け―――。

筍魂「さて……そろそろ、てめェの弱点への抵抗を見せて貰うぞ
   【波乗り】―――」
大気中の水分が、波に形作られ、鈴鶴に押し寄せた。

294 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:29:30.297 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「がぼ……ゴボッ……」
鈴鶴のもがく声が聞こえる。

筍魂「此処で決着をつけるッ……!」
水の中でもがく鈴鶴の上―――水面に筍魂は立っていた。

筍魂「俺が堪えるか―――お前が堪えるか―――ッ!」
筍魂は水面の上になおも立っていた。

鈴鶴「――――!」
一方の鈴鶴は―――地面に姫百合の刃を突き刺し、荒ぶる波の流れに耐えていた。
姫百合の峰に手を添え、目を瞑り、其の押し寄せる波に耐えていた。

295 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:20.617 ID:qxlwgJac0
そして―――。
水は全て、消え去った。
【波乗り】は大気中の水分を利用しているから、有限が或る。
其れまで、鈴鶴は耐え切ったのだ。

筍魂「ちぃ……水切れかよォ……
   しかし…其処まで耐えるとはなァ…おかげで体力を浪費しちまったぜ……」

鈴鶴「げほっ、けほけほっ……
   此処で折れる訳にはいけない……わたしの心も、わたしの刀も……」

そして鈴鶴と筍魂は無言で対峙した。

296 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:30.339 ID:qxlwgJac0
筍魂は構えを取った。
必殺の一撃を叩き込む構えを―――。

一方の鈴鶴は、闘いが始まった時の構えと同じだった。

297 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:40.342 ID:qxlwgJac0
沈黙が其の場を包み込む。
何秒、何分、何時間―――。
恐ろしく長いように感じられる其の沈黙を、筍魂が破った。

筍魂「奥義――【Vジェネレート】ッ―――!」
筍魂の額を包む炎と共に、目にも止まらぬスピードで捨て身の一撃をぶちかます。

其の動きは、誰の目にも追えない動きだった。

298 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:52.948 ID:qxlwgJac0
だが―――。

筍魂「ぐっ―――」
筍魂が地面に倒れ―――。

鈴鶴「………」
左腕を負傷しながらも、鈴鶴は其処に立っていた。


そう――鈴鶴は其の攻撃を受けた瞬間に、月影黄泉流奥義―姫百合を筍魂に叩き込んだのだ。
相手の動きに合わせ、その威力を乗せ相手を斬る奥義。

奥義【Vジェネレート】は、必殺の一撃―その威力も伊達ではない。
だからこそ――その威力で切り裂かれるとなれば―――。

299 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:33:15.671 ID:qxlwgJac0
闘いは終わった―――。
筍魂は、其の場のベンチに座り、鈴鶴はその隣で静かに立っていた。

筍魂「此れが、紛争でなければ俺は死んでいたな―――」
筍魂は、ぽんぽんと腕を叩きながらそう言った。

鈴鶴「………其れで、貴方の判断は、如何なのかしら?」

筍魂「ああ……お前は技を分かっている奴だ…
   力ではなく技で俺に対抗した…此れなら、問題はないだろう…
   ……だが、今日はちと疲れた…明日からだ…明日から、修行だな…
   早朝6時―此処に来い」

鈴鶴「分かったわ…」

筍魂は、立ち去る鈴鶴の後姿を見つめながら――。
791の―魔王と呼ばれた其の兵士の様に、恐ろしく強い相手と闘えたことに、深く感動していた。

筍魂「ありがとよ―――俺の日々の鍛練にも、さらに身が入りそうだ……」
そして、そうぽつりとつぶやいた。

300 名前:社長:2017/04/18 00:33:49.363 ID:qxlwgJac0
通常モードの武術の達人の鈴鶴と互角の筍魂さん。
(ユリガミモードではどうだろう・・・。)

301 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:13:00.954 ID:qxlwgJac0
――――。


ユピテルが791に封印された後―――。
ヴェスタに憑依したユピテルの分霊は、すぐ其れに気が付いた。

しかし…雷の力は使えない、ヴェスタには何の【力】もない―――。
或るのは海神の血を引く、ただ其れだけの事。

此れでは封印を施した場所が分かっても、封印など破れないだろう。
そう考えたユピテルは、他の神器を探しに行った。

たまたま見つけた抹茶を手にし、ふとユピテルは思いついた。
此の娘を、抹茶売りの少女にさせ、彷徨わせながら、神器を此の血でもって探そうと―――。

302 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:16:01.688 ID:qxlwgJac0
――――。

翌日―――。
鈴鶴は筍魂の元に現れた。

筍魂「さっさと終わらせるプランは立てた…まぁ、終わるかはお前次第なところもあるが…

   まずは戦闘術【魂】の神髄を、お前の其の身に沁み渡せねばならぬ
   此の武術の基礎と言うところだ…しっかりと理解してもらおう」

そして筍魂は課題を出した。
【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】
其の意味を理解しろ、と―――。

303 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:24:50.917 ID:qxlwgJac0
筍魂「お前は、十五ぐらいの小娘だ――
   そんな質問をしたところで、何のことやら―――と思うかもしれんな

   ―――――本当にお前が、見た目どおりなら

   お前は小娘ではない―――寧ろ老婆といった方がいい年齢だろう
   億という途方もない年月を生きた魔王様のように―――必ず、其の長い生の中で理解している筈だ……」

鈴鶴「……そうね」
鈴鶴は少し考えていた―――。

しかし、直ぐに答えを見つけたようで、言葉を紡いだ。


304 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:25:07.269 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「すべて陰陽のもの―――
   此れが其の武術のハシラでしょう……」

筍魂「ほう……速攻で何か、思いついたとは…
   そして其の単語の意味も、問おう―――」


305 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:25:53.107 ID:qxlwgJac0
鈴鶴は語り始めた。

すべて陰陽のもの――。

すべては、陰陽が、所有しているもの―――。


世界のすべては陰陽ふたつの要素で成り立っている。
逆に、世界を構成する一つ一つもまた、陰陽ふたつの要素で成り立っている。

其れは目に見えるものから、概念まで多岐に渡る。
感情だろうと、世界の流れだろうと、すべては陰陽で構成されている。

306 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:26:06.035 ID:qxlwgJac0
最も大きなものであろう、世界の流れ―――。
もし、それが陽の流れをとるならば、必然的に個々の感情も陽になるだろう。
もし、それが陰の流れをとるならば、必然的に個々の感情も陰になるだろう。

しかし―――其の逆も言える。
此処の感情が寄り、合わさり、世界の流れが陰陽どちらかをとることが―――。

【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】事に繋がるのだと。

307 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:26:19.372 ID:qxlwgJac0
筍魂「……成程、いいだろう
   やはり……お前も791さんのように、長い時を生きて其れを実感していたのか…」

鈴鶴「確かに私は長い時を生きたけれど…
   わたしが今のわたしになった其の時が、偶然其の一文と合っていただけよ」

ちっぽけな一つの陰の感情が、其れが世界の流れを陰の流れに変えてしまうことを、鈴鶴は知っていた。
たいせつなひとを奪われた悲しみが――男を滅ぼそうとした。
もしその試みが成功していれば、世界は女だけと――世界は陰に包まれただろうから。

308 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:26:52.087 ID:qxlwgJac0
筍魂「よし…今から、魂を取る技を教える―――
   名は【ハートスワップ】

   てめェの訳のわかんねぇ力にぶち当たらないようにしながら、速攻で教える…」

鈴鶴「ええ……お願いするわ」

そして、鈴鶴の修行が始まった―――。

309 名前:社長:2017/04/18 23:27:26.996 ID:qxlwgJac0
戦闘術魂の奴解釈間違ってたらごめんなさい。
ちなみに魔王様は33億歳設定らしい。

310 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:15:56.472 ID:BnhtrUcg0
――――。


【剣】―――。
其れは波の下で眠っていた。
魚にも、人魚にも、触れられる事もなく、ただ静かに。


ある時、波に流され、【剣】は海を彷徨った。
そして集計班の目の前に流れ着いた―――。


何故集計班の前に流れ着いたのか。

其れは、若しかしたら―――世界の未来を左右する此の人物に、
【剣】の使い手に相応しい、血を引くものを探してほしかったのかもしれない。


311 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:22:01.423 ID:BnhtrUcg0
――――。

修行から3日後―――。

たった3日で、鈴鶴は其の技を会得した。

312 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:22:20.844 ID:BnhtrUcg0
【ハートスワップ】―――。
自身の魂を世界全てのものにし―――そして目の前の相手の魂に触れ、其れを奪い去る技術だ。

しかし、其れは実戦向きの技ではない―――。

【魂】を抜き取る―――此れなら必殺の一撃だが……
其れを成す為には、自身の魂を世界すべてに溶け込ませる必要がある。

その行動は隙を大きく作るため、実戦ではまず使えないのだ。
気絶させた相手になら使えるが、あえて其れをするよりもとどめを刺した方が早い――。

313 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:23:08.096 ID:BnhtrUcg0
筍魂「一つの技だけだが…こんなにあっさりと行かれると、他の技も伝授させたくなるが…
   其れはお前の意向ではないからな…」

鈴鶴「伝授してくれて、感謝するわ……」

筍魂「なぁに……俺も感謝したいところだ
   お前の強さ、よぉく知って…さらに俺は強くなりたいと思ったからな…

   鈴鶴よ、お前の目的をばっちり決めてこい!」

鈴鶴「ええ―――」

その言葉を受けながら、鈴鶴は其の場を去った―――。


314 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:26:14.660 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴が戦闘術【魂】を会得するまでの間、ヴェスタは【力】の使い方をしっかり791に伝授してもらった。

【剣】はある程度の魔力も持っている。其れを制御する方法を、ヴェスタは会得したのだ。

791「ふーーー
   鈴鶴が帰ってくるまでに、ばっちりとヴェスタに叩き込んだよ
   はりきりすぎて、疲れちゃった…」
791は、ベッドの上に座りながらそう言った。

鈴鶴「ヴェスタともども、世話になったわ……礼として、この金を受け取ってほしい」

ヴェスタ「791さん、ありがとうございましたっ!」

791「はいはい…別にわたしはこんなにお金いらないけれど、其れで貴女が納得するのなら貰っておこう
   ――――さて、もう行くんだね」
791は金を受け取りながら、鈴鶴に問うた。


315 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:26:51.432 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「ええ……長居はする気はないから…」

791「そう…
   そして鈴鶴、あなたにひとつだけ言いたいことがあるの」

鈴鶴「いったい、何……?」
鈴鶴は訝しげに、791を見た。

316 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:28:05.051 ID:BnhtrUcg0
791「わたし―――ずうっとあなたが気になっていた

   あなたは…ユピテルみたいに……魂が複数あるって……
   魂さんのように技術じゃあないけれど、私も魂が視えるタチだから」

イサナ「それは、わたしの事―――?」
イサナが鈴鶴の横に、ぼうっと姿を現した。

イサナは、魂の姿として鈴鶴の隣には出られるものの、鈴鶴が黄泉剣を使わなければ【力】を発揮できない。
其の為、鈴鶴が【会議所】に来てからは、其の重瞳もあって厄介事にならないためにも眠っていたのだ。


317 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:28:25.457 ID:BnhtrUcg0
791「…!
   確かに、貴女はそう……

   けれど……鈴鶴にある魂は―――鈴鶴と、貴女を含めて5つなんだ
   そのうち、貴女を除けば4つの魂は肉体のある魂――

   鈴鶴はユピテルみたいに、魂を奪うような人じゃないから、何かあるんだろうと思っていたけれど
   要らないかもしれないけれど、もしも、気が付いていなかったら、と思って―――」

鈴鶴「……!」
イサナ「なに……!?」
鈴鶴とイサナは791の言葉に、固まっていた。

318 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:28:43.900 ID:BnhtrUcg0
ヴェスタ「その…おねえちゃんたち、どうしてそんなに、慌てているの?」
一人、ヴェスタは鈴鶴達の様子に戸惑っていた。


鈴鶴「わたしとイサナを除けば3つの魂―――
   1つでも2つでも4つでもなく、3つ―――」

イサナ「その魂――ユピテルの中にユノの魂が視えたあなたなら、どんな姿形か―――わかるはず…」

791「うん、そうだね…」

319 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:29:42.834 ID:BnhtrUcg0
続いた791の言葉―――其れは、鈴鶴とイサナの予想していたものであった。

一人は天狗の乙女―――黒と白、二つの髪色を持ち、隻眼であり、左手の指は3つ欠けている――。
一人は白髪と白肌の乙女―――女にしては高い其の背と、長い髪を持った、職人のような乙女―――。
一人は白髪と白肌の乙女―――おかっぱ頭で、其の身体は幼い少女のもの―――。

320 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:30:13.571 ID:BnhtrUcg0
791「……その反応を見るからに、心当たりは…あるんだね?」

鈴鶴「其の特徴だけで、声も思い出す程には…心当たりがあるわ」

イサナ「……其の魂は、何処に或る?」

791「鈴鶴の中に、眠ってるよ」

鈴鶴「ありがとう……其の言葉は、わたしをも…救うかもしれない」

791「私の力が役に立って、嬉しいよ
   それじゃ、鈴鶴、ヴェスタ、イサナ―――ユノを、きっちりと救ってね!」

鈴鶴・イサナ「勿論―――」
ヴェスタ「頑張るよっ」

そして鈴鶴達は帰路についた。

321 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:32:31.173 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴の屋敷―――。

帰ってきたころには、すっかり夜になっていた―――。
屋敷に帰ってきた時、鈴鶴たちは見違えるようになった屋敷を見て驚いた。
月夜に照らされる屋敷は、どこな妖しげで―けれども美しかった。


ヴェスタ「綺麗に…なっている……」

鈴鶴「ヴェスタを連れてきた、あの時のようね」

イサナ「生まれ変わったようだ―――」
三人は、見違えた屋敷の様子に驚いていた。

その時――鈴鶴たちに駆け寄る足音が近づいてきた。

アポロ「あ―――
    帰ってきたっ―――お帰りなさいっ」

鈴鶴たちの帰還を知ったアポロが、玄関に駆け寄ってきたのだ。

322 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:33:58.665 ID:BnhtrUcg0
ヴェスタ「ただいまっ……あれっ……どうして、アポロは…まだ起きているの?」

アポロ「僕……ユノちゃんが助かる見込みがあるのか、不安で不安で、寝付けなかった…」

鈴鶴「心配させて、ごめんなさい…
   ……しかし、綺麗に掃除してくれて…ありがとう
   ディアナ達にも、伝えないとね…」

アポロ「あ、あはは…ど、どういたしまして―――
    その…其れよりも――――聞きたいことが―――
    鈴鶴さんたちの雰囲気で、なんとなくわかるけれど…
    ユノちゃんは―――」

鈴鶴「奴を如何にかすればいい――唯それだけになっているわ
   つまり…端的に言えば、今から向かって救う事だって出来る」

アポロ「あぁ―――やっと、なんだ……
    やっと……ユノちゃんを目覚めさせられるんだ…」
アポロは、感慨深い表情で鈴鶴たちを見つめた。

323 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:34:40.160 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「ただ……その前に、ひとつだけ…話しておきたいことがあるの」

アポロ「何?」

鈴鶴「…此処ではなんだから、座敷の上で話しましょう」

座敷の上で、アポロは真剣な表情をし、鈴鶴を見つめている。

その視線に応えるように、鈴鶴は言葉を紡ぎ始めた。

324 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:36:22.133 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「わたしと、イサナは――知らなかった
   わたしの魂の中には、3つ―――魄ある魂がある

   奇しくも―ユピテルと一緒の状況なの」

イサナ「そしてその魂は、鈴鶴にとって大切な存在の魂―――」

アポロ「鈴鶴さんにも、そんなことが―――」
アポロは、じっと鈴鶴を見据え――。

ヴェスタ「……その、それはどういう存在なの?」
ヴェスタは、少し心配そうに鈴鶴に聞いた。

325 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:36:48.327 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「わたしの…姉のような存在―――千代の時を過ごした存在―――」

そして鈴鶴は其の生い立ちを語った。
自身は月の民の姫の子である事、そしてその大切な人の事―――。


その名は、ヤミ、シズ、フチ。
千代の時を生きた思い出―遠き昔の、鈴鶴にとって忘れる事出来ない思い出。

三人はかつて月を滅ぼした月の民の残党に、黄泉剣に喰われて散ったことも―――。

けれども―――。
身を裂かれて散った三人は、魂魄共に鈴鶴の中に在ったのだ。

326 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:39:01.821 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴は一通り身の上を説明し終えると、ヴェスタは泣いていた。

鈴鶴「―――どうしたの?」

ヴェスタ「おねえちゃんは、わたし以外にも――つらい事があったんだなって
     其れなのに、ずっと弱さを見せないなんて―――
     凄いと思ったら、急に涙が―――」

鈴鶴「ううん、わたしは―――わたしの中に或る神の力で其れを押し殺しているに過ぎないわ」
そう言いながら、鈴鶴はヴェスタを抱きしめ、撫でてあげた。


327 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:41:11.882 ID:BnhtrUcg0
アポロ「鈴鶴さんも―――僕たちと同じような存在だったんだ」

鈴鶴「皮肉か運命か、其れとも別のものかは分からないけれども、ね―――」

アポロの言葉に、何処かぼんやりとした言葉で鈴鶴は答えた。



鈴鶴「さて―――」
鈴鶴は、真剣な瞳と真剣な声を以て―――コトノハを紡ぎ始めた。


鈴鶴「わたしは―――」

328 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:42:59.376 ID:BnhtrUcg0
1.「彼女たちを目覚めさせ、すべてにケリを付ける」

2.「すべてにケリをつけ、そして彼女たちを目覚めさせる」

329 名前:社長:2017/04/19 23:46:24.692 ID:BnhtrUcg0
たいせつなひとの存在、此れがやりたかった為に此の話があるといっても過言ではない。

ちなみにこの選択肢要素や百合屋敷要素はれいかちゃんリスペクトです。

選択肢はどちらか選んでレスしてくださいな。
どちらを選んでも選ばなかった方の展開もやるんで安心してね。

330 名前:きのこ軍:2017/04/30 10:13:07.408 ID:VPfxtsfE0
熱い展開
悩むが1で

331 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:01:19.478 ID:dShcXiy20
鈴鶴「わたしは―――彼女たちを目覚めさせ、そしてすべてにケリを付けに行こうと思う―――」
鈴鶴は、アポロを見据えて、そう答えた。

鈴鶴「アポロにとっては、歯がゆいかもしれないけれど
   彼女たちを、ずっとわたしの中に居させて―――奴に奪われるかもしれない

   特別な血はないけれども、それでもわたしの中でわたしの血と混ざっている存在だから―――
   微量でも、神の血を求める可能性は無きにしも非ず―――

   そして、万が一彼女たちが消えてしまえば―――わたしは理性を保てるか分からないから
   一度――そうなった身としては、其れでユノが救えないことになったら……」

アポロ「大丈夫―――
    救えるという確実な保証があるんだから、僕は、大丈夫―――
    其れに、鈴鶴さんの方が、恐らく僕よりも長い間、そういう状態なのだろうから
    其れならば、年の功で、鈴鶴さんが先にやっても文句はないよ」

332 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:01:50.349 ID:dShcXiy20
鈴鶴「ありがとう―――
   明日の朝、ディアナ達にも其の事を話して、復活させるわ―――」

アポロ「うんっ……!
    少し、不安が晴れたから、僕は寝床に入るね」

鈴鶴「おやすみなさい」

鈴鶴は、そう言うと、夜空に浮かぶ月を見上げた。
其の月は満ちかけていた―――。

333 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:02:06.761 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃん―」

ふとヴェスタが鈴鶴に話しかけた。

ヴェスタ「おねえちゃんは、たいせつなひとを――
     その、ヤミ、シズ、フチっていう子を蘇らせるつもり…なんだよね?」

鈴鶴「そうね――」

ヴェスタ「すべてが終わって―――おねえちゃんはたいせつなひとを蘇らせる
     けれど、わたしは―――

     目覚めるユノおねえちゃんは居るけれど、おねえちゃんのように沢山の人を好いたことはない」
ヴェスタは、そう言うと、涙を流しながら鈴鶴の腕にしがみついた。

334 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:03:07.795 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃんは、今までずうっとそばに居た人が帰ってきたとき
     わたしの事を、同じように愛してくれているか―――不安でたまらないの」

鈴鶴「大丈夫―――誰一人とて、無碍にはしないわ」
そう言い、鈴鶴はヴェスタの頭を撫でた。
けれども、ヴェスタの言葉は続いた。

335 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:03:28.832 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃんが、そんな事しないのは分かっていても――
     でも……わたしは、おねえちゃんのたいせつなひとのことは分からないの
     もしおねえちゃんを取られたらって―――
     其れが恐くて、わたしが、自分勝手に独り占めするかもって―――
     わたし、其の人達を受け入れることができるのかって―――

     そんな悩みが、出てきてたまらないの…」

その言葉を聞いて、鈴鶴はヴェスタを抱きしめた。

鈴鶴「わたしの中に在る大切な人―――
   其の人達は、今も――ヴェスタを見ているでしょう

   確かに、会った事のないヴェスタは分からないかもしれないけれど
   其の人達は、確かにヴェスタの事を理解しているでしょう
   
   ヴェスタは、わたしの【力】に対する劣等感で、一度は仲違いしてしまったけれど―――
   其れまでの日々にも――此処での日々でも、心優しい少女だということを
   
   だから、大丈夫―――
   ヴェスタは、そんな事しない―――」
   
そして、優しい口調で、そう告げた。

336 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:03:45.386 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃん―――
     ありがとう
     しばらく、こうしていていい?」

鈴鶴「うん―――」

そして二人は、そのまましばらく抱き合っていた。

イサナは、鈴鶴の中で其の様子をじっと見ていた。
口を挟むことはない――。

けれども、微笑みながらその様子を見ていた。

337 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:08:23.992 ID:dShcXiy20
翌朝―――。
鈴鶴は、自身の意志をディアナ達に伝えた。

ディアナ「鈴鶴の中に在る人を、取り戻す―――
     俺は、鈴鶴の事は信頼しているが、
     魂を元の身体に戻す処を、実際に見れば尚の事、信頼できるだろう
     だから、俺は其の事に対して構わない―――」

ネプトゥーン「わたしも、同じ意見――
       奴からユノの魂を救ってほしい立場としては、
       其れを成す貴女たちには、迷いない状態で行ってもらいたいから」

ディアナとネプトゥーンも、鈴鶴の選択を受け入れた。

338 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:10:03.070 ID:dShcXiy20
鈴鶴「ありがとう―――」
そう言うと、鈴鶴は自身の寝床の辺りを片付け、部屋の中央に座った。
イサナは、その傍らで同じように座っている。


其の様子を、ディアナ達が、ヴェスタが固唾を飲んで見守っていた。
魂を取る―――其れを技のみで成し遂げるという奇跡を、今此処で行うのだ。

339 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:10:48.540 ID:dShcXiy20
鈴鶴「では、始めるわ―――」

鈴鶴は、【ハートスワップ】の構えを取っていた。

同時に、イサナは、ヤミ達の身体を引っ張り出していた。

鈴鶴は、黄泉剣の中にヤミ達の肉体があると考えた。
彼女たちが最後に触れたものが其れだから―――。

340 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:12:46.823 ID:dShcXiy20
けれども、其の肉体は黄泉剣ではなく、【勾玉】の中に―――。
黄泉剣は確かに、神をひとり殺せるほどには力の強い神剣だ。

しかし―――真の強さは、其の漆黒の斬撃といった数々の奇跡は、勾玉によって支えられている。
【勾玉】は力の塊―――其れは【創世書】を創るにも十分なほどに在る。

【勾玉】の中にある魔力の海を、イサナがドロドロ化の能力でかき分けながら其の肉体を掴み、此の世に其の姿を取り戻させた。

341 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:14:18.364 ID:dShcXiy20
そして鈴鶴は心を世界に溶け合わせた。
世界と同じ存在となった鈴鶴は、其の中に或る魂に触れ、そして―――。

鈴鶴「はっ―――!」

鈴鶴は、彼女たちの魂を其の肉体に移した。

暫くの時間が経った。
鈴鶴たちは、不安な様子で眠っているヤミ達を見ていた。

342 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:15:42.968 ID:dShcXiy20
眠る彼女たちの目は、或る時、見開かれた。

ヤミ「鈴鶴さま―――」

其れは、【魂】を操る其の技の正しさを立証し―――。

シズ「ん―――」

そして、ユノをも救える事が、分かる奇跡だった―――。

フチ「あ―――」

―――彼女たちは目覚めた。

343 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:17:20.713 ID:dShcXiy20
ヤミ「鈴鶴さま―――そして皆さま、有難うございます
   感謝してもしきれない位に――わたくし達はいろいろな事を言いたいのはやまやまですが……
   再会の言葉や、喜びの言葉を交わすのは、まだ早いでしょう」

シズ「そう―――鈴鶴たちにはやる事が一つ、残っている
   其れを為し遂げたら―――にしよう」

フチ「あたし達は、もう何処にも行かない
   此処で、ディアナ達と共に、ユノという子が救われるのを祈っているわ
   だから―――名残惜しいけれど、早く行ってあげて、あの子の為にも」

けれども、彼女たちは――ずっと、意識は鈴鶴の中にあった。
これまでの経緯すらも、すべて見ていた。

ユノの事も、アポロの事も分かっていた。
だから、言いだしたい言葉を抑えて、鈴鶴を、イサナを、ヴェスタを見送る事を優先したのだ。

344 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:18:09.679 ID:dShcXiy20
鈴鶴「えぇ……
   ―――眠り姫を覚ましに行ってくるわ

   そして――すべてが終わって、また、色々と―――語り合いましょう」

鈴鶴も、彼女たちの気配りを知っていた。
勿論、イサナも―――また、ヴェスタも分かっていた。

だから鈴鶴は其れだけを言って、イサナとヴェスタと共に、一枚岩へと向かって行った。

345 名前:社長:2017/05/04 23:18:55.955 ID:dShcXiy20
復活したたいせつなひと。

346 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:34:07.622 ID:rbawSLrA0
海に浮かぶ一枚岩―――今宵の其れは、いつもよりも恐ろしく見えた。
此の下に―――緑色の悪魔が眠っているからだ。


ヴェスタ「おねえちゃん――此処に、戻って来たね――」

鈴鶴「すべて終われば……もう二度と、此処に戻る事はないでしょう――
   此処できちっと片を付けましょう」

イサナ「わたしも―鈴姫と、ヴェスタの為に、出来るだけ手助けしよう――」

三人は言葉をつぶやくと、ユピテルの封印を解きにかかった。

347 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:39:41.356 ID:rbawSLrA0
鈴鶴は黄泉剣―【勾玉】の力を解放し―――。
ヴェスタは【剣】の力を解放した。

そして、それらから放たれる斬撃で一枚岩を斬り裂き続けた。

幾度となく神の力で叩きつけられた一枚岩は、遂には罅が入り、そして―――。

中から、光とともに―――。


ユピテル「―――――」


ユピテルが、目覚めた――。
其れは、つまり―――ユピテルの封印が解かれたということに―――。

348 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:40:23.760 ID:rbawSLrA0
ユピテルは、空に浮かんでいた。

手には、【鏡】を―――
そして、その表情は、恨みでもなく、歓びでもなく、怒りでもなく―――。

ただ、普段通りといったような表情を見せていた。


349 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:43:31.432 ID:rbawSLrA0
ユピテル「ふぅううーーーっ」
そして溜め息一つ。

ユピテル「奴が、ガキの魂一つ消せん臆病者だったおかげで――こうして消える事なく俺は復活できた
     あの封印の中でも、この【鏡】は効力を発揮してくれたおかげで――俺は更に強くなった」
ユピテルは、きょろきょろと鈴鶴達を見ていた。

ユピテル「そして…分霊は死んだようだが、その憑りついた先のガキが――【剣】を――
     もう一つ、横に居るテメェも【勾玉】を持って来てくれるとは」
そして―――神に等しい【力】を持つ鈴鶴たちを眺めながら、平然とそう言った。

350 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:46:43.578 ID:rbawSLrA0
鈴鶴「ずいぶんと……余裕なのね……」

ユピテル「今の俺なら―――神具二つでも相手に出来るさ
     吸収、しまくったからなァ―――力を―――」

そしてユピテルは、鈴鶴達に向かって雷を撃ちだした。

鈴鶴「………」
ヴェスタ「ひゃぁっ!!」

二人は構える剣で其れを薙ぎ払う。
鈴鶴は冷静に―――ヴェスタは、驚きこそするものの、振り払う動作其の物は正確に―――。

351 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:46:59.488 ID:rbawSLrA0
ユピテル「てめェらは―――
     俺を消しに来たんじゃァねェ―――
     そういう目的なら、封印ごと俺を消すことだってできただろうしな
     目的は、俺の中に在る魂の方だろう
     
     一方、俺はてめェらを消すだけだ
     その神器を奪うだけだ
     其の認識の違い―――思い知らせてやるぜェ」

そして戦いは始まった。


352 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:51:16.517 ID:rbawSLrA0
鈴鶴とヴェスタは、其れが初めてではあるが、統制のとれたコンビネーションでユピテルに斬りかかった。
だが―――。

ユピテル「ハハハハハハハハハ―――」
ユピテルは其れを己の肉体で受け止めた。
そしてそのまま、圧倒的な筋力で二人を弾き飛ばした。

353 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:53:20.722 ID:rbawSLrA0
ヴェスタ「おねえちゃん―――こいつ、おかしいよっ」

鈴鶴「硬い……
   恐らく、【鏡】の力を最大限使ってるのね
   けれども、斬れないなら、其の力尽きるまで攻撃し続ければいい―――」

イサナ「ちっ―――雷には、わたしの【力】も使えないか―――
    どうにか、岩を溶かして足止めぐらいしか出来ない――」

鈴鶴とヴェスタは、しばらくユピテルに攻撃を投げつけた。
時折イサナの【力】を挟み、斬る事其の物は出来るのだが―。

それでも―やっと傷が出来たと思えばすぐ修復され―――、
また、反撃に強烈な拳と雷を加えて行くため、なかなか大きなダメージが与えられない―――。

反撃自体は、鈴鶴は経験と黄泉剣の力でかわし、ヴェスタは【剣】の力で無理矢理突き抜ける―――。
しかし―――此の状態は、互いに決定打を打てない状況に等しかった―――。

354 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 02:01:03.240 ID:rbawSLrA0
ユピテル「ふ―――互いに膠着状態―――
     めんどくせェなぁ……
     フン
     ならばよォ―――俺が一つ更にてめェらを絶望させてやらァ―――」

ユピテルは【鏡】に力を送り込み、海水を用いて圧倒的な量のDBとオモラシスを召喚した。
静かな海上は、醜悪な式神達で埋め尽くされた―――。


【鏡】―――其れは―――、
光を受け、其れを何倍にも増幅し―――【力】に替える神具―――。
其の【力】は【剣】と【鏡】自身を同時に封印することが出来るほどに或る―――。

だからこと、かつて悪しき存在となった百合神を、封印する事さえできたのだ―――。

355 名前:社長:2017/05/07 02:04:35.426 ID:rbawSLrA0
魔王様に軽くやられてたけど一応ラスボスなので強いぞ。

356 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:17:15.333 ID:rbawSLrA0
鈴鶴「な―――きりがない―――!」

そして其の式神は、斬っても斬っても其の場でまた召喚されてゆく。
其れ自体は漆黒の斬撃で容易く切断できる脆さだけれども、数が異様というべきものだった。

また、式神と共に、ユピテルの雷が鈴鶴たちに飛びかった―――。


357 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:17:35.537 ID:rbawSLrA0

鈴鶴たちはどうにかかわすものの、其の不規則な軌道を躱し切れず、雷はどんどんと身体を掠るほどまでになり――――。
気が付けば、鈴鶴達は追い詰められていた。

鈴鶴「はぁ――ーはぁ―――
   人海戦術―――圧倒的な力でやってくるとは――――」


鈴鶴の【力】は男を寄せ付けないため、式神からの直接攻撃は無効にできるものの、
ユピテルの雷は避けられず――――また、ヴェスタの事もかばいながらだったため、鈴鶴は徐々に手傷を負い始めた。

358 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:18:37.821 ID:rbawSLrA0

鈴鶴の【力】は男を寄せ付けないため、式神からの直接攻撃は無効にできるものの、
ユピテルの雷は避けられず――――また、ヴェスタの事もかばいながらだったため、鈴鶴は徐々に手傷を負い始めた。


鈴鶴「わたしの式神は―――わたしの血で創ればやつらをとりあえず牽制できるけど―――
   奴の式神に比べればちっぽけ―――其れに余計な力を使うことになるし――――」

イサナ「岩をドロドロに溶かして、奴らに投げて消滅させているけれども―――これでは厳しいわ―――」

鈴鶴たちは、此の劣勢の間でも前を見据えていた―――。

ヴェスタ「はぁ―――はぁ――――」
対照的に、ヴェスタは、まだ闘いの経験が少ないこと―そして其の自分を鈴鶴が庇って手傷を負うことに、絶望的な気持ちになっていた。
けれども、鈴鶴がユピテルに立ち向かうのを見て、戦意はぎりぎりで保っていた。

しかしそれは、綱渡りのようにギリギリの戦意だった。

359 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:19:25.260 ID:rbawSLrA0
ユピテル「ハハハハハハハ―――数を使えばいいんだよォ―――数でテメェを押し潰せば―――なァ」

そしてユピテルの雷が鈴鶴とヴェスタの心臓目がけて飛んできた――――。

鈴鶴は其れをさらりとかわしたが、ヴェスタはそれをかわし切れず―――。
―――咄嗟に、鈴鶴はヴェスタのもとへ飛びかかった。

360 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:19:43.968 ID:rbawSLrA0
鈴鶴「あ―――」

けれども、【一手】――ほんの数秒の差で、其れは間に合わなかった。

ヴェスタの胸を、雷が貫いていた。

鈴鶴の脳裏には、かつてヤミ達が消えたあの日の事が鮮明に蘇った。

361 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:20:00.393 ID:rbawSLrA0
――――。

362 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:20:59.177 ID:rbawSLrA0
ユピテル「ククク―――ハハハ―――【剣】持ちはもう終いだな―――
     そして【勾玉】の方も―――」

イサナ「鈴姫っ!」
イサナが声を掛けても、鈴鶴は呆然としたままで―――。


鈴鶴「嘘―――嫌―――たいせつなひとを――――わたしは―――」
鈴鶴は、よろよろとヴェスタの袂に歩み寄って行った。


ユピテル「神器を持っていながら、そんな甘かったとは―――
     こんな面白いものを見ずに、さっさと止めを刺したら勿体ない―――

     心の底から笑い切るまで眺めてやろう、クククク―――
     封印された時間に合うだけの、面白いもんだからなァ」
ユピテルの嘲笑すらも、もはや鈴鶴には聞こえなかった。


363 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:21:22.228 ID:rbawSLrA0
ヴェスタ「かは―――おねぇ―――ちゃん―――」
ヴェスタは、声にならないか細い声で、鈴鶴を見つめて泣いていた。

鈴鶴「死んじゃいや―――わたしはもう―――たいせつなひとが消えるのは―――」
鈴鶴も涙を流し、ヴェスタの身体を抱きしめた。

イサナ「鈴姫―――ヴェスタの事はわたしが、如何にか血を捧げるから―――
    頼むから、正気に―――」

鈴鶴「血―――そうだ、わたしの血を―――生命(いのち)を―――あげなければ―――」
イサナの言葉ももはや届かず。
躊躇なく、鈴鶴は己の手を斬り、溢れ出る血をヴェスタに捧げた。

364 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:22:19.781 ID:rbawSLrA0
ユピテル「ハハハハハハハハ―――最後は自滅か
     やはり、愛とやらを利用するのは面白いなァ」


鈴鶴は血を捧げた。
それでも、ヴェスタの傷は未だふさがらない。

其れは【鏡】の―――神に等しい力のものだから。
鈴鶴の女神の血ですらもなお、ふさぐことできず―――。

だから己の血だけではなく、己の力も、心も、そして【黄泉剣】さえも。
何もかも、ヴェスタに飲ませた。

そして、決して消える事のない男を吹き飛ばす力以外の、全ての力を捧げた鈴鶴は、その場に倒れ伏した。


365 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:22:32.520 ID:rbawSLrA0
――――。


イサナも、もはや戦意を失った。
いや、失うしかなかった。

彼女は鈴鶴に憑りつく存在。大本は男を吹き飛ばす其の力に依ってはいるが、其れに加え様々な力で彼女はユピテルに対抗できていた。
けれども其れはすべて消え去り―――男を吹き飛ばす其の力しか残っていない状態は、彼女の力を削ぐのにも十分だった。


ユピテル「さて―――そろそろ止めと行こうか
     哀れなガキどもよ―――俺が其の神器を最大限使ってやらァ」

ユピテルは戦いが終わったと認識し、式神を全て決して鈴鶴達へ歩み寄った。

そして雷が鈴鶴を、ヴェスタを、イサナに向かって放たれた。

366 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:22:50.465 ID:rbawSLrA0
――――。


わたしはだれ?

ここは、どこ?

まっくらやみのなか?

わたしは―――そうだ、ユノおねえちゃんをたすけるために―――。
でも、此処は、一体―――。


367 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:23:04.479 ID:rbawSLrA0
わたしの中に何かが流れ込んでくる。
―――記憶だ。

わたしの知らない記憶が。
ヤミや、シズや、フチ―――おねえちゃんのたいせつなひとの記憶?


これは、鈴鶴おねえちゃんの記憶?

何も見えない。

暗闇の中、ただ思い出と、流れる言葉だけがわたしに響く。

368 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:23:38.778 ID:rbawSLrA0
―――「目覚めろ」


誰かの声が聞こえた。
知らない誰かの声。


―――「我を顕現させよ」


その声の主は、わたしの後ろに近づいた。


―――「さもなければ、おまえの姉は救えんぞ」

其の声ではっと我に返った。
わたしは、ユピテルの雷に打たれたのだ。
如何して奴と戦っていたのか。其の理由もはっきりとある。

369 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:26:30.350 ID:rbawSLrA0
わたし「でも―――わたしには【力】が―――」


―――「【力】は或る
    月の女神の力が―――記憶も、技術も、そして【勾玉】も―――おまえの中に或る
    おまえの傷は塞がっている―――

    それどころか―――二柱の神の【力】が、おまえに或る―――」


わたし「え―――?」


―――「鈴鶴だったか―――彼女がおまえにすべて捧げたようだ
    理解したなら、早く―――左手に【力】を込めろ」


370 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:27:55.581 ID:rbawSLrA0
言われた通り、わたしは左手に【力】を―――そして、其れと同時に其の行為が何を意味するのかも思い出した。
わたしの記憶が呼び覚まされた。

791「よし―――此れなら、もう十分だ!飲み込みが早いね、やるねっ!」

わたし「ありがとうございます、791さん」

791「でも…貴女は、隠し玉がある…よね?」

わたし「えっ―――?」

371 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:28:28.102 ID:rbawSLrA0
791「とぼけてもダメ
   ものすごい式神を召喚できる【力】がある」

わたし「でも―――この式神は、鈴鶴おねえちゃんに打ち勝つ為に練り上げたから
    だから……おねえちゃんに、見せるのは……」

791「万が一、どうしようもない状態の時の保険…これならどう?
   何をしてでも―――貴女の姉、ユノちゃんを救いたいと思うのなら、石橋を叩いて渡っても問題ないと思うな
   そして使わずに済むのなら、其れでいいわけだから…」

わたし「――――――
    それなら…やってみます」

791「よし、決まったね!私がビシバシ鍛えてあげよう」

372 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:28:52.387 ID:rbawSLrA0
其れは【力】の扱い方を教えて貰った其の時の記憶だった。

嗚呼、今は、どうしようもならない時なのだ―――。
【力】を使わなければ―――!

わたしは、其れと同時に暗闇の中に差し込んだ光の中へと進んでいった。

373 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 23:34:12.106 ID:rbawSLrA0
ユピテル「なにッ―――!?」

其処には、鈴鶴おねえちゃんが倒れ、イサナおねえちゃんも膝を付いていた。
ユピテルは驚愕した表情で此方を見つめている。

わたしの後ろには―――
式神―――ミネルヴァが立っていた。

其の存在感は、其処に或るユピテルの式神すべてを呑込むがごとく大きかった。


そしてわたしは、ミネルヴァを構成する【力】の源たる【剣】を左手に、
【勾玉】の力の根源たる、おねえちゃんの剣を右手に構えて―――、

ヴェスタ「覚悟しろっ、ユピテルゥーーーっ!!」

戦いの最中にあった不安を全てかき消すように、そう奴に言い放った。


374 名前:社長:2017/05/07 23:34:57.866 ID:rbawSLrA0
最強の式神ミネルヴァ登場。

375 名前:きのこ軍:2017/05/07 23:41:35.411 ID:90JAJ7Q6o
お姉ちゃんの思いを組んでヴェスタちゃんが立ち向かうとか熱いし泣けるわ。

376 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:41:47.099 ID:yDmhOjew0
ユピテル「ちィ――貴様ァ、俺のように式神も呼べたのかい」
ユピテルは其れでもなお、余裕を見せた表情でじっとヴェスタとミネルヴァを眺めていた。

ヴェスタ「曲りなりにも、此れはお姉ちゃんを叩き潰す為に私の中り上げた式神
     ――――お姉ちゃんには、見せたくなかった―――

     精神的にも、肉体的にも――出来る事なら使いたくはなかったけれど―――
     不思議と―――此れを出しているのに、身体が軽い―――」

式神を使役するのには【力】を使用する。
発揮する力が強いほど、より多く。

ミネルヴァのようなものは、体力の消耗が激しい。
791と修行をした時、ヴェスタは非常に疲労したことを覚えていた。
立つことが限界なほどだった。

けれども―――今、そのような事は全く感じられなかった。
何事もないように―――軽やかに、其処に立つことが――【剣】と黄泉剣を構えることが出来た。


377 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:42:56.529 ID:yDmhOjew0
ヴェスタ「行くよ―――ミネルヴァ!」

ミネルヴァ「――――――!」

ミネルヴァは其の指示と共に、咆哮をあげた。
其の咆哮は、乙女の様に美しく――けれども、辺りを震わせるには十分なものだった。

いいや、そんな生半ではものではなかった。
辺りに居た式神が、其の咆哮と共に全て吹き飛んだ。

378 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:49:08.612 ID:yDmhOjew0
ユピテル「何ッ!?」

ミネルヴァ「―――――!」
そして―――ユピテルが一瞬驚愕した、其の間に――――。
ミネルヴァは圧倒的な速度でユピテルに詰め寄って―――。


ユピテルの腕は、片方吹っ飛んでいた。
其の腕は―――ミネルヴァの拳の下に―――大きくへこんだ一枚岩の中に、もはや原型を留めぬほどに潰れていた。


ユピテル「ぐぅぅぅぅぅ――――ッ!」
ユピテルは、なくなった腕を抑えながら、苦痛の声をあげていた。

379 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:50:00.305 ID:yDmhOjew0
ミネルヴァ―――それはヴェスタの生み出した式神―――。

式神は、何か憑代となるものがなければ作れない。

鈴鶴の式神が、鈴鶴の血や髪などから作られるように―――
ユピテルの式神が、海水と【鏡】の力から作られるように―――
ミネルヴァにも、憑代となるものがある。

それは―――【剣】から漏れ出る瘴気とヴェスタの血―――。

神具と神の血を混ぜ合わせた其れは、とても相性のよい存在だ。
だから、其れを混ぜ合わせて作った式神は、恐ろしく強くなる。

かつて出現したオモラシスは、神の力で創られた【創世書】と、神の血で依り合わされた。
だから、其れも恐ろしく強かったのだ。

380 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:52:46.251 ID:yDmhOjew0
ミネルヴァは唯大振りに敵を殴り蹴る――小細工も何もない戦法しかとらない。
しかし其れだけで充分―――。

目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。
あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。
軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。
そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。

其の機動力は戦闘機よりも速く動く程に―――。
其の生命力はあるゆる生命が滅びる環境だろうとも平然と動くほどに―――。
其の防御力は科学や魔法に拠る力が束になってかかってもも跳ね返す程に―――。
其の攻撃力は頑強なる鋼の塊をその拳一振りで粉々に崩す程に―――。


其れほどまでに、恐ろしい存在だった。

また、同時にヴェスタは軽やかに飛び上がり、ユピテルの身体を斬った。
自身の中に在る技術と【剣】の【力】が生み出す其れは、ミネルヴァとは対照的に人智の最終点といえるほどに完成された技術だった。

381 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:58:39.186 ID:yDmhOjew0

【剣】の力と、ミネルヴァの瘴気は、式神に宿るユピテルの力をも喰らった。
徐々に―――徐々に―――ユピテルの力が削れていった。

ユピテルはなおも雷を撃ち出して抵抗するも、ミネルヴァの恐るべき生命力は束となった雷を食らっても平然とするほどであり―――。
そしてヴェスタにも、同じほどの生命力が備わっており―――もはや其れは戦いにならない程になっていた。

そしてヴェスタは、自身の中に在った【ハートスワップ】たる技術の構えを取った。
ミネルヴァに思いきり蹴られ、仰け反ったユピテルに向かい、ヴェスタは―――、


ヴェスタ「【ハートスワップ】―――」

ヴェスタは戦闘術【魂】の技を使って、ユノの魂を其の身に入れた。


其れと同時に、ミネルヴァはユピテルを原型が留めぬほどに殴打し、
肉塊となった其れらを海の向こうへ投げ飛ばした。

其れと同時に、ミネルヴァの咆哮に耐えたわずかな式神の残党も、消え失せた。

ヴェスタは、此の時―――
自身が恐ろしいほど大きな【力】を身に着けたと、実感していた。

382 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:59:17.958 ID:yDmhOjew0
世界を獲ろうとし―――其の過程で、一つの街を、多数の民を殺戮した緑色の悪魔は、消滅した。

383 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 22:59:37.868 ID:yDmhOjew0
ヴェスタ「おねえちゃん―――!」

けれども――其処には大きな犠牲があった。

イサナ「―――息はある
    脈もあれば、体温も―――

    だが、如何して目覚めないの……」

鈴鶴は―――目覚めなかった。
其の黒いまなざしは見えることなく。

まるで、ユノのように眠っていた―――。

384 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 23:03:54.380 ID:yDmhOjew0
ヴェスタ「魂は―――ユノおねえちゃんのように、消えていない…
     確かに、鈴鶴おねえちゃんは居る筈なのに」

イサナ「【魂】は、確かにあるのね」

ヴェスタ「うん―――」
ヴェスタは、不安げな表情で眠る鈴鶴を見つめていた。

ヴェスタ「………取り敢えず、屋敷に戻って――考えたい
     だから、こんな場所から―――早く帰りたいけれど、いい?」
其の場に流れた不穏な空気が嫌になったヴェスタは、そうイサナに告げた。

385 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 23:08:30.007 ID:yDmhOjew0
イサナ「そうね―――其れから、【鏡】も持って帰りましょう」

イサナは、ユピテルの持っていたらしい―――そこに落ちていた【鏡】を拾い上げた。

イサナ「わたしは鈴姫とは姉妹だけれど、其の血の元となる神が違う
    鈴姫は月――わたしは太陽の女神の血を引いている

    此の【鏡】は、太陽の女神のもの―――わたしが持つのが最善でしょう」

ヴェスタ「わたしは分からないから、イサナおねえちゃんに任せるよ――」

イサナは、じろじろと【鏡】を眺めていた。
その途端、【鏡】はまるで在るべきものを見つけたように、すぐにイサナの身体に取り込まれた。

386 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/10 23:24:41.977 ID:yDmhOjew0
ヴェスタ「身体が―――!?」

ヴェスタとイサナは、共に呆然としていた。
―――ふと、イサナは語り出した。

イサナ「わたしの身体は―――もともと出来損ないの、肉片だった――――
    太陽の女神がよこした肉片―――もう、海の底とヴェスタの中に消えた肉塊―――

    けれど―――今は、完全にわたしとして存在している
    きっと、これは【鏡】の力だろう―――
    わたしは、もう鈴姫の【力】にしがみ付かなくても―――在れる、という訳なのね…」

ヴェスタ「………けれど、鈴鶴おねえちゃんに見せたかったな
     如何して、目覚めないのかな……」

イサナ「分からない―――
    取り敢えず、屋敷に帰って考えるしかないだろう」

ヴェスタ「うん……」

イサナは鈴鶴の身体を抱き上げ、ヴェスタと共に屋敷へと戻って行った。


387 名前:社長:2017/05/10 23:24:56.802 ID:yDmhOjew0
次回最終回予定。

388 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:14:24.111 ID:wsQTm1ZE0
―――。

屋敷に帰ってきてから、ヴェスタは事の顛末を語った。

鈴鶴が未だ目覚めない事。
けれども、ヴェスタが当初の目的たる、ユノの魂を戻すことは可能だということ。

アポロは、其の知らせに、複雑な感情を抱いていた。
自身の願いが果たされるけれど、其れによってまた別の悲しみが生まれた事に対し。

ディアナやネプトゥーンも、同じ想いを抱いていた。

鈴鶴に依頼をした三人は、ヴェスタに懺悔した。
けれども、ヴェスタは、其れに対し、気にしないでと――気丈にそう告げ、ユノの魂を身体に戻した。

389 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:17:53.974 ID:wsQTm1ZE0
ユノは、無事に目覚めた。
ディアナ達の意向で、ユノには鈴鶴まわりの事情は告げず、
ただ、長い間眠り続けていた事、父親たちは死んだ事、ヴェスタが其れを救った事、ザンの血を得た事等を教えた。

ユノは初めは呆然としていたものの、直ぐに立ち直った。
アポロが自身の眠り続けていた長い間、諦めずに傍に居てくれた事が分かったからだ。
そして、事実を受け入れ、此の屋敷でアポロとずっと暮らす事になった。

ディアナ達も、此の屋敷を守る為、隠れ家から此処で過ごすこととなった。

390 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:18:09.736 ID:wsQTm1ZE0
ヤミ達は―――眠り続ける鈴鶴を、ずっと看ていた。
事の顛末を知り、ヤミは泣きじゃくり、シズは表情を暗く落とし、フチは悲しげに鈴鶴を見つめていた。


どれ程時が経っただろう。
絶対的な時間からすれば短くとも、彼女たちにとっては遥かに長い時間―――。


391 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:29:16.253 ID:wsQTm1ZE0
鈴鶴「あ―――」

ヤミ「鈴鶴さまっ!」
ヤミは直ぐに鈴鶴の袂に駆け寄った。

鈴鶴は、きょろきょろと其の様子を見ていた。

シズ「大丈夫、かな―――鈴鶴」
続いて、シズが口を開いた。
フチ、イサナ、ヴェスタも言葉を続けようとした―――。

392 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:29:32.448 ID:wsQTm1ZE0
けれども―――。

鈴鶴「ヤミ―――
   この人たち、だれ?」
続いた鈴鶴の言葉は―――。

鈴鶴「あれ―――此処は、どこ?
   こんなに、棲家は立派な処だったっけ………?」

其の言葉が意味する事――――。

鈴鶴「………父上は、何処に?」

鈴鶴の心は、子供の様になっていった―――。
ヴェスタを除いた、全員は、幼いころから鈴鶴を知っているから―――即座に、其れを理解した。

393 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:30:16.983 ID:wsQTm1ZE0
ヴェスタは、ただ茫然と―――自身の知らぬ、其の人を見つめていた。

ヤミ「鈴鶴さま―――其の事は、明日の朝話します―――
   今の鈴鶴さまは、お疲れでしょうから、ゆっくりと休んでください」

ヤミは、取り敢えずの処置として、鈴鶴を再び床に就かせた。
其れは咄嗟の判断だったけど、幼い鈴鶴の知るただ一人の存在は彼女だけだったから、其の点では丁度良かったのだ。

394 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:44:45.588 ID:wsQTm1ZE0
――――。

ヴェスタは、未だ呆然とした表情で、部屋に座り込んでいた。


ヴェスタ「おねえちゃん―――おねえちゃんが―――居なく―――なって―――」
ヴェスタの心は締め付けられるように苦しく―――そして、目からは大量の涙が――――。

其れは、たいせつなひとがいなくなってしまった悲しみと―――、
幼い鈴鶴を、自身だけが知らない其の疎外感で、心が張り裂けそうになっていた。

395 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:46:47.487 ID:wsQTm1ZE0
ヴェスタ「あは、あはははははははは―――」
気が付くと、ヴェスタは、乾いた笑い声を出していた―――。


ヤミ「ヴェスタさま―――」
そんなヴェスタの身体を、ヤミが抱きしめた。

ヤミ「ヴェスタさま―――鈴鶴さまは、心が七つになってしまったけれど
   それでも、其れでも―――五体は満足に――」
ヤミも泣きながら、其れでもヴェスタの頭を撫でた。

ヴェスタ「でも―――わたしの好きな、鈴鶴おねえちゃんは、もう―――」

396 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:48:29.949 ID:wsQTm1ZE0
フチ「ヴェスタっ!」
譫言を呟くヴェスタに、フチは強い口調で話しかけた。

フチ「貴女にとって―――鈴鶴は、姉でなければ好きではないの?
   そりゃあ、幼い鈴鶴を知る知らないはあるでしょう
   だから、鈴鶴が居なくなって辛いでしょう

   あたし達だって―――ヤミ以外は、みんな忘れてしまっているわ
   ヤミだって―――育った鈴鶴の事もよく知っているけれど、其の思い出は全て忘れてしまっている
   あたし達にとっても………好きだった其の人は―――」
其処で、フチも涙を流した。

シズ「ヴェスタ―――鈴鶴の事が、すべてを忘れてしまって―――嫌いだと
   そう言える人じゃない……
   ヴェスタ―――鈴鶴の事が本当に好き、そうだから―――其処まで悲しんでくれている」
シズは、涙は見せなかった。
けれども―――其の様子は、涙を堪えていた。

397 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:50:35.174 ID:wsQTm1ZE0
ヴェスタ「……そう
     わたしも、分かっている

     おねえちゃんが変わってしまっても―――わたしの中に在る感情は変わらないことぐらい
     
     でも―――わたしは―――わたしを棄てなければいけないの――――――」

そう呟くと、ヴェスタは自身の中にある剣を――黄泉剣を顕現させた。

イサナ「―――!
    まさか―――鈴鶴は―――あの時―――」

ヴェスタ「全てをわたしに捧げてくれた
     血も、技術も、経験も、【勾玉】すらも―――

     わたしは―――おねえちゃんとなってしまった―――」

ヴェスタは、黄泉剣を顕現させる内に、流す涙を止めた。

398 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:54:13.407 ID:wsQTm1ZE0
ヴェスタ「だから―――わたしは、鈴鶴の姉となり―――」

其の瞳は―――右目を漆黒の眼と青白い瞳に変えて―――。
十の年齢に相当する――その表情は―――。
少女らしい、無垢な表情は消え去って―――。


ヴェスタ「わたしは―――百合神を引き継ぐ」
嘗ての鈴鶴の様に、凛とした目で、そう言い放った。
其の表情は、自身の母の様に――神職に努める少女の様な表情だった。

ヴェスタは、鈴鶴のすべてが身体に入った時に、鈴鶴が百合神である事も知った。
そして―――鈴鶴が居ない今、其れは消え去ってしまう事も―――。

鈴鶴は、嘗て邪神となった償いとして百合神として生きていた。

ヴェスタも、同じような存在だから―――。
鈴鶴は、ユピテルを倒す事が償いとして言ってくれたけれども―――。
たいせつなひとを失った要因は、自分自身にあるから、其の償いの為に、百合神として生きる道を選んだのだ。

399 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:54:31.487 ID:wsQTm1ZE0
其の後―――。

鈴鶴には、自身の里が、悪者によって焼打ちにあった事。

父親は自身を助ける為、犠牲となり死んでしまった事。

追い詰められた鈴鶴とヤミを助けたのは、シズ、フチ―――そしてイサナとヴェスタである事。

今居る此の場所は、ヴェスタの世話になっている人物――ディアナの屋敷だという事を伝えた。

七つの頃の、心となった鈴鶴―――彼女が知る存在は、ヤミしかいないから、ヤミの口から―――。

鈴鶴は、父親が亡くなった事に少し悲しそうな表情を見せたけれど、其の事実を受け容れた。
嘗て彼女が体験した事実と、虚構が混ざった事実を。

400 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:56:31.284 ID:wsQTm1ZE0
ヴェスタは、屋敷の縁側に座り、ぼうっと夜空に浮かぶまるい月を眺めていた。


イサナ「ヴェスタ―――」
イサナは、其の横に座った。

イサナ「わたしは―――【鏡】の力で、此の屋敷を守る事にした」

ヴェスタ「うん―――其れは宜しくお願いするね、イサナおねえちゃん」

イサナ「ヴェスタ―――後悔はしていないか?」

ヴェスタ「―――大丈夫
     わたしは、新たなる女神として、生きるから」

401 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:57:35.919 ID:wsQTm1ZE0
イサナ「そう―――」

ヴェスタ「在りたいわたしを棄てるのは、残酷かもしれないけれども
     でも、其れで鈴鶴を守れるのなら―――」

イサナ「決意が固いなら、わたしも、もう――何も言わない
    わたしは、ただ―――此れからの永久を守ることに務めるだけ」

ふと、ヴェスタが何かを察知した。

ヴェスタ「―――どうやら、依頼が来たようだから、わたしはもう行くね」

イサナ「―――気を付けて」

ヴェスタは、暗黒の中に浮かぶ神の社へ、其の歩を進めて行った。

402 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/13 02:58:18.156 ID:wsQTm1ZE0
        すべて陰陽のもの ルートA完


403 名前:社長:2017/05/13 02:58:38.149 ID:wsQTm1ZE0
次回はエピローグ

404 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/13 23:55:59.234 ID:wsQTm1ZE0
百合神―――。
それは、此の世界に存在する女神。
その正体を見た者はいないとされる。

その女神にどうしても祈りたい――布施と共にそう思った時、突如彼女に願いを託せるという。
承るのは、恋の相談と、復讐による人殺しが主だ―――。

けれども、其の存在は、ある時、大きくやり口変わった――と噂されるようになった。
百合神は正真正銘神の血を引き、願いを必ず叶えてくれるにも関わらず―――。

噂の前後では―――殺し方が違うという。
武術の達人か何かがやれる―――いわばすべての生物が極めれば真似られる事ではなく―――
其れをも凌駕した、得体の知れない者が願いを叶えていると噂になっている。


――――それは、正しい。

405 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/13 23:56:58.210 ID:wsQTm1ZE0
わたしは―――百合神―――。
いいや――、正しくは―――そうではない。
―――わたしは、此の世界で語り継がれた百合神ではない。

何故なら…昔からずっと居た其の女神は、もういないからだ。
わたしは、その宿命を引き継いだ存在に過ぎない。


わたしは―――あの時から、恐ろしく、強くなった。
其れは比喩ではなければ、傲慢でもない―――。
絶対的な事実―――自身が其れを否定しようとしても、出来ない。

406 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/13 23:57:38.378 ID:wsQTm1ZE0
剣技をはじめとした様々な武術の技―――。
自身の中に在る女神の【血】から織り成される恐ろしき力―――。
其れらは絡まり合い、複雑に混ざってわたしを支えている。

わたしに【力】の扱い方を教えてくれた師にも―――
世界すべてを探しても、其れより強い存在はいないほど強い其の人に、わたしは打ち勝った。

407 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/13 23:57:55.193 ID:wsQTm1ZE0
わたしは、誰であろうと勝てる。
どんな存在だろうと勝てる。

どれだけ居ようと。
どんな武装をしていようと。
どんな【力】を持っていようと。
どんな小細工でわたしを手玉に取ろうとしようと。

わたしの前に立つ敵は、すべて勝つことが叶わない。
量で敵わず、質で敵わず、力で敵わず、技で敵わず、小細工で敵わず―――。

そして最後に【剣】を振るい、全てが断つ―――。

闘いにおいて、あらゆる要素について、わたしに敵うものが何一つないからだ。

408 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/13 23:58:40.579 ID:wsQTm1ZE0
けれども―――わたしは其れで幸せになることなどない。
すべてを斬り伏せても、何も思わず、何も感じず―――。

かつてのわたしは、あの人に勝ちたい気持ちでいっぱいだった。
武芸に長け、とりわけ剣術に秀で、さらには神剣すらも自在に操るあの人に―――。

その時のわたしならば、今、此の時を幸せと思っているのだろうか。
夢が叶った嬉しさに、浸っているのだろうか。
世界を創ることの出来る喜びに満ちたのだろうか。

409 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:00:41.336 ID:5YOab5X.0
でも。
あの人がわたしを助けてくれた、其の時―――あの人に何としてでも勝ちたいという気持ちはなくなってしまった。
だから、今こうしていくらあの人よりも強かろうと―――虚しいばかりだ。

わたしは―――実の姉を助けるために、あの人と共に緑色の悪魔に挑んだ。
そいつは、神の力を得た悪魔だった。

あの人は、戦いに挑む前に――全ての清算を付けるために、自身の肉体に或るたいせつなひとたちの魂魄を取り出した。
そしてたいせつなひとたちが目覚めたのを見てから、奴に挑んだ―――。

けれども、そいつの攻撃は苛烈で―――わたしは、奴の打ち出した雷に打たれた。
【鏡】を持った奴の攻撃に、わたしの身体は崩れ落ちようとしていた。

あの人は、そんなわたしを救う為―――血をすべて捧げた。
いや、血だけではない。
あの人の記憶も、技術も、神器も。すべてわたしに捧げた。

わたしの傷は、【鏡】の力も加わり、あの人の不老不死の血でも、治らぬばかりに酷かったから―――。
だから、あの人は何もかも捧げて、わたしを助けてくれた。

410 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:02:17.281 ID:5YOab5X.0
其の後――わたしは、あの人の力と、式神であるミネルヴァの力を使い、実の姉を救うことはできた。
けれども―――あの人はもう居ない。

あの人は、わたしに【力】をすべて捧げてしまった影響か、その精神が童の様になってしまった。
わたしの事も、わたしの実の姉のことも、そして、自身が百合神であった事も、全て忘れていた。

実姉を救ってほしいと依頼した人たちは、責任を感じたためか、
あの人の住まう大きなお屋敷をずっと守るようになった。
わたしは要らないといったけれども、せめてもの償いをさせてほしい気持ちがあったから。

また、【鏡】で其の姿を取り戻したあの人の姉と、たいせつなひとたちは、あの人の面倒をみてくれている。

411 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:02:43.633 ID:5YOab5X.0
わたしは―――。
あの人と、ありたかった関係を捨て去った。

あの人を姉と慕う妹として過ごす関係を。
楽園で永久に、幸せに暮らす日々を。

412 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:03:02.525 ID:5YOab5X.0
わたしは―――鈴鶴おねえちゃん――いいや、鈴鶴を年下の妹として扱っている。
鈴鶴のたいせつなひとたちは皆、姉としてあの人に接していたから、其処に変わりはない。

ただ、わたしだけが―――扱いを変えているだけだ。

たいせつなひとたちや、わたしの実姉を救ってほしいと依頼したひとたちは、わたしの事をいつも気にかけてくれる。
時には、辛くなったら甘えてもいいと言ってくれる時もあった。

けれども、わたしはその選択は取る事はなかった。
鈴鶴は、たった一人で、百合神として生きていたから―――。
わたしも同じようにしなければならないと、そう思ったのだ。


413 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:04:29.797 ID:5YOab5X.0
わたしの身体の中には、【勾玉】と、其の力を利用している剣がある。
そして、わたし自身は【剣】を持っている。

神器をふたつも持つことは、ふつうでは出来ない。
選ばれた血の持ち主でなければ、其の【力】に呑まれてしまうからだ。
そして、其の【血】が薄ければ、完全に呑まれない―――と言うこともない。
其れほどまでに、神器を操ることは難しい。

けれども。
わたしは、鈴鶴の【血】と、自分自身の【血】で特別な血を持っている。
だから、そのふつうではないことが出来るがゆえに―――。

わたしは女神として在り続けることが出来る。

414 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:06:24.721 ID:5YOab5X.0
わたしは、女神として、復讐の願いを受けた時――、
鈴鶴のように、素晴らしい太刀でその命を断ち切る事はしない。
その太刀は、あの人のたいせつなものだから―――其れを勝手に持ち出すなんて、出来ないから―――。

蟒を切り裂く剣をも斬る【剣】で、わたしは願いを叶える。
【剣】の瘴気で其の対象が苦しもうと、わたしはもう、何も思わない。


あの日、わたしの大好きだった鈴鶴おねえちゃんが居なくなってから―――。
鈴鶴という妹が出来てから―――

わたしは、鬼に―――
此の世ならざるものに―――
女神に―――
ありたいわたしを棄てた死者のような存在に―――

なった。

415 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:07:07.240 ID:5YOab5X.0
鈴鶴の祖先たる女神は、ある神を斬った為に姉と仲違いしてしまったという。
わたしだって―――百合神を斬ったようなものだ。あの人を失ってしまったから。

時折、わたしの求めた日々に戻りたいと思うことはあるけれど―――其れは鈴鶴には見せない。
わたしは、百合神という鬼となりて生きる事しか、もうできない。

わたしは―――神斬りの鬼―――。
わたしは、楽園で過ごす鈴鶴達を、ずっと守り――そして、女神で在り続ける―――。

鈴鶴は―――神として生き続ける生き方でも心を壊すことはなかった。
けれども、わたしは―――ずっとそういう生き方をしても、今のままで居られるのだろうか。

416 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:07:17.395 ID:5YOab5X.0
もし、わたしの心が耐えられず―――例え心までも鬼になろうとも―――。
鈴鶴おねえちゃんの事を、もう完全に忘れてしまっても―――。

鈴鶴という妹が居る、其れだけしか覚えていなかったとしても―――。

鈴鶴たちと此の日常を守るならば―――。
永久に―――わたしは、百合神として在り続けるだろう。

鬼たるわたしは、神を斬った鬼として、百合神として、永久に生き続けるだろう。

417 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:07:30.750 ID:5YOab5X.0
わたしは、夜空に浮かぶ月を見つめていた。

月は妖しいまでに輝いていた。
他の星よりも強く、大きく、まるく、空に浮かぶ月―――。
けれど、其れは何処か寂しくも見えた―――。

すべての色を失った白い月が、何もかもを埋め尽くす暗黒にぽつんと、輝いていた―――。

418 名前:エピローグ:Eden of the Lily goddess:2017/05/14 00:08:23.826 ID:5YOab5X.0
          

             ―完―

419 名前:社長:2017/05/14 00:09:48.326 ID:5YOab5X.0
ルートA完結。
というわけでビターエンド。いつかもう片方のルートも書くぞ。

420 名前:社長:2017/05/14 00:27:44.219 ID:5YOab5X.0
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/932/Vesta_2.jpg

421 名前:きのこ軍:2017/05/16 20:14:31.111 ID:ZW3/lQW20
乙乙
これがトゥルーエンドなのでしょうか。納得するも切ないしなるほどなあと。
残りルート心待ちにしております。。

422 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/17 00:40:06.732 ID:FwOrZUGo0
鈴鶴「けれども―――わたしは、まだ彼女たちを復活させるわけにはいけない」
鈴鶴は、固い意志を秘めた瞳で―――アポロをしっかりと見据えてそう告げた。

アポロ「その、ユノちゃんの事があるから……?」

鈴鶴「一つはそう……
   眠り姫となったユノを、貴女はいつまでも待ち続けた―――

   わたしは、ヤミもシズもフチも、みんなあの世に逝ってしまったと思っていたから…
   大切な人が目覚めないのを待つ――其れはある意味、死ぬよりも辛い事だと思うから…

   早く、その苦しみから解放したいから―――」

アポロ「……もう道が見えているならば、僕は其の後でも―――」

鈴鶴「もう一つ……ずっと、みんなはわたしとイサナのことを見ていたと思うの
   ならば―――全てが終わる其の時までは、わたしの中で見させてあげたいから…」

423 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/17 00:40:58.622 ID:FwOrZUGo0
アポロ「鈴鶴さんが、そういうのなら…鈴鶴さんの想いを優先するね…」

鈴鶴「変に、心配させてごめんなさい……
   けれども―――最低でも、貴女とヴェスタには、聞いておいてほしかったから……」

アポロ「どうして、僕にも…?」

鈴鶴「ディアナとネプトゥーンだって、此の事態に対して真摯に受け止めているけれど…
   一番、此の状況に対して、重きをおくのは…貴女だけだから…
   だから、一番最初に話しておきたかったの」

アポロ「そっか…
    此の事、ディアナと、ネプトゥーンにも…話して、いい?」

鈴鶴「ええ……構わないわ…」

アポロ「ふうーっ……
    少し、不安が晴れたから、僕は寝床に入るね」

鈴鶴「おやすみなさい」

424 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/17 00:45:19.665 ID:FwOrZUGo0
鈴鶴は、そう言うと、夜空に浮かぶ月を見上げた。
其の月は満ちかけていた―――。

ヴェスタ「おねえちゃん―」

ふとヴェスタが鈴鶴に話しかけた。

ヴェスタ「おねえちゃんは、たいせつなひとを――
     その、ヤミ、シズ、フチっていう子を蘇らせるつもり…なんだよね?」

鈴鶴「そうね――」

ヴェスタ「すべてが終わって―――おねえちゃんはたいせつなひとを蘇らせる
     けれど、わたしは―――

     目覚めるユノおねえちゃんは居るけれど、おねえちゃんのように沢山の人を好いたことはない」
ヴェスタは、そう言うと、涙を流しながら鈴鶴の腕にしがみついた。


425 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/17 00:45:38.388 ID:FwOrZUGo0
ヴェスタ「おねえちゃんは、今までずうっとそばに居た人が帰ってきたとき
     わたしの事を、同じように愛してくれているか―――不安でたまらないの」

鈴鶴「大丈夫―――誰一人とて、無碍にはしないわ」
そう言い、鈴鶴はヴェスタの頭を撫でた。
けれども、ヴェスタの言葉は続いた。

426 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/17 00:45:51.298 ID:FwOrZUGo0
ヴェスタ「おねえちゃんが、そんな事しないのは分かっていても――
     でも……わたしは、おねえちゃんのたいせつなひとのことは分からないの
     もしおねえちゃんを取られたらって―――
     其れが恐くて、わたしが、自分勝手に独り占めするかもって―――
     わたし、其の人達を受け入れることができるのかって―――

     そんな悩みが、出てきてたまらないの…」

その言葉を聞いて、鈴鶴はヴェスタを抱きしめた。

鈴鶴「わたしの中に在る大切な人―――
   其の人達は、今も――ヴェスタを見ているでしょう

   確かに、会った事のないヴェスタは分からないかもしれないけれど
   其の人達は、確かにヴェスタの事を理解しているでしょう
   
   ヴェスタは、わたしの【力】に対する劣等感で、一度は仲違いしてしまったけれど―――
   其れまでの日々にも――此処での日々でも、心優しい少女だということを
   
   だから、大丈夫―――
   ヴェスタは、そんな事しない―――」
   
そして、優しい口調で、そう告げた。

427 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/17 00:46:01.750 ID:FwOrZUGo0
ヴェスタ「おねえちゃん―――
     ありがとう
     しばらく、こうしていていい?」

鈴鶴「うん―――」

そして二人は、そのまましばらく抱き合っていた。

イサナは、鈴鶴の中で其の様子をじっと見ていた。
口を挟むことはない――。

けれども、微笑みながらその様子を見ていた。

428 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/17 00:46:21.449 ID:FwOrZUGo0
ヴェスタ「おねえちゃん――」

鈴鶴「ヴェスタ――」

ヴェスタ「……おねえちゃん、今日は、一緒のお布団で寝たいの
     二人っきりで……いっしょに…」

鈴鶴「ふふ―――いいわよ」

そしてふたりは、互いの手を握り合って眠りについた。

429 名前:社長:2017/05/17 00:46:49.363 ID:FwOrZUGo0
運命の分かれ道の先に待つものは。

430 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:03:41.843 ID:fvhsgqo20
翌朝――――。

鈴鶴達は、身支度をしていた。

431 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:05:34.329 ID:fvhsgqo20
ディアナ「事情は、アポロから聞いた―――
     だが……其れに対する事は、俺は言わん
     俺は普段、マタギとして…受けた依頼をこなすことしかしていない
     こうして何かを頼み―そしてそれが為されるかを待つということは、此れが初めてだ

     ユノの魂を――宜しく頼む」

ネプトゥーン「わたしも―ディアナと同じ
       ユノの魂を取り戻すことを、祈ってるわ」

アポロ「ユノちゃんの事、お願い――
    僕もついて行きたいけれど、そうしてもほとんど意味がないから――此処、願ってるから」


432 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:06:53.008 ID:fvhsgqo20
海に浮かぶ一枚岩―――今宵の其れは、いつもよりも恐ろしく見えた。
此の下に―――緑色の悪魔が眠っているからだ。


ヴェスタ「おねえちゃん――此処に、戻って来たね――」

鈴鶴「すべて終われば……もう二度と、此処に戻る事はないでしょう――
   此処できちっと片を付けましょう」

イサナ「わたしも―鈴姫と、ヴェスタの為に、出来るだけ手助けしよう――」

三人は言葉をつぶやくと、ユピテルの封印を解きにかかった。


433 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:08:02.141 ID:fvhsgqo20
鈴鶴は黄泉剣―【勾玉】の力を解放し―――。
ヴェスタは【剣】の力を解放した。

そして、それらから放たれる斬撃で一枚岩を斬り裂き続けた。

幾度となく神の力で叩きつけられた一枚岩は、遂には罅が入り、そして―――。

中から、光とともに―――。


ユピテル「―――――」


ユピテルが、目覚めた――。
其れは、つまり―――ユピテルの封印が解かれたということに―――。


434 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:08:23.446 ID:fvhsgqo20
ユピテルは、空に浮かんでいた。

手には、【鏡】を―――
そして、その表情は、恨みでもなく、歓びでもなく、怒りでもなく―――。

ただ、普段通りといったような表情を見せていた。

435 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:08:37.387 ID:fvhsgqo20
ユピテル「ふぅううーーーっ」
そして溜め息一つ。

ユピテル「奴が、ガキの魂一つ消せん臆病者だったおかげで――こうして消える事なく俺は復活できた
     あの封印の中でも、この【鏡】は効力を発揮してくれたおかげで――俺は更に強くなった」
ユピテルは、きょろきょろと鈴鶴達を見ていた。

ユピテル「そして…分霊は死んだようだが、その憑りついた先のガキが――【剣】を――
     もう一つ、横に居るテメェも【勾玉】を持って来てくれるとは」
そして―――神に等しい【力】を持つ鈴鶴たちを眺めながら、平然とそう言った。


436 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:10:56.426 ID:fvhsgqo20
鈴鶴「ずいぶんと……余裕なのね……」

ユピテル「今の俺なら―――神具二つでも相手に出来るさ
     吸収、しまくったからなァ―――力を―――」

そしてユピテルは、鈴鶴達に向かって雷を撃ちだした。

鈴鶴「………」
ヴェスタ「ひゃぁっ!!」

二人は構える剣で其れを薙ぎ払う。
鈴鶴は冷静に―――ヴェスタは、驚きこそするものの、振り払う動作其の物は正確に―――。

437 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:11:09.792 ID:fvhsgqo20
ユピテル「てめェらは―――
     俺を消しに来たんじゃァねェ―――
     そういう目的なら、封印ごと俺を消すことだってできただろうしな
     目的は、俺の中に在る魂の方だろう
     
     一方、俺はてめェらを消すだけだ
     その神器を奪うだけだ
     其の認識の違い―――思い知らせてやるぜェ」

そして戦いは始まった。

438 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:13:03.534 ID:fvhsgqo20
鈴鶴とヴェスタは、其れが初めてではあるが、統制のとれたコンビネーションでユピテルに斬りかかった。
だが―――。

ユピテル「ハハハハハハハハハ―――」
ユピテルは其れを己の肉体で受け止めた。
そしてそのまま、圧倒的な筋力で二人を弾き飛ばした。

439 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:14:32.209 ID:fvhsgqo20
ヴェスタ「おねえちゃん―――こいつ、おかしいよっ」

鈴鶴「硬い……
   恐らく、【鏡】の力を最大限使ってるのね
   けれども、斬れないなら、其の力尽きるまで攻撃し続ければいい―――」

イサナ「ちっ―――雷には、わたしの【力】も使えないか―――
    どうにか、岩を溶かして足止めぐらいしか出来ない――」

鈴鶴とヴェスタは、しばらくユピテルに攻撃を投げつけた。
時折イサナの【力】を挟み、斬る事其の物は出来るのだが―。

それでも―やっと傷が出来たと思えばすぐ修復され―――、
また、反撃に強烈な拳と雷を加えて行くため、なかなか大きなダメージが与えられない―――。

反撃自体は、鈴鶴は経験と黄泉剣の力でかわし、ヴェスタは【剣】の力で無理矢理突き抜ける―――。
しかし―――此の状態は、互いに決定打を打てない状況に等しかった―――。

440 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:14:51.525 ID:fvhsgqo20
ユピテル「ふ―――互いに膠着状態―――
     めんどくせェなぁ……
     フン
     ならばよォ―――俺が一つ更にてめェらを絶望させてやらァ―――」

ユピテルは【鏡】に力を送り込み、海水を用いて圧倒的な量のDBとオモラシスを召喚した。
静かな海上は、醜悪な式神達で埋め尽くされた―――。


【鏡】―――其れは―――、
光を受け、其れを何倍にも増幅し―――【力】に替える神具―――。
其の【力】は【剣】と【鏡】自身を同時に封印することが出来るほどに或る―――。

だからこと、かつて悪しき存在となった百合神を、封印する事さえできたのだ―――。

441 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:16:40.822 ID:fvhsgqo20
鈴鶴「な―――きりがない―――!」

そして其の式神は、斬っても斬っても其の場でまた召喚されてゆく。
其れ自体は漆黒の斬撃で容易く切断できる脆さだけれども、数が異様というべきものだった。

また、式神と共に、ユピテルの雷が鈴鶴たちに飛びかった―――。

442 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:16:53.119 ID:fvhsgqo20
鈴鶴たちはどうにかかわすものの、其の不規則な軌道を躱し切れず、雷はどんどんと身体を掠るほどまでになり――――。
気が付けば、鈴鶴達は追い詰められていた。

鈴鶴「はぁ――ーはぁ―――
   人海戦術―――圧倒的な力でやってくるとは――――」


鈴鶴の【力】は男を寄せ付けないため、式神からの直接攻撃は無効にできるものの、
ユピテルの雷は避けられず――――また、ヴェスタの事もかばいながらだったため、鈴鶴は徐々に手傷を負い始めた。

443 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:17:17.096 ID:fvhsgqo20
鈴鶴「わたしの式神は―――わたしの血で創ればやつらをとりあえず牽制できるけど―――
   奴の式神に比べればちっぽけ―――其れに余計な力を使うことになるし――――」

イサナ「岩をドロドロに溶かして、奴らに投げて消滅させているけれども―――これでは厳しいわ―――」

鈴鶴たちは、此の劣勢の間でも前を見据えていた―――。

ヴェスタ「はぁ―――はぁ――――」
対照的に、ヴェスタは、まだ闘いの経験が少ないこと―そして其の自分を鈴鶴が庇って手傷を負うことに、絶望的な気持ちになっていた。
けれども、鈴鶴がユピテルに立ち向かうのを見て、戦意はぎりぎりで保っていた。

しかしそれは、綱渡りのようにギリギリの戦意だった。

444 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:17:28.556 ID:fvhsgqo20
ユピテル「ハハハハハハハ―――数を使えばいいんだよォ―――数でテメェを押し潰せば―――なァ」

そしてユピテルの雷が鈴鶴とヴェスタの心臓目がけて飛んできた――――。

445 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 02:19:54.805 ID:fvhsgqo20
鈴鶴は―――咄嗟に、自身の中にある―――天の狗の―――ヤミの―――風の術を使い――雷を受け流した―――。
けれども雷は際限なく飛んでくる。

風の術が切れるか、雷が切れるか―――という勝負だった。

イサナ「わたしの【力】もあげるから―――どうか、頑張って―――」

イサナが鈴鶴に【力】を与えていたが、其れでもなおユピテルの【力】の方が強く―――。

鈴鶴の生み出した風は、徐々に勢いを落とし始めた。
ユピテルの飛ばした雷は、複雑な軌道でヴェスタの元へと襲いかかった。

446 名前:社長:2017/05/20 02:20:38.988 ID:fvhsgqo20
使い回し そして分岐点は此処。

447 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:06:24.395 ID:fvhsgqo20
其の時―――。

ヴェスタは―――。
時間が遅くなるのを感じた。
其れは危機に相見えた時に見られる感覚だった―――。

448 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:08:25.967 ID:fvhsgqo20
ヴェスタは、其の時、ふと自身の記憶を呼び覚ました。
其れは――自身に【力】の扱い方を教えてくれた、其の人のものだった。

791「確かに、此れは強い―――隠し玉としては十分だ
   なにせ、本気を出した私と互角だから――――

   でも、デカい式神で、これほど強いから、流石に消耗がひどすぎるね
   こんなのを、先が見えない時に使ったら、其の次に対応できない……
   ―――此の力は、どうしようもなくなったら使って
   前述したとおり…【力】自体は、私と互角なのだから―――
   私が正面切った闘いで誰にも負けないように―――負ける事は、断じてないから」

449 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:09:57.721 ID:fvhsgqo20
同時に―――頭の中で声が響いた。

―――「我を顕現させよ」

其の声と共に、ヴェスタは、【剣】に力を込めた。


其れは本当に一瞬の出来事。
一瞬の中で、ヴェスタは濃密な記憶の再生と共に、【力】を放った――――。


450 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:14:35.705 ID:fvhsgqo20
辺りに、蟒の瘴気が溢れ出た―――。
【剣】―――蟒の尾より出でし神器は、八つの首持つ蟒の、其の力を秘めているのだ。

ユピテル「なに―――ッ!?」

鈴鶴「――――!」

其処には―――。

雷は何かにぶつかり、弾けて散った。
けれどもヴェスタに傷一つない。

いいや、正確に言えば、ヴェスタの前に立ちはだかるもの一人―――。

其処には―――あの時、ユピテルに憑りつかれたヴェスタが召喚した式神―ミネルヴァが立っていた。
そして飛んできた雷をまともに受けてなお、苦しむことも、傷つくこともなく――ミネルヴァは平然と其処に立っていた。

いいや、正確に言えば、ヴェスタの前に立ちはだかるもの一人―――。

451 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:19:06.662 ID:fvhsgqo20
ユピテル「ちィ――貴様ァ、俺のように式神も呼べたのかい」
ユピテルは其れでもなお、余裕を見せた表情でじっとヴェスタとミネルヴァを眺めていた。

ヴェスタ「曲りなりにも、此れはお姉ちゃんを叩き潰す為に私の中り上げた式神
     ――――お姉ちゃんには、見せたくなかった―――

     精神的にも、肉体的にも――出来る事なら使いたくはなかったけれど―――」

鈴鶴「ヴェスタ―――わたしは、気にしないのに―――」

ヴェスタ「そっか…
     ならば、はやくいえば、よかったな―――
     少なくとも、精神的な枷は、無かっただろうから―――

     ふふっ、ミネルヴァ、行け―――其の式神全て、叩き潰してやれっ」

ミネルヴァ「――――――!」

ミネルヴァは直ぐに其の指示に従い、周りに居る式神を薙ぎ払った。
其の咆哮は、乙女の様に美しく――けれども、辺りを震わせるには十分なものだった。

いいや、そんな生半ではものではなかった。
辺りに居た式神が、其の咆哮と共に全て吹き飛んだ。


452 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:19:23.690 ID:fvhsgqo20
ミネルヴァ―――それはヴェスタの生み出した式神―――。

式神は、何か憑代となるものがなければ作れない。

鈴鶴の式神が、鈴鶴の血や髪などから作られるように―――
ユピテルの式神が、海水と【鏡】の力から作られるように―――
ミネルヴァにも、憑代となるものがある。

それは―――【剣】から漏れ出る瘴気とヴェスタの血―――。

神具と神の血を混ぜ合わせた其れは、とても相性のよい存在だ。
だから、其れを混ぜ合わせて作った式神は、恐ろしく強くなる。

かつて出現したオモラシスは、神の力で創られた【創世書】と、神の血で依り合わされた。
だから、其れも恐ろしく強かったのだ。

453 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:19:45.062 ID:fvhsgqo20
ヴェスタは、791に【力】の使い方を教えてもらった時の事を思い出した。
【力】の放出の仕方、維持の仕方―――。
一通り、基本を教えて貰った後、791はヴェスタに話しかけた。

791「よし―――此れなら、もう十分だ!飲み込みが早いね、やるねっ!」

ヴェスタ「ありがとうございます、791さん」

791「でも…貴女は、隠し玉がある…よね?」

ヴェスタ「えっ―――?」

791「とぼけてもダメ
   ものすごい式神を召喚できる【力】がある」

ヴェスタ「でも―――この式神は、鈴鶴おねえちゃんに打ち勝つ為に練り上げたから
     だから……おねえちゃんに、見せるのは……」

791「万が一、どうしようもない状態の時の保険…これならどう?
   何をしてでも―――貴女の姉をユノを救いたいと思うのなら、石橋を叩いて渡っても問題ないと思うな
   そして使わずに済むのなら、其れでいいわけだから…」

ヴェスタ「――――――
     それなら…やってみます」

791「よし、決まったね!私がビシバシ鍛えてあげよう」

791はミネルヴァの恐ろしく強い性能を更に引き出させた。
其れと同時に、ミネルヴァを出しながら【剣】で戦う方法も教えた。

454 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:20:26.484 ID:fvhsgqo20
ミネルヴァは唯大振りに敵を殴り蹴る――小細工も何もない戦法しかとらない。
しかし其れだけで充分―――。

目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。
あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。
軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。
そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。

其の機動力は戦闘機よりも速く動く程に―――。
其の生命力はあるゆる生命が滅びる環境だろうとも平然と動くほどに―――。
其の防御力は科学や魔法に拠る力が束になってかかってもも跳ね返す程に―――。
其の攻撃力は頑強なる鋼の塊をその拳一振りで粉々に崩す程に―――。

其れほどまでに、恐ろしい存在だった。
弱点は、魔法其の物を打ち消すアポロのような存在か、式神の本体たるヴェスタを先に仕留めるかしかない―――。


455 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:21:32.624 ID:fvhsgqo20
ミネルヴァの身体から溢れる瘴気は、式神に宿るユピテルの力をも喰らった。
徐々に―――徐々に―――ユピテルの力も、削れていった。

鈴鶴「ふんっ!」

ユピテル「ぐっ―――」

そして―――強大な【力】に護られていたユピテルの守りは、徐々に薄れ―――。
ユピテルの身体をまともに切れるまでになっていた。

また、無限にいたように思われる式神が、片付けられるにつれて、それがやがてかわせなくなっていった。

456 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/20 23:22:11.882 ID:fvhsgqo20

そして―――。

鈴鶴「―――――」
鈴鶴は、ユピテルの前に立ち、【ハートスワップ】を喰らわせるために心を世界に溶け合わせた。

ユピテルは、無防備な状態となった鈴鶴に一撃を喰らわせようとした―――。


しかし―――。

イサナ「鈴姫の動きは邪魔させない―――」
イサナがドロドロ化の力でユピテルの足を液状化し、ユピテルを仰け反らせ―――。

ヴェスタ「させるか―――」

ヴェスタの命と共に、ユピテルの身体目がけて、ミネルヴァが思いっ切り拳を打ち―――。

同時に―――。


鈴鶴「【ハートスワップ】―――!」
鈴鶴は戦闘術【魂】の技を使って、ユノの魂を其の身に入れた。

457 名前:社長:2017/05/20 23:23:02.554 ID:fvhsgqo20
三位一体の魂奪還

458 名前:きのこ軍:2017/05/21 10:50:39.336 ID:ZwNv9EdMo
サンキュー戦闘術魂

459 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:13:54.114 ID:8C40QCWk0
ユピテルは、其れと同時に其の身をぐったりと地に伏せ、起き上がる事はなかった。
其れと同時に、ユピテルの式神の残党は全て消え失せた。

鈴鶴「力を…使い果たしたか―――」

イサナ「ユノの魂がなければ、元は唯の緑色の悪魔―――ということみたいね」

460 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:14:49.525 ID:8C40QCWk0
ヴェスタ「おねえちゃん―――」
ヴェスタは、ふるふると震えながら鈴鶴を見つめている。

鈴鶴「ユノの魂は、わたしの中に在る―――
   すべては……終わった―――」

ヴェスタ「おねえちゃんっ……やった、やったんだね……」
ヴェスタは泣きながら鈴鶴に抱きついた。

ヴェスタ「嬉しさとか、感動とかが、色々と溢れて―――わたし―――」

鈴鶴「待って―――まだ一つ残ってる―――」
ヴェスタが言いきる前に、鈴鶴は向こうを見ながら、言葉を遮った。

461 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:15:15.602 ID:8C40QCWk0
イサナ「【鏡】のことね―――」

ヴェスタ「あっ――――!」
イサナの冷静な言葉に、ヴェスタは涙が止んだ。

鈴鶴「ふむ―――此れが【鏡】か―――」
鈴鶴はユピテルの持っていた【鏡】を拾い上げた。
其れは烏らしき鳥の骨が周りに付いた、よく磨かれた鏡だった。

ヴェスタ「ふぅ―――
     でも、これ、どうするの?」

イサナ「わたしが持っておく―――
    わたしは――――太陽の女神の血も混ざっているから―――

    ヴェスタも混ざっているけれど、濃さなら一応わたしの方が濃いし―――ね」

鈴鶴「―――それが、適任ね」
ヴェスタ「わたしも、賛成―――」

イサナ「ならば―――」
イサナは【鏡】に祈りを捧げた。

【鏡】はまるで在るべきものを見つけたように、すぐにイサナの身体に取り込まれた。

462 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:15:39.889 ID:8C40QCWk0
イサナ「――――!?」
そして―――気が付くと、霊体であったイサナに肉体が出来ていた。
―――ふと、イサナは語り出した。

イサナ「わたしの身体は―――もともと出来損ないの、肉片だった――――
    太陽の女神がよこした肉片―――もう、海の底とヴェスタの中に消えた肉塊―――

    けれど―――今は、完全にわたしとして存在している
    きっと、これは【鏡】の奇跡―――
    わたしは、もう鈴姫の【力】にしがみ付かなくても―――生きていける…」
イサナは、少し残念そうな顔をした。

けれども、鈴鶴はそんなイサナの手をぎゅっと握った。
鈴鶴「ずうっとわたしと一緒にいたひとが、わたしから離れて立っている……
   少し……変な気分だけれど―――
   こうして、肌の温かさが分かるなら――――それも、また」

そして、そう言った。

ヴェスタ「おねえちゃんが、おねえちゃんとしての姿を取り戻した―――
     鈴鶴おねえちゃんのおねえちゃんが蘇った―――
     今から、ユノおねえちゃんを蘇らせることを考えると、
     なんだか…鈴鶴おねえちゃんとわたしはいっしょ……だね」
ヴェスタは、鈴鶴のもう片方の手を握った。

463 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:18:04.096 ID:8C40QCWk0
鈴鶴「……早く、ユノを蘇らせよう
   眠り姫を―――目覚めさせよう―――」

ヴェスタ「おねえちゃん―――ユピテルはどうするの?」

鈴鶴「そうね―――わたしが、止めを刺しましょう―――」

そして―――。
鈴鶴「はぁああ――――――っ!」

鈴鶴は黄泉剣でユピテルを細切れに切り刻み、海の中へ投げ棄てた。
もう、神器を求める愚か者は居ないだろう。

全ての神器は、神の血を引き継ぐ乙女の中にあるのだから―――。


鈴鶴「さ、帰りましょうか――――」

ヴェスタ「うんっ!」

イサナ「え―――」

そして三人は、一枚岩から離れた―――。
此処に、二度と戻ることはない。

元々、此処はユピテルが封じられていた、其れ以上の事はないのだから。

464 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:24:13.595 ID:8C40QCWk0
――――。


鈴鶴の屋敷に鈴鶴達が帰ってきた時、アポロは感涙して鈴鶴達に駆け寄った。

アポロ「おかえりなさいっ!!」
その眼からは大粒の涙が流れていた。

アポロに続いてやって来たディアナとネプトゥーンも、鈴鶴達の様子を見て直ぐに全ては終わったと確信した。

ディアナ「鈴鶴…有難う―――
     奴への決着をつけてくれて」

ネプトゥーン「無事に帰ってきてくれて、よかった……」

鈴鶴「まだ、終わってない―――魂を戻すまでやらないと―――願いは叶っていない」

ディアナ「そうだったな―――」
ディアナ達は、早とちりした事に少し照れの感情を見せていた。

465 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:26:12.699 ID:8C40QCWk0
鈴鶴は、早速眠り姫となったユノの傍らに座った。

アポロ「あぁ―――ようやく―――ずうっと待っていた、此の時が来るんだね……」

鈴鶴「ええ―――
   では、行くわよ」

鈴鶴は再び構えを取り、ユノの中に在るべき魂を入れた。

466 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:29:14.319 ID:8C40QCWk0


――――。

467 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:31:25.955 ID:8C40QCWk0
ユノ「――――」

ユノの、鍵のかかったように閉じられた眼は、開いた―――。
ユノの黒い瞳が、ぼうっと辺りを見ていた。

其の眼を見て、鈴鶴は―――自身が封じられた時の事を思い出した。
自身を封じたあの少女の―――面影があると。

自身を封じたあの少女こそが―――ユノとヴェスタの母親であると、鈴鶴は悟った。
運命の糸は、自身が邪神となった其の時から、結い合わされていたのだと―――鈴鶴は悟った。

ユノ「わたしは―――お家が燃えて、怖い人が迫ってきて―――
   ????」
ユノは、きょろきょろと辺りを見回し、自身の手を見ていた。

ユノ「あれ―――アポロちゃん……?」
そして、アポロの存在に気が付いたようだった。

468 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:40:00.348 ID:8C40QCWk0

アポロ「あ……目覚めた―――目覚めたんだ―――
    ユノちゃんっ!!」
困惑するユノに、アポロは涙を流しながら抱きついた。

ユノ「もうっ、そんなにきつく抱きしめないでっ、痛いよっ」

アポロ「あっ、ごめんねっ…嬉しすぎて、つい…」

ユノ「あはははははっ」

アポロとユノは、少しの間笑い合った。

469 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:42:26.749 ID:8C40QCWk0
ユノ「でも―――此処は、何処?

   それに―――知らない女の人が、ひとり、ふたり―――
   ……ヴェスタ?」
ユノは冷静に周りを見ていると、自身の妹を見つけ、その名を呼んだ。

ヴェスタ「あ―――おねえ、ちゃんっ…」
ヴェスタも、ユノの傍らに近寄った。

ユノ「ヴェスタ……背、伸びた―――?」

ヴェスタ「おねえちゃんと、一緒ぐらいだよ…」

ユノ「んーーっ?でも、変だなぁ…わたしの方がお姉ちゃんだから、
   わたしももっと大きくなってるはずなのに―――」

ヴェスタ「その―――それは―――」
ユノの疑問にどう答えようか、ヴェスタはあたふたしていた。


470 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:42:37.210 ID:8C40QCWk0
鈴鶴「それは、わたしが話そう―――」
けれど、鈴鶴はヴェスタの手を取り、ユノの前に座った。

ユノ「えーと……」

鈴鶴「わたしの名は鈴鶴―――
   ……信じられないかもしれないが、貴女に起こった事を―――今から話そう」

ユノ「わたしに…起こった事?」

そして鈴鶴は語り始めた。

ユピテルという緑色の悪魔がユノ達の家を燃やしたことを。
ユピテルに魂を奪われ、ずうっと眠り続けていたことを。
ヴェスタとの出会い、一時の別れ、そして再会を―――。
ユノを助けるために、幼い身体でずっと眠り続けていたことを。
そして、ユノの魂を今、鈴鶴が居れ、目覚めたことを―――。

471 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:42:49.395 ID:8C40QCWk0
ユノ「――――
   そっか……」
ユノは、信じられないようなその話を、あっさりと受け止めた。


ユノ「お父さんや―――お手伝いさん―――もう、ずっと昔に死んじゃったのか
   でも―――もし、【鏡】のことを話さなければ…こうなってはいなかったのかもしれないな」
ユノは少し後悔した表情で、空を見つめていた。


アポロ「そんなことは、ないよ…
    全ては、悪い奴が居たから―――

    あの時、誰にも聞かれないように、ディアナとネプトゥーンが見てた―――
    でも、その死角で態々聴いていた奴が居た―――
    悪意のある奴が、予めユノちゃんを狙っていたから―――だから―――」


けれども、そんなユノの手を、アポロはぎゅっと握ってあげた。

ユノ「ありがとう、わたしを慰めてくれて……」

472 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:45:33.126 ID:8C40QCWk0
アポロ「ううん……其れに、大人になれなくても、再会できるという約束を果たせた―――」

ユノ「ありがとう、ずっとわたしを―――面倒見てくれて
   それからディアナさん、ネプトゥーンさんも―――わたしを守ってくれてありがとう」

ディアナ「気にすることはない―――」

ネプトゥーン「どういたしましてっ」

ユノ「鈴鶴さん、イサナさん、そしてヴェスタも…わたしの事を助けてくれてありがとう」

それから、しばらくの間、全員で色々な話を語り合った。

世の中の動き――。
ディアナとネプトゥーンの出会い、そしてアポロとの出会い―――。
また、ヴェスタと鈴鶴との出会いについて―――。

473 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:45:43.240 ID:8C40QCWk0
其の中で、ディアナ達は鈴鶴に頼みごとをした。

ネプトゥーン「その―――鈴鶴に、お願いがあるのだけれど」

鈴鶴「なに…かしら?」

ディアナ「鈴鶴―――
     アポロとユノに、あの隠れ家は狭すぎる―――

     かといって、信頼できる奴も見当たらなかったから、ずっとあそこで暮らしていたが―――
     鈴鶴は、信頼できる…
     それに、ユノにとって、ヴェスタも居た方がいいだろう―――
     
     アポロとユノを、此の家で住まわしてくれないか―――?」

アポロ「えっ?」
アポロは困惑していた。

ディアナ「お前たちは、本来は餓鬼だ―――
     身体は育たんから、正確には違うところもあるが…

     あの隠れ家で過ごすのには、似合わん―――そういうことだ」

474 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:46:44.206 ID:8C40QCWk0
鈴鶴「此の家はわたしたちだけでは広すぎるから、構わないけれど……
   ディアナとネプトゥーンは……此処には残るつもりはないの?」

ネプトゥーン「え―――?」

鈴鶴「アポロにとっても―――貴女達の存在は、大切でしょう
   親代わりといっていい存在でしょう―――


   其れに―――此れはわたしの考えだけれど、桜花の様に百年の生きられないならまだしも、
   貴女達は共にザンの血を分けた存在―――其の運命を分け合ったのなら、
   ずっと―――居た方が………幸せかも、しれないから……」

アポロ「その……僕も、その意見と同じこと、思っていたの…
    だから…お願い、ディアナ達も…此処で暮らさない?」

ディアナ「………そうだな
     俺たちも、落ち着いた方がいいかもしれん
     ―――此処に住むことにしよう」

ネプトゥーン「わたしも―――
       同じだよ」

鈴鶴「話は、決まったわね―――」

語らいは続いた――――。

475 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:46:54.152 ID:8C40QCWk0
鈴鶴「さて―――わたしは、もうひとつやらなければならない事があるから、席を外すわね」

鈴鶴とイサナは、皆が語らい合う光景を微笑みながら見其の場を立ち去った。



ヴェスタ「あ、おねえちゃん―――」
ヴェスタが、其の後を追い掛けてやって来た。

鈴鶴「……なに?」

ヴェスタ「わたしも、手伝うよ―――
     おねえちゃんが運命を分け合った、其の人達に触れないと、
     わたし、後悔するかもしれないから―――」

鈴鶴「ありがとう―――」

476 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:53:54.819 ID:8C40QCWk0
――――。

鈴鶴は、再び【ハートスワップ】の構えを取っていた。

同時に、イサナとヴェスタは、ヤミ達の肉体を引っ張り出していた。


鈴鶴は、黄泉剣の中にヤミ達の肉体があると考えた。
彼女たちが最後に触れたものが其れだから―――。

けれども、其の肉体は黄泉剣ではなく、【勾玉】の中に―――。
黄泉剣は確かに、神をひとり殺せるほどには力の強い神剣だ。

しかし―――真の強さは、其の漆黒の斬撃といった数々の奇跡は、勾玉によって支えられている。
【勾玉】は力の塊―――其れは【創世書】を創るにも十分なほどに在る。

477 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:55:01.136 ID:8C40QCWk0
【勾玉】の中にある魔力の海を、イサナがドロドロ化の能力でかき分けながら其の肉体を掴んでいった。

ヴェスタは、取り出された肉体を――ユノのように眠っている其の身体を、丁寧な姿勢に直していた。

鈴鶴「はっ―――!」


そして、鈴鶴は、彼女たちの魂を其の肉体に移した。

暫くの時間が経った。
鈴鶴もイサナもヴェスタも、不安な様子で眠っているヤミ達を見ていた。

478 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:55:13.539 ID:8C40QCWk0
ヤミ「鈴鶴さま―――」
シズ「―――」
フチ「あ―――」

そして―――彼女たちは目覚めた。


鈴鶴「あ――――」
ヴェスタ「やった…やったね、おねえちゃん―――」
鈴鶴とヴェスタは、感極まって、大粒の涙を流していた。

イサナ「鈴姫―――
    やっと―――取り戻すことができた―――」
イサナも、その眼に涙を浮かべていた。


479 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:57:38.530 ID:8C40QCWk0
ヤミ「あの時、斬られてから―――わたくしたちは、ずうっと―――鈴鶴さまを見ていました
   すでに死んだようなものだから、鈴鶴さまを見守るだけでも良かったけれど

   こうして、また鈴鶴さまと触れ合える日が来るなんて―――」

シズ「鈴鶴―――わたし達を蘇らせてくれて―――有難う
   イサナ―――わたし達は知らなかったが、ずっと鈴鶴を守ってくれて有難う

   それから、ヴェスタ―――色々な事を全て見たが、其れでも―――
   鈴鶴に楽しい日々を与えてくれて、有難う」

フチ「その……蘇らせてくれてありがとうっ
   それから――――ヴェスタ!
   あなたは、鈴鶴と出会ってまだ数年ちょっとでしょう?
   鈴鶴の事、まだまだ知らないでしょうから―――いっぱい教えてあげるねっ」

彼女たちらしい感謝の言葉が、鈴鶴達に伝わった。

鈴鶴は、此の時一つの事を思った―――。

あの時、ヴェスタの母親であろう、あの人に、あの言葉を言われて―――。

その通り、百合神として生き―――。
自分にとって、陽たる流れになるように、百合神として務めた。

480 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:57:51.991 ID:8C40QCWk0
其れは、取り戻したかったあの日常を取り戻すことに繋がった。

あの時、戦闘術【魂】を学ぶ時の言葉―――すべて陰陽のもの―――。

既に理解していた其の言葉を、改めて実感した―――。


鈴鶴「さ、みんなのところに戻りましょう、そして―――紹介しなきゃ、ねっ」

鈴鶴は涙を拭い、ユノ達の居る場所へと歩き出した―――。

庭の百合の花が、その様子を祝福しているように――風に吹かれて揺れた。

――――。

―――。

――。

―。


481 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:58:20.169 ID:8C40QCWk0

            すべて陰陽のもの ルートB完

482 名前:社長:2017/05/22 00:58:38.826 ID:8C40QCWk0
タイトル回収

483 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:35:48.113 ID:eQfN5MIo0
わたしは、わたしのおねえちゃんを助けることが、できた―――。

実姉である、ユノおねえちゃんを。

484 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:36:00.339 ID:eQfN5MIo0
ユノおねえちゃんは、血を分けた姉妹だけれども、目の色も髪の色も、わたしとは違う。
彼の人は、5年ほど―――物心ついた時からすれば、僅かな時間だけ―――わたしの事を気にかけてくれた。

―――わたしが5歳のとき、ユノおねえちゃんは、ユピテルという緑色の悪魔によって魂が奪われていた。
其れから、気の遠くなるぐらい長い刻、ずうっと―――眠り姫として、ディアナ達に保護されていた。

485 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:36:59.096 ID:eQfN5MIo0
……けれども、其のような悲劇はもうない。
わたしは―――たいせつな、だいすきな、鈴鶴おねえちゃんと共に―――ユノおねえちゃんを助けだせた。


そして―――、ユノおねえちゃんが蘇ってから……わたしたちは、幸せな日々を送っている。

486 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:37:15.011 ID:eQfN5MIo0
―――ユノ、おねえちゃん。
わたしのほんとうのおねえちゃんは―――昔、わたしたちが暮らしていたように―――日々を楽しく生きている。
とうに育つことのない、幼い身体だから、外の世界でずっと生きることはできないけれど――。
ときどき、遊びに出て――色々な事を学んで――世界を見て―――そうやって、生きている。

487 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:37:42.130 ID:eQfN5MIo0
―――ディアナ。
彼女は、あれからもずっと…マタギとして生きている。

一匹狼のマタギとして―――時折、仕事をやっている。
けれど、ユノおねえちゃんを助ける以前に比べれば、その量はずいぶんと少ない。

その理由は―――ネプトゥーンと長い時間居るためだ。
ディアナは、ユノおねえちゃんを、アポロを、ネプトゥーンを守る為、マタギとしての仕事を数多くこなし、路銀を稼いでいた。
今や、ユノおねえちゃんとアポロの事は、ディアナ達だけではなく、鈴鶴おねえちゃん達も護る事が出来る。
だから、節操なくマタギの仕事を引き受ける必要はなくなったのだ。

勿論、家族が多いから、その分金はかかるけれど―――ディアナだけが、稼ぎ頭というわけではないから―――。

488 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:43:45.118 ID:eQfN5MIo0
―――ネプトゥーン。
彼女は、ディアナと同じマタギとなった。
最も、彼女はザンであるから、そう容易く仕事は出来ない。

けれども、ディアナ一人では難しい依頼に対して、ディアナと協力して仕事をしている―――。
其の【力】を最大限利用し、見えない敵にも迫る彼女は、ディアナとは違う方向性で強い。

好きな人と力を分け合って先に進む関係が―――わたしは、素敵だと思っている。

489 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:13.296 ID:eQfN5MIo0
―――アポロ。
ユノおねえちゃんを好いている彼女は、ユノおねえちゃんの恋人となった。
飛べない天狗であろうとも、同じ性であろうとも―――彼女は其れを気にしない。

わたしが鈴鶴おねえちゃんと和解したその日、アポロからユノおねえちゃんとのなれ初めを聞いた。
その短い想い出を、ずっと忘れないで、ずっとユノおねえちゃんを見守ってくれたアポロ。

そんな人と一緒になれて、ユノおねえちゃんは―――わたしと同じように、素敵な人と結ばれたのだと感じた。

490 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:28.657 ID:eQfN5MIo0
―――ヤミ。
幼い鈴鶴おねえちゃんを育てた、義理の姉のような存在―――
わたしにとっての、鈴鶴おねえちゃんのような存在―――。

そんな彼女は、屋敷でみんなの面倒を見ている。
時々、鈴鶴おねえちゃんと一緒にデートしたり、同胞たるアポロに天狗について教えたり―――。

わたしも、鈴鶴おねえちゃんが【仕事】のときは、ヤミと遊んでもらってしている。

491 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:44.827 ID:eQfN5MIo0
―――シズ。
鍛冶屋の彼女は――其の腕を大いに振るっている。
武器は勿論、金属加工品に関して、様々な場所に売っている。

其の技術は、世界の中枢たるきのたけ会議所にも十分認められ、きのたけ会議所は上客となっている。
最も、此の屋敷でそれらを売っているのではなく、鈴鶴おねえちゃんの知り合いの鍛冶屋でだけれど。


492 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:56.111 ID:eQfN5MIo0
―――フチ。
月の御姫様の御付をしていたという彼女――わたしたちぐらいの身体でも、しっかりとしている。
ヤミと同じく、みんなの面倒を見て――時には、わたしたちに色々なことを教えてくれる。

時には、恋の事も教えて貰う事もあって―――わたしは、その度に鈴鶴おねえちゃんと実践したくなって。

また、フチが復活した影響で、式神を召喚できる術を失って鈴鶴おねえちゃんの為に、
百合神への依頼がある時に、フチが協力している―――。

493 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:07.972 ID:eQfN5MIo0
―――イサナ。
【鏡】の力で身体を得た、鈴鶴おねえちゃんのおねえちゃん。

【鏡】の力で、わたしたちの住まう屋敷に結界を張り、維持している。
決して誰も入れず、誰にも認識できず、誰にも攻撃できない守りを固めている―――。

其処が永久の楽園であるために―――楽園の守り人として、ずっと過ごしている。
だから外には出られないけれど――でも、彼女は其れでもいいと言っている。


494 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:20.180 ID:eQfN5MIo0
―――鈴鶴おねえちゃん。
わたしのだいすきな、鈴鶴おねえちゃんは、変わらず――百合神として生きている。
たいせつなひとが復活したから、風の術と、鍛冶する力と、式神を生み出す術はないけれど――ー
イサナおねえちゃんが身体を得たから、ドロドロに溶ける術はないけれど―――

つらいことを乗り越えて、幸せになったおねえちゃんには、もう向かうところ敵はない。
心を削りとるような日々がなくなったおねえちゃんは、明るい笑顔を見せるようになった。

そして、わたしたちともしあわせに―――。

495 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:30.951 ID:eQfN5MIo0
―――もう、何があろうとも…
わたしたちは、絆の糸が切れることはない。

もう、わたしたちには―――不幸という、陰たるものは襲い掛からない。

わたしは、輝く、雲一つない青空を見つめていた。
其の太陽は、わたしたちを祝福するかのように、さんさんと輝いていた。

496 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:42.694 ID:eQfN5MIo0


          ――完――

497 名前:社長:2017/05/28 17:46:23.674 ID:eQfN5MIo0
ここまでかかるとは思わなかったユリガミSS完。
キャラを借りいろんな設定を盛りました。元となった設定などを作ったれいかちゃんと滝さんに感謝。

498 名前:社長:2017/05/28 17:49:33.002 ID:eQfN5MIo0
ユノ
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/939/juno.jpg

ミネルヴァ
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/940/minerva.jpg

499 名前:きのこ軍:2017/05/28 21:15:32.001 ID:SxmJTPO.0
大団円やったぜ。長いこと本当におつかれさまでした。

500 名前:設定:2017/06/25 00:39:43.042 ID:zs9yol3k0
・鈴鶴

この物語の主人公。
讃岐造と月の王族の姫カグヤの娘。
父親から引き継いだものとしては、剣術と髪・目の色―――。
母親から引き継いだものとしては、その綺麗な髪質や女性的な身体、そして美しいその顔―――。

身長は165cm、体重は45kg。スリーサイズは89-61-85。
彼女は長い髪を持つ。その長さは、165cmほどあることは言うまでもない。
利き手は両方、和風っぽい趣味を好むけれど、しかし別の文化を好まぬということはない。

彼女は剣術に秀でているが、其れ以外の武術に関してもかなり強い。
其の腕前は、長年大戦で腕を鳴らした兵士を上回るほどに。
また、武術だけではなく、料理やら裁縫といった家庭的なものから、鍛冶などの技術にも優れる。
たった一つの苦手な事は、泳ぐ事のみ―――。

何故彼女はここまで完璧に近いのか。それぱ、彼女の心持にある―――
ひとつは、ヤミたちに其れを褒められたいから。
もうひとつは、身一人でなんでもできるようにしたいから―――。
男に頼らずとも生きることができる、彼女の心持がよく表れている。

彼女は、男が嫌いだ。
しかし、男と云う存在が嫌いなのであり、彼らが持つ技術などを否定はしない。
だから、積極的に男を滅ぼそうということはしない。
触れられること、自身の中に在る基準を超えて近寄ろうとすることが無い限りは。
最も、彼女が激しく絶望して男を滅ぼしにかかろうとしたことがあるが……。

また、彼女には最強の【力】がある。
其の【力】は、自身の操を汚そうとする男を吹き飛ばす力。そしてそれは、血液を介して伝染する(感染した能力がさらに別の人物に感染することはない)。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

501 名前:設定:2017/06/25 00:58:18.910 ID:zs9yol3k0
・ヴェスタ
抹茶売りの少女。元は霊歌ちゃんのSS Eden of the lily girlのキャラ。
霊歌ちゃんの許可を取って名前をつけユリガミでの設定をいろいろ追加したキャラクター。

金髪と蒼い目、赤い服―――マッチ売りの少女っぽい見た目。
父は、とある街の市長。母は、鈴鶴を封印した神職の少女。
母親は海神の血を引いているから、神の血を引くといえる。
姉にはユノがいる。

利き手は左、身長は130cmぐらい。体重は30kgギリギリいってないぐらい。
読書は趣味で、花が好きであり、心優しい性格をした少女―――。
レズっ気があり、攻め側。
女の子らしく甘いももが好きだけれど、一番好きなのは鈴鶴。

霊歌ちゃんのSSにならって、抹茶売りをしていて彼女は鈴鶴と出会った。
(抹茶売りになった経緯は、ユピテルの分霊によって操られ、神の力を持つものを探すためにさせられていたという設定がユリガミにはある。)
ユリガミSSでは出会った年齢が5さいであり、仲違いしたのはその5年という設定なので彼女は10さいである。(たぶん)
そしてその後封印され、復活して仲直りした際に鈴鶴の血で蘇ったことで、10歳の肉体で不老不死という状態である。

また、鈴鶴と仲違いした理由が自身に【力】がないことであるから、
鈴鶴を超えたいという願いがある。(ただし集計班の遺言で仲直りしてからはその願いは消えた。)
ユノを助け出した後は、鈴鶴たちみんなと仲良く暮らしたいという願いを持っている。

彼女は、もともとは【力】はない。
しかし、【創世書】や【剣】の力を吸い取って魔力を得ることができた―――。
【剣】の力を得、鈴鶴の剣術を見ていた彼女は剣術に関しては鈴鶴と同じほど強い。
何より、最強の式神ミネルヴァを召喚できるという点で、彼女は鈴鶴よりも強いといえる。
最も、ミネルヴァを召喚すると自身はまともに戦える【力】は残らないから、ミネルヴァを呼ぶことは賭けでもあったりする。

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

502 名前:設定:2017/06/25 01:07:57.117 ID:zs9yol3k0
・ミネルヴァ
ヴェスタが【剣】の【力】を―オロチの瘴気を依代に召喚する式神。
ヴェスタの鈴鶴を超えたいという心境から出来ており、それを召喚する力を封印されている間に練り上げた。

身長は191cmぐらいだが、体重は瘴気で出来ているため分からない。
スリーサイズは105-59-97と、ぼんきゅっぼーん。グラマラスなところも鈴鶴に勝ちたいという思いがこもっている。(でもバストでディアナに負けてる)
全身に蛇模様の刺青が掘られており、その眼は月の民のように眼球が黒く、瞳が青白い。
緑色の髪色と猫耳を持つ。これは、彼女がある種の緑色の悪魔(オモラシス)であることを示すことにもなる。もっともオモラシスと違って汚くないが。

彼女の戦闘スタイルは単純。殴る蹴る叫ぶと超原始的な戦い方。技術は一切ない。
しかしその力が恐ろしい。殴り蹴ったものは爆ぜ、自身の咆哮は実態を持たない式神は消し去り、実態がある存在でも震えや恐怖を感じるほど。

霊歌ちゃんのSSの言葉を借りるなら、
目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。
あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。
軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。
そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。
これに尽きるのだ。

しかしそんな彼女にも一応の弱点はある。
式神であるため、それを使役する本体(ヴェスタ)が力尽きると消滅せざるを得ない。
Aエンド後のヴェスタならともかく、其れ以外のヴェスタは彼女を召喚すると大立ち回りが出来ないので、彼女がやられやすいという弱点がある。
また、アポロのように魔法を無効化する相手にダメージを与えることが出来ない。
逆に言えば、其れ以外の要因で彼女を倒すのは非常に難しい。
なんと設定上は、本気を出した魔王791並のパワーを秘めていることになるのだ……。



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