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きのたけカスケード ss風スレッド

1 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:24:14.292 ID:MbDkBLmQo

数多くの国が点在する世界のほぼ中心に 大戦自治区域 “きのこたけのこ会議所” は存在した。

この区域内では兵士を“きのこ軍”・“たけのこ軍”という仮想軍に振り分け、【きのこたけのこ大戦】という模擬戦を定期的に開催し全世界から参加者を募っていた。
【大戦】で使用されるルールは独特で且つユニークで評判を博し、全世界からこの【大戦】への参加が相次いだ。
それは同じ戦いに身を投じる他国間の戦友を数多く生むことで、本来は対立しているはずの民族間の対立感情を抑え、結果的には世界の均衡を保つ役割も果たしていた。
きのこたけのこ会議所は平和の使者として、世界に無くてはならない存在となっていた。


しかしその世界の平和は、会議所に隣接するオレオ王国とカキシード公国の情勢が激化したことで、突如として終焉を迎えてしまう。


戦争を望まないオレオ王国は大国のカキシード公国との関係悪化に困り果て、遂には第三勢力の会議所へ仲介を依頼するにまで至る。
快諾した会議所は戦争回避のため両国へ交渉の使者を派遣するも、各々の思惑も重なりなかなか事態は好転しない。
両国にいる領民も日々高まる緊張感に近々の戦争を危惧し、自主的に会議所に避難をし始めるようになり不安は増大していく。

そして、その悪い予感が的中するかのように、ある日カキシード公国はオレオ王国内のカカオ産地に侵攻を開始し、両国は戦闘状態へ突入する。
使者として派遣されていた兵士や会議所自体も身動きが取れず、或る者は捕らわれ、また或る者は抗うために戦う決意を固める。

この物語は、そのような戦乱に巻き込まれていく6人の会議所兵士の振る舞いをまとめたヒストリーである。



                 きのたけカスケード 〜 裁きの霊虎<ゴーストタイガー> 〜



近日公開予定

2 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:28:57.856 ID:MbDkBLmQo
本ssは6人の会議所兵士を主役としたオムニバスストーリーを予定しています。
各章は短く書いていきたい(希望)

そして、本ssのストーリーは誰かさん作チョコレートマーケットの設定の影響を多く受けています。ごめんなさい。ありがとうございます。


3 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:33:00.744 ID:MbDkBLmQo
・考案中の設定

▽オレオ王国
 きのたけ大陸の中心に位置する王国。
 多くの隣国に囲まれているが、カカオ産地を始めとした肥沃な土地により交易を中心に発展した。
 隣国とはいずれも同盟関係を結んでいる。
 食料だけでなく銃火器の燃料としても使われる“チョコ”最大の生産地でもある。
 王国自体は正規軍を持たず平和主義を貫く。

▽カキシード公国
 大陸の西に位置する大国。
 多くの小国をライス家がまとめあげ、カキシード公国と称している。
 魔術師を多く有していると言われるが、大国でありながらその戦力の全貌は未だに謎に包まれている。
 他国との交流があまり盛んではなく秘密主義的体質から“霧の大国”の異名を持つ。

▽きのこたけのこ会議所(KNC) 仲介陣営
 オレオ王国とカキシード公国に接する独立自治区域。世界的に国家承認を得てないが、ある程度の経済力を持ち【会議所】を中心とした行政府が実質的に統治している。
 きのこたけのこ会議所では【きのこたけのこ大戦】という模擬戦が定期的に【大戦場】で開催されており、全世界より参加が可能。
 毎回、参加者は指定されたルールの下できのこ軍・たけのこ軍という仮想軍に分かれ戦う。
 魔法により参加者は死ぬことがなく安全に戦えるため、当初は各国より軍事演習目的の意図として参加が相次いでいたが、最近は特殊ルールのおもしろさから娯楽やイベントとしても十分な人気を誇る。


世界マップ予定図
https://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/1012/Damatimo%20Feb24%2011-26.png


4 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:34:05.362 ID:MbDkBLmQo
・ssコンセプト
主人公を複数に分けたオムニバス形式
KTC(きのたけカスケード) カードゲームに繋げるための簡易ストーリー作り
オレオ王国、カカオ産地などを使ったオリジナル地名要素

・キャッチコピー
個々の小さな思惑・行動は重なりあい、やがて大きな連鎖(カスケード)を引き起こす…


5 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:54:56.408 ID:MbDkBLmQo
■登場人物
◆斑虎
異名:“白き虎豹(こひょう)”

「Episode : 斑虎」の主人公。
会議所に属するたけのこ軍兵士で、曲がったことが大嫌いな性格。
オレオ王国とカキシード公国の一触即発の事態の中で、王国出身の縁から交渉役に指名され王国に赴くことになる。
しかし交渉も虚しく公国からの侵攻にあい、会議所への帰還もできず王都で戦いに身を投じることになる。
同じくカキシード公国へ使者として派遣されているsomeoneとは親友の関係で常に彼の身を案じている。


◆Tejas
異名:“マイスター”

「Episode : Tejas」の主人公。
会議所に属するきのこ軍兵士で、技術力の高さと“特異な体質”から新進気鋭の若手として期待されている。
バカンスのためにカカオ産地で楽しんでいた最中、ひょんなことから奇妙な同行者と行動を共にすることになる。


◆加古川かつめし
異名:“赤の兵(つわもの)”

「Episode : 加古川かつめし」の主人公。
会議所に属するたけのこ軍兵士で、落ち着き払った所作から数多くの兵士から相談を受けている。
日課のバーで酒を楽しんでいた最中、妙な“噂”を耳にし真偽を確かめるべく動き始める。


◆791
異名:“魔術師”
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

6 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:55:16.973 ID:MbDkBLmQo
まだ書き溜めてないのは秘密だよ〜。

7 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:59:18.134 ID:MbDkBLmQo
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/%a5%ab%a5%b9%a5%b1%a1%bc%a5%c9ss%a4%de%a4%c8%a4%e1

wikiもとりあえずつくったので情報とかは同時にまとめていく予定です。
カードゲームのKTCもしくよろな!

8 名前:たけのこ軍:2020/03/16 01:17:34.750 ID:oPtCc.nk0
おもしろそう

9 名前:きのこ軍:2020/04/05 01:33:30.245 ID:zmqkJGH.o
じゃあ定期的にちょっとずつ投稿始めていこうかしら。

10 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)”:2020/04/05 01:48:02.812 ID:zmqkJGH.o
明日(というか今日)からちょっとずつ。



11 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎:2020/04/05 16:16:13.802 ID:zmqkJGH.o




・Keyword

虎豹(こひょう):
1 虎と豹。
2 勇猛でたけだけしいもののたとえ。扱いやすそうに見えて、策謀家から見た真の敵。





12 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  :2020/04/05 16:17:06.623 ID:zmqkJGH.o





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きのたけカスケード 〜裁きの霊虎<ゴーストタイガー>〜
Episode. “白き虎豹(こひょう)”

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13 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  お経会議編その1:2020/04/05 16:19:48.099 ID:zmqkJGH.o
【きのこたけのこ会議所 会議所 会議場:議案チャットサロン】

滝本「――ということで、次の大戦ではペッツ皇国のヘッド皇女が初参加されるということで、大戦後の移動は交通規制に伴う厳戒態勢を取ります。各会議所兵士は定められた指示の下で一般参加兵士の誘導に――」

斑虎「…」

議長である滝本スヅンショタンのお経にも似た抑揚のない説明が続く中、たけのこ軍兵士 斑虎(ぶちとら)はふと訪れた眠気を無くすため、この会議に同席している他の兵士に視線を彷徨わせた。
円卓テーブル中央の最上座に座る滝本から見て左手の方向、 つまり斑虎から見て正面方向に【きのこ軍兵士】の一団が座っている。
滝本から近い順に¢(せんと)、参謀B’Z(ぼーず)といった、きのこたけのこ会議所の黎明期に尽力した英雄達が座り、下座に進むに連れ中堅から新参の兵士の顔ぶれが並ぶ。
いずれも滝本の定時連絡に心ここにあらずといった面持ちで聴いている。始まって十分も経たずに歴戦の兵士たちを眠りに誘う滝本の話術はある意味才能なのかもしれない。
中堅兵士のきのきのに至っては豪快に口を開けながら寝ている。


14 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  お経会議編その2:2020/04/05 16:21:07.828 ID:zmqkJGH.o
滝本「――また、直近ではケーキ教団による砂糖の買い占めで会議所内でも角砂糖の値段高騰が問題となっており――」

続けて、斑虎は末席に座る一人のきのこ軍兵士に視線を移した。
そこには無表情な新米兵士someone(のだれか)が、斑虎にだけわかる退屈そうな表情で滝本の口をぼうと眺めていた。

彼と斑虎は親友だ。何時からかは覚えていないが、気がつけば二人はよく行動を伴にする間柄になっていた。
とは言っても、専ら喋るのは斑虎ばかりで、口数の多くないsomeoneは黙って聞いていたり、相槌を打ったり、時々反論したりと、極力無表情で応対する。
しかし、そんな彼も斑虎の話に応じて次第に顔を綻ばせていく様を見て、素直に嬉しく感じたものだ。
ある時、笑顔を見せるようにまでなった時、初めて斑虎はsomeoneの心の壁を破ったようでたまらなく嬉しく、自らも満面の笑みを浮かべた。
他の兵士に対し、someoneがここまで自然体で接している姿を見たことがなかったからだ。
勝手に斑虎がそう感じているだけかもしれないが。

斑虎の視線に気がついたのかsomeoneもこちらに目を向けた。
今度ははっきりと分かる表情で“うんざりしている”と顔で告げていた。珍しい彼の自己主張に斑虎は可笑しくなり、思わずにやけかけた口を手で抑えた。


15 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  お経会議編その3:2020/04/05 16:22:28.989 ID:zmqkJGH.o
滝本「それでは以上で定時連絡を終わります。続いて、“本題”に移ります――」

滝本の言葉に、緩んでいた会議場の空気が一変して張り詰めた。大口を開け寝ていたきのきのもすぐに身を起こし、滝本の方を真剣に見つめている。
両軍兵士側に何人か空きの席はあるが本会議の出席率の高さは異常だった。それだけ、全員がこれから彼の話す“本題”を待っていたのだ。

滝本は全員の視線を受け一度だけ頷くと、右手を天井に向かい突き出した。
すると、テーブルの中心に地球儀のような巨大な球体が表れ、同時に球体には文字がゆっくりと浮かび上がった。
滝本の魔法の力によるもので、室内にいる全員が文字を読めるように配慮をしたものだった。

斑虎もしげしげとその文字を見つめた。文字は手紙からの写しを拡大したもののようで、力のこもった筆跡で次のように書かれていた。


16 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  お経会議編その4:2020/04/05 16:24:34.947 ID:zmqkJGH.o


偉大な友人である会議所諸君よ。
最近のきのこたけのこ会議所のますますの発展、一人の友人として喜ばしく思う。
挨拶はさておき、早速ではあるが喫緊の頼みがあり文を出した。

我がオレオ王国はこれまで全ての国、地域と友好関係を結んできた。
しかし先日、隣国のカキシード公国は我が国との同盟破棄を検討していると突如として告げ、今や彼の国との関係は危機的状況を迎えている。
公国の主張するように、我々はチョコ独占による価格の不当引き上げなど一切しておらず、謂れのない誹謗中傷と国境封鎖等を含む過大な圧力を受け続けている。

申し開きを行う機会も無く、事態は刻一刻と悪化している。
事此処に至っては、我が国だけでは事態の打開に限界があり、第三国の仲介依頼を頼む他ない。

頼みというのは他でもない。この仲介をきのこたけのこ会議所に任せたいのだ。
滝本君を始め会議所兵士には世話をかけるが、どうか我が国とカキシード公国の間に入り関係を修復するよう働きかけてほしいのだ。
良い返事を期待している。

オレオ王国 ナビス国王



17 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  お経会議編その5:2020/04/05 16:25:45.133 ID:zmqkJGH.o
滝本「今朝、このような内容の手紙がナビス国王から私宛に届きました。
要約すると『カキシード公国からやっかみを持たれて戦争になりそうだから、第三国である会議所よ何とかしてくれないか』といったものです」

抹茶「会議所は国ではなく独立自治区域ですけどね…」

【たけのこ軍兵士】側の中で上座に座る抹茶が頬をかきながら、生徒を嗜める教師のように静かに指摘した。

【会議所】はきのこたけのこ会議所という独立自治区を統括している行政府の総称である。
自治区域と行政府が同名なのはややこしいことこの上ないが、決まっているものはしょうがない。最初に決めた者を恨むほかないのだ。
国ではなくあくまで自治区域なので、此処にいる兵士は皆それぞれ出身の国の国籍を持っている。
会議所内で生まれればパスポートの国籍欄には一応、会議所と記されるが実質は無国籍民として扱われ、最近ではそのことが問題になっている。


18 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  お経会議編その6:2020/04/05 16:27:12.772 ID:zmqkJGH.o
参謀B’Z「カキシード公国とオレオ王国の関係悪化は此処最近激しさを増している。
かたや“霧の大国”、一方は世界随一のチョコ生産と角砂糖の出荷量を誇る“交易の国”の喧嘩事や。世界が注目しないわけがない」

雑用係「この文面を見る限り、オレオ王国が公国から虐められているようですけどね」

斑虎の隣りにいたたけのこ軍兵士 雑用係は、道端で鳥類の食物連鎖を目の当たりにした通行人のように、憐れみの声を以て参謀の言葉に応じた。

791「彼の国の民の一人としてこれ程恥ずかしいことはないよ。一体、【ライス家】は何を考えてオレオ王国に圧力を強めているんだか」

怒気を孕んだ声で、たけのこ軍兵士側の最上座に座る791(なくい)は不満を口にした。
彼女はカキシード公国出身の魔法使いで、本国では魔法学校の校長も務めているようだ。最近は会議所と公国を行ったり来たりの慌ただしい生活を送っている。


19 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  お経会議編その7:2020/04/05 16:28:02.066 ID:zmqkJGH.o
斑虎「それで、滝さんはどう考えているんだ?会議所のスタンスについて」

それぞれの兵士が感想を口にし出し収拾がつかなくなることを危惧し、斑虎は先に滝本に質問を投げかけた。
滝本は思案顔のままでいたが、暫くして観念したように口を開いた。

滝本「色々考えましたが、私としては会議所介入を支持します。会議所としても、王国からはチョコを多く買い付けているという政治的背景もありますが、一人の兵士として友人の頼みには応えたい」

¢「ぼくもその意見に異論はないんよ。オレオ王国を助けたいんよ」

次々と兵士たちが滝本の意見に同調した。反論するものは誰もなく、ここに会議所の方針が決まったのだった。


20 名前:きのたけカスケード 〜裁きの霊虎_ゴーストタイガー_〜:2020/04/05 16:30:34.462 ID:zmqkJGH.o
今日はここまで。こんな感じでのんびりと投稿していきます。一章毎のボリュームはなるみじ(なるべく短く)済ませる予定です。
この章は斑虎さんが主人公なので虎ちゃん視点でストーリーが進んでいきます。

21 名前:たけのこ軍:2020/04/05 23:44:19.549 ID:pvw/c0bk0
私もこういう文章を書きたい……

22 名前:きのたけカスケード 〜裁きの霊虎_ゴーストタイガー_〜:2020/04/05 23:50:24.024 ID:zmqkJGH.o
>>21
本当は前作みたいに台詞主体で進めたいけど、どうも心理描写が多くなっちゃうんですよね…
私の日本語も全然うまくないのでほどほどに読み飛ばしてくださいな。

23 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編:2020/04/11 04:51:49.767 ID:zmqkJGH.o
じゃあ今日の更新スタート。

24 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編その1:2020/04/11 04:53:54.263 ID:zmqkJGH.o

黒砂糖「しかし、そもそも介入とはどうすればいいんだろうな?」

きのこ軍兵士 黒砂糖が最もな疑問を口にした。斑虎も同じことを考えていたところだ。

社長「ときのはぐるまさえあれば・・・」

たけのこ軍兵士 社長の発言はバグっているため基本的に誰も耳を貸さない。

抹茶「最終的な目標は、カキシード公国とオレオ王国の対話の場を開き対立関係を解消することですね。
そのためには講話に持ち込ないといけないから、まずは両国に対し会議所が働きかけないといけないということかな?」

抹茶はこのような時、まず筋道を立て結論から考え始める。流石はたけのこ軍きっての理論派として会議所幹部候補に名を連ねるだけの力はある。
斑虎はこの場では意見せず、会議の流れに身を任せることにした。

参謀B’Z「ということは、二国のトップにそれぞれ話ができる交渉役が居たほうがいいんじゃないか?
最終的な取りまとめは本部たる此処<会議所>で行うとして、両国にそれぞれ交渉人役の使者は出したほうがええな」

会議所は国ではないので各国に大使館や領事館を持たない。そのため外交官は会議所兵士から選抜しなくてはいけない。
なおかつその使者は、ある程度の発言権を持ち首脳陣にも物怖じしない度胸も必要になる。


25 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編その2:2020/04/11 04:55:59.マオウ ID:zmqkJGH.o
791「おもしろそうな話だね。そのポジション、私には正にうってつけだけど今回はお断りかな。最近、魔法学校に新しい生徒が多く入ってきてね。そちらの面倒も見ないといけないんだ」

カキシード公国出身の791は教育者としての顔も覗かせながら、公国への交渉役を丁重に断った。
公国の交渉役は半ば791で決まりだと思っていただけに皆は驚いた。

なんだか雲行きが怪しくなってきた、と斑虎は不安になった。

滝本「そうですか…では誰が適任だろうか」

誰も立候補するわけもなく、無言の間が流れた。
斑虎はたまらなくこの淀んだ空気が嫌いだ。

すると、良い提案があるとばかりに791はふふっと不敵に笑った。

791「断った私からでよければ一つ良い案があるよ」

斑虎は嫌な予感を察知した。791がチラッとこちらのほうを一度見たからだ。


26 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編その3:2020/04/11 04:59:57.889 ID:zmqkJGH.o
791「交渉役の兵士は、国のお役人さんや元首とも話すわけだから度胸のある兵士がいいよね。それにその国の事情や慣習も分かっている兵士のほうがいい」

そらきた、と斑虎は露骨に顔をしかめた。

791「私は王国の交渉役はオレオ出身の有力な兵士がいいと思うんだ。ね、斑虎さん?」

全員の視線が比較的末席辺りに座っていた斑虎に集中した。
オレオ出身の兵士は何名もいるが、自分を指名してくるあたり791に認められているということなのだろう。
この場合、何も嬉しくはないが。

¢「斑虎さんなら適任なんよ。熱血漢だし、分析力もある。実力は戦っているこちらからしても十分に折り紙付きだ」

滝本のすぐ傍にいる¢からも賛同の声が上がった。普段は口数の多くない重鎮だが、こうした機会に名のある兵士から褒められるのはとても光栄なことだ。
だが、今このときだけは彼を恨むしか無かった。きのこ軍古参の発した言葉に、途端に斑虎で決まりとの空気が場に漂い始めたからだ。


27 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編その4:2020/04/11 05:04:59.112 ID:zmqkJGH.o
斑虎「待ってくれッ!俺はただのたけのこ軍兵士だ。そりゃあオレオ王国出身だが住んでいたのは十年も前の話だッ!
いまは会議所に住んでいるんだからオレオのことなんてわからないよ」

滝本「幼少期は住んでいたんですよね。ならば土地勘はありますね、より適任だ」

ああ言えばこう言う。さっきまでウンウンと唸っていた議長とは思えないほど目を輝かせて滝本はしきりに頷いた。
なんて調子のいい兵士だ。

抹茶「確かに幼少期の記憶は人生で最も印象付けられるメモリと言いますものね…斑虎さんは適任かもしれないな」

抹茶にまでそう言われては楯突く術がない。この場に同軍の加古川かつめしがいればまだ味方してくれたかもしれないが、彼は近頃病欠で今日もこの場にはいない。
少し考えた末に斑虎は振り上げた拳をおろし力なく椅子に腰掛けた。肩をすくめ深々と溜息も付き、せめてもの抵抗とばかりにやる気の無さを示した。

斑虎「はぁ。というか、交渉役なんて何をすればいいんだよ」

参謀B’Z「王国へ向かいナビス国王を始めとした首脳陣と直接会話をするんや。手筈は整えておく。王国の主張を聞き、斑虎は逐次会議所へ報告してほしい。
同じくカキシード公国からも情報を集め、本部であるこちらから王国側へ提案や妥協案、それに講話の準備を打診するので、それらを斑虎から伝えるってのが大きな役目になるな」

つまり中間管理職ね、と斑虎は心のなかで呟いた。
深い責任を負わなくていいが、その分雑用は全てこちらに回されるということだ。お手上げとばかりに斑虎は両手を上げた。

滝本「オレオ王国側の交渉役は斑虎さんで決まりですね。カキシード公国側の交渉役はどうしましょう。791さんではないとすると他に誰か――」


28 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編その5:2020/04/11 05:07:22.504 ID:zmqkJGH.o
【きのこたけのこ会議所 会議所 大廊下】

斑虎「someoneッ!」

長い会議が終わり、会議場の解き放たれた扉から幾人も兵士が出ていった。
斑虎は真っ先に姿を消したsomeoneを見つけるとすぐに声をかけた。
“共に”被害者となった彼を慰めるためだ。

someoneもこちらを視界に捉えると、困ったように僅かに眉尻を下げた。
多くを語らない彼はこうした表情の変化も、進化の過程で退化したと思えるほど微々たるものだ。

斑虎「なんで抵抗しなかったんだよッ!カキシード公国の交渉役なんて、こんな仕事は面倒なだけだぞッ」

と、勢いよく声に出したはいいもののよく考えれば自分もオレオ王国の交渉役に選ばれた際に碌な抵抗をしていなかったことに気が付き、斑虎は少し罰が悪くなった。
知ってか知らずかsomeoneも表面上は少し微笑んだ。

someone「仕方ないよ。決まったことなんだから」

時々、someoneはこうして観念的な言葉を吐くことがある。
さも自分の運命が予め決まっているとでも言いたげな儚さを含んだ言葉を口にするのだ。
斑虎からすると親友の行く末が心配でしかない。


29 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編その6:2020/04/11 05:11:23.571 ID:zmqkJGH.o
斑虎「俺はまだいい。でもお前は生まれてから暫くカキシード公国に居たぐらいでほとんど祖国と関わりはないんだろ?
それに新人であるお前にこんな大役を任せるなんて、会議所はどうかしてるッ!」

何人か二人の前を通り過ぎた兵士がぎょっとしてこちらを振り返ったが、斑虎は気にせず会議所を非難した。

斑虎と違い、someoneはお世辞にも交友関係の広い兵士とは言えない。
口数も多くなく感情表現があまり得意でないため、誤解を招きやすいのだ。

それでも、過去には大戦で運用されている新ルール策定に一人で尽力した経歴があり、会議所からは若き有望枠として期待されていた。
その真価を発揮する機会がいまきた、と周りは思っていることだろう。
親友を利用するような会議所のやり方に、斑虎は納得がいかなかった。

someone「あまり感情的になってもよくないよ、斑虎。与えられた仕事はこなさないと」

someoneは冷静に斑虎を諭すように話した。
斑虎は直情的な熱血漢だが、someoneはうってかわり沈着冷静で物静かだ。
水と油のように見える二人の性格だが、これこそが二人の関係を長続きさせる秘訣でもあるのだ。

someone「すぐに791さんとここを発たないといけないんだ。暫く会えなくなるね」

斑虎「俺もだ。今晩にはもう出発だ。でも791さんも水臭いよな。お前を推薦するんなら、自分が交渉役になってくれたっていいのにな」

会議所の批判とは打って変わり、791のことになると少し声を潜める斑虎が可笑しくて、someoneは少し笑ってしまった。


30 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  選抜編その7:2020/04/11 05:16:20.939 ID:zmqkJGH.o
someone「僕は791さんと一緒だから平気だよ。寧ろ、斑虎の方が大変じゃない?一人だから」

斑虎「これを放置プレイと言うんだろうな」

二人はそこで言葉を切り笑いあった。ウィットに富んだ会話を二人は好んだ。
大戦時も軍の所属は違えど、二人はよくこうして集まり戦いの反省や出来事をおもしろおかしく語っていたものだ。

斑虎「気をつけてな、someone。まあ互いに交渉役だから逐次連絡は取り合うし、その内協議の場でも顔を合わせるだろうが、暫くは会えなくなる」

斑虎の差し出した手を見て、someoneは一瞬戸惑いを見せたようだった。

こうした時に握手をする慣習が無かったのか、果たして別の理由がありsomeoneを困惑させている気がした。
後ろめたさ、のような表現が近いのかもしれない。自分ひとりだけがマジックの種明かしを知っている観客のような、気まずさを放っている。
斑虎はそんな彼を心配そうに見つめた。

someone「…うん。斑虎も気をつけてね」

someoneは斑虎の手を握り返し、儚げな表情で一度だけ頷いた。
そんな顔をするからいつも心配になるんだ、と斑虎は心のなかで頭を掻いた。


31 名前:きのたけカスケード 〜裁きの霊虎_ゴーストタイガー_〜:2020/04/11 05:17:44.987 ID:zmqkJGH.o
会議所パートは終わり、次からはオレオ王国に舞台が移ります。

32 名前:きのたけカスケード 〜裁きの霊虎_ゴーストタイガー_〜:2020/04/11 10:48:20.990 ID:zmqkJGH.o
本章は恐らくあと10回ぐらいの更新で終わりまーす。

33 名前:きのたけカスケード 〜裁きの霊虎_ゴーストタイガー_〜:2020/04/11 18:02:03.568 ID:zmqkJGH.o
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/cas%c0%df%c4%ea

wikiに設定ページを新たに設置しました。

34 名前:たけのこ軍:2020/04/11 22:48:42.211 ID:pvw/c0bk0
先の見えなさとテンポよく世界観を構築することにあこがれる。

35 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  謁見編その1:2020/04/18 11:21:01.965 ID:zmqkJGH.o
【オレオ王国 王都】

斑虎はひとり汗を拭った。なにも頭上から降り注ぐ日光に因るものだけではない。どちらかというとこの汗は防衛本能に近い。

十年ぶりに戻った故郷は特段大きな変化もなく、相変わらず人混みによる活気と熱気で溢れていた。
王が住まう巨大な宮殿の周りに、所狭しとばかりに商店を中心とした家々がひしめき合い、忙しい王都を構成している。

王宮前の大通りには露店が幾つも立ち並び、商人と通行客とでごった返している。商魂たくましい商人は声を張り上げ行き交う人々の足を止め、
通行人は物品と自らの利を見定めるために目を細め、その合間を縫うように荷車や馬車が行き交う。

王国は広大だが大地の多くを平原や荒野に支配されている。こうして人が住まう僅かな地域には、傍から見て心配になるほど人が押し寄せるのである。
ナビス国王から届いた手紙の悲痛な叫びからは考えられない平和で安心した日常風景が目の前に広がり、却って斑虎はその違和感から周りの風景が非日常のように感じずにはいられなかった。


36 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  謁見編その2:2020/04/18 11:24:05.175 ID:zmqkJGH.o
数分もかからない距離を倍以上かけて辿り着いた宮殿を見上げ、斑虎はホウと一息ついた。
幾多の大戦を経験し周りの兵士より体力に自信はある筈だが、人混みに気を払いながらの移動はどうも苦手だ。

「斑虎様ですね。話は伺っています、王様がお待ちです」

彼の到着を見越したように、見上げるほど巨大な宮門の前に立っていた番兵は斑虎に声をかけた。
どうせ待っているならば迎えに来てくれてもいいばかりに。

斑虎「この国は何も変わってないな。変わったのは奴さんのご機嫌だけか?」

「こちらになります」

斑虎の皮肉を意にも介さず、番兵は踵を返し歩き始めた。
なにも変わっていないな、だから好かないんだ、と心のなかで斑虎は悪態を吐いた。


37 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  謁見編その3:2020/04/18 11:25:58.631 ID:zmqkJGH.o
【オレオ王国 王都 王宮】

初めて中に入る王宮内は白を基調とした側壁と青のカーペットに、目を奪うほどの漆黒のシャンデリアが室内を暖かく照らす。正にこれぞ王宮といった絢爛さがあった。

斑虎が通された謁見の間も先程まで見ていた王宮の要素を一重に詰め込んだもので新鮮味は特段ない。
今までと違う点としては、部屋に先客がいた事だ。

ナビス国王「よく来てくれた。国賓として君を歓迎しよう、斑虎くん」

斑虎はナビス国王との初対面を果たした。

斑虎「私もお会いできて光栄です、王様」

斑虎は膝をつき服従の姿勢を表した。

ナビス国王「そこまで畏まらなくてもいい。手紙にも書いた通り、君たちとは対等な友人でいるつもりだ」

顔を上げると、ナビス国王は人の良さそうな笑顔で斑虎に席を進めた。
新聞や本などでしか彼を見たことが見たことはなかったが、世界一の交易国家を束ねる王は威厳こそあれど、親しみやすい“庶民”のような雰囲気を醸し出していた。

ナビス国王「そこにかけてくれ。あいにくとチョコレートドリンクを切らしていてね。カフェオレでいいかな?」


38 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  謁見編その4:2020/04/18 11:30:03.008 ID:zmqkJGH.o
斑虎「チョコを切らしているんですか?珍しいですね」

ソファに腰掛けた斑虎に、後から掛けたナビス国王は困ったように眉尻を下げた。

ナビス国王「いや、正確に言えば角砂糖を切らしている。最近、君たちの区域からの買い付けが凄くてね。一時的に王宮に供給できない日もあるくらいさ」

斑虎「ああ、なるほど…」

そういえば、先日の会議で、きのこたけのこ会議所内の新興宗教団体が角砂糖を買い占めているという話を滝本が話していた。
確か団体名は『ケーキ教団』だったはずだ。

斑虎「それで、早速ではありますが、単刀直入に伺います。一体カキシード公国との間に何があったんですか。
我々もニュースで確認はしていますが、何故急速に関係が悪化したのかまず真意を確認しないことには話を進められません」

聞くものによっては前のめりな斑虎の姿勢に言葉をつまらせる場面だが、ナビス国王は斑虎と目を合わせると滔々と語った。

ナビス国王「わからんのだ。これまで公国とは穏便に関係を築いてきた。我が国も“大国”の端くれではあるが、国力としては公国が圧倒的だからな。
公国の実質元首たるカメ=ライス公爵も知らない仲ではない。
だが、ここ最近になって『オレオ王国がチョコを不当に貯蓄し価格を釣り上げている』と公然と批判を受けるようになった」

オレオ王国は、世界一のカカオ収穫量を持つカカオ平野と、同平野に広がるチョコ製造工場で世界一のチョコ製造を誇る。
会議所地域から広大なチョ湖を跨いで広がる同平野一帯は“カカオ産地”と呼ばれており王国の経済を牽引する程に羽振りが良い。

チョコが今や世界に無くてはならない資源として注目されつつあるからだ。

一昔前、ただの食材としか見られていなかったチョコは、つい最近の研究で可燃性の素材に魔法錬成できる事が分かった。
つまり、チョコは錬成次第で化石燃料にもなることが判明したのだ。これは大きな発見だった。

この事実は瞬く間に世界を駆け巡り、人々は驚きの声をもって迎えた。元来、この世界は資源に乏しく人々は魔法で全てを補うしかなかった。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

39 名前:Episode:“白き虎豹(こひょう)” 斑虎  謁見編その5:2020/04/18 11:34:38.448 ID:zmqkJGH.o
カキシード公国側の指摘通り、確かにチョコ自体の価格が高騰していることは事実だった。
しかし、それは他国の消費量と王国からの供給量に見合わないための措置であり、王国が意図的に値段を上げているとの指摘には全く当てはまらない事態だった。
公国が作為的に王国を悪玉に仕立て上げようとしているのは明らかだった。

斑虎「手紙を出してからこの国を取り巻く変化はなにかありました?」

ナビス国王「貴地域だけでなく周辺国にも救援要請は出しているが、どこもまだ静観しているな。下手に“霧の大国”に反抗して恨みを持たれたくない、というのが本音だろう」

“霧の大国”ことカキシード公国は大陸の西側に位置する大型集合国家だ。
その歴史は定かではないが、混沌とした歴史の頃に既に公国自体は存在した。その後、周辺国を次々に飲み込み今の巨大国家が形成された。
国家統治はライス家という貴族が執り行っていると言われるが、その実態は定かではない。何しろ大国でありながら内部の情報を外に明かさない秘密の多い国なのだ。

きのこたけのこ会議所が【大戦】を始めた際にも、その秘密主義的体質から、当初カキシード公国からの参加は殆どなかった。
その後、791を始めとする有力兵士が登場しカキシード公国との橋渡し役を務めるようになってからは会議所にも参加する兵士が増加した背景がある。それでも、参加数は国の規模と比べればまだまだ少ない程だ。

そのため、現代でも公国に関する詳しい情報を斑虎たちは知らない。791が語る王都の話や自身が校長を務めるという魔法学校の様子を聞き、公国のイメージを深めたくらいである。
公国は古くから魔法文明を牽引してきた国で、魔法の技術とその意思を持つ強大な魔法戦士軍を有していると言われている。
大国に反抗したくない他国家は表立って王国に支援を表明できないのだ。



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