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きのたけカスケード ss風スレッド

1 名前:きのこ軍:2020/03/15 23:24:14.292 ID:MbDkBLmQo

数多くの国が点在する世界のほぼ中心に 大戦自治区域 “きのこたけのこ会議所” は存在した。

この区域内では兵士を“きのこ軍”・“たけのこ軍”という仮想軍に振り分け、【きのこたけのこ大戦】という模擬戦を定期的に開催し全世界から参加者を募っていた。
【大戦】で使用されるルールは独特で且つユニークで評判を博し、全世界からこの【大戦】への参加が相次いだ。
それは同じ戦いに身を投じる他国間の戦友を数多く生むことで、本来は対立しているはずの民族間の対立感情を抑え、結果的には世界の均衡を保つ役割も果たしていた。
きのこたけのこ会議所は平和の使者として、世界に無くてはならない存在となっていた。


しかしその世界の平和は、会議所に隣接するオレオ王国とカキシード公国の情勢が激化したことで、突如として終焉を迎えてしまう。


戦争を望まないオレオ王国は大国のカキシード公国との関係悪化に困り果て、遂には第三勢力の会議所へ仲介を依頼するにまで至る。
快諾した会議所は戦争回避のため両国へ交渉の使者を派遣するも、各々の思惑も重なりなかなか事態は好転しない。
両国にいる領民も日々高まる緊張感に近々の戦争を危惧し、自主的に会議所に避難をし始めるようになり不安は増大していく。

そして、その悪い予感が的中するかのように、ある日カキシード公国はオレオ王国内のカカオ産地に侵攻を開始し、両国は戦闘状態へ突入する。
使者として派遣されていた兵士や会議所自体も身動きが取れず、或る者は捕らわれ、また或る者は抗うために戦う決意を固める。

この物語は、そのような戦乱に巻き込まれていく6人の会議所兵士の振る舞いをまとめたヒストリーである。



                 きのたけカスケード 〜 裁きの霊虎<ゴーストタイガー> 〜



近日公開予定

361 名前:Episode:“魔術師” 791 彼女の過去編その4:2020/11/08(日) 21:15:08.578 ID:JT93nRnIo
そんな彼女の人生に転機が訪れたのは、高等部の卒業を来年に控えた頃だった。

珍しく外の空気を吸うために中庭で本を読んでいた時、彼女の近くを通りかかったグループの話していたある噂話が彼女の耳に届いた。

―― 『聡明な【魔術師】が放浪の旅を終え此の地に戻ったらしい』

今思い返すと不思議なことだがその日の夕方、791は興味本位でその魔術師の家を訪れていた。
普段の彼女からは考えられない行動力だが、この頃は色々なことに悩み少しでも支えが欲しかったのかもしれない。
加えて、身近に憧れの【魔術師】が来たというのだ。興奮するなというのが無理な話だろう。

夕方、791は通常の三倍もの時間をかけて目的地に到着した。
噂されていた魔術師の家の前に立ち、その都度勘違いだろうとその家の周りを何周かしたが、周りには家屋もなく空き地や草むらが広がるだけで、
目の前のみすぼらしい母屋が目的地であることを間違いないと考えを改めるのに時間がかかったのだ。


魔術師という肩書きからは反し家のペンキは剥がれ、屋根が何枚か抜けていた。通常であれば廃屋だと素通りしてしまうところだろう。

てっきり華々しい豪邸を想像していただけに衝撃的だった。
ただ、柵を超えた中にあるこぢんまりとした庭園だけは芝が刈り取られており、きちんと手入れされていたのが印象的だった。

壊れかけの庭扉を開け、家の扉の前に立ち暫く観察と呼吸を整えるために立ち止まった。
横にある窓を覗こうとしてもくすんだ色のカーテンで覆われ家の中を覗き見ることはできなかった。

本当にこの家が、世間から手放しで評価され全魔法使いが憧れとする【魔術師】の住まいなのだろうか。
近づけば近づくほどにその疑念は大きくなっていた。

―― 違うに決まっている。ここは帰って真偽を再度確かめてから出直すべきではないか。

しかし、791はそのような甘い考えをすぐに振り払った。

逃げても意味などないし、何も生まれない。
もし違う人物だったとしても、その時は謝りその場を去ればいい。
今の自分にとって一番の悪手は何も“選ばない”ということだ。何が自分にとって最優先かを考えろ。



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