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アラウンド・ヒル ss風スレッド

1 名前:きのこ軍:2023/01/07(土) 08:04:42.583 ID:DeJrbXDs0
青年テペロは、あてもない旅を数年も続けていた。

ある時、鬱蒼とした森に迷い込んだテペロは森の中に建つ奇妙な塔にたどり着く。
彼はある集落を探していた。塔に住む社長という人物から、周辺一帯がKコア・ビレッジという村だと聞くが、その名は彼の目指す村ではなかった。

失意の中で眠りにつけば、遠くから号砲が鳴り響く。
Kコア・ビレッジには奇妙な風習があった。
広大な土地に僅か9人の村民だけで暮らすこの村では、不定期に村民同士が最後の一人の勝者を決めるまで争い合う、物騒な遊びが行われていたのだ。

彼らはその遊びを“大戦”と呼んでいた。

奇しくもその夜が“大戦”日だった。
テペロは社長に頼みこみ戦いに同行することにした。中心部の市街地では既に銃弾が飛び交い、硝煙漂う戦場と化していた。
顔から血の気が引く思いでただ進む、そして敵からの奇襲を受け意識を手放す直前、テペロの脳裏には中心部にそびえる小高い丘が映っていた。

あの丘の上から見る夜空はどんなに近くて美しいんだろうかーー


9人の妙な村民の住む奇妙な村で、青年テペロと彼らの運命は回り始める。   


              アラウンド・ヒル


101 名前:アラウンド・ヒル〜美味しいお茶の見分け方〜 興味その5:2023/04/30(日) 21:53:20.815 ID:HGv7BbdQo
「この周辺以外では、バーボンの丘を挟んで向かいにある東部一帯も住みやすいところですよ、ブルボン湖にルマンド川という大きな水源があり、自然はここ以上に豊富ですしね。
この家の先にも支川は流れているんですが」
「へぇ、風光明媚で良さそうですね」

地図はかなり古ぼけていて、藁半紙自体の傷みもさることながら、文字も所々滲んで読めなくなっているところもあり、かなりの年季を感じさせました。

中心に描かれている丘の中腹部には、比較的新しいインクで「Kコア・ビレッジ」と記された跡があり、広大な村の一帯の中心に描かれているバーボンの丘の存在感が、ここでも際立っています。
抹茶さんの指しているブルボン湖の方にも目を向けると、地図の右端部には巨大な湖が描かれていて、その湖から蜘蛛の手足のように河川が枝分かれしています。

「このあたりには多く村民も住んでいるし、いいところだと思いますよ」
「でもこの川沿いって村のラインのギリギリじゃない?大丈夫なの、抹茶?」
791さんの質問に、抹茶は地図の右上端に尖った線のように描かれている竹やぶ一帯を指差し、
「参謀(さんぼう)の家を越さなければ、大丈夫ですよ」
と答えました。どうやらこの竹林の中に、参謀と呼ばれる村民が住んでいるようです。

「参謀という方は、どんな方なんですか?」
僕の質問に、抹茶さんは、
「とても落ち着いていて、おもしろい人ですよ。博識で物事もよく知っています」
と答えました。
僕はいまさらながら、質問に対しちゃんとした答えが返ってくる、ちゃんと会話ができる、ごく普通の日常のありがたみを感じていました。


102 名前:アラウンド・ヒル〜美味しいお茶の見分け方〜 興味その6:2023/04/30(日) 21:54:53.025 ID:HGv7BbdQo
「抹茶さんの話を聞いて、興味がわきました。これから参謀さんのお家に向かってみようかと思います」
「あの人は優しいから色々と教えてくれるでしょう、茶の点て方にも一家言ある程です、あッ、そうだ」
そこで抹茶さんはハッとしたように、手を打ちました。

「テペロさん、参謀の家に行くならついでに茶葉を渡してくれませんか?」
「いいですよ、さっきの一番茶ですか?」
「ええ、いつもは頃合いを見て参謀から取りに来るんですが、今年は茶葉の収穫が早くて。
丁度タイミングが良い、いま参謀に包む分の茶葉も作っていて、もうすぐ完成なんです」
「へぇ、茶葉を摘んで包んで終わり、というわけじゃなかったのか」
抹茶さんは心外だとばかりに首を勢いよく横に振りました。

「とんでもない。そうだ、せっかくだし工房も少し覗いていきませんか?ブラックさんの分の茶葉も一緒にお渡ししますので」
面白そうなので頷いてみると、抹茶さんは嬉しそうに立ち上がり、「準備があるので」と部屋を出ていきました。
腰掛けたままの791さんは、穏やかな日常を甘受するように目を細め、まだ茶を嗜んでいます。

「抹茶は、良い話し相手ができたと思っているんじゃないかな?
あの子の方から何か提案するとはめずらしい、これからも、たまには遊びにきてやってよ」

慌ただしく部屋を出ていった抹茶の背中を横目で見ながら、791さんは穏やかに茶を啜りました。
歳の近そうに見える二人ですが、大人びて見えた抹茶さんの幼い部分と、可憐に見える791さんの大人然とした振る舞いのあべこべさを同時に見ることができ、ほんの少しだけ心が暖かくなりました。


103 名前:きのこ軍:2023/04/30(日) 21:55:15.903 ID:HGv7BbdQo
気づけば遅くなってしまった。
少ないですが今週はこんなもので。抹茶の家はもうちっとだけ続くのじゃ。

104 名前:名無しのきのたけ兵士:2023/04/30(日) 22:09:35.908 ID:wpYlz45E0
雑談だけでも世界観が広がっていいですね


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