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アラウンド・ヒル ss風スレッド

1 名前:きのこ軍:2023/01/07(土) 08:04:42.583 ID:DeJrbXDs0
青年テペロは、あてもない旅を数年も続けていた。

ある時、鬱蒼とした森に迷い込んだテペロは森の中に建つ奇妙な塔にたどり着く。
彼はある集落を探していた。塔に住む社長という人物から、周辺一帯がKコア・ビレッジという村だと聞くが、その名は彼の目指す村ではなかった。

失意の中で眠りにつけば、遠くから号砲が鳴り響く。
Kコア・ビレッジには奇妙な風習があった。
広大な土地に僅か9人の村民だけで暮らすこの村では、不定期に村民同士が最後の一人の勝者を決めるまで争い合う、物騒な遊びが行われていたのだ。

彼らはその遊びを“大戦”と呼んでいた。

奇しくもその夜が“大戦”日だった。
テペロは社長に頼みこみ戦いに同行することにした。中心部の市街地では既に銃弾が飛び交い、硝煙漂う戦場と化していた。
顔から血の気が引く思いでただ進む、そして敵からの奇襲を受け意識を手放す直前、テペロの脳裏には中心部にそびえる小高い丘が映っていた。

あの丘の上から見る夜空はどんなに近くて美しいんだろうかーー


9人の妙な村民の住む奇妙な村で、青年テペロと彼らの運命は回り始める。   


              アラウンド・ヒル


94 名前:アラウンド・ヒル〜美味しいお茶の見分け方〜 居候その9:2023/04/14(金) 21:31:57.954 ID:pFANaS9so
「誉めてるんだよ、後から聞けば¢さんとも一対一でやりあったんだって?ぜひギャラリーで見ていたかったなあ」

すると、家主の抹茶さんがお盆にティーカップを二つ持ちながら居間に戻ってきました。

「その話は僕もぜひ聞きたいですね、どうぞ、一番茶です」

テーブルの前に置かれたティーカップからは、煎茶の芳しい香りが鼻の先へ流れてきます。

「これは、ありがとうございます。ところで、一番茶ってなんですか?」
「おや、一番茶を目当てに来たわけではなかったんですか」

掛けている金縁メガネの中の目を再び丸くしました。

「テペロくんは自分のお家探しに、この村の家を練り歩いて回るらしいよ」
「なるほど、そうでしたか。
いまの質問ですが、一番茶とはその年の初めに摘採した茶葉のことです、茶葉は一年で何回か取れるんですが、一番茶は二番茶より品質が良く、新鮮な香りと爽やかな味を楽しめるんです、ちょうど今がその一番茶の収穫時期なんですよ」

カップをしげしげと眺めると、カップの中の煎茶は底が見える程に澄んでいます。

「そうでしたか、ブラックさんが茶葉を欲してたのは今が旬だからだったのか、これは良いタイミングにお邪魔できました」

カップを手に取り、口に含めると、苦味のない透き通る味わいが一瞬で広がりました。
今まで味わったことのない高貴な風味に、今度は僕が目を丸くする番でした。

「すごく美味しいです、こんな美味しいお茶は初めて飲みましたッ」
「それは良かった、後で帰り用に茶葉を詰めておきますね」

優しげな目元に微笑をたたえた抹茶さんは、若い茶葉の色の緑髪に、精緻(せいち)な顔立ちで、見た目以上にとても若々しく見えます。
もしかしたら歳は僕とあまり変わらないのかもしれません。むしろ不健康そうな僕の見た目より彼のほうが若々しく見えることでしょう。

少し複雑な気分になり、再びお茶を啜りました。



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