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ユリガミノカナタニ2

1 名前:社長:2016/09/04 00:44:24.091 ID:PNG5mMkE0
邪神スピリットJ あらすじ

鬼のマタギ、ディアナは人魚を狩る狩人を殺すとともに、襲われかけていた幼い人魚ネプトゥーンを助けた。
そして数十年後―――再び狩人を殺したディアナだが、最後の一人の自爆で大怪我を負って海の底に沈んでしまった。

そこには、ネプトゥーンの親が治める竜宮があり、ディアナも人魚の肉を狙った存在と勘違いされた。
それをネプトゥーンは訂正しようとしたが聞き入れられず、ディアナを助けて駆け落ちしようとした。

ディアナに人魚の血を飲ませ、傷を癒したネプトゥーン。
ネプトゥーンは助けられた時から好きになったとディアナに告白し、二人は逃げることにした。

そして―――無事に逃げ、海岸まで上がることができた。

2 名前:社長:2016/09/04 01:13:44.476 ID:PNG5mMkE0
さて――海の底と、地上とでは時の流れは違う。
竜宮での、たった少しの時間は、地上の世界の流れを大きく変えていた。


取り敢えず、ディアナはネプトゥーンと共に、情報屋―長老のもとへ向かった。
依頼自体は終わらせているが、自身は行方不明と扱われていると思われるため、顔見せぐらいは必要だと思ったからだ。

3 名前:社長:2016/09/04 01:19:03.891 ID:PNG5mMkE0
だが、長老は、病気をこじらせ、死にかけていた―――。

長老「………うむ、すまんな…お前が戻らん間に、病魔に蝕まれてしまってな……
   最近は人間がこのあたりに住み着き、鬼達も元居た場所へ帰り――後釜も居ないから、お前に頼む依頼もない……」

ディアナ「そう……取り敢えず、あの依頼は終わったと見なしていいか?」

長老「ああ………報酬額を念のため取っておいてよかった、これだ…」

ディアナ「うむ……」

長老は、その後、ディアナの袖を掴み、後ろに隠れていたネプトゥーンに気が付いた。

4 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:20:40.990 ID:PNG5mMkE0
長老「そちらの嬢ちゃんは、…恋人、か……?」

ディアナ「そのような存在かもしれないな」
ネプトゥーン「はっ、はい…」

ネプトゥーンは、ディアナ以外に初めて話す、外界の存在に緊張していた。
その長老の目は、ネプトゥーン自身が人魚であると理解しているようであり、なおさら―――。
選んで外に来たけれど、やはり自身は人魚だから―――。

5 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:22:02.006 ID:PNG5mMkE0
長老「……いい目をしている、ディアナともずっと生きていけるだろう…」
だが、長老は少し呟いただけだった。突っ込みもせず、深くも聞かず。

ネプトゥーン「あ、ありがとう…」
その反応に、少し驚きながらも返答し、ネプトゥーンは頭を下げた。

長老「ディアナよ、お前は元気でやってくれ…ネプトゥーンも、な」

ディアナはその言葉に一礼し、ディアナ達は長老のもとを後にした。

6 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:31:40.354 ID:PNG5mMkE0
次にディアナ達は、ディアナの隠れ家へと行った。
ディアナの隠れ家は、時の流れによって少し古びたところもあったが、
あらかた問題ないままで、武器なども其のまま残っていた。

ディアナ「ふむ……少々ガタがきているのもあるが……問題ないようだ」
その後ディアナは、冷静に武器の様子を確認した。


そんなディアナの姿に、ネプトゥーンは見惚れていた。
その手慣れた動きが、どれだけマタギとして生きてきたかを表している。

7 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:40:11.459 ID:PNG5mMkE0
そうこうするうち、ディアナは武器の点検を終えたようで、ネプトゥーンを見つめた。
ネプトゥーン「ど、どうしたの、ディアナ?」

ディアナ「俺を、じいっと見ていたが……此れらの武器に、興味があるのかい?」

本当はそれよりも、ディアナに興味があったけれど、実は武器にも興味があった。

ネプトゥーン「わぁ……ディアナ、これはなあに?」
ネプトゥーンは、もともと好奇心で海の底からこっそり抜け出したほど、好奇心が強い。
だから、見た事もない武器ひとつひとつに、子供の様に目を輝かせた。

ディアナ「ああ、此れは―――」
そして、其の度に、ディアナはネプトゥーンに丁寧に教えてあげた。

8 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:42:33.510 ID:PNG5mMkE0
其の後、二人は禊をした。

ネプトゥーンの身体は、ザンの名に違わぬ、美しく透き通った白い肌と、しなやかな線から成っていた。
一方、ディアナの身体は、過剰でも過少でもない、程よい筋肉が付き、体中に傷痕のある、
―――まさに、鬼と言われて思い浮かぶ身体をしていた。


9 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:43:23.859 ID:PNG5mMkE0
ディアナは別段、他人の身体について、戦いでどう動くか、ぐらいしか考えない性分な為か、
ネプトゥーンの身体を見ても何も感じなかったけれど、ネプトゥーンはディアナの身体を見て、心をきゅんっとさせた。

その筋肉と身体の傷が、格好良く見え、其処に相見える女らしい身体の線が美しかったからだ―――。

10 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:48:14.611 ID:PNG5mMkE0
また、ディアナはネプトゥーンの其の感情に気付くことはなかった。
ネプトゥーンが顔を赤らめていたのも、水に囲まれない生活で、禊をしたためと考え、さっさと禊を済ませた。

ネプトゥーンは、ぼうっとしていたけれど、ディアナに肩を叩かれ、はっと気が付いた。

ディアナ「ネプトゥーン、ぼうっとしていたようだけど……」

ネプトゥーン「あ、あっ、だ、大丈夫っ」

ディアナ「そうかい…?外で禊をすることは、慣れないだろうから、手伝おうか?」
顔を赤らめて慌てるネプトゥーンの手を、ディアナは優しく握ってあげた。

ネプトゥーン「ほ、本当に、大丈夫だからっ」
ネプトゥーンは、慌てながら、禊を済ませた。

11 名前:邪神スピリットJ:2016/09/04 01:48:55.873 ID:PNG5mMkE0
そうしていると、やがて夜が更けた。

初めて見る月にもネプトゥーンは心を躍らせ、ディアナはその様子を優しい目で眺めていた。

12 名前:社長:2016/09/04 01:52:04.660 ID:PNG5mMkE0
更新終わり。今更だけどディアナは俺っ娘です。

13 名前:社長:2016/09/04 02:12:25.370 ID:PNG5mMkE0
ディアナ
・身長  :183cm
・体重  :73kg
・スリーサイズ:108-63-97
・髪色  :金
・目の色 :黒
・利き手 :両利き
・一人称 :俺
・得意なこと :銃などの、遠距離攻撃をする武器の扱い
・不得意なこと:恋の行方を読む事

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/836/diana.jpg

14 名前:社長:2016/09/04 02:20:23.272 ID:PNG5mMkE0
ネプトゥーン
・身長  :157cm
・体重  :49kg
・スリーサイズ:80-57-79
・髪色  :青
・目の色 :緑
・利き手 :右利き
・一人称 :わたし
・得意なこと :泳ぎ、家庭的なこと
・不得意なこと:戦い

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/837/neptune.jpg

ネプトゥーンの【力】
壁を泳ぐことができる。対象は自身と、自身が触れているもの。
あくまで自身が壁と認識したものが限定で、例えば壁から空中に飛び出すと普通に転落する。

>>13
あとディアナの眼は青色の設定だった。

15 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:43:28.491 ID:t43rV0Uw0
ディアナは、これまで孤独に生きていたから、何にでも興味を示すネプトゥーンが新鮮だった。
新しいものを見て、心踊らせる気持ちよりも、冷静に見る性格であるため、なおさら――。


ネプトゥーンは、空に浮かぶ月を見ていたが、ふとディアナの優しい横顔が目に留まった。
格好良い、凛々しい顔貌の、其の鬼の表情が、その姿が、心を揺さぶってたまらない。

ネプトゥーンの頬は、紅色に染まり、其れを隠すように両手で頬を抑えた。

16 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:45:29.032 ID:t43rV0Uw0
ディアナ「ん……?」

その視線にディアナも気が付き、ネプトゥーンをじいっと見つめた。

ネプトゥーン「あ、あの……ディアナっ」
ネプトゥーンは、恥ずかしそうに、ディアナの手をぎゅうっと握りしめた。

ディアナ「ん……?どうかしたかい?」
其の行動に、ディアナは優しい声色でネプトゥーンに話しかけた。

ネプトゥーン「そ、そのっ
       子供っぽいお願いかもしれないけれど、そのっ、一緒の、一緒のお布団で寝たいんだけれど…」

ディアナ「わかった、布団に行こう」

二人は、寝床に行った。


17 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:51:02.297 ID:t43rV0Uw0
寝床で、一つの布団にディアナとネプトゥーンは、くっついて入った。

ディアナは布団を仰向けになり、頭の後ろで手を組んでいると、ネプトゥーンがじっとディアナの顔を見た。
何か―――とディアナが問おうとするが、それは声にならなかった―――。


ネプトゥーン「ん……っ……」
ネプトゥーンは、ディアナの唇に自分の唇を重ねた。

ディアナ「――――はぁっ、んっ…」
柔らかな唇の感触が、ディアナの唇に伝わり、さらにネプトゥーンの柔らかな舌がディアナの舌をなぞった。
味わったことのない初めての感覚に、ディアナはそのまま、されるがままに舌を絡み合わされた。

18 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:51:40.883 ID:t43rV0Uw0
気が付くと、ディアナとネプトゥーンの口の間に唾液のアーチが出来ていた。
頬を紅潮させたネプトゥーンは、甘えた二つの瞳でディアナを見つめた。

ネプトゥーン「……その、好きな者とは、こうするのが、そのっ、習わしなのっ
       あのっ、だからっ」
ディアナは、恥ずかしがりながら、そう答えるネプトゥーンを見て、其れが求愛行動だと理解し、
自身の仰向けに横たえた身体を起こして、ディアナは、ネプトゥーンの唇に自身の唇を重ねた。

19 名前:邪神スピリットJ:2016/09/22 23:54:58.354 ID:t43rV0Uw0
ネプトゥーン「えー――?」
紅潮した頬のまま、困惑するネプトゥーンに、

ディアナ「―――なら、俺もそうした方がいいだろう
     俺は、ネプトゥーンが好きなのだから――ね?」
―――そう告げた。


ディアナも、ネプトゥーンの血を貰った時に、恋心を覚えたからだ。
その後、二人は布団の中で、顔を見合わせ、互いに手を重ね、身体の距離を狭め、身体を重ね合った―――。


20 名前:社長:2016/09/22 23:55:51.769 ID:t43rV0Uw0
「ベッドシーンは?」「カットマン」

21 名前:社長:2016/09/25 03:47:10.442 ID:GWlG.Qno0
http://dl1.getuploader.com/g/57e6c9f4-a2a8-40db-9db3-06cbb63022d0/kinotakeuproloader/864/%E3%81%B2%E3%81%A8%E6%99%82%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%8C%E3%81%A1%E3%81%8C%E3%81%84.txt

某氏の要望 ひと時のすれちがいのベッドシーンあり版
まあそこまですごいようなものではないけど。

22 名前:たけのこ軍 791の人:2016/09/25 19:48:02.493 ID:M5f5C5X.0
ありがとう!満足!

23 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:22:46.343 ID:0mx6uDdw0
身体を重ね合った朝、ディアナは朝日が昇るぐらいの刻に起きた。

ディアナは、隣で眠っているネプトゥーンを見つめ、その寝顔をじっと見ていた。

百の年をとうに越している彼女は、自身が産まれ、家族と過ごした事などまるで覚えていなかった。
それに、昔から愛という事柄には興味はないまま生きてきた。

だが、今は、ネプトゥーンという存在が居る。
初めて恋心を覚えた人魚の、優しい寝顔が、何故か心を安らかにさせた。


24 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:23:20.089 ID:0mx6uDdw0
そして、昨日の夜に身体を重ね合わせたまま、いつしか眠ったため、
二人とも生まれたままの姿であった事も相まって、昨夜の様に頬を桜色に染めた。

ネプトゥーン「あっ、あっ……その、こんな、慌てちゃって、えっとっ」

何とか言葉を紡ごうとするも、言葉にならない。

25 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:24:27.528 ID:0mx6uDdw0
ディアナ「大丈夫―――俺は、ネプトゥーン、君の事が好きなんだ
     慌てなくていい、離れたりもしないさ」
そんなネプトゥーンに、ディアナは優しい表情と共にキスをした。

ネプトゥーン「あ――」
ネプトゥーンの、糸が絡まり巻き付いて惑った心は、その言葉と行動で解け、気持ちが解れ――。

ディアナ「さ、服を着て、朝飯にしよう―――」


ネプトゥーン「うんっ!」
笑顔で、ディアナの言葉に応えられるようになった。


いつしか、空には朝日が昇っていた―――。

26 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:28:14.797 ID:0mx6uDdw0
――――それから、ディアナは、マタギの一員として狩りをしていた。
以前と違うことは、かつては専ら長老の依頼で狩りをしていたが、種族を問わず様々な存在から依頼を受けるようになったことだ。

また、ネプトゥーンは、ディアナと一緒に鍛錬するようになった。
その甲斐あってか、ディアナほどではないものの、鍛えた兵士に襲われた時に、即座に反撃できるほどの護身術が身に付いた。

最も――彼女は戦いが好きではないから、其れを積極的に使う事はなかった。
もっぱら彼女は、隠れ家を守り、家事を行い、時々食料の調達をしていた。

27 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:28:47.241 ID:0mx6uDdw0
そして、時の流れと共に銃なる武器も作られた。
ディアナは、遠距離戦用の武器に才能があり、銃の其れも同じくあった。
銃は、攻撃射程距離を飛躍的に伸ばし、ディアナの武器として多く使われるようになった。

ディアナの才能は、唯上手いと言うだけではなく、
遠距離から、針の孔ほどしか見えぬ猛獣の急所を狙い撃ったり、枝葉で隠れた獣を読み撃ちする等、
常人では会得することのできない技術すら可能にするほどに、満ち溢れていた。

28 名前:邪神スピリットJ:2016/09/26 00:30:27.263 ID:0mx6uDdw0
そうやって、二人は何年過ごしただろう―――。
狩りをする暮らしだけではなく、時には二人はぶらぶらと適当に旅をした。

美しい湧水のある農村、めっぽう強い巫女がならず者を倒した伝説のある村、甘くとろける、お菓子の本場の街―――。
その景色などに触れ、その土地のものを楽しみ、また、二人の愛の絆を、心で、身体で、確かめあったりもした。

29 名前:社長:2016/09/26 00:33:48.835 ID:0mx6uDdw0
ディアナとネプトゥーンの関係というかコンセプトは、
仕事人間と専業主婦みたいな感じだけどディアナはフツウに家事はできる設定。

ちなみにディアナは大戦に参加したら普通にさくっと撃破王取れる実力があるらしい。

30 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:02:33.090 ID:7MO0iTZI0
――――ある日、ディアナは狩りの依頼を受けある山に来た。
標的はある【天狗】―――。人間を獲って喰うらしく、近隣の里の住人が多数死体で見つかったという。
また、きれいだと言われている女は死体すらも見つからないらしい。
里には【天狗】に立ち向かえる人間も居ないため、里の人間の一人が依頼し、ディアナがそれを果たしに行ったのだ。

31 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:02:54.063 ID:7MO0iTZI0
ディアナは武器を懐に仕舞い、険しい岩山を身一つで登って行った。
山の中腹に辿り着いた時、何者かが来る気配を感じ、ディアナは、さっと岩陰に身を潜めた。

32 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:13.850 ID:7MO0iTZI0
ディアナ「………」
上空で、銀髪の天狗が一匹羽ばたいていた。

顔は優男といった風で、一見人喰い天狗の様には見えなかった。
だが、直感的に彼の人が狩る対象だと察知した。


33 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:26.443 ID:7MO0iTZI0
奴からは、血の匂いが―――拭っても消せぬ、命を奪った者だけが分かる独特の匂いがしたからだ。
ディアナの隠れ家には禊をする場所があり、ディアナは毎晩禊をしている。

それは、狩る対象に、自身の匂いを気取られないためだ――。
だが、それでも、時々幾つもの修羅場を経験した獣は、命を奪ったディアナを察知することがある――。

ディアナはマタギとして数々の狩猟をこなし、其れを知っていた。
そして何時しか、ディアナもその血の匂いを理解できるようになったのだ―――。

34 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:48.270 ID:7MO0iTZI0
ディアナは、身を隠しながら、恐らく奴の棲家で在る山の頂上へ登って行った。
其処には、天狗の隠れ家らしき洞穴があった。

ディアナは様子を伺い、中で聞こえる声に耳を傾けていた。

男の声「オラぁッ!いつ産まれるんだァ!さっさと産めっ、このアマァ!」

女の声「っ……うっ、うっ………」

男の声「けッ、俺が帰ってくるまでに産まなかったら、腹の子もろとも殺して喰うからな…
    そして、また里の人間でもさらってやるさ」

35 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:05:12.037 ID:7MO0iTZI0
ディアナ(……標的で、合っているな)

そして、ディアナは洞窟の入り口の近くで身を潜め、
肩を怒らせて外に出た天狗が外に出たのを見て、懐に隠した銃を抜き、天狗の頭を撃ち抜いた。

ディアナ「………脈もなし、息もなし、念のために首の骨を折っておこう……」
そして、天狗が死んだことを確認し、洞穴の中へ入って行った。

36 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:05:31.034 ID:7MO0iTZI0
洞穴の奥には、散らばった人骨、そして、赤ん坊を抱えた女が居た。

女「だ、誰っ……?」
女は怯えた表情で、ディアナを見つめていた―――。

ディアナ「俺は、ディアナ……
     里の人間に頼まれて、天狗狩りをしに来たマタギだ」

女「えっ……
  ま、まさか……あ、あいつを……」

ディアナ「此の手で殺したよ――
     失礼かもしれんが、洞穴に入った時に、会話が聞こえてね

     それで、奴を狩るべき対象と認識した」

37 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:06:38.726 ID:7MO0iTZI0
女「あ、ああ――――
  やっと―――やっと、誰も喰われることが、無くなるんだ――

  ありがとう―――ディアナ、さん……」
女は安堵した表情を見せた。

ディアナ「……そうなるだろう
     ところで、貴女(アンタ)と、その赤子は如何するのかな……

     其の身体では、山を一人では下れんだろう
     俺が手を貸そうか――?」

女「………あ、あの」

ディアナ「ん?」

女「わたしは、もう――もう、疲れてしまいました
  どうか、この赤ちゃんだけ―――赤ちゃんだけを、下山させて……」

38 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:06:56.806 ID:7MO0iTZI0
ディアナ「貴女は、此処で死ぬ――と言う事で、いい?
     それと―――その赤ん坊は、里の誰に渡せばいいのか教えて欲しい」

女「はい……
  でも、赤ちゃんはあいつとの子……だから、羽が生えている……

  里の人は、天狗に恐怖しているし、恨みを晴らすかもしれないから…
  別の、安全なところに、送り届けて……」

ディアナ「分かった―――
     そして――此処で、俺は貴女にとどめを刺すが――それでいい?」

ディアナの問いに、女は無言で頷いた。
ディアナは懐の銃を抜き、一発の弾丸で女を撃ち殺した。
そして、産声をあげている赤子に目をやった。

39 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:07:17.604 ID:7MO0iTZI0
ディアナは、その赤子を拾い上げると、不思議なことに気が付いた。
ディアナ「此の天狗の赤子―――両目の色が、違っている―――
     異相の子、か………」

其の後、ディアナは天狗の赤子を棲家へ持って帰った。

40 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:10:14.388 ID:7MO0iTZI0
ネプトゥーン「お帰り、無事に済んだんだ……え、えと…この赤ちゃんは?」
ネプトゥーンは、突然のことに面食らい、困惑した表情をしていた。

ディアナ「俺が狩りに行った人喰いの天狗が、女に産ませたものらしい―――
     女に赤子を頼まれた―何処か安全な処に送り届けて欲しいと―――」

ネプトゥーン「そうなんだ……で、この赤ちゃんを…どうするの?」

ディアナ「この赤子は、適当な天狗の里に送り届けるのもいいかもしれん――
     だが偶然、俺と出会った―――これも一つの運命だ、と俺は思った

     ならば、何かの縁ということでこの赤子を、育てようと思って、ね―」
ディアナは、優しい表情で赤子を見ていた。

ネプトゥーン「そういうことなら、問題ないよっ
       それに、わたしたちじゃ、子供はできないし―――」
ネプトゥーンは、ディアナの表情を見て、さらに彼女が好きになった。
少し顔を赤らめ、照れた表情を見せながら大きく頷いて、赤ん坊を撫でてあげた。

41 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:10:47.945 ID:7MO0iTZI0
二人は、天狗の赤子を育てることにした。
永久に生きる運命を背負わずに独り立ちさせる為に、余計な事をする【ザン】の血は、使わずに―――。

名は、アポロと名付けた―――。

42 名前:社長:2016/10/02 20:12:21.375 ID:7MO0iTZI0
この天狗は天狗ヶ里殺人事件に出てきた天狗の仲間という裏設定があるらしい
ちなみにまだ姿形出てない百合神様なら式神を使ったおとり作戦を使いそう。

43 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:21:22.352 ID:jaKMg8Jg0
赤子はすくすくと育ち、美しい銀色の髪と、右に琥珀色の、左に翡翠色の瞳を持つ少女になった。
純粋無垢で明るい性格の少女に―――。


アポロ「ねぇ、この恋物語―――胸をわくわくさせるね…
    僕も、この話の様な、綺麗な恋がしたいな……」

読書が好きで、色々な本を読む度に顔を明るくし、その魅力を伝える子。


ディアナ「―――
     ―――――という方法で、此の様にして、獲物を狩った……」

アポロ「成程……やっぱり、獲物の視点で視ると言うことが需要なんだねっ」

また、ディアナの【仕事】の話も聞き、其れにも興味津々の様子だった。


44 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:23:33.690 ID:jaKMg8Jg0
アポロ「う、どうして出ないの……どうしてっ
    精神力を引き出す―――引き出しても、まったく何も使えないのっ――?

    僕は、僕は、天狗として………」

ネプトゥーン「落ち着いてっ……
       焦らないで……わたしたちは、見棄てないからっ…」

だが――アポロは天狗でありながら、空を飛ぶことが出来なかった。
天狗というものは、風の術を用いて空を飛ぶ生き物だが、アポロは何故か、風の術を使うことが出来なかった。

アポロは羽の生えた人間、といえる存在だった。
天狗の里では、不具の者――ずっと飛ぶことのできない者は要らないと、殺す処も多いと聞く。

独り立ちをさせたくとも、難しい―――。

45 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:23:47.929 ID:jaKMg8Jg0
アポロ「ねぇ、ディアナ、ネプトゥーン……僕は……」
ネプトゥーン「大丈夫―――ずっとわたしたちの処に居てもいいから、ねっ」

ディアナとネプトゥーンは、アポロとずっと暮らす事を決めた。


46 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:24:20.407 ID:jaKMg8Jg0
三人は、まるで親子のような関係になっていた。

最も、親にあたるディアナとネプトゥーンは両方とも女だから、一般的な親子とは、少しだけ違うけれども―。

47 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:25:07.217 ID:jaKMg8Jg0
アポロが9歳の頃、旅をしようと三人は色々な処を巡った―――。

そして、とある街に辿り着いた。
街は平和で活気に溢れ、いい宿もあったので、其処を拠点に数日間滞在することにした。

48 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:26:57.659 ID:jaKMg8Jg0
ディアナは武器を買うために一度二人から離れ、ネプトゥーンとアポロはその間、街をぶらぶら歩いた。
―――そんなとき、二人の前に少年たちが現れた。


少年達は、アポロのその眼を見て、「呪われた奴がいるぞ」などと声を荒げ、仕舞には石を投げようとした。
ネプトゥーンは、さっとアポロの前に立ちはだかろうとした―――が、その前に一人の少女が大声を出していた。

49 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:28:57.433 ID:jaKMg8Jg0
少女「―――やめなさいっ、あなたたちっ!」

アポロぐらいの歳の、短めの髪の、美しいみどりの黒髪の、百合の綺麗な髪飾りをした少女が、アポロの前に立った。
どうやら、少女には、少年達は敵わないらしく、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

50 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:29:47.242 ID:jaKMg8Jg0
ネプトゥーン「あ、助けてくれたの…ね、助けてもらってありがとう……
       何とかしようとしたら、貴女が来てくれて、助かったわ
       よそものだから、もし何かやらかしたら、問題になるかもしれないし」
ネプトゥーンは礼の言葉を告げた。

少女「いいんですよ、これぐらい…あいつら、けっこう悪がきで…さっきのも、からかうためにやったのとは、思うんですけどね」
少女は丁寧にネプトゥーンにお礼を言いながら、少年達が逃げて行った方向を見つめた。

そして、アポロも「ありがとう」と、少女に礼を言った。
ネプトゥーンは、其の後、少女と共に喫茶店で休息することを決めた。

51 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:35:00.903 ID:jaKMg8Jg0
アポロと少女――その名はユノ――は、偶然にも同い年だった。
それが故、話も弾み、ネプトゥーンはその様子をにこにこしながら眺めていた。
しかし、その時間は永遠と続かず―――やがて、空が茜色に染まるころには、ユノも家に帰らねばならなかった。

アポロは、まだまだ、ユノとの触れ合いが足りないと思ったのか、ユノに言った。
アポロ「僕たち、しばらくこの街にいるから、ね?一緒に、またお話ししよう?」

ユノ「―――え……うん、わかった、いいよ!」
ユノは、その発言に呆気にとられたようだったが――すぐに、にっこりと笑って、快諾してくれた。

52 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:36:18.937 ID:jaKMg8Jg0
ネプトゥーンとアポロは宿に帰り、ディアナにユノとの出会いを話すと、
ディアナ自身がアポロを守れる位置に居なかったことを自省していたが、アポロとユノとの友情が芽生えた事を祝福してくれた。


53 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:37:35.444 ID:jaKMg8Jg0
そして翌日から、アポロとユノは一緒に遊んだり、話したりするようになった。
ユノは、この街の市長の娘だという―――だから、恐らく件の少年達も逃げたのだろうか。
家族は市長である父と妹ひとり――それと、家政婦―――ユノの母親は、妹を産んだ時に亡くなったという。
彼女の記憶にある母親は、神に仕えるもののような雰囲気を持っていた人らしく、その血が受け継がれているのか、彼女の髪もそう見えた。

また、市長は人柄のいい人物らしく、この街が平穏に保たれているのもその為らしかった。

54 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:40:00.661 ID:jaKMg8Jg0
其の様子を、ディアナとネプトゥーンは見守っていた。
けれども、ユノは人間、アポロは天狗―――アポロの服装は、羽が服装の一部に見えるような服を着ていたから違和感はないけれど、仲が深くなればいずれ分かる。

二人は、此の幸せな時が永久に続かない事に悩みながら、楽しそうなアポロとユノを見守っていた。

55 名前:社長:2016/10/22 01:42:14.527 ID:jaKMg8Jg0
某エヴァーグリーン・ソーマ氏の許可は得ています!

56 名前:社長:2016/10/22 01:54:00.221 ID:jaKMg8Jg0
アポロ
・身長  :132cm
・体重  :30kg
・スリーサイズ:62-49-67
・髪色  :銀
・目の色 :右眼は琥珀色、左眼は翡翠色
・利き手 :左利き
・一人称 :僕
・得意なこと :本を読む事、そして得た知識で思考する事。
・不得意なこと:天狗の風の術

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/886/Apollo.jpg


―アポロは風の術が使えない。
ヤミや、他の話で出てきた天狗は風の術が使え、その力も使って空を舞っている。
何故使えないのか―――それはもう少し先でわかるが、一体如何して、彼女はそうなのか―――。

若しかすれば、天狗と人の間から産まれた子のためなのだろうか?
其の真の理由は、だれにも分からない……。


57 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:32:00.438 ID:EkIxVLm.0
数日が経った。
―――そろそろ街を発たねばならぬ時が来た。

アポロは、永遠に居るという選択肢も考えたが、アポロは自身が天狗で在る事を考え、街を出る事を決めた。


そして、ディアナとネプトゥーンにこの街を経つ前日の日――、ユノに、自身が天狗で在ることを告白していいか―と問うた。
二人は、ユノが秘密を絶対に洩らさないこと――それを約束することを条件に、許可した。



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