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ユリガミノカナタニ2
- 1 名前:社長:2016/09/04 00:44:24.091 ID:PNG5mMkE0
- 邪神スピリットJ あらすじ
鬼のマタギ、ディアナは人魚を狩る狩人を殺すとともに、襲われかけていた幼い人魚ネプトゥーンを助けた。
そして数十年後―――再び狩人を殺したディアナだが、最後の一人の自爆で大怪我を負って海の底に沈んでしまった。
そこには、ネプトゥーンの親が治める竜宮があり、ディアナも人魚の肉を狙った存在と勘違いされた。
それをネプトゥーンは訂正しようとしたが聞き入れられず、ディアナを助けて駆け落ちしようとした。
ディアナに人魚の血を飲ませ、傷を癒したネプトゥーン。
ネプトゥーンは助けられた時から好きになったとディアナに告白し、二人は逃げることにした。
そして―――無事に逃げ、海岸まで上がることができた。
- 459 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:13:54.114 ID:8C40QCWk0
- ユピテルは、其れと同時に其の身をぐったりと地に伏せ、起き上がる事はなかった。
其れと同時に、ユピテルの式神の残党は全て消え失せた。
鈴鶴「力を…使い果たしたか―――」
イサナ「ユノの魂がなければ、元は唯の緑色の悪魔―――ということみたいね」
- 460 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:14:49.525 ID:8C40QCWk0
- ヴェスタ「おねえちゃん―――」
ヴェスタは、ふるふると震えながら鈴鶴を見つめている。
鈴鶴「ユノの魂は、わたしの中に在る―――
すべては……終わった―――」
ヴェスタ「おねえちゃんっ……やった、やったんだね……」
ヴェスタは泣きながら鈴鶴に抱きついた。
ヴェスタ「嬉しさとか、感動とかが、色々と溢れて―――わたし―――」
鈴鶴「待って―――まだ一つ残ってる―――」
ヴェスタが言いきる前に、鈴鶴は向こうを見ながら、言葉を遮った。
- 461 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:15:15.602 ID:8C40QCWk0
- イサナ「【鏡】のことね―――」
ヴェスタ「あっ――――!」
イサナの冷静な言葉に、ヴェスタは涙が止んだ。
鈴鶴「ふむ―――此れが【鏡】か―――」
鈴鶴はユピテルの持っていた【鏡】を拾い上げた。
其れは烏らしき鳥の骨が周りに付いた、よく磨かれた鏡だった。
ヴェスタ「ふぅ―――
でも、これ、どうするの?」
イサナ「わたしが持っておく―――
わたしは――――太陽の女神の血も混ざっているから―――
ヴェスタも混ざっているけれど、濃さなら一応わたしの方が濃いし―――ね」
鈴鶴「―――それが、適任ね」
ヴェスタ「わたしも、賛成―――」
イサナ「ならば―――」
イサナは【鏡】に祈りを捧げた。
【鏡】はまるで在るべきものを見つけたように、すぐにイサナの身体に取り込まれた。
- 462 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:15:39.889 ID:8C40QCWk0
- イサナ「――――!?」
そして―――気が付くと、霊体であったイサナに肉体が出来ていた。
―――ふと、イサナは語り出した。
イサナ「わたしの身体は―――もともと出来損ないの、肉片だった――――
太陽の女神がよこした肉片―――もう、海の底とヴェスタの中に消えた肉塊―――
けれど―――今は、完全にわたしとして存在している
きっと、これは【鏡】の奇跡―――
わたしは、もう鈴姫の【力】にしがみ付かなくても―――生きていける…」
イサナは、少し残念そうな顔をした。
けれども、鈴鶴はそんなイサナの手をぎゅっと握った。
鈴鶴「ずうっとわたしと一緒にいたひとが、わたしから離れて立っている……
少し……変な気分だけれど―――
こうして、肌の温かさが分かるなら――――それも、また」
そして、そう言った。
ヴェスタ「おねえちゃんが、おねえちゃんとしての姿を取り戻した―――
鈴鶴おねえちゃんのおねえちゃんが蘇った―――
今から、ユノおねえちゃんを蘇らせることを考えると、
なんだか…鈴鶴おねえちゃんとわたしはいっしょ……だね」
ヴェスタは、鈴鶴のもう片方の手を握った。
- 463 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:18:04.096 ID:8C40QCWk0
- 鈴鶴「……早く、ユノを蘇らせよう
眠り姫を―――目覚めさせよう―――」
ヴェスタ「おねえちゃん―――ユピテルはどうするの?」
鈴鶴「そうね―――わたしが、止めを刺しましょう―――」
そして―――。
鈴鶴「はぁああ――――――っ!」
鈴鶴は黄泉剣でユピテルを細切れに切り刻み、海の中へ投げ棄てた。
もう、神器を求める愚か者は居ないだろう。
全ての神器は、神の血を引き継ぐ乙女の中にあるのだから―――。
鈴鶴「さ、帰りましょうか――――」
ヴェスタ「うんっ!」
イサナ「え―――」
そして三人は、一枚岩から離れた―――。
此処に、二度と戻ることはない。
元々、此処はユピテルが封じられていた、其れ以上の事はないのだから。
- 464 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:24:13.595 ID:8C40QCWk0
- ――――。
鈴鶴の屋敷に鈴鶴達が帰ってきた時、アポロは感涙して鈴鶴達に駆け寄った。
アポロ「おかえりなさいっ!!」
その眼からは大粒の涙が流れていた。
アポロに続いてやって来たディアナとネプトゥーンも、鈴鶴達の様子を見て直ぐに全ては終わったと確信した。
ディアナ「鈴鶴…有難う―――
奴への決着をつけてくれて」
ネプトゥーン「無事に帰ってきてくれて、よかった……」
鈴鶴「まだ、終わってない―――魂を戻すまでやらないと―――願いは叶っていない」
ディアナ「そうだったな―――」
ディアナ達は、早とちりした事に少し照れの感情を見せていた。
- 465 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:26:12.699 ID:8C40QCWk0
- 鈴鶴は、早速眠り姫となったユノの傍らに座った。
アポロ「あぁ―――ようやく―――ずうっと待っていた、此の時が来るんだね……」
鈴鶴「ええ―――
では、行くわよ」
鈴鶴は再び構えを取り、ユノの中に在るべき魂を入れた。
- 466 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:29:14.319 ID:8C40QCWk0
――――。
- 467 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:31:25.955 ID:8C40QCWk0
- ユノ「――――」
ユノの、鍵のかかったように閉じられた眼は、開いた―――。
ユノの黒い瞳が、ぼうっと辺りを見ていた。
其の眼を見て、鈴鶴は―――自身が封じられた時の事を思い出した。
自身を封じたあの少女の―――面影があると。
自身を封じたあの少女こそが―――ユノとヴェスタの母親であると、鈴鶴は悟った。
運命の糸は、自身が邪神となった其の時から、結い合わされていたのだと―――鈴鶴は悟った。
ユノ「わたしは―――お家が燃えて、怖い人が迫ってきて―――
????」
ユノは、きょろきょろと辺りを見回し、自身の手を見ていた。
ユノ「あれ―――アポロちゃん……?」
そして、アポロの存在に気が付いたようだった。
- 468 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:40:00.348 ID:8C40QCWk0
アポロ「あ……目覚めた―――目覚めたんだ―――
ユノちゃんっ!!」
困惑するユノに、アポロは涙を流しながら抱きついた。
ユノ「もうっ、そんなにきつく抱きしめないでっ、痛いよっ」
アポロ「あっ、ごめんねっ…嬉しすぎて、つい…」
ユノ「あはははははっ」
アポロとユノは、少しの間笑い合った。
- 469 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:42:26.749 ID:8C40QCWk0
- ユノ「でも―――此処は、何処?
それに―――知らない女の人が、ひとり、ふたり―――
……ヴェスタ?」
ユノは冷静に周りを見ていると、自身の妹を見つけ、その名を呼んだ。
ヴェスタ「あ―――おねえ、ちゃんっ…」
ヴェスタも、ユノの傍らに近寄った。
ユノ「ヴェスタ……背、伸びた―――?」
ヴェスタ「おねえちゃんと、一緒ぐらいだよ…」
ユノ「んーーっ?でも、変だなぁ…わたしの方がお姉ちゃんだから、
わたしももっと大きくなってるはずなのに―――」
ヴェスタ「その―――それは―――」
ユノの疑問にどう答えようか、ヴェスタはあたふたしていた。
- 470 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:42:37.210 ID:8C40QCWk0
- 鈴鶴「それは、わたしが話そう―――」
けれど、鈴鶴はヴェスタの手を取り、ユノの前に座った。
ユノ「えーと……」
鈴鶴「わたしの名は鈴鶴―――
……信じられないかもしれないが、貴女に起こった事を―――今から話そう」
ユノ「わたしに…起こった事?」
そして鈴鶴は語り始めた。
ユピテルという緑色の悪魔がユノ達の家を燃やしたことを。
ユピテルに魂を奪われ、ずうっと眠り続けていたことを。
ヴェスタとの出会い、一時の別れ、そして再会を―――。
ユノを助けるために、幼い身体でずっと眠り続けていたことを。
そして、ユノの魂を今、鈴鶴が居れ、目覚めたことを―――。
- 471 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:42:49.395 ID:8C40QCWk0
- ユノ「――――
そっか……」
ユノは、信じられないようなその話を、あっさりと受け止めた。
ユノ「お父さんや―――お手伝いさん―――もう、ずっと昔に死んじゃったのか
でも―――もし、【鏡】のことを話さなければ…こうなってはいなかったのかもしれないな」
ユノは少し後悔した表情で、空を見つめていた。
アポロ「そんなことは、ないよ…
全ては、悪い奴が居たから―――
あの時、誰にも聞かれないように、ディアナとネプトゥーンが見てた―――
でも、その死角で態々聴いていた奴が居た―――
悪意のある奴が、予めユノちゃんを狙っていたから―――だから―――」
けれども、そんなユノの手を、アポロはぎゅっと握ってあげた。
ユノ「ありがとう、わたしを慰めてくれて……」
- 472 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:45:33.126 ID:8C40QCWk0
- アポロ「ううん……其れに、大人になれなくても、再会できるという約束を果たせた―――」
ユノ「ありがとう、ずっとわたしを―――面倒見てくれて
それからディアナさん、ネプトゥーンさんも―――わたしを守ってくれてありがとう」
ディアナ「気にすることはない―――」
ネプトゥーン「どういたしましてっ」
ユノ「鈴鶴さん、イサナさん、そしてヴェスタも…わたしの事を助けてくれてありがとう」
それから、しばらくの間、全員で色々な話を語り合った。
世の中の動き――。
ディアナとネプトゥーンの出会い、そしてアポロとの出会い―――。
また、ヴェスタと鈴鶴との出会いについて―――。
- 473 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:45:43.240 ID:8C40QCWk0
- 其の中で、ディアナ達は鈴鶴に頼みごとをした。
ネプトゥーン「その―――鈴鶴に、お願いがあるのだけれど」
鈴鶴「なに…かしら?」
ディアナ「鈴鶴―――
アポロとユノに、あの隠れ家は狭すぎる―――
かといって、信頼できる奴も見当たらなかったから、ずっとあそこで暮らしていたが―――
鈴鶴は、信頼できる…
それに、ユノにとって、ヴェスタも居た方がいいだろう―――
アポロとユノを、此の家で住まわしてくれないか―――?」
アポロ「えっ?」
アポロは困惑していた。
ディアナ「お前たちは、本来は餓鬼だ―――
身体は育たんから、正確には違うところもあるが…
あの隠れ家で過ごすのには、似合わん―――そういうことだ」
- 474 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:46:44.206 ID:8C40QCWk0
- 鈴鶴「此の家はわたしたちだけでは広すぎるから、構わないけれど……
ディアナとネプトゥーンは……此処には残るつもりはないの?」
ネプトゥーン「え―――?」
鈴鶴「アポロにとっても―――貴女達の存在は、大切でしょう
親代わりといっていい存在でしょう―――
其れに―――此れはわたしの考えだけれど、桜花の様に百年の生きられないならまだしも、
貴女達は共にザンの血を分けた存在―――其の運命を分け合ったのなら、
ずっと―――居た方が………幸せかも、しれないから……」
アポロ「その……僕も、その意見と同じこと、思っていたの…
だから…お願い、ディアナ達も…此処で暮らさない?」
ディアナ「………そうだな
俺たちも、落ち着いた方がいいかもしれん
―――此処に住むことにしよう」
ネプトゥーン「わたしも―――
同じだよ」
鈴鶴「話は、決まったわね―――」
語らいは続いた――――。
- 475 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:46:54.152 ID:8C40QCWk0
- 鈴鶴「さて―――わたしは、もうひとつやらなければならない事があるから、席を外すわね」
鈴鶴とイサナは、皆が語らい合う光景を微笑みながら見其の場を立ち去った。
ヴェスタ「あ、おねえちゃん―――」
ヴェスタが、其の後を追い掛けてやって来た。
鈴鶴「……なに?」
ヴェスタ「わたしも、手伝うよ―――
おねえちゃんが運命を分け合った、其の人達に触れないと、
わたし、後悔するかもしれないから―――」
鈴鶴「ありがとう―――」
- 476 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:53:54.819 ID:8C40QCWk0
- ――――。
鈴鶴は、再び【ハートスワップ】の構えを取っていた。
同時に、イサナとヴェスタは、ヤミ達の肉体を引っ張り出していた。
鈴鶴は、黄泉剣の中にヤミ達の肉体があると考えた。
彼女たちが最後に触れたものが其れだから―――。
けれども、其の肉体は黄泉剣ではなく、【勾玉】の中に―――。
黄泉剣は確かに、神をひとり殺せるほどには力の強い神剣だ。
しかし―――真の強さは、其の漆黒の斬撃といった数々の奇跡は、勾玉によって支えられている。
【勾玉】は力の塊―――其れは【創世書】を創るにも十分なほどに在る。
- 477 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:55:01.136 ID:8C40QCWk0
- 【勾玉】の中にある魔力の海を、イサナがドロドロ化の能力でかき分けながら其の肉体を掴んでいった。
ヴェスタは、取り出された肉体を――ユノのように眠っている其の身体を、丁寧な姿勢に直していた。
鈴鶴「はっ―――!」
そして、鈴鶴は、彼女たちの魂を其の肉体に移した。
暫くの時間が経った。
鈴鶴もイサナもヴェスタも、不安な様子で眠っているヤミ達を見ていた。
- 478 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:55:13.539 ID:8C40QCWk0
- ヤミ「鈴鶴さま―――」
シズ「―――」
フチ「あ―――」
そして―――彼女たちは目覚めた。
鈴鶴「あ――――」
ヴェスタ「やった…やったね、おねえちゃん―――」
鈴鶴とヴェスタは、感極まって、大粒の涙を流していた。
イサナ「鈴姫―――
やっと―――取り戻すことができた―――」
イサナも、その眼に涙を浮かべていた。
- 479 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:57:38.530 ID:8C40QCWk0
- ヤミ「あの時、斬られてから―――わたくしたちは、ずうっと―――鈴鶴さまを見ていました
すでに死んだようなものだから、鈴鶴さまを見守るだけでも良かったけれど
こうして、また鈴鶴さまと触れ合える日が来るなんて―――」
シズ「鈴鶴―――わたし達を蘇らせてくれて―――有難う
イサナ―――わたし達は知らなかったが、ずっと鈴鶴を守ってくれて有難う
それから、ヴェスタ―――色々な事を全て見たが、其れでも―――
鈴鶴に楽しい日々を与えてくれて、有難う」
フチ「その……蘇らせてくれてありがとうっ
それから――――ヴェスタ!
あなたは、鈴鶴と出会ってまだ数年ちょっとでしょう?
鈴鶴の事、まだまだ知らないでしょうから―――いっぱい教えてあげるねっ」
彼女たちらしい感謝の言葉が、鈴鶴達に伝わった。
鈴鶴は、此の時一つの事を思った―――。
あの時、ヴェスタの母親であろう、あの人に、あの言葉を言われて―――。
その通り、百合神として生き―――。
自分にとって、陽たる流れになるように、百合神として務めた。
- 480 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:57:51.991 ID:8C40QCWk0
- 其れは、取り戻したかったあの日常を取り戻すことに繋がった。
あの時、戦闘術【魂】を学ぶ時の言葉―――すべて陰陽のもの―――。
既に理解していた其の言葉を、改めて実感した―――。
鈴鶴「さ、みんなのところに戻りましょう、そして―――紹介しなきゃ、ねっ」
鈴鶴は涙を拭い、ユノ達の居る場所へと歩き出した―――。
庭の百合の花が、その様子を祝福しているように――風に吹かれて揺れた。
――――。
―――。
――。
―。
- 481 名前:すべて陰陽のもの Another:2017/05/22 00:58:20.169 ID:8C40QCWk0
すべて陰陽のもの ルートB完
- 482 名前:社長:2017/05/22 00:58:38.826 ID:8C40QCWk0
- タイトル回収
- 483 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:35:48.113 ID:eQfN5MIo0
- わたしは、わたしのおねえちゃんを助けることが、できた―――。
実姉である、ユノおねえちゃんを。
- 484 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:36:00.339 ID:eQfN5MIo0
- ユノおねえちゃんは、血を分けた姉妹だけれども、目の色も髪の色も、わたしとは違う。
彼の人は、5年ほど―――物心ついた時からすれば、僅かな時間だけ―――わたしの事を気にかけてくれた。
―――わたしが5歳のとき、ユノおねえちゃんは、ユピテルという緑色の悪魔によって魂が奪われていた。
其れから、気の遠くなるぐらい長い刻、ずうっと―――眠り姫として、ディアナ達に保護されていた。
- 485 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:36:59.096 ID:eQfN5MIo0
- ……けれども、其のような悲劇はもうない。
わたしは―――たいせつな、だいすきな、鈴鶴おねえちゃんと共に―――ユノおねえちゃんを助けだせた。
そして―――、ユノおねえちゃんが蘇ってから……わたしたちは、幸せな日々を送っている。
- 486 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:37:15.011 ID:eQfN5MIo0
- ―――ユノ、おねえちゃん。
わたしのほんとうのおねえちゃんは―――昔、わたしたちが暮らしていたように―――日々を楽しく生きている。
とうに育つことのない、幼い身体だから、外の世界でずっと生きることはできないけれど――。
ときどき、遊びに出て――色々な事を学んで――世界を見て―――そうやって、生きている。
- 487 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:37:42.130 ID:eQfN5MIo0
- ―――ディアナ。
彼女は、あれからもずっと…マタギとして生きている。
一匹狼のマタギとして―――時折、仕事をやっている。
けれど、ユノおねえちゃんを助ける以前に比べれば、その量はずいぶんと少ない。
その理由は―――ネプトゥーンと長い時間居るためだ。
ディアナは、ユノおねえちゃんを、アポロを、ネプトゥーンを守る為、マタギとしての仕事を数多くこなし、路銀を稼いでいた。
今や、ユノおねえちゃんとアポロの事は、ディアナ達だけではなく、鈴鶴おねえちゃん達も護る事が出来る。
だから、節操なくマタギの仕事を引き受ける必要はなくなったのだ。
勿論、家族が多いから、その分金はかかるけれど―――ディアナだけが、稼ぎ頭というわけではないから―――。
- 488 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:43:45.118 ID:eQfN5MIo0
- ―――ネプトゥーン。
彼女は、ディアナと同じマタギとなった。
最も、彼女はザンであるから、そう容易く仕事は出来ない。
けれども、ディアナ一人では難しい依頼に対して、ディアナと協力して仕事をしている―――。
其の【力】を最大限利用し、見えない敵にも迫る彼女は、ディアナとは違う方向性で強い。
好きな人と力を分け合って先に進む関係が―――わたしは、素敵だと思っている。
- 489 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:13.296 ID:eQfN5MIo0
- ―――アポロ。
ユノおねえちゃんを好いている彼女は、ユノおねえちゃんの恋人となった。
飛べない天狗であろうとも、同じ性であろうとも―――彼女は其れを気にしない。
わたしが鈴鶴おねえちゃんと和解したその日、アポロからユノおねえちゃんとのなれ初めを聞いた。
その短い想い出を、ずっと忘れないで、ずっとユノおねえちゃんを見守ってくれたアポロ。
そんな人と一緒になれて、ユノおねえちゃんは―――わたしと同じように、素敵な人と結ばれたのだと感じた。
- 490 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:28.657 ID:eQfN5MIo0
- ―――ヤミ。
幼い鈴鶴おねえちゃんを育てた、義理の姉のような存在―――
わたしにとっての、鈴鶴おねえちゃんのような存在―――。
そんな彼女は、屋敷でみんなの面倒を見ている。
時々、鈴鶴おねえちゃんと一緒にデートしたり、同胞たるアポロに天狗について教えたり―――。
わたしも、鈴鶴おねえちゃんが【仕事】のときは、ヤミと遊んでもらってしている。
- 491 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:44.827 ID:eQfN5MIo0
- ―――シズ。
鍛冶屋の彼女は――其の腕を大いに振るっている。
武器は勿論、金属加工品に関して、様々な場所に売っている。
其の技術は、世界の中枢たるきのたけ会議所にも十分認められ、きのたけ会議所は上客となっている。
最も、此の屋敷でそれらを売っているのではなく、鈴鶴おねえちゃんの知り合いの鍛冶屋でだけれど。
- 492 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:44:56.111 ID:eQfN5MIo0
- ―――フチ。
月の御姫様の御付をしていたという彼女――わたしたちぐらいの身体でも、しっかりとしている。
ヤミと同じく、みんなの面倒を見て――時には、わたしたちに色々なことを教えてくれる。
時には、恋の事も教えて貰う事もあって―――わたしは、その度に鈴鶴おねえちゃんと実践したくなって。
また、フチが復活した影響で、式神を召喚できる術を失って鈴鶴おねえちゃんの為に、
百合神への依頼がある時に、フチが協力している―――。
- 493 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:07.972 ID:eQfN5MIo0
- ―――イサナ。
【鏡】の力で身体を得た、鈴鶴おねえちゃんのおねえちゃん。
【鏡】の力で、わたしたちの住まう屋敷に結界を張り、維持している。
決して誰も入れず、誰にも認識できず、誰にも攻撃できない守りを固めている―――。
其処が永久の楽園であるために―――楽園の守り人として、ずっと過ごしている。
だから外には出られないけれど――でも、彼女は其れでもいいと言っている。
- 494 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:20.180 ID:eQfN5MIo0
- ―――鈴鶴おねえちゃん。
わたしのだいすきな、鈴鶴おねえちゃんは、変わらず――百合神として生きている。
たいせつなひとが復活したから、風の術と、鍛冶する力と、式神を生み出す術はないけれど――ー
イサナおねえちゃんが身体を得たから、ドロドロに溶ける術はないけれど―――
つらいことを乗り越えて、幸せになったおねえちゃんには、もう向かうところ敵はない。
心を削りとるような日々がなくなったおねえちゃんは、明るい笑顔を見せるようになった。
そして、わたしたちともしあわせに―――。
- 495 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:30.951 ID:eQfN5MIo0
- ―――もう、何があろうとも…
わたしたちは、絆の糸が切れることはない。
もう、わたしたちには―――不幸という、陰たるものは襲い掛からない。
わたしは、輝く、雲一つない青空を見つめていた。
其の太陽は、わたしたちを祝福するかのように、さんさんと輝いていた。
- 496 名前:エピローグ:百合咲き誇る楽園で:2017/05/28 17:45:42.694 ID:eQfN5MIo0
――完――
- 497 名前:社長:2017/05/28 17:46:23.674 ID:eQfN5MIo0
- ここまでかかるとは思わなかったユリガミSS完。
キャラを借りいろんな設定を盛りました。元となった設定などを作ったれいかちゃんと滝さんに感謝。
- 498 名前:社長:2017/05/28 17:49:33.002 ID:eQfN5MIo0
- ユノ
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/939/juno.jpg
ミネルヴァ
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/940/minerva.jpg
- 499 名前:きのこ軍:2017/05/28 21:15:32.001 ID:SxmJTPO.0
- 大団円やったぜ。長いこと本当におつかれさまでした。
- 500 名前:設定:2017/06/25 00:39:43.042 ID:zs9yol3k0
- ・鈴鶴
この物語の主人公。
讃岐造と月の王族の姫カグヤの娘。
父親から引き継いだものとしては、剣術と髪・目の色―――。
母親から引き継いだものとしては、その綺麗な髪質や女性的な身体、そして美しいその顔―――。
身長は165cm、体重は45kg。スリーサイズは89-61-85。
彼女は長い髪を持つ。その長さは、165cmほどあることは言うまでもない。
利き手は両方、和風っぽい趣味を好むけれど、しかし別の文化を好まぬということはない。
彼女は剣術に秀でているが、其れ以外の武術に関してもかなり強い。
其の腕前は、長年大戦で腕を鳴らした兵士を上回るほどに。
また、武術だけではなく、料理やら裁縫といった家庭的なものから、鍛冶などの技術にも優れる。
たった一つの苦手な事は、泳ぐ事のみ―――。
何故彼女はここまで完璧に近いのか。それぱ、彼女の心持にある―――
ひとつは、ヤミたちに其れを褒められたいから。
もうひとつは、身一人でなんでもできるようにしたいから―――。
男に頼らずとも生きることができる、彼女の心持がよく表れている。
彼女は、男が嫌いだ。
しかし、男と云う存在が嫌いなのであり、彼らが持つ技術などを否定はしない。
だから、積極的に男を滅ぼそうということはしない。
触れられること、自身の中に在る基準を超えて近寄ろうとすることが無い限りは。
最も、彼女が激しく絶望して男を滅ぼしにかかろうとしたことがあるが……。
また、彼女には最強の【力】がある。
其の【力】は、自身の操を汚そうとする男を吹き飛ばす力。そしてそれは、血液を介して伝染する(感染した能力がさらに別の人物に感染することはない)。
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- 501 名前:設定:2017/06/25 00:58:18.910 ID:zs9yol3k0
- ・ヴェスタ
抹茶売りの少女。元は霊歌ちゃんのSS Eden of the lily girlのキャラ。
霊歌ちゃんの許可を取って名前をつけユリガミでの設定をいろいろ追加したキャラクター。
金髪と蒼い目、赤い服―――マッチ売りの少女っぽい見た目。
父は、とある街の市長。母は、鈴鶴を封印した神職の少女。
母親は海神の血を引いているから、神の血を引くといえる。
姉にはユノがいる。
利き手は左、身長は130cmぐらい。体重は30kgギリギリいってないぐらい。
読書は趣味で、花が好きであり、心優しい性格をした少女―――。
レズっ気があり、攻め側。
女の子らしく甘いももが好きだけれど、一番好きなのは鈴鶴。
霊歌ちゃんのSSにならって、抹茶売りをしていて彼女は鈴鶴と出会った。
(抹茶売りになった経緯は、ユピテルの分霊によって操られ、神の力を持つものを探すためにさせられていたという設定がユリガミにはある。)
ユリガミSSでは出会った年齢が5さいであり、仲違いしたのはその5年という設定なので彼女は10さいである。(たぶん)
そしてその後封印され、復活して仲直りした際に鈴鶴の血で蘇ったことで、10歳の肉体で不老不死という状態である。
また、鈴鶴と仲違いした理由が自身に【力】がないことであるから、
鈴鶴を超えたいという願いがある。(ただし集計班の遺言で仲直りしてからはその願いは消えた。)
ユノを助け出した後は、鈴鶴たちみんなと仲良く暮らしたいという願いを持っている。
彼女は、もともとは【力】はない。
しかし、【創世書】や【剣】の力を吸い取って魔力を得ることができた―――。
【剣】の力を得、鈴鶴の剣術を見ていた彼女は剣術に関しては鈴鶴と同じほど強い。
何より、最強の式神ミネルヴァを召喚できるという点で、彼女は鈴鶴よりも強いといえる。
最も、ミネルヴァを召喚すると自身はまともに戦える【力】は残らないから、ミネルヴァを呼ぶことは賭けでもあったりする。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 502 名前:設定:2017/06/25 01:07:57.117 ID:zs9yol3k0
- ・ミネルヴァ
ヴェスタが【剣】の【力】を―オロチの瘴気を依代に召喚する式神。
ヴェスタの鈴鶴を超えたいという心境から出来ており、それを召喚する力を封印されている間に練り上げた。
身長は191cmぐらいだが、体重は瘴気で出来ているため分からない。
スリーサイズは105-59-97と、ぼんきゅっぼーん。グラマラスなところも鈴鶴に勝ちたいという思いがこもっている。(でもバストでディアナに負けてる)
全身に蛇模様の刺青が掘られており、その眼は月の民のように眼球が黒く、瞳が青白い。
緑色の髪色と猫耳を持つ。これは、彼女がある種の緑色の悪魔(オモラシス)であることを示すことにもなる。もっともオモラシスと違って汚くないが。
彼女の戦闘スタイルは単純。殴る蹴る叫ぶと超原始的な戦い方。技術は一切ない。
しかしその力が恐ろしい。殴り蹴ったものは爆ぜ、自身の咆哮は実態を持たない式神は消し去り、実態がある存在でも震えや恐怖を感じるほど。
霊歌ちゃんのSSの言葉を借りるなら、
目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。
あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。
軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。
そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。
これに尽きるのだ。
しかしそんな彼女にも一応の弱点はある。
式神であるため、それを使役する本体(ヴェスタ)が力尽きると消滅せざるを得ない。
Aエンド後のヴェスタならともかく、其れ以外のヴェスタは彼女を召喚すると大立ち回りが出来ないので、彼女がやられやすいという弱点がある。
また、アポロのように魔法を無効化する相手にダメージを与えることが出来ない。
逆に言えば、其れ以外の要因で彼女を倒すのは非常に難しい。
なんと設定上は、本気を出した魔王791並のパワーを秘めていることになるのだ……。
- 503 名前:しずかなこいのふちで:2017/09/16 02:21:50.314 ID:88boJ95A0
- 全てが、終わった。
あたしたちがずっと眠り続けたこと、ヴェスタやユノを救ったこと――――。
あたしたちは平穏に暮らしていた。
平穏に暮らす日々は、鈴鶴の屋敷を中枢に、外界でも営んだ。
- 504 名前:しずかなこいのふちで:2017/09/16 02:24:08.988 ID:88boJ95A0
- あたしとシズは、二人で遊びに出ることにしたのだ。
こうしてみれば、ずっとそばにいたけれど、身体を触れ合うということはずいぶんと久しぶりだ。
甦るまでは、ずうっと、魂だけが近くにあったから―――。
- 505 名前:しずかなこいのふちで:2017/09/16 02:32:43.210 ID:88boJ95A0
- フチ「ねぇ、シズ―――」
その日、あたしたちは、屋敷の花畑で寝転がっていた。
シズ「フチ、どうしたんだい」
フチ「シズの身体に触れられるのは、ほんとうに久しぶり―――」
シズ「わたしだって……フチの温かさを、久しぶりに感じられて嬉しい」
- 506 名前:しずかなこいのふちで:2017/09/16 02:36:52.981 ID:88boJ95A0
- フチ「小さいころ、ときどきこうやってふたりで寝転がったね」
シズ「あの時のように、またここでゆっくりと眠る?」
フチ「うん―――小さいころは、シズもあたしみたいに小さかったけれど―――」
シズ「身体が大きかろうと小さかろうと、一緒に居られる喜びは変わらないよ」
フチ「うん、そうだね」
そして、あたしたちはゆっくりと、百合の花びらに囲まれながら、昔を思い出して、お昼寝をした。
その時見た夢は、昔のように―――無邪気に笑うあたしたちの夢だった。
ああ、ずうっと―――こうやって絆の糸が紡がれている。
あたしたちは、ずうっとこの幸せをかみしめていた。
- 507 名前:名無しのきのたけ兵士:2017/09/16 02:37:11.737 ID:88boJ95A0
- やっつけシズフチSS。
- 508 名前:たけのこ軍 791の人:2017/09/16 09:00:34.618 ID:As8.sEUUo
- 早速更新されてて嬉しい!
ほのぼので幸せ
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