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ユリガミノカナタニ2

1 名前:社長:2016/09/04 00:44:24.091 ID:PNG5mMkE0
邪神スピリットJ あらすじ

鬼のマタギ、ディアナは人魚を狩る狩人を殺すとともに、襲われかけていた幼い人魚ネプトゥーンを助けた。
そして数十年後―――再び狩人を殺したディアナだが、最後の一人の自爆で大怪我を負って海の底に沈んでしまった。

そこには、ネプトゥーンの親が治める竜宮があり、ディアナも人魚の肉を狙った存在と勘違いされた。
それをネプトゥーンは訂正しようとしたが聞き入れられず、ディアナを助けて駆け落ちしようとした。

ディアナに人魚の血を飲ませ、傷を癒したネプトゥーン。
ネプトゥーンは助けられた時から好きになったとディアナに告白し、二人は逃げることにした。

そして―――無事に逃げ、海岸まで上がることができた。

253 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:10:04.719 ID:Pe0ksBgA0
ふと、ヴェスタが鈴鶴に尋ねた。

ヴェスタ「おねえちゃん……
     会議所に、【剣】は持っていった方がいい?」

ヴェスタは、肩にかけたハンドバッグの口を開け、【剣】を見せた。
ヴェスタを助けた後、【剣】はヴェスタが持つことになっていた。

曲がりなりにも神器で或る其れは、其れを一番持っていても問題ない者が持つのがいいと考えたからだ。
ちなみに、黄泉剣と違い、【剣】は神の身体からできたものではなく、蟒の尾に眠っていたもの。
其の為、身体に仕舞うということは出来ないため、ヴェスタが血の力を込めたハンドバッグを作ったのだ。

254 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/26 03:12:11.317 ID:Pe0ksBgA0
鈴鶴「そうね―――
   目的の一つとして必要でしょうから、持っていった方がいいわ」

ヴェスタ「どんな目的なの―――?」

鈴鶴「其れは―――」
鈴鶴はヴェスタの問いに答えた。

ヴェスタ「なるほど、そうか―――
     わかった、おねえちゃんっ」

そして、鈴鶴達は会議所へと向かった。

255 名前:社長:2017/03/26 03:13:24.118 ID:Pe0ksBgA0
一応すべて陰陽のものが最終話予定。

256 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:44:04.810 ID:6QMucJns0
――――。

百合神―鈴鶴が目覚める、遥か遥か前―――。

悪魔になり果てた人間に憑り付いた、蟒の魂の残滓が目覚めた。

いや、目覚めたというよりは、目覚めさせられた――の方が正しい。

緑色の悪魔ユピテルは、力を求めていた。
そして、この世を彷徨う魂を身体に得て、強さを得ようとしていた。

彷徨う魂を召喚する技を使い、偶然にも蟒の魂の残滓を召喚することができたユピテルは、早速其れを取り込んだ。
その強さは絶大――ユピテルは、雷を操る力を得、もともとあった頑強な肉体は更に強化された。


257 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:45:31.498 ID:6QMucJns0
だが、それでは足りなかった。
蟒の魂を得た時に、神器が或る事を本能的に悟ったからだ。

ユピテルは、それらを得て、世界を獲ろうと考えた。
そして、神器を―【勾玉】【鏡】【剣】を捜す旅へ出た。


長い刻が経過し―――。
とある街で、ユノと呼ばれる少女が【鏡】の話をしているのを耳に挟み―――、
自身の名前と相性のいい名前の少女との運命を感じ―――。
そして―――。


258 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:46:04.347 ID:6QMucJns0
――――。

きのこたけのこ会議所―――。
目的の人物の部屋で、鈴鶴とヴェスタは静かに立っていた―――。

扉の開く音―――。
その兵士は、灯りをつけた。

259 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:47:44.289 ID:6QMucJns0
791「!?」
流石の791も、一度戦った事のあるとの乙女と、見慣れぬ少女が部屋が居た事で、目を丸くして驚いた。

鈴鶴「ごめんなさい―――
   あまり目立ちたくないので、勝手に上がらせてもらったの……」

791「………」
791は、呆然とした表情で、少女を見つめていた。

260 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:48:42.873 ID:6QMucJns0
791「………」
791は、呆然とした表情で、少女を見つめていた。

791「この子は……いや……違う……」
ふと何かを呟いていたが、鈴鶴の方に向き直り―――、

791「私に……何か用?」
鈴鶴に問うた。

鈴鶴「あなたに聞きたい事がひとつ…頼みたい事がふたつ…これが用件ね」

791「ふーん、結構あるね…
   とりあえず、聞きたい事から言ってちょーだい」

261 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:49:39.720 ID:6QMucJns0
鈴鶴「……あなたは、遥か昔―――
   ユピテルという名の緑色の悪魔を、退治…というよりは、封印しなかったかしら……?」

791「………」
791は、その問いに少しばかり沈黙していた。
が、直ぐに答えを発した。

791「その通り…何処で知ったかは知らないけれど、確かに奴を封印したのはこの私だ
   逆に私から質問――如何してそんな事を聞くのか、教えて貰いたい」


262 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:50:23.570 ID:6QMucJns0
鈴鶴「そうね……奴は或る少女の魂を抱えているから、其れを取り戻す為に―――」
其の答えを聞いて、791ははっとした表情で鈴鶴を見つめた。

791「そう、なんだ……あの子を、助けるために……
   あの子、やっと助けられるんだ―――

   ところで、その子は―――」
そして、ヴェスタの方に目をやった。

263 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:52:01.065 ID:6QMucJns0
ヴェスタ「わたしは、ヴェスタ―――
     ユピテルが奪った魂は、わたしのおねえちゃん、ユノのものなんです…」

791「あの子の、妹さんか……
   ところで、鈴鶴…
   如何して、私が奴を封印したって…分かったの?」

鈴鶴「曲がりなりにも、奴は【鏡】持ちだ―――
   其れに対抗できそうな人物は、わたしとヴェスタを除いて…知る限りはあなたしかいないから……」

791「なるほど、私は鈴鶴と互角だからねぇ……
   ………あの頃の話、してもいいかな?」

鈴鶴「あなたが良いのならば……」
そして791は、ユピテルを封印した時の事を語りはじめた。

264 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:52:54.002 ID:6QMucJns0
――――。

話は、ユピテルがディアナを撒いた後に戻る―――。

ユピテル「ふぅぅぅッ……俺の式神を片付けられる奴がいるとは怖い怖い…
     直接やりあっても雷撃で仕留められるだろうが……念には念を入れておかなくては」

ユピテル「さて……この【鏡】
     大気中にある【力】を吸い取ってくれるとはな……

     おかげで、世界を征するに必要な力が着実に溜まりつつある」

265 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:53:07.844 ID:6QMucJns0
ユピテル「さて……適当に街をまた潰し、今度は住んでる奴の生命力も貰ってやろうか……
     しかし……ユノの身体まで貰えなかったのが厳しいな…

     生命力というのは魂魄両方あって初めて成り立つ……特に魂魄が引っ付いてる時が……
     此のままこの餓鬼の魂を抱えたくねえが……さらなる力を得るためには耐えねばなるまいか……」

ユピテルは、自身の力を誇りながら、海の上の一枚岩に出た。

しかし―――。
791「…………」

ユピテルの前に、偶然其処に居た791が立ちはだかった。

266 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:53:34.347 ID:6QMucJns0
ユピテル「なんだァ…テメェ………」
ユピテルは、不満そうな表情で791を見つめた。

791「其の邪悪な波動……そして死の香り……
   あなた、街でもひとつ滅ぼした……?」

ユピテル「ハハハハハハ―――それがどうしたよォ
     俺は…ユピテルは選ばれた存在さ……強くなり世界を獲る為に、街ひとつ潰したって問題はねェよなァ」

791「いいや……少なくとも、私は…そんな奴嫌いだ」

ユピテル「ほざけ…てめェを今ここで潰してくれる…
     見たところ…てめェは魔法使いだなァ……魔法使いさんよォ、負ける覚悟はできたかァ?
     神の力を持ちし緑色の悪魔に勝てる奴なんて、人間だろうと魔族だろうと、いねェからなァ」

そして791とユピテルは激突した。

267 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:54:34.077 ID:6QMucJns0
だが――。
其の拳を、791は自身の拳で殴り返した。

ユピテル「ぐぉっ!?」
その衝撃たるや、まるで鍛え抜いた戦士の拳に匹敵する其れで―――。
ユピテルは咄嗟に飛びのいて、ダメージを抑えた―――。

ユピテル「てめェ……一体何者だ!?」
ユピテルは額に汗を流しながらそう言う―――。

791「私は791、魔法使いだ」
しかし、791は―――冷静に、ただそれだけを言った。

ユピテル「791―――!?貴様、まさか、魔王と呼ばれている……」

791「まぁ、間違ってないけれど…それでも、ただの魔法使いだよ?」

791は微笑みながら、魔法詠唱の構えを取った。

268 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:54:51.729 ID:6QMucJns0
ユピテル「ちぃッ、魔王だとォ
     噂は聞いてたが、よもやここまでとは…
     本気でやらねばならないか……」
ユピテルは雷を791に向かって撃った。


791「シトラス―――」
魔王791の其の詠唱は、無限の檸檬色の魔力の塊を呼び出した。
そして雷に向かってぶち当たり、その雷を掻き消し、そして残った魔力はユピテルに叩き込まれた。

ユピテル「ぐッ…!」
咄嗟に腕で魔力を弾いたが、其れでもなおダメージは小さくない。

791「私は…腕力にも魔力も、ちょこっとだけ、他の人達より強いだけ…
   でも、抹茶に―緑色の悪魔に特化しているんだよ…その魔法はね!」
そして再びシトラスを叩き込む。

269 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:56:08.163 ID:6QMucJns0
無限の檸檬色の魔力はユピテルを包み込み、そしてユピテルを気絶させた。

791「なんか、すごい【鏡】も抱えてるみたいだけど……
   まぁ、私にはいらなさそうなものだ…

   本当はこんなことしたくないんだけど、街滅ぼしてる奴を見過ごして別の被害が出たら構わないからね」

そして791はその拳を振りおろそうとして―――
ある事に気が付いた。

791「……!
   こいつ、女の子の魂を奪ってるッ……!?」
791はユピテルにとどめを刺せなかった。

270 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:56:35.452 ID:6QMucJns0
791「しかも、この魂、身体の方が生きてる…
   私には、魂を取る技術などない……どうすれば……」

そして791は、ユピテルを封印する道を選んだ。
此の方法が最善かどうかは分からない。

791は少女の――ユノの魂もろともユピテルを消すことはできなかった。
しかし、だからといってその身体が何処にあるか分からない。

791は、一枚岩の中にユピテルを封印した。
自身の魔力の半分を使って結界で包み、更にその上に強靭な岩で固めて――。

そして791はユノ――本人は、名前を知らなかったが―――の身体を探す為、長い旅に出た。
だが、彼女の身体は見つからず―――。

そうして幾年立っただろうか―――きのこたけのこ会議所があることを791は知った。
其処で手掛かりがつかめるかもしれないと考え、791は兵士となり―――
そして此の時、ようやく其れを知ることができたのだ。

271 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:57:44.769 ID:6QMucJns0
鈴鶴「……成程
   ありがとう、全てを教えてくれて―――」

791「いえいえ、寧ろ……ようやく此の日が来たんだって、不思議な気分だ」
791は、感慨深い表情で鈴鶴たちを見つめていた。

791「ユノ――ちゃん…を助けるという目的があるなら、封印の破り方を教えるね
   単純明快な方法だ、鈴鶴とヴェスタの二人がかりで封印に攻撃してれば多分破れるよ」

ヴェスタ「えっ……」
791のその答えに、ヴェスタは困惑していた。

272 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:58:03.571 ID:6QMucJns0
791「鈴鶴はわたし並に強いでしょう?
   ヴェスタ…貴女はつい最近の、オモラシスがいっぱい現れた時に居た子よね?
   見た感じすごい力持ってるし、懐に抱えてるものも強力な力を感じるし、合わせれば私を超えるからいけるいけるっ」

ヴェスタは、791の明るい言葉にぎゅっと目を瞑った。

273 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:58:47.715 ID:6QMucJns0
791「そんな怖がらないで…私は、別にあなたをどうこうしようってつもりはない
   あなたを捕えようとした兵士がきのたけにも居たけど、見事に眠らされて…
   ほかの所でもそういうところがあったから、あらゆる機関で貴女を見ても触れないようにしているの

   でも…私は、例え其れが無かったとしても、貴女をどうこうする気はなかったでしょう
   わたしには、ユノちゃんを、助けられなかった負い目があるから……」

791はヴェスタの目線に立ち、子を諭す親の様に優しくそう言った。

791「さて、鈴鶴……
   私に聞きたい事は終わったけど、頼みたい事が2つだよね?
   多分この事に関するものだけど、一体なに?」

鈴鶴「1つは…戦闘術【魂】を学びたいから、伝承者の筍魂に其の旨を伝えてほしい
   わたしも、色々と知り合いはいるけれど、其の手の知り合いがいないから…」

274 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 00:59:05.094 ID:6QMucJns0
791「……鈴鶴、どうして私に?」

鈴鶴「多分……魂を取る術を持っていなかったあなたは、会議所に来てそれを学ぼうとしたと思うの
   でも、あなたのその戦闘スタイルはと、戦闘術【魂】は致命的に噛み合ってなくて―――」

791「うっ…痛いところを突くね…
   確かに、魂さんはねじ伏せられる戦闘力はあるけど、その通り…私は習えなかったんだよねぇ
   その技術の根幹は分かってはいたんだけどねぇ……」

鈴鶴「それでも、一応戦闘能力としてはあなたの方がある…そういう点で、融通が効きやすいと思ったから」

275 名前:すべて陰陽のもの:2017/03/27 01:00:55.726 ID:6QMucJns0
791「はいはい…もう一つは?」

鈴鶴「ヴェスタのこと…
   この子は、確かにわたしに匹敵する力がある

   でも…まだ、力の扱い方が未熟なの
   本来ならわたしがやった方がいいかもしれないけれど
   …戦闘術【魂】を学ぶ時間との兼ね合いもあって、あなたにその指導を頼みたいの」

791「そう来たか……
   まぁ、私は、別にいいけどね…ヴェスタは、いいの?」

ヴェスタ「おねえちゃんを助ける為に、頑張るから、大丈夫!
     話は既に、ついてるからっ」

791「なるほど、じゃあ引き受けよう」

そして話はまとまった。
鈴鶴は、筍魂のもとに向かった―――。

276 名前:社長:2017/03/27 01:03:39.030 ID:6QMucJns0
魔王様がラスボス普通に倒してるけど
緑色の悪魔=オモラシス=抹茶なので負けるわけがない。

277 名前:きのこ軍:2017/03/27 01:39:28.953 ID:JxG3Or5ko
強すぎィ!(賞賛)

278 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 00:39:19.544 ID:86/5W1BQ0
――――。

百合神を封じた少女は、鈴鶴より遅く、海の上で目覚めた。
【鏡】と【剣】を抱えて―。

だが、偶然にも高波に飲まれてしまい、必死で【鏡】と【剣】を抱えていたが、【剣】は波の下に消えてしまった。
気が付いた時には、【鏡】だけを抱えて、何処かの海岸へ流れ着いていた。

279 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 00:43:06.168 ID:86/5W1BQ0
あてもなく海岸を彷徨っていると、二人の青年が少女を見て、「大丈夫か?」と声を掛けてくれた。
少女は、ふるふると首を横に振ると、青年の一人は「私の家に来ないかい?」と言った。

青年たちの瞳に正しき光を感じた少女は、青年たちについて行った。

声を掛けてくれた青年の家は、とある街の町長の家だった。
青年の家族たちも、少女に、優しく接してくれ、少女は幸せに時を過ごした。


280 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 00:45:23.234 ID:86/5W1BQ0
そしてやがて青年と恋に落ち、結婚し、子供を産んだ。名は、ユノ―――。
三人は暖かな日々を過ごし、二人目の子を授かった。

だが―――二人目の子供――ヴェスタを産んだとき、少女は体調を崩してしまい、そのまま常世へ行ってしまった。
死ぬ前に、【鏡】は、地下に、誰の目にも付かないところに封じてくれ、と言い残して―――。


281 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 01:10:31.641 ID:86/5W1BQ0
――――。

筍魂「……あの791さんから直々の頼みとは、驚いた
   しかし…お前は昔、一回大戦に参加して―其の強力な武術できのこ軍を打ち据えたと聞く
   お前の実力を確認した山本さんは、お前以上の奴は見ないとも言っていた…
   精神と肉体の完全な融合を成し遂げる術―そんな技を、お前が必要とは思わんが

   …道楽か?」

筍魂は、椅子に座りながら、訝しげな目で鈴鶴に話しかけた。

鈴鶴「武芸を学ぶからには、其れ相応の金は出すわ…」
鈴鶴は、其の問いに対する答えとして、大量の札束を筍魂の前に置いた。

282 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 01:21:44.342 ID:86/5W1BQ0
筍魂「!
   どうやら、道楽ではないみたいだ……
   何かの目的のため―――らしいな?」

鈴鶴「魂を抜き取る技を覚えるために――
   精神と肉体の完全な融合を成し遂げる術ならば、其の逆も出来ると予想した上での判断よ」

筍魂「確かに出来ん事はないが…
   ……昔791さんが話したのと同じ理由ってのは、どういうことだ?」

鈴鶴「奪われた魂を…引っこ抜く…ただそれだけの為よ
   出来るだけ早く、学び終えると助かるのだけれど」

筍魂「…成程
   791さんの意志を継いでいるというわけか
   まぁ、事情は飲めた………其の技だけでいいんだな?」

鈴鶴「ええ…」

筍魂「よし…」
筍魂は、ぱんと手を叩いた。
その目は、戦士の目になっていた。

283 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 01:35:10.208 ID:86/5W1BQ0
筍魂「まずは、俺の目でお前の実力を見たい―――
   なぁに、すぐ終わ……ぐぁっ!?」
筍魂は鈴鶴を見つめようとした。

だが……鈴鶴を見つめる事は出来なかった。
視界の中にあるべき鈴鶴の姿は、不気味な何かの力によって全く見る事さえ敵わず――そして後方に吹っ飛ばされた。

鈴鶴「………」
鈴鶴は、ただ冷静にその様子を見ていた。

筍魂「いってェ……てめェ…変な力持ってやがるなァ……
   男には、魂魄を分析させんような、そんな強大な…」

鈴鶴「ええ……そうみたいね」
何事もなかったかのように、鈴鶴は答えた。

284 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 02:51:02.469 ID:86/5W1BQ0
筍魂「なるほどなるほど…実に面白れェ
   俺が実戦の中で、お前の力を見たい――
   其れが戦闘術【魂】を操れるかどうか―――

   どうだ?」

鈴鶴「構わないわ――其れが必要と言うのなら」

鈴鶴と筍魂は、中庭へと移動した。

285 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/02 03:09:56.780 ID:86/5W1BQ0
筍魂「ルールは何でもアリだ―――
   武器も拳も、お前のその強大な変な力も…

   とりあえず此の紛争再現用の魔法陣を、中庭一帯に敷き詰める―――

   そして、互いに容赦なしの闘争だ
   致命傷を負うか、負けを心で認めた方が負け……
   構わないな?」

鈴鶴「…立会人は必要?」

筍魂「いいや…いらんよ」

鈴鶴「そう……余計な心配だったかしら」

筍魂「なぁに、いいさ
   ……この時計が0分の針を刺した時が始まりだ―――」
筍魂は時計を指さしながらそう言った。

時計の針が進む。
50分―――55分―――。
そして―――時は満ちた。

筍魂「はじめェッ!」

―――そして鈴鶴と筍魂の戦いが始まった。

286 名前:社長:2017/04/02 03:10:12.688 ID:86/5W1BQ0
鈴鶴Vs筍魂

287 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:11:07.951 ID:qxlwgJac0
鈴鶴は愛刀、姫百合を抜刀し、ただ冷静に切っ先を前に向けて立っていた。

先に仕掛けたのは筍魂。

筍魂「【居合切り】―――」

其の言葉と共に、筍魂は鈴鶴に向って駆け出した。
そして、まるで居合の達人のように、刃を振るうように腕を振った。

その刃は不可視の刃――。
筍魂の足元の草が斬られ、そしてその刃は鈴鶴へと―――。

288 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:17:34.681 ID:qxlwgJac0
しかし―――。
鈴鶴はその刃を、構えた太刀で受け流した。

筍魂は、【居合切り】が受け流されても気にせず攻撃を続けた。
筍魂「【辻斬り】――――」
斬撃を受け流されたと同時に、鈴鶴の死角にさっと回り込み、此れまた見えない斬撃で斬りつける。


鈴鶴「はっ――」
しかし、月影黄泉流の達人である鈴鶴に、其の程度の不意打ちなど効かぬ。
鈴鶴は其の斬撃を、気合一閃、刀身で弾いた。

さらに鈴鶴は、其れに反撃するように筍魂に刃を振るった。

筍魂「【挟む】―――」

鈴鶴の振るう刃――其れを常人が喰らえば、知らぬ間にその胴は分かれるだろう。
しかし相手もまた、戦闘術【魂】の達人だ。

冷静に、其の刃を指2本で挟み受け止めた。


289 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:23:05.285 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「なかなか、やるわね―――」

鈴鶴は冷静に、刀を構えたままそう言い。

筍魂「お前こそ―――
   確かに、其の剣術…綺麗で、そして実戦的で…
   一番良いのは、其の繰り出す攻めも守りも、理(ことわり)―技で満ち溢れている事だ
   とても、面白い……

   此れは久々に燃えてきた―――あれはアイムを弟子にしたいと思ったあの時以来だッ!!」
筍魂は、其の言葉に返しながら、刀を挟んだ指を解いた。

290 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:24:36.364 ID:qxlwgJac0
そして戦いは再び始まった。

また、筍魂は待つ鈴鶴に突撃した―――。

筍魂「【テレポート】―――」
だが、鈴鶴の刀に触れる寸前で其の姿を消し去って。

筍魂「からのぉッ、【蔓の鞭】ィッ―――」
何時の間にやら掴んだ、蔓の鞭で、鈴鶴の腕を打ち据えにかかった。


鈴鶴「ちぃっ―――」
ギリギリ其れに気が付いた鈴鶴も、完全には其れをかわせず、左手の甲に傷をつけている。

291 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:25:43.542 ID:qxlwgJac0
筍魂「鈴鶴……確かに防御は万全だ
   この技術だけで、俺はほれぼれするぞ…
   だが……俺は攻撃も見たいんだ

   そうでなければ、つまらんぞ?」
筍魂は鈴鶴を【挑発】する―――。


鈴鶴は、普段挑発には乗らない―――。
しかし―――今回は―――。

鈴鶴「そうね……守りだけでは、見極められない
   ただの戦いなら兎も角――これはあくまで、わたしが戦闘術【魂】を得るにふさわしいかを見るための戦い
   技術の見極めの、手伝いをしましょう―――」

あえて、其の挑発に乗った。

292 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:26:28.690 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「ちぇーッ!」
鈴鶴の気合の籠もった声と共に、横薙ぎの刃が筍魂の胴体目がけて飛んで行く。

筍魂「【飛び跳ねる】ッ―――」
しかし其の斬撃を飛び跳ね、そしてまた着地した衝撃で鈴鶴を吹っ飛ばした―――。
地面を転がりながらも鈴鶴は受け身を取り、すっ転ばずに体勢を立て直す―――。

筍魂「【マッハパンチ】―――」」
鈴鶴目がけた、風圧を込めた最速のパンチを、鈴鶴は蹴りで叩き落とし―――。

鈴鶴が地面を蹴りあげ、えぐれた土と草で目潰しをしようとすれば、
筍魂「【リーフストーム】―――」

その草を逆に刃と変えて、土を切り裂き―――鈴鶴の皮膚を、少し切り裂き―――。

293 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:27:25.518 ID:qxlwgJac0
其れから数分か―あるいは数十分か―あるいは数時間か―。
互いに技を出し、受けるという流れが幾度も幾度も行われた。

その均衡が破られたのは筍魂の仕掛け―――。

筍魂「さて……そろそろ、てめェの弱点への抵抗を見せて貰うぞ
   【波乗り】―――」
大気中の水分が、波に形作られ、鈴鶴に押し寄せた。

294 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:29:30.297 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「がぼ……ゴボッ……」
鈴鶴のもがく声が聞こえる。

筍魂「此処で決着をつけるッ……!」
水の中でもがく鈴鶴の上―――水面に筍魂は立っていた。

筍魂「俺が堪えるか―――お前が堪えるか―――ッ!」
筍魂は水面の上になおも立っていた。

鈴鶴「――――!」
一方の鈴鶴は―――地面に姫百合の刃を突き刺し、荒ぶる波の流れに耐えていた。
姫百合の峰に手を添え、目を瞑り、其の押し寄せる波に耐えていた。

295 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:20.617 ID:qxlwgJac0
そして―――。
水は全て、消え去った。
【波乗り】は大気中の水分を利用しているから、有限が或る。
其れまで、鈴鶴は耐え切ったのだ。

筍魂「ちぃ……水切れかよォ……
   しかし…其処まで耐えるとはなァ…おかげで体力を浪費しちまったぜ……」

鈴鶴「げほっ、けほけほっ……
   此処で折れる訳にはいけない……わたしの心も、わたしの刀も……」

そして鈴鶴と筍魂は無言で対峙した。

296 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:30.339 ID:qxlwgJac0
筍魂は構えを取った。
必殺の一撃を叩き込む構えを―――。

一方の鈴鶴は、闘いが始まった時の構えと同じだった。

297 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:40.342 ID:qxlwgJac0
沈黙が其の場を包み込む。
何秒、何分、何時間―――。
恐ろしく長いように感じられる其の沈黙を、筍魂が破った。

筍魂「奥義――【Vジェネレート】ッ―――!」
筍魂の額を包む炎と共に、目にも止まらぬスピードで捨て身の一撃をぶちかます。

其の動きは、誰の目にも追えない動きだった。

298 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:30:52.948 ID:qxlwgJac0
だが―――。

筍魂「ぐっ―――」
筍魂が地面に倒れ―――。

鈴鶴「………」
左腕を負傷しながらも、鈴鶴は其処に立っていた。


そう――鈴鶴は其の攻撃を受けた瞬間に、月影黄泉流奥義―姫百合を筍魂に叩き込んだのだ。
相手の動きに合わせ、その威力を乗せ相手を斬る奥義。

奥義【Vジェネレート】は、必殺の一撃―その威力も伊達ではない。
だからこそ――その威力で切り裂かれるとなれば―――。

299 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 00:33:15.671 ID:qxlwgJac0
闘いは終わった―――。
筍魂は、其の場のベンチに座り、鈴鶴はその隣で静かに立っていた。

筍魂「此れが、紛争でなければ俺は死んでいたな―――」
筍魂は、ぽんぽんと腕を叩きながらそう言った。

鈴鶴「………其れで、貴方の判断は、如何なのかしら?」

筍魂「ああ……お前は技を分かっている奴だ…
   力ではなく技で俺に対抗した…此れなら、問題はないだろう…
   ……だが、今日はちと疲れた…明日からだ…明日から、修行だな…
   早朝6時―此処に来い」

鈴鶴「分かったわ…」

筍魂は、立ち去る鈴鶴の後姿を見つめながら――。
791の―魔王と呼ばれた其の兵士の様に、恐ろしく強い相手と闘えたことに、深く感動していた。

筍魂「ありがとよ―――俺の日々の鍛練にも、さらに身が入りそうだ……」
そして、そうぽつりとつぶやいた。

300 名前:社長:2017/04/18 00:33:49.363 ID:qxlwgJac0
通常モードの武術の達人の鈴鶴と互角の筍魂さん。
(ユリガミモードではどうだろう・・・。)

301 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:13:00.954 ID:qxlwgJac0
――――。


ユピテルが791に封印された後―――。
ヴェスタに憑依したユピテルの分霊は、すぐ其れに気が付いた。

しかし…雷の力は使えない、ヴェスタには何の【力】もない―――。
或るのは海神の血を引く、ただ其れだけの事。

此れでは封印を施した場所が分かっても、封印など破れないだろう。
そう考えたユピテルは、他の神器を探しに行った。

たまたま見つけた抹茶を手にし、ふとユピテルは思いついた。
此の娘を、抹茶売りの少女にさせ、彷徨わせながら、神器を此の血でもって探そうと―――。

302 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:16:01.688 ID:qxlwgJac0
――――。

翌日―――。
鈴鶴は筍魂の元に現れた。

筍魂「さっさと終わらせるプランは立てた…まぁ、終わるかはお前次第なところもあるが…

   まずは戦闘術【魂】の神髄を、お前の其の身に沁み渡せねばならぬ
   此の武術の基礎と言うところだ…しっかりと理解してもらおう」

そして筍魂は課題を出した。
【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】
其の意味を理解しろ、と―――。

303 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:24:50.917 ID:qxlwgJac0
筍魂「お前は、十五ぐらいの小娘だ――
   そんな質問をしたところで、何のことやら―――と思うかもしれんな

   ―――――本当にお前が、見た目どおりなら

   お前は小娘ではない―――寧ろ老婆といった方がいい年齢だろう
   億という途方もない年月を生きた魔王様のように―――必ず、其の長い生の中で理解している筈だ……」

鈴鶴「……そうね」
鈴鶴は少し考えていた―――。

しかし、直ぐに答えを見つけたようで、言葉を紡いだ。


304 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:25:07.269 ID:qxlwgJac0
鈴鶴「すべて陰陽のもの―――
   此れが其の武術のハシラでしょう……」

筍魂「ほう……速攻で何か、思いついたとは…
   そして其の単語の意味も、問おう―――」


305 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:25:53.107 ID:qxlwgJac0
鈴鶴は語り始めた。

すべて陰陽のもの――。

すべては、陰陽が、所有しているもの―――。


世界のすべては陰陽ふたつの要素で成り立っている。
逆に、世界を構成する一つ一つもまた、陰陽ふたつの要素で成り立っている。

其れは目に見えるものから、概念まで多岐に渡る。
感情だろうと、世界の流れだろうと、すべては陰陽で構成されている。

306 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:26:06.035 ID:qxlwgJac0
最も大きなものであろう、世界の流れ―――。
もし、それが陽の流れをとるならば、必然的に個々の感情も陽になるだろう。
もし、それが陰の流れをとるならば、必然的に個々の感情も陰になるだろう。

しかし―――其の逆も言える。
此処の感情が寄り、合わさり、世界の流れが陰陽どちらかをとることが―――。

【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】事に繋がるのだと。

307 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:26:19.372 ID:qxlwgJac0
筍魂「……成程、いいだろう
   やはり……お前も791さんのように、長い時を生きて其れを実感していたのか…」

鈴鶴「確かに私は長い時を生きたけれど…
   わたしが今のわたしになった其の時が、偶然其の一文と合っていただけよ」

ちっぽけな一つの陰の感情が、其れが世界の流れを陰の流れに変えてしまうことを、鈴鶴は知っていた。
たいせつなひとを奪われた悲しみが――男を滅ぼそうとした。
もしその試みが成功していれば、世界は女だけと――世界は陰に包まれただろうから。

308 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/18 23:26:52.087 ID:qxlwgJac0
筍魂「よし…今から、魂を取る技を教える―――
   名は【ハートスワップ】

   てめェの訳のわかんねぇ力にぶち当たらないようにしながら、速攻で教える…」

鈴鶴「ええ……お願いするわ」

そして、鈴鶴の修行が始まった―――。

309 名前:社長:2017/04/18 23:27:26.996 ID:qxlwgJac0
戦闘術魂の奴解釈間違ってたらごめんなさい。
ちなみに魔王様は33億歳設定らしい。

310 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:15:56.472 ID:BnhtrUcg0
――――。


【剣】―――。
其れは波の下で眠っていた。
魚にも、人魚にも、触れられる事もなく、ただ静かに。


ある時、波に流され、【剣】は海を彷徨った。
そして集計班の目の前に流れ着いた―――。


何故集計班の前に流れ着いたのか。

其れは、若しかしたら―――世界の未来を左右する此の人物に、
【剣】の使い手に相応しい、血を引くものを探してほしかったのかもしれない。


311 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:22:01.423 ID:BnhtrUcg0
――――。

修行から3日後―――。

たった3日で、鈴鶴は其の技を会得した。

312 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:22:20.844 ID:BnhtrUcg0
【ハートスワップ】―――。
自身の魂を世界全てのものにし―――そして目の前の相手の魂に触れ、其れを奪い去る技術だ。

しかし、其れは実戦向きの技ではない―――。

【魂】を抜き取る―――此れなら必殺の一撃だが……
其れを成す為には、自身の魂を世界すべてに溶け込ませる必要がある。

その行動は隙を大きく作るため、実戦ではまず使えないのだ。
気絶させた相手になら使えるが、あえて其れをするよりもとどめを刺した方が早い――。

313 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:23:08.096 ID:BnhtrUcg0
筍魂「一つの技だけだが…こんなにあっさりと行かれると、他の技も伝授させたくなるが…
   其れはお前の意向ではないからな…」

鈴鶴「伝授してくれて、感謝するわ……」

筍魂「なぁに……俺も感謝したいところだ
   お前の強さ、よぉく知って…さらに俺は強くなりたいと思ったからな…

   鈴鶴よ、お前の目的をばっちり決めてこい!」

鈴鶴「ええ―――」

その言葉を受けながら、鈴鶴は其の場を去った―――。


314 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:26:14.660 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴が戦闘術【魂】を会得するまでの間、ヴェスタは【力】の使い方をしっかり791に伝授してもらった。

【剣】はある程度の魔力も持っている。其れを制御する方法を、ヴェスタは会得したのだ。

791「ふーーー
   鈴鶴が帰ってくるまでに、ばっちりとヴェスタに叩き込んだよ
   はりきりすぎて、疲れちゃった…」
791は、ベッドの上に座りながらそう言った。

鈴鶴「ヴェスタともども、世話になったわ……礼として、この金を受け取ってほしい」

ヴェスタ「791さん、ありがとうございましたっ!」

791「はいはい…別にわたしはこんなにお金いらないけれど、其れで貴女が納得するのなら貰っておこう
   ――――さて、もう行くんだね」
791は金を受け取りながら、鈴鶴に問うた。


315 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:26:51.432 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「ええ……長居はする気はないから…」

791「そう…
   そして鈴鶴、あなたにひとつだけ言いたいことがあるの」

鈴鶴「いったい、何……?」
鈴鶴は訝しげに、791を見た。

316 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:28:05.051 ID:BnhtrUcg0
791「わたし―――ずうっとあなたが気になっていた

   あなたは…ユピテルみたいに……魂が複数あるって……
   魂さんのように技術じゃあないけれど、私も魂が視えるタチだから」

イサナ「それは、わたしの事―――?」
イサナが鈴鶴の横に、ぼうっと姿を現した。

イサナは、魂の姿として鈴鶴の隣には出られるものの、鈴鶴が黄泉剣を使わなければ【力】を発揮できない。
其の為、鈴鶴が【会議所】に来てからは、其の重瞳もあって厄介事にならないためにも眠っていたのだ。


317 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:28:25.457 ID:BnhtrUcg0
791「…!
   確かに、貴女はそう……

   けれど……鈴鶴にある魂は―――鈴鶴と、貴女を含めて5つなんだ
   そのうち、貴女を除けば4つの魂は肉体のある魂――

   鈴鶴はユピテルみたいに、魂を奪うような人じゃないから、何かあるんだろうと思っていたけれど
   要らないかもしれないけれど、もしも、気が付いていなかったら、と思って―――」

鈴鶴「……!」
イサナ「なに……!?」
鈴鶴とイサナは791の言葉に、固まっていた。

318 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:28:43.900 ID:BnhtrUcg0
ヴェスタ「その…おねえちゃんたち、どうしてそんなに、慌てているの?」
一人、ヴェスタは鈴鶴達の様子に戸惑っていた。


鈴鶴「わたしとイサナを除けば3つの魂―――
   1つでも2つでも4つでもなく、3つ―――」

イサナ「その魂――ユピテルの中にユノの魂が視えたあなたなら、どんな姿形か―――わかるはず…」

791「うん、そうだね…」

319 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:29:42.834 ID:BnhtrUcg0
続いた791の言葉―――其れは、鈴鶴とイサナの予想していたものであった。

一人は天狗の乙女―――黒と白、二つの髪色を持ち、隻眼であり、左手の指は3つ欠けている――。
一人は白髪と白肌の乙女―――女にしては高い其の背と、長い髪を持った、職人のような乙女―――。
一人は白髪と白肌の乙女―――おかっぱ頭で、其の身体は幼い少女のもの―――。

320 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:30:13.571 ID:BnhtrUcg0
791「……その反応を見るからに、心当たりは…あるんだね?」

鈴鶴「其の特徴だけで、声も思い出す程には…心当たりがあるわ」

イサナ「……其の魂は、何処に或る?」

791「鈴鶴の中に、眠ってるよ」

鈴鶴「ありがとう……其の言葉は、わたしをも…救うかもしれない」

791「私の力が役に立って、嬉しいよ
   それじゃ、鈴鶴、ヴェスタ、イサナ―――ユノを、きっちりと救ってね!」

鈴鶴・イサナ「勿論―――」
ヴェスタ「頑張るよっ」

そして鈴鶴達は帰路についた。

321 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:32:31.173 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴の屋敷―――。

帰ってきたころには、すっかり夜になっていた―――。
屋敷に帰ってきた時、鈴鶴たちは見違えるようになった屋敷を見て驚いた。
月夜に照らされる屋敷は、どこな妖しげで―けれども美しかった。


ヴェスタ「綺麗に…なっている……」

鈴鶴「ヴェスタを連れてきた、あの時のようね」

イサナ「生まれ変わったようだ―――」
三人は、見違えた屋敷の様子に驚いていた。

その時――鈴鶴たちに駆け寄る足音が近づいてきた。

アポロ「あ―――
    帰ってきたっ―――お帰りなさいっ」

鈴鶴たちの帰還を知ったアポロが、玄関に駆け寄ってきたのだ。

322 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:33:58.665 ID:BnhtrUcg0
ヴェスタ「ただいまっ……あれっ……どうして、アポロは…まだ起きているの?」

アポロ「僕……ユノちゃんが助かる見込みがあるのか、不安で不安で、寝付けなかった…」

鈴鶴「心配させて、ごめんなさい…
   ……しかし、綺麗に掃除してくれて…ありがとう
   ディアナ達にも、伝えないとね…」

アポロ「あ、あはは…ど、どういたしまして―――
    その…其れよりも――――聞きたいことが―――
    鈴鶴さんたちの雰囲気で、なんとなくわかるけれど…
    ユノちゃんは―――」

鈴鶴「奴を如何にかすればいい――唯それだけになっているわ
   つまり…端的に言えば、今から向かって救う事だって出来る」

アポロ「あぁ―――やっと、なんだ……
    やっと……ユノちゃんを目覚めさせられるんだ…」
アポロは、感慨深い表情で鈴鶴たちを見つめた。

323 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:34:40.160 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「ただ……その前に、ひとつだけ…話しておきたいことがあるの」

アポロ「何?」

鈴鶴「…此処ではなんだから、座敷の上で話しましょう」

座敷の上で、アポロは真剣な表情をし、鈴鶴を見つめている。

その視線に応えるように、鈴鶴は言葉を紡ぎ始めた。

324 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:36:22.133 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「わたしと、イサナは――知らなかった
   わたしの魂の中には、3つ―――魄ある魂がある

   奇しくも―ユピテルと一緒の状況なの」

イサナ「そしてその魂は、鈴鶴にとって大切な存在の魂―――」

アポロ「鈴鶴さんにも、そんなことが―――」
アポロは、じっと鈴鶴を見据え――。

ヴェスタ「……その、それはどういう存在なの?」
ヴェスタは、少し心配そうに鈴鶴に聞いた。

325 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:36:48.327 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴「わたしの…姉のような存在―――千代の時を過ごした存在―――」

そして鈴鶴は其の生い立ちを語った。
自身は月の民の姫の子である事、そしてその大切な人の事―――。


その名は、ヤミ、シズ、フチ。
千代の時を生きた思い出―遠き昔の、鈴鶴にとって忘れる事出来ない思い出。

三人はかつて月を滅ぼした月の民の残党に、黄泉剣に喰われて散ったことも―――。

けれども―――。
身を裂かれて散った三人は、魂魄共に鈴鶴の中に在ったのだ。

326 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:39:01.821 ID:BnhtrUcg0
鈴鶴は一通り身の上を説明し終えると、ヴェスタは泣いていた。

鈴鶴「―――どうしたの?」

ヴェスタ「おねえちゃんは、わたし以外にも――つらい事があったんだなって
     其れなのに、ずっと弱さを見せないなんて―――
     凄いと思ったら、急に涙が―――」

鈴鶴「ううん、わたしは―――わたしの中に或る神の力で其れを押し殺しているに過ぎないわ」
そう言いながら、鈴鶴はヴェスタを抱きしめ、撫でてあげた。


327 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:41:11.882 ID:BnhtrUcg0
アポロ「鈴鶴さんも―――僕たちと同じような存在だったんだ」

鈴鶴「皮肉か運命か、其れとも別のものかは分からないけれども、ね―――」

アポロの言葉に、何処かぼんやりとした言葉で鈴鶴は答えた。



鈴鶴「さて―――」
鈴鶴は、真剣な瞳と真剣な声を以て―――コトノハを紡ぎ始めた。


鈴鶴「わたしは―――」

328 名前:すべて陰陽のもの:2017/04/19 23:42:59.376 ID:BnhtrUcg0
1.「彼女たちを目覚めさせ、すべてにケリを付ける」

2.「すべてにケリをつけ、そして彼女たちを目覚めさせる」

329 名前:社長:2017/04/19 23:46:24.692 ID:BnhtrUcg0
たいせつなひとの存在、此れがやりたかった為に此の話があるといっても過言ではない。

ちなみにこの選択肢要素や百合屋敷要素はれいかちゃんリスペクトです。

選択肢はどちらか選んでレスしてくださいな。
どちらを選んでも選ばなかった方の展開もやるんで安心してね。

330 名前:きのこ軍:2017/04/30 10:13:07.408 ID:VPfxtsfE0
熱い展開
悩むが1で

331 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:01:19.478 ID:dShcXiy20
鈴鶴「わたしは―――彼女たちを目覚めさせ、そしてすべてにケリを付けに行こうと思う―――」
鈴鶴は、アポロを見据えて、そう答えた。

鈴鶴「アポロにとっては、歯がゆいかもしれないけれど
   彼女たちを、ずっとわたしの中に居させて―――奴に奪われるかもしれない

   特別な血はないけれども、それでもわたしの中でわたしの血と混ざっている存在だから―――
   微量でも、神の血を求める可能性は無きにしも非ず―――

   そして、万が一彼女たちが消えてしまえば―――わたしは理性を保てるか分からないから
   一度――そうなった身としては、其れでユノが救えないことになったら……」

アポロ「大丈夫―――
    救えるという確実な保証があるんだから、僕は、大丈夫―――
    其れに、鈴鶴さんの方が、恐らく僕よりも長い間、そういう状態なのだろうから
    其れならば、年の功で、鈴鶴さんが先にやっても文句はないよ」

332 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:01:50.349 ID:dShcXiy20
鈴鶴「ありがとう―――
   明日の朝、ディアナ達にも其の事を話して、復活させるわ―――」

アポロ「うんっ……!
    少し、不安が晴れたから、僕は寝床に入るね」

鈴鶴「おやすみなさい」

鈴鶴は、そう言うと、夜空に浮かぶ月を見上げた。
其の月は満ちかけていた―――。

333 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:02:06.761 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃん―」

ふとヴェスタが鈴鶴に話しかけた。

ヴェスタ「おねえちゃんは、たいせつなひとを――
     その、ヤミ、シズ、フチっていう子を蘇らせるつもり…なんだよね?」

鈴鶴「そうね――」

ヴェスタ「すべてが終わって―――おねえちゃんはたいせつなひとを蘇らせる
     けれど、わたしは―――

     目覚めるユノおねえちゃんは居るけれど、おねえちゃんのように沢山の人を好いたことはない」
ヴェスタは、そう言うと、涙を流しながら鈴鶴の腕にしがみついた。

334 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:03:07.795 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃんは、今までずうっとそばに居た人が帰ってきたとき
     わたしの事を、同じように愛してくれているか―――不安でたまらないの」

鈴鶴「大丈夫―――誰一人とて、無碍にはしないわ」
そう言い、鈴鶴はヴェスタの頭を撫でた。
けれども、ヴェスタの言葉は続いた。

335 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:03:28.832 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃんが、そんな事しないのは分かっていても――
     でも……わたしは、おねえちゃんのたいせつなひとのことは分からないの
     もしおねえちゃんを取られたらって―――
     其れが恐くて、わたしが、自分勝手に独り占めするかもって―――
     わたし、其の人達を受け入れることができるのかって―――

     そんな悩みが、出てきてたまらないの…」

その言葉を聞いて、鈴鶴はヴェスタを抱きしめた。

鈴鶴「わたしの中に在る大切な人―――
   其の人達は、今も――ヴェスタを見ているでしょう

   確かに、会った事のないヴェスタは分からないかもしれないけれど
   其の人達は、確かにヴェスタの事を理解しているでしょう
   
   ヴェスタは、わたしの【力】に対する劣等感で、一度は仲違いしてしまったけれど―――
   其れまでの日々にも――此処での日々でも、心優しい少女だということを
   
   だから、大丈夫―――
   ヴェスタは、そんな事しない―――」
   
そして、優しい口調で、そう告げた。

336 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:03:45.386 ID:dShcXiy20
ヴェスタ「おねえちゃん―――
     ありがとう
     しばらく、こうしていていい?」

鈴鶴「うん―――」

そして二人は、そのまましばらく抱き合っていた。

イサナは、鈴鶴の中で其の様子をじっと見ていた。
口を挟むことはない――。

けれども、微笑みながらその様子を見ていた。

337 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:08:23.992 ID:dShcXiy20
翌朝―――。
鈴鶴は、自身の意志をディアナ達に伝えた。

ディアナ「鈴鶴の中に在る人を、取り戻す―――
     俺は、鈴鶴の事は信頼しているが、
     魂を元の身体に戻す処を、実際に見れば尚の事、信頼できるだろう
     だから、俺は其の事に対して構わない―――」

ネプトゥーン「わたしも、同じ意見――
       奴からユノの魂を救ってほしい立場としては、
       其れを成す貴女たちには、迷いない状態で行ってもらいたいから」

ディアナとネプトゥーンも、鈴鶴の選択を受け入れた。

338 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:10:03.070 ID:dShcXiy20
鈴鶴「ありがとう―――」
そう言うと、鈴鶴は自身の寝床の辺りを片付け、部屋の中央に座った。
イサナは、その傍らで同じように座っている。


其の様子を、ディアナ達が、ヴェスタが固唾を飲んで見守っていた。
魂を取る―――其れを技のみで成し遂げるという奇跡を、今此処で行うのだ。

339 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:10:48.540 ID:dShcXiy20
鈴鶴「では、始めるわ―――」

鈴鶴は、【ハートスワップ】の構えを取っていた。

同時に、イサナは、ヤミ達の身体を引っ張り出していた。

鈴鶴は、黄泉剣の中にヤミ達の肉体があると考えた。
彼女たちが最後に触れたものが其れだから―――。

340 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:12:46.823 ID:dShcXiy20
けれども、其の肉体は黄泉剣ではなく、【勾玉】の中に―――。
黄泉剣は確かに、神をひとり殺せるほどには力の強い神剣だ。

しかし―――真の強さは、其の漆黒の斬撃といった数々の奇跡は、勾玉によって支えられている。
【勾玉】は力の塊―――其れは【創世書】を創るにも十分なほどに在る。

【勾玉】の中にある魔力の海を、イサナがドロドロ化の能力でかき分けながら其の肉体を掴み、此の世に其の姿を取り戻させた。

341 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:14:18.364 ID:dShcXiy20
そして鈴鶴は心を世界に溶け合わせた。
世界と同じ存在となった鈴鶴は、其の中に或る魂に触れ、そして―――。

鈴鶴「はっ―――!」

鈴鶴は、彼女たちの魂を其の肉体に移した。

暫くの時間が経った。
鈴鶴たちは、不安な様子で眠っているヤミ達を見ていた。

342 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:15:42.968 ID:dShcXiy20
眠る彼女たちの目は、或る時、見開かれた。

ヤミ「鈴鶴さま―――」

其れは、【魂】を操る其の技の正しさを立証し―――。

シズ「ん―――」

そして、ユノをも救える事が、分かる奇跡だった―――。

フチ「あ―――」

―――彼女たちは目覚めた。

343 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:17:20.713 ID:dShcXiy20
ヤミ「鈴鶴さま―――そして皆さま、有難うございます
   感謝してもしきれない位に――わたくし達はいろいろな事を言いたいのはやまやまですが……
   再会の言葉や、喜びの言葉を交わすのは、まだ早いでしょう」

シズ「そう―――鈴鶴たちにはやる事が一つ、残っている
   其れを為し遂げたら―――にしよう」

フチ「あたし達は、もう何処にも行かない
   此処で、ディアナ達と共に、ユノという子が救われるのを祈っているわ
   だから―――名残惜しいけれど、早く行ってあげて、あの子の為にも」

けれども、彼女たちは――ずっと、意識は鈴鶴の中にあった。
これまでの経緯すらも、すべて見ていた。

ユノの事も、アポロの事も分かっていた。
だから、言いだしたい言葉を抑えて、鈴鶴を、イサナを、ヴェスタを見送る事を優先したのだ。

344 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/04 23:18:09.679 ID:dShcXiy20
鈴鶴「えぇ……
   ―――眠り姫を覚ましに行ってくるわ

   そして――すべてが終わって、また、色々と―――語り合いましょう」

鈴鶴も、彼女たちの気配りを知っていた。
勿論、イサナも―――また、ヴェスタも分かっていた。

だから鈴鶴は其れだけを言って、イサナとヴェスタと共に、一枚岩へと向かって行った。

345 名前:社長:2017/05/04 23:18:55.955 ID:dShcXiy20
復活したたいせつなひと。

346 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:34:07.622 ID:rbawSLrA0
海に浮かぶ一枚岩―――今宵の其れは、いつもよりも恐ろしく見えた。
此の下に―――緑色の悪魔が眠っているからだ。


ヴェスタ「おねえちゃん――此処に、戻って来たね――」

鈴鶴「すべて終われば……もう二度と、此処に戻る事はないでしょう――
   此処できちっと片を付けましょう」

イサナ「わたしも―鈴姫と、ヴェスタの為に、出来るだけ手助けしよう――」

三人は言葉をつぶやくと、ユピテルの封印を解きにかかった。

347 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:39:41.356 ID:rbawSLrA0
鈴鶴は黄泉剣―【勾玉】の力を解放し―――。
ヴェスタは【剣】の力を解放した。

そして、それらから放たれる斬撃で一枚岩を斬り裂き続けた。

幾度となく神の力で叩きつけられた一枚岩は、遂には罅が入り、そして―――。

中から、光とともに―――。


ユピテル「―――――」


ユピテルが、目覚めた――。
其れは、つまり―――ユピテルの封印が解かれたということに―――。

348 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:40:23.760 ID:rbawSLrA0
ユピテルは、空に浮かんでいた。

手には、【鏡】を―――
そして、その表情は、恨みでもなく、歓びでもなく、怒りでもなく―――。

ただ、普段通りといったような表情を見せていた。


349 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:43:31.432 ID:rbawSLrA0
ユピテル「ふぅううーーーっ」
そして溜め息一つ。

ユピテル「奴が、ガキの魂一つ消せん臆病者だったおかげで――こうして消える事なく俺は復活できた
     あの封印の中でも、この【鏡】は効力を発揮してくれたおかげで――俺は更に強くなった」
ユピテルは、きょろきょろと鈴鶴達を見ていた。

ユピテル「そして…分霊は死んだようだが、その憑りついた先のガキが――【剣】を――
     もう一つ、横に居るテメェも【勾玉】を持って来てくれるとは」
そして―――神に等しい【力】を持つ鈴鶴たちを眺めながら、平然とそう言った。

350 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:46:43.578 ID:rbawSLrA0
鈴鶴「ずいぶんと……余裕なのね……」

ユピテル「今の俺なら―――神具二つでも相手に出来るさ
     吸収、しまくったからなァ―――力を―――」

そしてユピテルは、鈴鶴達に向かって雷を撃ちだした。

鈴鶴「………」
ヴェスタ「ひゃぁっ!!」

二人は構える剣で其れを薙ぎ払う。
鈴鶴は冷静に―――ヴェスタは、驚きこそするものの、振り払う動作其の物は正確に―――。

351 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:46:59.488 ID:rbawSLrA0
ユピテル「てめェらは―――
     俺を消しに来たんじゃァねェ―――
     そういう目的なら、封印ごと俺を消すことだってできただろうしな
     目的は、俺の中に在る魂の方だろう
     
     一方、俺はてめェらを消すだけだ
     その神器を奪うだけだ
     其の認識の違い―――思い知らせてやるぜェ」

そして戦いは始まった。


352 名前:すべて陰陽のもの:2017/05/07 01:51:16.517 ID:rbawSLrA0
鈴鶴とヴェスタは、其れが初めてではあるが、統制のとれたコンビネーションでユピテルに斬りかかった。
だが―――。

ユピテル「ハハハハハハハハハ―――」
ユピテルは其れを己の肉体で受け止めた。
そしてそのまま、圧倒的な筋力で二人を弾き飛ばした。


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