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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

501 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その3:2015/06/17 23:12:21.999 ID:AGc/Dpx.o
たけのこ軍 オニロ「それなら、アイムは今この時点で現代に居るということなんですか?
だって、今この時点でも激しい時空震を確認できてないですよね!アイムはうまく今の時代まで存在を隠し通せていることになる!」

たけのこ軍 社長「へぇーいいね!」

ぱあと顔を明るくするオニロに、スリッパは厳しい表情で首を横に振った。

スリッパ「それなら、なぜ今この場に“姿を現さない”?」

この時点で元々いたアイムがタイムワープにより、この時代から姿を消したことを一番知るのはアイム本人である。
アイム自身は既に姿を隠し続ける必要性はない。寧ろ、喫緊の騒動解決のために一刻も早く皆の前に姿を見せるのが道理である。
スリッパはそう指摘している。

きのこ軍 きのきの「た、確かに…」

スリッパ「姿を見せない原因は複数考えられるが…
1. 大戦世界に潜伏していたが某かの事情で、姿を見せられなくなった。
2. そもそもK.N.C55年の時点で大戦世界に留まり続けるという選択をしていない。
このいずれかじゃないかな」

たけのこ軍 オニロ「某かの事情…それはもしかしてアイム本人に不幸な出来事が起きているとでも…」

スリッパ「当然、その可能性も考慮するべきだ。およそ100年以上の時を過ごす中で、別の異変に巻き込まれることも考えられなくない」

オニロの顔が青ざめていく中、スリッパは淡々と説明する。残酷ともいえる宣告に、アイム以外の会議所メンバーの表情も皆一様に暗い。
しかし、一連の会話の中で、スリッパの背後に控えているサラの表情にも微妙な変化が生じていたことに、誰が気づいただろうか。
苦悶、逡巡、慈愛。
普段のサラはアンドロイドロボよろしく感情の起伏が無いに等しい。
しかし今のサラの表情はまるで万華鏡のように、見る者の判断でコロコロと変化する。サラの秘めたる思いに気がつけるのは主たるスリッパただ一人。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

502 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その4:2015/06/17 23:14:46.956 ID:AGc/Dpx.o
たけのこ軍 抹茶「僕たちが会議所に帰還してから幾ばくの時間が経過した今でも、アイム君がこの場に“いない”。
だから、アイム君がK.N.C55年に留まり続けているという可能性は低い、と。
なるほど、それではもう一つの選択肢というのは…?」

そこで初めて、スリッパはニヤリとした表情で人差し指を立てた。

スリッパ「もう一つの選択肢は…アイム自身が【見えざる制約】を破り、無事現代へと帰還することさ」


【K.N.C55年 大戦場】

アイム「さて、と。やりますか」

口と鼻を覆うように深緑のバンダナを巻きつけ、アイムは立ち上がった。
自身の、そして会議所にとっての“最善の選択”のために、しんしんと積もる雪の中、彼は行動を開始した。

503 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その4:2015/06/17 23:15:49.910 ID:AGc/Dpx.o
おしまい テスト的に投稿。くっそわかりにくいチャート図作成、恥ずかしくないの?

504 名前:【もみ吉】【Rank⇒軍曹¶】【Type⇒前線兵】【階級制】:2015/06/17 23:17:04.709 ID:PqIL.w2o0
へぇーいいね!もつだぞ

505 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 01:06:30.465 ID:f9SJtjjAo
tes

506 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 01:07:03.004 ID:f9SJtjjAo
第三章の簡単なあらすじ

・アイム君だけ過去の時代に取り残されてるよ!
・アイム君だけ過去の時代の歴史改変しないと現代に戻れないよ!
・社長「あワお〜っ!」


507 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その1:2015/07/12 01:09:37.831 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍兵士「撃て撃てーッ!!」
たけのこ軍兵士「きのこの野郎どもを一人足りとも通すんじゃないッ!」

戦場は、まるでスクリプトによる妨害など最初から無かったように、“平穏”を取り戻した。
両軍兵士は、敵軍陣地に突撃し防衛する。気を抜けばすぐに戦局はひっくり返る。
これぞ大戦の醍醐味である。

大戦場の端に、一際高く盛り上がった砂丘がある。物見山と呼ばれるその砂丘は大戦内で唯一の戦闘中立地帯であり、
その頂からは大戦場を一望できる風景が眼前に広がる。
大戦の観測者たる集計係は、物見山の頂から始終大戦の様子を観察している。大戦の醍醐味を独り占めできる絶好のポジションでもある。


508 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その2:2015/07/12 01:19:19.083 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 集計班「きのこ軍が一人退場…ああ、あそこではたけのこ軍がまた一人…」

ブツブツと独り言を呟きながら、今日も集計班は物見山の頂で集計を続けていた。
双眼鏡を構え、片手では二つの数取器を器用に持ちながら、カウントを進めている。

きのこ軍 集計班「最近は肩が凝るなあ。また湿布しなくちゃ…」

集計係といえど、この時代においては、集計班の他に集計活動を行える兵士はほとんどいなかった。
集計班は係の役職と同じ「集計」という名前で呼ばれ、物見山の上には常に集計班が居た。
集計は過酷な業務。そうしたイメージが付きまとい、結果として集計係の拡充ができない原因でもあった。

きのこ軍 集計班「スクリプトの襲来もいつの間にか収まって、もう終戦間際。早いものだなあ。あ、たけのこ軍兵士一人退場。
しかし、これが終わったら“例のブツ”にありつけると思うと…フフフ。今から笑いが止まらないなあ」

双眼鏡を構えニヤつく姿はあらぬ誤解を与えかねない。しかし、陽が照り雨風吹き付ける中でも、集計係は戦況をリアルタイムに把握し報告する義務がある。
双眼鏡で戦場に目を凝らし、豆粒のような兵士の戦況を把握し迅速に集計を公表する。本人が思っている以上に過酷な仕事である。
終戦後の楽しみを想像し顔がほころぶことぐらいは許されてもしかたがないだろう。

集計ツールが開発される前までは、集計には苛酷さが伴う重労働であったのである。

509 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その3:2015/07/12 01:20:56.195 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 集計班「…ん?なんだ、あれは?」

集計班は戦場のたけのこ軍陣地辺りを見やった。現在、たけのこ軍は苦戦を強いられているものの、未だきのこ軍からの本格的な拠点侵入を阻んでいる。
そんな中、一人のきのこ軍兵士が猛烈な速度で敵陣地に向かっているのが見えた。戦という熱に浮かされ、あるいは武勲にはやり、闇雲に突撃する兵士の数は少なくない。
しかし、双眼鏡に映るきのこ軍兵士は武器も持たない、まるで丸腰だった。攻撃する意思もないのか、たけのこ軍陣地の周りをただ走り回っている。
まるで、撃ってくれといわんばかり。

きのこ軍 集計班「…まあそうなるだろうな」

案の定、すぐに陣地を防衛しているたけのこ軍兵士に見つかり、複数の銃弾を浴びせられ、きのこ軍兵士は倒れた。
挑発するかのような行動を取っていたためか、随分と至近距離で撃たれたようだ。魔法の治癒力をもってしても傷痕が暫く残りそうだ。
大戦場で斃れた兵士は、実際には死ぬわけではない。大戦場に展開された魔法陣の力で、瞬時に傷が治癒し、
大戦場の横に併設されているバーボン墓場へ送られ、終戦まで待機することとなる。

きのこ軍 集計班「…きのこ軍兵士、一人退場っと…」

何やら得体のしれない気味悪さを感じながらも、職業病からか片手でカウントを進めることは忘れない集計班だった。


510 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その4:2015/07/12 01:23:41.310 ID:f9SJtjjAo
【K.N.C55年 バーボン墓場】

きのこ軍 アイム「…アイタタタ。くそッ、たけのこの奴らめ。近くで撃ちやがって…」

うつ伏せのまま墓地に転送されたアイムは、ムクリと起き上がった。
目の前には、十字の形をした墓標が、秩序をもった等間隔で整然と並んでいる。砂塵が舞い上がりながらも、墓標群は新品同然の艶、光沢を保ち続けている。

初見ではほとんどの兵士が、この場所に薄気味悪さと恐怖を感じる。アイムも始めは同じだった。
しかし、墓標はただの飾りに過ぎず初見兵士を驚かすための趣向の一つであること、負けた軍の兵士が墓標を綺麗に磨き上げる義務を背負う等の
裏事情がわかっていくにつれ、新米の兵士は新参を卒業し、そして新たな新米を驚かせるために“仕掛け側”に周る。
3回目の大戦で初めてバーボン墓場へ送られ静かに恐怖するアイムに対し、御機嫌に説明してくれた際の抹茶のしたり顔は今も忘れられない。
それ以降、バーボン墓場への恐怖は消え失せ、胸糞悪さだけが残るようになった。


511 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その5:2015/07/12 01:26:09.687 ID:f9SJtjjAo
たけのこ軍 Ω「やぁやぁ兄弟、お前も“バーボン送り”にあったか、お疲れさん」

たけのこ軍兵士Ωは、両手にシャンパンボトルを持ちながら、陽気にアイムに話しかけた。

きのこ軍 アイム「まぁそんなところだな。そいつはなんだ?」

銃撃の痕が残る臀部をさすりながら、アイムはΩの手元を指さした。

たけのこ軍 Ω「これは“シャンメリー”さ。どうやら今日の終戦後に会議所側から参加者に配る品だったみたいだけどよ。バーボン墓場では、一足先に頂いているてワケさ」

もう飲むことぐらいしかやることないからな、と語りボトルに口をつける。頬が赤らんでいるところを見ると、どうやら幾分か酔いが回っているらしい。
周りを見ると、バーボン送りの兵士たちは、そこらかしこでシャンパンボトルを空け、盛り上がっている。

たけのこ軍 Ω「お前も飲むかい?まだまだ数はある」

ぐいっと突き出されるボトルを受け取り、アイムはボトルの口に鼻を近づける。やはり酒臭い。シャンメリーとは名ばかりの、ただのシャンパンである。
誰がこのシャンパンをシャンメリーと呼んだのか。下戸が知らずに飲んだら倒れること間違いなしである。

512 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その6:2015/07/12 01:29:02.618 ID:f9SJtjjAo
たけのこ軍 Ω「では、きのこたけのこ大戦に――」

きのこ軍 アイム「…きのこたけのこ大戦に――」

Ωの掛け声で、慌ててアイムは自身のボトルをΩのボトルに近づける。カン、と乾いたガラスの音が鳴り、直後やけに下手な大法螺の音が鳴り響いてきた。


『ぷぶお〜〜ぷお〜〜 現在の兵力は20:13できのこ軍が有利です』

集計の合図を皮切りに、バーボン墓場ではヒューヒューと両軍兵士から囃し立てるような歓声が上がった。

「きのこ軍いけるじゃねーか!そのまま押し切れ押し切れッ!」

「おいおい集計!いい加減、笛うまく吹けるようになれよなッ!耳鳴りかと思って耳塞いじまって、結果を聞き逃しちまったよッ!」

ドッと墓場が笑いに沸く。K.N.C180年に聞いた時でさえド下手だと思っていたが、あれでも練習して上手くなったんだな、とアイムは変なところで感慨深くなった。


513 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その7:2015/07/12 01:34:01.378 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「…随分とうまいシャンメリーだな。どこで調達してきたんだ?」

ボトルに口をつける振りをしながら、逸る気持ちを抑えてアイムはΩに話しかけた。

たけのこ軍 Ω「たけのこ軍に調達係がいるのさ。大戦後に配るボトルを保管して、墓場でずっと待機していたようなんだが。
寂しがっていたんで、みんなで先にいただくことにしたのさ」

グイッとボトルを傾けるΩ。酔いが回っているからか、普段よりも口がよく回る。良い飲みっぷりだ、とアイムは賞賛し、その調達係の所在を訊ねた。

たけのこ軍 Ω「入り口の辺りにボトル積んだバイクと一緒に居るよ。ただ、もう酔いつぶれているかもわからんけどな」

きのこ軍 アイム「…そうか。ソイツからおかわりをもらってくるよ。もう空だろう?」

たけのこ軍 Ω「おお、ありがたい。きのこ軍にも気が利く奴がいたんだなッ!」

カラカラと笑うΩを尻目に、アイムは“調達係”の元へと向かう。勿論、もうこの場に戻ることはない。

514 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その8:2015/07/12 01:36:04.422 ID:f9SJtjjAo
Ωの話していた調達係はすぐに見つかった。バイクの横にある墓標に寄りかかるように、一人のたけのこ軍兵士が鼻歌を歌っていた。

きのこ軍 アイム「随分とご陽気だね。あんたが調達係さんかい?」

たけのこ軍 食糧班「そうさッ!チャーハンからシャンメリーまでなんでも用意するよッ!兵士の幸せを運ぶ食糧班とは僕のことさッ!」

不必要に大声で返答する食糧班は随分と酔いが回っているようだ。アイムにとっては好都合でしかない。

きのこ軍 アイム「そいつは良かった。あんたみたいな他人の幸せも願えるような兵士が、きのこ軍にも居てくれたらいいんだけどね」

たけのこ軍 食糧班「そうだろう、そうだろう!なんたって、僕ぁは、会議所の料理番も担当しているんだからねッ!」

アイムにとって面識のない兵士だが、この時代では会議所に関わっていた兵士の一人のようだ。
食糧班の横にはどでかい中華鍋が置かれている。これでいつも料理を振る舞っているのだろうか。


515 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その9:2015/07/12 01:39:06.252 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「あんたの幸せをもっと多くの兵士に届けてあげたいんだ。たとえば…戦場で必死に戦う同胞とかに、な?」

たけのこ軍 食糧班「それはいい考えだねッ!ぜひともやろうじゃないかッ!」

シャンメリーは、終戦まで保管していないといけない代物である。本来、大戦中に配ることなどあってはいけない。
しかし、アイムの言葉をわかっているのかいないのか、食糧班は手を叩いて喜び、墓標にさらにもたれかかった。

きのこ軍 アイム「それじゃあ行ってくる。バイク、借りるな?」

食糧班の返答を待たずに、アイムは大量のボトルを載せたバイクを発進させた。
勿論、この場に戻ることはもうない。


516 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 01:40:23.442 ID:f9SJtjjAo
懐かしい人がちらほらと。ちなみにK.N.C55年は、2010年度クリスマス聖戦の日です。

517 名前:社長:2015/07/12 02:20:17.472 ID:jPm26BUM0
アイムくんキリキリ頑張れよ

518 名前:社長:2015/07/12 02:38:03.670 ID:jPm26BUM0
ちなみに魔の百合聖戦は今アイム君がいるところよりもうちっと先

519 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編1:2015/07/12 21:26:17.458 ID:f9SJtjjAo
専用の魔導エンジンと特殊な魔法技術を搭載したバイクは、バーボン墓場から戦場への再移動を可能とさせた。
無言でバイクの速度を上げるアイム。目的はきのこ軍陣地。最初から決まっている。
全て、計画通りだった。敢えてたけのこ軍兵士に撃たれバーボン送りとなることも、バーボン墓場にいる調達係と接触しバイクを奪うことも。
予めアイムは理解していたのだ。今次大戦でどちらの軍が勝利し、何が起こるか。小憎たらしい“相棒”から、今次大戦の全容を聞かされていた。


―― オニロ『K.N.C55年。アイムはどんな年か知っておいたほうがいいんじゃない?』

―― オニロ『まず、この戦いではたけのこ軍が勝利するんだ。途中まできのこ軍が優位に戦局を展開させていたんだけど、終盤にたけのこ軍の猛攻にあって逆転負けを喫する。
まるでいつものきのこ軍だね…アイタッ!殴ることはないじゃないかッ!』

―― オニロ『また、この日は世間一般で言うところのクリスマス。会議所側では、終戦後に、シャンメリーのボトルを参加者に一本ずつ配布する予定だったらしいんだけど。
調達係が、バーボン墓場にいる兵士たちにシャンメリーを振る舞いすぎて、用意されていたボトルは終戦後にはほとんどスッカラカンだったらしいよ』

―― オニロ『担当係曰く「悔いはない。でも、バーボン兵士に全部配るぐらいだったら、大戦中の兵士にも幸せを運べればよかった」と、
反省の弁を述べていた、と記載してあるね』

―― オニロ『シャンメリーてお酒のないシャンパンみたいなものだよね?そんなに美味しかったのかなあ』


520 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編2:2015/07/12 21:27:45.007 ID:f9SJtjjAo
アイムはきのこ軍陣地に向けてバイクを走らせる。歴史の大幅な改変は現代に多大な影響を及ぼす可能性がある。
あくまで歴史改変は、史実ベースに沿わなければならない。

アイム「…だからこそ、この大戦で“きのこ軍は負けなければいけない”」

アイムは今からきのこ軍を完全な敗北に追い込むための一手を打つ。
史実にはないアプローチの仕方で、愛してやまないきのこ軍を完膚なきまでに叩く。

521 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編3:2015/07/12 21:30:54.611 ID:f9SJtjjAo
【K.N.C55年 大戦場 きのこ軍前線拠点】

たけのこ軍陣地の程近くにきのこ軍の前線拠点が在ることを、アイムは先ほどの突撃の際に確認していた。
弾が当たらない最短ルートで拠点に辿り着くと、騒々しく慌ただしかった陣営は静まり、アイムただ一点に注目が集まった。

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「誰だ貴様はッ!前線への支援を頼んだ覚えはないぞッ!」

天幕の中で作戦指揮を執っていた戦闘隊長の黒砂糖は、アイムを見つけるや否や怒鳴りつけるように声を荒らげた。

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「本部の参謀大将Θに何度も伝えたはずだ。現有戦力で十分に戦えるとなッ!」

若き日の黒砂糖は今よりも幾分か猛っていた。闘士をむき出しにし、敵味方であろうと噛み付く姿勢は正に剛健。
黒砂糖の威圧に負けず、アイムは綺麗な敬礼ポーズを構え腹から声を出す。自らが敵でないことを証明する。

522 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編4:2015/07/12 21:39:34.213 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「大佐殿!我軍は現在、敵軍の最終防衛ラインに肉薄するほどの攻勢を仕掛けておりますッ!
状況は俄然我軍に有利ッ!援軍を検討していた参謀大将Θも黒砂糖隊の働きを十分に評価しております!ッ」

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「それは本当か。ようやく参謀も我が隊の実力を認めたか。だから言っているのだ、我が黒隊が敵を蹂躙するとな」

アイムの偽報に、満足気に頷く黒砂糖。参謀の懸念は決して間違いではない。
たけのこ軍の防衛戦術に一日の長があること、敵軍精鋭たちの組織的反抗戦を理解していた参謀は再三、黒砂糖へ増援を提案していた。
しかし、この案を黒砂糖は一蹴。自らの隊に信用が無いと誤解した黒砂糖は、頑なに増援を拒んでいた。
史実でも、この慢心が結果として敵軍に付け入る隙を与え敗北することになるが、アイムとしては知ったことではない。

きのこ軍 アイム「このシャンメリーは、本部から“祝の品”として黒砂糖隊に贈呈されたものです。 “勝利を記念して贈る”という参謀大将Θの言葉も請け賜っております」

アイムの言葉に、周りのきのこ軍兵から感嘆の声が上がった。現時点で祝の品が届けば、本部は勝利を確信している。
即ち、黒砂糖隊の力を十二分に評価していることへの表れ。

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「これはめでたいッ!すぐに前線で戦っている同胞にも届けよう。士気がますます高まり、我らきのこ軍の敗北はなくなるぞッ!」

きのこ軍兵士から大歓声が上がり、すぐにシャンメリーがせっせと運ばれていった。
単純だなあ、とまるでアイムは他人事のように思い、これから目の前で繰り広げられるであろう酒の宴を想像すると少しゲンナリとした。


523 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編5:2015/07/12 21:43:22.955 ID:f9SJtjjAo

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「うおおおおおおお!祝いじゃ祝いじゃ!もっと飲めえ!」

きのこ軍兵士「サーイエッサーッ!うひゃひゃひゃ!」

きのこ軍兵士「たけのこ軍がナンボのもんじゃいッ!!」

緊張感で張り詰められた戦闘拠点は、ものの5分で酒乱の場と化した。
気難しい顔をした兵士は、シャンメリーを片手に隣の兵士と肩を組み軍歌を歌う。
前線に物資を補給していたはずの補給兵は弾の代わりにシャンメリーを運び続ける。
指揮隊長の黒砂糖は特に酔いがまわっているのか、天幕の上によじ登り裸踊りを始める始末。
頑強な指揮官の姿は今はない。

きのこ軍 アイム「…確かに、この惨状を見せられちゃあオニロにあんな風に言われても仕方ないよな」

予想した通りに事が進んだとはいえ、予想を遥かに上回る総崩れプリを見せつけられたアイムは、一人がっくりと肩を落とした。
おそらく、数分もしないうちにたけのこ軍の軍勢がこの拠点を突破することだろう。さっさと逃げる算段を整えようとした瞬間――


―――『おめでとう。クリア』


以前、頭のなかに響いた声と同じ。透き通るような声でアイムに向かって突然語りかけた。

524 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編6:2015/07/12 21:45:05.292 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「…だから誰なんだよお前は」

どこかで聞いたこともあるような声。だが、その正体を探る時間はアイムに残されていない。
詳細は不明だが、今の声を聞き、アイムは再び歴史改変が実行されたと確信した。
即ち、時限の境界の第三の制約を破ったという事。

きのこ軍 アイム「うかうかしてられねえ。戻るぞッ!」

バイクに飛び乗り、アイムは急いで時限の境界に通じている塹壕の横穴に向けて発進する。


525 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編7:2015/07/12 21:47:00.979 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「ハハッ!やったッ、やったぞ。なんだ、案外チョロいものじゃねえか」

風を切り、アイムは勝利の道を爆走する。現時点では断定できないが、おそらく現代では歴史改変が実施されたはずだ。

K.N.C55年の歴史改変を実行しようとした際。アイムは『大戦の勝敗結果』を改変することだけは絶対に避けなければならない、と心に決めていた。
大戦の勝敗変更は、総合結果の勝敗数を書き換えるだけでなく、その時点で活躍するはずだった兵士の“武勇伝”の取り消しにも繋がる。
たとえば、現代で戦い続けているたけのこ軍兵士のモチベーションが、K.N.C55年の活躍にあるとしたら。
デビュー戦だから。あまりにも見事な逆転勝ちで大戦に惹きつけられていったから。そんな兵士の大戦意欲すらも、一回の勝敗改変は打ち消してしまう。

あまりにも余波が大きい。
玉突き事故のように、一回の改変は複数の改変を共鳴させてしまう恐れを孕んでいることを、アイムは重々承知していた。

526 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編8:2015/07/12 21:48:22.917 ID:f9SJtjjAo

―― オニロ『また、この日は世間一般で言うところのクリスマス。会議所側では、終戦後に、シャンメリーのボトルを参加者に一本ずつ配布する予定だったらしいんだけど。
調達係が、バーボン墓場にいる兵士たちにシャンメリーを振る舞いすぎて、用意されていたボトルは終戦後にはほとんどスッカラカンだったらしいよ』

だからこそ、アイムはオニロの語った『シャンメリー配布』という情報に注目した。
大戦とは直接関係のない出来事。だからこそ、アイムは“きのこ軍が敗北する”という事実に沿うように、“シャンメリー配布”に関連する歴史だけを改変した。
結果だけを確定し、その結果へのアプローチの仕方だけ改変したのである。
歴史改変による余波は最低限に食い留められ、結果として、本来は飲むことが叶わなかった一部の兵士にもシャンメリーが行き届く。
ある意味で慈善活動も兼ねているのだ。
歴史改変に気乗りでなかったアイムの気も少しは晴れるというものだろう。きのこ軍の単純プリには少し落胆したが。

527 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編9:2015/07/12 21:50:03.770 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「…しかし、何か忘れているような気がするんだよなあ」

アイムは言葉で言い表せない胸騒ぎを覚えた。トントン拍子の物事が運んでいく事態を決して楽観していたわけではない。
始終、誰かに見られているような違和感があった。まるで、誰かに後をつけられているような。


― 視線を感じていた。


きのこ軍 アイム「あの謎の声の野郎か?オレの行動をずっと監視できる奴なんているわけなんて…まさかッ―――」

アイムが何かに気が付き驚きの声を上げると同時。
ヒュッと短い風切り音がアイムの耳に届き、直後に乗っていたバイクが爆発炎上、四散した。


528 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編10:2015/07/12 21:57:01.336 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「ッ!!!――」

地面に叩きつけられ声にならない悲鳴をあげるアイム。頭に降り注ぐバイクの部品を浴びながら、アイムは事の次第を理解した。
何と自分は愚かだったのか。アイムは自らの浅はかな行動を悔いる。
全て思い通りの筈だった。大戦内できのこ軍であるという自分の立場を生かし、きのこ軍内に自然と入り込み、歴史改変を実施したはずだった。


―― 集計係の目を欺くことさえ忘れなければ。


物見山の頂で、アイムに向けて弓を射た集計班は、静かにその弦を下ろす。
雪は降り止み、雲の隙間から微かに陽が顔を覗かせる。集計班の背に向かって降り注ぐ陽は、後光のように集計班を照らしアイムは思わず目を細めた。
失念していた。集計係の存在を。大戦の“目”ともいえる、観測者たる集計が始終見届けていたことを。
遠くにいる集計班と目が合う。その目は、いつもの穏やかな蒼とは違う、ただ純粋な敵意を向けた紅に染まっていた。
後悔しても遅いが、アイムは小さく舌打ちした。

時限の境界の横穴までは後少し。集計係の“目”を、アイムは掻い潜り、突破しなければならない。

529 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 21:58:00.546 ID:f9SJtjjAo
すんなりと終わるはずが…まだもうちょっとだけ続くんじゃ。

530 名前:社長:2015/07/12 22:00:31.075 ID:jPm26BUM0
黒ちゃんはしたなーい

531 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 22:14:21.840 ID:f9SJtjjAo
今日のカードよ。

http://dl6.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/674/card-4.jpg

一昔前はVIPにバーボン送りなんて機能がありましてなあ。
短時間で連投すると書き込めなくなる(バーボン送り)なんてことがザラでしたなあ。

532 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その1:2015/07/22 23:12:49.735 ID:W2GsgyHco
【K.N.C55年 大戦場】

きのこ軍 集計班「…」

きのこ軍 アイム「…」

爆音、咆哮、そして悲鳴。普通なら戦場で終始聞こえてくる雑音は、この二人の耳には全くといっていいほど聞こえてこない。
集計班の目は紅蓮に染まり、近づく者を今にも射抜かんとしている。チラリと、アイムはきのこ軍前線拠点の方を見やる。まだ動きはないようだ。

きのこ軍 集計班「…ッ!」

きのこ軍 アイム「うおッ!」

睨み合いに痺れを切らしたのか、集計班から放たれた一本の矢が高速でアイムに向かう。
余所に気を取られていたアイムだが、修業の成果で、空気の震えから矢の動きを感知し瞬時に避ける。


533 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その2:2015/07/22 23:14:14.902 ID:W2GsgyHco
きのこ軍 アイム「なッ!」

しかし。放物線を描いていた矢尻は、空中でポンと乾いた音とともにさまざまな方向に散らばると。それぞれの矢尻は巨大な錨に変化。
互いの錨同士が太くキツイ網で繋がれた巨大な引網として、アイムに襲い掛かった。
まさか、一本の矢が自身を覆うほどの手繰網に変化するとは思いもよらなかったアイムは、漁師の仕掛けに引っ掛かるかのごとく、すっぽりと網にキャプチャーされてしまった。

きのこ軍 アイム「うおッ!離せ!」

きのこ軍 集計班「無駄です。私の魔法で、その網を破ることはできませんよ」

活きのイイ魚のように網の中で暴れるアイムを見て、片手にメガホン拡声器を構えた集計班は余裕しゃくしゃくといった表情で答えてみせた。
アイムが暴れれば暴れるほど、網の重しとなっている錨は砂に沈み込みアイムの身動きは取れなくなる。
終いに、網の自重によりアイムは地面にうつ伏せの状態のまま動けなくなってしまった。


534 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その3:2015/07/22 23:15:33.081 ID:W2GsgyHco
きのこ軍 集計班「さて…あなたの動きはずっと見させてもらいました。バーボン墓場に転送されてから見失っていましたが、まさか“シャンメリー”を自軍内に配るとはねえ…」

きのこ軍 集計班「あなたは “シャンメリー”の正体を知っていたはずだ。黒砂糖さんが酒に弱いことも把握していたかどうかはさておいて、前線拠点はあっという間にあの有り様。
善意なのか、それとも故意なのか、それを問わねばならない――」

アイムはただ、じっと地面の“鼓動”に耳を済ませていた。まだだ。まだ、聞こえてこない。

きのこ軍 集計班「スクリプトと同じく大戦を滅茶苦茶にする愉快犯ならば、いくら同軍の戦友だとしても看過することはできない」

きのこ軍 アイム「愉快犯?ハッ、違うね。オレはきのこ軍のために動いていた。きのこ軍の勝利のためにね」

きのこ軍 集計班「面白い冗談だ。わざと敵軍に討たれ、バーボン墓場から酒を調達して戦場にバラ撒くのもただの善意だというのかい?」

きのこ軍 アイム「そうさ。オレの行動は全くといいほど善意に満ちている。きのこ軍兵士も、調達係の食糧班さんもオレに感謝していたよ。心が荒んでいるあんたには理解できないやしれないがね」

ド…ド…ド。まだ大地の鼓動は弱い。もう少しだけ待たねばならない。


535 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その4:2015/07/22 23:16:52.656 ID:W2GsgyHco
きのこ軍 集計班「愚か者と犯罪者は皆そう言う。自分の正義を振りかざし、他人への迷惑を顧みない。表面的なことしか考えられず、内面的なことまで気が及ばない頭が堅い野郎だ」

きのこ軍 アイム「おいおい、随分と語るじゃないか。でもそれって、あんた自身のことじゃないのか?」

きのこ軍 集計班「笑止ッ!」

ドドドドド。徐々に鼓動が強まっていく。大地の震動が、アイムの身体に直に伝わってくる。時は来た。

きのこ軍 集計班「…ていうか、私が楽しみにしていたシャンメリーを先に飲みやがって…聞いているのか!おい!」

きのこ軍 アイム「…なあ」

きのこ軍 集計班「…おうなんだよ」

アイムの遮った声は、嵐の前の静けさと言わんばかりにやけに集計班の耳にはっきりと届いた。同時に、集計班はそこで初めて、やけに周りが喧騒としていることに気がつく。
大地の生命の波は、正にアイムたちに近づかんとしていた。


きのこ軍 アイム「…集計活動、怠っちゃいかんよなあ?」


きのこ軍 集計班「なにを…まさかッ!」


たけのこ軍 抹茶『う、うおおおおおおおおおお!僕に続けええええええ!きのこ軍を蹴散らせええええ!』

たけのこ軍兵士『うおおおおおおおおおお!』


536 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その5:2015/07/22 23:18:43.626 ID:W2GsgyHco
きのこ軍 集計班「げえ!あれは抹茶ァ!」

戦闘不能となったきのこ軍前線拠点を壊滅させたたけのこ軍決死部隊の咆哮、足音は、大地に轟音の波としてアイムの耳に伝わってきていた。
普段の集計班なら、たけのこ軍団の接近は自らの“目”をもってすれば容易に把握できた。
しかし、ウロチョロと動き回る目の前の“小蝿”に気を取られるあまり、彼の視野は狭まり、結果として軍団の発見がほんの少しだけ遅れた。そこを、アイムは見逃さなかった。

たけのこ軍 抹茶「敵軍の兵は全員寝てたし、よくわかんないけど千載一遇!進め進めええええええッ!」

きのこ軍 集計班「ま、まずい…ヤツを避難させないと一段に轢かれてしまうッ!」

たけのこ軍団の経路上には、身動きの取れないアイムが横たわっている。
不幸なことに興奮状態のたけのこ軍兵士は、アイムの存在に気づいている様子がない。

きのこ軍 集計班「ま、まずい避難させなくちゃ。えと、空間転移呪文をッ!
『ウィンガーディアム・カレービオーサ』!
し、しまったッ!これはカレーを増殖させる魔法だったッ!」

カレーまみれになった集計班がパニックとなっている隙に、アイムは目を閉じ精神を集中させる。
思い出す。筍魂の訓えを。


537 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その6:2015/07/22 23:19:49.511 ID:W2GsgyHco
きのこ軍 アイム「…“生命力の流れ”は即ち――」

大量の足音が近づいてくる。普通ならば鼓膜が破れるほどの轟音。
しかし、アイムは顔を顰めることもせずに、目の前の状況を“受け入れる”。大地の、生命の鼓動を受け入れる。

きのこ軍 アイム「―― “世界の理”と同化する」

カッと目を見開く。瞬間、身体の前面にあった大地の砂が音もなく削り取られたかのように消え去る。
大地と同化したアイムは、自らの意思で身体に触れていた大地を意図的に消し去り、地面に潜り込んだのだ。

きのこ軍 集計班「う、うわあああ!轢かれる!たけのこの鬼!悪魔!チョコたっぷり!…っと、あれ?」

為す術もなく、たけのこ軍団の通過を目撃するしか無かった集計班は、軍団が去ってからアイムの姿が跡形もないことに気がついた。
地引網の錨は地面に食い込んだままだが、綺麗にアイムの姿だけが消え去ってしまっていたのだ。摩訶不思議。


538 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その7:2015/07/22 23:23:00.015 ID:W2GsgyHco
きのこ軍 集計班「…さて、と」

もう逃げたし、いいかな。打って変わって驚くほど冷たい声で呟いた後、集計班は座っていた椅子に身体を預けた。
その目は、先程の真紅とは程遠い、どこまでも透き通る蒼、蒼、蒼。

きのこ軍 集計班「“アレ”が“希望の星”ねえ…」

手元に並べられていたカレー皿を手に取り、掬い、口へ運ぶ。

きのこ軍 集計班「なかなかどうしてキレ者じゃないか。あの分なら“向こうでも”、特にこちらから動くことも無さそうなんじゃないか。まぁ…未熟だけど」

気丈に振る舞っていた“小蝿”も、内心では焦っていたのだろう。アイムの顔を覆っていた深緑のバンダナが、網の上にはらりと落ちていた。

きのこ軍 集計班「ツメが甘いが、まあこんなところだろう。向こうの私によろしくね…“未来人”さん」

魔法で深緑のバンダナを一瞬で消し去る。100年以上先の未来に思いを馳せ、集計班は静かにくつくつと笑い声を漏らすのだった。


539 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代への帰還編その8:2015/07/22 23:24:57.388 ID:W2GsgyHco
【K.N.C55年 大戦場】

アイム「……だぁッ!」

時限の境界に通じる横穴近くの地面から、アイムはからくもといった様子で這い出た。

アイム「ペッ、ペッ。口に砂が混じってらあ。…げえ、バンダナも無くしちまった。砂の中で落としたのか?」

自身を拘束していた網を掻い潜り地面へと素潜りする形になったアイム。張り巡らされた大地と一瞬で同化し、横穴近くの地面を探し当て、必死に泳いできた。
息が切れる心配はなかったが途中で焦り。最後には耳に、鼻に、口に大量の砂が入り込むというあまり締りのない結末になってしまった。

アイム「そんなことはどうでもいい…頼むから、開いてくれよ」

横穴をくぐり、時限の境界の【扉】の前に立ったアイムは、縋るような思いでドアノブに手を触れる。
アイムの行ってきた行動は全て、もう一度時限の境界を通れる布石でしかない。見えない新たな【制約】はわからず、あくまで予想でしかない。この時点でも尚、時限の境界を通れないのならば。
アイムは再度K.N.C55年の大戦世界に再び身を投じ【制約】の内容を洗いなおさなければいけない。もしくは、誰にも見つからずK.N.C180年まで留まり続けなければいけないのだ。

アイム「頼む…頼むッ!」


勢い良く、ドアノブを回し。

ガチャリ。


小気味良い絡繰りの音とともにドアは開かれ。
アイムはようやく現代へと戻ることができたのだった。


540 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/22 23:26:46.140 ID:W2GsgyHco
ようやく現代へと戻れた主人公。しかし、さらなる不幸がアイムを襲うッ!

541 名前:社長 【小吉】:2015/07/22 23:31:20.014 ID:/NqlqInM0
アイム君 復活おめでとう

542 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 役者が揃ったよ編その1:2015/08/09 23:22:24.151 ID:ET.H3hVoo
【K.N.C180年 会議所 wiki図書館】

アイム「ようやく戻ってこれたが…本当にここは現代なのか?誰もいねえじゃねえか」

アイム「とりあえず編纂室に戻らねえと。でも、あの部屋へ行くと気持ち悪くなるんだよなあ」

とりあえず顔見せないとみんな心配するだろうな、と言いながら編纂室がある場所に向かおうとすると。
ドン。

アイム「アッ…痛ゥ。おい、どこ見て歩いてるんだッ!」

??「すまんすまん。ここに来るのは久々でね、つい迷ってしまった」

紳士然とした兵士は、被っていたシルクハットのツバを触り、謝罪の意思を見せた。


543 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 役者が揃ったよ編その2:2015/08/09 23:26:37.042 ID:ET.H3hVoo
アイム「まあいいけどよ。どこに行きたいのか知らねえが、あんまり無茶すんなよオジサン。もう若くねえんだから」

??「ハハハ、そうだな」

アイム「んじゃあ元気でな、場所わからねえなら事務方の兵士に聞けよな」

あ、でも今は誰もいないな、まあ知ったこっちゃないか。そんなことを思いながら編纂室に向かおうとすると。

??「もし、そこの若者よ。案内してもらってもいいかな?――――大戦年表編纂室に」

アイム「……テメエ何者だジジイ」

大戦年表編纂室。限られた会議所兵士しか知らない部屋の存在を、どうしてこの老紳士が知っているのか。
アイムが腰にある短刀に手をかけようとすると――


参謀「おーい、ここにおったんか。バイク止めてる間に居なくなったから心配したでッ!」

??「はは、すまんすまん」

参謀「あれ程待ってろと言ったのに…お、アイム!戻ってきたんか!」

アイム「…どういうことだってばよ?」


544 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 役者が揃ったよ編その4:2015/08/09 23:28:09.832 ID:ET.H3hVoo
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

加古川「シューさんは消え、アイムは帰ってこない…状況としては最悪だな」

791「参謀はいつ帰ってくるの?」

黒砂糖「もうそろそろ帰ってくると思うんだが…」

スリッパ「…」

社長「アーオーフゥ!」

筍魂「アイム…折角の弟子を…戦闘術『魂』の伝承者を…」

オニロ「アイム…そんな…」


545 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 役者が揃ったよ編その4:2015/08/09 23:28:59.521 ID:ET.H3hVoo
バタン。勢い良く扉が開かれると。

アイム「辛気臭い顔してるなお前ら」

オニロ「アイム!?帰ってこれたの!?」

アイム「勿論だ。オレぐらいになれば実力でよ。それとオニロ…ありがとな」

オニロ「なんのはなし?」

社長「クセエ」

筍魂「ワイは最初からアイムの帰還を信じてたで!(テノヒラクルー」

スリッパ「アイム、よく戻ってきてくれた…これで参謀とシューさんが戻ってきてくれればとりあえずは…」


546 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 役者が揃ったよ編その5:2015/08/09 23:31:40.066 ID:ET.H3hVoo
参謀「俺は戻ってきたぞ」

??「ほう、ここが編纂室か」

¢「参謀ッ!と、横にいるのは…まさか、あなたは」

加古川「お前は…」

社長「!!」

筍魂「あなたはッ!すいません誰ですか」


参謀「魂さんとは時期的に入れ替わりやったな。この人は―――たけのこ軍兵士 コンバット竹内。元・会議所兵士や」

竹内「どうも皆さんお久しぶり――かくいう私はもう隠居した身でね」


集計班が去り、引退したはずの竹内が戻る。そして物語は動き出す。


547 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 役者が揃ったよ編その5:2015/08/09 23:32:28.796 ID:ET.H3hVoo
今日のカード更新よ。というわけで謎の黒マント野郎は竹内さんでした。

http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/683/card-23.jpg

548 名前:社長:2015/08/10 00:24:08.370 ID:T1URvvEI0
まあ予想通り

549 名前:たけのこ軍 一等兵 昇1:2015/08/10 17:32:42.158 ID:CMAzFzYko
更新乙です
改めて全部読んでみて、集さんが暗闇で話してるのは社長だと思った
過去の自分と意見が違ってしまった…

550 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その1:2015/08/11 22:54:25.408 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 参謀「竹内さんの下へ向かうように指示してきたのはシューさんや。
“一生のお願いだから頼む”と置き手紙に書いてありゃ、行かないわけにはいかんしな」

参謀、竹内、そしてアイムが集合した編纂室では情報を整理するために円卓テーブルを囲むように会議が開かれた。
アイムが現代に戻るまでの経緯、そして竹内が連れてこられた経緯などが滔々と話されていった。
その会議の中心にいたはずの集計班の姿はない。

冒険家 スリッパ「つまり、シューさんの置き土産が竹内さんということになるのか…」

たけのこ軍 オニロ「スリッパさん…そんな言い方は、まるでシューさんが二度と戻ってこないかのような…」

たけのこ軍 社長「みんな!いやだよね!」

きのこ軍 アイム「戻ってきたらシューさんがいなかったのはショックだな。なあ、もしかしてオレがムリヤリ過去の歴史を改変したから、シューさんが消えたんじゃないか?」

たけのこ軍 オニロ「それはないと思うよアイム。ボクたちは、アイムが現代に戻るために起こしたであろう歴史改変の“波”を体感した。
その時点で、シューさんの姿はもう無かったんだ」

たけのこ軍 社長「ちなみに百合神さまは時を超えられる」

きのこ軍 ¢「…こんな時に落ち込ませるようなこと言うのは悪いけど、もうシューさんは帰ってこない。そんな気がするんよ」

たけのこ軍 社長「ふざけてんだべ?」


551 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その2:2015/08/11 22:55:21.970 ID:gOOLcBf2o
冒険家 スリッパ「いや、¢くんの言うとおり、最悪の事態は常に想定しないといけない。
シューさんの無事が一番だが、もう戻ってこないと想定した上で今後の対策を練ったほうがいいだろう」

長い間、編纂室に沈黙が訪れた。集計班の失踪は、会議所の実務的な損失よりも、各々の心の支えを失った精神的な損失のほうが遥かに大きかった。
良くも悪くも、集計班は常に会議所に“居た”。だからこそ、兵士たちは集計班を頼り困ったことや面倒事を全て押し付けることもできたのである。
久々にほぼ全員が集まった会議は、まるで通夜のように全員が押し黙り、深い沈黙に包まれていた。


552 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その3:2015/08/11 22:56:20.883 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 アイム「…おいテメエ、“アレ”はやらないのか?」

たけのこ軍 社長「オニロ君、キミだね?」

きのこ軍 アイム「いや、お前だよお前」

たけのこ軍 社長「えっ!? オレ!?」

たけのこ軍 オニロ「もしかして、社長の占いのこと?」

きのこ軍 アイム「そうだよ。何時だって、流れの転換点にはアイツの占いがあった」

たけのこ軍 社長「え」

きのこ軍 参謀「そういえばそうや…」

竹内「昔から社長は変人だったな。昔とはまたベクトルが違うがな」

たけのこ軍 社長「ちょ、ちょっと待ってくれアイム君。百合本5冊で手を打とう」

きのこ軍 アイム「誰も意味なんて理解できやしないが、会議とアイツの占いは切っても切れないモノなんだろ。それはオレも認めてやる。さあ占いを出しやがれ」

たけのこ軍 筍魂「申し訳ないがきのこ軍兵士のツンデレはNG」

たけのこ軍 社長「…」

社長は顔を伏せ、一言も言葉を発す素振りはない。
それどころか、小刻みに身体を震わせ始めた。身体も全体的に青ざめバグっぽい。


553 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その4:2015/08/11 22:57:19.267 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 ¢「しゃ、社長の様子がいつもと違うんよ」

たけのこ軍 加古川「いつもはシューさんにフラれると間髪入れずに預言してたような」

たけのこ軍 斑虎「無理に占わせようとしているからおかしくなったんじゃ」

たけのこ軍 オニロ「いや、でもよく考えたらおかしいのはいつものことじゃあ…」


たけのこ軍 社長『おきのどくです!!!!!』


全員「!?」

社長の突然叫びに全員は目を見開いて、社長の方を見つめた。
社長は立ち上がり、血色の良いバグを全面に貼り付けた様相で、占いを始める。


554 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その5:2015/08/11 22:58:16.557 ID:gOOLcBf2o
たけのこ軍 社長『ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ!』

そう告げ、周りに座っている全員を見回す。
社長の視線が、一瞬、空白の集計班の席で止まったかのようにオニロには見えたが、占いは続く。


たけのこ軍 社長『預言?しらね^^』


きのこ軍 アイム「はぁ?お前、なに自分の存在を否定してるんだよ」


たけのこ軍 社長『皆食べようぜ〜☆』


たけのこ軍 社長『アア オワッタ・・・・・・・・!』


ストンと社長は自分の席に着く。占いは終わったらしい。


555 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その6:2015/08/11 22:59:48.087 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 参謀「えーと、占いの内容は
『おきのどくです!ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ! 預言?しらね^^ 皆食べようぜ〜☆ アア オワッタ・・・・・・・・!』
やな」

きのこ軍 アイム「相変わらず意味不明だな。おい、要訳しやがれ」

たけのこ軍 社長「ダクソして寝よ」

きのこ軍 アイム「プッツン。殺すッ!」

たけのこ軍 斑虎「タンマ!アイム、タンマ!」

竹内「ハハッ。見ない間に、随分と賑やかになったものだな」

冒険家 スリッパ「ふふ、本当にな」


へんてこな占いが、初めて会議を正しい方向に導いた。会議の沈黙を打破したのだ。
こうして社長の占いで、兵士たちは再び少しだけ活気を取り戻したのだった。


556 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/08/11 23:00:10.659 ID:gOOLcBf2o
少しずつでも更新していくスタイル

557 名前:社長:2015/08/11 23:05:15.091 ID:xpuHfegQ0
タネフフっぽい

558 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その1:2015/08/22 23:48:16.915 ID:4S8Gc2Yoo
冒険家 スリッパ「聞きたいことは山ほどあるが…まず、本来の『目的』について話してもらってもいいか」

たけのこ軍 抹茶「『過去の時代で、スクリプト工場の跡地を見つける』ことですね。はい、確かに工場の跡地をK.N.C55年でも見つけました」

時限の境界に居座り続ける膨大な数のスクリプト。会議所の地下に幽閉されていたスクリプトの数から明らかに増加している。さらに今まで誰も目撃したことがなかった巨大スクリプト『NEXT』の登場。
DB主導で『スクリプト生産工場』を現代、過去のいずれかの時代で建設し、スクリプトを生産した作成した事実に他ならない。スリッパや集計班を始めとした兵士は、予てより生産工場の痕跡を追っていたのである。

そして、アイムが筍魂に訓練をつけてもらっている頃、調査班は現代にて風化した生産工場らしき跡地を発見。
上記の仮説のもと、会議所は適当な時代に目星をつけ、第二次討伐隊を過去の時代に送り込んだ。

生産工場の痕跡を追跡するため――
あまつさえDBを発見し捕獲するため――


559 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その2:2015/08/22 23:52:00.056 ID:4S8Gc2Yoo
たけのこ軍 抹茶「工場はK.N.C55年時にも同じく破壊されていましたが、破壊されてからまだ日は浅いものと見られました」

きのこ軍 someone「おそらく破壊されてから4、5年ぐらいて感じだったかな」

たけのこ軍 社長「百合神様は全てを破壊できる能力を持っているらしい」

きのこ軍 参謀「ふむ。なら、スクリプト工場建設年代を特定するのは思っていたよりも容易いかもしれんな」

たけのこ軍 斑虎「それが…そう、うまくはいかないかもしれないんだ」

きのこ軍 ¢「どういうことだ?」

たけのこ軍 社長「ふざけてんだべ?」

たけのこ軍 抹茶「スクリプト工場の規模から考えて、時限の境界に跋扈しているスクリプトの数と生産数とで整合性が取れない気がするんです…つまり――」

たけのこ軍 オニロ「――スクリプト工場は“複数”ある?」

オニロの言葉に神妙な面持ちで頷く抹茶。

きのこ軍 黒砂糖「…そういえば、今回の騒動中にDBを見た者は誰も居ないことに少し前に気がついたんだ。それで、ここにいる兵士と、DBの行動について話し合っていたんだが――」


560 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その3:2015/08/22 23:58:17.470 ID:4S8Gc2Yoo
DB討伐隊は、今回の騒動の主犯格であるDB捜索を第一の目的として設立された軍団だ。

――しかし、未だにDBの姿すら捉えられていない。

冒険家 スリッパ「…DBの現在の行動パターンとして、大きく分けて二通り」

DBの所在の推理は以下の通り。
1. DBは現代[K.N.C185年]に留まっており、今もどこかに姿を隠し続けている。DBが本騒動の主犯であることは間違いないだろうが、現在の歴史改変は主にスクリプトが自主的に行っている。

2. DBはスクリプトと同じく、時限の境界に留まり続けている。時限の境界の制約T【時限の境界に一定時間以上留まり続けられない】を利用し、ランダムな年代に跳び、スクリプトと同じように歴史改変を実行。
  その際に、新たなスクリプト工場を作成し、その場で破壊するか、数年後に破壊するかして、スクリプトを無尽蔵に増やし続けている。
  歴史改変を行うと制約U【その時代の歴史改変を行わない限り、現代へ戻ることはできない】の内容を履行することになり、再び時限の境界に戻り、またランダムな年代に跳び…と、無限にリピートする。


きのこ軍 きのきの「選択肢2の方が、現実味があるな。時限の境界で籠城を続けているスクリプトたちと行動ルーチンは同じことになるな」

たけのこ軍 社長「北斗「貴方は同じ事を繰り返すでしょう」」

たけのこ軍 オニロ「極端な案だけど、例えば選択肢2の通りDBが行動しているとして。過去の年代へループしてワープしているとしても、限りはありますよね。
過去は有限。無限じゃない。つまり、DBが過去の時代を全て跳び終わり、これ以上時限の境界を利用できない時を狙って捕獲、もしくは討伐するっていうのはどうなんでしょう?」

たけのこ軍 筍魂「根気よく待つ作戦か。悪くないな」

たけのこ軍 加古川「それが…どうも長く待っていられないみたいなんだ」

たけのこ軍 筍魂「そんな長い時間、用意されているわけ無いだろッ!!(テノヒラクルー)」

老眼鏡を外し、目頭を抑えている加古川の姿は、いつもよりも酷くくたびれて見えた。

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

561 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その4:2015/08/22 23:59:43.731 ID:4S8Gc2Yoo
【K.N.C??年 ???】

???「フハ、フハハハハハハ!!」

歓喜に満ちた笑い声。気色悪いガラガラ声が、ガランとしたフロア内によく響いた。

???「感じますねぇ、この瞬間もッ。オレ樣の元に【世界の力】が集結しているのがッ。“実感”できるゥ」

舌を突き出し、まるで尻尾を振る犬のように声の主は興奮状態に包まれている。両の手の拳を握りしめ、自らがより強大な存在になりつつあるこの瞬間に感銘を受ける。
声の主の身体からは、僅かではあるが薄ぼんやりとした光が放たれている。この瞬間こそが至福で愉悦な時間。

“全世界の兵士から奪った力”を吸収し続け成長を続ける自身の現状に、笑いをこらえることができない。


???「兵士の気力を、精神力を、魂を奪い“喰らうッ”!!これ程までに楽しいことがあるだろうかッ!愉快、愉快ッ!!!」

会議所が歴史改変に手をこまねいている間にも、異型の存在は強大化し続ける―――


562 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/08/23 00:00:01.634 ID:sh12dLiwo
ラスボスが出てこないことで有名なssです

563 名前:社長:2015/08/23 02:01:10.730 ID:87lDBqGs0
更新乙

564 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 改変と歴史の関係編その1:2015/08/30 23:25:00.526 ID:qhQJv00go
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

たけのこ軍 加古川「最新の統計で明らかになったことだが。
きのこの山、たけのこの里、両方で以前に比べて大戦にやる気を見せる兵士が激減している」

『街角アンケート〜あなたは大戦にどれくらい興味を持っていますか?〜』という、
ポップな字体で書かれたアンケート用紙を見せる加古川。しかし、結果はなかなかおぞましいことになっていた。

たけのこ軍 加古川「騒動前は、『大戦に参加する』と答えた兵士が93%だったのに対し、最近は22%にまで低下。
しかも現在も、刻一刻とその数は減り続けている」

たけのこ軍 社長「参加ダウンの原因はトイレじゃないの」

たけのこ軍 791「つまり、歴史改変の多さと大戦兵士のやる気には少なからず相関がある。そう言いたいんだね?」

たけのこ軍 加古川「ああ、そのとおりだ。これはあくまで私の所感だが、スクリプトがきのたけを敗北の歴史に塗り替えられる度、
現代の兵士の士気が落ちている。歴史改変の修正を受けた一般兵士たちは、大戦を
『スクリプトに妨害され続け終戦まで戦える機会が少ない』戦いだと認識するようになり、やる気を無くしているのだろう」

たけのこ軍 社長「大戦○、たけのこ○、改変×」

きのこ軍 ¢「このままじゃあ大戦を開こうとしても、参加する兵士が少なすぎて大戦を遂行できない。
大戦ができなければ“歴史は前に進まない”。
僕たちの時間は一生止まったままになってしまうんよ、びえええええええええええええええん」

たけのこ軍 山本「待ち続けるのは得策じゃ無さそうだな」


565 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 改変と歴史の関係編その2:2015/08/30 23:30:22.911 ID:qhQJv00go
冒険家 スリッパ「もし、DBの行動パターンが選択肢2の場合。今この時も、スクリプトは数を増やし続けている。
これを阻止するためには、過去に行われた歴史改変を全て元の歴史に書き直し、結果的にスクリプトを全滅させる方法がひとつ。
まあ、歴史改変を完全に知覚できているのは、現在オニロだけだが…

あるいは、スクリプト工場を発見することに力を注ぎ、討伐隊の手で随時破壊。
スクリプト工場を破壊さえすれば、歴史を荒らしていたスクリプトは存在しない事になり、
結果として複数同時の歴史が基に書き直されることになる」

きのこ軍 アイム「もしくは両者の意見を取ったハイブリッド案はどうだ?
歴史改変を行った年代に跳びスクリプトを破壊しながら、スクリプト工場を捜索し破壊する。これならどうだ?」

たけのこ軍 社長「いいぜ。」

きのこ軍 参謀「なるほど。歴史再改変の片手間で、スクリプト工場を発見し破壊すれば一石二鳥となるわけや」


566 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 改変と歴史の関係編その3:2015/08/30 23:31:08.375 ID:qhQJv00go
冒険家 スリッパ「いい案だ。オニロにはキツイ仕事になるが、今から歴史改変されたままの時代を全て探してもらい、
地上部隊の兵士を手当たり次第、時限の境界に送り込もう」

たけのこ軍 オニロ「…はい(ゲッソリ)」

たけのこ軍 加古川「これが社畜だ」

冒険家 スリッパ「…後は、時限の境界の仕組みさえわかればいいのだが…」

きのこ軍 アイム「そこで、オレの話になるわけだな。オレが抹茶や斑虎さん、someoneさんと違い、
過去の時代に取り残されたのはもう皆知ってるよな?」

たけのこ軍 オニロ「よく帰ってこれたねアイム!本当にすごいや、さすがアイム!」

きのこ軍 アイム「…それはテメエのおかげでもある。ありがとな」

思わぬお礼の言葉に、キョトンとするオニロ。

たけのこ軍 筍魂「申し訳ないが、きのこ軍のツンデレはNG」


567 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/08/30 23:31:31.278 ID:qhQJv00go
短いですがここまで。次回、ようやく新たな制約の内容が明らかに。

568 名前:社長:2015/08/31 01:26:15.937 ID:G.zWVLss0
制約ははじめ複数人で境界に入らないといけないかと思ってたらしい。
でも違うのかなー

569 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その1:2015/09/07 00:07:45.895 ID:wh2Sobtso
アイムは全員に、これまでの経緯を改めて説明した。
時限の境界に突入してからのスクリプトとの戦闘。過去の時代への跳躍、過去の大戦での行動。そして、独りだけ過去の時代での幽閉。
今回の第二次討伐隊の行動だけでなく、前回の第一次討伐隊の際のアイムの行動も周りに話し。比較することにした。

きのこ軍 ¢「アイムが他の3人と違い現代に戻れなかったてことは。他の3人と違う行動を取っている可能性が高いと思うんよ」

たけのこ軍 抹茶「確かにそうですね。ですが、K.N.C55年の大戦中は始終私達と行動をともにしていて、特に変わった行動も見られませんでした」

きのこ軍 ゴダン「つまり、アイムくんと3人の行動に違いがあるとしたら――」

全員「――時限の境界内(ガキどもの美肉?)」

たけのこ軍 ビギナー「時限の境界内の突入から、もう一回話を聞いたほうが良くない?」

もう一度時限の境界突入から説明するアイム。

たけのこ軍 791「うーん、わからないなあ。アイム君と他の3人の違い…頭にバンダナを巻いているか巻いてないか、とか?」

たけのこ軍 社長「(人間?)」


570 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その2:2015/09/07 00:12:27.752 ID:wh2Sobtso
きのこ軍 someone「…それなら、第一次討伐隊の時もアイムは取り残されたはずじゃないかな?」

第一次討伐隊突入の際も、アイムはバンダナを巻いていた。

たけのこ軍 791「ああ、そっかあ…抹茶にシトラス」

たけのこ軍 抹茶「え!?」


たけのこ軍 ジン「時限の境界内でスクリプトに攻撃した回数が一番多いとかはどうでしょう?」

たけのこ軍 社長「北斗「いいぞォ兄貴ィ!!」」

たけのこ軍 抹茶「今回の戦闘ではアイム君は専らアシストだったので、攻撃回数としては僕のほうが多いと思います」

たけのこ軍 ジン「そうですか…」

たけのこ軍 791「抹茶にシトラス」

たけのこ軍 抹茶「これ僕が悪いんですかね?…」

きのこ軍 黒砂糖「だあああ、わからないなあ」


571 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その3:2015/09/07 00:14:46.898 ID:wh2Sobtso
たけのこ軍 筍魂「こんな周りに迷惑をかけるデキの悪い弟子をもった覚えはないゾ」

きのこ軍 アイム「随分とヒドイいわれようじゃねえか…」

たけのこ軍 オニロ「ま、まあまあ。アイムもそう怒らずに。えーと、えーと。
アイムはスクリプトからの攻撃を受けてないよね。スクリプトからの攻撃を受けているか、受けていないで制約が決まる、とかはどうでしょう?」

きのこ軍 参謀「確かにアイムはスクリプトから攻撃を受けてないが、それなら抹茶も攻撃は受けてないやん。
まあ、抹茶は負傷したsomeoneと斑虎を抱えていたから攻撃を防いでいたのは専らアイムだが――」

そこで、参謀は何かに気がついたように言葉を止め、瞬時に思考を巡らせた。

きのこ軍 アイム「おいどうした、わかったのか参謀」

たけのこ軍 社長「これマジ?」

きのこ軍 参謀「ちょっと黙ってろや、いま分かりそうなんや」

アイムはなぜ今回だけ取り残されたのか。

第一次討伐隊と第二次討伐隊の違い。
突入の経緯。
扉への突入。


572 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その3:2015/09/07 00:17:31.412 ID:wh2Sobtso

第一次討伐隊時
――扉に一番近かったジンが真っ先に吸い込まれそうになるが、咄嗟にアイムが……つかむ。
――アイム「全…、互いに……手を……なよッ!」
――全員が……の…掴み、必死に見えない力に抵抗する。

第二次討伐隊時
――アイムの背後で、負傷するsomeoneと斑虎を抱え抹茶は扉に向かって一目散に走りだす。
そして、抹茶は……ら、扉に飛び込んだ。
――NEXTの動きが一瞬止まった瞬間にアイムはすぐさま背後の扉に……で飛び込んだ。

冒険家 スリッパ「まさか…そういうことなのか」

きのこ軍 参謀「ああ、そのまさかやな。わかったぞ、【新たな制約】がッ!!」


573 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その5:2015/09/07 00:19:38.535 ID:wh2Sobtso
きのこ軍 参謀「まず、今回の【新たな制約】は第二次討伐隊突入時にアイムにだけ降りかかったもので。
それは即ち、アイムが他の隊員とは違う【行動】を取り、それが結果として制約に抵触してしまったということや」

たけのこ軍 オニロ「でも、話を聞いても別段アイムが特異な行動を取っているとは思えなかったです…」

きのこ軍 参謀「第一次と第二次を比べても、アイムの行動のおかしさは無いように思える。
しかし、一つだけあるんや…決定的な違いが」


―― 【時限の扉】の通過時


574 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その6:2015/09/07 00:22:59.017 ID:wh2Sobtso
きのこ軍 参謀「時限の扉を通る時。第一次討伐隊での行動は以下のとおりだ」


――扉に一番近かったジンが真っ先に吸い込まれそうになるが、咄嗟にアイムが【手をつかむ】。
――アイム「全員、互いに掴んだ手を離すなよッ!」
――全員が【互いの手を掴み】、必死に見えない力に抵抗する。


きのこ軍 参謀「続いて第二次討伐隊」


――アイムの背後で、負傷するsomeoneと斑虎を抱え抹茶は扉に向かって一目散に走りだす。
そして、抹茶は【二人を抱きかかえながら】扉に飛び込んだ。
――NEXTの動きが一瞬止まった瞬間にアイムはすぐさま背後の扉に【単独で】飛び込んだ。


たけのこ軍 オニロ「??これに違いがあるんですか?」

きのこ軍 アイム「…!!そうか、わかったぞ。『共有動作』だなッ!」

無言で頷く参謀。


575 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その7:2015/09/07 00:27:27.172 ID:wh2Sobtso
第一次討伐隊。
制約Tにより、アイムたち討伐隊は、近くに位置する時限の扉に吸い寄せられることになった。
その際、吸引力に少しでも抵抗しようと、全員はお互いの手を握り合い、 “触れていた”。


第二次討伐隊。
今度は自らの意志で時限の扉をくぐることに成功したものの。
スクリプトの攻撃により斑虎とsomeoneは負傷。抹茶は二人を抱えながら、時限の扉を通る。
三人は“繋がっていた”。
一方で、アイムは三人の突入を確認してから単独で突入。誰とも“繋がっていない”。


全員が身体の一部に触れていた状態で時限の扉を通り、誰かが歴史改変のトリガーを引いた場合
―つまり、直接的な歴史改変者になった場合―制約Uは、他の隊員にも“間接的”に共有される。

しかし、複数の隊員が誰とも触れ合っていない状態のまま時限の扉を通った場合。
隊員Aが歴史改変を実施したとしても、制約Uの履行は【残りの隊員には共有されない】。
隊員Bは、別の歴史改変を実施しない限り制約Uは履行されず、現代へ戻ることはできない。

参謀の推理は、【時限の扉を通る際、各員が身体に触れ合うことによる“共有”動作を行うことで、
一人の歴史改変行為は全員に“共有”される】ということなのだ。


576 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その8:2015/09/07 00:29:20.220 ID:wh2Sobtso
冒険家 スリッパ「時限の境界に関する制約という観点からすれば、
時限の境界内における制約、時間跳躍した時代での制約、そして――時間跳躍する際の制約。
制約の分類としては、何らおかしいことではないな」

たけのこ軍 オニロ「これ、もしかしてたまたま全員が触れ合わずに突入していた場合は、
4人とも別々に歴史改変をしなくちゃいけなかったてことですよね…」

たけのこ軍 加古川「考えただけでもゾッとするな…」



――【制約V】 時限の境界で複数が時限跳躍をする際、身体の一部分でも触れたまま時限の扉を通れば、
残りの時限の境界に関する制約状況が複数員同士で、“共有”される。


577 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち :2015/09/07 00:30:10.460 ID:wh2Sobtso
時間制限、歴史改変、共有。
制約の内容って難しい。

578 名前:社長:2015/09/07 00:33:21.730 ID:swZFropA0
なるほど同じ行動か…

579 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/09/13 20:16:25.536 ID:RwNPcQxY0
今週の更新はお休みくさい。また来週

580 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その1:2015/09/14 22:39:56.546 ID:Dl16hwNgo
きのこ軍 参謀「時限の境界に関する制約は大分明らかにされてきたな。
アイムの言っていたハイブリッド案(スクリプトに荒らされている時代で歴史再改変&工場発見)を推していくべきやな」

きのこ軍 ¢「いや、僕は反対なんよ。現状で明らかにされている制約だけが全てとは思えない。
アイム君はなんとか帰ってこられたけど、今後ふとした拍子で未帰還者が出ることも考えられなくはないんよ」

たけのこ軍 791「でも、私たちが行動を起こさないと、会議所や大戦世界は、活力を失い終いには崩壊に追い込まれる。
それを黙って見過ごせって言うの?」

きのこ軍 ¢「それでも反対なんよ。そもそも791さんの言うように、大戦世界がすぐに崩壊すると決まったとわけではない。
皆がわざわざ時限の境界に飛び込もうとしなくても、何か解決策があるかもしれないんよ」

きのこ軍 黒砂糖「そんな悠長なことは言ってられないのでは…」

581 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その2:2015/09/14 22:41:20.291 ID:Dl16hwNgo
きのこ軍 ¢「そうは思わないんよ。今までだって、僕たちはみんなで額を寄せあって、話し合いで喫緊の事態に対処してきた。
今度もきっとそうだ。今こそ全員が一致団結して会議をすることでこの騒動に対する名案が生まれ、
そして結果として兵士の安全も確保されるんよ!」

たけのこ軍 オニロ「確かにそうかもしれません…しかし、このまま現代に留まり続けてもDBは見つけられません。
ボクたちはDBを必ず見つけ、討伐しなければいけないんです」

きのこ軍 ¢「だからッ!“討伐”ではなくて“捕獲”だと言っているだろ。
集計さんもいた以前の会議で捕獲をメインに据えることは決定されていたはずだ!何度言えばわかるんだッ」

¢が苛ついたように声を荒げオニロに反論した。
珍しいな、と遠巻きに傍観に徹していたアイムは、¢の違和感に誰よりも早く気がついた。


582 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その3:2015/09/14 22:44:38.481 ID:Dl16hwNgo
¢は会議所内で一番の現実主義者であり、理知的で客観的視点を持つ兵士だ。
集計班が理想主義者だったということもあってか、度々繰り出される集計班の突拍子もない意見に、
¢がたしなめるという会議の流れが常態化していた。

今回も会議に参加しているメンバーのほとんどが、過去に跋扈するスクリプトやDBの討伐に躍起とする中、
¢だけが声高に討伐隊派遣に反対を表明している。

熱に浮かされた兵士たちを自制させる意味で、¢は会議内で重要な役職を担っている。
常に会議兵士の考え方からは一歩引いた思考は、その主張が正しい、誤りに限らず。全員の逸る気持ちを一度抑え、
全員が冷静になる場面を¢から与えられ、そして全員を成長させる。

しかし、アイムには、今日の¢の主張は現実論とは程遠い、時限の境界突入反対に固執しすぎているように思えた。
冷静な¢が声を荒げていることが、¢自身に焦りが生じていることへの表れだ。
非常事態だからしょうがないとも言えるが、果たしてそれだけなのだろうか。

本当に会議所の兵士の安全を守るためだけに主張しているのか。
激しい意見が飛び交う議論の中、アイムは独り訝しむ。


583 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その4:2015/09/14 22:46:44.943 ID:Dl16hwNgo
なぜ、¢は討伐隊派遣を頑なまでに反対するのか。アイムは考える。


―― 時限の境界の制約内容が全て明らかにされてない可能性があるから? ―― 

一理ある。これに関して¢の主張は最もだ。時限の境界に係る制約の総数は明らかになっていない。
3つの制約こそ見つかれど、この制約が時限の境界に係る全てだとは到底断言できない。
つまり、これからも、討伐隊は目に見えない制約に気をつけながら行動をしなくてはいけない。


―― 現代に留まることで解決策が生まれるかもしれない? ―― 

一理ない。現代に留まり続け捜索を続くてもDBを見つける術がない事は以前に証明されている。
さらに、現代には地下部隊(現在はオニロのみだが)が留まり続け、本丸の編纂室は情報の最前戦として機能している。
現代にいる兵士の役割は、あくまで過去へ跳ぶ兵士たちの補佐に過ぎない。
全員が現代に留まり続けることは、寧ろ悪化の一途を辿りかねない。
それは¢もよく理解しているはずだ。


584 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その5:2015/09/14 22:48:44.852 ID:Dl16hwNgo
兵士の安全を殊更に主張し、その主張の“副産物”として、現代に留まり続けることが必要だという主張が
生まれるのならばまだ分かる。
ただ、今の¢はこの二論を同列に語ってしまっている。意見の軸がぶれているのだ。
兵士の安全を守りたいのか、留まり続けたいのか。どちらかはっきりしない。

彼の中ではっきりとした軸は“DBを撃破せずに捕獲する”という信念、ただひとつだ。


――では、なぜ¢はDBを“討伐”したがらないのか? ――


アイム「…まさかッ…!」

短時間で辿り着いた自身の答えに、さすがのアイムも驚愕し咄嗟に否定の意味で首を振る。

あの¢が、そんなことはありえない。だが、しかし――


585 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その6:2015/09/14 22:50:40.426 ID:Dl16hwNgo

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━━━━

きのこ軍 ¢「いや、捕獲するべきだ」
それまで終始黙っていた¢が静かにそう告げると、部屋はシンと静まり返った。
¢の言葉には、常人には表現できないような使命感とそれをも上回る焦燥感が入り交じっていた。
集計班がチラと¢に目配りをする。二人の視線が一瞬交差する。アイムは二人のなんでもない所作が気になった。

きのこ軍 集計班「DBは討伐せずに捕獲することにしましょう。まあまずは発見が先ですがね。いったいどこにいるのやら…」

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━━━━


以前の会議での¢の発言。DB討伐論が主流を占めていた中、¢の鬼気迫る発言に会議の決着は180度方向転換した。
集計班が¢の発言を認めた意図はわからない。それでも、もし今の¢の主張を許してしまえば。

きのこ軍 ¢「このままでは埒が明かない。兵士の危険が考慮される以上、討伐隊派遣は見送るべきだ」

会議所の動きは止まり、無為な時間が流れ。
そして、大戦世界は崩壊の一途をたどる。


586 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その7:2015/09/14 22:54:41.074 ID:Dl16hwNgo
きのこ軍 アイム「そうかい。オレはあんたの“尻拭い”をさせられるってことか、シューさん…」

まさか、大戦の未来をオレが案じる日が来るなんてな。そう心のなかで自嘲気味に笑ったアイムは、
先程まで聞く気のなかった会議に意識を向かわせた。
先程まで騒がしかった編纂室は、議論は平行線をたどっているのか、次第に静けさを取り戻しつつあった。

アイムは覚悟を決めた。
目の前に居る兵士たちに、自分自身が説かなければならない。

¢の主張を覆せるほどの論を、アイムが述べなければいけない。
危険を乗り越えてでも大戦世界を守る意思を。覚悟を。







――たとえ、目の前に居る兵士の中に“敵”が潜んでいたとしても。


587 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/09/14 22:56:11.577 ID:Dl16hwNgo
小さな疑念はやがて大きな確信へと変わる。
三章も中盤に差し掛かったと思わせ、まだもうちょい続くらしい。

588 名前:社長:2015/09/14 22:57:45.806 ID:sigWRjo20
ついに中枢に近づいてゆくのか…
オニロ君の出番はまだまだ。

589 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/09/23 21:14:49.579 ID:cNKrK7qYo
今週はシルバーウィークがあったからお休みだぞ(鼻くそホジホジ)

590 名前:791:2015/09/23 22:34:05.735 ID:GMUkgOpco
え?シルバーウィーク中に更新があるって聞いてたんだけど…

591 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/10/14 00:17:34.941 ID:i8mQOukQo
とりあえず明日更新します

592 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その1:2015/10/15 23:07:46.197 ID:oMRm09hso
きのこ軍 参謀「そこまで強く言うとはなあ。確かに¢の言うことも一理ある。
ここは少し休憩を取って、後に会議を再開ということで――」

きのこ軍 アイム「いや、その必要はないぜ参謀」

鬱屈とした空気が蔓延する中、静寂を切り裂いて、一人のきのこ軍兵士が鋭い声を発した。
希望の星。きのこ軍新参、アイムである。

きのこ軍 アイム「思い違いをしているな。全員ここに留まり続けても、オレたちには百害あって一利もない」

きのこ軍 ¢「そんなことはないんよ。きっと打開策は生まれるんよ」

きのこ軍 アイム「その逆だよ¢さん。待てば待つほど、事態は悪化する」

たけのこ軍 オニロ「どういうこと、アイム?」

オニロなら食いついてくると思ったとばかりに口角を釣り上げ、アイムはとうとうと説明し始めた。


593 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その2:2015/10/15 23:09:57.475 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「加古川さん。あんたはさっき『敗北の歴史に塗り替えられる度に、現代に居る大戦兵士の士気が下がっている』。
こう言ったな?」

たけのこ軍 社長「いえてる‥‥‥」

たけのこ軍 加古川「確かにそう言った」

たけのこ軍 オニロ「つまり、多くの兵士は士気を“失いつつある”ということだよね」

きのこ軍 ¢「仮に士気が下がっているとしても、現代に居る僕らには皆を盛り上げる策を講じることはいくらでもできる!
まずは王様制とスキルMT制を復活させて兵士の期待に応え――」

きのこ軍 アイム「その一度失った“士気”てのは、いったいどこへ“向かう”んだろうな?」

¢の言葉を遮り、鋭く相手に切りこむようにアイムは周りにそう問いかけた。

たけのこ軍 社長「よのなかどうなっとるんかのう。」

きのこ軍 someone「向かう?どういうこと?」

たけのこ軍 筍魂「おもしろい、続けてみろ(王者の貫禄)」


594 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その3:2015/10/15 23:15:54.139 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「オレは師であるクソ筍魂から二つの教訓を受けた。その内の一つが、【無秩序の全は一に帰す】という訓えだ」

【無秩序の全は一に帰す】
【“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】

難解とも取れる筍魂から残された言葉の意味を、オニロと探しだした際の訓えの一つである。
オニロは【秩序】と【無秩序】を部屋の汚さに喩え、こう表現した。

オニロ『えと、たとえば部屋がきれいな状態を秩序、部屋が汚い状態を無秩序とすれば、
必ず部屋は汚くなっていく方向に進んでいく、ていうことかな』

全ての万物は、秩序から必ず無秩序に向かって変化していく。
無秩序の要員をたどれば、それは一つの秩序から発生したものなのである。

たけのこ軍 筍魂「クソは余計だゾ」

たけのこ軍 斑虎「兵士の士気消失と、【無秩序の全は一に帰す】てのは、どう繋がるんだ?」

595 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その4:2015/10/15 23:19:43.405 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「たとえば、そうだな」

ここでアイムは席を立ち、手近な本棚から本を数冊手に持ちまた席に戻ってきた。

きのこ軍 アイム「オレは、一人の兵士の心の中には、こうした何冊もの『心の本』が存在していると思っている」

きのこ軍 参謀「なんやそれ素敵やん」

きのこ軍 アイム「兵士の関心事はさまざまだ。¢さんなら自動ツール・引きこもり、参謀ならバイク・お笑いに、
抹茶ならお茶・おしっこに関心があるといったように――」

たけのこ軍 抹茶「おい待て」

きのこ軍 アイム「兵士は、関心事をそれぞれまとめた『心の本』を数冊、数十冊も胸の内に宿している。
心の本には自身の出来事、関心事が日々連々と書き加えられている。
千の兵士がいれば万とも億とも心の本は存在するかもしれない。しかし、中でも全ての兵士が持っている“共通の”本が一冊ある。
それは――」

たけのこ軍 オニロ「『大戦に関する本』」

スリッパ「なるほどッ」


596 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その5:2015/10/15 23:26:16.418 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「兵士は誰しも『大戦の本』を心の中に宿している。古参であればあるほどその本のページ数は
膨大なものになっていることだろう。また、新参である兵士も大戦に胸を躍らせているうちは、
心の本には次々に大戦関連の内容が書き加えられていっていることだろう」

ちょうど、あのオリバーのようにな。と、アイムは、年表近くの空中で眠りこけているかのように静止する自動筆記ペンを一瞥した。

たけのこ軍 オニロ「素敵な話だね、アイム。
つまり心の本の一頁、一頁が『兵士の士気、情熱、やる気』そのものってことだよね!さすがはアイムッ!わかりやすい!」

たけのこ軍 社長「さすが 希望の星は 違うぜーー」

きのこ軍 アイム「おまえ…折角のオレの決め台詞をッ」


心の本。

兵士が持つ関心事だけ存在するこの本は、決して最後の頁まで書き切ることはない。
頁は無限、果てなき探求心と好奇心さえあれば、その兵士における心の本は膨大な頁数で満たされ続けることになる。

本の内容はほとんどが至極些細なものだ。その折に、自らが見聞きしたモノ・コト、感じたコトなどが雑多に、
しかし一切漏れることなく連々と今この瞬間も書き加えられていっているのである。

時折、兵士は自らの過去を心の本をそっと開くことで回想し在りし日の栄華に思いを馳せ、胸を躍らせる。
また、他人の熱き思いに充てられた時などは、元気のなかった自分も「今こそ!」という気分になり、
同時に、本の執筆に取り掛かっている心の筆は激烈な速度となる。

詰まる所、自らが積み重ねてきた本の一頁一頁が、当該の関心事への士気であり、やる気であり即ち情熱なのである。


597 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その6 :2015/10/15 23:29:49.182 ID:oMRm09hso
たけのこ軍 山本「でも、それじゃあ。古参であればあるほど心の本の頁数が多くなるというのは必然。
頁数が多いほど士気も断然高まるということになるのでは?」

きのこ軍 アイム「ところがそうはならないよ山本さん。
言った筈だ、万物事象は必ず【秩序】から【無秩序】に変化していく、と」

本は手入れをしなければ劣化していく。否、手入れをしてもいつか必ず劣化していく。

書物で劣化が始まるのは硬い表紙部ではなく、紙でできた頁本体である。
時間が経てば経つほど、紙やそこに書かれた文字は色褪せていく。紙は染み、埃が飛び、カビが生え、蜘蛛の巣を貼る。

目を凝らさないと読めない程度の視認度までに落ちた頁に対する興味は減り、頁をめくる回数は次第に減少していく。
兵士の関心事への情熱は低下していく。そして、完全に心の本の文字が色褪せ、中身が風化してしまった時、
兵士は一切のやる気を喪失するのである。


たけのこ軍 社長「か  い  め  つ」

たけのこ軍 オニロ「心の本の手入れを怠れば―すなわち関心事へ注目を払っていなければ―、
心の本は朽ちていく。兵士は士気を失う」

きのこ軍 ゴダン「なるほどなあ。日々失われつつある士気を、必死につなぎとめているのが会議所の役目でもあるわけか」

兵士のやる気の有無は、心の本の“読むことができる”頁数の多さに左右される。
アイムはそう語っている。

598 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その7 :2015/10/15 23:31:44.181 ID:oMRm09hso
たけのこ軍 791「うん、よくわかったよ。でも、その失われた士気とアイムが言わんとしていることの関係がまだよくわからないな」

きのこ軍 アイム「万物事象が【秩序】から【無秩序】へと向かうのは抗うことのできない自然則だ。

しかし、もしその変化の速度を急激に早めている“邪魔者”がいたとしたら、どうする?」

その“邪魔者”は平時から、人々の心に巣食うゴミやチリといった穢れをこよなく愛する生物だった。

たけのこ軍 オニロ「【秩序】から【無秩序】への急激な変化。有り余る士気から、士気の消失。
つまり、兵士の士気を急激に低下させている…」

たけのこ軍 791「世界から消えてしまったはずの兵士の“士気”を…邪魔者が掻き集めようとしている?」

たけのこ軍 オニロ「そして…そんなことをしようとする奴は唯一…」


全員「――DBッ!!(ジジイ!)』


599 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その8:2015/10/15 23:58:37.214 ID:oMRm09hso
アイムは全員の声に呼応するように、手に持った本を開き、勢い良く手に掛けた頁ごと引きちぎった。

たけのこ軍 オニロ「なにをするんだアイム!貴重な本なのに!
あっ、ていうかそれボクが密かに書いていた小説本じゃないかッ!ヒドイよッ!」

きのこ軍 アイム「士気は、情熱は、正しく心の本の“頁(ページ)”だと、オニロは言った。
こうして引きちぎられた頁はその兵士から失われ、結果的にそいつ自身の士気は低下する。
その頁を、【手当たり次第DBが喰らっている】と考えたらどうだ?」

スリッパ「手当たり次第、DBは兵士の心の本の頁を喰らい続けている。度重なる歴史改変がその行為を可能とさせる。
兵士の士気が、あいつにとっての“餌”だというんだな?
だから平時よりも大幅に士気が下がり、その分DBが増長する」


600 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その9:2015/10/16 00:01:11.710 ID:n5SAhc92o
たけのこ軍 埼玉「だとしたら、DBは、現代で失われた筈の兵士たちの士気をどこかで喰らい続け、
この瞬間も強大化し続けているということたま?」

たけのこ軍 オニロ「あぁ…折角中編まで書いてたのに…」

きのこ軍 黒砂糖「加古川さんが言っていたように、歴史改変と現代兵士の士気喪失は一定の相関があるのは明白」

たけのこ軍 ビギナー「つまり、こちらが時限の境界を使わずに現代に留まれば留まるほど、
歴史改変は行われDBは強大化し続ける…そして強大化したDBは現代に帰還し世界を乗っ取る。それが奴の狙いか…」

きのこ軍 アイム「そういうことだ」

悲観にくれる会議所勢。待てば待つほど、世界の大勢は悪化の一途を辿る。
そうした気持ちを予め見越していたうえで、アイムは逆転策を語る。

きのこ軍 アイム「ただ、失われた頁を貯めこんで成長を続ける醜悪な“掃除機”も――」

いつの間にかテーブルに置かれていた抹茶人形をぶっ叩くと、人形の下敷きになっていた紙は衝撃で俄に宙に浮いた。
その紙をアイムは力を込めてしっかりと掴む。

きのこ軍 アイム「本体をぶっ叩けば、頁を吐き出し元の所有者に戻る。
つまり、失われた士気は元通りになる、てことだ」

アイムは言葉を切り、ぐるりと全員を見回す。大勢は決した。
¢の慎重案支持から一転、会議所は、無茶をしてでもDBの企てを阻止しないといけないという立場を明確にした。



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