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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

801 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その2:2017/10/01 01:40:18.614 ID:o
以来、社長は最古参兵として会議所設立からK.N.C180年まで一部の期間を除きずっと大戦に関わってきた。
会議所に留まる最古参兵士はK.N.C180年時点で4人しかいなかった。知の参謀、発の¢、静の集計班、そしてバグの社長の4人である。
社長は本来大戦の重鎮として会議所を突き動かす兵士になるはずだった。

アイム「社長は重鎮っていう感じでもないだろう」

オニロ「こ、こらアイム。失礼なことを…」

アイムの率直な意見に、そうだな、と社長は素直に認めた。
ある時を境に社長は会議で意見を出さなくなった。否、意見を出すことができなくなった。

社長「あの日、あの時から私の運命は変わったのだ」

全員が、言葉を発さずに社長の説明を聞いている。
その奇異に満ちた行動から社長は“バグ兵士”としてばかりクローズアップされ、会議所設立の中心メンバーであることを理解している兵士はほんの一握りだった。
会議所の生き字引だった兵士が、いつから色物兵士へと転換したのか。そもそもなぜ転換したのか。



きっかけは、一つの【お告げ】だった。



802 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その3:2017/10/01 01:57:18.772 ID:o
社長「【お告げ】があった。ある日突然、百合神様から…」

社長は兼ねてより【百合神】という創造神に縋っていた。多くの兵士は社長のバグ発言の一環だろうと取り合っていなかったが、アイムたちの前で語る社長の顔は常に真剣そのものだった。
この場で再びその神の名前が出て突拍子のなさに全員が驚いたが、社長は構わず続きを話し続けた。

ある日、社長の夢の中で現れた【百合神】は、“大戦世界に関する秘密”を社長に語ったのだという。

―― 大戦世界には【避難所の避難所】という別の運営拠点がある。その観測所には過去にいなくなった重鎮兵士たちが集い、秘密裏に大戦を操っている。
―― そして、全ての過去現在未来の歴史は【預言書】と呼ばれる古ぼけた本の通りにするべく暗躍している。そのためなら、たけのこが不利に負けようが、きのこが惨めに負けようが構わない。

初めは社長も驚いたが、【百合神】の真剣な口調のトーンに圧倒されつつも、最終的には信じざるを得なかった。
始祖まいう、図書館館長の無口、きのこ軍のエースアルカリ。気がつけば大戦世界創世記にいた兵士たちは姿を消してしまい、誰しも口には出さずともそこに奇妙な違和感を持っていた。
もし彼女の話の通りそうした兵士たちが本当は【避難所の避難所】に移り、世界を監視しているとしたら空恐ろしいと社長は感じた。
亡者が実は生きていたという感動よりも、大戦世界に巣食う暗部を垣間見た気がして、今までの日常が保てなくなってしまうのではないかという恐怖がはるかに上回っていたのである。

朝目が覚めると、彼は真っ先に集計班に相談した。
会議所に係る問題は、当時から会議を束ねていた彼に相談するのが全兵士の暗黙の了解となっていた。
集計班ならば親身に相談に乗ってくれるだろう、もしくは突拍子もない話を笑い飛ばしてくれるのではないか。
どちらでもよいという思いを持って、社長は図書館に駆け込んだ。自身の気持ちを他者へ共有したかっただけなのだ。


社長の希望は、直後にコナゴナに粉砕されることになった。

803 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その4:2017/10/01 02:11:36.835 ID:o
静かに社長のトンデモ話を聞いていた集計班は、社長が話し終わると長い間考え込んでいたが、その後静かに問いかけた。

集計班「どこで、その話を?」

社長「いや、だから【百合神】様が――」

思わず社長は二の句が継げなくなった。集計班の明らかな異常な睨みに、社長の身体は硬直した。蛇に睨まれた蛙とは正に今の自身だと直感した。
乱暴なまでに野性的に濁った紅の瞳を向けられた社長は、そこで初めて集計班も件の観測所のメンバーなのだと悟った。

集計班が嘆息し椅子から立ち上がっても、社長は集計班から視線を外すことさえできず、自らの生命がここで尽きるのではないかと怯えていた。
彼はずいっと社長に向かい顔を突き出した。いつもの穏やかな表情を殺し無表情を顔にはりつけ、次のように語った。

集計班「あなたは【知る必要のない】情報を手に入れてしまった。いや、この際どうやって手に入れたかは重要ではないのです。ただ、貴方はもう逃げられません。
生きるか無くなるかなんて陳腐な選択肢も用意しません。貴方には事の最後まで付き合ってもらおう」

集計班の口調はあくまで冷徹で事務的だった。
見えない刃を首に突きつけられたかのように怯えていた社長だったが、気力を振り絞り微かに首を縦に一度振り微かに応えた。


804 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その5:2017/10/01 02:22:11.163 ID:o
『バグトラダムスの預言書』

大戦世界が一つの古ぼけた預言書通りに進められていると話され、誰が信じるだろうか。
その預言書にはK.N.C1年から遙か先の未来までの歴史が事細かに書かれているのだという。
識者はその預言書に従い、【避難所の避難所】を造り、混迷に満ちていた世界を預言書通りに修正するように務めるようにした。
預言書に従えば、遙か先でも大戦の継続は保証され、大戦世界は反映し続けるからである。

集計班「私は【避難所の避難所】から、大戦世界が預言書に書いている通り、“世界にとって”正しい方向に進むように監視役を申し付けられています。
関係者曰く『バグトラダムスの預言書』には大戦世界を良くするための未来が全て書かれているとか」

集計班曰く監視の役目はトップシークレットであり、大戦世界では本人以外に誰も知らないという。
なぜ、『バグトラダムスの預言書』に大戦世界の過去、現在、未来が全て予言されているのか。誰が書いた書なのか当時も今も社長にもわからない。
ただ、はた迷惑な物があったものだ、と当時の社長は自分の置かれた立場を置いてそう感じた。

通常であれば正体を知られた時点で始末しないといけませんが――と、集計班は前置きした上で、次のように語った。

集計班「貴方の命運は私が握りました。ちょうどいい、一人じゃ“仕事”が回らなかったんです。今後は、私のお手伝いをしてもらいましょう」

最悪を超える未来が社長の脳裏に浮かんだ。希望から絶望への突き落としに思わず乾いた嗤いが出てしまいそうになるのを集計班に覚られないように口を抑えた。
いっそこの時点で狂ってでもしまえば楽になれたのかもしれない。しかし、最も信頼していた兵士に目の前で裏切られてもなお、社長は現実を直視し運命に身を委ねた。
この場で狂人になれるほど弱い兵士ではなかったのである。


805 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/01 02:23:16.306 ID:o
ひとまずここまで。
本物の社長はしっかり重鎮兵士なのでご安心を。バグトラダムスの預言書、一冊ください!

806 名前:社長:2017/10/01 12:56:12.417 ID:0
ついに終盤へ・・・

807 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その1:2017/10/15 15:51:37.198 ID:hcxs5DM2o
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

抹茶「この世界は預言書に管理された世界ってことか…?」

参謀「そんな阿呆な。信じられん。シューさんの行動もそうやし、【避難所の避難所】なんて知らん」

¢「せっかく僕が作った多くのルールが無くなってしまったのも預言書通りってことか。びええええええん」

社長の話を聞いていた兵士たちは全員が驚愕の思いを隠しきれない様子だった。特に古参組の反応が顕著だった。

アイム「気持ちはわかる。誰か¢さんにちり紙を用意してやってくれ」

オニロ「ひとまず話の続きを聞いてみようよ」

オニロの視線に社長は頷き、続きを語り始めた。



━━
━━━━

社長「内容については異論ありません。ですが、少し一人にさせてください」

急転直下の展開に頭がついていかず、気持ちを整理するための時間がほしい。社長の恐る恐るといった頼みを、その考えは最もだと集計班は二つ返事で了承した。
てっきり渋られると思っていた社長は、集計班のあっさりとした様子に戸惑った。
だが、どうせ自分が会議所の暗部から逃げられるはずもなく、また集計班も自身を逃がすつもりもないことを見越されているのだと思うと、社長は暗澹たる気持ちになった。


808 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その2:2017/10/15 15:55:06.050 ID:hcxs5DM2o
それから暫く、社長はたけのこの里から離れた山中で大戦とは無縁の生活を送った。あまりにも大きな世界の闇を目の当たりにし、彼の心は平穏でいられなかった。
大戦と会議所は当時の兵士たちが全て0から苦労して創り上げた上の産物で、当時の一員だった社長自身も誇りを持っていた。

それが、何処にあるかもわからない【避難所の避難所】の思惑通りに造られた物だと気がついたら、彼には途端に目の前の世界が空虚に映った。
これまでの行動が、あまりにも虚しく思えてしまったのだ。

味方だと思っていた兵士に裏切られたことも彼の喪失感を増大させていた。
特に睨まれた集計班の紅い瞳は、夢の中で何度も出てきては社長をすくみあがらせた。

眼前に広がる晴れ晴れとした青空さえまやかしではないかと疑心暗鬼に陥った。
心配して彼の下を訪れた兵士に対しても集計班の時の二の舞いを恐れるあまり心を開かない本人に対し、兵士たちは次第に社長を忘れ、社長も極力忘れるように努めた。


そんな少しずつ別の生活に慣れ大戦を忘れかけてきた頃、社長は再び夢の中で【お告げ】をきいた。


―― 自らの使命を思い出せ。苦しみに耐えることは死ぬよりも勇気がいる。
―― どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない。
―― もし耐えることを諦めたら、その瞬間に地獄へ送る。

夢の中で百合神から半ば説教を食らい、目覚めたばかりの社長は顔面蒼白だったが、次第に意識が覚醒してからはすぐさま会議所帰還への支度を始めた。
今の生活は仮初めで自分自身は大戦から逃げられない運命であることを彼自身は理解していた。
百合神からの最後の一押しが彼自身を運命へ立ち向かう決断をさせた。
夢の中の神へ感謝と畏怖を感じながら、社長は小屋を離れ会議所へ復帰した。

809 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その3:2017/10/15 15:59:57.413 ID:hcxs5DM2o
集計班「お帰りなさい。“旅行”は楽しめましたか?」

会議所へ戻り、社長は早々に集計班に会った。編纂室でロッキングチェアをゆらゆらと揺らしながら、彼は余裕綽々といった面持ちで社長を迎えた。
自身の行動を予測されているようで思わず腹が立ったが、社長はぐっとこらえ百合神のお告げから考えた末に出した決意を述べた。

社長「私の命運は貴方が握ったと言いましたね。大いに結構です。ならば、私は預言書の通り、【世界の命運】を預かることにしましょう」

社長の言い回しに集計班は可笑しくなったのか声を出して笑った。

集計班「お元気になったようでなによりです。ですが大言壮語を吐く割に、貴方は怯えているように見える。それが少し滑稽に見えて笑ってしまったのです」

しかし、と集計班は続けた。

集計班「その度胸は武器になる。心得なさい、貴方は今日から大戦世界の安定のためにその身を私に預けました。
【避難所の避難所】に知られることなく、私は全力で貴方を守ることを誓いましょう。貴方は貴方で自身を守る術を身につけなさい」

これ以後、社長は【きれぼし語】という言語を用い、一方的な話しで周りを困惑させるようになった。
以前にも増して兵士たちは社長に変人のレッテルを貼り、その反応が増えるほど社長は流暢に【きれぼし語】を操りバグった姿を見せつけた。
その振る舞いが、他者からの翻弄を一切許さず預言書通りに【世界】を護らんとする社長の決意の現れだと、集計班を除いて誰も知る由はなかった。


810 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/15 16:01:16.592 ID:hcxs5DM2o
ひとまずここまで。近いうちに残りを投稿します。

811 名前:社長:2017/10/16 23:06:33.784 ID:88boJ95A0
あの人つよい!

812 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その1:2017/10/22 23:50:57.961 ID:ywvP1kCco
社長と集計班の【会合】は大抵、丑三つ時に人目の付かない場所で行われた。
集計班が持ってきた預言書が書かれた紙の切れ端を互いに目を通し、未来を正しい方向に導くための確認をするのだ。
会合は不定期で、集計班の思いつきで突然呼び出されることが多かった社長としては、内心穏やかではない日々が続いていた。

彼は預言書を丸ごと地上に持ち込むことはせず、なぜか決まって預言書の内容をコピーした紙の切れ端だけを社長の前に持参した。
その方がワクワクするでしょうと真顔でその理由を告げられた時には、睡眠不足だった社長は思わず目の前の集計係を殴ってやろうかと思ったほどだ。

人の気持ちがわからない兵士だと【会合】に加わってから都度、社長は心の中でパートナーを何度も毒づいた。預言の内容について彼に食いかかったことも数度だけではない。
【会合】に参加してからというものの、社長の集計班への評価は180度転換した。それほど彼と社長の馬は合わなかった。

この日も、二人は夜中に人気のない場所で話をしていた。

集計班「王様制のルール凍結は預言書通り、これで実行完了しました」

社長「¢さんの頑張りが報われませんね。あれだけルール作成に躍起になっていたのに」

社長の皮肉に、彼は一切動じることはなかった。

集計班「仕方がないことです」

他人行儀な集計班の言動に、社長はカチンときた。


813 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その2:2017/10/22 23:55:26.963 ID:ywvP1kCco
社長「仕方がない?貴方は定着しつつあった王様制を、会議所内部から反対意見を出させて潰したんです。少しは責任を感じないのですか?」

集計班「仕事ですから」

意に介さず集計班は涼しい顔をして、ただ――と言葉を続ける。

集計班「この王様制に関する議論が今後の大戦繁栄のためには不可欠。預言書にはそう書かれているので」

社長「預言書、預言書と。本当に預言書通りに進めば世界は安定するんですか?私には未だに信じられない事が多い」

集計班「…あなたはただ監視していればいい」

唐突に集計班は読み終わった預言書の切れ端を跡形もなく燃やして立ち去っていった。
それがいつも一方的な終了の合図だった。

814 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その3:2017/10/23 00:03:29.971 ID:o4m7nuLYo
彼は平時とは違い監視役の仕事に関しては一切の私情を持ち込まない主義のようだった。
表での彼の姿を知っていただけに、当初は社長も彼の裏の顔に面食らった。

会議所では仲間とともに運営のために各地を奔走し時には心を痛める顔をしながら、裏では一連の首謀者として躊躇なく全てを切り捨てる決断を下す。
会議所の内乱を表では鎮圧しながら、裏では焚き付ける工作活動をする。
社長の目には、集計班という兵士が預言書を体現するための悪魔の化身にさえ映った。
目の前で蒼い瞳を宿す兵士の真の姿を見て、狂っているとさえ思ったことも少なくない。

社長自身も、自身をバグで狂わせていなければ良心の呵責に苛まれとうに発狂していただろう。
淡々と与えられた任務をこなす非道な彼の精神状態を、社長はある種の尊敬を抱きながらも、それを大きく上回る恐怖感と嫌悪感を持っていた。

そして、幾度の歴史が流れた。
最初は工作活動に反抗的で何度も反発していた社長も、自らの生命を集計班に握られている立場上、嫌々ながらも活動に従事してきた。
すると次第に感覚は麻痺して、ある程度感情を圧し殺すこともできるようになってしまった。

自らが嫌う相棒と同じ姿に変化しつつあった社長はふとこれまでを立ち返ったときに自己嫌悪に陥るも、
心の底では【工作活動】にある種楽しみを見出すようになっていた。


そんな時、一つの預言が二人の運命をこれまで以上に変えていくことになった。

815 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その4:2017/10/23 00:09:00.959 ID:o4m7nuLYo
その日、珍しく集計班は【会合】に遅れて到着した。
彼曰く【避難所の避難所】の会議が長引き、預言書の内容を地上に持ち出すのに時間がかかったという。
彼自身もまだ預言の内容を見られていないというのだから、まるでおみくじの結果を開けて待つような、社長はどこか生の預言を見ることへの奇妙な連帯感と高揚感に支配されていた。

―― 集計班「私は【避難所の避難所】ではペーペーですから預言を見せてくれないんですよ」

かつてどうして数年毎の預言しか持ってこないのかという問いに、彼が社長にそう語ったことがある。
未だに避難所の避難所のメンバーが誰なのか把握しておらず、特段知りたくもなかった社長だが、彼が下座に位置する会議とは一体どれ程の規模なのか想像もつかなかった。

集計班「DBが地下牢から逃げ出したことは知っていますね」

社長「ええ。まさか本当に預言書通りになるとは。てっきり私が檻を解き放つ役目だと思っていましたよ」

改めて預言書の正確性に驚く社長に、何をいまさら――と集計班は呆れながら言葉を続ける。

集計班「近々、DBが暴走し世界を巻き込む大騒動が起きます」

社長「本当ですか」


816 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その5:2017/10/23 00:14:04.458 ID:o4m7nuLYo
集計班「DBが兵士の【負のオーラ】を集め強大化して、会議所を制圧しようとするのです。DBから活力を吸われた世界は衰退し、暫くの大戦休止に追い込まれる。世界の危機を迎えます」

まるで朗読の一説のように感情を込めず、集計班は預言書の切れ端を読み上げていった。

社長「このままではDBにやられてしまいます」

それに対し、社長もひどく無機質な相槌をうった。
その問いに対し、急いで文字を追いながら集計班は続きを読み上げた。

集計班「安心なさい。直に、窮地を救う“希望の星”が会議所に到着します。その英雄とDBを戦わせるのです」

社長「それならば安心だ。して、その正体は?」

話の内容は現実離れしているのに、不思議と社長は冷静になりつつあった。

集計班「軍神<アーミーゴッド>の生まれ変わりです。覚えていますか?」

彼の口から出るまで、社長は軍神<アーミーゴッド>の存在を忘れていた。そんな社長の様子に、“彼”も寂しがるでしょうに、と集計班は漏らした上で預言書の続きを読み始めた。

集計班「DBはまず自身と対極に位置する軍神<アーミーゴッド>を壊しに行きます。その際に危険を察知した軍神が、自らの魂を宿した器を大戦世界へ投げ込む。
それが“希望の星”の正体です。私たちがその器を回収し一人前の兵士に育てあげます」


817 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その6:2017/10/23 00:15:58.817 ID:o4m7nuLYo
途方もない話だが、かつてこうした突拍子もないことを幾多もやり遂げてきた二人にはすんなりと腑に落ちた。

社長「久方ぶりに会議所にもニューホープの登場ですね。DBを倒し英雄になった彼は正に【軍神】として今後も会議所を引っ張り続けるでしょう」

集計班「ええ。――いや」

社長の言葉に頷きながら預言書の切れ端を読んでいた集計班の動きが止まった。
その様子に訝しんで彼の顔を覗き込んだ社長は、そこで初めて戸惑いと苦悶の表情を浮かべる彼の顔を見た。

集計班「英雄<希望の星>はDBと相打ちになります。預言書にそう書かれている」

社長「え?」

集計班「私たちは赤子同然の新参兵士を育て我々の代わりにDBと戦わせ、そして役目が終わればその場で消失させると。そう書いてあります…」

言い終えるや否や、集計班は切れ端を強く握りつぶし手のひらの中で消し炭にしてしまった。
彼の背中は怒りで小刻みに揺れていた。

社長は唖然とした気分になった。
係る未来の悲惨さに唖然としたのではない。目の前で憤る相棒に対し、他人を慮るほどの一人前の人情があったのか、と社長は真っ先に衝撃を受けたのだった。


818 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その7:2017/10/23 00:17:21.860 ID:o4m7nuLYo
加古川「アイムとオニロは、軍神<アーミーゴッド>の生まれ変わりだって…?」

¢「軍神<アーミーゴッド>、久しく聞いてなかった言葉なんよ。階級制でずっと使っていた制度のはずなのに、いつの間にか無くなっていた…」

軍神制度を形にした立役者のはずの¢も、軍神という存在を忘れていたようだった。

アイム「昔は軍神制度により大味な展開で、逆転に次ぐ逆転、先の読めない展開に大戦は大いに盛り上がった。
だが、いつしか兵士たちはマンネリを感じるようになり、兵士たちからの支持を失った軍神も消えてしまった」

オニロ「ボクたちが――ええっと便宜上、軍神<アーミーゴッド>と呼ぶね――軍神<アーミーゴッド>は【避難所の避難所】に事実上幽閉されてしまったんです。
兵士の願いがなければ、彼は世界に姿を現せられない」

アイム「そんな鬱屈とした日々を避難所の避難所で過ごす中、“アイツ”が悪魔のような囁きで軍神<アーミーゴッド>に語りかけてきた」


―― 行っただろう、“迎えに行く”となァ。さァ、大戦に帰ろう。


819 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その8:2017/10/23 00:19:16.727 ID:o4m7nuLYo
>>818
書き忘れました。>>818では現代に話が戻ってます。一時回想中断中

820 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その8:2017/10/23 00:19:37.061 ID:o4m7nuLYo
会議所に幽閉されていたはずのDBからの突然の連絡に、不審感を抱きつつも忘れられない大戦への憧れから、軍神<アーミーゴッド>は結果的にDBの提案を受け入れてしまった。
その結果、彼は地下の大戦開発室へと誘い込まれDBの策略により瀕死寸前まで追い詰められた。

アイム「そこで軍神<アーミーゴッド>は、近くにあった【圧縮装置】を使い自らの魂を分けることにした」

参謀「【圧縮装置】って¢さんが作った機械か。確か大戦の長期化に対応するために、でかすぎる大戦場の大きさを狭める次元装置だったか」

¢「そんな大それたものじゃないけど。実際は黎明期に誰かが魔法で作った大戦場の区域を制限するトリガーをつけただけなんだ。
例えるならサッカーコートをフットサルコートの大きさに変える装置みたいなもんだな」

オニロ「そうです。軍神<アーミーゴッド>はその機能を逆手に取り、自らの魂を圧縮しその結果、魂は四散したんです。」

筍魂「なんとまあギャンブルを…」

社長「いま正に二人が語った内容は、K.N.C174年に起こった出来事です。アイム君とオニロ君が来る1年前の出来事でした。そして先の預言について、私とあの人はある決意を固めます――」

━━
━━━━

821 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その9:2017/10/23 00:26:58.331 ID:o4m7nuLYo
【K.N.C??年 会議所 大戦年表編纂室】

社長「どうでしたか?【上申】は」

集計班「…ダメでした。預言書の内容は変更できない、と突き返されるばかりで」

拳をテーブルに叩き集計班は珍しく悔しさを露わにした。先日の希望の星の預言から彼はひどく感情的になり、明らかに工作活動に私情を挟んでいるように社長には見えていた。
この日、集計班は預言書の内容の変更を訴えるべく【避難所の避難所】へ直談判をしに行った。
未だ現れていない“希望の星”をDB騒動後も生かすように、歴史を修正したいと申し出たのだ。

集計班「なぜ、彼らが犠牲にならないといけないんだ…」

社長「…」

預言の内容に食い下がる彼と、酷く冷静な自分自身。一時とは立場が真逆だな、と社長は奇妙な違和感を持った。
彼が熱くなれば熱くなるほど、社長の心は急激に冷めていった。

工作活動で誰かを殺めたことはないにせよ、いつも預言で世界の発展を促すときには他方で立場の弱い何らかを虐げてきた。
進化とは成長の裏で悲劇が起こり得るものなのだと社長は既に納得していた。
自分は誰かに不幸を植え付ける死神だ、と社長は自身の役割を認知していた。

そのもう一人の死神が、なぜかとある兵士の不幸に哭いている。
愚かだ、と社長は彼を憐れんだ。
“たかが兵士の死”ぐらいで、なにをそこまで叫んでいるんだと軽蔑に似た感情を目の前の集計係に向けた。

822 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その9:2017/10/23 00:27:37.500 ID:o4m7nuLYo
>>821
修正

集計班「なぜ、彼らが犠牲にならないといけないんだ…」

集計班「なぜ、彼が犠牲にならないといけないんだ…」

この時点では希望の星が二人になることを知らないので修正

823 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その10:2017/10/23 00:29:41.392 ID:o4m7nuLYo
社長「貴方は、今までどんな汚い仕事でもこなしてきた…教えてください、なにが今の貴方をそこまで突き動かすんですか」

彼を突き放すような冷めた自身の声に、社長は内心で驚いた。

集計班「…私たちの目的はなんですか?」

質問を質問で返され、面食らいながらも社長は当然のように答えた。

社長「『預言書通り』に大戦世界を構築し、維持し続けることです」

集計班は静かに頭を振った。

集計班「違いますよ。私たちの目的はあくまで『大戦世界』の繁栄と発展を支え続けること。預言書はそれを達成するための一つの手段にすぎないんです」

頭をガツンと殴られたような衝撃を社長は受けた。


824 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その11:2017/10/23 00:44:13.831 ID:o4m7nuLYo
その夜、久々に夢に現れた神に社長は事の次第を話しすと、百合神は彼を張り手、貫手、正拳突き、目突、あらゆる手段で彼をふっ飛ばし、後は自分で考えろと早々に去ってしまった。

独り残された暗い夢の空間で、起き上がれずに仰向けに転がりながら、夢の中で社長は考え始めた。

集計班という兵士は、自身が工作活動に協力するようになってから残忍で冷徹な面ばかりが映った。
間近で彼の仕事ぶりを見れば彼への拒否感が増し、その度に社長自身は彼を反面教師として、工作活動にも人情だけは持ち続けなければいけないと思っていた。
ルールをお蔵入りにされ、大戦は一時休止に追い込まれ、クリスマス聖戦では結婚ルールという摩訶不思議ルールで大戦は混迷し、多くの兵士が苦しんできた。

全て預言の内容に沿うために、社長は仕方なく裏工作に勤しんだ。だがその度に、社長は常に未来で苦しむことになる兵士に心のなかで謝罪をしながら、
常に贖罪を背負っている気持ちで今日までを過ごしてきた。一方で彼を見ていると、そのような事を微塵も感じてないような振る舞いをする。
社長自身は常に預言書の内容を疑い、彼の預言書への傾倒具合と行動姿勢に真っ向から対立することで、自身の存在価値の重要性を確認してきた。
確認してきたはずだった。

――“たかが兵士の死”ぐらいで、なにをそこまで叫んでいるんだ。

そこで社長は、今日自身が抱いた思いを振り返り、背筋を凍らせた。

―― いつからだろう、工作活動を強制ではなく自発的に行うようになったのは。
少し前までは嫌々行っていたはずの作業を、何の躊躇いもなく実行できるようになったのは。

変わっていないと信じていたはずの自身の思考が、いつの間にか“慣れ”という毒蟲に感覚を蝕まれ、いつしか自身から人情を破壊し非情さだけを増大させていた。
社長は思わず怖くなり声を上げて叫んだ。叫び、叫び、叫び続けたが、叫んでも心のなかに在る自身の残忍な部分が口から外に出ていくわけでもなく、そのうち気分が悪くなり嗚咽混じりに小さくうずくまった。

825 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その12:2017/10/23 00:54:17.336 ID:o4m7nuLYo
―― 私たちの目的はあくまで『大戦世界』の繁栄と発展を支え続けること。預言書はそれを達成するための一つの手段にすぎないんです。

彼の発した言葉が、社長の頭のなかに繰り返しこだました。

頭痛がひどくなる中、彼を理解しようと百合神の教え通り社長は考えた。
てっきり彼は預言書の内容が絶対だと思いこんでいるものばかりだと思っていた。しかし、彼は常に預言書の書かれた未来と、大戦世界の繁栄を願う自身の信念を天秤にかけていたのではないか。
今までは預言書の未来が世界の繁栄へ繋がると信じていたから、何の疑問も持たずに工作活動を実行してきた。

しかし、今回ばかりは預言書の内容を信じきれなくなったのではないか。
彼の真意が次第にわかってきた。

自らが作り出したDB騒動劇を、新参兵士が相打ちになりながらも沈める。描かれる未来は世界を救う英雄の崇拝だ。
会議所はDB討伐により英雄を奉り、それに触発された多くの兵士が大戦へ一時復帰するかもしれない。

だが、軍神を失ってしまったことへの喪失感は戻ってくることはない。
いくら兵士たちの感情が正負で表され、DBの持つ“負のオーラ”が解放されたとしても、同時に“正のオーラ”を創り出す軍神も居なくなっては意味がない。
恒久的に続く大戦を考えると軍神の存在が不可欠であると、彼は結論付けのではないか。

否、寧ろそのような複雑な事情を抜きに“新参兵士を生贄にすることへのやるせなさ”が、彼を預言修正へと突き動かしているのかもしれない。
それでもいいかもしれない、社長からしたらどちらでもよかった。
どちらも真理だと思った。

社長「ずっと変わってないのは彼のほうじゃないか…」

夢の中でポツリと呟いた言葉はどこにも反響すること無く、泡のように闇の中に溶けて消えていった。
頭痛は収まった。心のなかにあったチクチクした思いもいつの間にか消えてしまった。
どうすればいいか再び社長は考える。自身が取る最善の行動とはいったい何か――


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826 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その13:2017/10/23 00:57:31.624 ID:o4m7nuLYo
集計班「『預言書』の内容には従わず、私で新たな未来をつくります」

突拍子のない集計班の発言にも、夢の中で考え抜いた末の社長にはその内容が胸にストンと落ちた。

社長「ご一緒しますよ」

以前では考えられないほど、社長は自然に同調できた。
てっきりいつものように突き放されるものだとばかり思っていたのか、声高に宣言したはずの彼はなぜか面食らう格好となった。

集計班「これは危険な賭けです。【避難所の避難所】に気づかれないように、新たな未来の道筋をつくらないといけない。
バレればおじゃんだ、私ひとりでやります」

彼の言葉に、さすがに社長は嗤った。

社長「いまさらそんな言葉は止めてください。事に巻き込んだ張本人じゃないですか」

それに私が否定しても付き合わせる気でしたでしょう、との社長の言葉に集計班は言葉をつまらせた。

社長「それに、私も見てみたくなったんです。【預言に縛られない未来】というやつをね」

集計班「…ですが」


827 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その14:2017/10/23 01:39:59.512 ID:o4m7nuLYo
なおも煮え切らない集計班に、社長は予てより恐れて口に出せなかった自身の思いを伝えてみることにした。

社長「この際だからはっきり言います。

私は貴方が嫌いです。
私を変えたすべての元凶は貴方であり、貴方には私を変えたことへの重い責任がある。
純粋に大戦を楽しめなくなった事への責任、会議で予定調和の発言しかできず皆への贖罪で胸を痛めた事への責任、それに私をバグらせた事への責任。
この他にも挙げればごまんとあります。その全ての責任を貴方は背負っている。

そもそも貴方の非道っぷりも虫酸が走ります。
その度に私は心を痛めてきた。

さらに貴方はいつも唐突だ。
貴方の一挙手一同に付き合わされる私の身にもなってください。何度尻拭いの役割に徹したか、数え切れません。

貴方と付き合えば付き合うほど、預言書という存在を恨んだし世界を恨んだりもした。
その中で、私は工作活動のせいで貴方の性格が豹変したと勝手に決めつけ、貴方をこき下ろし蔑むことで自身の自我を保ってきたんです。
貴方を見る度に自分自身は絶対に貴方みたいにならない、なってはいけないと。この思いだけは絶やさないようにしてきたつもりだった」

集計班「…」

社長の独白に、集計班は目を閉じて俯向いた。その姿を一瞥しながら社長は、ですが、と続けた。

社長「変わったのは私の方だった。
いつからか私は工作活動の内容に疑問を持たず流れ作業のように活動を続けるようになってしまった。
そこに、大戦を良くしようという感情は一切なかった。

変わっていないのは貴方のほうだった。貴方は常に預言書の内容が大戦への繁栄に繋がるかどうかを考え、決断を下していた。
貴方はずっと大戦の事を考えていた。誤っていたのは私の方だったと気づきました」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

828 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その15:2017/10/23 01:45:32.134 ID:o4m7nuLYo
社長「いつか私は、世界の命運を握っていると言いましたね。その気持ちは今も変わらない」

頭を上げると鳩が豆鉄砲を食ったように慌てている彼と目があった。間抜けな面だ、と素直に社長は思った。
こんな奴に今まで指図を受けていたのか、という感情がふつふつと湧いてきたが今は抑えることにした。目の前の小事より大事に目を向けた。

社長「繰り返しますが私は貴方が嫌いです。
貴方は卑怯だ。
私が逆らえないことをいいことに、最後は自分の意見を押し通す。そうやって先程から否定していても、最後は貴方の思い通りになるべく私は付き合うしかない。
これまで何度も何度も経験してきた。もういい加減うんざりだ。


だから、今度ばかりは私が決断します。
自分の判断で、自分の意志で、貴方の考えに同調し付き従うことを約束します。


貴方の片腕となりましょう。
大戦世界を恒久的な繁栄継続に導くため。なにより“希望の星”を救うため。
どんな危険も覚悟の上です」

集計班「いや、だから…貴方は参加する必要はない。今日はお別れの挨拶なんです、今までご苦労様でした」

これほどまでに慌てふためく兵士を翻弄するのは楽しいものだ、と社長は愉悦気に笑った。
特に今までやり込められていた存在を出し抜いた時の充足感は何事もにも代え難い嬉しさだ、と社長は感じた。

これこそが自身の目指す道だと社長はその場で直感した。


829 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その16:2017/10/23 01:54:03.921 ID:o4m7nuLYo
社長「貴方の驚く顔を見れて、これほど“してやったり”と思える時が来るなんて不思議ですね。
考えてみれば貴方も、預言書というどこの馬の骨とも知れない奴が書いた未来予想図に付き合わされて、内心腹立たしかったでしょう」

集計班「…私は――」

社長「【避難所の避難所】が全て悪いとは言いません。ですが地上と天空との板挟みにされた貴方にも同情の余地はある」

社長は晴れ晴れとした気持ちだった。明快な一本の道筋が見えたのだ。

社長「未来は、預言書なんてカビの生えた本に決められるほど単純なモノじゃない。
貴方が一番よく理解してるはずだ。

やってやりましょう。
【避難所の避難所】を出し抜いて、後塵へ希望を託しましょう」

すっと社長は集計班に向かって手を差し出した。
彼は意味が分からず暫くじっと差し出された社長の手を見つめていたが、すぐに全てを理解しホウと一息つき頭を垂れた。

集計班「全てを許してくれとはとても言えません。ただ、私は貴方を信じきれなかったのかもしれない。もっと早くこの考えに至れば良かった――」

そうして、再び集計班が顔を上げた時。社長は彼の蒼い瞳が熱意に燃えていることを悟った。
彼は社長の手をがっちりと掴み、不敵に笑った。

集計班「一世一代の大勝負ですよ」

社長「もとより覚悟の上です」

二人は声を出して笑いあった。【会合】で二人がこうして心から意思を通わせたのは初めてだった。


830 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その17:2017/10/23 02:10:18.272 ID:o4m7nuLYo
社長「私が手伝えることといえば、誰にも気づかれず皆を誘導することぐらいしかできない。ただし、それも私はバグっているため正攻法ではないでしょう。
時間がない今回の預言破棄に関して、私の直接的な行動は役に立たないかもしれません。

それでは、私は敢えて道化師となりましょう」

集計班「道化師?」

ニヤリとして社長は頷いた。先程、社長が彼を出し抜いた時、もし彼ではなく【避難所の避難所】を出し抜けるとしたら、どれほど可笑しいか。
恐ろしい事を想像してしまったのだ。

社長「私が貴方の信念を皆に伝える水先案内人となりましょう。
そうですね、【占い師】なんてどうですか。私は今このときより【占い師】となりましょう。きれぼし語で預言書通りの内容を占うんです。
怪しくて胡散臭くて、とても中身がなく根拠のない役割に見える。

ただそれは仮初めの姿にすぎない。
誰しもが安心して気がつかない中、貴方が変えたいと思う未来を秘密裏に導く。そのために私が矢面に立ち皆の注目を逸らせ、時には呆れさせ、笑わせ続けるのです。
皆に誰も知らない未来を前もって案内するための先導も兼ねて」

831 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その18:2017/10/23 02:13:30.095 ID:o4m7nuLYo
集計班「それはあまりにも危険だ。貴方のこれまでの行動は【避難所の避難所】に認知されていないんです。わざわざ危険に身を置く必要はないのでは」

社長「危険に身を置いたピエロは虚言を織り交ぜながら可笑しなショーを続ける。一際輝きますよ。
【避難所の避難所】は始めこそ私を疑うかもしれないが、そのうち害がないとわかれば放置をする。
見方を変えれば、世界に忠誠を誓っているピエロでもあるのです。そうすると、私の振る舞いを知らず知らずのうちに【避難所の避難所】は黙認するというわけです。

だからこそ、こちらが預言を破棄したと奴らが気がついたときには、既に預言の未来などどこへやら。取り返しの付かないことになる。
これほど痛快なことはないでしょう?

私の行動はただの自己満足に過ぎません、ただ貴方と私の決意の表れを形に残したいんです。
この狂った世界で踊り続けた私たち二人の勇姿を、そしてこれから世界に産み落とされる悲しき英雄にエールを贈りたいのです。

大戦世界という大舞台で私は見事に道化師を演じてみせましょう。

道化師はなにも人を笑わせるだけでなく奇術も行うものです。
奇術というものは皆を心底驚かせて初めて成功なんです。


失われるはずの生命を救う。


全てが変わった時、貴方と私の一世一代のショーは終焉を迎えカーテンコールに応えるというわけです。いかがですか?」

ぼうと呆けていたままの集計班は、“可笑しな話だ”と笑った。
その後の決意に満ちた瞳を見て、言葉に出さずともその時から二人は真の同士となった。

832 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/23 02:16:37.519 ID:o4m7nuLYo
長かったですが、社長回想編は以上です。
当初正体のしれなかった二人は、明確な意志があって行動してたんですねってお話でした。
社長のキャラがかなり踏み込んでいますが、お許しください〜 最初からこう描きたかったんです

833 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/23 02:17:25.028 ID:o4m7nuLYo
社長の占いも次回の更新でようやくご紹介できます。3年ぶりに日の目を浴びます。

834 名前:社長:2017/10/23 16:20:10.807 ID:/wucmrI20
更新乙。色々と明らかになる感じがいいすね

835 名前:社長:2017/11/03 23:15:30.246 ID:0
アイム/オニロ
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/954/wars01.jpg

軍神/DB
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/955/wars02.jpg

オニロ君は中性的なイメージがあるけどどうも女の子っぽくなってしまう・・・
DBは本編描写では人間よりでかいって描いてるにも関わらず軍神よりちっちゃくなってるけどそこは遠近法みたなものだと・・・

836 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/04 01:08:42.642 ID:o
>>835
おいおい神か
オニロ君は元々そんなイメージで書いたキャラなんでイメージ通りだと思います。アホ毛は正義。
アイムくんは思ったより凛々しくてかっこいいでつね。
DB死すべし

837 名前:社長:2017/11/05 00:05:53.614 ID:0
魔王791/筍魂
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/956/wars03.jpg

魔王様は閉眼キャラって感じに。開眼したら強い感じだけど、魔王様に限っては開眼しなくても強いよね…。あと服装は参謀の書いた奴とほぼ一緒。(魔王っぽい)
魂さんはフィリピン・パブ店長っぽい感じに。ポーズはアイム君といっしょ。(戦闘術魂の構え?)


838 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/05 01:08:07.396 ID:o
>>837
うおおおおおおおおおお
魂さんがあやしい感じになってていいね!魔王はくそつよそう

839 名前:名無しのきのたけ兵士:2017/11/05 01:18:31.441 ID:o
>>835
可愛い弟子を持ったなぁ

840 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その1:2017/11/06 00:26:45.172 ID:o
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

社長の独白が終わり、編纂室は暫く静寂に包まれた。
アイムとオニロの正体、大戦世界を監視する側の目論見、そして集計班と社長の叛逆とその結末。
殆どの会議所兵士は一度に流し込まれた大量の情報を整理するためか、沈黙するしかなかった。

その中で、事の次第を“思い出した”アイムとオニロだけが、社長を気遣うように心配そうな視線を彼に送った。
まるで走り終えた後のように肩で息をしていた社長が二人の視線に気が付いたのか、ぎこちなく口角を上げ笑みを浮かべた。


841 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その2:2017/11/06 00:32:17.559 ID:o
参謀「色々あったということか」

一言で片付けられず率直であやふやな感想を述べた参謀の言葉にも意味は幾らかあった。
多くの兵士が意識を現実に戻し再び社長とアイムたちに注目した。

参謀「アイムとオニロ、お前たちの正体にも驚かされたが。まさか社長が【占い師】に突然なったのは、そういう経緯があったとはな」

社長「これまで大戦世界に関する4度の占いをしました。
1度目は英雄登場の占いを、2度目はDB襲来とオニロ君・アイム君が相打ちとなってしまう占い。3度目は時限の境界の予告の占いをしました」

アイム「全く気づかなかったぞ…」

全く意味がない占いだと思っていた、と言外に含んだニュアンスの言葉をアイムが発したことで、その場の空気は幾分か和らいだ。

スリッパ「4度目は?」

社長「…本当は預言書の未来から外れた瞬間に占いを出して奴らを欺いてやろうとシューさんと企んでいた。
私たちは溜飲を下げたかった。何よりアイム君とオニロ君を救いたかった。
そして、目論見通りシューさんは引退していた竹内さんを独自に呼び戻した」

竹内「ワシに白羽の矢が立ったというわけじゃな」

結構なことだ、と好々爺は声を上げて笑った。


842 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その3:2017/11/06 00:35:14.029 ID:o
社長「預言書には竹内さんの存在について一切書かれていなかった。
シューさんと私は、竹内さんの存在こそが今回の騒動のキープレイヤーであると確信していた。
DBの腐臭に唯一抵抗を持つ【第二の希望】を招集することで、DB討伐隊は預言書が示す戦力内容から大幅に増強されることになり、
その時点で本来の預言<DBと軍神の相打ち>は打ち消されたはずだ。未来は不確定となった。ただ…」

アイム「それと引き換えにシューさんは既にいなくなっていた、か…」

アイムの言葉に、社長は唇を噛み締めた。

社長「覚悟はしていたはずだ。竹内さん招集の暴挙を奴らが見逃すはずもなかった」

筍魂「こうなることを予期して、シューさんは社長の存在を隠し続けていたんだろうな」

¢「いつまでも不器用な兵士だ…」

社長はふうと深く息を吐いた。憑き物が落ちたように、全てを語り終えた社長は晴れ晴れとした顔だ。

美しい。

オニロは社長の姿を見て素直にそう感じた。
葛藤を乗り越えた純粋で澄んだ兵士の心は、本来その極地に達しているはずの軍神<アーミーゴッド>の魂を受け継ぐオニロでさえ眩しく見えた。
バグという抜け殻を破った本来の社長の姿は、まるで雨上がりにかかる虹のように軍神の二人には眩く映った。


843 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その4:2017/11/06 00:47:03.123 ID:o
社長の勇姿を見届けたアイムとオニロは、顔を見合わせ互いに頷いた。

―― 社長は自分の戦いを今終えた。次はボクたちの番だよ。

言葉を発さずとも、オニロの決意をアイムはすぐに察知した。
もとより同じ存在であるがゆえ、ここにきて互いの考えはすぐに分かるようになっていた。
だが、ここまで心が通じ合えるのは、筍魂が与えたあの戦闘術・魂の試練があったからだ、とアイムは感じた。

―― ここからはオレたちの仕事だ。社長が、集計班が必死に繋いだバトンのリレーを受け取って走らないといけない。
    軍神<アーミーゴッド>として皆を鼓舞し、無き兵士が救ってくれた生命を最大限活用する場がきた。

軍神としての第一声はアイムから発せられた。

アイム「社長、いままで辛かっただろう。ありがとう。そしてごめんな」

アイムは社長に深々と頭を下げた。
今まで叩くだの斬るだの言われていた当の本人は、幾らアイムが自身の存在を思い出したとはいえ予想をかけ離れた行動を目の前に慌ててしまった。

社長「あ、頭を上げるあひゃよッ!あっ」

きれぼし語が自然と出てしまい、社長は思わず口を抑えた。

途端にアイムは顔を上げた。
先程までの真面目な顔はどこへやら、アイムはニヤニヤと笑っていた。
してやったり、という悪戯っ子の顔を社長に向けている。

アイム「あんたはやっぱりバグってる姿のほうが向いてるよ。そんなシューさん2号みたいな慇懃無礼な口調は調子が狂っちまうぜ。
まあ今までが狂わされてなかったと言ったら嘘になるけどな」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

844 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その5:2017/11/06 00:58:57.023 ID:o
オニロ「ボクたちは命の恩人である会議所の皆さんを見て育ちました。
今ここに忠誠を誓います。ボクたちを育ててくれた師匠を含めた恩人たち、そして自らの危険を顧みず全てを語ってくれた社長。
全員を守ることをここに誓います」

オニロは一度言葉を切り、兵士全員の顔を見回した。
自身に満ちたオニロの表情に、全員の表情が引き締まったものになっていく。
最後に、オニロは空席になったままのロッキングチェアをじっと見つめた。

オニロ「ボクたちの生命を救ってくれた存在を忘れることはありません。
そして自らの存在を賭してまでボクたちに託した使命を…恥辱の神DBの討伐を、成し遂げてみせます」

アイム「DBはいま、兵士たちから奪った心の頁<士気>を食いつないで必死に生き長らえている。
討伐隊の活躍で溜め込んでいた士気を放出し、奴の存在は風前の灯だ。とはいえ、奴は負のオーラの権化。
いくら皆の活躍で弱体化に追い込んでも、すぐに心の頁<士気>を奪って奴は肥大化する。
まだまだ強敵だ。
それに、いくら厳しい訓練に耐えたからといってオレたちもまだまだヒヨッコだ」

二人の師匠はアイムの言葉に苦笑した。

オニロ「お願いします。討伐には、皆さんの力が必要なんです。
皆さんの力を、勇気をかしてください。
新しい歴史を、皆さんで創っていきましょうッ!!」

オニロの叫びに、その場に居た全員が深く頷き何名かは呼応するように雄叫びを上げた。

兵士たちの心の本に再び頁<士気>が戻っていく様子を、アイムは目を細めて見つめていた。
失われていた兵士たちの頁は、過去の大戦の中で自然に兵士自身が放出し雲散霧消してしまったモノだ。
兵士たちはそれをマンネリ、飽きと呼んでいた。
それをアイムたちが再びかき集め、元々あった場所に戻したのだ。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

845 名前:Chapter4.大戦に愛を バトンリレー編その6:2017/11/06 01:00:16.106 ID:o
【K.N.C180年 会議所 ??】

DB「待っていろよォ会議所」

遠くにそびえ立つ会議所を睨み、急速に傷を癒やしていたDBは独り舌舐めずりをした。

DB「時は一刻を争う。すぐに始めるぞォ」

背後に控えていた黒砂糖と山本は御意とばかりに片膝をついたのだった。


846 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/06 01:06:53.620 ID:o
3年越しに設定公開です。
社長の占いの意味を公開しまーす。実は秘密裏に、社長に占いへの変換を依頼していました。

第一の占い <<アイムとオニロの登場を予言した占い>>
『アァー!(甲高い喘ぎ) 下から突いてくるなんて思っていなかったもの//
 チョ!チョーク!(甲高い喘ぎ) なかっそこち崎哲夫 テイルアタックきた!?』

⇒ 意味:会議所は想定し得ないミスを犯す。それを帳消しにするために、窮地を救う英雄が舞い降りる
★社長的ポイント: ちなみにアァー!からチョークまでは失敗した時の喘ぎ声
             テイルアタックきたはバグメモよりの引用


第二の占い <<DB襲撃と英雄消滅を予言した占い>>
『だが、あるひ… ゆうしょうこんらんです。みごとライアンはかちのこった!
そしてこの納豆美味しいよね〜←※大勢の兵士に向かって 
う〜ん、どうかなぁ?←※アイムとオニロに向かって
こうして森部拳は 永遠にその姿を消した……』
⇒意味:会議所は近々、誰も想定していないような動乱(悪しき時空の潮流者による襲撃)が起きる。
      大戦の救世主たちは時空に囚われ二度と戻ってこない
★社長的ポイント: 納豆をみんなの前に並べておいてこの納豆美味しいよね〜と言うと謎度が深まるんじゃないかな

847 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/06 01:10:36.124 ID:o
第三の占い <<過去と未来を跳躍できる時限の境界発見を喜び予言した占い>>
『ピッコロだいまおうとのせいぜつ
ちかづいてくる…まさか!ソン・ゴクウか!?
ちかづいてくる…
ちかづいてくる… まさか!ソン・ゴクウか!?
ちかづいてくる… まさか!ソン・ゴク
ちかづいてくる… まさか!ソン・ウか!?
むすこ ジョンである。 うれもし、カンっキィー!』

⇒意味:もうそろそろだね。そろそろ現在と過去を行き来できるようになるよ。やったぜ。
★社長的ポイント:もうそろそろだね=ちかづいてくる…!
             過去と未来=ターミネーター→むすこ ジョン
             やったぜ=うれもし

第四の占い <<ハッピーエンドを予想した占い>>
『おきのどくです!!!!!
ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ!
預言?しらね^^
皆食べようぜ〜☆
アア オワッタ・・・・・・・・!』

⇒意味:預言は打ち消され。外部の予想を覆し、大戦の救世主たちはここに集結した。
      会議所と彼の者たちは、必ずや幸せな結末を迎える。


そろそろ決戦です。

848 名前:社長:2017/11/06 01:11:15.337 ID:0
山本さんもう捕まってるじゃねーか。

849 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その1:2017/12/31 00:01:57.876 ID:OwfCxvgko
【K.N.C180年 きのこの山】
その日、仕事を終えたじゃがバター兵士は鬱屈とした思いで帰路に就こうとしていた。
目に刺さる夕陽を嫌うように手で日除けを作りながら、じゃがバターは陽の方向にある古ぼけた建物のある一点を見つめていた。

かつて、あの建物<会議所>の中に自分がいたことが今でも不思議だと、じゃがバターは思っている。
大戦初期、自分自身は会議所の中心に居た。集計班の代わりとして大戦の集計係まで務めたこともある。
あの日あの時、大戦に対する情熱は誰よりも強かった。
しかし、ある時を境に自分の心の中から大戦への情熱の火がふっと消えてしまい、気がつけば会議所はおろか大戦場へ立ち寄ることすらなくなっていた。

感慨に耽っていた時間を取り戻すように、じゃがバターは早足で自宅へ歩を進めた。
じゃがバターの周りにも大戦への興味が無くなってしまった者は多い。そうした者は大戦への参加すらも敬遠することが殆どだが、全く生活と縁がなくなるかといわれればそうではない。
きのこの山の住民の多くは大戦関連の産業で生計を立てている。じゃがバターも勿論その例外ではなく、大戦で使用される銃器の生産工場で働いていた。

一時は残業をしても生産数が追いつかないほど大戦の特需に湧いた武器界隈だが、今は閑古鳥が鳴く不況具合だ。それもその筈、大戦自体が暫く開催されていないためだ。
時間通りに帰れることの安心はあるものの、手取りが減ってしまったため日々の生活は苦しい。

大戦に参加するほどのやる気はもう無い、しかし大戦が開催されないと困ってしまう。
やり場のない怒りをどこにぶつけていいかわからず、じゃがバターは暗澹たる思いで広場を通りかかった。


850 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その2:2017/12/31 00:03:04.907 ID:OwfCxvgko
??「…私たちは今まで信じれば救われると信じてきた。信じた結果、どうなったッ!!」

じゃがバターの耳にある兵士の演説が聞こえてきた時、彼は興味本位で広場の集会で行われている奇妙な集会に近寄ってみた。
広場の中心で喋る一人の兵士の姿とそれを取り巻く兵士たちから奇妙な熱気を感じたのだ。
中心の兵士は身振り手振りを交え、熱心に何かを訴えているようだった。

??「大地は荒れ果てェ文化と生活は荒廃し、兵士たちは考えることを止め生活は貧しくなったッ!この間、“夜のきのこ”きのこ軍は一体何をやっていたのかッ!
“常勝”たけのこ軍もだ!私たちはァ猛省しないといけない!」

壇上に立つ兵士の熱心な演説に、周りの兵士たちはたまらず拍手と歓声を浴びせた。よく見ると、山の殆どの住民が彼の演説を聞き入っていた。
さらに、群衆の中にはたけのこ軍兵士も多く混ざっていた。どうやらたけのこの里で既に同じ演説を行い、支援者を引き連れきのこの山へ乗り込んできたらしい。


851 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その3:2017/12/31 00:04:41.648 ID:OwfCxvgko
??「貴方達は覚えているかァ!かつて大戦世界には数多の神が存在したことをッ!その中に軍神<アーミーゴッド>という現人神が大戦に居たことをッ!」

群衆の多くはハッとしたように息を呑んだ。じゃがバターも兵士の言葉で、初めて軍神<アーミーゴッド>の存在を思い出した。
あれ程戦場を賑やかした存在のはずなのに、今ではその存在に靄がかかったように思い出せない。じゃがバターは途端に不安になった。
壇上の兵士は戸惑う兵士たちを導くように、力強く演説を続ける。

??「久しく軍神<アーミーゴッド>を忘れていた者も多いだろゥ。それもその筈、奴は大戦をインフレへと引き上げバランスをめちゃくちゃにした暗黒の象徴なのだァ!」

突拍子もない話だ。決して軍神<アーミーゴッド>は目の前の兵士の語るような存在でないはずなのに、他方で話の通りとんでもない大悪党であると確信する思いも持っている。
じゃがバターは自身の相反する思いが交錯していることにたちまち不安が増大された。

??「貴方達はいま知られざる軍神<アーミーゴッド>の正体をきき、混乱しているだろゥ。無理もない、光の象徴 軍神<アーミーゴッド>の姿は奴が捏造して洗脳してつくりあげた存在。
貴方達は必死に抵抗しようと、今まで軍神<アーミーゴッド>の存在を記憶から封印してきたのだ」

おかしな話だが、たしかに辻褄は合うかもしれない。
先ほどと打って変わって優しげに語りかけてくる兵士の言葉が、じゃがバターの葛藤する胸中にストンと落ちた。


852 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2017/12/31 00:06:45.434 ID:OwfCxvgko
??「貴方達は今まで邪悪の化身である軍神<アーミーゴッド>から必死に身を守ってきたのだ。忘れていたのは恥ではない、誇りだ。
そして今、その誇りを勇気へと変える時が来た。軍神<アーミーゴッド>が再び現世に復活したのだァ」

群衆の多くから悲鳴とも取れる叫び声があがった。兵士は両手を群衆に向け落ち着かせる仕草を取った。

??「会議所が軍神<アーミーゴッド>を匿っている。奴を使い、会議所は貴方達を再び洗脳し世界を支配しようとしているゥ」

会議所というフレーズにじゃがバターを含め、全員が息を呑んだ。大戦世界を支える運営所たる会議所は、山里の住民にとって感謝こそすれど批判の的にはできない聖域だったのだ。
そんな群衆の態度を見越し、壇上の兵士は囁くように話を続けた。

??「怖がるゥ気持ちはわかる。だが、これは真実だ。

考えてもみろ、会議所は君たちになにを与えた?

どうして私達の生活はここまで苦しいんだ?それは大戦が開かれないからだ。そもそも大戦はどうして開かれない?

私達の努力不足もある、だがそれ以上に会議所の怠慢が原因だァ…」

嘆きから怒りへ、群衆の表情が一斉に切り変わったのを壇上の兵士は見逃さなかった。畳み掛けるように兵士は声を荒げ力説する。

??「会議所は【意図的に】大戦を開催していない。わざと私達を苦しめているゥ!!

なぜか?

会議所に力を集約させ、私達を奴隷みたいに指図するためだッ!

こんな蛮行を許しておけるのかッ?」

群衆から怒りにも似た声が次々に上がった。明らかに会議所に対する拒絶の声だった。


853 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その5:2017/12/31 00:08:50.144 ID:OwfCxvgko
??「こんな生活に誰がしたッ?誰が悪いんだッ!!」

群衆「会議所だッ!!」

全員は声を揃え、兵士の呼びかけに呼応した。

??「この現状を生み出した諸悪の根源はなんだッ?」

群衆「軍神<アーミーゴッド>だッ!!」

??「軍神<アーミーゴッド>を匿う会議所に、我々はどう立ち向かう?」

群衆「襲撃だッ!!」

耳をつんざくほどの大声で全員は答えた。

??「襲撃だけでいいのか?」

群衆「軍神<アーミーゴッド>を引きずり出して、その場で処刑だ!」

壇上の兵士は満足するように一度うなずき、握りこぶしを振りかざした。

??「民衆よ、チョコと槍を取れ。今こそ両軍の垣根を超え、真の敵へと立ち向かうときだッ!
進めェ!
この日が暮れるまで一人でも多くの賛同者とともに真の自由を取り戻す戦いをするのだッ!」

854 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その6:2017/12/31 00:10:30.168 ID:OwfCxvgko
「戦え!」「進め!」「根絶やしだ!」

群衆は鼻息荒く、壇上から下りた兵士を先頭に輪はうねりとなり、会議所まで行進を始めた。
興奮したじゃがバターもその場で鞄を放り出し、神父の格好をした兵士から支給されたチョコ剣を手に取り輪に加わった。
洗脳されたじゃがバターの耳に、微かに他の兵士の声も聞こえてきていたがもう彼の理性には届かなかった。

山本「我々が信じていた神は死んだ!今こそ民衆よ!
疫病神・軍神<アーミーゴッド>を打ち倒し真の平和を取り戻せッ!
日暮れまでに少しでも多くの同志をかき集め会議所へ討ち入りだッ!
この【きのこ軍 真参謀 B’L様】が我々をお救いなされる!
心配は無用だ!進め!進め!進め!」

B’L「終わりだ、軍神<アーミーゴッド>ォ」

先頭に居たB’Lは卑しい笑みを隠しきれないように口角を釣り上げ、勝利を確信したように歩を進めた。


855 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その6:2017/12/31 00:10:51.035 ID:OwfCxvgko
じゃあ来週から最終決戦ぽいのはじまりまーす。良いお年を

856 名前:社長:2017/12/31 00:12:53.502 ID:MfcE4qxs0
こわいよお

857 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/02 03:26:44.030 ID:xXkcYgXko
warsまとめ
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%a4%de%a4%c8%a4%e1

近々更新を再開できる見込みなので、まとめてみました。

858 名前:791:2020/02/03 16:31:05.103 ID:vT6dWXqIo
>>857
まとめお疲れさまです!
予言の解説とか内容改めて面白かった!続きが楽しみ

859 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 11:37:48.174 ID:xXkcYgXko
本当にお久しぶりです。というわけでさっさと更新していきます。
信じられないぐらい長いのでこれまでの簡単なあらすじは>>757-759>>857のwikiを見るといいんじゃないかな。ここからも結構長いので飽きたら寝ましょう。

860 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その1:2020/02/10 11:42:48.025 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

オニロの言葉で改めて一致団結した会議所では、DBを偵察しに出かけた山本が未だに戻らないことに対する対応策とDBの今後の行動に対する検討をしていた。

791「山本さんはあの最低な乙牌教の教祖ということもあって、煩悩に人一倍に弱い。洗脳されていると考えたほうが自然じゃないかな?」

筍魂「あの山本さんがDBに洗脳されているなんて!…ありえるな」

抹茶「DBの目的は大戦世界の“負のオーラ”を集めて自身を強大にすることですよね。そのためにスクリプトを使い過去大戦の歴史を改変していたけど、それもできない」

オニロ「だから現代に留まるしかないDBは、いま”負のオーラ“集めをするしかない。そうすると各地で厭戦感情を高める行動や暴動を起こすか…」

――さもなくば、DBと対極の位置にいる“正のオーラ”を持つ軍神<アーミーゴッド>を破壊して人々を絶望させるか。

皆の混乱を抑えるため、オニロは敢えて口には出さなかったがDBの真の狙いは軍神<アーミーゴッド>の消滅であることを軍神の二人は本能的に理解していた。


861 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その2:2020/02/10 11:44:29.559 ID:xXkcYgXko
そして開いた口をぎゅっと結び、オニロは横にいるアイムをチラリと見やった。

互いの性格は真反対、さらに最初は彼から”自分のような甘ちゃんなど大嫌い“と明言され、オニロ自身も彼の傍若無人な態度に何度も嫌気がさしてきた。
それ程までに真逆だった二人が実は同じ一人の人物と―正確には神だが―わかった瞬間に、オニロは隣りにいたアイムがまるで実の兄弟なように懐かしくなり、不可思議な事態にもすぐに腑に落ちたのだ。

オニロが持つ慈愛、優柔不断さとアイムが持つ冷徹さと自信過剰は全て同じ軍神<アーミーゴッド>が持つ個性が分裂したもので、
それぞれの個性の強さに大小の違いはあれ、オニロから見たもうひとりの片割れを兄弟のように愛おしく思う気持ちが強まった。

アイムは周りの兵士たちと会議所の今後の対応について話している最中だった。アイムも横目でチラリとオニロを見て視線があったのが気恥ずかしかったのか、すぐにふいと視線を外した。
そんな様子が可笑しく、オニロは結んでいた口元を緩め柔らかに笑った。


862 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その3:2020/02/10 11:47:42.700 ID:xXkcYgXko

皆がオニロの言葉に鼓舞され士気を高めていた中、きのこ軍兵士¢は周りから相反するように円卓テーブルの端で独り震えていた。
自らの行いを独り悔い、それでも皆と同じような希望に足を踏み出せずにいる自らの意志の薄弱さに心のなかで泣いていたのだ。

  集計班『とびきり邪悪な怪物をつくっていただけませんか。それを会議所で討伐するんですよ、どうですか楽しいと思いません?』

若かりし頃の¢は当時の集計班の言葉にしたがい、圧縮装置で負のオーラを集め邪悪な怪物DBをつくりあげたが、その事実を知る者は実は殆どいない。
¢の発明品の中でも自我を持ち想定外の動きを頻発するDBはとりわけ”優秀“だった。
会議所の古参としてよりも開発者としての矜持を忘れられなかった¢は、K.N.C28年での初の討伐戦で討伐予定だったDBを秘密裏に解放し世に解き放った。
¢は悩み苦しんでいる。DBの生みの親である自身が皆を苦しめているという事態に、それを公表できない心の弱さに、そして――

アイム「¢さん。少しだけ時間いいか?」

本来であれば気がつける筈のアイムの気配にも気づけないほど、歴戦のエース¢は周りへの罪悪感と自らのDBに対する愛憎が入り混じり極限にまで追い込まれていた。

アイム「会議所の行動についてあんたの確認を取りたかった。加古川さんとも話していたが山本さんの野郎は十中八九DBに捕まっている。
罠も考慮し市井の様子を探りに何人か偵察に行かせてもいいよな?」

¢「ぼくはそれで異論ないんよ…」

目を合わせず¢はポツリとつぶやいた。自らの意思など気にせず続けてくれと言わんばかりの弱々しさだった。

アイムはそんな彼の様子を数秒ほど見ていたが――

アイム「¢さん。いままで悪かった」

突然¢に頭を下げた。¢は吃驚して顔を上げた。

863 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その4:2020/02/10 11:49:45.099 ID:xXkcYgXko

¢「ど、どうしたんよいきなり」

アイム「オレはあんたを疑っていた。DBの一味なんじゃないかと思っていた」

¢「…」

アイム「でもそれは誤りだった。あんたはあんたなりの信念で動いていたんだな。それを理解できなかった、だから謝る。ごめん」

軍神<アーミーゴッド>の頃の記憶が戻り、¢が葛藤していた様子も気がついたのかもしれない。アイムの真っ直ぐな気持ちに圧され、¢も本音で返さざるをえなかった。

¢「信念なんてそんな大層なものじゃない。俺は弱い兵士なんだ」

アイム「弱さと強さは両立する。
確かにあんたの言うように固執する心は周りが見えなくなり弱くなるかもしれない。
でも、それがあんたを強くしている原動力でもあるんだ。少なくともオレは¢さんの強さを知っている」

アイムは頭を上げた。キザな悪戯っ子のように口元をつりあげて笑っている。

864 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その5:2020/02/10 11:50:57.219 ID:xXkcYgXko
アイム「気持ちを圧し殺すんじゃない。”認める“んだ。そのうえで何が正しいか、その時々で判断すればいい。オレはそう学んだ」

¢「…それは軍神<アーミーゴッド>としてか、それともアイム自身の意見か?」

アイム「前者さ…と言いたいところだが、そんな御高説たれるほどできた兵士じゃないよ、オレは。いまのはどちらかというと後者からの意見さ」

アイムは背後にいるオニロと筍魂をチラリと見やり、視線を再び¢に戻した。

¢「社長のときと同じで兵士を立ち直らせるのがうまいんよ、アイムは。さすがは軍神<アーミーゴッド>の化身といったところか」

アイム「暗いところでウジウジしてないで¢さんもこいよ。オレも一人のほうが好きだが、たけのこ軍のやつらとバカをやるのも、まあたまにはわるくない」

アイムはすっと¢に手を差し伸べた。¢から見てもアイムは変わったと思う。本来の性格はそのままに、兵士たちを導いていく力が目に見えて増した実感がある。
軍神<アーミーゴッド>のオーラが戻っただけなく、これまでの経験がアイムをここまで強くしたのだ。

― これがアイムの言う乗り越えた力か。

自分もいつか乗り越えることができるだろうか。
未だ不安を残したまま前進をしようと、¢がアイムの手をつかみかけた正にその瞬間、突然、最終決戦の合図は告げられた。
編纂室の扉が勢いよく放たれ、ビギナーが息も絶え絶えながら叫んだ。

ビギナー「大変だッ!!!会議所の周りを大勢のデモ隊が取り囲んでいるッ!軍神<アーミーゴッド>を出せと民衆が血眼になって会議所に押し寄せてきているぞッ!!」


865 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その1:2020/02/10 11:52:28.133 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 wiki図書館】

普段は静寂を保っているwiki図書館にもデモ隊の騒動は伝わってきた。
地上に戻ってきたアイムとオニロたちを地上兵士たちが待ち構えていた。

抹茶「これはいったい何事ですかッ!?」

ゴダン「ふと外が騒がしいと思って会議所から覗いてみたら、きのこの山とたけのこの里の方から大量の住民がこちらに向かってくるのが見えて…」

埼玉「慌てて会議所の門を閉めたんだたまッ!でもそれもいつまで持つか…」

図書館から外の様子を窺い知ることはできないが、取り囲んでいるデモ隊はおそらくきのこの山とたけのこの里のほぼ全住民ではないかと、埼玉は付け加えた。

参謀「こちらから偵察を送る手間が省けたな。デモ隊の要望はなんや?」

「会議所は軍神<アーミーゴッド>を匿っているッ!俺たちの生活をめちゃくちゃにした軍神<アーミーゴッド>を出せッ!!」

拡声器か魔法で増大された怒りの声がwiki図書館にも届いた。


866 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その2:2020/02/10 11:54:54.135 ID:xXkcYgXko
791「軍神<アーミーゴッド>を標的にしたデモとはこのタイミングで不自然だよね」

¢「そもそもぼくたちも含めてみんな軍神<アーミーゴッド>のことを忘れていたのに、突然軍神<アーミーゴッド>のデモを起こすなんておかしいんよ」

社長「それは一理ありますね。」

オニロ「DBの仕業ということだね」

誰もが疑念を抱いていた言葉をオニロが最初に口にした。

アイム「DBの洗脳能力を使い、山本さんや黒砂糖さんに加えて全世界の住民を巻き込んだというわけか」

抹茶「全世界…今までとは規模が違いすぎる。これがDBの本気なのか」


867 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その3:2020/02/10 11:56:11.262 ID:xXkcYgXko

抹茶の言葉に全員が言葉を飲んだ。これまで数人単位での洗脳が瞬く間に数千、数万倍ベースで一般兵士にされDB勢力になったのだ。予備兵の会議所兵士たちをあわせても兵力の差は歴然だった。
そんな皆の不安を他所に、アイムは気にすること無いとばかりにポンと一度手を叩いた。

アイム「怯えることはないよ抹茶さん。ヤツもそれだけ本気ということだけど、その分力は使っている。あいつは自分で集めた負のオーラを消耗することで洗脳しているんだ」

オニロ「ということは、今回の洗脳はだいぶDB自身を弱体化させているんだ。正にこの戦いに賭けているというわけだね」

アイムの言葉にオニロが補足して付け加えた。

抹茶「なるほど。逆にDBも追い詰められているということですね。なんか勇気わいてきた…かも?」

¢「ただ依然として兵力の差は圧倒的なんよ。会議所で籠城しても勝ち目があるかどうか…」

オニロ「その話だけど、ボクとアイムにいい案がある。そうだよねアイム?」

オニロの言葉にアイムは深く頷いた。

アイム「¢さん、頼みがある」

アイムとオニロは¢に向き直り深々と頭を下げた。


868 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その4:2020/02/10 11:57:35.694 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 地下室】

薄暗い地下室でぼうと光る圧縮装置の前で、アイムとオニロは決意に満ちた表情で地下から上がってきた会議所兵士たちと相対していた。

¢「本当にいいんだな?」

アイム「ああ、頼む」

オニロ「DBに勝つためにはこれしかないよ」

― オレたちを軍神<アーミーゴッド>に戻してほしい。

アイムの頼みは周りを大いに驚愕させた。
DBが負のオーラを結集させ過去最悪の力を手に入れているとするならば、正のオーラを纏う軍神<アーミーゴッド>で対抗し、民衆の目を覚ますことができれば形勢は一気に逆転する。
アイムとオニロの“欠けたピース”のままではDBとの完全決戦に挑むのはどうしても不完全なのだ。

ただしDBに扇動されている民衆は軍神<アーミーゴッド>に対し強い敵意を抱いているため、ひと度軍神<アーミーゴッド>が民衆の前に表れれば標的にされ何が起きるかわからない。
圧縮装置での軍神<アーミーゴッド>の復帰はDB討伐戦を会議所勝利の終結に導くか、さもなくば歴史がDBの手に落ちるか究極の二択を迫られる危険な賭けでもあった。


869 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その5:2020/02/10 11:59:38.206 ID:xXkcYgXko
¢は一瞬、逡巡した後に装置のボタンを一度だけ押した。
圧縮装置がおもむろに機械音を発し始めたと同時に、二人の身体が白く光り始めた。

抹茶「もう二人には会えないんですか?」

アイム「バカだな抹茶さん。姿形は変わったとしても心は同じ、オレとオニロ。生きている」

アイムはそう言って、自らの胸を拳で二度叩いた。

オニロ「ボクとアイムがご迷惑をおかけしました、これからは軍神として皆さんを導きます」

アイム「おいオレを巻き込むんじゃねえ」

二人の変わらない掛け合いに周りの兵士たちからは思わず笑みがこぼれた。当人たちも軽口を言い合いながら互いに顔を見合わせた。
当初は誰にも馴染まず一匹狼を貫いた冷静沈着なアイムと、柔和ながら芯の強さを秘め歴史家としての才能を開花させた温厚で直情的なオニロ。
性格が真反対なきのたけの“希望の星”は、軍神<アーミーゴッド>の性格を分け与えられた“欠けたピース”ながら、それぞれが会議所で成長しともに師を持ち世界を大いに盛り上げた。


オニロは、窮地に追い込まれながらも不思議と心地の良い気持ちに、目を瞑りその時を待った。
アイムは、来る最後の戦いへの興奮と早る気持ちを抑えるために、目を瞑りその時を待った。




              そして、救世主が現れた。




870 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その5:2020/02/10 12:01:23.104 ID:xXkcYgXko
まばゆい光が徐々に消え去り、アイムとオニロが立っていた場に一人の長身の兵士が現れた。
黒を貴重としたマントを羽織り、両軍服のモチーフカラーをあしらった専用の軍服はシワひとつなく清潔感を与える。
幼さの残る顔立ちの割に立ち振舞いに威厳があり、穏やかながら人を貫かんとする意志の強い目はアイムとオニロの名残を感じさせる。
紛れもない軍神<アーミーゴッド>、その兵士だった。

軍神「皆、待たせてすまなかった」

軍神<アーミーゴッド>の第一声に、止まっていた時間が動き出したように会議所兵士たちは慌ててピンと背を張った。

軍神「時間がもうない。すぐに我は外に出るぞ、付いてこい」

優しげな声色の内に秘めた強烈な力強さは、会議所兵士たちを鼓舞するには十二分だった。


871 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その7:2020/02/10 12:02:52.768 ID:xXkcYgXko
参謀「よっしゃあ!いくぞッ!ほぼ全ての会議所兵士を会議所防衛に投入する。会議所への侵入を試みるデモ隊を軍神が食い止める。そして、デモ隊の中心にいると思われるDBを発見し討伐するッ!
ただ、DBを含めその周りにいる黒砂糖さんと山本さんは特に強力や。個別に対応する兵士をつけたほうがいい」

軍神<アーミーゴッド>の声に反応したように、討伐隊隊長の参謀は矢継ぎ早に指示を出し皆に意見を仰いだ。会議所が徐々に団結していく。

791「黒砂糖さんの対応は私に任せてもらってもいいかな?前回、魔法の使いすぎで先に寝て負けちゃったから今回はおまけで抹茶も引き連れていくよ」

抹茶「えっ」

指名された抹茶はただでさえ緑がかった顔色をさらに真緑にした。

筍魂「山本さんは俺で引き受けるゾ」

参謀「決まりやな。黒砂糖さんには791さんと抹茶で、山本さんには筍魂が相対しDBから引き離す。常人が近づけない対DBには竹内さんの存在が必要不可欠や。
まだ地下で茶でも飲んでるだろうから連れてきてくれ。負けられない戦いになるなッ!」

ビギナー「報告。いま入った情報によると、DBはきのこ軍 真参謀 B’Lと、参謀に似た名前を騙ってデモ隊の中に化けているらしい」

参謀「訂正じゃ…この戦い、死んでも負けるんじゃねえぞッ!!DBの野郎を討伐やッ!!!」

威勢のいい声とともに湿った地下は途端に大戦場のような熱気を帯びた。
最後の戦いの火蓋がここに切って落とされた。


872 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 12:04:31.684 ID:xXkcYgXko
軍神の設定は>>835で社長が描いてくれたものを逆輸入しました。マジサンクスです。

873 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その1:2020/02/10 12:06:06.195 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所】

「会議所の中に入れろッ!どうなっているんだッ!」

「俺たちの生活を返せッ会議所ッ!!」

「軍神<アーミーゴッド>を出せッ!!」

会議所を取り巻くとてつもない規模の民衆からの声は広がり重なりながらも反射し増幅された怨嗟の地鳴りとなり会議所に届いていた。
デモ隊から必死に門を抑えている会議所の地上兵士たちは、その地鳴りに耐えるには限界だった。

そのデモ隊たる民衆の中心に首謀者は居た。

黒砂糖「DB様…おっと失礼しました、真参謀 B’L殿。この様子ならばァ、会議所への突入も時間の問題と思われます」

きのこ軍兵士に化けたDBに、黒砂糖はそっと耳打ちした。

DB「それは僥倖ゥ。籠城などさせぬ、民衆が黙ってはおらぬからなァ!ゲゲッゲゲハハハッ」

端正な顔立ちからは似つかない下卑た笑いは民衆の声にすぐかき消された。

山本「ほぼ全住民が参加しておりますゥ、いかに籠城しようといつか門は破られましょう」

同じくDBの傍に立つ山本も乙牌を見つけた時と同じように眼光をギラつかせ嗤っている。


874 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その2:2020/02/10 12:08:04.412 ID:xXkcYgXko
DBは勝利の前に自らの人生を振り返った。
彼はこの世界に生まれ落ちてから、兵士の士気向上のためにと幾多にも会議所に私利私欲目的で戦いと捕縛を続けられた。
大戦世界から戦の士気が無くなるや否や幽閉され長い年月を会議所の地下で過ごすこととなった。本来、“負のオーラ”はDBにとって何よりの馳走なのにそれを喰らうことのできない苛立ち、
喰らっても暴れることのできないもどかしさが会議所への恨みをより一層強くした。

そして時がきたら、“計画通り”に隣りにいたスクリプトを引き連れ檻を脱出し、“謎の声”の指示通りに時限の境界を用いた歴史改変を決行した。
心地よく大戦世界に厭戦気分が広がり、“希望-心の本-”を喰らいDBは生き繋いだ。しかし、会議所にすぐ作戦を看破され相棒だったスクリプトは姿を消し、DB自身も窮地に追い込まれた。
それでも策を巡らせ過去に巻いた種を回収するように、黒砂糖を洗脳しアイムとオニロをあと一歩まで追い詰めた。
竹内というイレギュラーな存在により軍神破壊はならなかったが、再突入間近でいま正に会議所の灯は消えようとしている。

目に見えない負のオーラの増大を実感し、食べられもしないのにDBは馳走をくらうように空に向かって大口をあけた。
DBの力は過去最高にみなぎっていた。

山本「DB様ッ!ご覧くださいッ!!」

悦に浸っていたDBを引き戻したのは、山本の叫び声に加え驚嘆した民衆の息を呑む声だった。


875 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その3:2020/02/10 12:10:05.446 ID:xXkcYgXko
軍神が会議所のバルコニーに立ち眼下の民衆と相対す形となると、あれ程煩かった民衆は水を打ったように静まり返った。
軍神がそれ程までに威厳を放っていたためである。

軍神「諸君、我は軍神<アーミーゴッド>だ。君たちが待ち焦がれた軍神<アーミーゴッド>そのものだ」

静かに語り始めた軍神の声は不思議とよく通った。

軍神「今回のこのような事態に一重に胸を痛めている。現状を鑑み、非常の措置をもって時局の収拾にあたるべく、これより善良なる両軍兵士に告ぐ」

誰も声を発すことができなかった。軍神の一挙手一投足にDBも含めた全員が釘付けとなった。

軍神「一刻も早くこの集会を解散せよ。映えあるきのこたけのこ大戦世界に暮らす勇猛果敢な兵士諸君は某かの不幸を願うためにその力を使うのではなく、大戦場で戦ってこそのものである」

「ふ、ふざけるなッ!その大戦を開かないのはお前達だろうがッ!ま、貧しい暮らしに喘ぐ俺たちの気持ちがわかるのかッ!」

誰もが口を開けない中、民衆の最前列にいた一人の兵士が勇敢にも軍神<アーミーゴッド>に意見した。
途端に啖呵を切ったように同調勢力が広がり、再び会議所前は怒りの喧騒に包まれた。

「そうだそうだッ!」

「軍神<アーミーゴッド>が意図的に大戦を延期させているに違いないッ!やっちまえッ!」

「軍神<アーミーゴッド>と会議所をただで許しておくなッ!処刑だッ!」

軍神「静まれいッ!!!」

一通り無言で聴衆の声を聴いていた軍神の一喝は、再び民衆を瞬時に黙らせた。


876 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2020/02/10 12:13:28.419 ID:xXkcYgXko
最初に声を上げた兵士に軍神が鋭い目線を送り、顔を向けた。見つめられた兵士は途端に威勢さを失い怯えるように肩を震わせた。
すると、瞬時に軍神はニカッと微笑った。

軍神「剛毅果断な兵士だッ!素晴らしい、君のような兵士が大戦で誰よりも活躍するんだッ!」

すぐにキッと顔を上げ、拳を振り上げ軍神は民衆に語りかけた。

軍神「会議所とは大戦世界を生きながらえさせる生命の拍動そのものであるッ!兵士諸君が大戦を開催したいと強く願えば、会議所は直ちに君たちの願いを叶えるだろう」

軍神「会議所は兵士諸君の力と意思と情熱で成り立っているッ!時局を読み、何より君たちの意慾を組み大戦開催の判断を行っている」

軍神「なぜ大戦が開催されていないか。意図的にか?はたまた会議所の権力を集中させるため焦らしているのか?ふざけるのもいい加減にしろッ!全てが馬鹿げた戯言だッ!!」

軍神の叫びに、徐々に民衆がざわつき始めた。しかしそれは先程のような怨嗟の声ではなく、ただただ戸惑い迷う民衆の声だった。

軍神「果たしてどれ程大戦復帰を願う者がいたか。答えは我自身が示しているッ!皆が両軍への怒りを忘れ、仮初の平穏を望み戦いから目を背けたことで軍神<アーミーゴッド>は一度大戦世界から消滅したッ!
それが諸君らの大戦への取り組みの意志表示だッ!それが答えだッ!!」

話を続けながら軍神は、民衆たちの失われた心の本の頁<士気>が漠然と眼前に広がりつつあるように見えた。


877 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2020/02/10 12:16:05.078 ID:xXkcYgXko
軍神「だが、我がいまここに存在しているという事実が、また別の解を示している。善良なる両軍兵士が如何のような形であれ大戦復活を切に望んでいるッ!
両軍共栄の楽を共にするため、軍神<アーミーゴッド>は此処に復活したッ!会議所は必ずや諸君らの声を聞き行動に起こすだろう」

民衆の上空でキラキラと薄い膜のように漂っていた本の頁<士気>が、徐々に形を帯びてくる。

軍神「君たちの内なる魂に、情熱の灯を、消えかけた情熱の灯を再び灯すのだッ!大戦世界の心臓部として拍動を続けんとあがく会議所に、君たちが血となり後押しをするのだッ!」

軍神の叫びに、その本の頁<士気>は持ち主に還っていくように―

軍神「感じろッ!大戦で得たあの高揚感と充足感をッ!」

一人、また一人へ―

軍神「目を覚ませッ!勇猛果敢なきのこ軍兵士よッ!百戦錬磨のたけのこ軍兵士よッ!」

その数は瞬く間に広がり―

軍神「思い出せッ!185回にも続く大戦の偉大なる軌跡をッ!!」

パァンと空一面に広がった本の頁<士気>が弾ける音を軍神だけが聴いた。次の瞬間、洗脳が解け本の頁<士気>が戻った兵士たちは一斉にその場で倒れていった。
その数は民衆の大多数を占めた。
軍神が民衆の士気を急激に取り戻した瞬間だった。



その光景を誰よりも許せない兵士がいた。

DB「アアアアアアァァァァアミイイイイイイイイィィィゴッドオオオオオオオオオォォォォッッッ!!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

878 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その6:2020/02/10 12:18:37.956 ID:xXkcYgXko
DBは力を振り絞り禍々しいオーラを発散した。瞬く間に倒れていた兵士たちの中から選りすぐりの者がカクンと人形のように起き上がった。

DB「黒飴くゥゥゥゥん。プランを変更だァ。俺様に相応しい最高の“舞台”に、あの哀れな英雄<ヒーロー>を招待しろォ。
二度仕留め損ねたが、最後に悪は勝つということを歴史に魅せつけてやろゥ」

黒砂糖「御意」

DBと幹部の黒砂糖と山本、そして数は減ったにせよ未だ洗脳された多くの兵士を引き連れ、黒い渦たるDB集団は会議所の正門へ向かい愚直に走り出した。

軍神「『ポイフルバースト』」

軍神の突き出した利き手から幾多の光弾が発せられ、DB隊に向かって勢いよく飛んでいった。オニロとアイムの力が合わさり、光弾は烈火の如く連射された。

山本「いくぞッ神父黒飴ッ!」

黒砂糖「任せろッ!」

集団から山本と黒砂糖が飛び出し光弾に相対した。
山本は自然な体捌きと自らの拳で次々と光弾をはたき落とし、黒砂糖は対抗呪文で次々と軍神のポイフルバーストを撃ち落とした。
熟練の兵士二人が相対すことで軍神の力と互角になり、ポイフルバーストを打ち消したのだった。

DB「悪意に満ちた悪がどれ程強大かということを、その身をもって教えてやるよォォッ!」

軍神「敵が来るぞッ!全員構えろッ!」

咆哮と悪意を撒き散らしながら、DBたちは会議所の正門に激突し破壊した。


879 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 12:20:18.086 ID:xXkcYgXko
ここから最終決戦。

880 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その1:2020/02/10 12:22:24.732 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所】

雪崩のようにDB隊は会議所の中に飛び込んだものの、巨大な正門を抜けた先は誰もおらずもぬけの殻だった。

加古川「やれッ!」

DB隊全員が入り込んだと同時に正門は閉ざされDB隊は閉じ込められた。
そして、加古川の命令が下されると正門の見張り塔に隠れていた兵士たちが次々と姿を現し、矢を放った。

DB「チッ!各自散開して軍神<アーミーゴッド>を討ち取れェ!」

黒砂糖「DB様ッ!御声を出してはバレてしまいますッ!」

中心で号令を発した兵士をDBと発見した会議所兵士の攻撃は激しさを増した。
すぐに散り散りとなったDB隊たちの中で、DBと思わしき兵士は黒砂糖に護衛されながら中庭に向かって走り去っていった。

791「黒砂糖とおそらくDBは中庭に移動ッ!行くよ二人ともッ!」

見張り塔から見ていた抹茶と竹内は頷き、二人の後を追った。


881 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その2:2020/02/10 12:25:03.786 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大廊下】

軍神はバルコニーから移動し大廊下にさしかかったところで二人の兵士に出くわした。

じゃがバター「いたなァ軍神<アーミーゴッド>」

リコーズ「お前の首をとりDBォ様に届けるのだ」

過去、会議所に参加し歴戦の兵士に数えられたきのこ軍 じゃがバターと、たけのこ軍 リコーズの二人が軍神に向かい舌なめずりするように口角をつりあげ嗤った。

軍神「歴戦の過去兵士も操られているとは、DBの力は存外強すぎるな…」

軍神の正のオーラを持ってもなお二人は動じてないことから、DBの洗脳の強さに二人の地力の強さがあわさっていることが伺えた。
軍神はマントをひらりとはためかせた。

リコーズ「いくぞォォォォ」

それが合図になったのか、リコーズは手にもった巨大なバズーカ砲を構えると間髪入れず発射した。

同時に軍神は音もなく姿を消し、目にも留まらぬ速さで次の瞬間、リコーズの背後に現れた。

リコーズ「なんだとッ…」

軍神「戦闘術・魂『きあいパンチ』」

リコーズの鳩尾をトンと拳で一度軽く突くと、リコーズは意識を失いはたとその場に倒れた。

882 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その3:2020/02/10 12:26:34.273 ID:xXkcYgXko
じゃがバター「なんという力だァ…」

過去に撃破王に輝いたことのあるリコーズがものの数秒で倒れたことに、じゃがバターは恐怖で逃げ出したくなったが既のところで耐えた。
この逆境を自らの力に変えるのが歴戦の会議所兵士と一般兵士の違いなのだ。

じゃがバター「次は俺だ、うおおォ!!!」

じゃがバターは手に持ったククリ刀で軍神に斬りかかった。軍神もすぐさま抜刀し応じる。
刀の擦れた金属音が通路に響き渡った。ジリジリとじゃがバターが押し、軍神は冷静に少し後退した。
後退する中でカチッと軍神の足元でなにか音を発した。シメたとばかりに、じゃがバターはすぐに半歩後ろへ跳んだ。

じゃがバター「かかったなッ!俺を突撃兵だと思ったか?」

じゃがバターは用意した起動スイッチを押すと、軍神の足元にある地雷爆弾が起動し轟音とともに通路の壁を破壊するほど激しい爆発を引き起こした。

パラパラと壁が四散し崩れ落ちる。粉塵でじゃがバターの眼前は曇ったが、今の爆発に軍神は巻き込まれたことは確実と勝利を疑わなかった。


883 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その4:2020/02/10 12:28:41.768 ID:xXkcYgXko
じゃがバター「現役時代もこの爆撃兵スタイルで撃破を量産した。戦から遠のいた軍神<アーミーゴッド>がこの奇襲に耐えられるはずがァ―」

じゃがバターのは絶句した。煙が晴れ無傷で立っている軍神を視認したからだ。

軍神は抜身の刀で呆気にとられたじゃがバターに切りかかると、彼が回避行動を取る前に一瞬で斬り伏せた。

軍神「戦から遠のいたのはどちらだろうな?」

悲鳴を上げる間もなくじゃがバターは地面に突っ伏し倒れた。
ホワイトチョコでコーティングされた刀を鞘に納めると、早足で軍神は歩みを再開した。

すると、すぐに二人の兵士が目の前の通路から走ってきた。その出で立ちから会議所兵士のようだった。

「報告いたします軍神<アーミーゴッド>様ッ!」

「DBらしき兵士を見かけました!wiki図書館の隠し階段を地下に下っていた姿が目撃されていますッ!案内いたしますッ!」

軍神「…承知した」

若干の不可思議さを覚えながらも神妙に軍神は頷いた。


884 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その5:2020/02/10 12:31:37.388 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

黒砂糖「はァはァ…しつこいぞ手前らッ!」

DBと思わしききのこ軍兵士を庇いながら追手から逃げていた黒砂糖だが、いよいよ諦めたのか中庭に付くと見えない追手を罵った。
それに呼応するように791、抹茶に加え竹内が姿を現した。

791「黒砂糖さんにはこの間の貸しがあるしね」

先日の死闘では黒砂糖との戦いで大魔法を誘発され魔力切れで先に791の体力が尽きてしまったのだ。

抹茶「黒砂糖さん、目を覚ましてください…私は同期のあなたと戦いたくありません」

黒砂糖「俺の名前はァ神父 黒飴。抹茶ァ、また裏切られに来たとはお前も哀れなやつだ」

黒砂糖は挑発的に語りかけると途端に黒砂糖とDBの間に魔法の防護壁を作り上げた。


885 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その6:2020/02/10 12:34:20.695 ID:xXkcYgXko

黒砂糖「今ですDB様ッ!お逃げくださいィィッ!」

竹内「ホッホッホッ。逃さぬぞ」

占めたとばかりに黒砂糖の後ろに居たDBが逃げ出すと、瞬時に反応したのは竹内だった。

戦いの中で老兵は老体を感じさぬ機敏な動きで瞬時に走り出しDBと思わしき兵士の後を追い、姿を消した。

抹茶「僕たちも竹内さんの後を―」

黒砂糖「おっと逃さんぞ!」

三人の周りに巨大な火壁が地面から伸び、ぐるりと彼らを囲むように覆いつくした。黒砂糖はその身を挺し、二人の足止めに成功したのだ。
黒砂糖と791、抹茶は相対すこととなった。

791「抹茶、気をつけろ。黒砂糖さんは、元々は超・優秀な工作兵(補助魔法タイプ)だけど、突撃兵の心得もある厄介な兵士だよッ!」

抹茶「黒砂糖さんの強さを僕は誰よりも知っています…心してかかりましょう」

黒砂糖「敵に不足なし。久々に血湧くなァ!!」

黒衣を身に纏った黒砂糖はただ強者に出会った喜びからか、肩を震わせ感激に打ち震えた。


886 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その7:2020/02/10 12:35:43.220 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 教練棟】

山本は軍神を探しに一人教練棟に入ると、そこには先約が居た。

筍魂「よお、元気にしてたか」

椅子に腰掛けていた筍魂の存在に気がつくと、山本は露骨に顔をしかめた。

山本「強敵にィ会いたくはなかったが…致し方ない。やるかッ」

両の拳を上げ、山本は静かにファイティングポーズを取った。

筍魂「強敵と認められるとは嬉しいねぇ鬼教官。共に同じ弟子を持った師として負けられんなあ」

ゆらりと気だるそうに筍魂は立ち上がると瞬時に腰を低くし跳んだ。

山本「させるかッ!」

対して山本は自らの拳で目の前の机を砕き、障害を作った。
ここに二人の激闘が始まった。


887 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その8:2020/02/10 12:38:11.188 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

「こちらでございます軍神<アーミーゴッド>様ッ!」

軍神「…ご苦労」

二人の兵士に案内を受け軍神が大戦年表編纂室に到着すると、一人の兵士が興味深げに周囲を見渡していた。
その傍には編纂室で待機していた斑虎ときのきのが倒れていた。

??「大戦年表編纂室とはここかァ。随分といい部屋を誂えたものだなァ会議所は」

軍神「汚い手で書物に触るな、DB<ダイヴォー>」

DBは手に持った歴史書を閉じると無造作に放り捨てた。そして、指をパチンと鳴らすと軍神を案内した二人の兵士たる幻影は跡形もなく消え去った。


888 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その9:2020/02/10 12:39:23.700 ID:xXkcYgXko

DB「先程の蛮行は見事だったなァ軍神<アーミーゴッド>。お陰で俺様の兵隊が大分減らされてしまった」

見事だ、と兵士の変装を解いたDBは、持ち前の下卑た笑いで軍神と相対した。

軍神「貴様が此処にいるということは分かっていた」

DB「のこのこ一人で来てくれるとはありがたい。黒飴くんも“予定通り”戦い始めたはずだ。事態はここまで俺様の思ったどおりに進んでいる」

DBは途端に笑みを消し般若のような形相になった。

DB「後は貴様を消すだけだ、軍神<アーミーゴッド>ォ!!」

軍神「それはこちらの台詞だ。これで最後の戦いにしよう」


両雄が、激突した。



889 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その9:2020/02/10 12:41:19.158 ID:xXkcYgXko
黒砂糖 VS 791、抹茶
山本 VS 筍魂
DB VS 軍神<アーミーゴッド>

はてさて結果は?

890 名前:Chapter4.大戦に愛を :2020/02/10 12:42:43.112 ID:xXkcYgXko
少し休憩

891 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その1:2020/02/10 18:36:26.085 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

黒砂糖「作戦は成功した。あとはこちらで時間をかせぐだけだァ」

791「『チョコベビークラスター』」

黒砂糖の上空からチョコ型のクラスター爆弾が襲いかかるも、黒砂糖は巧みな身のこなしで攻撃を避け続ける。

抹茶「くらえっ『出来たてツールV1.40』ッ!!」

未完成品の集計ツールを投げつけるも黒砂糖に叩かれてツールは粉々に砕け散った。

黒砂糖「まだまだァ!こちらから行くぞォ『バーナーショット』ッ!」

791「『スーパーカップバリア』ッ!」

魔法で出した銃火器の火炎放射を791と魔法は防壁で守るも、戦いは黒砂糖の鬼神の如き活躍に劣勢になりつつあった。

肩で息をする二人に対し、黒砂糖はまだまだ余裕ありといった体で肩を回して次の攻撃に備えている。


892 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その2:2020/02/10 18:38:47.935 ID:xXkcYgXko

抹茶「黒砂糖さん…なんて力だ。同期として誇らしい限りだよ」

791「彼の狙いは私のMPを枯らすことだ。抹茶、私の盾になって死んでね」

抹茶「えぇ…」

黒砂糖「喋っている暇があるかなァ!?」

二人の背後の炎壁から火炎玉が飛び出し、既のところで二人は避けた。
続いて間髪入れずに黒砂糖は手に用意した大太刀で二人に斬りかかる。抹茶が791の前に立ち、湯呑みで太刀を防ぎきった。

抹茶「黒砂糖さん、目を覚ましてください。昔はあれほど二人でDBを討伐しようと息巻いていたじゃないですかッ!」

鍔迫り合いの中、抹茶は悲痛な面持ちで黒砂糖に訴えかけた。二人は会議所の同期で軍の垣根を超えた親友だった。
抹茶の悲痛な叫びに黒砂糖の顔は一瞬曇ったが、その後すぐにDB教信者特有の不穏な笑みを戻した。


893 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その3:2020/02/10 18:40:18.243 ID:xXkcYgXko
黒砂糖「『トールディレイ』ッ!」

抹茶の頭上から激しい雷が打ち付ける。避けようとしたがまともに雷を喰らい、抹茶はその場で倒れた。

791「抹茶ッ!」

抹茶「大丈夫ですよ。こんなのかすり傷です…」

腰に携えた携帯ポン酢を飲み干し抹茶は体力を回復した。
黒砂糖は悠然と抹茶を見下ろしている。

791「親友の呼びかけにも応じないどころか騙し討ちなんて、私はちょっと許せないな」

抹茶「待ってください791さん。黒砂糖さんは一瞬ですが迷いを見せました。彼も完全には洗脳にかかっていない、そこが勝機です」

黒砂糖「いくらでも時間はかけていい…あのお方が軍神<アーミーゴッド>を直々に成敗してくれるゥ」


894 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その4:2020/02/10 18:45:51.742 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

同時刻に編纂室でも激戦が繰り広げられていた。

軍神「『アポロソーラ・レイ』ッ!」

軍神の手から放たれた熱光線がDBに向かうもDBはひらりと避けた。熱光線はそのまま奥の書棚にあたり、そのまま熱で溶けてしまった。

軍神「ッ!」

軍神は顔をしかめた。オニロの歴史家としての記憶を軍神は勿論覚えている。
編纂室で過ごした過去を、目の前の宝物を自らの手で無くしてしまった後悔をしてしまった。

DB「どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!こちらからいくぞォォォ!」

DBは高く跳び上がり、自らの毒素で創り上げた手裏剣を投げた。
軍神は抜刀し弾くも、弾かれた手裏剣はその場で四散し毒を撒き散らした。

軍神「ッ!」

顔を伏せながら後退する軍神に、けたたましい笑いを上げながら浮遊したままのDBが追い打ちのように雛あられ形のホーミングミサイルを次々に打ち込んだ。
軍神は疾走る。追尾を振り切られたホーミングミサイルは次々にその場で爆発していく。最初に円卓のテーブルが、続いて書棚が木っ端微塵になっていった。

軍神「くッ!」

皆で額を寄せ合って会議をした空間が、思い出の場所が壊れていく。


895 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その5:2020/02/10 18:51:25.333 ID:xXkcYgXko

軍神「戦闘術・魂『くさむすび』ッ」

DBの周りに巨大な樹木が現れ、伸びた枝葉が彼を捕らえようとするがDBの毒素で彼に辿り着く前に次々と枯れてしまった。

DB「ゲハハハハッ!!どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!随分と精細をかいているな!ええッ!?」

DBは手に持ったでんでん太鼓をけたたましく鳴らし、音波の真空波を繰り出した。
しかしでんでん太鼓の音で逆に幾分か冷静になった軍神は、その攻撃を逆手に取るように真空波に“乗り”、跳躍を利用し空であぐらをかいたDBの眼前まで跳んだ。

DB「なにッ!」

手に持った刀で払い、軍神はDBを地面に叩き落とした。

DB「やるなァ。それでこそ狩り甲斐があるというとものだァ」

DBは地面に打ち付けられ口からチョコを吐き出したが、不敵な笑みは崩さない。
今の軍神は、戦闘術・魂を会得し敵の攻撃をも利用しようとする細かな攻撃型のアイムと、791の教えで魔法使いとしての力量を最高にまで引き伸ばした大味の攻撃型のオニロのどちらの特性も引き継いでいる。
器用な援護兵タイプの完全上位互換である明治兵タイプに昇華し、いまや攻守に隙がないのだ。

いくらDBでも構わない存在にまで会議所が彼の化身を育て上げた。
だがその事実を知ってもなお、DBは自らの勝利を揺るがなく確信していた。

軍神に致命的な弱点があることを知っていたからである。


896 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その6:2020/02/10 18:53:45.597 ID:xXkcYgXko
DBはすくっと立ち上がり、地面に降りた軍神には目もくれず、眼前の書物棚に狙いを定めた。

DB「これから新たな歴史を築き上げる俺様の前に、古い過去の遺産など一切不要ッ!」

幻影の術によりDBは瞬く間に増殖し、一様に書棚に狙いを定め攻撃の準備に移った。

軍神「やめろッ!『ビッグサンダー』」

横方向に放たれた雷撃が幻影のDBたちに直撃し吹っ飛ぶも、みな一様に書棚にぶつかり、ある棚は木っ端微塵に粉砕し、
ある棚は轟音を立てて他の棚を巻き込みながら横倒しになって倒壊していった。

軍神「なんてことだッ!」

明らかに軍神には焦りが見えた。軍神の中にあるオニロの歴史家としての感情が、歴史書と編纂室を守らねばならないという使命感を抱かせ、それが却って彼の行動を大きく制限させていた。

DB「守ってみろォ!守ってみろよォ!」

そうした間にもDBはまた幻影で数を増やし、軍神には目もくれず歴史を破壊し始めた。
爆裂音、書棚の倒壊音、書物の破れる音。
その全てが編纂室の悲鳴に聞こえ、軍神は全てのDBを瞬時に片付けるためその場で跳び状況を確認しようとした。

その行動が大きな悪手だった。


897 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その7:2020/02/10 18:56:26.511 ID:xXkcYgXko
DB「―君は本当に馬鹿だな」

軍神の背後から本物のDBの囁き声が聴こえてきたとき、DBの飛び膝蹴りで彼の身体は既に空中でねじ曲っていた。

軍神「ぐはッ!!」

DB「馬鹿めッ!馬鹿めッ!馬鹿めェッ!!貴様が受け継いだのは何も戦闘力だけじゃないッ!アイムとオニロの不完全な性格、心の弱さも受け継いでいるんだよォォ!!」

次々と空中で幻影のDBが現れて軍神を殴打しタコ殴りにしていく。猛烈な速攻にさしもの軍神も防ぎようがなく、次第にその身は終わりの見えない天井に放られていった。

DB「悪腫『裏切りの妖怪けむり』ッ!」

粘着性のある糸からできた蜘蛛の巣が霧の粒を宿して空中に姿を現し、その中心に軍神は捕らわれた。

DB「ゲハハハッ!再三、俺様との戦いに敗れるとは軍神<アーミーゴッド>の名折れだなァ!?」

軍神「誰が負けたと言った?戦いは終戦まで分からない、大戦の鉄則だろう。長い幽閉で元から弱い知能がさらに低下してしまったのか?」

両の手足ともに蜘蛛の糸にがんじがらめにされ、なお軍神は気落ちすることなく挑発的にDBを上空から憐れんだ。

DBはその言葉に一瞬顔を歪ませたが、すぐに自らの絶対的優位を再確認しニタニタと笑い出した。

DB「この間の地下室では貴様を破壊することに急ぎすぎたから失敗した。だが今回はどうだ。
俺様が用意した最高の舞台だァ。これから行われる貴様の処刑は、演出にも気を使ったんだァ」


898 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その8:2020/02/10 18:58:35.845 ID:xXkcYgXko

得意げに喋り続けるDBを虎視眈々と狙っている者がまだいた。

DB「この場で貴様を処刑しそれを会議所内外にアピールすることで貴様を端とした正のオーラは完全に消滅するッ。
これからは俺様の時代が始まるというわけだァ――なにをするッ!」

軍神「おい、やめろッ!」

未だ部屋に残っていた天高くうねる大戦年表紙が突如揺らめく動きを止め、瞬時にDBに向かったと思うと彼の胴体に蛇のように巻き付きはじめた。
自らの意思でDBを窒息させ暴漢を排除しようとしたのだ。
とてつもない速さで大戦年表はDBの身体に何重にも何重にも巻き付いていく。しかし、今の強大なDBには何ら脅威のない攻撃だった。

DB「グアアアアアアッ!この、小癪なァァァァァァ」

DBは自らの身に貼り付いていた大戦年表紙を真っ二つに引き裂いた。
悲鳴にも似た激しい紙面の破れる音とともに、大戦年表紙は息を引き取るようにその場にハラリと落ちていった。
続くように自動筆記ペン『オリバー』も仇を取らんとする勢いで自らの切っ先をDBに向け突進していったが―

DB「ふんッ小賢しい魔法の器具がッ!!」

いとも容易くDBに振り払われ、オリバーは壁に打ち付けられ静止した。

DB「ゲハハハハハハッ!もう終わりだな軍神<アーミーゴッド>!」

編纂室は大戦場でも見ない程、荒廃の様相を呈していた。
粉砕された家具、倒壊する書棚、燃え盛る炎、そして編纂室の象徴だった大戦年表紙は破られ他の書物に折り重なるようにその身を地に投げていた。


大戦世界の歴史が、終わろうとしていた。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

899 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 18:59:39.101 ID:xXkcYgXko
DB、強い。

900 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その1:2020/02/10 19:01:44.332 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

791「『トッポレールガン』」

抹茶「『おっとっとカイザー』ッ!!」

791が後方から雷の魔法を放ち、間髪入れずに抹茶が接近攻撃をしかけるも慌てることなく黒砂糖はまず抹茶をいなしてから791の魔法を自身の魔法で無力化した。

791「私の魔法まできかないなんて、黒砂糖さんすごいね。本来以上の力を発揮しているねッ」

黒砂糖「791さんと互角で戦えているなんて、後世に誇れるなッ!」

791「フフフ。それは私に勝ってからにしなよ?抹茶、下がってッ!」

791の足元に強大な魔法陣が展開される。

791「『シトラス』ッ!!」

黒砂糖の頭上に幾多ものレモンが降りかかり、大爆発を巻き起こした。
砂埃による嵐が巻き起こり791と抹茶に襲いかかった。

抹茶「791さんの大魔法をくらって生き残る兵士はいないはず…」

791「ハァ…さすがに一回のMPの消費量が激しすぎるなぁ。加減したからまだ生きているとは思うけど、ちょっと目眩がするよ」

砂嵐が晴れると黒砂糖が立っていた場所には巨大なクレーターが空いていた。だが黒砂糖の姿はない。



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