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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

101 名前:きのこ軍:2014/04/09 01:38:27.25 ID:SFISJWmI
アイム「撃破数を会議所内で大々的に公開するんだよ。大戦の撃破数で」

大戦の参加者は、自らの手で倒した敵兵を撃破数としてカウントして、大戦終了時にそれぞれの軍本部に報告する。
撃破数が大戦における兵士の活躍ぶりや強さを示す直接のバロメータであり、大戦に精を出す兵士ほど撃破数に強いこだわりを見せる。
仲間内に自身の強さとしての撃破数を誇示したり、大戦の安定した撃破数の多さで社会的地位を築いている兵士もいる程である。
撃破数の申告は強制ではないが、今や大戦参加者にとっては欠かせない要素となっていた。

アイム「俺たち二人は、今次大戦でデビューする、あのインチキ占い師の言葉を借りるところの
“期待の新人”だ。会議所内外からの注目の的であるところは疑いようもない」

アイム「二人の成果をお互いに提示しあうことで、きのこ軍とたけのこ軍の希望の星として、
大戦の士気向上に貢献するのさ。それができる」

アイムは一気にまくし立てる。嘘をつくときは間を持たせずに、歯切れよく喋ることが、
自分にとって疑いを持たせにくいコツであることをアイムは理解していた。
一方で、そんなアイムの心情など露知らず、オニロはアイムの言葉に胸を打たれ、体を震わせている。

オニロ「すごいよアイム!自分のことばかりじゃなくて、軍全体のことも考えているなんて、
ボクは感動したよッ!!」

アイム「おうそうか。それで撃破数の話はどうだ?」

オニロ「もちろんその話を受けるよッ!何も撃破でお互いを競うんじゃない。
撃破数で軍全体を元気にするんだよね!ありがとうアイム!」

オニロは感激しながらアイムの両手を握り、たけのこ軍の隊列に戻るために走ってアイムの下を去っていった。


102 名前:きのこ軍:2014/04/09 01:42:31.30 ID:SFISJWmI
そのオニロを、似合わない爽やかな笑顔で見送っていたアイムだが、オニロの姿が見えなくなった途端、
一つ悪態をつき元の無愛想な表情に戻した。

アイム「誰が軍のためなんかにやるかよ…」

先ほどの爽やかな笑顔は一転して、不敵な笑みをこぼしながら、アイムはギラギラとした目つきで
たけのこ軍の隊列を睨むように見つめる。

アイム「きのこ軍、たけのこ軍。この際、今はどちらでもいい。
オニロ、オレはお前なんかのあまちゃんには負けない。負けてたまるかよ…」

アイムは先ほどオニロに握られた拳を固く握りしめる。拳は何重にもテーピングが巻かれ、
いかに激しい鍛錬をこなしてきたか物語っていた。

アイム「見ていろよ。大戦後に、誰が一番強いのか思い知らせてやるッ…
魔法でヌクヌク練習していたお前を、オレが思い知らせてやるよ…」

静かで物騒な闘志がアイムを支配しつつあった。


103 名前:きのこ軍:2014/04/09 01:43:07.20 ID:SFISJWmI
大戦パートを書くと言っていたな。あれは嘘だ。

104 名前:きのこ軍 もう寝るソン:2014/04/09 03:09:01.90 ID:SFISJWmI
>>97
訂正

791「目眩まし魔法からマルチブルランチャーへ繋ぐコンボは非常にいい選択だね。
ただ、念動魔法で包囲網を突破するのはちょっと強引かな。
今回は成功したけど、場合によっては不発となる可能性がある」

オニロ「はい、念動魔法で先手を取れるとは限らないということですね」

791は冷静に、今のオニロの行動を分析しコメントしている。その791のフィードバックを一言も聞き漏らさずに
全て吸収しようと、オニロは791の一挙一動に頷いて、納得がいかなければ質問や意見を791に投げかけたりしている。

105 名前:たけのこ軍 筍魂:2014/04/09 20:56:18.44 ID:huPoLMl2
Vやねん!アイム
撃破王待ったなし!

106 名前:社長:2014/04/10 00:45:50.25 ID:dCo6/rKU
社長はタネフフ

107 名前:名無しのきのたけ兵士:2014/04/10 00:54:29.80 ID:TiyYgS8g
う〜ん、どうかなぁ?

108 名前:きのこ軍:2014/04/13 01:09:17.50 ID:gGJMevgs
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場】

会議所から歩いて数十分、生い茂ったきのこたけのこの森を抜けると、そこは一面の荒野だった。
草さえ生えぬ荒れ果てた褐色の土地は、長きにわたる勝負が行われたことを物語っていた。
広大な戦場の入り口付近では、白色のジャンパーを着た兵士が、入場待ちをしている兵士の周りを
慌ただしく走り回っている。

アイム「あれはなんだ?」

¢「大戦の運営を補佐する係さ。通常は会議所から係を立てて、大戦の進行をスムーズにしているのさ」

確かに、見覚えのある顔が何人か走り回っている。

アイム「ふーん。それで、いつになったら入場できるんだ?」

アイムたちを始めとしたきのこ軍兵士たちは、長蛇の列を形成して大戦場への入場を待っていた。


109 名前:きのこ軍:2014/04/13 01:13:20.81 ID:gGJMevgs
¢「係員が階級章を配っているんだ。今夜は階級制ルールだからね」

アイム「そういえば階級てのは、自分の意志では決定できないのか?」

参謀「せやな。まあどの階級になるかは運試しちゅうところやね」

数人の係員でこの長蛇の列を捌ききれるのかアイムは不安に感じていたが、
以外にも列の消化は早かった。
さすがに何百回も大戦を経験していると、嫌でも体が覚えてしまうのだろうか。
最後尾に並んでいたアイムたちも数分後には大戦場の入口まで動くことができた。

係員「はい、どうぞ。お、アイムか。期待しているぜ」

そういって力強くアイムに階級章を渡す係員は、紛れもないきのこ軍兵士だった。

参謀「あーワイは軍曹¶か。まあまあやな」

アイム「一等兵〓か」

参謀「まあ新人としては十分の階級やね」

もらった階級章を胸に付け、アイムは二度目の大戦場へ足を踏み入れた。


110 名前:きのこ軍:2014/04/13 01:20:01.52 ID:gGJMevgs
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 きのこ軍陣営】

大戦場は東西にそれぞれの軍陣営が本部を設置している。
大戦では、敵陣営を攻め落とすか、敵軍の戦力を全滅させるかで勝敗が決する。
互いに死力を尽くす戦いではあるが、兵士は生き死にを賭けた戦闘を行うわけではない。

山本『大戦場は不思議な魔法結界が貼られていて、たとえ致死量のダメージを負っても死ぬことはない』
山本『一定以上の傷を負った兵士は戦闘不能とみなされ、自動的に魔法陣で軍陣営まで転送される。
転送後は傷の深さによって戦闘を継続するか、戦闘不能とするかは兵士や軍の裁量に委ねられるんだ』

酷くしごかれた鬼教官の顔を思い出し、アイムは苦虫をすり潰したような顔になった。

アイムがいるきのこ軍陣営では、兵士がおのおの自分で使う武器の手入れや
地図を広げ作戦の確認を行っていたりと戦闘前の準備に勤しんでいる。

手持ち無沙汰になり、辺りを暫く見回していたアイムだが、ふと疑問に思ったことがあり、近くにいた
先輩のsomeoneに声をかける。

アイム「そういえば、大戦の勝敗って誰が判断してんだ?」

someone「集計係、大戦の勝敗を判断していますよ」

someoneはそう言って、遠くにある小高い丘を指さした。
小高い丘の頂上部には、集計班が双眼鏡で戦場を見渡しているとともに、
その横には「本日の集計係」と書かれた蛍光色のノボリが風にたなびいている。


111 名前:DB様のお通りだ!:DB様のお通りだ!
DB様のお通りだ!

112 名前:DB様のお通りだ!:DB様のお通りだ!
DB様のお通りだ!

113 名前:DB様のお通りだ!:DB様のお通りだ!
DB様のお通りだ!

114 名前:きのこ軍 レス修正だ:2014/04/13 03:01:03.97 ID:gGJMevgs
アイム「…あれが集計係だな。実にわかりやすい」

someone「集計さんを挟んでノボリとは対極の位置に、機材が置いてあるの見えるかい?
あれが集計を行う機械みたいだよ」

目をこらして見ると、ビデオカメラのような小型機材を、集計班の背の高さほどの三脚が支えている。

someone「あれが集計ツールと呼ばれるもので、今はあの機械が戦況を瞬時に把握しているようです」

機材のレンズは冷たく戦場を見下ろしているように見えた。

アイム「へ〜、それは優れ物だな。じゃあ、その横にいる集計さんいらないんじゃねえの?」

someone「…確かにそうですね」

¢「集計ツールは誰かがスタートボタンを押さないと起動しないんよ」

アイムたちの横で自分の武器を手入れしていた¢が話に入りこむ。

¢「一昔前には、集計係は双眼鏡片手に自力で戦況を把握していたからな。
それに比べれば大きな進歩なんよ」

アイム「機械が自動で戦況を判断するなんて、相当高度な技術だな。
そのうち、機械自身が勝手に集計を始めたりしてな」

someone「自我を持った機械かあ。あれ、そういえば、自動で動き回る機械というのが昔存在したような…?」

アイム「そうなのか?」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

115 名前:きのこ軍 レス修正だ:2014/04/13 03:05:03.40 ID:gGJMevgs
『ぶお〜〜〜』


その時、まるで3人の会話を遮るように、気の抜けたような大法螺の音色が、
乾いた戦場の空気を震わせた。丘を見ると、どこから取り出したのか集計班がドヤ顔で大法螺を吹いている。

『お待たせいたしました。これより第175次きのこたけのこ大戦を開始いたします』

集計班の声が戦場中に響き渡る。マイク等の音声増幅器を用いていないことから、
これも魔法の力なのだろう。

『では、合図とともに始めます』

会議の時と同じく抑揚のない集計班の声が戦場中に響く。
どうも緊張感にイマイチ欠ける印象を持つが、今自分が戦場にいることを思い返し、
アイムは徐々に緊張感と高揚感が高まっていくのを感じていた。

雑話で賑わっていた戦場が、波をうったように静まり返る。
剣の柄を持つ手に自然と力が入る。


『ファイエルッ!!!』

地鳴りのようなきのこ軍兵士の咆哮の大合唱が起こり、大戦の火蓋が切って落とされた。


116 名前:きのこ軍 レス修正だ ふざけんななんで本スレに…:2014/04/13 03:16:42.58 ID:gGJMevgs
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 たけのこ軍陣営】


『ファイエルッ!!!』


山本「それでは作戦を開始するッ!!」

円陣を組むでも大声を上げるわけでもなく、たけのこ軍兵士は淡々と一斉に行動を開始した。
オニロも前線部隊としての任務を全うすべく、支給用の銃火器を手にとった。

791「オニロ君!」

オニロの背後から、791の言葉が降りかかる。

791「いざとなったらその武器は捨てて構わないよ。戦場ではスピードこそ命だ。君の持つ魔法のスピードと、
身のこなしのスピードを優先しなさい」

オニロは師の言葉に緊張気味に何度も頷き、静かに移動を開始した。


791「霧が出ているね…無事だといいけど」


117 名前:きのこ軍 レス修正だ:2014/04/13 03:18:55.61 ID:gGJMevgs
じゃあ僕心身疲労しているから

118 名前:きのこ軍:2014/04/15 00:57:58.43 ID:TCfog6pA
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 中央地点付近】

きのこ軍 ゴダン大佐▽「やけに静かだな…」

アイムたちの部隊は前線の主力部隊として、自陣と敵陣の中間地点付近まで侵攻していた。

アイム一等兵〓「…」

今のところ敵軍との遭遇はない。それどころか、他部隊が敵軍と交戦している様子すらない。
不気味なほどに戦場は静まりかえっている。

アイム一等兵〓「…」

開始直後から立ち込めている霧で、自分の部隊以外の状況が全く見えない中で、
アイムは静かに待ち構えている。戦果を流行る気持ちをおさえ塹壕に身を潜めながら、
ただ戦闘が来る時をじっと待っていた。

きのこ軍兵士A「うおおおおおもう待てねえぞ!!」

沈黙に耐え切れなくなったのか、一人のきのこ軍兵士が塹壕から立ち上がり雄叫びを上げる。
それに呼応したように、何人かの腕っぷしが強いきのこ軍兵士も立ち上がる。

ゴダン大佐▽「待て!まだ本部から突撃命令は下っていないぞッ!」

きのこ軍兵士A「もう待てねえ!俺はいくぜ!!!」

塹壕から飛び出し、数人のきのこ軍兵士は敵陣営へ向かって突撃を開始した。
そして、その命取りな行動が皮肉にも戦闘開始の号砲となった。


119 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:03:07.37 ID:TCfog6pA

きのこ軍兵士A「ぐはあッ!!」

乾いたスナイパーライフルの銃声とともに、飛び出したきのこ軍兵士はその場で倒れる。
致死量のダメージだったのか、その場で魔法陣が展開し、その兵士はすぐに転送されてしまった。

きのこ軍兵士B「なんてこった!この霧でも正確に撃ちぬいてくるてことは、敵は近くにいるぞ!!」

ゴダン大佐▽「みんな落ち着くんだッ!!ここは一回態勢を立てなおして…」

ゴダン大佐▽の命令は、血気盛んなきのこ軍兵士に届くことはなかった。
目の前の武勲を求めて、多くのきのこ軍兵士が塹壕を飛び出し闇雲に敵陣に向かって駆け出した。

アイム一等兵〓「無駄だよ大佐。脳筋の奴等には、あんたの命令なんてわかりっこないって」

アイムは目の前の指揮官にいくらか同情したが、すぐに目の前の戦場に視線を移した。
目の前に置かれている餌に食いついて罠にかかってはいけないのだ。部隊が崩壊寸前の状況にあっても、
アイムは泰然自若の構えで眼前の戦場に目を凝らす。

勇猛果敢で無謀な兵士は、立ち込める霧でその後ろ姿をかろうじて捉えられる程度だ。
この霧の深さでは5m先の標的は狙い撃つことはできないだろう。自軍兵が狙撃された地点から
半径5m以内に敵部隊は潜んでいる。アイムは確信した。

間髪をいれずに、アイムは敵部隊についても考察する。
敵部隊の規模は、おそらく主力を含んだ本隊か斥候部隊のいずれか。
もし、遭遇した部隊が斥候部隊だった場合、敵軍に自軍部隊の情報が筒抜けとなり、
戦況はきのこ軍にとってかなり不利となる。戦線を維持するためには、即断即決で
敵軍斥候部隊を排除するしかない。ただし、斥候部隊との交戦に時間をかければかけるほど
相手軍に熟慮する時間を与えてしまうことになる。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

120 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:04:32.84 ID:TCfog6pA
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場】

『ぶお〜〜〜 現在の兵力は85:90でたけのこ軍が有利です』


定期的に気の抜けた大法螺の音とともに、戦場中に戦況が伝えられていた。
オニロ有するたけのこ軍少数精鋭部隊は、雪中行軍ならぬ霧中行軍を敢行していた。

オニロ曹長†「たけのこ軍の兵力が減っている、ということは
どこかの部隊がきのこ軍と戦闘状態にあるということですね?」

スティーブ大尉‡「そういうことだな。情報が伝わってきてはいないが、
どこかの部隊に敵軍が“引っかかって”くれたんだろう」

オニロ曹長†「先程出くわした敵軍部隊は、敵の主力部隊なんでしょうか?」

スティーブ大尉‡「いや、あいつらはおそらく偵察兵、斥候部隊だろうな。しかし、見事な殲滅戦だった。
お前のポイフルバーストがなけりゃあ偵察兵を取り逃して大変なことになっていたな」

オニロ曹長†「いえ、大尉の的確な迎撃があってこそです」

恥ずかしそうに、オニロは鼻をかいた。

斑虎二等兵=「しかし、この霧にはどこか親しみを感じるな…鴎、霧」

ヒノキ曹長†「先を急ぎましょう。グズグズしていると作戦が失敗してしまいます」


121 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:05:50.08 ID:TCfog6pA
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 中央地点付近】

アイム軍曹¶「オラァ!!これで8撃破目ェ!」

丸腰のたけのこ軍兵士を斬り伏せる。
アイムの獅子奮迅の活躍で、数名の暴走によって危機的状況に陥った
きのこ軍主力部隊も、完全に態勢を立てなおしていた。

¢大尉‡「どうやら斥候部隊ではなかったようだ。奴さんには瞬発力がてんでない」

二丁拳銃で的確に敵兵の頭を撃ち抜いた¢は、仰向けで転送される敵兵を眺めながら首を傾げた。

ゴダン大佐▽「アイム君昇進おめでとう。素晴らしい活躍だったよ」

アイム「それほどでもあるな」

アイムの中では控えめな表現で、鼻をかいた。

¢大尉‡「さて、どうする。このまま前進するか」

アイム軍曹¶「前進あるのみだな。電撃戦術で敵軍を撹乱させてやろうぜ」

ゴダン大佐▽「そうだね。こちらの斥候部隊から何の連絡もないのは気になるけど
…部隊の損害は少ない。このまま敵本陣を目指そう!」

指揮官の発奮興起な言葉に、血気盛んなきのこ軍兵はにわかに活気だった。


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は82:70できのこ軍が有利です』
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

122 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:06:48.11 ID:TCfog6pA
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 たけのこ軍陣営付近】

アイム擁するきのこ軍主力部隊の快進撃は止まらなかった。

向かってくるたけのこ軍兵に、アイムは躊躇なく剣を振りぬく。
アイムの剣筋には迷いがない。
戦闘では少しでも迷いを持った者が敗者となる。
今は敵同士となっている鬼教官の教えを頭のなかで反芻しながら、アイムは進撃を続ける。


123 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:08:26.71 ID:TCfog6pA
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場】

ヒノキ曹長†「報告によると、敵軍主力部隊は“鉄のスカート(ペティコート)”にハマったようです」

スティーブ大尉‡「予定通りだな」

歩みを一時止め、指揮官スティーブは双眼鏡で目的地を確認しようとする。

オニロ曹長†「目的地は近いのでしょうか?」

スティーブ大尉‡「おそらくな。てか、双眼鏡だと真っ白だなやっぱり」

双眼鏡を放り投げ、スティーブは朧げになっている隊員を見回す。

スティーブ大尉‡「現在二一○○時。我々“たけのこ軍主力部隊”は本部より
北東地点3kmに到達。作戦実行の条件が満たされるまで待機する」

全員「了解」


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は74:55できのこ軍が有利です』



124 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:11:12.24 ID:TCfog6pA
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場】

始めに異変に気がついたのはアイムだった。

アイム曹長†「…何かおかしいな」

アイムは足元に落ちている短剣を眺めながら、先程から感じていた違和感を口にした。
使っていた剣は先刻の戦闘の際に根本からポッキリと折れてしまった。
咄嗟に、地面に刺さっていた弓矢の切っ先を敵へ突き立て倒した時は、変な汗をかいた。

一息ついて、戦況を確認するべく辺りを見回す。立ち込めている霧で相変わらず
戦闘の全体像を確認することはできないが、先刻前と戦況は大きく変わっていないようだ。
恐ろしいほどに戦況は変わっていない。

アイム曹長†「もう十分戦闘したぞ。そろそろ敵陣営に着いてもいいころなんじゃないか…?」

陣営を防衛する敵兵が異様に多いのである。
その都度、¢やアイムを始めとする兵士の力で敵軍を蹴散らしてはいるが、
集計係から伝えられている戦況報告と、敵陣営を防衛している相手兵士の数とが合致しない。


125 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:13:06.09 ID:TCfog6pA
『ぶお〜〜〜 現在の兵力は60:40できのこ軍が有利です』


集計係から戦況が報告される。依然として、きのこ軍が有利であることに変わりはないが、
度重なる戦闘で戦闘狂のきのこ軍兵たちにも疲労の色が見え始めている。
既に敵軍の大隊程度は撃破しているはずなのに、いつまで経っても敵軍本部陣営に
到達することができないのだ。
アイムはいい加減辟易としていた。
王様と謁見するために、ひたすら城の扉という扉を開けて奥に進んでいるような気分だ。
無限回廊のように王座に辿りつけない。

気になる点がもう一点アイムにはあった。
未だ、敵軍の主力部隊と思わしき戦力と遭遇していないのである。
戦況報告から推測するに、主力部隊を含む残りのたけのこ軍兵の大多数は
最後の砦となっている本部陣営に結集していることになる。しかし、主力の攻撃部隊を
砦の堀として使用していることは、勝利への道を放棄していることと同義である。
たけのこ軍がそのような愚策をわざわざ選ぶだろうか。


アイム曹長†「くそッまた撃ち漏らした…あいつら逃げ足の早さだけは一級品だな」

悪態をつき、敵の攻撃に備えて塹壕へ潜る。戦いへの緊張感からくる疲れからか、
アイムは敵兵を撃破しきれずに逃してしまうことが多くなっていた。
拾った斧を地面に突き立てる。元々の持ち主の手汗で柄の部分がほんのり湿っているのが気持ち悪い。


126 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:14:51.60 ID:TCfog6pA
¢准将◇「アイム、お前いま何撃破だ?」

塹壕内で新しい弾倉を装填している¢が声をかける。
きのこ軍エースもさすがに連戦に次ぐ連戦からか、肩で息をして呼吸を整えている。

アイム曹長†「今の敵は逃げちまったから、22撃破のままだな。あんたは?」
¢准将◇「18撃破だな。ついさっきも大量撃破のチャンスだったんけど、逃しちまった。
あいつら不利になるとすぐに逃げ出すな」

アイム曹長†「あんたも撃ち漏らしているのか。しかし、どういうことなんだろうな。
さっきから戦えど戦えど、一向に先に進んでいる気がしない」

¢准将◇「奇遇だな。俺もそう思っていたところよ。まるで終わらない迷路に
迷いこんでしまったような気分だ」

アイム曹長†「ループねえ…ん?」

ループ。
¢の表現は現在のアイムたちの状況を的確に表していた。
そして、アイムは気がついた。自分たちがまんまと“罠”にかかってしまったことに。
敵軍の狙いに。


アイム曹長†「大佐!ゴダン大佐はどこだッ!!」

戦闘音をかき消すほどの大声で、アイムは指揮官を探した。

ゴダン大佐▽「どうしたアイム君ッ!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

127 名前:きのこ軍:2014/04/15 01:15:00.37 ID:TCfog6pA
とりあえずここまで

128 名前:社長:2014/04/15 20:39:38.72 ID:RNvcwGUs
ループをかちぬくぞ!

129 名前:きのこ軍:2014/04/19 21:39:29.36 ID:q7m1U88Mo
ゴダン大佐▽「どうしたアイム君ッ!」

アイム曹長†「今すぐ本陣に戻るんだッ!じゃないと、大変なことになるッ!」


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は52:35できのこ軍が有利です』

緊迫とした大戦場に、気の抜けた大法螺の音色が響いた。
そして、それはたけのこ軍の反撃の狼煙を告げる合図でもあった。


130 名前:きのこ軍:2014/04/19 21:41:46.93 ID:q7m1U88Mo
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦開始直前】

オニロ曹長†「え?敵軍を罠にハメる?」

たけのこ軍総司令官の山本は神妙に頷いた。

山本元帥☆「みんな聞いてくれ。俺は策を考えた。それを実行すればたけのこ軍は勝てる!」
山本元帥☆「では作戦名を発表する。本作戦名を“霧の国(ニヴルヘイム)”とするッ!」

誇らしげに山本は高らかに宣言するも、誰も作戦について理解できずに困惑げの顔を総司令官へ返す。

山本元帥☆「まあ落ち着け。本作戦では、自然の天候を味方につける」

山本元帥☆「霧を味方につけるんだ」


“霧の国(ニヴルヘイム)”作戦の内容は以下の通りだった。

・主力部隊は、大戦開始と同時に迂回ルートを使い極力敵軍との戦闘を回避しながら、敵陣の北東部に部隊を展開する。
・残った兵は陽動部隊として敵軍の主力部隊を引きつけつつ、たけのこ軍本陣に誘い込むように上手に撤退する。
・本陣で防衛する部隊は“鉄のスカート(ペティコート)”を展開し、敵軍の主力部隊の猛攻を食い止める。
・自軍兵力が35を切ったら、北東部に待機している主力部隊がきのこ軍本陣を強襲。きのこ軍本陣と主力部隊を分断した上で、短時間で本陣を制圧する。


131 名前:きのこ軍:2014/04/19 21:42:35.68 ID:q7m1U88Mo
山本元帥☆「主力部隊は霧に紛れながら敵軍に見つかることなく移動しなくてはいけない」

791二等兵=「私の見立てによると、この大戦中は深い霧が立ち込めるから、作戦に支障をきたすことはないよ」

オニロ曹長†「あの、“鉄のスカート(ペティコート)”てなんですか?」

山本元帥☆「ふふふ、よくぞ聞いてくれた。鉄のスカートとは、すなわち我らが愛するきのたけ女神様のスカートのことさ」

山本は腕組みをしながら、芝居がかった動作で兵士の周りをゆっくりと歩き始めた。


132 名前:きのこ軍:2014/04/19 21:44:32.54 ID:q7m1U88Mo
山本元帥☆「兵士諸君、よく考えてみてほしい。君たちの目の前に絶世の美女がいるとする。
その美女が艶かしい視線を君たちにおくって誘っている。諸君、どうする?」

山本の問いに、歴戦のたけのこ軍兵士は間髪をいれずに答える。


たけのこ軍兵士「「据え膳食わぬは兵士の恥ッ!!」」

山本元帥☆「その通りッ!服を脱がせてほしいと頼まれたら?」

たけのこ軍兵士「「かわりに服を脱ぐ!!」」

山本元帥☆「そこに乙牌があったら?」

たけのこ軍兵士「「盲牌のごとくなぞる!!」」

山本元帥☆「スカートのラインが際どかったら?」

たけのこ軍兵士「「這ってでも覗き見るッ!!」」

山本元帥☆「グレイト。実にグレイトだ皆。俺は今猛烈に感動している」

山本は目頭を押さえて、周りの兵士と熱い握手を交わしている。


オニロ曹長†「…えと、あの」

791二等兵=「くっだらない…」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

133 名前:きのこ軍 この作戦内容を知っているあなたはご連絡を:2014/04/19 21:47:36.18 ID:q7m1U88Mo
山本元帥☆「今のが本作戦の真髄だ」

オニロ曹長†「え、本当ですか!?」

社長軍曹¶「うん ピ おわりの章」

山本元帥☆「兵士ならば、誰でもスカートの中の小宇宙(パンティー)を覗きたくなるものだ。
それはたけのこ軍だけではなくて、きのこ軍もだ。我々は“たけのこ軍本陣”という小宇宙を、
何段にもわたるスカート(ペティコート)で死守する。絶対防衛ラインを築き上げることで、
きのこ軍を焦らしてやるのさ。死ぬほどにな」

つまり、ドレスのペティコートのように、小隊で構成された数十段に及ぶ防御陣を敷いて
対応するのが“鉄のスカート(ペティコート)”の役割である。
そして突破された防御陣は再結集して最後尾の防御陣となり、きのこ軍主力部隊は
永遠に防御陣を突破できずに疲労と損傷を蓄積させていくという作戦なのである。

オニロ曹長†「な、なるほど」

オニロは聞かされた作戦のすごさと、目の前の司令官の気色悪さとのギャップに、複雑な思いを抱いた。

山本元帥☆「オニロ。お前には主力部隊として前線で働いてもらいたい。よろしく頼むぞ」


134 名前:きのこ軍 この作戦内容を知っているあなたはご連絡を:2014/04/19 21:48:12.18 ID:q7m1U88Mo
【K.N.C 175年 第175次大戦 きのこ軍本陣前】

『ぶお〜〜〜 現在の兵力は52:35できのこ軍が有利です』

スティーブ大尉‡「時間だ。これより、作戦を開始する」

静まり返っていた部隊の空気が、一段と張り詰める。オニロは緊張と不安で息苦しくなった。


スティーブ大尉‡「全軍、突撃ッ!!」

隊長の静かで鋭い命令が発せられると同時に、たけのこ軍兵は疾風のようにきのこ軍本陣へ突撃した。


135 名前:きのこ軍:2014/04/19 21:50:57.78 ID:q7m1U88Mo
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 たけのこ軍本陣手前】

アイム曹長†「…というのが、敵の目論見だ」

ゴダン大佐▽「もしアイム君の言っていることが本当だとしたら、
手薄な本陣はあっという間に敵の手に落ちてしまう」


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は36:34できのこ軍が有利です』


きのこ軍「!?」
¢准将◇「お前の予想していたとおりだったな、アイム」

たけのこ軍「おらおらあ!女神様の御御足は拝ませねえぞきのこどもがッ!!」

きのこ軍「!!」

今まで防御に徹していたたけのこ軍が、まるで示し合わせていたかのように、
きのこ軍への大反抗を開始した。

たけのこ軍A「スカートに入り込んだ変態には罰を与えねえとなあ!」

社長軍曹¶「跪いて足をお嘗めは うーんいいぞ。」

アイム曹長†「ちっ、敵が活気づきやがった。あの意味不明野郎もいやがるし、最悪だな」

ゴダン大佐▽「我々をここから逃す気はないってことだな」


136 名前:きのこ軍:2014/04/19 21:52:09.25 ID:q7m1U88Mo
¢准将◇「…アイム。数名の兵士を連れて先に戻れ」

アイム曹長†「…あんたはどうすんだ」

¢准将◇「俺たちが食い止めている間にお前が本陣の増援として戻れ。
直に俺たちもお前の後を追う」

社長軍曹¶「アイムくん どこですか〜?」
敵兵の声が近づいてくる。

ゴダン大佐▽「早く行きな。女神様とやらは俺たちのために待ってくれるけど、敵は別だ」

アイム曹長†「…了解ッ!」

アイムは塹壕を飛び出し、数名の兵士と霧の中を駆けていった。

¢准将◇「奴さんどこにいたのかうじゃうじゃ湧いてきやがったな」

ゴダン大佐▽「状況は一転。だが、だからこそ燃えるな」


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は28:32でたけのこ軍が逆転しました』

アイム曹長†「ちくしょう!間に合ってくれッ!」

戦いの終わりが、刻一刻と近づいていた。


137 名前:きのこ軍:2014/04/19 21:52:18.55 ID:q7m1U88Mo
とりあえずここまで。

138 名前:791:2014/04/19 23:12:02.86 ID:SAHj4V/Qo
わーい更新されてる!

139 名前:たけのこ軍 筍魂:2014/04/19 23:39:08.38 ID:KAz1NG7oo
アイム 有能

140 名前:社長:2014/04/19 23:45:36.95 ID:f/8qsgJU0
社長「きのこの女神様とたけのこの女神様の百合は素晴らしい 男は消えろ」

141 名前:きのこ軍:2014/04/20 01:38:02.60 ID:7T2oPxOko
あと1,2回の更新でようやく第一章が終わると思います。

142 名前:きのこ軍:2014/04/20 21:25:00.95 ID:7T2oPxOko
【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 きのこ軍本陣】

オニロ曹長†「『グラビティチョコ』!!」

きのこ軍「「うわ〜〜」」

地面を巨大な落とし穴へと変えて、何人ものきのこ軍が落ちていく。

斑虎二等兵=「敵は慌てふためいているな」

スティーブ大尉‡「雑魚に構うなッ!!狙いは本部だッ!」

スティーブ指揮官は、先にある野営テントを指さした。

スティーブ大尉‡「あそこにはためいている敵の旗を燃やし、我軍の旗を突き立てた時が
我軍の完全勝利の証だッ!」

スティーブ大尉‡「全軍進撃!本部を落とした者に秘蔵の[アウアウ]な賞品をプレゼントしよう!」

たけのこ軍精鋭「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」

指揮官の鼓舞に、精鋭部隊は拳を上げて応える。

ヒノキ曹長†「敵の増援が到着する前にかたをつけないと」

斑虎二等兵=「そんなすぐに到着するわけがないぜ」


きのこ軍 アイム曹長†「それはどうかなッ!」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

143 名前:きのこ軍:2014/04/20 21:29:46.31 ID:7T2oPxOko
きのこ軍 アイム曹長†「それはどうかなッ!」

スティーブ大尉‡「!?」

霧の中から突如現れた短剣はスティーブ目がけて一直線に飛んでいった。
闇雲に走り、奇跡的に制圧される直前の自陣へ戻ったアイムは、
たけのこ軍精鋭部隊の姿を目の前で視認していた。霧のせいで、
精鋭部隊の全貌を把握することはできなかったが、部隊の中心にいた人物めがけて
躊躇うことなく短剣を投げた。拳を振り上げ周りを鼓舞している人物こそが
部隊の中心人物であると推測し、その人物を排除することで部隊の瓦解を狙ったのだ。
アイムの読みは正しかった。その人物こそが、精鋭部隊の隊長スティーブだったのだ。

オニロ曹長†「ッ!!」

その場にいる誰もが事態を飲み込めず、隊長めがけて飛んでいる短剣をただ眺めるしかなかった。
その中で、ただ一人オニロだけが咄嗟に腕をのばした。
スティーブに刺さろうかという寸前、オニロは咄嗟に杖で短剣を薙ぎ払った。
非常事態であることを本能的に理解し、身体が頭よりも先に反応したのだ。

短剣が地面に転がる。短剣から発せられた乾いた音が、周りの兵士を急激に現実に引き戻した。


144 名前:きのこ軍:2014/04/20 21:31:03.22 ID:7T2oPxOko
たけのこ軍「隊長!ご無事ですか!」

たけのこ軍「畜生!敵の増援が到着しやがったのか!」

スティーブ大尉‡「慌てるなッ!」

スティーブは焦りに支配されている兵士を一喝し、すぐさま辺りを見回す。
敵兵が攻めこんでくる様子はない。仮に、霧の向こうに敵軍の増援部隊が到着していたとしても、
自軍部隊が先にきのこ軍本部を制圧してしまえば、その時点で勝敗は決する。
敵軍増援部隊と戦っていては、せっかくの強襲が徒労に終わってしまう。
任務遂行は時間との勝負でもあるのだ。この場で人員を無駄に割いてまで敵軍部隊と戦う必要はない。
スティーブはそう判断した。

スティーブ大尉‡「数名はこの場で待機し、敵軍を抑えろ!残りの者は迅速に本部を制圧する!」

オニロ曹長†「ボクは残ります!」

スティーブはオニロの言葉に一瞬迷いの表情を見せたが、すぐに頷き、
周りの兵士とともに本部へ向かっていった。


アイム曹長†「邪魔だ。そこをどいてくれないか」

霧の中からぬっと現れたアイムと数名のきのこ軍兵を、オニロは静かに出迎えた。

オニロ曹長†「やっぱりアイムはすごいや。こんなに早く戻ってくるなんて」

アイム曹長†「女神様の足なんて興味ないからな。お前らを殲滅することのほうがよっぽど興味がある」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

145 名前:きのこ軍:2014/04/20 22:16:19.17 ID:7T2oPxOko
オニロ曹長†「アイム。それ以上近づいたら、ボクは攻撃しなくちゃいけない」

アイム曹長†「はん?“しなくちゃいけない”?お前は、だから、甘いんだよッ!!」

オニロ曹長†「うわッ!」

踏み出した右足を蹴りあげ、砂を巻き上げる。
巻き上がった砂がオニロの目に入り、一瞬動きが止まる。

アイム曹長†「行くぞッ!」

時間はない。左右に位置していたきのこ軍兵が一斉に走りだす。
オニロは走りだした兵士に気を取られた。

オニロ曹長†「『マルチブルランチャー』!!」

光弾がオニロの脇を抜けたきのこ軍兵をホーミングし追跡する。
しかし、それはアイムの目論見通りだった。

アイム曹長†「邪魔だッ!」

アイムはオニロの魔法が詠唱されたのを確認して走りだす。
仲間を囮にして、自らだけが本部へ到着することを最初から想定していた。
次の詠唱には一定の時間が必要なはずだ。
アイムはオニロの詠唱待機時間を利用して、駆け抜けようとしたのだ。
通常ならば、その選択は正しい。しかし、オニロは規格外だった。


オニロ曹長†「うらあッ!!」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

146 名前:きのこ軍:2014/04/20 22:18:44.75 ID:7T2oPxOko
アイム曹長†「ハァハァ…お前、いつの間にそんな技を」

オニロ曹長†「ハァハァ…791師匠との修業の成果だよ…」

お互いに息を切らしながら、じりじりと間合いを図る。
アイムはショックを隠せなかった。
兵士の誰よりも多くの特訓を積んできていた自信があった。手の皮が破れても、足が腫れ上がっても、
決して鍛錬の手を緩めることはしなかった。
特に、オニロがのほほんと中庭でくつろいでいる光景を見た時は、一段と鍛錬に身が入った。

− あいつにだけは負けたくない。負けてなるものか。−

自らが成長する分だけ、オニロと差がついたとほくそ笑んでいた。
撃破数で勝負を持ちかけたのも、自らの強さを絶対的に示すためだった。

しかし、オニロは驚くべき速さで成長していた。
オニロは鍛錬の時間外でも、常に魔法呪文の復唱をするように、791から命じられていた。
アイムにとっては休憩中に見えた間中も、オニロは一時も休むことなく呪文の暗唱を繰り返して鍛錬をしていたのだ。
たゆまぬ努力が、結果として短期間で連続魔法を取得させたといっても過言ではない。
しかし、アイムはそんなオニロの陰の苦労を知る由もない。
連続魔法を難なく使いこなすオニロを目の前にして、アイムは今までの自分の努力が全て否定されたような思いで、
呆然と立ち尽くすしかなかった。


『ぶお〜〜〜 たけのこ軍がきのこ軍本部を制圧しました!よって、本大戦はたけのこ軍の勝利です!』

戦いの終焉を告げる大法螺が鳴り響いても、アイムはしばらくその場で立ち尽くしていた。


147 名前:きのこ軍:2014/04/20 22:21:05.05 ID:7T2oPxOko
【K.N.C 176年 会議所】

名無しの彼「やるじゃんアイム。初大戦で撃破王取るとか、すごすぎるだろ」

95黒「負けちゃったけど、次は勝てるって!」

大戦が終わってから数日、敗軍ながら両軍合わせて撃破王を手にしたアイムは
“きのたけ希望の星”として両軍から賞賛の的となった。
しかし、アイムの表情はうかなかった。撃破王を素直に喜んでくれているオニロと、見下していた相手の
力量差を知って愕然としている自分とを比べ、自分がひどくちっぽけな人間でもあることを実感した。
アイムの異変に気がついた心配したオニロが言葉をかけても、アイムはただ頑なに頭を振るだけだった。

〜それからどうした?〜

【K.N.C 179年 会議所 大廊下】
今日もアイムはいつもの仏頂面をぶら下げ、大廊下を歩いていた。
先日の第178次大戦ではきのこ軍はたけのこ軍に大敗を喫し、オニロが初の撃破王を手にした。
対して、アイムといえば早々に戦死してしまい、まともに戦果を上げることができなかった。


148 名前:きのこ軍:2014/04/20 22:22:29.62 ID:7T2oPxOko
アイム「はぁ…」

筍魂「ため息の数だけ、幸せは逃げるぞ」

アイム「…何のようだ」

筍魂「随分と浮かない顔をしているな。腹を下した直後の俺の顔とそっくりだ」

アイム「…オレはいま腹の居所じゃなくて虫の居所が悪い。
お前と喋っている今この時でさえ、苦痛でたまらないんだ」

アイムは露骨に顔を歪ませたが、意に介さず涼しげな顔で筍魂は言葉を続けた。

筍魂「ほーん。俺ならその苦痛を取り除いてやれるぜ?」

アイム「それは助かる。なら今すぐこの場から消えてくれ」

筍魂「まあ落ち着け。お前はいま伸び悩んでいる。お前はそんな自分をやるせない。
初めての大戦でこそ活躍はしたが、以降の大戦では戦死が相次ぎ満足に戦果を上げられていない。
一方で、オニロは戦役が進むごとにメキメキと頭角を現し始めている」

筍魂「戦果を思うように上げられない、そしてライバルのオニロが実力をつけてきて、
ますます焦ったお前は戦果に逸り、戦死を繰り返す。負のスパイラルだ、違うか?」

アイム「…オレの実力はオレが一番良く知っている。お前ごときに何がわかる」

筍魂「知っているさ。少なくとも今のお前よりはな」

アイムはじろりと睨む。


149 名前:きのこ軍:2014/04/20 22:24:58.20 ID:7T2oPxOko
筍魂「オニロとお前との決定的な差を教えてあげようか?」

アイム「そんなものは聞きたくない」

筍魂はアイムの言葉を聞き流して続ける。

筍魂「“スタンドプレイ”か“チームプレイ”」

アイム「…オレが軍のことを考えずに突進する脳筋だって言いたいのか?」

筍魂「いや、その逆だ。お前は“考えすぎる”。試行錯誤することはいいことだ。
相手として戦ってみてわかったが、お前はたいそう機転がきく。
しかし、お前の考えは全て“自分のため”という前提条件の下に成り立っているように見える」

筍魂「オニロも、またお前と真逆だ。彼は“動きすぎる”。考えるより先に身体が先に動くんだろう。その原動力は全て“仲間のため”。自ら身を挺してでも、軍のために貢献するという思いがある」

アイム「どっちが良いかなんて一概には決められないはずだ」

筍魂「一理ある。ただ、お前の凝り固まった考えは、自らの視野と可能性を狭めるものであることに
お前自身が気づいていないといけない。今のお前は、鎖に繋がれた番犬のようだ。
一定の範囲内でしか噛み付いてこない今のお前は、まるで怖くない」

アイム「自分の命を守って何が悪いんだ。オレが自分で考えて行動に移す行為そのものは、
オレが“生きていないと”できっこないんだ。生こそ全て。それを優先して何が悪い」

ダダをこねるような言い方でアイムは反論した。


150 名前:きのこ軍:2014/04/20 22:26:27.85 ID:7T2oPxOko
筍魂「もちろん生こそ全てだ。しかし、今のお前の“スタンドプレイ”では、
せっかくの生き残る可能性をフイにしてしまっている。現に、お前はそのせいで何度も戦死している」

アイムは反論できずに、悔しそうに下唇を噛んだ。

筍魂「山本さんはお前を『突撃兵』として育成したいようだが、俺の考えは違う。
お前は『援護兵』タイプだと思っている」

援護兵。特徴を持たないことが最大の特徴であるタイプ。

筍魂「俺ならお前のスランプを解消することができる。
戦闘術『魂』はお前をきっと良い方向に導いてくれるだろう。
アイム、いやアイちゃん。ウチにこないか?」

アイム「エッ」

筍魂「オニロを見返してやろうじゃないか!」

アイム「タ、タマサン… 」



アイム「とは、ならない」
筍魂「すまんな」


151 名前:きのこ軍:2014/04/20 22:27:07.48 ID:7T2oPxOko
次回、第一章完結 ここまでが前座です(力尽き

152 名前:社長:2014/04/20 22:28:54.31 ID:PYxpUEeA0
きのこ軍の女神様とたけのこ軍の女神様がいちゃいちゃちゅっちゅする薄い本はよ

153 名前:たけのこ軍 筍魂:2014/04/20 22:33:27.19 ID:s6QhXpygo
切り替えていく

154 名前:791:2014/04/20 23:16:11.37 ID:CIwM/Ms6o
面白かった!
続きが楽しみ

155 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:25:14.04 ID:hq1j2sN.o
【K.N.C 179年 会議所 ???】

深夜の丑三つ時、風音に紛れ、二人の兵士の囁くような声が聞こえてくる。

??「“あの場所”を近々、二人に見せる準備が整いました」

??「随分と時間がかかりましたね。もう少し早くてもよかったのでは?」

咎めるような兵士の口調に、もう一人の兵士は苦笑した。

「何も私の独断で事は運べないのですよ。それはあなたもよくわかっているはずです」

「…」

黙った兵士を尻目に、もう一人の兵士は静かに息を吐く。

「あの二人は、貴方の目からはどう映っていますか?」

「そうですね…凹凸コンビ、といったところでしょうか。
真反対な性格の二人ですし、差し詰め水と油のようなものですかね」

兵士の喩えに、もう一人の兵士は口をすぼめ、わざとらしく感嘆の声を出した。

「貴方はそう思いますか。私はあの二人は、よく似ていると思うんですよ」

「似ている?」


156 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:26:33.25 ID:hq1j2sN.o
「あの二人は、軍の所属も違えば、戦闘タイプも戦闘方法も違う。一見するとベクトルの違う兵士です。
ですが、彼らは、もう一方にはない“特徴”をそれぞれ持っている。
冷静さ、情熱、機転、瞬発力…
一方が有している特徴を、もう一方は見事に持っていない。
彼らは互いに完全ではないんです」

「完全な人なんていない。それが兵士てものなんじゃないですか?」

何がおかしかったのかもう一人の兵士はくつくつと笑い声を漏らす。

「そうですね。その通りです。完全な兵士なんていない。我々もまた同じです。ですが…」

その先の言葉は飲み込み、兵士はくすんだ夜空を見上げる。

「貴方がたとえた凹凸とは言い得て妙なのかもしれない。
二人はパズルのピースのようなものです。お互いに欠けたピースなんだ」

静かに夜が更けていく。


157 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:30:43.45 ID:hq1j2sN.o
【K.N.C 180年 会議所 wiki図書館】

オニロは今日も書物漁りのために、図書館に足を運んでいた。
オニロは書物の紙の匂いが好きだった。木洩れ陽が差し込み、人のいない広間で
ひたすら自分が読みたい本を漁る一時は、何事にも代えがたい幸せだ。
三度の飯より本が好きだ。今日も人の気配が無縁であることを半ば期待しながら、足を踏み入れる。
しかし、いつもは人気のない空間に、今日は一人の来訪者が、棚に寄りかかりながら物憂げに天井を眺めていた。

オニロ「アイム!!」

オニロの喜びあふれた声に、気だるげに身体を起こし応じると、
アイムは頭を掻きながらオニロに視線をよこした。

アイム「遅かったな。シューさんは一緒じゃないのか?」

オニロ「え?なんのはなし?」

アイム「あ?シューさんにここに来るように呼ばれたんじゃないのか?」

オニロ「?違うよ。ボクはいつものように本を読みに来たんだよ」

オニロの言葉に自分が集計班に嵌められたことに気づいたアイムは、一人顔を赤くした。

オニロ「アイムは集計さんに呼ばれていたの?」

アイム「あ、ああ。『アイム君とオニロ君に是非見てもらいたいものがあるから図書館に来てほしい』てな。
…くっそ。ダマサれた、どうしてこんな辛気臭いところに来ちまったんだ…」

騙されたことによる怒りがフツフツと湧いてきたが、この湧き上がる怒りを
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

158 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:33:24.56 ID:hq1j2sN.o
オニロ「ま、まあまあ。図書館も意外と楽しいよ?いろいろな大戦の歴史を楽しめて…」

集計班「そうそう。大戦の歴史を知ることはとても重要なことですからね」

アイム「!!」

規則正しく並んでいる本棚から、集計班はひょっこりと顔を覗かせた。

アイム「シューさん…あんた、いつからここに?」

口元をひくつかせながら、アイムは震える声で集計班に問いかける。

集計班「そうですね…アイム君がキョロキョロしながら広間に入ってきて、
ウロウロしながらオニロ君が来るのを首を長くして待っている時ぐらいからいましたね」

アイム「オレが来る前からいたじゃねーーーーーーーかッ!!」

集計班「まあまあ。アイム君を騙してしまったのは悪いと思っていますよ。
でも、オニロ君が頻繁にここに来ていることも知っていたし、
何より説明するの面倒くさいから。まあ、いいかなと」

既に二人に事の次第を話すこと自体も面倒くさそうだった。

アイム「…あんたも、あの気色悪い野郎とどこか同じニオイがするな」

集計班「社長のことですか?いやあ、あの人には敵いませんよ」

そんなことより、と集計班は両の手をポンと叩き、二人を呼んだ理由を話し始めた。
アイムの気持ちなどお構いなしである。


159 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:35:32.03 ID:hq1j2sN.o
集計班「二人とも。『歴史』のお勉強に興味はありませんか?」

アイム「…残念ながら、これっぽっちも」

オニロ「あります!あります!」

死んだ魚のような目をして返答するアイムと、キラキラと目を輝かせながら答えるオニロの反応は
どこまでも極端だった。

集計班「そうですか。二人ともとっても興味があるということで…」

アイム「おい」

集計班「今から、ある部屋で歴史のお勉強をしてもらいます」

オニロ「部屋?」

ついてきてください、と二人の返答を待たずに集計班は本棚の間の通路をカツカツと歩き始めた。
慌てて二人は後を追う。館長の参謀によってキレイに整頓された書物の間をグングンと集計班は進んでいく。
書籍の棚の切れ目が訪れると、その度に右に曲がったり左に曲がったりと、まるで迷路を進んでいるようだ。

アイム「なあ、いつまでこんなこと続けるんだよッ!?」

怒気をはらんだアイムの声は集計班には届いていないようだった。
右に曲がったら、左に曲がる。左に曲がったら、右に曲がる。
まるで同じ箇所をグルグルと回っているようだ。次第に、オニロは気分が悪くなってきた。

オニロ「気持ち悪いよおアイム」

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160 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:43:11.34 ID:hq1j2sN.o
いったいどのくらい歩いたのだろうか。当然、同じ通路をグルグルと歩きまわっているはずなので
周りの景色など変わりようがないはずである。
しかし、不思議なことに二人を取り巻く景色は変わりつつあった。まず、日々参謀の手でピカピカに磨かれていた
床にホコリが舞うようになっていた。
そして、綺麗に整頓されていた棚の中も、向きがグチャグチャのまま無理に押し込められているような書籍が
散見されるようになり、終いには行き場を失った本が足元にも散乱し始めた。

集計班「もう少しですよー」

気の抜けたような集計班の声とは裏腹に、二人は、通路に無造作に積み重ねられた本に挟まれながら、
どんどん息苦しくなっていった。

オニロ「ほ、本当に吐きそう…」

アイム「オ、オレも気分が悪くなってきた…」

いつの間にか、窓から差していた木洩れ陽もカーテンで閉めきってしまったかのように届かなくなり、
二人がジメジメとした湿気やら埃やらにいい加減まいっていると、

集計班「ああ、ごめんなさい。もう着きましたよ」

集計班はようやく立ち止まった。あまりにもグルグルと回っていたので、
今自分たちがどこにいるのかもはっきりとしない。
はっきりとしているのは、先程まで通路には無かったはずの薄汚い階段が
三人の目の前に現れていることだった。

集計班「どうぞ。足元に気をつけてください」

階下へ続く階段は、壁にかけられたランタンが仄かに足元を照らすだけだった。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

161 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:47:22.78 ID:hq1j2sN.o
アイム「ここはッ…」

オニロ「うわあ!」

気分の悪かったオニロは目の前の部屋を見回してたちまち元気を取り戻した。

その部屋は一言で言えば、書物のみで構成されていた。
たくさんの書物が、足元をうめつくすほどに、乱雑に部屋に置かれている。
そして、見上げる首が折れ曲がりそうなほどの高さの本棚がオニロたちを囲んでいる。
部屋の天井は、どう考えても階上の広間を突き抜けるほどに、恐ろしく高い。
そして、部屋の中心に置かれたロール式の古紙が、まるで生をうけた龍のようにうねり、
終りが見えない天井へ向かって螺旋状に用紙を伸ばしている。
古紙のロール部の付近には、大きな羽ペンがちょこんと空中に浮遊している。

不思議な空間だった。
居心地の悪さは感じない。寧ろ、歪な空間ながら居る者に安心感を与える。
アイムは形容しがたい気持ちを抱いていた。記憶にないはずなのに、覚えがある。
痒い所に手が届かないようなもどかしい思いをしながら、アイムは自らの直感を口にした。

アイム「これは…懐かしい…のか?」

唖然とする二人を尻目に扉を静かに閉めた集計班は、まるで親が子を宥めるように、
静かに優しい口調で二人に語りかけた。


「ようこそ。『大戦年表編纂室』へ」



162 名前:きのこ軍:2014/04/22 01:51:29.99 ID:hq1j2sN.o
【K.N.C 180年 ???】

??「見つけたッ!ついに見つけたぞッ!!!!」

聞くものを不快にさせるような薄気味悪いガラガラ声で、言葉の主は歓喜に打ち震えた。

??「ようやくだッ!ようやくッ!!」

見るものを不快にさせるような気色悪い図体を揺らせながら、言葉の主は喜びを全身で表現した。

??「貴様もそう思うだろ?あの地下で語っていた夢が、ついに実現するのだッ!!」

聞かれた者は言葉を発さず、静かに首を何度か上下に振るだけだった。
しかし、言葉の主にはそれだけでその者の思いが伝わったようだった。

??「ここからだ。ここから始まるんだッ!!」

大股で草木で覆われた建物に近づいていく。踏みつける度に、草花は枯れ、
生物は異臭で息絶え、後には無が残った。


??「俺様がァ!俺様がァ!歴史を変えるんだッ!!ハハハハハハハ」


その日、全ての諸悪の根源たる二体の邪悪な生き物は、世界を崩壊させかねない、
それこそ“歴史を塗り替える”ような“歴史的な”発見をした。
世界を根本から崩壊しかねない二人の目の前の建造物の存在は、
しかし会議所中に知れ渡るにはいま暫くの時間を要さなければならい。

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

163 名前:きのこ軍 誤字脱字王にオレはなるッ!!:2014/04/22 01:52:24.27 ID:hq1j2sN.o
ノルマ達成。しばらく時間をいただこう。

164 名前:社長:2014/04/22 01:54:06.61 ID:tmW9NgrY0
もつだぞ

165 名前:とら:2014/04/22 09:29:53.01 ID:wSdyREBoo
おつおつお

166 名前:きのこ軍 誤字脱字王にオレはなるッ!!:2014/04/22 13:20:36.57 ID:hq1j2sN.o
参考
大戦年表編纂室イメージ案

http://dl6.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/347/card-15.jpg

167 名前:791:2014/04/22 20:23:54.56 ID:PNVq4GCwo
お疲れさま!

168 名前:きのこ軍:2014/05/03 11:28:10.34 ID:mu541ynY0
近日公開
なお書き溜めはない模様

169 名前:きのこ軍:2014/05/03 11:41:48.11 ID:FaihNzbk0
今更ですがミニ設定と裏事情。

・K.N.C歴
正式名称はきのたけ暦。第1次大戦が開催された時をK.N.C歴1年として、
大戦が開催されるごとに1年進んでいく。
物語開始時点ではK.N.C歴175年なので、第174次大戦まで終わっていることになる。
ちなみに暦を歴と間違えてしまい、以降そのままになっているのはみんなには秘密だよ。
初期は「会議所スレが1スレ埋まるごとに1年進む」という設定だった。その名残として、K.N.C(きのこたけのこ会議)という表記がそのままになっていたりする。


・きのこたけのこワールド
一応、現実の大戦の史実に則り設定がつくられている。
第175次大戦時点は、現実では2013年8月あたり。
なぜ、敢えてこの時期を選んでいるのか、いつか明かされるといいでつね。

170 名前:きのこ軍:2014/05/03 12:07:16.27 ID:0WVmPCqI0
・きのこたけのこワールド その2 ワールドマップ
会議所やきのこの山(きのこ軍集落)、たけのこの里(たけのこ軍集落)の位置関係は、抹茶クエストの位置関係を参考にしている。(というかパクっている)
3地点を三角形の頂点とした時の中心点が大戦場に位置します。ごめんなさい、今考えた設定です。

・大戦場
きのこたけのこ大戦を実施する戦場。広大な土地を有している。
その昔は草木が生い茂る緑の楽園だったが、数多くの戦闘を経て、今は草一本生えない荒野と化している。
大戦場では、兵士が致死量のダメージを負っても、治癒可能な最小限の傷にとどめることが可能。
大戦中に兵士が深いダメージを受けると、その時点で大戦場の脇にあるバーボン墓場に転送され(バーボン送り)、終戦まで戦場に戻ることはできない。
こんなヘンテコなシステムを、全て大戦場周辺に展開されている超特大の魔法陣が動かしている。
大魔法791曰く「並みの魔法使いじゃこんな広範囲な魔法を使えない」。誰が超魔法陣の術者なのかは不明。
魔法陣は第一次大戦から変わらず展開し続け、術者が存命でないと維持できない。また魔法陣の維持には膨大な魔法力を要しているはずだ。いったい誰が…?
この設定は本編中で明かされることはないかもしれないので、機会があればまた設定裏事情で。



171 名前:きのこ軍 誤字脱字王にオレはなるッ!!:2014/05/15 17:40:44.71 ID:6kcR.DR2o
きのたけWARS 〜DB討伐〜
Chpater2. 悪しき時空の潮流者

………
……


暗い部屋に、一人の兵士の息遣いと、サラサラと紙をこするような
インクの音が聞こえてくる。


『…
 大戦にやまだかつてない危機が訪れようとしている。
 かつてともに混迷の会議所を乗り越えた貴方の力を、今一度
 会議所は必要としている。会議所への復帰を、検討していただけないだろうか』


「ふぅ…」
誤字脱字に気をつけながら、やっとの思いで手紙を書き終えた一人の兵士は、安堵の息をもらした。


「慣れない羽ペンなんて使って書くものじゃないな…」
苦笑しながら、自分の書いた汚い字など読みたくがないとばかりに目の前の手紙を封筒に押し込む。


「さて、あとはこれを参謀に頼んで…」
つぶやいている途中で、兵士は声を呑んだ。
目の前の封筒を参謀に渡せば、彼は目的の人物に確実に届けてくれるだろう。そして届けて手紙の内容に目を通し、もし彼が手紙の内容に共感して会議所に復帰したらどうなるのか。


172 名前:きのこ軍 誤字脱字王にオレはなるッ!!:2014/05/15 17:42:04.16 ID:6kcR.DR2o
「…」
兵士は葛藤していた。手紙に書かれている通り、目的の人物には会議所に復活してもらわなければならない。
書き上げた兵士自身が誰よりもその結果を望んでいる。
だが、同時に。
心の奥底では期待している結果とは相反したものになってほしいと渇望している自分がいる。

「…」

封筒を参謀に手渡す時。

それは手渡した瞬間から、歴史の潮流に身を任せることと同義であり。
同時に、古くから成り立ってきた伝統のきのたけ世界への叛逆を宣言する行いを意味する。


━━━━━━━━
━━━━
━━


173 名前:きのこ軍 誤字脱字王にオレはなるッ!!:2014/05/15 17:42:11.20 ID:6kcR.DR2o
続きはまた今夜にでも。

174 名前:791:2014/05/15 22:08:00.28 ID:FNHi280Uo
更新きた!
楽しみにしています!

175 名前:きのこ軍 誤字脱字王にオレはなるッ!!:2014/05/16 02:27:09.32 ID:7FEX9qf6o
【K.N.C 180年 会議所 大戦年表編纂室】

アイム「大戦年表…編纂室?」

集計班「大戦の歴史に関するありとあらゆる書物が収められているんですよ、ここは。
上のwiki図書館には置いていない歴史書物が全てこの部屋に集まっています」

オニロ「そういえば、探しても探しても大戦の歴史に関する本がなかったんだ。おかしいと思ったんだよなあ」

アイム「どうしてわざわざこんなヘンピな所に、歴史書を全部集めているんだ?」

集計班「さあ。それはこの部屋をつくった本人に聞いてください」

オニロ「いったい誰がこの部屋を?集計さんですか、それとも参謀が?」

集計班「そのどちらでもありませんし、私にもわかりません。
ある日、宛先不明の置き手紙で、私はこの部屋の存在に気がつきました。

『大量の書物の前で
  “←→←→←→←→←→←→ そして最後に祈れ”
これは困難を打破する魔法の呪文なり。 
 さすれば道は開かれる』
とね」


176 名前:きのこ軍 冨樫みたいな執筆速度に憧れています:2014/05/16 02:28:04.71 ID:7FEX9qf6o
アイム「な、なんだよそのコマンドみたいな指示は…」

オニロ「もしかして、さっき図書館で歩いていた順路を示しているんですか?」

集計班「そうです。どうやら、図書館の書庫一帯に魔法陣が張られているようで、
規則性のある動きをしないと、編纂室に辿りつけない魔法のようなんです」

アイム「なんていうか。すごくヘンテコでファンタジーぽい話だな」


177 名前:きのこ軍 冨樫みたいな執筆速度に憧れています:2014/05/16 02:29:12.81 ID:7FEX9qf6o
アイム「しかし…見れば見るほどヘンテコな部屋だな。高すぎて天井が見えねえ…」

オニロ「天井近くにある本はどうやって取ればいいんですか?」

集計班「祈れば勝手に本が来てくれます」

そう答え、集計班は両の手を組んで目を閉じた。
すると、天井近くのはるか遠くの本棚から、するすると一冊の本がにアイムたちに向かって飛んできた。

集計班「ね、簡単でしょ?」

宙に浮いている本を掴み、オニロに渡す。
『wiki図書館の成り立ちとその歴史』と書かれたタイトルの本だ。
ホコリをかぶっている。

オニロ「わあ!面白そうな本だ!」

アイム「…なんていうか、他にも色々と聞きたいことがあるんだが。
部屋の中心で浮いている“モノ”はなんなんだ?」

編纂室の中央には、人の腰ぐらいの高さの台座があり、その上にロール式の古紙がちょこんと置かれている。
ロールから伸びた紙は、物理法則を嘲笑うかのように、果てが見えない天井まで伸びている。
螺旋状に天まで伸び、羽衣のように扉からの隙間風に揺らめくその姿は、ひどく幻想的だった。


178 名前:きのこ軍 冨樫みたいな執筆速度に憧れています:2014/05/16 02:30:14.46 ID:7FEX9qf6o
集計班「あれは『大戦年表』ですね」

アイム「年表?」

集計班「会議所と大戦に関する歴史上の事件や出来事などが、年代の順を追って記載されている表のことです。
K.N.C1年から現在の180年まで、出来事が詳細に記録されています」

集計班は見えない天井を指さす。ロール紙の端から、K.N.C1年の出来事が記録されているのだという。

集計班「大戦年表への記録は、あたりを飛び回っている『自動筆記ペン』がおこなっています。
“彼ら”は、大戦の結果・総評や、会議で決まった内容など、特定の出来事・事件を即座にあの年表に記録します」

彼らはこの会議所内で、誰よりも歴史家ですね。冗談めいた口調で集計班は語った。
ある自動筆記ペンは、年表のロール部分に張り付き、新たな大戦の歴史が生まれないか
今か今かと待ちわびているようだ。
また、ある自動筆記ペンは、本棚と本棚を行き来し、棚から白紙の書物を引っ張りだしては
仕切りになにか書き込んでいる。その様子はひどく慌ただしい。


179 名前:きのこ軍 冨樫みたいな執筆速度に憧れています:2014/05/16 02:31:39.59 ID:7FEX9qf6o
集計班「複数の筆記ペンがそこらかしこを飛び回っていますが、
それぞれ与えられている役割が違うのか、まるで会議所の受付所のように
ペンたちは忙しなく動き回っていますよ」

アイムはその言葉を聞いて、受付所でひどくくたびれている加古川を思い出した。

アイム「なんていうか…地上でも地下でもやっていることは変わらない、てか」

オニロ「すごい!なんてすごい部屋なんだ!ボク、あの大戦年表がすごく読みたいです!」

目をキラキラさせながらオニロは喜びを全身で表現している。

集計班「ならば祈ればいいんですよ。さっきみたいにね。試しにやってみるといい」

オニロは頷き、早速両手を組んで祈りはじめた。
対して、アイムは年表に特に興味は示さずに、部屋をジロジロと見回している。

オニロ「おお!年表が手元に来た!すごいよアイム!」

アイム「あーハイハイ。それはよかったな」

マフラーのように古紙を身体に巻きつけながら、オニロは興奮げにアイムに詰め寄った。
対してアイムはオニロのことなど気にもとめず、変わらず部屋の周りを見回している。


180 名前:きのこ軍 冨樫みたいな執筆速度に憧れています:2014/05/16 02:32:38.39 ID:7FEX9qf6o
書き溜めゼロ 今日はここまで
貯金なしでいくスタイル

181 名前:誰か:2014/05/16 07:02:51.15 ID:uItWFY5s0
更新来ましたか!
>>180私もですはい

182 名前:きのこ軍 突然更新するの巻:2014/05/22 22:43:09.81 ID:xgcP6DD6o
オニロ「うわあ。結構正確に記録されているんですね!」

オニロ「K.N.C1年とかどんなことが書いてあるんだろう。なになに…
『K.N.C1年 きのこたけのこ大戦の始祖・たけのこ軍兵士まいう総統が突如きのこ軍に宣戦布告。
無事、たけのこ軍が大戦に勝利…』」

集計班「懐かしい話ですね…」

オニロ「『K.N.C109年 第109次大戦において、たけのこ軍は遂に13連敗を喫する。
大型連敗は、13連敗開始前以前に謎の怪文書”デス論評<ブログ>”によって予見されていた…』
え、なにそれ怖い。この怪文書って社長さんが書いたのかな?」

集計班「K.N.C109年か。確か、社長はその頃まだ…
いえ、なんでもありません。
そうですね、もしかしたら社長が予言したのかもしれません」

アイム「あの変人野郎が、そんなわかりきった予言するのか?」

会議室で突然納豆を練り始め踊り始めた社長の姿を思い出し、アイムは露骨に顔をしかめた。

集計班「その怪文書には『たけのこの里おいしーーー』と、たけのこに関してやけに
ポジティブな発言が書かれていたそうな…」

アイム「なんだそれ。意味ワカンネッ」

どうせあの変人野郎の仕業なんだろ、もう考えたくないね。

アイムはそうつぶやいて頭のなかで『ルーンアクスはデフォ』と言葉を発しながら
立ち姿勢で水平移動を続ける社長を、容赦なくぶった斬った。


183 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその2:2014/05/22 22:46:23.71 ID:xgcP6DD6o
オニロ「うわあ、ほんとうに面白いなあ年表って。とても今日中じゃあ読みきれない。
ねえアイム、本当におもしろいよ」

アイム「へぇ、そうかい」

オニロは全身に巻き付いている年表に忙しなく目線をうつしている。
アイムは、犬が尻尾を振りながら餌に食いついている光景を思い浮かべた。

集計班「“彼ら”は日を跨いでも、寝ずに歴史が生まれるのを今か今かと待っています。
そういう意味では、この部屋の筆記ペンたちは会議所の誰よりも『社畜』なのかもしれませんね。ハハッ」

アイム「…あっそ」

気の利いたと思っているジョークがハズレた時ほど悲しいものはない。
集計班の取り繕ったような笑い声だけが部屋に反響する。
見えない天井から反響してくる笑い声の欠片が、余計な虚しさを増幅させた。


184 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその2:2014/05/22 22:49:06.46 ID:xgcP6DD6o
オニロ「これからこの部屋に来てもいいんですか?」

集計班「どうぞどうぞ。そのために今日はあなたたちを招待したのです。
喜んでいただけたようでなによりです。まあ、喜んでいただけたのは一名だけのようですが」

アイムはぷいと顔をそむけた。

オニロ「帰るときも来た時と同じ順路を辿らなくちゃいけないんですか?」

集計班「いえ、帰りはその階段を上るだけで元の図書館に戻れますよ。
よくわからない魔法の中身ですが、こういった手間が省けるのには感謝しないとね」

アイム「…なあ。少し聞いてもいいか?」

集計班「少しだけなら答えてもいいですよ」

先ほどの件を気にしているのか、棘を含んだ口調で集計班は答える。
随分と器の小さい兵士だ、とアイムは自らの行いを棚に上げ、一方的にそう評価した。



185 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその4:2014/05/22 22:52:49.76 ID:xgcP6DD6o
アイム「なんで俺たちをこの部屋に呼んだんだ?」

集計班「歴史の勉強をしてもらいたいからですよ」

間髪を置かずに流れるような口調で集計班が言葉を返す。
アイムは訝しげな視線を集計班におくる。

アイム「歴史の勉強、ねえ。それは俺たちが新人だからかそれとも“希望の星”だからか?」

集計班「…その両方ですよ」

アイム「いや、おそらく嘘だな」

オニロ「どういうことアイム?」

アイムは目を細め、探偵気分で部屋をゆっくりと歩き出す。
ちなみに足元には物が散乱しているので、けもの道とかしているスペースを行ったり来たりするだけである。

アイム「この大戦年表編纂室。普段から使ってるのは、あんた一人か?
というか、あんた以外にこの部屋の存在知ってる兵士なんて、いないんじゃないのか?」

集計班「どうしてそう思われたんでしょう?」

慇懃無礼な態度を崩さず、しかしどこか試すような口調で集計班はアイムに先を促した。


186 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその5:2014/05/22 22:54:40.94 ID:xgcP6DD6o
アイム「まず気になったのは物の散らかり具合だ。部屋には足元にまで本や紙が散らばって、
唯一『人が通っていると思われる』スペースはけもの道のようにならされてはいるけど、
それ以外があまりにも汚い。この点で、まず参謀がこの部屋の汚さを許容するはずがない」

オニロ「あっ。そういえば」

上のwiki図書館は、現館長の参謀兵士が丹念込めて整理整頓を施した一種の『作品』である。
常日頃から清掃活動を行っているのは勿論のこと、本の向きは一様に揃えられた上で本棚に並べられ、
そして綺麗にタグを用いて綺麗に分類分けされた書籍群は、見る者に『清潔感』と『開放感』を与える。

対して編纂室は、物は散らばり、ホコリも水を得た魚のように部屋中に舞っている。巨大な本棚群も、
本の向きはバラバラ、棚によっては横倒しにされている本も見られ、本棚を飛び回っている筆記ペンが
苦労そうに本を取り出している。あらゆるところに煩雑さが目立つ部屋だ。

大多数の人間が不快感を与えるこの空間を、しかし一方で好む好事家もいるのは事実だ。
そして、その好事家の一人に集計班は含まれるのだろうと、アイムは推測していた。

アイム「会議を仕切って会議所を率先してまとめているが、ところどころいい加減な言動が目につくあんたは、
おそらく本質的には参謀と真逆の体質なんじゃないか。つまり、極度のめんどくさがりという点でさ」

集計班は何も言葉を発さない。ただただ静かにアイムの話を聞いている。


187 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその6:2014/05/22 22:57:20.74 ID:xgcP6DD6o
アイム「それと、部屋の中央には巨大なテーブルと椅子が数脚並べられてるけどさ。
あれ椅子一脚しか使ってないでしょ。特定の椅子の周りだけ、なんというか特に汚いというか。
ベクトルの違う汚さというか…」

編纂室には扉から入って正面に、会議室に備えている大テーブルを縮小したような中テーブルと、
ロッキングチェアがテーブルを囲むように置かれている。当然、テーブルや椅子の上にも本や紙が散乱しているが、
扉に背を向けるように置かれている一脚の周りだけは、ジャンルの異なる本が不必要に何段も積み上がっていたり、
メモ帳用紙がテーブルに置かれていたり、さらには椅子の向きがテーブルではなく年表台に向いていたりするなど、
周りの椅子と妙な違和感があるのだ。

オニロ「ほへー。すごいよアイム!それは気が付かなかった」

だって汚かったし。ボソッと独り言のようにつぶやいた言葉は、しっかりと二人の耳に届いた。

アイム「他の椅子は全部テーブル側に向かっていたし、ここ最近使われた形跡もなかった。
つまり、この編纂室の利用者はただ一人。集計班、あんただけってことだッ!」

得意気にそう語り、どうだと言わんばかりに集計班を指さすアイム。気分は上々である。
その勢いの良さにギャラリーのオニロから思わず拍手がもれる。
照れ隠しからか鼻頭を掻きながら、それで、とアイムはなおも続ける。

アイム「おそらく、あんたはこの部屋の存在を意図的に他の兵士に知らせていないと思う。
他の奴等から聞いたことないし。その理由はわからないけど」

それで2つ目の質問に繋がるわけだ、とアイムはギャラリーと化しているオニロに種明かしをするように話した。

アイム「『俺たちが新人だからかそれとも“希望の星”だからか?』
この質問に、あんたは『両方』と答えた。
だが、オレの推理では、新人だからこの部屋に呼ばれるという仮説は否定される。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

188 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその7:2014/05/22 22:59:46.00 ID:xgcP6DD6o
集計班「いやはや。アイム君、予想していたとはいえその予想を上回る素晴らしさだ」

笑みを含ませ、大物めいた口調で集計班は答える。だが、別段威厳はない。

集計班「アイム君の言っていることは概ね事実です」

おお!とオニロから歓声が上がる。アイムにいたっては得意気に胸を反らせている。

集計班「『1. この部屋は私しか利用者がいない』その通りです。
『2. “希望の星”だからあなたたちをここに呼んだ』それもその通りです。
あなたたち以外の兵士をここに招くことはしていません。
『3. 私は極度のめんどくさがりや。』これもその通り、いつからか私は掃除しない汚い部屋に
適用できる精神を手に入れました」

ただ、と集計班は続ける。

集計班「3. 参謀がこの部屋を知らない、というか私しかこの部屋を知らない。
これに関しては残念ながら誤りです」

アイム「え」


189 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその8:2014/05/22 23:01:04.65 ID:xgcP6DD6o
集計班「参謀はこの部屋を知っていますよ。そしておそらく、この部屋の汚さも知っています。
参謀は『シューさんの管轄内だから任せる』とだけ言って、この部屋の扱いを私に一任しました」

アイム「マジか」

集計班「マジです。あと、参謀以外にも数人この部屋の存在自体を知っている兵士はいますよ。
まあ誰も利用したことがないという点では、アイム君の言うとおりですけど」

惜しかったですね。大して惜しくなさそうに集計班はアイムを労った。

集計班「そして、なんで私は最後の最後まであなたたちに“そのような事実” を知らせなかったか。
まあ、ぶっちゃけますと、お二方のどちらかでもよかったんですが、私は期待していたんですよ」

オニロ「期待?何にですか?」

オニロの言葉にニヤニヤしながら集計班は答えた。

集計班「アイム君のように、勝手に筋道を立てて勝手に論理を立てて説明してくれることに、ですよ」


190 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその9:2014/05/22 23:02:30.03 ID:xgcP6DD6o
オニロ「アイム、怒って先に帰っちゃいましたよ」

集計班に利用されたことに気がついたアイムは顔を真っ赤にして、誰よりも早く編纂室を出ていった。
残った集計班は、自分の椅子に座り悦に浸っている。

集計班「まあ彼を利用するような形になってしまったことは悪かったと思っています。
お詫びに、今度の会議に納豆でも持って行こうかしら」

オニロ「それはなおさら彼の逆鱗に触れるだけのような…
あ、ところでどうしてこの部屋の存在を隠しているんですか?」

集計班「秘密基地のようなものです」

オニロ「え?」

キイキイと音を立て椅子が揺れ始める。

集計班「子どもは、自分だけの秘密基地に信頼できる仲間だけを集めて、一緒に秘密を共有します。
一種の連帯感のようなものです。私にとっての秘密基地が編纂室なんですよ」

あ、歴史を勉強してもらいたいというのは本当ですよ。集計班は忘れていたように付け加える。

191 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその9:2014/05/22 23:03:59.33 ID:xgcP6DD6o
オニロ「僕たちは集計班さんからしたら“信頼できる仲間”ということですか?」

椅子は一定の間隔で揺れ続ける。二人の上では筆記ペンが忙しなく動き回っている。

集計班「ええ、そうですよ」

うねる年表を眺めながら、間髪入れずに言葉を返す集計班。椅子は変わらず一定の間隔で揺れ続ける。

オニロ「どうしてそんなに信頼されているんでしょう…ボクたちはまだ会って間もないというというのに。もしかして…」


          ― ボクとあなたは以前どこかでお会いしているんでしょうか? ―


192 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 大戦年表編纂室パートその11 ラスト:2014/05/22 23:14:53.12 ID:xgcP6DD6o
椅子の揺れが止まった。
そこで初めて、集計班は扉の前に立つオニロを見返した。

集計班「…いえ、私はあなたと出会った覚えがありません。
あなたが記憶を無くしているように、私も記憶を無くしていない限りそれは事実でしょう」

オニロ「そうですか…」

しばらく部屋に静寂がおとずれる。筆記ペンの諸差音が上から微かに聞こえてくる程度である。
オニロは今一度、自分が立っている不思議な空間に魅せられていた。

集計班「そんなにここが好きですか?」

オニロの様子に気がついたのか、集計班は優しく声をかける。

オニロ「はい!」

集計班「そうですか…」

二人は黙って、部屋の中央に堂々とそびえ立つ大戦年表を眺めた。
開け放たれた扉から入り込む風で微かにその姿を揺らす年表は、二人の視線から
逃れようと恥ずかしがっているようにオニロには見えた。


集計班「先ほどの話ですがね…」

何分経ったか、年表から目線をオニロに戻し、集計班は再び語りかける。

集計班「もし、もし私があなたのことを知っていたとして、それを黙ってあなたと今こうして接していたとしたら…」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

193 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/05/22 23:16:12.52 ID:xgcP6DD6o
集計とかいう奴でしゃばりすぎだろ。ふざけんなよ。

・微修正
×:部屋の中央には巨大なテーブルと椅子が数脚並べられて
○:部屋の端には巨大なテーブルと椅子が数脚並べられて

194 名前:筍魂:2014/05/23 00:18:10.46 ID:OtRSqbL6o
集計班とかいう便利キャラ
おつ

195 名前:社長:2014/05/23 00:24:09.29 ID:QSZl2aQs0
社長はタネフフ枠ですね

社長「なんだよ、負けてきたのか。」

196 名前:誰か:2014/05/23 00:38:20.34 ID:qx5jJJrc0
おつ
集計班はどこまで知ってるのやら

197 名前:社長:2014/05/23 20:56:52.72 ID:QSZl2aQs0
アイム君がきれぼし脳になる日も 近い!近くない!

198 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 邂逅編その1:2014/05/27 01:08:26.09 ID:YOYNZyB6o
【K.N.C 180年 会議所 教練所 中庭】

山本鬼教官からの厳しいしごきを耐え抜き、今日もアイムは一人大の字で芝生の上に寝そべっていた。
鍛錬が終わってから夕食までの時間を、アイムはこうして身体の休息に充てている。
風切り音や虫の音色が耳に心地よく響く。目を閉じて、自然の音を聞く。
癒される。至高のひと時である。

筍魂「おつかれさまやで」

こうしてノイズが混ざることも稀にある。

アイム「…なんのようだよ。オレはいま忙しいんだ、話があるなら100年後にきく」

筍魂「こいついつも忙しくしてんな」

アイムは身体を起こして筍魂と向かい合う。

アイム「この間の弟子云々の話なら断ったはずだ。あんたのヘンテコ舞空術は怪しすぎる」

筍魂「ヘンテコ舞空術ではなく、戦闘術『魂』なんですがそれは…」

アイム「そもそも山本教官と話は付けてあるのかよ?」

筍魂「つけたぜ」

アイム「…」

筍魂「嘘ンゴ。本当は話してないンゴ」


199 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 邂逅編その2ラスト:2014/05/27 01:10:20.02 ID:YOYNZyB6o
アイムは盛大に溜息をついた。

アイム「どうしてオレに付きまとうんだ。まさかお前も、
オレが“希望の星”だからとかいう理由で狙っているんじゃないだろうな?」

筍魂「それは関係ない。俺はお前の実力に惚れ込んでいるんだ」

アイム「なんか面と向かって言われるとキモいな…」

筍魂「あのさぁ…」

アイム「そもそも戦闘術『魂』てのはいったいなんなんだよ?」

筍魂「戦闘術『魂』は、云わば精神と肉体の完全な融合を成し遂げる術だ」

アイム「なんか怪しいな」

筍魂「戦闘術『魂』は、なにもお前の技術を劇的に高めるといったことはしない。
お前の持っている地力を引き出すツールのようなものだと考えればいい」

アイム「地力を?」

筍魂「せやで」

アイム「どうすれば引き出せるんだ?」

筍魂「それは師弟関係にならんと教えられんなあ」

アイム「ぐっ…」
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200 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 編纂室入り浸り編その1:2014/05/27 01:12:12.68 ID:YOYNZyB6o
【K.N.C 180年 会議所 大戦年表編纂室】

ここ最近、オニロは昼下がりの決まった時間に編纂室に来ては、
夕飯の時間になるまでずっと入り浸っている日々を続けていた。

オニロ「ふむふむ。ふむふむふむ」

集計班「楽しそうですね。791さんとの鍛錬はいいんですか?」

オニロ「ちゃんと午前中に鍛錬はこなしていますよ。最近は詠唱の時間が早くなったと、師匠に褒められました」

地面を埋め尽くす紙束の上に寝転がりながら、オニロは嬉しそうに報告した。

集計班「それはよかった。まあ、ここを気に入っていただけたようでなによりです。
招待したかいがあったというもの」

オニロ「えへへ。でも案の定、アイムは来てないですけど…」

集計班「まあ想定内です」

飲料用抹茶を啜りながら、涼しげに集計班は語る。

オニロ「え。じゃあどうしてアイムを呼んだんですか?」

集計班「そんなことより、時は金なり。今日はK.N.C80年頃まで読むんじゃなかったんですか?」

オニロ「あ、そうだったそうだった!」

手元にある年表を漁り、熱心に読み始める。つい先程した質問など既に頭のなかから抜け落ちているようだ。
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