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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

301 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB討伐し隊編その2:2014/08/30 01:58:02.05 ID:PIM5.dsYo
たけのこ軍 埼玉「DBが逃げ出したということは大変な事態たま」

たけのこ軍 椿「最後のDB討伐戦が行われたのはいつでしたっけ」

たけのこ軍 オニロ「年表ではK.N.C132年に最新のDB討伐戦が行われて、それ以後DBに関する記述はありません」

きのこ軍 黒砂糖「…DBはその討伐戦の時に、会議所が捕まえた。そして、スクリプトと同じように地下に幽閉したんだ」

たけのこ軍 加古川「しかしスクリプトとDBが同時に逃げ出したということは、両者が手を組んでいるということは十分に考えられるな」

たけのこ軍 社長「DB君どこですか〜^^」

ただでさえ近年は大戦の関心度・士気が下がっている中で、DBが人里に出現したとなれば、
人々の不安は煽られ、より一層の大戦離れが起こりかねない。
それだけは大戦を運営する会議所からしたら、なんとしても避けたい事態だった。
すぐに、人里にDB捜索隊&救援隊を派遣する。
参謀はいの一番にそう主張し、ほとんどの兵士が賛同したが、ただ一人集計班だけはその案に異を唱えた。

302 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB討伐し隊編その3:2014/08/30 02:00:49.84 ID:PIM5.dsYo
きのこ軍 集計班「…連絡は少し待ったほうがいいとおもいます」

きのこ軍 アイム「…」

たけのこ軍 社長「アイム君 誰でもいい!!はいってくれ!!」

きのこ軍 参謀「なんでや。DBとスクリプトが逃げ出したていうんは、会議所や大戦にとって非常事態を指す。
早急に対処しないと大変なことになるで」

きのこ軍 集計班「我々会議所兵士の役目は“大戦の遂行”。
いま兵士の皆さんたちに事の次第を説明すれば、無用な混乱を招くだけでしょう」

きのこ軍 参謀「つまり周りには黙って、ワイらだけで事態の対処に当たるちゅうことか?それはおかしいでシューさん」

きのこ軍 アイム「…」

たけのこ軍「アイム!わかっているのか!おい!」

それまで呆然としていたアイムは社長の言葉に驚き咄嗟に立ち上がってしまった。全員の視線がアイムに集中する。
アイムは頭をフル回転させ、最適な言い訳を考えた。

きのこ軍 アイム「…ちょっと新種のスクワットを試そうと思って」

たけのこ軍 筍魂「おっ、そうだな」

赤面しながらおずおずと席に座るアイム。
もちろん、元凶となった社長を睨むのは忘れない。
しかし、バグった顔の社長にはそもそもどこに眼や鼻がついているのかもわからない。
仕方なくアイムは社長の眼がついていると思わしき顔の中央部、とりわけモザイクが多くかかった箇所を睨み続けた。

303 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB討伐し隊編その3:2014/08/30 02:05:30.38 ID:PIM5.dsYo
DB<ダイヴォー>という言葉を耳にした瞬間、アイムはまるで金縛りのように硬直したまま動けなくなってしまった。
DBという存在自体を今初めて知った。そんな単語すら聞いたこともない。
アイムは自らの記憶を探り、そう結論付ける。しかし、身体は“覚えている”。

今の自分が知りえなくても、過去の自分は覚えている。
自分の心と身体が相反している状況に、アイムは背筋が寒くなった。
咄嗟に同じ記憶喪失仲間のオニロを見やる。
オニロはアイムのように金縛りにあったりはしていないようだったが、
いつもの柔和な笑顔はなりを潜め、目を細めて思案しているようだった。

アイムの奇行で、場の雰囲気が乱れてしまい長い沈黙となって襲いかかる。
誰も喋り出せずにいるこの状況に罪悪感を覚えたのかはたまた耐え切れなくなったのか、
アイムが自分で会議を再開することにした。

きのこ軍 アイム「…DBとスクリプトってのが手を組んでるとして、オレたちだけで対処可能な敵なのかそれは?」

きのこ軍 集計班「可能です」

たけのこ軍 社長「ちなみにまあ嘘だけどね^^」

社長の言葉をいつも通り無視して集計班は語り始めた。
DB討伐複数小隊の結成。
詰まるところ、集計班の主張はこうだった。
きのこの山、たけのこの里、大戦世界に広がる未開の地、そして会議所。
この4方面にそれぞれDB討伐隊を派遣して、DB・スクリプトの捜索及び捕獲を行うというのだ。
そして、この作戦は会議に集まっている会議所兵士だけで行われるべきで、
一般兵士に無用な心配をかけさせないための配慮だというのだ。

304 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB討伐し隊編その3:2014/08/30 02:10:47.62 ID:PIM5.dsYo
きのこ軍 参謀「シューさんの考えは分かったが…隊を無駄に分けすぎちゃうんか?
確かに捜索には多方面同時進行作戦が一番やと思うが」
腑に落ちないでいる参謀を始めとした兵士たち。

きのこ軍 集計班「結局、会議所に駐留する以外の小隊については、
DB・スクリプトが見つかるまでの斥候と思っていただければ幸いです。
目標を捉えた時点で、残りの部隊も合流して叩けばいいのです」

たけのこ軍 ビギナー「DBを捕獲する、と言っていたけど斃さないの?」

きのこ軍 集計班「DBは狡猾で逃げ足がとにかく早い。幾度となくヤツと対峙しましたが、
瀕死の重傷を負わせることは出来れども、あと一歩のところでとどめを刺そうとすると逃げてしまう。
そんなヤツなのです」

DBのしぶとさは過去の歴史が既に証明している。討伐戦全てで、会議所側はDBに勝利し撃退こそすれど
討伐は叶わなかったのだ。
最後の討伐戦でようやく捕獲した時も、会議所側が想定していたよりも酷く時間がかかった。
捕獲こそ可能であれど、討伐にはさらなる時間と人員を要する。
そのような手間は欠けられないと集計班は暗に語っているのである。

305 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB討伐し隊編その6:2014/08/30 02:16:14.95 ID:PIM5.dsYo
たけのこ軍 加古川「だが、捉えたとしても今みたいにまた逃げ出してしまうリスクが有るんじゃないのか。
ならば、もういっそ討伐してしまったほうが…」

加古川の意見ももっともである。結局、DBやスクリプトが脱走した原因は未だに突き止められていない。
そのような状況下で捕獲して幽閉したとしても、再び脱走するだけではないか。
加古川の言葉に多くの兵士が賛同しようとしたその時――

きのこ軍 ¢「いや、捕獲するべきだ」

それまで終始黙っていた¢が静かにそう告げると、部屋はシンと静まり返った。
¢の言葉には、常人には表現できないような使命感とそれをも上回る焦燥感が入り交じっていた。
そしてその言葉に込められたいずれの思いも、他の兵士には理解できないものだった。
あるいは数人は彼の思いを理解していたのかもしれない。その一人が集計班だった。

集計班がチラと¢に目配りをする。二人の視線が一瞬交差する。
アイムは二人のなんでもない所作が気になった。

きのこ軍 集計班「DBは討伐せずに捕獲するようにしましょうか。余裕があれば討伐ということで。
まあまずは発見が先ですがね。いったいどこにいるのやら…」



緊急会議はその場で一時閉会した。
DB討伐隊は参謀指揮の下、すぐさま各小隊が編成され出発した。
アイムも、きのこの山方面部隊の一員として加わっていた。
一方、オニロは会議所部隊として大戦年表編纂室の「留守番」を言いつけられた。

306 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB討伐し隊編その7:2014/08/30 02:18:46.91 ID:PIM5.dsYo
きのこ軍 参謀『誰かが必ず編纂室に残っていなきゃいかんやろ。
全員がこの部屋を出払ったら、誰が歴史の改変を認識できるねん』

参謀はオニロにそう言い残し、部屋を去っていった。
オニロと集計班以外の会議所兵士は編纂室から続く階段を上がり、地上に戻っていった。

地上の彼らは、何者かによって行われている歴史改変を知る由もなく動き回る。
唯一その改変を知りえるのは、編纂室でじっとしている地下部隊だけ。
そして、編纂室で開かれる会議で地下部隊が、前回の会議から今回までに発生した
歴史改変の事実を伝えることで、初めて全員で情報を共有し合えるのである。

つまり地下部隊は、「歴史の生き証人」「一連の事件の監視者」として重要なポジションを担っているのだ。
思いの外重要な役職についてしまったとオニロが気づいた時には、
既にほぼ全員が地上に戻ってしまった後のことだった。

たけのこ軍 オニロ「もしかして…すごく重要な役職を任されてしまったんでしょうか?」

きのこ軍 集計班「まあ押し付けられたともいいますね」

集計班とオニロは苦笑して、これから幾度も味わうであろう脳シェイクに辟易とした。

307 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB討伐し隊編その7:2014/08/30 02:19:30.86 ID:PIM5.dsYo
更新終わり

これから、オニロ君はジメジメとした地下で脳シェイクを味わい続けるニートと化します。

308 名前:社長:2014/08/30 02:20:28.86 ID:DqpsOhiQ0
もつだぞ

アア、オワッタ………!!

309 名前:791:2014/08/30 02:24:23.70 ID:7Uhk.AVoo
お疲れ様!
社長どんな顔してるんだろう…

310 名前:社長:2014/08/30 02:33:15.64 ID:DqpsOhiQ0
非常に気持ち悪いにしきがお説

311 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB捜索会議編その1:2014/08/31 01:06:27.74 ID:8UdQd0uUo
【K.N.C 180年 会議所 大戦年表編纂室】

前回の緊急会議招集から数日経った後、
各部隊の定例報告を目的に再び会議所兵士たちは編纂室に集結した。

きのこ軍 集計班「では…会議を始めましょう」

掠れた声で集計班がそう宣言し、会議は始まった。
既にオニロと集計班はここ数日で少なくとも5回は歴史改変による脳シェイクを味わっている。

きのこ軍 参謀「DBとスクリプトは依然行方不明や。両軍の人里でも密かに捜索を続けたが、
DBたちが現れた形跡がない」

きのこ軍 アイム「つまり、DBたちは『未開の地』に逃げ込んだ可能性が高いってことか」

たけのこ軍 791「でも、もし『未開の地』に逃げ込んだとしたら、すごく厄介なことになるよね」

きのこたけのこ大戦世界では、会議所を中心とした時、
西部方面にはきのこの山が、東部方面にはたけのこの里が広がり、
そこにそれぞれの軍の兵士の一大集落を構え生活している。
会議所から見て、北方方面は険しい山々が構える山岳地帯であり、辺り一帯は樹海が広がっている。
北方方面一帯は『未開の地』とされ、大戦が続けられる中でいわば「タブー」とされてきた土地である。

312 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB捜索会議編その2:2014/08/31 01:09:17.87 ID:8UdQd0uUo
未開の地に逃げ込んでいるという可能性は、多くの兵士が懸念している事態ではあったが、
その事実が明るみになったことで、兵士たちの焦りの色はより一層濃くなった。

しかし、ただ一人、オニロだけはその話を聞き、興奮げに事態を打開する一言を述べた。

たけのこ軍 オニロ「DBたちの居所がわかったかもしれません!」

きのこ軍 参謀「ほんまかいな」

DB討伐隊長の参謀は目を丸くして続きを促した。
オニロは円卓テーブル上に、すっと一冊の本を置いた。
『きのたけ見聞録』と書かれた古びた本である。

たけのこ軍 オニロ「少しでも手がかりはないかと思って、編纂室の書物を読み漁ったんです」

たけのこ軍 抹茶「内容は…冒険書ですか?」

きのたけ見聞録。
KNC暦初期に書かれたこの本は、きのこたけのこ大戦世界上の各地を一人の冒険者が
見聞したものが編纂された旅行記である。
きのこの山、たけのこの里、会議所は勿論のこと、
当時未踏の地であった極寒のシベリア地方(両軍の兵士を罰するために送られていた流刑地 現在は観光地)や、
いま兵士たちが情報を欲している未開の地に関してまでもが詳細に記されている。

313 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB捜索会議編その2:2014/08/31 01:13:11.89 ID:8UdQd0uUo
たけのこ軍 抹茶「すごい本じゃないですか…でもそんな本の名前、聞いたこともなかった」

きのこ軍 集計班「誰も地図上の歴史に興味を示さなかったために
本の存在価値が薄れてしまっていたことが一つ。
なにより、当時の識者たちがこの本を丸っきりの出鱈目が書かれた書物だとして、
端から評価の対象にしていなかった」

きのこ軍 きのきの「え、どうして?」

きのこ軍 集計班「…単純な歴史書物とは評価し難い『重大な欠陥」があったからですよ」

きのこ軍 アイム「欠陥?落丁とかか?」

オニロは静かに首を振り、ボロボロになった本のページを大事そうにめくる。

314 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB捜索会議編その4:2014/08/31 01:16:35.66 ID:8UdQd0uUo
冒険書の保存状況は酷いものだった。四隅についている銀の留め具は原型を留めないほどに溶けて形を変え
本にこびりつき、金で刻印されていただろう表紙の文字・ロゴはススや埃ですっかりと隠れてしまっている。

きのこ軍 アイム「なんでそんな汚えんだよ…」

たけのこ軍 加古川「留め具や金箔が溶けているしススばかりだし、
過去に火災にでも見舞われた本なのかね?」

たけのこ軍 オニロ「ありました。このページです」

多くの兵士がオニロの下に集まり、冒険書を覗きこむ。
ヨレヨレになったページには、「未開の地」というタイトルの下に、鉛筆で簡単な風景画が描かれていた。
生い茂っている森に、明らかに人工と思わしき鳥居が森の奥まで列をなして立ち並んでいるという、
自然の中に人工物が混ざり合う奇妙な風景画だ。

315 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB捜索会議編その5:2014/08/31 01:17:35.31 ID:8UdQd0uUo
きのこ軍 ¢「鳥居…?」

たけのこ軍 オニロ「該当部分の記述を読み上げますね。」

『「未開の地」に関して興味深い話を耳にした。
とんがり帽子のような山々が連なる群峰の麓に広大な樹海が広がっていることは既に前項で述べたが、
その一角に【彷徨いの森】と近隣住民が呼んでいる森林地帯がある。森の内部には無数の道が存在し、
ある道を進んでいくとまた無数の道に分岐、進んだらまた分岐…と言った具合に正に天然の迷路となっている』

きのこ軍 アイム「それがどうしたってんだ」

たけのこ軍 筍魂「アイムはせっかち」

たけのこ軍 オニロ「続き、読みますね」

316 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB捜索会議編その6:2014/08/31 01:20:25.22 ID:8UdQd0uUo
『さて、入ったら二度と出て来られないと言われる彷徨いの森だが、
先祖代々森の近くに住んでいるご老人から伺った話によると、
どうやらある法則に従って分岐される道を進んでいくと森の【出口】に辿り着くというのだ。

その法則に従って最後の道を進んでいくと、木々で覆われていた森を抜けて、突然開けた場所に出る。
その場所には、今まで聞こえなかった小鳥のさえずりも、今まで森に隠されていたお日様をいっぱいに浴びて
花を咲かせる草木も茂る、楽園のような場所だ。
さらにその楽園を奥に進んでいくと、大量の鳥居が我々冒険者を出迎える。
鳥居はまるで道案内のように綺麗に立ち並び、冒険者を【宝の山】まで案内する。』

『鳥居に導かれて、目の前にある扉を開けると、
そこには過去と現在を自由に行き来することができる
タイムマシンフロア――宝の山――が広がってるというのだ。』

きのこ軍 参謀「!!タイムマシン、やと…!」

たけのこ軍 抹茶「なんと…」

317 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 DB捜索会議編その7:2014/08/31 01:24:46.43 ID:8UdQd0uUo
たけのこ軍 オニロ「
『宝の山とはタイムマシンのことだ。
なぜ、このような場所にタイムマシンが存在するのかはわからないが。
タイムマシンで現在と過去を自由に行き来できるということは、つまり過去の歴史を好き勝手に弄れるということだ。
私には過去改変による歴史の整合性や、倫理観などには専門家のようにとうとうと意見を述べることはできないが、
単純にタイムマシン自体には冒険家としての興味を惹かれる。

タイムマシンフロアがあるという話は、聞く者にとってはただの法螺話に聞こえるかもしれないが、
私はご老人の話してくれた内容を信じたい。
いつか、彷徨いの森を抜けて宝の山を見つけ出すことが私の夢であり冒険家としての終着点でもある。

タイムマシンフロアといちいち呼称するのは、どうも夢がない。
この際、この場を借りて、私自身がこの宝の山の名称を決めたいと思う。

私が夢を追い求める時間は限られている。その限られた時間の中で私は必ずや探しだしてみせる。


―――― 【時限の境界】


自身の決意を込める意味で、
魔法のタイムマシンフロアを以後こう呼びたいと思う。』

318 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/08/31 01:27:07.81 ID:8UdQd0uUo
更新してから、社長の台詞を入れ忘れてしまったと気づく。書きやすいと思ったわけだ(棒
ついに会議編は終わり、冒険がスタートする!?

319 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/08/31 01:28:41.59 ID:8UdQd0uUo
誤字だらけだなあ直したいけどもういいや

320 名前:791:2014/08/31 19:48:16.41 ID:HKw8Mxt6o
更新お疲れ様!

321 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その1:2014/09/10 20:15:32.14 ID:qehF/lNwo
【K.N.C 180年 北方方面『未開の地』】

きのこ軍 アイム「ここが誰も足を踏み入れたことのない場所か…」

数時間かけて辿り着いた鬱蒼とした山林地帯を前にして、アイムは止めどなく流れだす汗を腕で拭い取った。

きのこ軍 参謀「『きのたけ見聞録』によると、この森を北方方面にさらに数時間進むと、
件の『彷徨いの森』があるらしい」

手元にある見聞録を大事そうに眺めながら、参謀は森のなかを指さした。

アイム「森のなかにさらに森があるのかよ…」

たけのこ軍 ジン「そこに、『時限の境界』だったっけ?があるんすよね?」

きのこ軍 ¢「疲れたんよ。こんなに歩いたのは久しぶりなんよ。お家が恋しいんよ」

新生DB討伐部隊は、未開の地突入を前に小休止を取っていた。
DB討伐部隊の設立には、少し時間を遡る必要がある。


322 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その2:2014/09/10 20:18:41.57 ID:qehF/lNwo
━━━━
━━

【K.N.C 180年 会議所 大戦年表編纂室】

きのこ軍 参謀「一連の不可解な歴史改変、示し合わせたかのようなDBとスクリプトの逃亡、
そしてタイムマシンフロアを言われる『時限の境界』の存在。
これは、DBたちが『時限の境界』を見つけて、そこで歴史改変を行っているということに
他ならないちゅーことやないか?」

たけのこ軍 791「でも、『時限の境界』が存在する保証なんてあるの?」

たけのこ軍 社長「ゴクウの とほほほほ」

きのこ軍 アイム「この本には『重大な欠陥』がある。シューさんはそう言った。
つまり、まるでお伽話のような眉唾ものの『時限の境界』を、
さも存在するかのように語ってしまっていることで、
この本の歴史的書物としての価値は著しく下がっているってことだろう?
つまり、少なくとも当時の兵士たちは『時限の境界』なんて信じてなかったってことさ」

きのこ軍 集計班「アイム君の言うとおりです。
事実、この本の発表当時から識者の間では物議を醸し、結果として著者は表舞台から姿を消しています」

たけのこ軍 社長「時の流れは速い。ガムテープみたいにな」

たけのこ軍 オニロ「あるかもわからないタイムマシンフロア目指して、命がけで探す覚悟があるか…」

社長を除いて、編纂室は再び長く重い沈黙に包まれた。

323 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その3:2014/09/10 20:21:07.46 ID:qehF/lNwo
きのこ軍 参謀「どちらにしろ!」

参謀は立ち上がり、気落ち気味の周りを見回す。

きのこ軍 参謀「会議所は何者からの攻撃を受けている!
そして封印したはずのDBとスクリプトがその直前で逃亡している!
偶然と考えるにしても出来過ぎや!」

拳を振り上げて、周りを鼓舞するように参謀は力説する。

きのこ軍 参謀「ワイらの目的は『会議所の平穏を脅かす脅威を取り除くこと』!
そのために、DB・スクリプトを始め、ありとあらゆる敵対勢力を対峙する必要があるんや!
そして、この手で必ず脅威を抹殺する!!」

全員「うおおおおお!」

参謀の演説に共感した多くの兵士が、同じように拳を振り上げ、敵と立ち向かう覚悟を決めた。
ここに、新生“DB討伐部隊”の設立が宣言されたのだ。


324 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その4:2014/09/10 20:22:40.95 ID:qehF/lNwo
━━
━━━━

【K.N.C 180年 北方方面『未開の地』】

そしていま、未開の地へ足を踏み入れて数時間、
DB討伐部隊は早速森のなかを彷徨っていた。

¢「うぅ…僕らはもうここで死ぬんよ」

アイム「なに弱気なこと言ってるんだ。いくらあんたとはいえ怒るぞ」

¢「びえええええええええええええええええええん」

第一次DB討伐部隊は合計4名の兵士から構成されている。
隊長格のきのこ軍 参謀、会議所古参筆頭のきのこ軍 ¢、
たけのこ軍 ジンそしてきのこ軍 アイムである。
きのこ軍3名、たけのこ軍1名。一見すると、その人選には偏りがあるように見えてならないが、
パーティバランスは図られている。

前衛として『突撃兵タイプ』の¢とアイム、後衛には『防衛兵タイプ』の参謀と『衛生兵タイプ(魔法)』のジン。
前衛二人が火力を集中させ、後衛のビギナーが支援魔法で援護する。
防衛兵の参謀は随所に前衛と後衛をサポートする役割に徹するという布陣だ。
PT選考に関しては、本人の意思を最大限尊重し、志願者の中から参謀が選考した。


325 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その5:2014/09/10 20:24:18.59 ID:qehF/lNwo
ジン「薄暗くてジメジメした編纂室に居るよりも、まだ体を動かせている今のほうが絶対にいいすよ」

力強い言葉とは裏腹に、その声色は弱々しい。彷徨いの森の到着以前に、
既に森のなかを彷徨っている現状を鑑みると、不安になるのは当然だ。

参謀「編纂室はシューさんとオニロが頑張って守っているんや。ワイらも頑張ろう」

アイム「けッ…」

相変わらずアイムはオニロのことが気に入らない。
それは元々の二人の性格の違いが、水と油のように相反して交わらないことも関係するが、
オニロがヌクヌクと編纂室で自分の帰りを待っている現状にも、アイムは気に入らない。

326 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その6:2014/09/10 20:27:08.21 ID:qehF/lNwo
『わあすごいね、アイム!討伐隊に選出されるなんて!頑張ってきてね!』

PTメンバーが発表された際、オニロは諸手を上げてアイムのPT選出を喜んだが、
一方で馴れ馴れしく近寄るオニロにアイムはいらだちを募らせていた。

『ありがとよ。そちらも編纂室での“お留守番”、ガンバレヨ』

アイムは吐き捨てるようにオニロに言葉を投げかけた。
アイムを含む地上の討伐部隊は命を賭して、DB・スクリプトであろう敵と対峙する。
一方で、オニロを含む地下の編纂室部隊は、多少の脳シェイクを耐えながら
ただ歴史改変の観測に徹するだけ。

―――地上部隊と地下部隊では背負っている“責任”が違う。

たかが地下部隊風情が、地上部隊と同じ目線で言葉を投げかけてくることを許せない。
地下部隊としてのオニロの激励の言葉が、アイムの気に触ったのだ。

『うん、わかった頑張るね!ありがとうアイムッ!』

しかし、天真爛漫さを地で行くようなオニロの前ではアイムの皮肉も無効化されてしまった。
笑顔で返答するオニロに、アイムは怒鳴り散らしたい思いをぐっとこらえ、
口をヘの字に曲げて応対するだけだった。


327 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その7:2014/09/10 20:29:22.85 ID:qehF/lNwo
討伐部隊が未開の地に突入してから、数時間が経過した。
空は既に夕暮れ。未だ彷徨いの森どころか方角も見失った面々は、
目の前の樹海が刻一刻と漆黒の色を帯びてきていることに、焦りを感じていた。

¢「夜の行軍は非常に危険だ。どこか野宿できるような場所を探して、明日に備えたほうがいい」

参謀「せやな。では、ここをキャンプ地とする!」

アイム「おい…あれはなんだ?」

アイムが指をさす遠くの方向に、微かではあるが一点の光が闇の中で浮かび上がっていた。

ジン「あれは…家かな?もしかして」

参謀「敵の罠かもしれん。慎重にいくで」

歩いて行った先には、一軒の民家が、煌々と明かりを放ちながら、
ぽつねんと暗い森のなかでその存在を主張していた。

328 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その8:2014/09/10 20:31:56.50 ID:qehF/lNwo
参謀「こんなところに人が住んでるんか?」

アイム「人がいるなんて、『未開』でもなんでもねえじゃねえか」

¢「調査され尽くしてないという意味では未開だろ」

ジン「煙突から煙が出続けている。誰かが生活しているんだ」

と、家の扉が唐突に開け放たれる。4人は思わず臨戦態勢を取り、
扉を開けた目の前の人物に目を凝らした。


??「家の前がうるさいと思ったら、いったい誰だ…ん?」

家主はDBでもスクリプトでもなかった。
顔に刻まれたしわは、家内からの明かりに当たり濃淡を作り、よりくっきりと見えた。
男は年齢以上に年老いて見えた。
怪訝な顔をして討伐隊を見回す男だったが、
参謀と¢の姿を視界に捉えると、一瞬眉間にしわを寄せ、すぐに目を丸くした。

??「もしかして、参謀と¢か…?」

声をかけられた二人は、眩い光に目を背けつつも男の顔を捉えると、同様に目を丸くした。

329 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その9:2014/09/10 20:34:02.25 ID:qehF/lNwo
¢「まさか…こんなところで会えるなんて」

参謀「ひっさしぶりやなあ。これを奇跡というんか…いやまあ必然ちゅうべきやな」

??「俺からすると、お二人に会えたのが正に奇跡さ」

3人でワイワイと盛り上がる中、
ジンとアイムは目の前の出来事をただ見つめることしかできなかった。

アイム「お、おい。あんたら知り合いなのか?」

参謀「ん?ああ、勝手にワイらだけで盛り上がっとったな。この人は…」

??「おや、その本は…また随分と懐かしいな」

アイムが手に持つ『きのたけ見聞録』を見て、男は感慨深げにそう呟いた。

??「そんな本をまだ持っている人がいるなんて、作者として冥利に尽きるな」

アイム「…まさか、あんたは」

参謀「そうや。この人こそ、『きのたけ見聞録』の著者であり、冒険家でもある…」


??「元・たけのこ軍兵士のスリッパだ。どうぞよろしく」

冒険家スリッパは落ち着き払った様子で静かに手を差し出した。

330 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その9:2014/09/10 20:41:14.85 ID:qehF/lNwo
設定段階よりだいぶスリッパさんが老けている…ごめんなさいお許しください。

つばさくん、今日のカードメモよ
『参謀の知恵』 - 2012/03/24 作成
http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/431/card-14.jpg

当時からプロットが少し変わっているので、あまりフレーバーテキストに意味はありません。

331 名前:社長:2014/09/11 17:20:01.41 ID:64ShRK160
つばさくんもつだぞ。

332 名前:誰か:2014/09/11 23:32:24.24 ID:lDiawbZA0
参謀てこんな方言キャラだっけ。
ともあれ更新おつ

333 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 未開の地突入編その9:2014/09/11 23:52:52.18 ID:3YIFTwtEo
参謀が方言キャラとしても書きづらいのは公然の秘密だよ〜
よくわからんのじゃ!

334 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 最後の謎二人の会話編その1:2014/09/14 00:45:58.39 ID:TPgFvQZAo
━━
━━━━

【K.N.C 180年 会議所 大戦年表編纂室】

編纂室で生活する地下部隊兵士は数えるほどしかいない。
多くの会議所兵士が編纂室に留まってしまえば、地上の業務は放置され続け、
事情を知らない兵士に多大な不安を与える。
少しでも不安にさせないためにも、大部分の兵士は地上に戻らなくてはいけない。
そしていつも通りの業務につき、恒久の平和を演出するのだ。

だから私たちは地上に戻らなくてはいけないんです。
と、表向き立派な理由を語るが、大方の兵士は地下での脳シェイクを金輪際味わいたくないというのが
本音である。地上に戻る兵士たちは仏頂面でいかにも“本当は戻りたくないのだが仕方なく”
といった顔を貼り付けて戻っていったが、地下に残された兵士はそれを知ってか知らずか、
嘆息して仮面の表情を貼り付けた彼らを見送るのだった。

丑三つ刻。地下の大戦年表編纂室は、上空に飛び回る本や筆記ペンたちの動作音を抜きにすれば、
今日も耳鳴りがする程に静まりかえっている。
地下部隊のほとんどの兵士は巨大本棚の背後に設置してあるベッドで寝息を立てている。
オニロも死んだように眠っている。昼夜問わず繰り返される歴史改変に少しやつれ気味だ。
静かに休めるこの一時を噛み締めながら、布団にくるまっている。


335 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 最後の謎二人の会話編その2:2014/09/14 00:49:35.88 ID:yhiyNT8go
そんな丑三つ刻。
灯りが落ちた暗闇の中で、ある一人の兵士は床につくことなく、静かにロッキングチェアを揺らしていた。
一定リズムで、木々がこすれる音がシンとした部屋に響く。
考えに耽る時、物事に集中する時。身体を知らず知らずのうちに揺らしてしまうのがその兵士の癖となっていた。
それは座って作業をする場合でも同じ。知らず知らずのうちに身体の揺れが椅子に伝わってしまう。

少し前までは、いくら音を出しても怒られることもなく―そもそも怒る人もいなかったのだが―
つい最近ではオニロに「うるさいです」とジト目で注意されて以来控えていた。
しかし、こんな夜中でかつオニロが寝ている間くらいは許されるだろう、と
兵士は長年この部屋で使い倒してきた椅子に腰掛け、思う存分身体を揺らしていた。

「少し響きますよ」

闇夜の中でかけられた声に、揺らしていた椅子が前のめりになってしまう。

「なんだあなたでしたか…驚いて心臓が止まるかと思いましたよ」

すぐに声の主に気がついた兵士は、暗闇の中で浮かび上がってきた別の兵士の姿を捉え、胸をなでおろした。あなたは普段と容姿・態度なにからなにまでが違うから一瞬誰だかわからなくなりますね。
そう文句を垂れながらも、声の主に目の前の椅子を勧める。


336 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 最後の謎二人の会話編その3:2014/09/14 00:51:53.15 ID:yhiyNT8go
「もう一度、計画の確認をしておきたくて」

椅子に腰掛けながら、囁くような声で、既に腰掛けていた兵士に語りかける。

「今のところ、一連の事態は『預言書』に書かれた内容通りに進んでいます」

「そのようですね」

飲料用抹茶を口に含み、椅子を微かに前後に揺らしながら先を促す。

「救世主の一人は“計画通りに”編纂室で本の虫となった。
編纂室で歴史改変がおこなわれているという事実を確認した。
DB討伐部隊が編成されて、救世主の一人を含む数人は未開の地へ出発した。ここまで手筈通りです」

しかし、と兵士は顔を曇らせる。暗闇の中のため、その表情の変化は伝わらなかったが。

「いくらきのたけ世界の“滅亡”を防ぐためとはいえ、このような…
『預言書』に書かれた内容通りに事を運ぶのは、私としては少し気が引けます」

「二人の救世主が世界を存亡の危機から救うのです。十分なシナリオじゃないですか」

「しかし、しかし…世界の存続と引き換えに 
―― 『二人の救世主が命を落としてしまう』というのは、いくらシナリオ通りとはいえ…」


337 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 最後の謎二人の会話編その4:2014/09/14 00:54:23.02 ID:yhiyNT8go
「あの二人に情でも移りましたか?」

鋭い言葉に、うっ、と兵士は言葉を詰まらせる。

「そういう事ではありませんが…シューさん。
いくら何でもこんな結末はあんまりです。救世主として周りが持て囃して、勝手に持ち上げて、
利用するだけ利用して。そして、その役目が終わったら、あっさりと死ぬなんて…」

シューと呼ばれた兵士は、その兵士の言葉を手で遮る。
暗闇の中でぬっと出てきた手のひらに、思わず仰け反りたい気分になるがぐっと堪えた。

「“私”と“あなた”はいままで、『預言書』の通りに歴史を進めてきた。
どんな出来事・事件であってもです。きのたけ世界のため、会議所のため…違いますか?」

集計班の言葉に、兵士はゆっくりと頷く。意味をよく理解するように。

「その不文律を、あなたはいまさら破ろうというのですか?」

「い、いえ。そんなわけではありません」

集計班の言葉に、兵士は慌てて何度か首を振る。その言葉に、そうですか。と、
言葉とは裏腹に到底納得しない表情で、集計班は椅子にもたれかかる。
微かに椅子から悲鳴のような音が漏れる。


338 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 最後の謎二人の会話編その5:2014/09/14 00:57:30.71 ID:yhiyNT8go
「わかればいいんです。『預言書』の内容通りに事を進める私たちの使命は、変わることはないでしょう」

もっとも。その後に続いた集計班の言葉に、兵士は自分の耳を疑った。

「――そんな紙切れ同然の『預言書』に頼りすぎても、頭が固くなるだけですがね」

常日頃、『預言書』の通りに動けと、口を酸っぱくする程に説明していた、
杓子定規な集計班の言葉とは思えない。
兵士は思わず聞き返そうとしたが、

「話は終わりです。こんな時にオニロ君あたりが起きてきたら、なんと説明したらいいやら」

話は切り上げられてしまった。真っ暗の虚空を見上げたまま動かない集計班を見つめ、
これ以上の話はできないと判断し、兵士は立ち上がる。
そのまま、とぼとぼと編纂室を出ようとする兵士に、少し待ってください。
と、集計班は先程とはうって変わって優しい声色で最後に語りかけた。

「計画は順調です。ですが…たとえ、順調に立ち回らなかったとしても、
それはあなたの“責任”じゃない。
私が保証します。
なにか問題が発生した時。慌てないことです。
私に頼ろうとせず、まずは自分で事態の本質を見極めることです」

集計班の真意は図りかねたが、兵士はその言葉にひとまず頷き、編纂室を後にした。

339 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 最後の謎二人の会話編その6:2014/09/14 00:59:11.13 ID:yhiyNT8go
兵士が出て行った扉をじっと見つめ、暫く立った後に集計班は視線を落とす。
自らの手に握られている、隠し持っていた封筒。
あの兵士が来た時に、テーブルに置いてあったものを急いで隠したのだ。

自らが自らの意志で、歴史を変える。

――『預言書』を白紙に戻す。

集計班の言葉どおり、
この封筒には、二人が呼んでいる『預言書』をただの白紙に戻すだけの十分な効力が備わっている。

340 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 最後の謎二人の会話編その7:2014/09/14 01:00:36.59 ID:yhiyNT8go
結局、当初の予定とは異なり、参謀に封筒を渡す暇はなかった。
葛藤による葛藤が判断を鈍らせたのだ、と集計班は自身の優柔不断さを悔いる。
仕方がないので、明日にでも誰かに頼んで地上の郵便受けに投函してもらおうか。
今更ながら、編纂室に幽閉されてしまうことになった自身の境遇に頭を掻いた。

この封筒を目的の人物に渡すことによって生じる効果を、集計班自身は推測することしかできない。
その効果を“確認”するだけの時間が、彼にはもう残されていない。


しばらくして、いつものように椅子を揺らし始める。規則正しく。一定のリズムで。
暗闇の中、思いの丈を声に出してつぶやく。
誰もいない部屋で、自らの罪が誰かに赦免されることを願うように。

「…本当にごめんなさい」

弱々しい謝罪は、椅子の音とかぶさり、闇夜に消えていった。


341 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 :2014/09/14 01:02:18.55 ID:yhiyNT8go
更新終わり
約束の時が刻一刻と迫っております。

342 名前:社長:2014/09/15 00:02:11.75 ID:3OTCUq5I0
いいぞ。

343 名前:791:2014/09/15 07:42:25.38 ID:REOI4nNwo
更新おつ!

344 名前:きのこ軍:2014/10/11 11:58:40.07 ID:SNmceNPE0
唐突なミニ設定のコーナー。

・大戦年表編纂室
wiki図書館直下に存在する秘密基地的存在。
きのたけワールドの"歴史改変"を無効化できる場所として、
きのたけ兵士の最終防衛ラインとして活躍中。
ここを破壊されると、誰も歴史改変を知覚できなくなって詰むらしい。
部屋には筆記ペンや古紙たちが生物のように動き回っているが、
全ては魔法の仕業。大戦場と同じく、編纂室にも
巨大魔法陣が展開されて、その魔法動力で動いている。
実はきのたけの"歴史"を秘密裏に吸収しているという裏設定がある。これ結構重要な設定。
きのたけワールドの"歴史"(書物等)を人々から
知らず知らずのうちに奪い、
歴史を喰らうことで編纂室は編纂室のままでありで続ける。
歴史書物が編纂室にたくさん置いてあるのはその象徴ともいえる。
まだまだ謎が多い編纂室。乞うご期待。




345 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/10/19 13:30:14.65 ID:gxtMcDpYo
来週更新予定

346 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 スリッパの復活その1:2014/10/26 21:34:44.43 ID:MRV7iwe6o
【K.N.C 180年 未開の地 スリッパ邸】

スリッパ「しかし驚いた。まさかお前たちがこんなところまで来るなんて」

スリッパは目の前の“旧友”たちを前に目尻を下げて懐かしんだ。

参謀「俺らも驚いたわ。会議所から去って学者になったのは知ってたんやがな」

¢「ぼくらもつい先日見聞録を読んで、スリッパのその後を知ったんよ」

アイム「あんた達知り合いだったんだな」

カップに注がれたスープを手に取る。温かい。

参謀「大戦初期の英雄的存在やからな、スリッパは」

¢「スリッパの活躍は、当時の多くの兵士に感動とやる気を与えたんよ」

スリッパ「…」

スリッパは二人の言葉には答えず、暖炉の中に薪をくべた。
木々のはぜる音が小気味よく室内に響き渡る。

347 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 スリッパの復活その2:2014/10/26 22:08:16.77 ID:MRV7iwe6o
スリッパ「『時限の境界』を探しているんだったな」

話は本題に進んだ。

アイム「そうだ。タイムマシンフロアなんだろ、そこは?」

スリッパ「そうだと思う」

アイム「思う?なんだか自信が無い言い方だな」

スリッパは苦笑した。

スリッパ「何しろあの見聞録を書き上げたのは随分前だ。記憶も若干薄れているし、
何より私は其の事で学会から酷い目にあったからね。自信が無くなってしまうのも仕方ないというものだ」

人目から隠れるように暮らしているのも、それが原因さ。スリッパは手狭な室内を見渡した。
スリッパ邸は、正に未開の地の中心に位置している。木造のウェアハウスはスリッパが自分で建てたものだという。

スリッパ「私は人里離れたこの僻地で、メイドのサラと一緒に余生を過ごしてきた。
きのこたけのこ大戦や会議所関係の世俗から切り離された、この未開の地でね」

スリッパの傍に立つメイドロボ・サラは無言でスリッパの話をじっと聞いている。

スリッパ「申し訳ないが、お前たちの役には立てそうにないよ」

スリッパは寂しく笑いかけた。暖炉の焚き木のはぜる音がよく響いた。
一瞬の沈黙の後。

アイム「それはどうかな」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

348 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 スリッパの復活その2:2014/10/26 22:10:18.91 ID:MRV7iwe6o
アイム「少なくとも、あんたが書いた『きのたけ見聞録』は、希望と自身に満ち溢れた文章だった。
嘘か本当かもわからない宝の山を見つける。文章の中からその思いがひしひしと伝わってきた」

あんたが冒険家としての矜持を失っていなければ、とアイムは続ける。

アイム「今も冒険家スリッパは枯れ果てることなく生き続けているはずだ」

アイムの言葉に参謀も同調する。

参謀「アイムの言うとおりや。それに、人里離れた僻地に住居を構えたと言っているが、
人の目につかない場所はこの『未開の地』以外にも数多く点在する。
わざわざここに住んでるちゅうことは、宝の山たる『時限の境界』に少なからず未練があるってことやないか?」

二人の言葉に、スリッパは目を閉じて少しの間何かを考えているような素振りを見せた。
一瞬の沈黙の後、徐ろに目を開き後ろに控えるサラに声をかけた。

スリッパ「なあサラ。俺は冒険家だったよな。今も昔も夢を追い続けてきた。それを忘れていたようなんだ。
俺はもう一度、あの頃に戻ってもいいんだよな?」

サラは無表情のままで答えない。しかし、サラの態度はスリッパの言葉に肯定するような、
温かみのあるものであった。少なくともスリッパにはそう感じられた。
二人は常に言葉を介さずにお互いの気持を理解しあってきた仲だった。

スリッパ「アイム、参謀。それにみんな、ありがとう。俺は冒険家スリッパだ。忘れていたよ」

スリッパは立ち上がった。先ほどまでのゆったりとして諸動作はそこにはない。

スリッパ「明朝、出発しよう。私もまだ『時限の境界』に辿り着けているわけではないが、
何らかのヒントは与えられるはずだ」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

349 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 スリッパの復活その4:2014/10/26 22:24:50.14 ID:MRV7iwe6o
明朝。スリッパ邸を出た一行は『時限の境界』が存在すると言われる彷徨いの森の入り口へと戻ってきた。

スリッパ「見聞録にも書いてあったかもしれないが、彷徨いの森の内部は幾多の道が分岐して、正に天然の迷路だ。
俺とサラも何度か入ってみたことはあるが、すぐに来た道がわからなくなった。帰って来られたのは幸運だった」

ジン「ということは、ただ闇雲に探そうとしても見つからないどころか生きて帰れないなんてことも…」

ジンは顔を青ざめた。

参謀「なんか手がかりはないんか?ある法則に従って進んでいけばたどり着けるんやろ?」

スリッパ「森の内部は、それぞれ分岐点毎に開けた場所が用意されている感じだ。
来た道も含めて東西南北の4つの方角に道が伸びている。
それぞれの分岐点毎に、4つの道から一つ選んでまた次の分岐点に向かっていく」

350 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 スリッパの復活その5:2014/10/26 22:27:23.10 ID:MRV7iwe6o
¢「道を進んでいくとその分岐点エリアにたどり着いて、また…といった感じで同じ光景が広がっているのか?」

¢の質問にスリッパは自嘲気味に答えた。

スリッパ「正にその通りだ。分岐点毎の風景は全く同じ。
何か違いはないかと周りをグルグル見回してみたが、全く違いはなかった。
目が回って気持ち悪くなったくらいだ」

その時、これまでただ話を聞いていただけのアイムは、スリッパの言葉に何か違和感を覚えた。

目が回る。気持ち悪い。

この言葉に、既視感を感じたのだ。つい最近、自分自身がこの言葉に似たような体験をした。なんだったか。
記憶喪失と判って以来、自分の記憶を呼び戻すということに若干の抵抗があるアイムだったが、
必死に自分の記憶を探る。

―― 集…班「今から、ある部屋で歴史のお勉強を…てもらい…す」
―― オニ…「気持ち悪いよおアイ…」
―― ア…ム「オレに向かって吐いた……おかないからな」
―― 集計班「宛先不明の置き手…で、私はこの部屋の存…に気がつき…した」

――― 集計班「『大量の書物の前で“←←←←←…←←…← そして最後に祈れ”
           これは困難を打破する魔法の呪文なり。さすれば道は開かれる』とね」


アイム「…思い出した」

記憶喪失となって以来、初めてアイムは自らの記憶を呼び覚ますことに成功した。

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

351 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 スリッパの復活その6:2014/10/26 22:28:56.18 ID:MRV7iwe6o
アイム「大戦年表編纂室の行き方ともしかして同じなんじゃないか。
シューさん曰く『同じ場所をひたすらグルグルと回り続けて、最後に祈ると道は開かれる』」

スリッパ「つまり、彷徨いの森の奥に『時限の境界』があるというのは単なる我々の想像で、
実際はすぐ傍に存在しているということか?」

アイム「それはわからない。だけど、シューさんが誰かわからない野郎から貰った手紙には
『困難を打破する魔法の呪文』として、その行き方が掲載されていた」

彷徨いの森の攻略手順も、編纂室と一緒なんじゃないか。
アイムはそう言っているのである。

¢「アイムの言うことは一理ある。だが、それはあくまで可能性の一つだ。そのまま突入するのは危険だと思うんよ」

アイム「だが、それ以外に選択肢はあるか?冒険家スリッパは長年未開の地にいて、
未だ彷徨いの森突破の糸口を掴めていない。ならば、少しでも可能性が高いほうに賭けるのは当然じゃないか?」

¢「賭けに失敗してみんな帰れなかったら意味が無いんよ」

¢はあくまで慎重論を貫く。元来、用心深い性格で数多くの窮地を救ってきた兵士だ。

352 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 スリッパの復活その7:2014/10/26 22:30:54.85 ID:MRV7iwe6o
ジン「どうなんでしょう。集計さんが貰った手紙の主が誰だかわかりませんが、
存在するかわからない時限の境界と編纂室をつくった人物が同一だと考えてみるとどうでしょう」

参謀「編纂室には巨大な魔法陣が展開されているんやったか。
編纂室の運用方法や仕組みもまだ解明されておらんし、ジンさんの言うとおり、
編纂室と時限の境界で攻略手順が一緒であるという可能性はあるな」

アイム「討伐隊が14日以内に会議所に戻らなかった場合は行方不明として、
別の討伐隊を組むように決めてある。たとえ俺たちがここから戻れなかったとしても、
誰かが俺たちの遺志を継いでくれる」

¢「ぐぬぬ」

議論は決した。討伐隊は誰しもが自らの生命を賭けて任務遂行に当たる覚悟を持っている。
それは今更言うまでもないことだった。

スリッパ「話は終わったようだな。ではそのように進む手筈でいいのかな?」

アイム「あんたはいいのか。なにも俺たちに付き合わなくてもいい。危険な旅だ」

何をいまさら、とスリッパはニヤリと笑った。

スリッパ「冒険家が自分の生命の一つや二つ、怖がっていてはやっていられない。
寧ろ、お前らには感謝してるんだ。ここで最期を迎えられたら、それはそれで本望だ」

なあサラ。問いかけられたサラは、わずかに首を縦に振りスリッパに応えた。

参謀「じゃあ決まりやな。彷徨いの森に突入するぞ」

DB討伐隊とスリッパ一行は、光が当たらない暗闇の森へと歩みを進めていった。

353 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 彷徨いの森編その1:2014/10/26 22:32:13.32 ID:MRV7iwe6o
【K.N.C 180年 未開の地 彷徨いの森】

彷徨いの森は、映える木々は不格好な背格好で兵士を迎え、小鳥さえ囀らない不気味な空間だ。
森全体の薄暗さは兵士たちを暗澹たる気持ちにさせる。

アイム「ひたすら左に曲がっていって、グルグルと回り続けるぞ」

参謀「何周すればいいんや?ワイらにはわからん」

編纂室が会議所兵士に周知されて以来、大魔法使いの791によって編纂室とwiki図書館は
自由に出入りできるようなワープエリアがつくられていた。

アイム「それは忘れた…」

¢「アイム 無能」

354 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 彷徨いの森編その2:2014/10/26 22:35:16.39 ID:MRV7iwe6o
森に突入してから数時間。一行はひたすら周辺の場所を回って歩いていた。
何十周目に入り、森もより鬱蒼とし薄暗く不気味になってきていた。

アイム「なんだか似たような体験をしたことがあるような…」

編纂室へ向かう途中、だんだんと図書館が薄暗く不気味になっていった状況と似ている。

スリッパ「おい…なんだあれは」

スリッパが指差す方向には、巨大な石像が道を塞ぐようにそびえ立っていた。
きのこる先生とたけのこる先生の彫像だ。代わり映えのなかった風景に突如として現れた。

ジン「なんでしょうこれは…こんなもの当然先ほどまでは無かったものですし…」

参謀「道を完全に塞いどるな。迂回して進むか?」

アイム「いや。これがきっと最後の関門なんだ」

『最後に祈れ』

集計班が言っていた、最後の攻略手順だ。
この彫像に祈りを捧げれば、道は開かれるのではないか。
アイムは半ば確信に近い思いでいた。

アイム「みんな頼む。この像に向かって、祈ってくれないか」

手を合わせて全員は必死に祈る。頼む、頼むから時限の境界に連れてってくれ。
目を閉じ、一行はきのたけ像に向かって祈り続ける。困難な現状を打破するために。
その思いに応えるように、一瞬の後、彫像は何らかの力に引っ張られるように脇に退いた。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

355 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 彷徨いの森編その3:2014/10/26 22:39:53.08 ID:MRV7iwe6o
心地よいそよ風。サンサン降りそそぐ陽を目一杯浴びながらすくすくと育っている草花。
嬉しそうに飛び回る小鳥たち。
先ほどまでとは何一つ違う光景に、討伐隊一行は口をあんぐりと開けて驚きを見せた。

参謀「ここが、見聞録に書かれていた時限の境界なんか」

見聞録に書かれているように、そこは楽園のような場所だった。
鬱蒼としていた木々は参謀たちの背中に位置している。そよ風に草原の草花が気持ちよさそうにゆれている。
まるできのたけ山の牧場のようだ。むしろ牧場よりもはるかに風景は彩り豊かだ。

スリッパ「タイムマシンフロア自体はこの先にある筈だ。先を急ごう」

スリッパとサラは先に進んでしまった。

アイム「あ、おい!待てってば!…ん?」

新緑に芽吹く草原の中に、クレーターのように地面がえぐれ土肌が丸見えとなっている箇所が点在していることに
アイムは気がついた。何か奇妙に感じられた。

アイム「モグラが掘り返したのか?いや、だけど…」

参謀「おいアイム、置いてくぞ」

アイム「今いくよ」

後ろ髪を引かれる思いながら、アイムは一行を追いかけるべくかけ出した。

356 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 彷徨いの森編その4:2014/10/26 22:41:14.71 ID:MRV7iwe6o
小高い丘を登ると、眼前には目がちらつくほどの朱塗りの鳥居が一直線上に敷き詰められている。
異次元に吸い込まれそうな鳥居群は、この場所には明らかに異様な存在だ。

スリッパ「まるでこの世の場所とは思えない。幻想的だな」

うっとりとする冒険家を尻目に、討伐隊は先を急ぐよう促す。
一行は鳥居をくぐり、奥に進んでいく。
所狭しと並ぶ鳥居に隠され、外の状況を確認することはできない。
まるで世界とは切り離されたような異次元に迷い込んだようにアイムには感じられた。

357 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 彷徨いの森編その5:2014/10/26 22:43:26.95 ID:MRV7iwe6o
意外にも鳥居の出口はすぐだった。

スリッパ「あれが…時限の境界のタイムマシンフロアか」

そびえ立つ石壁が鳥居を遮り、鳥居の切れ目つまり最後の鳥居の先には、扉がちょこんと建っているだけだ。

アイム「あの扉の先がタイムマシンフロアてことか?意外と呆気無いな。
もっとどでかい宮殿みたいなダンジョンを予想してたんだけどな」

¢「扉の奥がもっとどでかいダンジョンなのかもしれないんよ」

参謀「ここまで来てなんやが、時限の境界ちゅうんはどんな場所なんや?」

スリッパ「俺にもよくわからない部分が多いが…タイムマシンフロアであるとは聞いている。
自分が来た扉を『K.N.C180年の扉』とすると、他のフロアにある扉は『各年の扉』として存在しているらしい」

ジン「つまり、各フロアの扉を開ければその年代に行くことができるってことですか?」

スリッパ「そういうことになるが…」

アイム「ごちゃごちゃ言ってないで、とっとと行こうぜ。こうやって時間を使っている間にも、
大戦の歴史は書き換えられているかもしれないんだ」

¢「せやな。でも慎重に行くんよ。歴史を書き換えた犯人と鉢合わせするかもしれない」

¢の言葉に頷き、アイムは静かに、目の前の扉を開けた。
時限の境界。大戦の歴史を書き換える犯人が潜んでいるだろう場所。
各年代に行き来できるという夢のようなタイムマシンフロアにて、潜んでいるだろうDBたちを討伐すればいい。
討伐隊の思惑はまさに単純至極だ。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

358 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/10/26 22:46:03.70 ID:MRV7iwe6o
更新終わり。ようやく本題の時限の境界へ突入した。
長かったゾ

時限の境界の元プロット
『時代錯誤の境界』 - 2012/03/10 作成
http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/451/card-12.jpg

次回からタイムマシン使って時をかけ始めるぞ。

359 名前:社長:2014/10/26 22:47:22.53 ID:XUiZ9x7c0
乙。ときのはぐるまさえ あれば…

360 名前:791:2014/10/26 22:52:33.29 ID:n30uBEAgo
更新乙!
次の更新も来週かあ

361 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その1:2014/11/01 23:36:25.19 ID:mwuzjAiIo
【K.N.C 180年 時限の境界】
扉を開けて入った先には、薄暗い吹き抜けの広間が広がっていた。

スリッパ「ここが…時限の境界か」

眼前に広がる“宝の山”を長年追い続けてきたスリッパだが、その反応は意外と冷静だった。
メイドのサラも無表情のまま、スリッパのすぐ後ろに控えている。興味を持つ持たないというよりかは、
感情を持ち合わせていないかのような態度だ。

スリッパ「時限の境界の内部はこのような作りになっていたのか…なるほど、うんうん」

ブツブツと独り言のように呟き、スリッパは何度も辺りを見回す。
千本鳥居で一行を出迎えた和風の外観とは打って変わって、内観は西洋風の造りそのものだ。
薄暗くジメジメとした室内は、教会がもつ神聖さと、埃が舞う薄汚い穢れさをどちらも併せ持っている。

参謀「しかし、扉ばっかりやな。あの扉一つ一つが各年代に移動できるワープ装置ちゅうことか」

広間を取り囲むように10枚の扉が円状に並べられている。
扉にはそれぞれ0から9の番号が割り振られているようで、アイムたちが入ってきた扉には
「0」が刻印されていた。

362 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その2:2014/11/01 23:39:34.73 ID:mwuzjAiIo
アイム「オレたちが入ってきた扉がK.N.C180年の【基点の扉】というわけかッ…ん!?」

自分たちが入ってきた扉、つまり【0の扉】を開けようとアイムはドアノブを回したがビクトモしない。
つまり、アイムたちは時限の境界に閉じ込められてしまった。

アイム「おいおい閉じ込められたぞ。どうやって出ればいいんだ」

¢「すごく嫌な予感がするんよ…僕の予想が外れることを願うんよ」

スリッパ「どこかに出口はないのか」

ジン「見てください。扉の間に通路がありますね」

北・東・西にそれぞれ通路が開かれている。先に進めるようだ。

スリッパ「ふむふむ。なるほど、つまりこの扉に付いている数字はつまり各年の一桁台の数字が…
これは実に興味深い…」

アイム「お楽しみのところ悪いが、先に進むぞ冒険家さん」

討伐隊の目的はあくまで、時限の境界に潜んでいるだろうDBたちの捕獲・討伐。
名残惜しそうにしながらも同行するスリッパは討伐隊と同じく、奥の通路に歩みを進めた。
けしかけたスリッパが歩き出すのを見届け、アイムも先を急ごうと歩き出し――

アイム「…おい?なんか聞こえないか?」
立ち止まった。

ジン「いえ、なにも聞こえないですよ」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

363 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その3:2014/11/01 23:46:25.53 ID:mwuzjAiIo
どの通路を進んでも、その先には入り口と全く同じ広間が広がっているだけだった。
彷徨いの森と同じく、まったく同じ光景が広がるという現実に一行は多少なりともゲンナリした気分になった。

スリッパ「違いといえば、広間の柱に振られた番号か」

広間の端にある巨大な柱には番号が振られている。
スリッパたちが今いる広間は【17】。最初に入った広間は【18】だった。

スリッパ「よし、ここまでの探索結果をまとめてみよう」

〜時限の境界で判明した情報〜
・複数の広間が通路によって繋がっている。各広間はに10枚の扉が置かれている。
・各広間の扉には【0】〜【9】までの番号が振られている。最初に入ってきた扉は【0】
・広間にもそれぞれ番号が振られている。最初に入った広間は【18】
・広間【18】の左右には広間【17】【16】が位置している。【18】の前方には【15】が位置し、その左右には【14】【13】といった具合に連続している。
 つまり、横3つの広間が連続した番号である。

364 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その4:2014/11/01 23:48:21.36 ID:mwuzjAiIo
参謀「つまり、ワイらが突入した広間は【18】番目、入ってきた扉は【0】ちゅうことか」

アイム「ははあ。なるほど、読めたぞ。広間の番号が『年号の上二桁の数字を表して』いて、
扉の番号が『下一桁を表して』いるんじゃないか?」

ジン「ぼくたちのいる時代はK.N.C180年。広間の番号【18】と扉の番号【0】…
本当だ、組み合わせればいまの元号と一致しますね!」

スリッパ「なるほど。この仕組みさえわかれば、希望の時代にタイムワープできるということなのか…」

スリッパはそう言ったきり、押し黙った。深刻な表情で目をつむり、額に手を当てている。
あまりにも真剣な表情に、周りは一瞬言葉を失うほどだった。

アイム「おい、大丈夫か…?」

心配したアイムが声をかけると、スリッパはその言葉に驚き跳ねるように反応した。

スリッパ「あ、すまんすまん。少し考え事をしていたようだ」

アハハと声を上げて笑うスリッパだったが、その目は笑っていない。
後ろに立つサラも無表情で事の次第を見守るのみだ。若干の得体のしれない不気味さをアイムは感じた。

――時計の針は刻一刻と進む。

365 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その5:2014/11/01 23:55:55.56 ID:mwuzjAiIo
参謀「まだ奥まで探索し終えていない。このまま進んで、その後に扉を調べるぞ」

先程のスリッパの一件を経て、アイムは居心地にくい思いをしていた。
一行には奇妙な緊張感が張り詰めている。討伐隊長の参謀が抱く緊張感は至極当然のものとして、
¢はそれとは違う別の緊張感を放っているようだ。使命感からくる緊張感ではない。何かに怯えている。

スリッパの態度も少しおかしい。念願の宝の山たる時限の境界を見つけた時の反応は予想外に淡白なものだった。
だが時限の境界の奥に進むにつれ、緊張で顔がこわばってきている。
時限の境界を発見すること自体が目的ではないということなのだろうか。アイムにはわからない。
例えるならば、獲物の小動物が罠にかかるのをひたすら待っている獰猛な獣のような感じなのだ。

アイム自身もおかしい。相変わらず時計の針の音が聞こえ続けているのだ。
寧ろ、音は大きくなり針は早く鳴ってきている。

アイム「なあ本当に針の音は聞こえないのか?」

同じ新人で気兼ねなく話せる相手となったジンに話しかける。たけのこ軍兵士だが、この際仕方ない。

ジン「聞こえませんね。疲れているんじゃないですか、耳鳴りとか」

アイム「そんなヤワじゃないはずなんだけど――」


参謀「ふせるんや!!!」


突如参謀の怒号が広間に響き渡り、咄嗟に全員はその場に伏せた。
それに続くように、広間に爆発音とともに轟音が鳴り響いた。

366 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その6:2014/11/02 00:01:43.91 ID:JxX0TvSwo
アイム「なんだなんだ!」

腰に差していた剣を抜く。アイムの眼前にいる“それ”は、全身を機械で固めた巨大生物だった。
今まで大戦に姿を現したスクリプトとは大きさが一回りも二回りも違う。

¢「スクリプト…なのか?とてつもなくデカイが」

とりあえず、と¢はすぐさま二丁拳銃を構え目の前の敵に向かって発射した。
しかし、スクリプトの装甲の前に、銃弾は跳ね返ってしまった。

¢「堅いな…どこかに弱点があるはずだが――」

アイム「¢!危ないッ!!」

¢の脇に位置している通路から、二体目のスクリプトが現れるとともに、
間髪入れずに¢に向かって光弾を発射した。

¢「ぐッ――」

歴戦の勇者¢は相手の速攻にも、咄嗟に銃で防御態勢を整えたが、
光弾をまともに喰らいふっ飛ばされてしまった。

367 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その7:2014/11/02 00:19:24.41 ID:JxX0TvSwo
ジン「¢さん!『キュンキュア』!!」

¢のもとに駆け寄り傷を癒やす。魔法の香りは少しジンジャーエール臭い。

参謀「くッ、この態勢はまずい。一旦退くッ!!総員、西の通路に向けて走れッ!!」

スリッパ「了解ッ!サラ、頼む」

サラは頷き、初めて自分の意志で一行の前に出た。そして、どこから取り出したのかガトリングガンを両手で構え、
合図もなくスクリプトたちに向かって発射し始めた。

スリッパ「急ごう!サラが時間を稼いでいる間に!」

一行は通路を抜け別の広間へと走る。

スリッパ「サラ、もうOKだ!」

その言葉を聞き、サラは躊躇なくガトリングガンを投げ捨てスリッパたちの後を追う。
遅れてスクリプトたちもその後を追うが、次の広間に到達した時には討伐隊は姿をくらませていた。

――時計の針は刻一刻と進む。

368 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その8:2014/11/02 00:26:08.34 ID:JxX0TvSwo
巨大生物スクリプトは二体だけではなかった。
スクリプトは数を減らすどころか逆に数を増やす勢いで一行に襲いかかった。
始めのうちは、各個撃破で何体かのスクリプトの破壊には成功したものの、
次第にスクリプトに包囲される機会が増え、今や討伐隊一行は各広間を走り回り、
スクリプトの追手を逃れるほど切迫した状況に追い込まれていた。

参謀「ハァハァ…大丈夫かみんな。クソ、なんて数やッ」

何十回目かとなるスクリプトの追手を巻き、広間の片隅で一行は息を切らしていた。状況は最悪といってもいい。

ジン「みなさんこれ飲んで回復してください。『ジンジャーエール』!!」

魔法で用意したジンジャーエールを全員に配る。アイムは貰ったジンジャーエール缶を必死に口つけた。
炭酸はあまり得意ではない。さらに運動直後の炭酸摂取は身体に良くないが、四の五の言っていられない。

369 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その9:2014/11/02 00:33:24.41 ID:JxX0TvSwo
¢「このまま…逃げまわっても…ハァハァ…状況は…ハァハァ好転…しないんよ」

¢は今にも倒れそうだ。訓練を怠っていたのかそれともまともに外に出ていなかったためか、
スタミナが誰よりも無かった。

参謀「確かにこのまま逃げまわっても埒が明かん。部隊を二手に分けて、陽動作戦をとるか」

ジン「この際、もうタイムワープをしてもいいんじゃないでしょうか」

¢「反対。もしタイムワープして万が一帰れない状況になったらそれこそ無駄死なんよ」

スリッパ「陽動なら、私とサラに任せてくれ。スクリプトを引きつける」

今後の作戦について話し合っている中、アイムだけに聞こえる針の音は、
まるで早鐘を打つようにひっきりなしに鳴っている。
その音の大きさは、今や周りの会話が聞こえないまでになっていた。

アイム「おいみんな!聞いてくれ――」

アイムがいい加減事の次第を説明しようとした正にその時。


―――『時間切れ』


アイム「は?」

頭のなかに響いた声とともに、針の音は止む。次の瞬間――

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

370 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時限の境界突入編その10:2014/11/02 00:36:36.26 ID:JxX0TvSwo
¢「あの扉に吸い寄せられるぞッ!!」

ジン「う、うわッ!」

扉に一番近かったジンが真っ先に吸い込まれそうになるが、咄嗟にアイムが手をつかむ。

アイム「全員、互いに掴んだ手を離すなよッ!」

全員が互いの手を掴み、必死に見えない力に抵抗する。しかし―

スリッパ「なんて強い力なんだ…」

¢「うぅ…もう限界なんよ」

全員の身体は浮かび上がり、一直線上に扉に向かって飛んで行く。


参謀「全員、衝撃に備えろッ!!」

アイム「ッ!!」

扉に吸い込まれる直前。走馬灯のように景色がフラッシュバックする中、アイムは思い出していた。
自身の境遇、自分の本当の名前、そして――自身に課せられた“真の役割”。
全てを思い出して、そしてすぐ後にやってきた衝撃で再び全てを忘れてしまった。

こうしてDB討伐隊一行は時空の潮流に乗り、時を跳んだ。

371 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/11/02 00:38:08.15 ID:JxX0TvSwo
投下終了
時をかけるきのたけ

巨大スクリプトの元プロット
『狭間の門番』 - 2012/08/01 作成
http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/456/card-29.jpg

おそらく初公開?

372 名前:社長:2014/11/02 01:30:45.08 ID:nkbrFedE0
もつだぞ。ついにきたでういでこすな

373 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その1:2014/11/11 01:10:45.27 ID:6muhTgmMo
   ―― 夢を見ている ――
   ―― 自分の意識がふわふわと。まるで宙を舞うような感覚。これは夢なんだ ――


「長かった。長年…ついにやっとここまでこれた……」

―― 誰かの囁くような声を聞いて。ゆっくりと、夢の中で瞼を開ける ――

「…のオーラが結集して……貴様を、この場で俺様が…掌握ッ…完全に会議所を掌握するッ」

―― 意識が定まらない、うすぼんやりとした感覚が身体を支配する ――

「貴様を消し去ること…会議所の希望…全て断ちきる」

―― どこか見覚えのある光景、覚醒しない脳を働かせようとする ――

「貴様はッここで………消える…」

―― 思い出すのは、暗い室内 ――

「…わるく思うな…これも全て俺様…ため…会議所の歴史を……ため」

―― 思い出すのは、異様なまでに冷えた部屋の空気 ――

「覚悟しろ、…逃げること……………なッ!…自ら…そんな馬鹿なッ…」

―― 思い出すのは、ふわふわ浮いているような不思議な心地良い感触と ――

「なぜだッ!!!なぜ!!!!なぜだーーーーーーーーッ!!」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

374 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その1:2014/11/11 01:12:30.01 ID:6muhTgmMo
   ―― 夢を見ている ――
   ―― 自分の意識がふわふわと。まるで宙を舞うような感覚。これは夢なんだ ――


「長かった。長年…ついにやっとここまでこれた……」

―― 誰かの囁くような声を聞いて。ゆっくりと、夢の中で瞼を開ける ――

「…のオーラが結集して……貴様を、この場で俺様が…掌握ッ…完全に会議所を掌握するッ」

―― 意識が定まらない、うすぼんやりとした感覚が身体を支配する ――

「貴様を消し去ること…会議所の希望…全て断ちきる」

―― どこか見覚えのある光景、覚醒しない脳を働かせようとする ――

「貴様はッここで………消える…」

―― 思い出すのは、暗い室内 ――

「…わるく思うな…これも全て俺様…ため…会議所の歴史を……ため」

―― 思い出すのは、異様なまでに冷えた部屋の空気 ――

「覚悟しろ、…逃げること……………なッ!…自ら…そんな馬鹿なッ…」

―― 思い出すのは、ふわふわ浮いているような不思議な心地良い感触と ――

「なぜだッ!!!なぜ!!!!なぜだーーーーーーーーッ!!」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

375 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その2:2014/11/11 01:15:30.39 ID:6muhTgmMo
━━━━━━━━
━━━━
━━

【K.N.C 180⇒??年 時限の境界】
参謀「ア…ム、起きろ…起き…んや!!」

途切れ途切れに参謀の声が聞こえてきたのは、アイムは意識を取り戻した。
少し寒気がするが、指先に血が巡っていくのがわかり、感覚はだいぶはっきりとしてきた。

アイム「痛え…」

体の各所が痛む中、起き上がる。アイム以外のメンバーも同じように体を起こして辺りを見回している。

アイム「扉に吸い寄せられて…その後どうなったんだ?」

頭痛が酷い中、必死に自身の記憶を手繰り寄せる。
しかし思い出せない。

376 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その3:2014/11/11 01:21:42.55 ID:6muhTgmMo
参謀「どうやら外に放り出されたみたいやな。さっきの入り口とは違う場所みたいやが」

外にいる、という表現は半分正しく半分は誤りだった。上空からは日が差しているが、参謀たちの左右には
背の高い石壁が位置して、参謀たちを囲っている。
目の前には、朱塗りの鳥居が数本立ち並び小さな神社がぽつんと建っている。
神殿前の賽銭箱が置かれているだろう場所にはぽっかりと大きな穴が空いている。

アイム「タイムワープしたってわけじゃないのか?とりあえず中の状況はどうなって―」

アイムたちの背に位置する、放り出された扉のドアノブを掴み回そうとする。
びくともしない。アイムたちはまたも閉じ込められた。

¢「また閉じ込められた…か」

スリッパ「もし私の予想通りだとすると最悪の展開になりそうだが…外れることを祈ろう。
あの穴に入ってみるしかないよ」

全員は底の見えない穴に飛び込んだ。

377 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その4:2014/11/11 01:26:35.77 ID:6muhTgmMo
【K.N.C??年 大戦場】
荒涼とした砂地の塹壕に投げ出されたアイムたちは、そこが兵士たちにとって
第二の故郷でもある大戦場だとすぐに気がついた。

アイム「イテテ…乱暴に放り出されたが、どうして大戦場なんかに。
てかいま大戦なんかやっている余裕なんてあったか?」

激しい爆音。断続的に響く銃撃音。きのことたけのこが焦げたような臭い。
間違いなく大戦場、それも大戦の真っ最中である。
アイムたちが飛び込んだ穴は、大戦場のとある塹壕内に繋がっていた。
穴から出たアイムが様子を窺おうと塹壕から顔を出そうとした瞬間。

きのこ軍95黒 神官兵卍≪治療≫「おい君ッ!こんなところで何をしているッ!所属部隊はどこだッ!!」

突然の怒号とともに、塹壕に入り込んできた兵士にアイムは目をパチクリとさせた。

アイム「は?え、えーと…その」

¢「びええええん。穴に勢い良く入ったら尻が痛いんよ」

と、アイムの隣で尻餅をついていた¢を見るや、95黒神官兵は目を丸くした。

きのこ軍95黒 卍神官兵「あれ、¢さんじゃないですか。どうしてこんなところに?
さっき前線部隊率いて敵陣に突入していったんじゃなかったんですか」

¢「ん?」

378 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その5:2014/11/11 01:29:24.41 ID:6muhTgmMo
ジン「えーと、いったいどうしたんですか?…」

穴から顔をひょっこり出し、ジンは騒がしい外に気をかける。

95黒 神官兵卍≪治療≫「なッ!お前はたけのこ軍ッ!どうやって我軍の陣地内に侵入したんだッ!」

たけのこ軍服を纏うジンを見るや否や、95黒は烈火の如く怒り出した。

ジン「え、え?」

参謀「なんやなんやどうしたんや」

つかえていた穴から続々と討伐隊メンバーが顔を出す。

95黒 神官兵卍≪治療≫「参謀までどうしてここに…?いまは本部で指揮を取っていたはずじゃ?」

スリッパ「なにかおかしいな…おい、今次大戦は第何次戦役だったか覚えているか?」

95黒 神官兵卍≪治療≫「なッ!お前もたけのこ軍兵士。しかし、あなた。どこかで見た顔だな…」

参謀「頼む、95黒さん。答えてくれや」

真剣な口調の参謀に気圧されるように、95黒は困惑気に答える。

95黒 神官兵卍≪治療≫「はぁ…いまは『第102次大戦』ですが」

379 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その6:2014/11/11 01:31:42.19 ID:6muhTgmMo
全員に衝撃が走った。95黒の言葉を信じるならば、いまアイムたちはK.N.C102年にいる。

参謀「…ご苦労。ちなみにこの二人は、たけのこ軍服を着てはいるが隠密部隊や。
今からたけのこ軍陣地に潜入してもらう手筈となっているんや」

咄嗟の参謀の演技に、ジンとスリッパは急いで同調した。

95黒 神官兵卍≪治療≫「ははぁ、そうだったんですか。敵の攻撃はいまが一番激しいから、
まさに起死回生の策ですね――」

95黒の言葉が終わらないうちに、アイムたちの近くですさまじい爆音と火柱が上がった。

95黒「なんだッ!!どうしたッ!!」

無線『スクリプトです!!スクリプトが大戦場に襲来しましたッ!すさまじい勢いで我軍に攻めかかってきていますッ!』

95黒「くそッまたか!!すぐ応援に向かうッ!」

95黒はこちらを振り返りもせずに走って行ってしまった。


参謀「どうやらここは本当に過去の世界みたいやな…」

スリッパ「私が既に引退済の兵士で、ジンがこの時代に参戦していない新規兵士でよかったな。
もし向こうに顔が割れていたらめんどうなことになっていた」

380 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その7:2014/11/11 01:36:33.59 ID:6muhTgmMo
¢「過去の時代に来たはいいが、いったいどうやったら俺たちは元の時代に戻れるんだ」

アイム「わからねえよ。だが、さっきあの兵士の無線で言っていた言葉――」

――スクリプトが大戦場に襲来しました

アイム「参謀や¢さんは第102次大戦にも参加していたんだろう。この大戦を覚えているのか?」

参謀「第102次…第2回クリスマス聖戦が終わってすぐの大戦だったか。確かにスクリプトに襲われた覚えはあるが…」

¢「ぼくは覚えているんよ。最初はたけのこ軍が怒涛の攻めを見せていたけど、
スクリプトの襲来でそれどころじゃなくて大戦は中止になったんよ。結局スクリプトに太刀打ちできなかったんよ」

自信満々に語る¢。その口ぶりは、編纂室で以前おなじ質問をされた時に答えていた時と変わらない。
しかし、アイムは同時に、編纂室で聞いた集計班の語りを思い出していた。


―― 確かにスクリプトの襲来は何度か受けましたが、
    荒らしが原因で中止になった大戦はただの一度だけです。

―― K.N.C86年の第86次大戦。中止になった大戦はただ一度だけだと記憶しています。


もし集計班の言葉が正しいとすれば、¢の記憶は歴史年表とともに上書きされていることになる。

381 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 時空潮流編その8:2014/11/11 01:37:36.14 ID:6muhTgmMo
アイム「シューさん曰く、スクリプトによって中止に追い込まれた大戦はこの年じゃない。
¢さんのいうように、この年度の大戦が中止に追い込まれているんだったら、
それは【歴史改変によって塗り替えられた歴史】だ」

¢「なんだと…」

スリッパ「つまり、本当は大戦中止に追い込まれたわけではないのか?」

アイム「おそらくな。よくわかんねえけど、時限の境界にいたスクリプトがこの時代に来て
歴史改変をしているのかもしれないな」

スリッパ「なるほど…」

382 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/11/11 01:42:47.32 ID:6muhTgmMo
とりあえずここまで。
ちなみに第102次きのこたけのこ大戦は、現実でもスクリプトの襲来を受けています。


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[参照]
・きのこたけのこ大戦 睦月戦役 第二戦 2012/01/21(土) 22:32:19.16 (※第102次きのこたけのこ大戦)
きのこたけのこ大戦(スクリプト埋め立て)
きのこたけのこ大戦(スクリプト埋め立て)
きのこたけのこ大戦
※緊急戦闘場★2は>>514まで使用

きのこ軍:たけのこ軍=54:0 きのこ軍の兵力アド:10
・まーたスクリプトか。
・前半はきのこ軍がメタメタにされていたものの後半は打って変わっての猛攻撃。
・大差をつけられていたのが大差をつけての勝利となった。
・きのこ軍は必殺技の女神の加護でも受けたのか。それともデスブログのたけのこ軍への呪いか・・・

・途中でバーボンを喰らった集計の代わりに集計を担当した抹茶兵士には感謝の意を述べたい。

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実は第100次・第101次ともにスクリプトの襲来を受けているので、最初は第100次にしようと思ったんですが
まあそこはね。とりあえず次の更新時にでも。

383 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その1:2014/12/09 23:03:25.23 ID:TpICAZnso
・ここまでのあらすじ

会議所「DBとスクリプト脱走した」

集計班「なんかきのたけの歴史がどんどん書き換わっているんですが」

参謀「原因探るわ。時限の境界っていうダンジョンに行けばええんやろ?」
スリッパ「参加するぞ」

アイム「えっなんか知らない間に勝手にタイムワープしたんだけど」
¢「気がついたらK.N.C102年にいたンゴ」 ←いまここ

384 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その1:2014/12/09 23:05:39.39 ID:TpICAZnso
兵士の叫び声と、スクリプトが発する不快な機械音が戦場にこだまする。
空を見上げると、まるで群れをなす鳥のように大量の小型スクリプトが飛び回っている。

アイム「とりあえずなんだっていいッ!目の前のスクリプトをぶっ壊すぞッ!」

スリッパ「待てッ!」

今にも飛び出さんとはやるアイムを静止するように、スリッパはアイムの腕をつかんだ。

スリッパ「スクリプトを倒すということは、今度は私たちが歴史改変をする立場になってしまう」

とても危険を伴う行為だ。スリッパはそう力説する。

スリッパ「歴史改変は、目の前の出来事を書き換えるだけではない。
大戦に関わる多くの兵士の歴史も一緒に書き換えることになる。
今から起こそうとしている歴史改変が、この大戦に参加していた兵士から直接関係ない兵士までの
現在や未来に影響を少なからず影響を与えることになるんだ」

ジン「そう聞くと…確かに深刻だ」

アイム「だからといって目の前の歴史改変をただ見ているだけだというのかよッ!!
そもそもオレたちは閉じ込められているんだ。第102次きのこたけのこ大戦という、このでかい檻になッ!!
オレたちが戻らなければ、歴史は書き換えられ続けて、あんたのいう犠牲者が増えるだけだッ!!」

アイムたちは元いた時代に帰ることはおろか時限の境界に戻ることすら叶わない。
牢獄に閉じ込められいると等しい状況なのだ。

385 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その2:2014/12/09 23:08:42.66 ID:TpICAZnso
参謀「アイムの言うとおりや。スリッパの言うことも一理ある。だが、現代に帰ることができないワイらにできることは、
【書き換えられた歴史を元に戻す】ことや」

¢「こう考えるとどうだろう。正史ではスクリプトの襲来を受けながらも、その脅威を跳ね除けて大戦を続行した。
今の虚構の歴史をその正史に戻すだけだ、と」

三人の言葉にスリッパはしばし沈黙し、渋々と言った呈で納得した。

スリッパ「わかった。だが、時間はない。さっさとスクリプトを破壊しよう」

アイム「よしきた!みんな行こうぜッ!」

スリッパ「いや、待てッ!」

身を乗り出して塹壕の外に出ようとするアイムを、スリッパは首根っこを掴んで静止させた。

アイム「ぐえっ、まだなにかあるのかよ」

スリッパ「最小限の歴史改変に留めるべきだと思う。¢が言ったように、【正しい歴史に戻そう】とした場合、
正史にはない余計な歴史改変は混乱を招くだろう」

参謀「なにが言いたいんや」

スリッパ「『タイムパラドックス』。聞いたことはあるだろう?」

タイムパラドックス―― 時間の逆説。
時間旅行者が過去にタイムトラベルした時、歴史改変を行うことで過去と未来の整合が取れなくなる
時間の矛盾を指す。

386 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その3:2014/12/09 23:11:58.83 ID:TpICAZnso
参謀「聞いたことあるな。有名なやつやと『親殺しのパラドックス』とかか?」

スリッパ「そうだ。時間旅行者である私たちが無用な歴史改変を引き起こすと、
現代において多大な混乱を招くことがある。たとえば、過去と未来の二人の同一人物が同じ時間帯で
ばったり出会ってしまうとかね」

¢「言いたいことは分かった。つまり、僕と参謀はこの時間・この大戦場内で戦っている“過去”の俺たちと、
そして少し前に“タイムトラベルしてきた”俺たち、二人ずついるということなんだな。
この過去の僕たちと僕たち自身が鉢合わせになるのは非常にまずい、と」

アイム「なるほど。だとしたら、参謀と¢さんは本人たちに見つからないように姿を隠したほうがいいってことか」

スリッパは頷き、¢と参謀からきのこ軍軍服を借り、ジンとともに着替える。

ジン「きのこ軍陣地内に発生しているスクリプトを中心に叩きのめすしかないだろう」

参謀「急いだほうがいい。大戦が続行不可能に追い込まれたと集計係が判断したら、
その時点で歴史改変の余地を失うことになる」

¢「巧遅は拙速に如かず、だな。時間との勝負だ」

アイム「了解。目にも留まらぬ速さで片付けてやるよッ!」

アイムはニヤリと笑い、ジン、スリッパそしてサラとともに塹壕を飛び出した。

387 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その4:2014/12/09 23:13:38.66 ID:TpICAZnso
【K.N.C102年 大戦場】

『ぶお〜〜〜現在の兵力は…えと、5+3+2で…えーと…現在の兵力は68:27で…あ、計算間違えた。
現在の兵力は68:25できのこ軍が有利です』

アイム「あの声は…シューさんか」

現代での集計公表の落ち着きぶりと比べると、えらい慌てようだ。

スリッパ「今でこそ【集計ツール】で自動集計しているが、昔は全て集計係の目視・手計算で集計していた。
戦況が熾烈になればなるほど戦いの勢いは上がり、集計係は苦しんでいくというわけさ」

アイム「なんだか不憫な役回りだな」

アイムはほんの少しだけ集計班に同情した。

ジン「目の前の上空を見てください。スクリプトの群れが、きのこ軍部隊を襲撃しています!」

アイムは自身の頭巾を紐解き、口と鼻を覆うように巻きつける。スリッパやジンも同じように顔を隠す。

アイム「よっしゃ、行くぞッ!」

388 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その5:2014/12/09 23:18:12.32 ID:TpICAZnso
アイム「おらおらあ!助けに参上したぜ」

腰に差してある投げナイフを取り出し、上空のスクリプトめがけて勢い良く投擲する。

ジン「『炭酸スプラッシュ』!」

スリッパ「サラ。頼む」

どこから取り出したのか地対空ミサイルを肩に構えたサラは、間髪入れること無くスクリプト群めがけて放射しはじめる。
見事、スクリプトの群れを撃墜した。

??「素晴らしい!どの部隊の所属だ!」

襲撃されていた部隊の隊長と思わしき人物が、アイムたちに近寄ってきた。

きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「なんてカオスな面子だ。しかし、おお!スクリプトが一掃されたぞ!」

アイム「あれ¢さん、どうしてここに…って、そうか。これは別人か」

"過去”の¢は優雅な動作で二丁拳銃をホルダーに戻した。今よりも凛々しく、精悍な顔つきをしている。
口調も今のような弱々しいものではなく、自信に満ち溢れた言い方だ。
年月とはここまで人を変えてしまうものなのか、とアイムは目の前の¢と先ほどまで一緒にいた¢を思い浮かべ、
心のなかで嘆息した。

きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「君たちが援軍か、ありがとう礼を言う」

顔を見せない目の前の恩人たちに若干の疑問は抱きつつも、¢は新たな質問をぶつけた。

きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「ところで、お前たち。≪作戦コマンド≫はどうした?」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

389 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その6:2014/12/09 23:19:30.48 ID:TpICAZnso

きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「おいおい頼むぜ…俺が考案したルールの中では特に自信があるんだからな」

きのこ軍 爆撃兵☆≪運試≫「でも隊長〜。これいちいちバッジ付けて戦うのめんどうくさいっすよ〜」

きのこ軍 工作兵]≪特務≫「確かに。しかも自分の戦果確認する際にいちいち計算めんどうなんだよなあ」

きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「なッ!そんなことはない!いや確かに、少しだけ面倒くさいかもしれんが、
それを上回る充足感と得難い満足感がだな…」

きのこ軍兵士「ブーブー」

相次いで内部から出る不平不満に反論する¢を尻目に、アイムたちは残りのスクリプトを追ってかけ出す。

きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「あッ、おい待てッ!そっちは敵軍陣地だぞッ!部隊長の俺の指示にだな…」

アイム「すまないな隊長さん。俺たちには時間がないんだッ!」

きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「あークソッ!命令無視は軍法会議ものだぞッ!」

390 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その7:2014/12/09 23:21:18.39 ID:TpICAZnso
【K.N.C102年 大戦場 たけのこ軍陣地】
『ぶお〜〜〜えと、シューさんが過労で倒れられたので私、抹茶が集計を代行します。
現在の兵力は58:11で依然きのこ軍が有利です。でもすごいスクリプトの数だ…このまま大戦続行してもいいのかな?』

アイム「クソッ、いくら倒しても次から次へとスクリプトが湧いてきやがる」

スリッパ「まるで小蝿のように集っては兵士のやる気を削いでいるな」

スクリプトは束となり、まるで虻のように羽音を震わせながら両軍の軍団に襲いかかっていた。
スクリプトの出処は未だ掴めない。

アイム「このままじゃ大戦が中止になっちまうッ!急がなくちゃならねえのにッ!」

己の不甲斐なさに、アイムはその場に剣を投げ捨てる。すると―

スリッパ「なんだ!?地鳴りか!?」

アイム「下から来るぞ 気をつけろッ!!」

アイムたちの足元から砂を巻き上げながら、例の巨大スクリプトが這って姿を現した。
甲殻類のように4本足を広げながらアイムたちに近づいていく。

スリッパ「おい!アレを見ろッ!」

巨大スクリプトは足を止め、奇声を発しながら身体を震わせる。と、その腹部付近から大量の小蝿スクリプトが外へ飛び出し、空へ飛び立っていった。

アイム「つまり、こいつがスクリプトの親玉てことだなッ!おもしろい!
さっさとかたをつけて参謀たちのところに戻ろうぜッ!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

391 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その8:2014/12/09 23:23:00.75 ID:TpICAZnso
サラのロケットランチャーが巨大スクリプトに直撃し、スクリプトは機械部品を周りにぶち撒けながら四散した。
と、巨大スクリプトが破壊されたと同時に上空を飛び回っていた小蝿スクリプトも、
息絶えたように地面へ墜落し始めた。どうやら巨大スクリプトが小蝿スクリプトの動力源となっていたようだ。

ジン「これでいいんでしょうか?」

スリッパ「¢の言うように【書き換えられた歴史を元に戻す】ことができたはずだ」


『ぶお〜〜〜たけのこ軍が降伏しました。よって第102次きのこたけのこ大戦は、きのこ軍の勝利となりました。
最終兵力は54:0…あっ、集計さん。いまさら復活されても遅いですよ…』


スリッパ「よし、これで【第102次大戦がスクリプトの襲来によって中止に追い込まれた】という歴史は書き換えられたはずだ。参謀たちの下に戻ろう」



参謀「みんな無事か!」

アイム「なんとかな。あんたらも他の兵士に見つからなかったか?」

¢「なんとか隠れきることができたんよ!」

アイム「…」

¢「なんなん?そんなに見つめられると恥ずかしんよ」

アイム「…いやなんでもねえよ。年月の経過ってのは残酷だな」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

392 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その9:2014/12/09 23:24:54.49 ID:TpICAZnso
【時限の境界 神社前】

アイム「戻ってきたはいいが、これからどうするんだ?時限の境界フロアに戻ろうとしても扉は開かなかっただろう」

スリッパ「俺たちがこの神社の前に放り出された時は、な。だが今は…」

スリッパが扉のドアノブに手をかける。

スリッパ「開くはずだ」

ガチャリ。
重厚そうな音とともに、閉ざされていた扉はいとも簡単に開かれた。扉の先は眩い光に包まれている。

アイム「なッ!」

スリッパ「さあ戻ろう」

ジン「ちょ、ちょっと待った!いま戻っても、また先ほどと同じように巨大スクリプトと追いかけっこをする羽目になるんじゃ」

¢「慎重になるべきだと思うんよ」

参謀「俺たちはいま第102次大戦の現場にいる。これは紛れもない事実や。K.N.C102年にいるんや」

K.N.C102年。現代のK.N.C180年とはあまりに時間がかけ離れている。

参謀「ここに居続けてもおそらく事態は好転しないやろな。
K.N.C180年まで各時代の俺たちに見つからないようにこうやって隠れ続けて待つちゅう選択肢もあるがな」

アイム「待てば海路の日和ありと言うけど、いつまでも待っていたら¢みたく心までジジイ化しちゃうな」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

393 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 歴史修正編その10:2014/12/09 23:26:56.55 ID:TpICAZnso
【??年 時限の境界】

アイム「ダーーーーッ!かかってきやがれ化け物野郎ッ!」

目の前で待ち構えているだろうスクリプト向けて威勢よく扉を抜けたアイムだが。

アイム「ここは…フロア内じゃない?」

ジン「時限の境界の入り口じゃないですか、ここ」

アイムたちの目の前には巨大なスクリプトたちも、薄暗いフロアも無かった。
広々とした草原と一帯を占める朱、朱、朱の鳥居。
扉を抜けると、そこは時限の境界の入口前だった。

参謀「時限の境界から出られたということか」

アイムたちの背後には巨大なくすんだ色の石壁。時限の境界フロアがそびえ立っている。

アイム「つまり、これで会議所に戻れるってわけか!やったぜ」

参謀「第一の目標であるDB討伐はならんかったが、得られた収穫は大きい。帰って報告しようや」

一行は足早に時限の境界を後にした。
会議所に戻ることはできたが、果たしてアイムたちは現代に戻って来られたのか。
結局K.N.C102年から抜け出せていないのではないか。時代跳躍の変化の術を知る由もない一行からすれば、
その心配はある種当然のものと言えた。
しかし、結果としてその心配は杞憂に終わった。途中で立ち寄った村落で話を聞けば、確かにアイムたちがいる時代はK.N.C180年。
つまり現代に戻っていたのだ。突拍子もない質問に首を傾げる村落の住人を尻目に、DB討伐隊一行は現代帰還の喜びを噛み締めたのだった。

394 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 :2014/12/09 23:27:36.01 ID:TpICAZnso
更新終わり。
一回目のタイムワープを終え、会議所に帰還した兵士たち。そろそろ特訓パートが始まりますぞよ。

395 名前:レタス社長:2014/12/10 01:04:16.26 ID:SGwMn2D20


396 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 原因究明編その1:2014/12/30 13:37:43.51 ID:RRc6QDeUo
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

きのこ軍 集計班「つまり…貴方方は【時限の境界】から【K.N.C102年】へタイムワープして、
偽りの歴史を【正史】に書き換えて、現代に戻ってきたと?」

DB討伐隊一行の報告が終わり、緊急会議を招集した集計班は開口一番にそう尋ねた。

きのこ軍 参謀「そういうことやな。編纂室でも歴史の書き換えは確認できたんか?」

たけのこ軍 社長「これは秘密だけど、百合神様はごくフツウの女の子だよ。みんなには秘密だよ〜」

集計班はオニロに視線を配り、オニロにある用紙を持ってこさせた。
オニロの顔からは生気が消えており、編纂室で起こり続けている歴史改変による脳シェイク(会議所側呼称)の壮絶さを伺わせる。

397 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 原因究明編その2:2014/12/30 13:40:01.51 ID:RRc6QDeUo
きのこ軍 集計班「頻繁に歴史改変が起きていまして、その度に記録は取っています。
第102次大戦の歴史改変が記録されたのは…」

たけのこ軍 社長「・・あとは忘れちまった」

たけのこ軍 オニロ「ええと。用意した改変記録を見ると、第102次大戦の改変は2日前に行われています」

きのこ軍 アイム「2日前だと?それはおかしいな。時限の境界に突入してからここに帰ってくるまでに、
オレたちの体感時間でまだ1日は経ってないはずだぜ」

たけのこ軍 社長「アイム!何をそんなに あせっ」

スリッパ「時限の境界内の時間の流れが周りと異なっている可能性が高いな」

たけのこ軍 社長「ないわー」

きのこ軍 アイム「いい加減にうるせえ叩き斬るぞ」

たけのこ軍 社長「ぎゃああーーーありがとうーっ!」

社長のバグった姿勢にスリッパは奇妙な安堵を覚えた。当時スリッパがいた会議所でも、今とは少し違うベクトルではあったが、
同じように社長は奇妙な言動・行動で会議所を幻惑し続けた。あの頃の光景と今の光景を重ねて、
スリッパはほんの僅かな間、感慨に浸っていた。最初期に自らも在籍していた会議所に、いま自分は居る。
二度と帰ってくるはずはないと思っていた会議所に。
後ろで会議の動向を見守っているサラに流し目で視線を送る。
私は本当にここに来てよかったのだろうか。スリッパの目はそう尋ねている。
サラは表情一つ変えずにスリッパを見つめ返す。数秒間の沈黙。しかし二人にはそれで十分だった。
スリッパは何かを確認したように、サラへ向かって頷き、再び会議に意識を戻した。

398 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 原因究明編その3:2014/12/30 13:42:22.50 ID:RRc6QDeUo
たけのこ軍 オニロ「えと、スリッパさん…でしたっけ。話を聞く限り、スリッパさんは時限の境界の仕組みについて
何かお気づきになられた点があるように見受けられます。何かご存知なんじゃないでしょうか?」

一同の視線がスリッパに注がれる。やれやれ、昔を振り返る暇もないな。スリッパはそう苦笑すると、朗々と説明を始めた。

スリッパ「今回、時限の境界に突入してみて幾つか気がついたことがある。
経験は最良の教師であるが、授業料が高すぎる。今回私たちは高い授業料を払ってまで時限の境界に教えを乞うた」

今から私が話す内容はあくまで憶測にすぎない。そう前置きした上で、スリッパは語り始める。

スリッパ「私はかつて自らの本にて時限の境界を『宝の山』だと表現した。確かに、好きな年代にタイムワープできる
場所は聞いた限りでは夢のような空間だ。だが――」

スリッパ「時限の境界は無料でそのような夢のひと時を提供してはくれない。
使用する上で恐ろしい【制約】が存在する、悪魔との契約なんだ」

会議所はそこで初めて知ることになる。時限の境界に隠された【制約】を。

399 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2014/12/30 13:44:42.01 ID:RRc6QDeUo
更新終わり。年内にもう一回更新したい。

400 名前:791:2014/12/30 18:15:23.71 ID:UGtVSG5wo
更新乙!
楽しみ楽しみ


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