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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

857 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/02 03:26:44.030 ID:xXkcYgXko
warsまとめ
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%a4%de%a4%c8%a4%e1

近々更新を再開できる見込みなので、まとめてみました。

858 名前:791:2020/02/03 16:31:05.103 ID:vT6dWXqIo
>>857
まとめお疲れさまです!
予言の解説とか内容改めて面白かった!続きが楽しみ

859 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 11:37:48.174 ID:xXkcYgXko
本当にお久しぶりです。というわけでさっさと更新していきます。
信じられないぐらい長いのでこれまでの簡単なあらすじは>>757-759>>857のwikiを見るといいんじゃないかな。ここからも結構長いので飽きたら寝ましょう。

860 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その1:2020/02/10 11:42:48.025 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

オニロの言葉で改めて一致団結した会議所では、DBを偵察しに出かけた山本が未だに戻らないことに対する対応策とDBの今後の行動に対する検討をしていた。

791「山本さんはあの最低な乙牌教の教祖ということもあって、煩悩に人一倍に弱い。洗脳されていると考えたほうが自然じゃないかな?」

筍魂「あの山本さんがDBに洗脳されているなんて!…ありえるな」

抹茶「DBの目的は大戦世界の“負のオーラ”を集めて自身を強大にすることですよね。そのためにスクリプトを使い過去大戦の歴史を改変していたけど、それもできない」

オニロ「だから現代に留まるしかないDBは、いま”負のオーラ“集めをするしかない。そうすると各地で厭戦感情を高める行動や暴動を起こすか…」

――さもなくば、DBと対極の位置にいる“正のオーラ”を持つ軍神<アーミーゴッド>を破壊して人々を絶望させるか。

皆の混乱を抑えるため、オニロは敢えて口には出さなかったがDBの真の狙いは軍神<アーミーゴッド>の消滅であることを軍神の二人は本能的に理解していた。


861 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その2:2020/02/10 11:44:29.559 ID:xXkcYgXko
そして開いた口をぎゅっと結び、オニロは横にいるアイムをチラリと見やった。

互いの性格は真反対、さらに最初は彼から”自分のような甘ちゃんなど大嫌い“と明言され、オニロ自身も彼の傍若無人な態度に何度も嫌気がさしてきた。
それ程までに真逆だった二人が実は同じ一人の人物と―正確には神だが―わかった瞬間に、オニロは隣りにいたアイムがまるで実の兄弟なように懐かしくなり、不可思議な事態にもすぐに腑に落ちたのだ。

オニロが持つ慈愛、優柔不断さとアイムが持つ冷徹さと自信過剰は全て同じ軍神<アーミーゴッド>が持つ個性が分裂したもので、
それぞれの個性の強さに大小の違いはあれ、オニロから見たもうひとりの片割れを兄弟のように愛おしく思う気持ちが強まった。

アイムは周りの兵士たちと会議所の今後の対応について話している最中だった。アイムも横目でチラリとオニロを見て視線があったのが気恥ずかしかったのか、すぐにふいと視線を外した。
そんな様子が可笑しく、オニロは結んでいた口元を緩め柔らかに笑った。


862 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その3:2020/02/10 11:47:42.700 ID:xXkcYgXko

皆がオニロの言葉に鼓舞され士気を高めていた中、きのこ軍兵士¢は周りから相反するように円卓テーブルの端で独り震えていた。
自らの行いを独り悔い、それでも皆と同じような希望に足を踏み出せずにいる自らの意志の薄弱さに心のなかで泣いていたのだ。

  集計班『とびきり邪悪な怪物をつくっていただけませんか。それを会議所で討伐するんですよ、どうですか楽しいと思いません?』

若かりし頃の¢は当時の集計班の言葉にしたがい、圧縮装置で負のオーラを集め邪悪な怪物DBをつくりあげたが、その事実を知る者は実は殆どいない。
¢の発明品の中でも自我を持ち想定外の動きを頻発するDBはとりわけ”優秀“だった。
会議所の古参としてよりも開発者としての矜持を忘れられなかった¢は、K.N.C28年での初の討伐戦で討伐予定だったDBを秘密裏に解放し世に解き放った。
¢は悩み苦しんでいる。DBの生みの親である自身が皆を苦しめているという事態に、それを公表できない心の弱さに、そして――

アイム「¢さん。少しだけ時間いいか?」

本来であれば気がつける筈のアイムの気配にも気づけないほど、歴戦のエース¢は周りへの罪悪感と自らのDBに対する愛憎が入り混じり極限にまで追い込まれていた。

アイム「会議所の行動についてあんたの確認を取りたかった。加古川さんとも話していたが山本さんの野郎は十中八九DBに捕まっている。
罠も考慮し市井の様子を探りに何人か偵察に行かせてもいいよな?」

¢「ぼくはそれで異論ないんよ…」

目を合わせず¢はポツリとつぶやいた。自らの意思など気にせず続けてくれと言わんばかりの弱々しさだった。

アイムはそんな彼の様子を数秒ほど見ていたが――

アイム「¢さん。いままで悪かった」

突然¢に頭を下げた。¢は吃驚して顔を上げた。

863 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その4:2020/02/10 11:49:45.099 ID:xXkcYgXko

¢「ど、どうしたんよいきなり」

アイム「オレはあんたを疑っていた。DBの一味なんじゃないかと思っていた」

¢「…」

アイム「でもそれは誤りだった。あんたはあんたなりの信念で動いていたんだな。それを理解できなかった、だから謝る。ごめん」

軍神<アーミーゴッド>の頃の記憶が戻り、¢が葛藤していた様子も気がついたのかもしれない。アイムの真っ直ぐな気持ちに圧され、¢も本音で返さざるをえなかった。

¢「信念なんてそんな大層なものじゃない。俺は弱い兵士なんだ」

アイム「弱さと強さは両立する。
確かにあんたの言うように固執する心は周りが見えなくなり弱くなるかもしれない。
でも、それがあんたを強くしている原動力でもあるんだ。少なくともオレは¢さんの強さを知っている」

アイムは頭を上げた。キザな悪戯っ子のように口元をつりあげて笑っている。

864 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神は一人の兵士を救えるのか編その5:2020/02/10 11:50:57.219 ID:xXkcYgXko
アイム「気持ちを圧し殺すんじゃない。”認める“んだ。そのうえで何が正しいか、その時々で判断すればいい。オレはそう学んだ」

¢「…それは軍神<アーミーゴッド>としてか、それともアイム自身の意見か?」

アイム「前者さ…と言いたいところだが、そんな御高説たれるほどできた兵士じゃないよ、オレは。いまのはどちらかというと後者からの意見さ」

アイムは背後にいるオニロと筍魂をチラリと見やり、視線を再び¢に戻した。

¢「社長のときと同じで兵士を立ち直らせるのがうまいんよ、アイムは。さすがは軍神<アーミーゴッド>の化身といったところか」

アイム「暗いところでウジウジしてないで¢さんもこいよ。オレも一人のほうが好きだが、たけのこ軍のやつらとバカをやるのも、まあたまにはわるくない」

アイムはすっと¢に手を差し伸べた。¢から見てもアイムは変わったと思う。本来の性格はそのままに、兵士たちを導いていく力が目に見えて増した実感がある。
軍神<アーミーゴッド>のオーラが戻っただけなく、これまでの経験がアイムをここまで強くしたのだ。

― これがアイムの言う乗り越えた力か。

自分もいつか乗り越えることができるだろうか。
未だ不安を残したまま前進をしようと、¢がアイムの手をつかみかけた正にその瞬間、突然、最終決戦の合図は告げられた。
編纂室の扉が勢いよく放たれ、ビギナーが息も絶え絶えながら叫んだ。

ビギナー「大変だッ!!!会議所の周りを大勢のデモ隊が取り囲んでいるッ!軍神<アーミーゴッド>を出せと民衆が血眼になって会議所に押し寄せてきているぞッ!!」


865 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その1:2020/02/10 11:52:28.133 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 wiki図書館】

普段は静寂を保っているwiki図書館にもデモ隊の騒動は伝わってきた。
地上に戻ってきたアイムとオニロたちを地上兵士たちが待ち構えていた。

抹茶「これはいったい何事ですかッ!?」

ゴダン「ふと外が騒がしいと思って会議所から覗いてみたら、きのこの山とたけのこの里の方から大量の住民がこちらに向かってくるのが見えて…」

埼玉「慌てて会議所の門を閉めたんだたまッ!でもそれもいつまで持つか…」

図書館から外の様子を窺い知ることはできないが、取り囲んでいるデモ隊はおそらくきのこの山とたけのこの里のほぼ全住民ではないかと、埼玉は付け加えた。

参謀「こちらから偵察を送る手間が省けたな。デモ隊の要望はなんや?」

「会議所は軍神<アーミーゴッド>を匿っているッ!俺たちの生活をめちゃくちゃにした軍神<アーミーゴッド>を出せッ!!」

拡声器か魔法で増大された怒りの声がwiki図書館にも届いた。


866 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その2:2020/02/10 11:54:54.135 ID:xXkcYgXko
791「軍神<アーミーゴッド>を標的にしたデモとはこのタイミングで不自然だよね」

¢「そもそもぼくたちも含めてみんな軍神<アーミーゴッド>のことを忘れていたのに、突然軍神<アーミーゴッド>のデモを起こすなんておかしいんよ」

社長「それは一理ありますね。」

オニロ「DBの仕業ということだね」

誰もが疑念を抱いていた言葉をオニロが最初に口にした。

アイム「DBの洗脳能力を使い、山本さんや黒砂糖さんに加えて全世界の住民を巻き込んだというわけか」

抹茶「全世界…今までとは規模が違いすぎる。これがDBの本気なのか」


867 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その3:2020/02/10 11:56:11.262 ID:xXkcYgXko

抹茶の言葉に全員が言葉を飲んだ。これまで数人単位での洗脳が瞬く間に数千、数万倍ベースで一般兵士にされDB勢力になったのだ。予備兵の会議所兵士たちをあわせても兵力の差は歴然だった。
そんな皆の不安を他所に、アイムは気にすること無いとばかりにポンと一度手を叩いた。

アイム「怯えることはないよ抹茶さん。ヤツもそれだけ本気ということだけど、その分力は使っている。あいつは自分で集めた負のオーラを消耗することで洗脳しているんだ」

オニロ「ということは、今回の洗脳はだいぶDB自身を弱体化させているんだ。正にこの戦いに賭けているというわけだね」

アイムの言葉にオニロが補足して付け加えた。

抹茶「なるほど。逆にDBも追い詰められているということですね。なんか勇気わいてきた…かも?」

¢「ただ依然として兵力の差は圧倒的なんよ。会議所で籠城しても勝ち目があるかどうか…」

オニロ「その話だけど、ボクとアイムにいい案がある。そうだよねアイム?」

オニロの言葉にアイムは深く頷いた。

アイム「¢さん、頼みがある」

アイムとオニロは¢に向き直り深々と頭を下げた。


868 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その4:2020/02/10 11:57:35.694 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 地下室】

薄暗い地下室でぼうと光る圧縮装置の前で、アイムとオニロは決意に満ちた表情で地下から上がってきた会議所兵士たちと相対していた。

¢「本当にいいんだな?」

アイム「ああ、頼む」

オニロ「DBに勝つためにはこれしかないよ」

― オレたちを軍神<アーミーゴッド>に戻してほしい。

アイムの頼みは周りを大いに驚愕させた。
DBが負のオーラを結集させ過去最悪の力を手に入れているとするならば、正のオーラを纏う軍神<アーミーゴッド>で対抗し、民衆の目を覚ますことができれば形勢は一気に逆転する。
アイムとオニロの“欠けたピース”のままではDBとの完全決戦に挑むのはどうしても不完全なのだ。

ただしDBに扇動されている民衆は軍神<アーミーゴッド>に対し強い敵意を抱いているため、ひと度軍神<アーミーゴッド>が民衆の前に表れれば標的にされ何が起きるかわからない。
圧縮装置での軍神<アーミーゴッド>の復帰はDB討伐戦を会議所勝利の終結に導くか、さもなくば歴史がDBの手に落ちるか究極の二択を迫られる危険な賭けでもあった。


869 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その5:2020/02/10 11:59:38.206 ID:xXkcYgXko
¢は一瞬、逡巡した後に装置のボタンを一度だけ押した。
圧縮装置がおもむろに機械音を発し始めたと同時に、二人の身体が白く光り始めた。

抹茶「もう二人には会えないんですか?」

アイム「バカだな抹茶さん。姿形は変わったとしても心は同じ、オレとオニロ。生きている」

アイムはそう言って、自らの胸を拳で二度叩いた。

オニロ「ボクとアイムがご迷惑をおかけしました、これからは軍神として皆さんを導きます」

アイム「おいオレを巻き込むんじゃねえ」

二人の変わらない掛け合いに周りの兵士たちからは思わず笑みがこぼれた。当人たちも軽口を言い合いながら互いに顔を見合わせた。
当初は誰にも馴染まず一匹狼を貫いた冷静沈着なアイムと、柔和ながら芯の強さを秘め歴史家としての才能を開花させた温厚で直情的なオニロ。
性格が真反対なきのたけの“希望の星”は、軍神<アーミーゴッド>の性格を分け与えられた“欠けたピース”ながら、それぞれが会議所で成長しともに師を持ち世界を大いに盛り上げた。


オニロは、窮地に追い込まれながらも不思議と心地の良い気持ちに、目を瞑りその時を待った。
アイムは、来る最後の戦いへの興奮と早る気持ちを抑えるために、目を瞑りその時を待った。




              そして、救世主が現れた。




870 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その5:2020/02/10 12:01:23.104 ID:xXkcYgXko
まばゆい光が徐々に消え去り、アイムとオニロが立っていた場に一人の長身の兵士が現れた。
黒を貴重としたマントを羽織り、両軍服のモチーフカラーをあしらった専用の軍服はシワひとつなく清潔感を与える。
幼さの残る顔立ちの割に立ち振舞いに威厳があり、穏やかながら人を貫かんとする意志の強い目はアイムとオニロの名残を感じさせる。
紛れもない軍神<アーミーゴッド>、その兵士だった。

軍神「皆、待たせてすまなかった」

軍神<アーミーゴッド>の第一声に、止まっていた時間が動き出したように会議所兵士たちは慌ててピンと背を張った。

軍神「時間がもうない。すぐに我は外に出るぞ、付いてこい」

優しげな声色の内に秘めた強烈な力強さは、会議所兵士たちを鼓舞するには十二分だった。


871 名前:Chapter4.大戦に愛を 軍神帰還編その7:2020/02/10 12:02:52.768 ID:xXkcYgXko
参謀「よっしゃあ!いくぞッ!ほぼ全ての会議所兵士を会議所防衛に投入する。会議所への侵入を試みるデモ隊を軍神が食い止める。そして、デモ隊の中心にいると思われるDBを発見し討伐するッ!
ただ、DBを含めその周りにいる黒砂糖さんと山本さんは特に強力や。個別に対応する兵士をつけたほうがいい」

軍神<アーミーゴッド>の声に反応したように、討伐隊隊長の参謀は矢継ぎ早に指示を出し皆に意見を仰いだ。会議所が徐々に団結していく。

791「黒砂糖さんの対応は私に任せてもらってもいいかな?前回、魔法の使いすぎで先に寝て負けちゃったから今回はおまけで抹茶も引き連れていくよ」

抹茶「えっ」

指名された抹茶はただでさえ緑がかった顔色をさらに真緑にした。

筍魂「山本さんは俺で引き受けるゾ」

参謀「決まりやな。黒砂糖さんには791さんと抹茶で、山本さんには筍魂が相対しDBから引き離す。常人が近づけない対DBには竹内さんの存在が必要不可欠や。
まだ地下で茶でも飲んでるだろうから連れてきてくれ。負けられない戦いになるなッ!」

ビギナー「報告。いま入った情報によると、DBはきのこ軍 真参謀 B’Lと、参謀に似た名前を騙ってデモ隊の中に化けているらしい」

参謀「訂正じゃ…この戦い、死んでも負けるんじゃねえぞッ!!DBの野郎を討伐やッ!!!」

威勢のいい声とともに湿った地下は途端に大戦場のような熱気を帯びた。
最後の戦いの火蓋がここに切って落とされた。


872 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 12:04:31.684 ID:xXkcYgXko
軍神の設定は>>835で社長が描いてくれたものを逆輸入しました。マジサンクスです。

873 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その1:2020/02/10 12:06:06.195 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所】

「会議所の中に入れろッ!どうなっているんだッ!」

「俺たちの生活を返せッ会議所ッ!!」

「軍神<アーミーゴッド>を出せッ!!」

会議所を取り巻くとてつもない規模の民衆からの声は広がり重なりながらも反射し増幅された怨嗟の地鳴りとなり会議所に届いていた。
デモ隊から必死に門を抑えている会議所の地上兵士たちは、その地鳴りに耐えるには限界だった。

そのデモ隊たる民衆の中心に首謀者は居た。

黒砂糖「DB様…おっと失礼しました、真参謀 B’L殿。この様子ならばァ、会議所への突入も時間の問題と思われます」

きのこ軍兵士に化けたDBに、黒砂糖はそっと耳打ちした。

DB「それは僥倖ゥ。籠城などさせぬ、民衆が黙ってはおらぬからなァ!ゲゲッゲゲハハハッ」

端正な顔立ちからは似つかない下卑た笑いは民衆の声にすぐかき消された。

山本「ほぼ全住民が参加しておりますゥ、いかに籠城しようといつか門は破られましょう」

同じくDBの傍に立つ山本も乙牌を見つけた時と同じように眼光をギラつかせ嗤っている。


874 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その2:2020/02/10 12:08:04.412 ID:xXkcYgXko
DBは勝利の前に自らの人生を振り返った。
彼はこの世界に生まれ落ちてから、兵士の士気向上のためにと幾多にも会議所に私利私欲目的で戦いと捕縛を続けられた。
大戦世界から戦の士気が無くなるや否や幽閉され長い年月を会議所の地下で過ごすこととなった。本来、“負のオーラ”はDBにとって何よりの馳走なのにそれを喰らうことのできない苛立ち、
喰らっても暴れることのできないもどかしさが会議所への恨みをより一層強くした。

そして時がきたら、“計画通り”に隣りにいたスクリプトを引き連れ檻を脱出し、“謎の声”の指示通りに時限の境界を用いた歴史改変を決行した。
心地よく大戦世界に厭戦気分が広がり、“希望-心の本-”を喰らいDBは生き繋いだ。しかし、会議所にすぐ作戦を看破され相棒だったスクリプトは姿を消し、DB自身も窮地に追い込まれた。
それでも策を巡らせ過去に巻いた種を回収するように、黒砂糖を洗脳しアイムとオニロをあと一歩まで追い詰めた。
竹内というイレギュラーな存在により軍神破壊はならなかったが、再突入間近でいま正に会議所の灯は消えようとしている。

目に見えない負のオーラの増大を実感し、食べられもしないのにDBは馳走をくらうように空に向かって大口をあけた。
DBの力は過去最高にみなぎっていた。

山本「DB様ッ!ご覧くださいッ!!」

悦に浸っていたDBを引き戻したのは、山本の叫び声に加え驚嘆した民衆の息を呑む声だった。


875 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その3:2020/02/10 12:10:05.446 ID:xXkcYgXko
軍神が会議所のバルコニーに立ち眼下の民衆と相対す形となると、あれ程煩かった民衆は水を打ったように静まり返った。
軍神がそれ程までに威厳を放っていたためである。

軍神「諸君、我は軍神<アーミーゴッド>だ。君たちが待ち焦がれた軍神<アーミーゴッド>そのものだ」

静かに語り始めた軍神の声は不思議とよく通った。

軍神「今回のこのような事態に一重に胸を痛めている。現状を鑑み、非常の措置をもって時局の収拾にあたるべく、これより善良なる両軍兵士に告ぐ」

誰も声を発すことができなかった。軍神の一挙手一投足にDBも含めた全員が釘付けとなった。

軍神「一刻も早くこの集会を解散せよ。映えあるきのこたけのこ大戦世界に暮らす勇猛果敢な兵士諸君は某かの不幸を願うためにその力を使うのではなく、大戦場で戦ってこそのものである」

「ふ、ふざけるなッ!その大戦を開かないのはお前達だろうがッ!ま、貧しい暮らしに喘ぐ俺たちの気持ちがわかるのかッ!」

誰もが口を開けない中、民衆の最前列にいた一人の兵士が勇敢にも軍神<アーミーゴッド>に意見した。
途端に啖呵を切ったように同調勢力が広がり、再び会議所前は怒りの喧騒に包まれた。

「そうだそうだッ!」

「軍神<アーミーゴッド>が意図的に大戦を延期させているに違いないッ!やっちまえッ!」

「軍神<アーミーゴッド>と会議所をただで許しておくなッ!処刑だッ!」

軍神「静まれいッ!!!」

一通り無言で聴衆の声を聴いていた軍神の一喝は、再び民衆を瞬時に黙らせた。


876 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2020/02/10 12:13:28.419 ID:xXkcYgXko
最初に声を上げた兵士に軍神が鋭い目線を送り、顔を向けた。見つめられた兵士は途端に威勢さを失い怯えるように肩を震わせた。
すると、瞬時に軍神はニカッと微笑った。

軍神「剛毅果断な兵士だッ!素晴らしい、君のような兵士が大戦で誰よりも活躍するんだッ!」

すぐにキッと顔を上げ、拳を振り上げ軍神は民衆に語りかけた。

軍神「会議所とは大戦世界を生きながらえさせる生命の拍動そのものであるッ!兵士諸君が大戦を開催したいと強く願えば、会議所は直ちに君たちの願いを叶えるだろう」

軍神「会議所は兵士諸君の力と意思と情熱で成り立っているッ!時局を読み、何より君たちの意慾を組み大戦開催の判断を行っている」

軍神「なぜ大戦が開催されていないか。意図的にか?はたまた会議所の権力を集中させるため焦らしているのか?ふざけるのもいい加減にしろッ!全てが馬鹿げた戯言だッ!!」

軍神の叫びに、徐々に民衆がざわつき始めた。しかしそれは先程のような怨嗟の声ではなく、ただただ戸惑い迷う民衆の声だった。

軍神「果たしてどれ程大戦復帰を願う者がいたか。答えは我自身が示しているッ!皆が両軍への怒りを忘れ、仮初の平穏を望み戦いから目を背けたことで軍神<アーミーゴッド>は一度大戦世界から消滅したッ!
それが諸君らの大戦への取り組みの意志表示だッ!それが答えだッ!!」

話を続けながら軍神は、民衆たちの失われた心の本の頁<士気>が漠然と眼前に広がりつつあるように見えた。


877 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その4:2020/02/10 12:16:05.078 ID:xXkcYgXko
軍神「だが、我がいまここに存在しているという事実が、また別の解を示している。善良なる両軍兵士が如何のような形であれ大戦復活を切に望んでいるッ!
両軍共栄の楽を共にするため、軍神<アーミーゴッド>は此処に復活したッ!会議所は必ずや諸君らの声を聞き行動に起こすだろう」

民衆の上空でキラキラと薄い膜のように漂っていた本の頁<士気>が、徐々に形を帯びてくる。

軍神「君たちの内なる魂に、情熱の灯を、消えかけた情熱の灯を再び灯すのだッ!大戦世界の心臓部として拍動を続けんとあがく会議所に、君たちが血となり後押しをするのだッ!」

軍神の叫びに、その本の頁<士気>は持ち主に還っていくように―

軍神「感じろッ!大戦で得たあの高揚感と充足感をッ!」

一人、また一人へ―

軍神「目を覚ませッ!勇猛果敢なきのこ軍兵士よッ!百戦錬磨のたけのこ軍兵士よッ!」

その数は瞬く間に広がり―

軍神「思い出せッ!185回にも続く大戦の偉大なる軌跡をッ!!」

パァンと空一面に広がった本の頁<士気>が弾ける音を軍神だけが聴いた。次の瞬間、洗脳が解け本の頁<士気>が戻った兵士たちは一斉にその場で倒れていった。
その数は民衆の大多数を占めた。
軍神が民衆の士気を急激に取り戻した瞬間だった。



その光景を誰よりも許せない兵士がいた。

DB「アアアアアアァァァァアミイイイイイイイイィィィゴッドオオオオオオオオオォォォォッッッ!!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

878 名前:Chapter4.大戦に愛を 演説編その6:2020/02/10 12:18:37.956 ID:xXkcYgXko
DBは力を振り絞り禍々しいオーラを発散した。瞬く間に倒れていた兵士たちの中から選りすぐりの者がカクンと人形のように起き上がった。

DB「黒飴くゥゥゥゥん。プランを変更だァ。俺様に相応しい最高の“舞台”に、あの哀れな英雄<ヒーロー>を招待しろォ。
二度仕留め損ねたが、最後に悪は勝つということを歴史に魅せつけてやろゥ」

黒砂糖「御意」

DBと幹部の黒砂糖と山本、そして数は減ったにせよ未だ洗脳された多くの兵士を引き連れ、黒い渦たるDB集団は会議所の正門へ向かい愚直に走り出した。

軍神「『ポイフルバースト』」

軍神の突き出した利き手から幾多の光弾が発せられ、DB隊に向かって勢いよく飛んでいった。オニロとアイムの力が合わさり、光弾は烈火の如く連射された。

山本「いくぞッ神父黒飴ッ!」

黒砂糖「任せろッ!」

集団から山本と黒砂糖が飛び出し光弾に相対した。
山本は自然な体捌きと自らの拳で次々と光弾をはたき落とし、黒砂糖は対抗呪文で次々と軍神のポイフルバーストを撃ち落とした。
熟練の兵士二人が相対すことで軍神の力と互角になり、ポイフルバーストを打ち消したのだった。

DB「悪意に満ちた悪がどれ程強大かということを、その身をもって教えてやるよォォッ!」

軍神「敵が来るぞッ!全員構えろッ!」

咆哮と悪意を撒き散らしながら、DBたちは会議所の正門に激突し破壊した。


879 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 12:20:18.086 ID:xXkcYgXko
ここから最終決戦。

880 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その1:2020/02/10 12:22:24.732 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所】

雪崩のようにDB隊は会議所の中に飛び込んだものの、巨大な正門を抜けた先は誰もおらずもぬけの殻だった。

加古川「やれッ!」

DB隊全員が入り込んだと同時に正門は閉ざされDB隊は閉じ込められた。
そして、加古川の命令が下されると正門の見張り塔に隠れていた兵士たちが次々と姿を現し、矢を放った。

DB「チッ!各自散開して軍神<アーミーゴッド>を討ち取れェ!」

黒砂糖「DB様ッ!御声を出してはバレてしまいますッ!」

中心で号令を発した兵士をDBと発見した会議所兵士の攻撃は激しさを増した。
すぐに散り散りとなったDB隊たちの中で、DBと思わしき兵士は黒砂糖に護衛されながら中庭に向かって走り去っていった。

791「黒砂糖とおそらくDBは中庭に移動ッ!行くよ二人ともッ!」

見張り塔から見ていた抹茶と竹内は頷き、二人の後を追った。


881 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その2:2020/02/10 12:25:03.786 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大廊下】

軍神はバルコニーから移動し大廊下にさしかかったところで二人の兵士に出くわした。

じゃがバター「いたなァ軍神<アーミーゴッド>」

リコーズ「お前の首をとりDBォ様に届けるのだ」

過去、会議所に参加し歴戦の兵士に数えられたきのこ軍 じゃがバターと、たけのこ軍 リコーズの二人が軍神に向かい舌なめずりするように口角をつりあげ嗤った。

軍神「歴戦の過去兵士も操られているとは、DBの力は存外強すぎるな…」

軍神の正のオーラを持ってもなお二人は動じてないことから、DBの洗脳の強さに二人の地力の強さがあわさっていることが伺えた。
軍神はマントをひらりとはためかせた。

リコーズ「いくぞォォォォ」

それが合図になったのか、リコーズは手にもった巨大なバズーカ砲を構えると間髪入れず発射した。

同時に軍神は音もなく姿を消し、目にも留まらぬ速さで次の瞬間、リコーズの背後に現れた。

リコーズ「なんだとッ…」

軍神「戦闘術・魂『きあいパンチ』」

リコーズの鳩尾をトンと拳で一度軽く突くと、リコーズは意識を失いはたとその場に倒れた。

882 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その3:2020/02/10 12:26:34.273 ID:xXkcYgXko
じゃがバター「なんという力だァ…」

過去に撃破王に輝いたことのあるリコーズがものの数秒で倒れたことに、じゃがバターは恐怖で逃げ出したくなったが既のところで耐えた。
この逆境を自らの力に変えるのが歴戦の会議所兵士と一般兵士の違いなのだ。

じゃがバター「次は俺だ、うおおォ!!!」

じゃがバターは手に持ったククリ刀で軍神に斬りかかった。軍神もすぐさま抜刀し応じる。
刀の擦れた金属音が通路に響き渡った。ジリジリとじゃがバターが押し、軍神は冷静に少し後退した。
後退する中でカチッと軍神の足元でなにか音を発した。シメたとばかりに、じゃがバターはすぐに半歩後ろへ跳んだ。

じゃがバター「かかったなッ!俺を突撃兵だと思ったか?」

じゃがバターは用意した起動スイッチを押すと、軍神の足元にある地雷爆弾が起動し轟音とともに通路の壁を破壊するほど激しい爆発を引き起こした。

パラパラと壁が四散し崩れ落ちる。粉塵でじゃがバターの眼前は曇ったが、今の爆発に軍神は巻き込まれたことは確実と勝利を疑わなかった。


883 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その4:2020/02/10 12:28:41.768 ID:xXkcYgXko
じゃがバター「現役時代もこの爆撃兵スタイルで撃破を量産した。戦から遠のいた軍神<アーミーゴッド>がこの奇襲に耐えられるはずがァ―」

じゃがバターのは絶句した。煙が晴れ無傷で立っている軍神を視認したからだ。

軍神は抜身の刀で呆気にとられたじゃがバターに切りかかると、彼が回避行動を取る前に一瞬で斬り伏せた。

軍神「戦から遠のいたのはどちらだろうな?」

悲鳴を上げる間もなくじゃがバターは地面に突っ伏し倒れた。
ホワイトチョコでコーティングされた刀を鞘に納めると、早足で軍神は歩みを再開した。

すると、すぐに二人の兵士が目の前の通路から走ってきた。その出で立ちから会議所兵士のようだった。

「報告いたします軍神<アーミーゴッド>様ッ!」

「DBらしき兵士を見かけました!wiki図書館の隠し階段を地下に下っていた姿が目撃されていますッ!案内いたしますッ!」

軍神「…承知した」

若干の不可思議さを覚えながらも神妙に軍神は頷いた。


884 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その5:2020/02/10 12:31:37.388 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

黒砂糖「はァはァ…しつこいぞ手前らッ!」

DBと思わしききのこ軍兵士を庇いながら追手から逃げていた黒砂糖だが、いよいよ諦めたのか中庭に付くと見えない追手を罵った。
それに呼応するように791、抹茶に加え竹内が姿を現した。

791「黒砂糖さんにはこの間の貸しがあるしね」

先日の死闘では黒砂糖との戦いで大魔法を誘発され魔力切れで先に791の体力が尽きてしまったのだ。

抹茶「黒砂糖さん、目を覚ましてください…私は同期のあなたと戦いたくありません」

黒砂糖「俺の名前はァ神父 黒飴。抹茶ァ、また裏切られに来たとはお前も哀れなやつだ」

黒砂糖は挑発的に語りかけると途端に黒砂糖とDBの間に魔法の防護壁を作り上げた。


885 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その6:2020/02/10 12:34:20.695 ID:xXkcYgXko

黒砂糖「今ですDB様ッ!お逃げくださいィィッ!」

竹内「ホッホッホッ。逃さぬぞ」

占めたとばかりに黒砂糖の後ろに居たDBが逃げ出すと、瞬時に反応したのは竹内だった。

戦いの中で老兵は老体を感じさぬ機敏な動きで瞬時に走り出しDBと思わしき兵士の後を追い、姿を消した。

抹茶「僕たちも竹内さんの後を―」

黒砂糖「おっと逃さんぞ!」

三人の周りに巨大な火壁が地面から伸び、ぐるりと彼らを囲むように覆いつくした。黒砂糖はその身を挺し、二人の足止めに成功したのだ。
黒砂糖と791、抹茶は相対すこととなった。

791「抹茶、気をつけろ。黒砂糖さんは、元々は超・優秀な工作兵(補助魔法タイプ)だけど、突撃兵の心得もある厄介な兵士だよッ!」

抹茶「黒砂糖さんの強さを僕は誰よりも知っています…心してかかりましょう」

黒砂糖「敵に不足なし。久々に血湧くなァ!!」

黒衣を身に纏った黒砂糖はただ強者に出会った喜びからか、肩を震わせ感激に打ち震えた。


886 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その7:2020/02/10 12:35:43.220 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 教練棟】

山本は軍神を探しに一人教練棟に入ると、そこには先約が居た。

筍魂「よお、元気にしてたか」

椅子に腰掛けていた筍魂の存在に気がつくと、山本は露骨に顔をしかめた。

山本「強敵にィ会いたくはなかったが…致し方ない。やるかッ」

両の拳を上げ、山本は静かにファイティングポーズを取った。

筍魂「強敵と認められるとは嬉しいねぇ鬼教官。共に同じ弟子を持った師として負けられんなあ」

ゆらりと気だるそうに筍魂は立ち上がると瞬時に腰を低くし跳んだ。

山本「させるかッ!」

対して山本は自らの拳で目の前の机を砕き、障害を作った。
ここに二人の激闘が始まった。


887 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その8:2020/02/10 12:38:11.188 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

「こちらでございます軍神<アーミーゴッド>様ッ!」

軍神「…ご苦労」

二人の兵士に案内を受け軍神が大戦年表編纂室に到着すると、一人の兵士が興味深げに周囲を見渡していた。
その傍には編纂室で待機していた斑虎ときのきのが倒れていた。

??「大戦年表編纂室とはここかァ。随分といい部屋を誂えたものだなァ会議所は」

軍神「汚い手で書物に触るな、DB<ダイヴォー>」

DBは手に持った歴史書を閉じると無造作に放り捨てた。そして、指をパチンと鳴らすと軍神を案内した二人の兵士たる幻影は跡形もなく消え去った。


888 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その9:2020/02/10 12:39:23.700 ID:xXkcYgXko

DB「先程の蛮行は見事だったなァ軍神<アーミーゴッド>。お陰で俺様の兵隊が大分減らされてしまった」

見事だ、と兵士の変装を解いたDBは、持ち前の下卑た笑いで軍神と相対した。

軍神「貴様が此処にいるということは分かっていた」

DB「のこのこ一人で来てくれるとはありがたい。黒飴くんも“予定通り”戦い始めたはずだ。事態はここまで俺様の思ったどおりに進んでいる」

DBは途端に笑みを消し般若のような形相になった。

DB「後は貴様を消すだけだ、軍神<アーミーゴッド>ォ!!」

軍神「それはこちらの台詞だ。これで最後の戦いにしよう」


両雄が、激突した。



889 名前:Chapter4.大戦に愛を それぞれの戦い編その9:2020/02/10 12:41:19.158 ID:xXkcYgXko
黒砂糖 VS 791、抹茶
山本 VS 筍魂
DB VS 軍神<アーミーゴッド>

はてさて結果は?

890 名前:Chapter4.大戦に愛を :2020/02/10 12:42:43.112 ID:xXkcYgXko
少し休憩

891 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その1:2020/02/10 18:36:26.085 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

黒砂糖「作戦は成功した。あとはこちらで時間をかせぐだけだァ」

791「『チョコベビークラスター』」

黒砂糖の上空からチョコ型のクラスター爆弾が襲いかかるも、黒砂糖は巧みな身のこなしで攻撃を避け続ける。

抹茶「くらえっ『出来たてツールV1.40』ッ!!」

未完成品の集計ツールを投げつけるも黒砂糖に叩かれてツールは粉々に砕け散った。

黒砂糖「まだまだァ!こちらから行くぞォ『バーナーショット』ッ!」

791「『スーパーカップバリア』ッ!」

魔法で出した銃火器の火炎放射を791と魔法は防壁で守るも、戦いは黒砂糖の鬼神の如き活躍に劣勢になりつつあった。

肩で息をする二人に対し、黒砂糖はまだまだ余裕ありといった体で肩を回して次の攻撃に備えている。


892 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その2:2020/02/10 18:38:47.935 ID:xXkcYgXko

抹茶「黒砂糖さん…なんて力だ。同期として誇らしい限りだよ」

791「彼の狙いは私のMPを枯らすことだ。抹茶、私の盾になって死んでね」

抹茶「えぇ…」

黒砂糖「喋っている暇があるかなァ!?」

二人の背後の炎壁から火炎玉が飛び出し、既のところで二人は避けた。
続いて間髪入れずに黒砂糖は手に用意した大太刀で二人に斬りかかる。抹茶が791の前に立ち、湯呑みで太刀を防ぎきった。

抹茶「黒砂糖さん、目を覚ましてください。昔はあれほど二人でDBを討伐しようと息巻いていたじゃないですかッ!」

鍔迫り合いの中、抹茶は悲痛な面持ちで黒砂糖に訴えかけた。二人は会議所の同期で軍の垣根を超えた親友だった。
抹茶の悲痛な叫びに黒砂糖の顔は一瞬曇ったが、その後すぐにDB教信者特有の不穏な笑みを戻した。


893 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その3:2020/02/10 18:40:18.243 ID:xXkcYgXko
黒砂糖「『トールディレイ』ッ!」

抹茶の頭上から激しい雷が打ち付ける。避けようとしたがまともに雷を喰らい、抹茶はその場で倒れた。

791「抹茶ッ!」

抹茶「大丈夫ですよ。こんなのかすり傷です…」

腰に携えた携帯ポン酢を飲み干し抹茶は体力を回復した。
黒砂糖は悠然と抹茶を見下ろしている。

791「親友の呼びかけにも応じないどころか騙し討ちなんて、私はちょっと許せないな」

抹茶「待ってください791さん。黒砂糖さんは一瞬ですが迷いを見せました。彼も完全には洗脳にかかっていない、そこが勝機です」

黒砂糖「いくらでも時間はかけていい…あのお方が軍神<アーミーゴッド>を直々に成敗してくれるゥ」


894 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その4:2020/02/10 18:45:51.742 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

同時刻に編纂室でも激戦が繰り広げられていた。

軍神「『アポロソーラ・レイ』ッ!」

軍神の手から放たれた熱光線がDBに向かうもDBはひらりと避けた。熱光線はそのまま奥の書棚にあたり、そのまま熱で溶けてしまった。

軍神「ッ!」

軍神は顔をしかめた。オニロの歴史家としての記憶を軍神は勿論覚えている。
編纂室で過ごした過去を、目の前の宝物を自らの手で無くしてしまった後悔をしてしまった。

DB「どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!こちらからいくぞォォォ!」

DBは高く跳び上がり、自らの毒素で創り上げた手裏剣を投げた。
軍神は抜刀し弾くも、弾かれた手裏剣はその場で四散し毒を撒き散らした。

軍神「ッ!」

顔を伏せながら後退する軍神に、けたたましい笑いを上げながら浮遊したままのDBが追い打ちのように雛あられ形のホーミングミサイルを次々に打ち込んだ。
軍神は疾走る。追尾を振り切られたホーミングミサイルは次々にその場で爆発していく。最初に円卓のテーブルが、続いて書棚が木っ端微塵になっていった。

軍神「くッ!」

皆で額を寄せ合って会議をした空間が、思い出の場所が壊れていく。


895 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その5:2020/02/10 18:51:25.333 ID:xXkcYgXko

軍神「戦闘術・魂『くさむすび』ッ」

DBの周りに巨大な樹木が現れ、伸びた枝葉が彼を捕らえようとするがDBの毒素で彼に辿り着く前に次々と枯れてしまった。

DB「ゲハハハハッ!!どうした軍神<アーミーゴッド>ォ!随分と精細をかいているな!ええッ!?」

DBは手に持ったでんでん太鼓をけたたましく鳴らし、音波の真空波を繰り出した。
しかしでんでん太鼓の音で逆に幾分か冷静になった軍神は、その攻撃を逆手に取るように真空波に“乗り”、跳躍を利用し空であぐらをかいたDBの眼前まで跳んだ。

DB「なにッ!」

手に持った刀で払い、軍神はDBを地面に叩き落とした。

DB「やるなァ。それでこそ狩り甲斐があるというとものだァ」

DBは地面に打ち付けられ口からチョコを吐き出したが、不敵な笑みは崩さない。
今の軍神は、戦闘術・魂を会得し敵の攻撃をも利用しようとする細かな攻撃型のアイムと、791の教えで魔法使いとしての力量を最高にまで引き伸ばした大味の攻撃型のオニロのどちらの特性も引き継いでいる。
器用な援護兵タイプの完全上位互換である明治兵タイプに昇華し、いまや攻守に隙がないのだ。

いくらDBでも構わない存在にまで会議所が彼の化身を育て上げた。
だがその事実を知ってもなお、DBは自らの勝利を揺るがなく確信していた。

軍神に致命的な弱点があることを知っていたからである。


896 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その6:2020/02/10 18:53:45.597 ID:xXkcYgXko
DBはすくっと立ち上がり、地面に降りた軍神には目もくれず、眼前の書物棚に狙いを定めた。

DB「これから新たな歴史を築き上げる俺様の前に、古い過去の遺産など一切不要ッ!」

幻影の術によりDBは瞬く間に増殖し、一様に書棚に狙いを定め攻撃の準備に移った。

軍神「やめろッ!『ビッグサンダー』」

横方向に放たれた雷撃が幻影のDBたちに直撃し吹っ飛ぶも、みな一様に書棚にぶつかり、ある棚は木っ端微塵に粉砕し、
ある棚は轟音を立てて他の棚を巻き込みながら横倒しになって倒壊していった。

軍神「なんてことだッ!」

明らかに軍神には焦りが見えた。軍神の中にあるオニロの歴史家としての感情が、歴史書と編纂室を守らねばならないという使命感を抱かせ、それが却って彼の行動を大きく制限させていた。

DB「守ってみろォ!守ってみろよォ!」

そうした間にもDBはまた幻影で数を増やし、軍神には目もくれず歴史を破壊し始めた。
爆裂音、書棚の倒壊音、書物の破れる音。
その全てが編纂室の悲鳴に聞こえ、軍神は全てのDBを瞬時に片付けるためその場で跳び状況を確認しようとした。

その行動が大きな悪手だった。


897 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その7:2020/02/10 18:56:26.511 ID:xXkcYgXko
DB「―君は本当に馬鹿だな」

軍神の背後から本物のDBの囁き声が聴こえてきたとき、DBの飛び膝蹴りで彼の身体は既に空中でねじ曲っていた。

軍神「ぐはッ!!」

DB「馬鹿めッ!馬鹿めッ!馬鹿めェッ!!貴様が受け継いだのは何も戦闘力だけじゃないッ!アイムとオニロの不完全な性格、心の弱さも受け継いでいるんだよォォ!!」

次々と空中で幻影のDBが現れて軍神を殴打しタコ殴りにしていく。猛烈な速攻にさしもの軍神も防ぎようがなく、次第にその身は終わりの見えない天井に放られていった。

DB「悪腫『裏切りの妖怪けむり』ッ!」

粘着性のある糸からできた蜘蛛の巣が霧の粒を宿して空中に姿を現し、その中心に軍神は捕らわれた。

DB「ゲハハハッ!再三、俺様との戦いに敗れるとは軍神<アーミーゴッド>の名折れだなァ!?」

軍神「誰が負けたと言った?戦いは終戦まで分からない、大戦の鉄則だろう。長い幽閉で元から弱い知能がさらに低下してしまったのか?」

両の手足ともに蜘蛛の糸にがんじがらめにされ、なお軍神は気落ちすることなく挑発的にDBを上空から憐れんだ。

DBはその言葉に一瞬顔を歪ませたが、すぐに自らの絶対的優位を再確認しニタニタと笑い出した。

DB「この間の地下室では貴様を破壊することに急ぎすぎたから失敗した。だが今回はどうだ。
俺様が用意した最高の舞台だァ。これから行われる貴様の処刑は、演出にも気を使ったんだァ」


898 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶体絶命の激闘編その8:2020/02/10 18:58:35.845 ID:xXkcYgXko

得意げに喋り続けるDBを虎視眈々と狙っている者がまだいた。

DB「この場で貴様を処刑しそれを会議所内外にアピールすることで貴様を端とした正のオーラは完全に消滅するッ。
これからは俺様の時代が始まるというわけだァ――なにをするッ!」

軍神「おい、やめろッ!」

未だ部屋に残っていた天高くうねる大戦年表紙が突如揺らめく動きを止め、瞬時にDBに向かったと思うと彼の胴体に蛇のように巻き付きはじめた。
自らの意思でDBを窒息させ暴漢を排除しようとしたのだ。
とてつもない速さで大戦年表はDBの身体に何重にも何重にも巻き付いていく。しかし、今の強大なDBには何ら脅威のない攻撃だった。

DB「グアアアアアアッ!この、小癪なァァァァァァ」

DBは自らの身に貼り付いていた大戦年表紙を真っ二つに引き裂いた。
悲鳴にも似た激しい紙面の破れる音とともに、大戦年表紙は息を引き取るようにその場にハラリと落ちていった。
続くように自動筆記ペン『オリバー』も仇を取らんとする勢いで自らの切っ先をDBに向け突進していったが―

DB「ふんッ小賢しい魔法の器具がッ!!」

いとも容易くDBに振り払われ、オリバーは壁に打ち付けられ静止した。

DB「ゲハハハハハハッ!もう終わりだな軍神<アーミーゴッド>!」

編纂室は大戦場でも見ない程、荒廃の様相を呈していた。
粉砕された家具、倒壊する書棚、燃え盛る炎、そして編纂室の象徴だった大戦年表紙は破られ他の書物に折り重なるようにその身を地に投げていた。


大戦世界の歴史が、終わろうとしていた。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

899 名前:Chapter4.大戦に愛を:2020/02/10 18:59:39.101 ID:xXkcYgXko
DB、強い。

900 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その1:2020/02/10 19:01:44.332 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 中庭】

791「『トッポレールガン』」

抹茶「『おっとっとカイザー』ッ!!」

791が後方から雷の魔法を放ち、間髪入れずに抹茶が接近攻撃をしかけるも慌てることなく黒砂糖はまず抹茶をいなしてから791の魔法を自身の魔法で無力化した。

791「私の魔法まできかないなんて、黒砂糖さんすごいね。本来以上の力を発揮しているねッ」

黒砂糖「791さんと互角で戦えているなんて、後世に誇れるなッ!」

791「フフフ。それは私に勝ってからにしなよ?抹茶、下がってッ!」

791の足元に強大な魔法陣が展開される。

791「『シトラス』ッ!!」

黒砂糖の頭上に幾多ものレモンが降りかかり、大爆発を巻き起こした。
砂埃による嵐が巻き起こり791と抹茶に襲いかかった。

抹茶「791さんの大魔法をくらって生き残る兵士はいないはず…」

791「ハァ…さすがに一回のMPの消費量が激しすぎるなぁ。加減したからまだ生きているとは思うけど、ちょっと目眩がするよ」

砂嵐が晴れると黒砂糖が立っていた場所には巨大なクレーターが空いていた。だが黒砂糖の姿はない。


901 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その2:2020/02/10 19:03:21.972 ID:xXkcYgXko
791「黒砂糖さんがいない…まさか、やりすぎてしまッ――」

瞬間、791の背後の炎の壁からヌッと黒砂糖が姿を現した。

黒砂糖「大魔法使い791、覚悟ッッ!」

791は枯渇気味のMP回復を図っていたため若干の隙が生まれていた。黒砂糖は手にした大太刀で791の背後から奇襲を狙った。その狙いは成功した。
振り返った791が黒砂糖の存在に気づいてもなお、791には次の詠唱までの時間が無く防衛の手段がなかったのである。

抹茶「『完成ツールkinotake total tool Ver0.10』ッ!!」

絶体絶命の窮地を救ったのは咄嗟の抹茶の反応だった。
抹茶の投げた完成集計ツールは黒砂糖の前でパチパチとワタアメのように弾け、黒砂糖は不意をつかれ動きを止めた。

791「『コエダバースト』ッ!」

すぐに詠唱し終えた791が間髪入れずに黒砂糖に向かい攻撃魔法を放った。大量の小枝が矢のように放たれ、まともに全てを受けた黒砂糖は吹っ飛ばされた。

791「助かったよ抹茶。私の奴隷としては申し分ない働きだね」

抹茶「うん、それは喜んでいいのかな?」

黒砂糖が地面に膝を付いた。見ると、黒衣はボロボロになりむき出しになった肌からは血が滴っている。

黒砂糖「魔法の炎壁に身を忍ばせたまではよかったが、シトラスの威力の高さと抹茶の存在が予定外だったな…」

自らの戦いを考察するように、頭を垂れた黒砂糖は悔しげに地面に向かいつぶやいた。


902 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その3:2020/02/10 19:05:29.374 ID:xXkcYgXko

抹茶「黒砂糖さん、いい加減目を覚ましてくださいッ!初代・討伐隊隊長のあなたが、なぜDBの手に落ちたのですかッ!」

黒砂糖「力が欲しかったのさ。その油断が甘さを生みDBに洗脳された」

黒砂糖は顔を上げず淡々と答えた。

抹茶「それが分かっているのならば洗脳は振り払えるはずッ!親友としてのお願いです、正気に戻ってくださいッ!」

791「いや、抹茶。黒砂糖さんはもう正気に戻っている。そうだよね?」

抹茶は驚きの顔で黒砂糖を見た。黒砂糖はなおも顔を上げようとしない。

791「恐らく先程の攻撃かその少し前からもう黒砂糖さんは洗脳を振り払って正気に戻っているよ。オーラで分かる」

黒砂糖は自虐的に嘲笑い、791さんには敵わないなぁ、とつぶやいた。

抹茶「黒砂糖さんッ!今すぐ炎壁の魔法を解いてください。竹内さんがDBと交戦しているから助けに行かないとッ!」

黒砂糖「竹内さん?ああ、竹内さんが追ったDBは偽物だ。俺が具現の魔法で、とある兵士にDBの顔を描いて変装させたんだ。竹内さんの力を恐れたDBの命で彼を遠ざけた。
本物は別の場所で、恐らく軍神<アーミーゴッド>と戦っている」

抹茶「なんですってッ!?」

黒砂糖「…なあ抹茶、791さん。一つ頼みがある。俺はとんでもない大馬鹿野郎だ。会議所を一度だけでなく二度も窮地に追い込んだ。その責任を取りたい。だから―」


―俺を討伐してくれ

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

903 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その4:2020/02/10 19:08:02.641 ID:xXkcYgXko
791「黒砂糖さんはそれでいいの?」

黒砂糖「…俺は洗脳が解けた今でも力を欲している。周りは俺を“画家”やら“絵師”と持て囃すが、その前に俺は一人の兵士なんだッ!
自らの拳で、力で強敵を打ち破りたい。それが喩え仲間であったとしても」

“鉄人”黒砂糖はふらりと立ち上がった。その目は笑っている。

黒砂糖「洗脳が解けた今でも、俺は最後までDB側に付く。軍神<アーミーゴッド>を救いたかったら俺を倒していけ。
俺なりの道義だ。
それが討伐の根拠だ。分かってくれ抹茶」

黒砂糖は落ちていた大太刀を拾い静かに構え直した。そんな黒砂糖に抹茶はほうと溜息を付いた。

抹茶「…黒砂糖さんは大バカヤロウです。この戦いが終わったら黒砂糖さんには僕の作った新作ゲームのテスターになってもらいますよ」

黒砂糖「悪くないなッ―」

儚げに黒砂糖は嗤い、喋り終わると同時に大太刀を振るった。抹茶は片手に持つ湯呑みで斬撃を受け、もう片手で目潰しのために茶葉を投げつけた。

黒砂糖「『ミールメイルストロム』」

半歩下がり攻撃を避けた黒砂糖は、二人に溶解したミルクキャラメルの大波を浴びせた。

791「『ファイアジュール』ッ!」

炎の魔法で、二人に襲いかかったキャラメルの波は溶けて消えてしまった。
抹茶は後ろを振り返り791と目をあわせ一度だけ頷く。作戦が定まった。


904 名前:Chapter4.大戦に愛を 鉄人編その5:2020/02/10 19:12:25.652 ID:xXkcYgXko
抹茶「『超高速湯呑みスロー』」

黒砂糖は屈んで攻撃を避けた。彼の背後でパリンと湯呑みの割れる音が響いた。

黒砂糖「遅い!くらえッ!」

半身のままの黒砂糖が目の前の親友を仕留めるべく再度大太刀を振るった。

791「抹茶ッ!翔べッ!」

詠唱の終わった791の具現化魔法で抹茶の背に羽が生え、勢いよく抹茶が飛翔した。
上空に逃れた抹茶は黒砂糖の攻撃を寸前で避けた。
その姿は、以前黒砂糖自身がアイムとオニロに描いた絵に酷似していた。

黒砂糖「あれは、“羽抹茶”…相変わらず羽のシワの部分がよく描けているな」

上空に浮かぶ彼に見惚れていたその一瞬が、勝敗の分かれ目となった。

791「『ヨーグセット』ON!」

ガチャリいう撃鉄の音。黒砂糖が意識を戻すと、791の目の前には漆黒の禍々しい魔法の大筒が表れ、巨大な砲弾が独りでにセットされていた。
黒砂糖はこの魔法を知っていた。急いで疾走ろうとするも―

黒砂糖「足が、動か、ないッ!」

抹茶「さっきの湯呑みの中に強力なしびれ粉を入れていましてね。いかに“鉄人”黒砂糖さんでも吸引した数秒間は動けませんよ」

強烈な痺れに手足が硬直する中、黒砂糖は数秒後に訪れるだろう敗北を噛み締めるべく目を閉じた。

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905 名前:Chapter4.大戦に愛を :2020/02/10 19:13:47.726 ID:xXkcYgXko
鉄人、散る。

906 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その1:2020/02/10 19:18:59.195 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

DB「邪魔が入ったが、これより軍神<アーミーゴッド>の処刑を行うゥ。目撃者は歴史の観測所たる編纂室だァ。
とはいっても、歴史そのものはもう破壊されてしまったがなァ!!」

下卑た笑いでDBは高笑いし、捕らわれたままの軍神に向き直った。

DB「なにか後世に言い残すことはあるか、軍神<アーミーゴッド>?」

軍神「歴史は“死んでなどいない”。我が消えたとしても戦いの記録は消えやしない。誰かが意志を継ぐ限り、戦いは終結しない」

DB「ほざけェ!」

DBは指でピストルの形を作った。指先に光が溜まる。

DB「あばよォ軍神<アーミーゴッド>!理想を胸に抱えながら息絶え、俺様の作る新たな世界を見ているがいいッ!!」

光が充填され、軍神を射抜かんとした正にその刻――



??「待ってほしいんよッ!!」



編纂室の扉が勢いよく放たれ、一人の兵士が叫んだ。ギョッとした面持ちでDBは顔を向けたが、その兵士の顔を見て途端に安堵した。

DB「なんだァ¢くんじゃないかァ、ビックリさせないでくれたまえよォ」

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907 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その2:2020/02/10 19:22:50.438 ID:xXkcYgXko
DB「その物騒な銃を仕舞ってくれよォ。頼むよォ」

途端に猫なで声で懇願するDB。しかし、¢は動じない。

¢「DB<ダイヴォー>。俺が間違っていた。お前を生み出したのは紛れもなくこの俺だがッ!お前を野放しにさせすぎたッ!」

¢の構える銃を持つ手が強くなり、途端にわざとらしくDBは悲鳴を上げた。

DB「そんなひどィ!ぼくが活躍するたびに諸手を挙げて喜んでいたのは¢くん!きみ自身じゃァないかッ!」

DBは人知れず負のオーラを放出する。誰にも気付かれないように静かに、そして狡猾に。

DB「あの頃、討伐戦が終わるたびに、捕えられたぼくを秘密裏に放してくれていたのは¢くんだろォ!
ぼくの活躍をきみ自身の“最大の発明品”の活躍と重ね合わせて見ていた。そうだよね?」

¢がビクリと肩を震わせた。DBは心の中で舌なめずりした。

DB「だから討伐戦で活躍できるように、きみはぼくを逃し続けた。そうだろう?」


908 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その3:2020/02/10 19:25:42.797 ID:xXkcYgXko
¢「ちがう…ちがうんよ」

DB「違わないよォ。結局、幽閉された後も君はぼくとスクリプトの様子を確かめに人知れず何度も檻の前に足を運んでいたよね?
そのときに自分でも気づかないうちに、脱走の手引をしていた。だからぼくとスクリプトが檻を抜け出せた。それに負い目を感じているんだよねェ?」

¢「違う、違うッ!!」

DBの言葉には語弊がある。¢がDBとスクリプトを気にかけて檻を訪れていたのは本当だが、¢の弱さを知るDBは彼に気づかれぬように小さい洗脳を繰り返し施していた。
そして、K.N.C174年に檻の鍵を持ってこさせ、スクリプトとともに脱走したのだ。
¢は当然この事実に気がついていないが、自らが逃してしまったのではないかと人知れず悩んでいた。

DB「でも、ぼくがきみの“最大で最高の発明品”であることに変わらないから、この窮地に追い込まれてもきみはぼくの討伐を決心できなかった。
そうだよねェ?“親”が“子”を想うのは当たり前だもんねェ?」


―― たけのこ軍 オニロ「…しかし、このまま現代に留まり続けてもDBは見つけられません。
ボクたちはDBを必ず見つけ、討伐しなければいけないんです」

―― きのこ軍 ¢「だからッ!“討伐”ではなくて“捕獲”だと言っているだろ。
集計さんもいた以前の会議で捕獲をメインに据えることは決定されていたはずだ!何度言えばわかるんだッ」



909 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その4:2020/02/10 19:28:57.010 ID:xXkcYgXko

K.N.C180年にて周囲が討伐を主張した際も、¢は頑なに討伐を拒否した。
頭の中では討伐が正しいと分かっていたが、DBが奇行と悪行を重ねるほどに自らの開発品の完成度の高さを実感し、¢は自らの叡智の結集体であるDBに誇らしさを持つようにもなってしまった。
そんな気持ちを逆手に取り、子が親を裏では馬鹿にし利用されていたとしても¢はそれでいいと諦観した。
それは誰が見ても明らかな、歪な愛だった。

¢は事実から逃げるようにDBから目を背けた。
DBは勝利を確信した。¢を負のオーラで包み込み、洗脳もきき、敵が居なくなったことを確信した。

DB「わかる、わかるよォ¢くん。ぼくはそんなきみがかわいくて大ァァァイ好きなんだァ。だから、いまこの瞬間が子の一番の晴れ舞台だからさァ。

親はァァ黙って見ていてよねェェェェ!」

再び指先に貯めた光の充填が完了した。
顔を伏せたままの¢を蔑むような視線で一瞥し、DBは黙ったままの軍神にニタニタと笑う。


DB「あばよォ軍神<アーミーゴッド>ォォ―――」










 ―― パァンッ
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910 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その5:2020/02/10 19:30:41.527 ID:xXkcYgXko

乾いた銃声音が部屋に響き渡り、構えていたはずのDBの手は吹き飛んだ。
痛みを感じるよりも早く、DBは信じられないといった面持ちで銃口を向けた兵士に驚愕の目を向けた。

¢「“親”だから、“子”の不始末にはケジメをつけるんだッ」

¢は凛とした眼でDBを射抜き、すぐさま撃鉄を引いた。

¢「俺は勘違いしていた。DB、俺は確かに愛情を抱いていた」

間髪入れずに二発の銃を発射する。流石のDBも今度は弾を受けること無く避けた。

DB「¢ォォォォォ貴様ァァァァァァ!!」


911 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その5:2020/02/10 19:33:05.870 ID:xXkcYgXko

DBは負のオーラで結集した二本の触手を地から伸ばした。急ぎガードした¢だが、触手の攻撃で両の手に持つ銃を弾かれ武器を失ってしまった。

¢「お前の言う通りだッ、俺は愚かな兵士だ。
自分の功績を誇るためにお前を生かし続けた。心の拠り所だった。


でも違うッ!


俺が本当に愛していたのはお前じゃない――」

DB「死ねェェ¢ォォ!!」

¢の独白を聞くこともなく、DBは丸腰の¢に向かい鋼鉄の触手を向かわせた。¢は構うことなく喋り続けた。

¢「俺が本当に愛していたのは――――







――――― きのこたけのこ大戦なんだッ!!」




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912 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その7:2020/02/10 19:36:06.459 ID:xXkcYgXko
¢の頭上から彼を称える声が届いたかと思うと、次の瞬間DBは大量の書物の渦に巻き込まれ吹っ飛ばされていた。¢を襲う触手も直前で消え去った。

DB「グハァッ!!」

軍神「君はきのこ軍兵士古参として、大戦世界の継続と会議所の発展を強く願い、皆と一致団結するべく仮想の敵DB<ダイヴォー>を創り上げた。
君が本当に守りたかったのはDBじゃない、大戦世界そのものだ。



それこそが【大戦への愛】だ」


拘束の解けた軍神が壊れかけのテーブルの上にひらりと舞い降りた。

DB「なにが起こっているゥ!ふざけるなァァァ!」

憎しみの怨嗟を撒き散らすDBに軍神は見下ろしながら相対した。

軍神「貴様は決戦の地にこの編纂室を選んだ。その目論見は分かった。だが、同時に貴様はとんでもない阿呆だ。なぜ敵のホームグラウンドを決戦の地に選んだ?」


―――オニロ「天井近くにある本はどうやって取ればいいんですか?」

―――集計班「祈れば勝手に本が来てくれます」

―――そう答え、集計班は両の手を組んで目を閉じた。
―――すると、天井近くのはるか遠くの本棚から、するすると一冊の本がアイムたちに向かって飛んできた。

―――集計班「ね、簡単でしょ?」
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913 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その8:2020/02/10 19:39:01.633 ID:xXkcYgXko
軍神「オニロはこの編纂室にある本をほとんど読み切り、全ての本の名前を把握している。心のなかで呼べば本はすぐに付いてくる」

軍神の周りにすぐに数十冊の書物が浮遊した。自分たちも戦いとばかりにそれぞれの本がカタカタと震えている。

軍神「同時にアイムの会得した戦闘術・魂も我を救った。会議所での【我々】の行動は全て無駄ではない。今に繋がっている」

DB「ふざけるなァ、ふざけるなァ、ふざけるなァァァァァァ――」

先程のリプレーを見ているかのように、DBは次々に軍神に招集された書物たちの突進にあいタコ殴りにされていった。
口からチョコを放出し、同時に負のオーラも吐き出していく。DBの力が弱まり、地上にいたDB隊の兵士たちの洗脳も徐々に解けていった。

軍神「『ユリガミノカナタニ』『百合ノ季節』『儒艮漂フ海界』『邪神スピリットJ』『すべて陰陽のもの』『chocolate market』、来いッ!」

呼ばれた書物はすぐに集まり回転しながら、よろめくほど弱っているDBの身体に当たり彼をふっとばした。


914 名前:Chapter4.大戦に愛を 愛の決着編その9:2020/02/10 19:40:57.285 ID:xXkcYgXko
DB「グアアアアアアッ!!」

軍神「歴史が死んだ?大嘘を付くなッ。見ろッ!この通り歴史は生きている。貴様が戦っている相手が、正に我々の【歴史】だッ!!」

軍神の願いとともに全ての書物が宙に浮く。
天井を覆い尽くすほどの大量の書物は目を細めてみるとまるで夜空に浮かぶ星々のように輝いて見えた。
軍神は戦場に出たときの指揮官と同じように、優雅に片手を振り上げた。


DB「やめろォ…やめてくれェ!!!」



軍神「終わりだ。『きのたけ流星群』ッ!!」



上げた手を振り下ろすと、数え切れないほど大量の書物はすさまじい勢いで上空から龍のようにDBを飲み込み牙を剥いた。

DB「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

大量の書物がDBに当たり、DBは泡を食いながら事切れた。



悪しき時空の潮流者は歴史に飲まれ、戦いの幕は閉じられた。




915 名前:Chapter4.大戦に愛を :2020/02/10 19:44:40.487 ID:xXkcYgXko
すみませんまだもうちょっとだけ続くのじゃ。

916 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その1:2020/02/10 19:47:34.674 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

参謀「戦いはどうなったッ!?軍神<アーミーゴッド>は無事か!?」

DBが事切れたことでDB隊の洗脳が解け、戦いは会議所の勝利に終わった。参謀を始めとする会議所兵士たちは急ぎ編纂室に向かい、崩壊した室内を見て愕然とした。

¢「大丈夫なんよ。軍神<アーミーゴッド>がDBをやっつけた」

壁に背を預け身体を休めていた¢が事の次第を告げ、同時に軍神が皆に親指を突き立て笑った時、会議所は勝利の歓喜に湧いた。

加古川「うおおおおおおッ!やったッ!」

someone「成し遂げましたねッ!やったね零歌!」

竹内「フォフォフォッフォ。最後に正義は勝つとな」

抹茶「やったッ!黒砂糖さん起きてくださいッ!あ、疲れて寝てるか…」

皆は武器を捨て、お互いに抱き合い歓喜した。

791と筍魂は軍神に近づき握手した。

791「オニロ…いや、軍神<アーミーゴッド>さん。最高の兵士に育ってくれて嬉しいよ」

筍魂「アイムこと軍神<アーミーゴッド>よ。俺も嬉しいぞ、特別に筍魂<バンブースピリット>様と呼ぶことを許す。そこで寝てる山本さんも嬉しいに違いない」

軍神「よしてください791師匠。こんな姿になっても心はオニロの時のままなんです。あ、筍魂。テメーはダメだ」

筍魂「心の中のアイム、ダダ漏れだぞ」
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917 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その2:2020/02/10 19:51:41.919 ID:xXkcYgXko

皆が勝利に酔いしれる中、冒険家スリッパとサラは室内の少し離れた所からその様子を眺めていた。

スリッパ「終わったな…これでよかったんだ」

スリッパは独り淋しげに呟いた。討伐隊の目的は達成されもう時限の境界に向かうこともないだろう。
最後まで自らを取り巻く【謎】は残ったが、それは些細な問題だ。
悪用を防ぐためにも時限の境界の今後の使用を禁じなくてはいけないし研究課題は増えるだろう。未開の地の調査もまた再開しなくてはいけない。

大戦を引退して冒険家に成りたてだったあの頃のように新たな目的ができ意気高揚する場面で、だがなぜかスリッパは気乗りしなかった。
理由はわかっていたものの、彼は敢えて理解していないふりをした。

スリッパ「また冒険に行かないとな、サラッ!これからまた忙しくなるぞッ」

気を紛らすために背後のサラに声をかけた。
思えばサラとの付き合いも長い。
冒険家に成り立ての頃、家に戻るとどこかで捨てられたのか家の前にサラが置いてあった。以来、スリッパはサラを全ての冒険に連れ出し、サラも無言で主人を守るために付いてきた。
謂わば二人は一心同体。言葉が無くても二人は意思を疎通できるし、互いの考えていることが分かる。

そう思っていた。

いつもならば二つ返事で頷くメイドロボのサラは、この時ばかりは彼の言葉に逡巡する様子を見せ、一瞬の間を置いて静かに首を横に振った。

スリッパ「どういうことだサラ?――」

彼の言葉は突如として発生した背後の轟音とともに遮られた。DBが埋まっていた書物群が突如間欠泉が湧いたように上空に巻き上がったのだ。


918 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その3:2020/02/10 19:54:09.538 ID:xXkcYgXko
DB「コワシテヤルコワシテヤルコワシテヤルコワシテヤルコワシテヤル…スベテスベテコワシテヤルゥ」

DBは書物から勢いよく抜け出し、その身が半壊の状態ながら必死の形相で疾走った。

軍神「往生際の悪い奴めッ!」

とどめを刺そうと軍神が構えるも、DBは歓喜に湧く会議所兵士たちの中に紛れて走り容易に狙いが定められなかった。
会議所兵士たちが一様に集まっているのも災いした。全員が武器を捨てていたため一瞬の隙を付かれ、咄嗟に攻撃に移るのに時間がかかった。

DB「ユルサナイユルサナイユルサナイィィィ」

DBは未だ残っていた入口前の転移魔法陣に飛び乗り、時限の境界フィールドへワープした。
歴戦の兵士がこれほどいながらの逃走劇は、残ったDBの最後の力を見せ付けたといっていいほど鮮やかなものだった。

椿「まずいですよ!DBが時限の境界へいけば再度歴史改変が繰り返されますッ!」

参謀「慌てるなッ!こんなこともあろうかと時限の境界前には社長をはじめとした会議所兵士たちを配置しているッ!
DBはもう虫の息だッ!
そのまま放っておいても斃れるだろうが時限の境界に入れるのはあかんッ!俺たちもすぐに部隊を再編し時限の境界前でDBを討ち取るぞッ!」

参謀は会議所兵士たちを落ち着け、部隊を再編しようと動き出した。


919 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その4:2020/02/10 19:58:02.656 ID:xXkcYgXko

その光景を見ながら、スリッパは迷った。
願ってもない機会に早まる胸の鼓動を必死に落ち着かせる。

ただ、仮にもう一度時限の境界に行けたとしてもどうしたらいいのか分からない。

そもそも、あの場に自分は居なかったはずなのに何故か自分が英雄として崇められた。
ただその理由を知りたいだけなのにリスクの高い時限の境界で過去に行く必要があるのか。


何をすればいい。分からない、分からない――


迷う彼の肩に手を置いたのはサラだった。
スリッパは目を見開きサラの顔をまじまじと見つめる。
彼の命令以外にサラが自発的に動いたことはこれまで無かったからだ。


サラ「スリッパ、全てはこの時のためにあった。君の目的を今の討伐隊の目的と重ねるんだ」



優しげな声色が彼の耳に届く。サラは確かに、ハッキリと彼にそう告げた。

途端、スリッパの頭の中の靄が晴れた。点と点が全て繋がったのだ。

そういうことか、と彼は呟いた。
第二次大戦から今まで彼は目に見えない時間の鎖に縛られていた。その鎖の正体がわかったのだ。

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920 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その5:2020/02/10 19:59:44.860 ID:xXkcYgXko
参謀「それでは発表するッ。これよりフィールドへ向かってもらうのは――」

スリッパ「ちょっと待ったぁッ!」

参謀の声をかき消すようにスリッパが制止し、全員の視線が彼へ向いた。
スリッパはこれから起こる出来事を想像し心のなかで微笑った。誰も想像し得ない長きに渡る旅が始まるのだ。

スリッパ「みんなきいてくれ。長い間、DBとの戦いご苦労だった。みんなが英雄級の活躍をした」

スリッパ「だがしかし!英雄は複数もいらない!今次討伐戦にふさわしい英雄は一体誰だ?」

スリッパは親指を自らの胸につけた。

スリッパ「そうだ!英雄にふさわしいのは初代英雄の 元・たけのこ軍兵士、現冒険家のスリッパ。この俺だッ!」

皆は呆気にとられ言葉を発せずにいる。スリッパはその様子が可笑しくてますます微笑ってしまった。


921 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その6:2020/02/10 20:01:29.039 ID:xXkcYgXko
スリッパ「俺は今日この時のために討伐隊に参加してきた。予想はしていなかったがここからが俺の【役割】だといま気がついたんだ。
歴史を変えずに歪んだ時間の流れを“元に戻す”ためにはこれしかない」

スリッパは転移魔法陣の前に移動し改めて皆を見渡した。この面子とも暫くお別れだと思うと物悲しさも人一倍増す。
悲しさを振り切るように、彼はさらに声を張り上げた。

スリッパ「時限の境界に向かうのはこの俺、ただ一人だ。
向こうにいる社長と協力しDBを【時限の境界へ招き入れて】俺だけが【時限の境界へと入る】。そこで俺がDBを討伐するッ!」

参謀「ま、待ってくれッ!まるでわけがわからんッ!」

¢「そうなんよッ!突然どうしたスリッパさんッ!」

軍神も説得しようと前に出たが、サラがスリッパと軍神の間に入り込んだ。

サラ「すまない。わかってくれないか」

軍神「!!」

サラの声に軍神は目を見開き、直後に全てを察した。

軍神「…スリッパさん、貴方は会議所の、大戦世界の誇りです。軍神の名のもとに命ず。


【DBを討伐】せよ」

スリッパ「承知ッ!後を頼んだぞ…サラ」

サラはスリッパに向かい一度頷き、それを見た彼は転移魔法で時限の境界へと向かい姿を消した。
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922 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その7:2020/02/10 20:10:59.812 ID:xXkcYgXko
参謀「なんでスリッパさんを行かせたんや軍神<アーミーゴッド>!」

抹茶「あの話しぶりだとスリッパさんはDBと時限の境界に入ります。DBはその場で討伐できたとしても、スリッパさんは何らかの歴史改変をしないと現代に帰ってこられないということですよね?」

軍神「いや、スリッパさんは歴史改変を【行わない】。この時代には【もう戻ってこない】」

皆は一様に驚いた。

加古川「それじゃあスリッパさんはどうなるんだッ!?」

軍神はサラに目を向けた。サラはスリッパが消えた転移魔法陣の前で静かに佇んでいる。





軍神「事の真相はそこのサラが――いや、【スリッパさん】が話すだろう」


皆はさらに驚いた。



923 名前:Chapter4.大戦に愛を 或る一人の兵士編その8:2020/02/10 20:13:35.356 ID:xXkcYgXko
サラ「長かったな、ここまで」

サラは指をパチンと一回鳴らした。自らの身体が光り始め、メイドロボの装飾がボロボロと剥がれ始めた。
漏れ出る光の中から現れたのは紛れもないスリッパ、まさしくその人だった。

軍神以外、驚きで誰も声を発せない中、791が思った疑問を口にした。

791「サラは本当のメイドロボというわけではなく、スリッパさんが魔法で変装した姿だったということ?
でもそうしたら、ついさっきのスリッパさんは偽物ということ?」

スリッパ「偽物ではない。【今の時代】を生きていたスリッパ本人さ。私は事情があって今の時代を【二度】生きていた」

先程のスリッパよりさらに老けたように見えるが、スリッパは元気そうに髪をかきあげた。

スリッパ「安心してほしい。過去改変が起きていないこと、あくまで私が今も現代に存在し続けていることがDBを無事討伐できたことへの裏返しになる」

筍魂「勿体ぶらずにそろそろ教えてもらえないか。いったい何が合ったのかを」




スリッパ「そうだな。正確には、【これから何が起こる】のか、だが。全てを語ろう」





老兵は皆の前で語り始めた。或る一人のたけのこ軍兵士の英雄譚を。

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924 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その1:2020/02/10 20:17:36.739 ID:xXkcYgXko

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スリッパが大戦世界に生まれ落ちた時、数多くの兵士と同じように彼には名前がなかった。

名前とは他者を識別する大事な符号であり、名前がない限り彼もその他多くの兵士と同じく、ただ敵軍との戦いに身を投じることでしか自身を輝かすことができなかった。

一人のたけのこ軍兵士がきのこ軍に宣戦布告をし、突如として世界の創造とともに始まった第一次大戦。
その大戦もたけのこ軍の勝利に終わり、世界は束の間の休息に入るはずだった。
しかし、今とは違い血気盛んで加減を知らない兵士たちは時期を置かずに連続で戦いを始めてしまった。


第二次大戦の始まりである。


若きスリッパは丁度その時、第一次大戦を終え自らの家に戻り休息を取っている最中だった。
逸る気持ちを抑えベッドで横になった。次の大戦ではより多くの戦果を上げようと誓い、いつの間にか眠りこけてしまった。
彼が眠っている間に第二次大戦は始まり、終戦した。




彼は第二次大戦には参加していなかった。





925 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その2:2020/02/10 20:20:23.317 ID:xXkcYgXko
翌朝、ねぼけたまま外に出てみると周りの住民から自らを取り巻く環境が一変していた。
第二次大戦の終結と、参加してもいないその戦いで自らが大戦を終結させた英雄なのだと皆口々に語り、スリッパはすぐに目が覚めた。
さらに終戦時に名乗った自身の名前がスリッパであるとその時に初めて周りに聞かされた。

彼は戦意など消え失せ、途端に怖くなった。

人違いだと何度説明しても周りは納得しない。
“きのこ軍をあの一言で葬り去った横顔は忘れない”だの“窮地に追いやられたたけのこ軍を救った英雄はお前しかいない”だの、人々は彼を勝手に英雄に祭り上げた。


純粋に戦いに参加し武功を上げたかっただけなのに、どうして。


スリッパの叫びは誰の耳にも届くことはなかった。

数多くの取材を受け、その度に話をせがまれた。
彼の影響で多くの兵士が名前の重要性に気が付き、名を付け始めたのだと誇らしげに語られた。全て違うと彼は説明したが誰も信じる者はいなかった。


926 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その3:2020/02/10 20:22:04.395 ID:xXkcYgXko

そんな出来事を忘れようと、彼は何度も出撃した。

しかし、彼の名は世界に轟きすぎていた。
一度出撃すれば周りのたけのこ軍兵士からは羨望の的となり、きのこ軍兵士からは目の敵にされ落ち着いて武功など全然立てられなかった。

我慢の限界を悟り、第二十二次大戦をもって、彼は大戦を引退した。
一人の兵士は知らない間に誰かの手により英雄に仕立て上げられ、その存在だけを利用されたのである。



―― アイム「大戦世界発展の第一人者というわけか。そりゃあ各所で神格化されるわな。そんなあんたが、どうしてすぐに大戦をやめたんだ?」

―― スリッパ「…理由なんてないさ。いや、強いて言えば……【理由を知りたくなったんだ】」




927 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その4:2020/02/10 20:23:07.675 ID:xXkcYgXko
スリッパは引退後、冒険家へと転身した。

大戦への未練を捨て去り、ある日家の前に捨てられていたメイドロボ・サラとともに各地を旅した。
自らが見て聞いた体験に彼は心底胸を踊らせた。冒険の手記も貯まり、知名度も手伝ってか冒険譚を書いてほしいとの声も多く上がった。
彼もその気になり、過去を忘れるように熱心に各地を旅して回った。


そんな時に、【時限の境界】の噂を耳にした。

普段であれば笑い飛ばしていたような眉唾ものの噂話に、スリッパは忘れていたはずの過去の記憶を重ね合わせた。
過去をやり直せるタイムマシンフロアという響きに執着し、いつの間にか時限の境界探しのみに没頭する日々が続いた。


928 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その5:2020/02/10 20:24:36.957 ID:xXkcYgXko
かくしてスリッパ著の【きのたけ見聞録】は出版された。

そして事実のみを記すはずの冒険譚の中に、時限の境界という“デタラメ”を執拗に多く盛り込んだことからスリッパは学会から追放され、公の舞台から姿を消した。
周りからも “スリッパは終わった兵士”との烙印を下され、次第に人々の記憶からも消えていった。



――たけのこ軍 抹茶「すごい本じゃないですか…でもそんな本の名前、聞いたこともなかった」

――きのこ軍 集計班「誰も地図上の歴史に興味を示さなかったために
本の存在価値が薄れてしまっていたことが一つ。
なにより、当時の識者たちがこの本を丸っきりの出鱈目が書かれた書物だとして、
端から評価の対象にしていなかった」

―― きのこ軍 きのきの「え、どうして?」

―― きのこ軍 集計班「…単純な歴史書物とは評価し難い『重大な欠陥」があったからですよ」




929 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その6:2020/02/10 20:26:19.610 ID:xXkcYgXko
冒険家としての意欲も消え、人里離れた未開の地で彼はサラと二人で隠遁の生活を始めた。
【時限の境界】がある未開の地を敢えて選んだのは、こんな状況に陥っても少しでも【時限の境界】に近づきたいという自身の潜在意識の現れではないかと、スリッパは夜な夜な思い返しては苦しんだ。
だが、それでも未開の地を離れることはできなかった。


止まったはずのスリッパの歯車が動き出したのはK.N.C180年、討伐隊の面子がスリッパの家を訪ねてきた頃からだった。
そしてひょんなことから、一行は【時限の境界】を発見する。



―― スリッパ「なあサラ。俺は冒険家だったよな。今も昔も夢を追い続けてきた。それを忘れていたようなんだ。
俺はもう一度、あの頃に戻ってもいいんだよな?」



逸る気持ちをスリッパは必死に抑えつけた。終わりかけていた自らの情熱の炎が再度灯り始めた瞬間だった。


930 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その7:2020/02/10 20:27:55.448 ID:xXkcYgXko


―― スリッパの態度も少しおかしい。念願の宝の山たる時限の境界を見つけた時の反応は予想外に淡白なものだった。
だが時限の境界の奥に進むにつれ、緊張で顔がこわばってきている。
時限の境界を発見すること自体が目的ではないということなのだろうか。アイムにはわからない。
例えるならば、獲物の小動物が罠にかかるのをひたすら待っている獰猛な獣のような感じなのだ。



そして今、DBは軍神によって成敗され真の最終戦が時限の境界を経て始まろうとしている。
サラからかけられた言葉にスリッパは確信した。


第二次大戦の真相を、自らがこれから長きに渡る歴史の観測者を務めなくてはいけないということを。




931 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その8:2020/02/10 20:30:41.861 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 時限の境界前】

スリッパは転移魔法でのワープを終え、時限の境界の入口前に走った。
そこでは社長を始めとした数人の兵士が、疲弊しきったDBを相手に善戦している最中だった。
社長はスリッパを見つけるとホッと胸をなでおろした。

社長「スリッパさんッ!DBの野郎、時限の境界に入ろうとしてるんですがここで食い止めていますッ!スリッパさんが止めを…」

スリッパ「社長、いままでご苦労。あとは俺に任せて皆は会議所に戻ってよしッ!これは軍神の命であるッ!」

呆気にとられた社長の脇を、瀕死のDBが死にものぐるいですり抜け、時限の境界へと入っていった。
スリッパがそのあとに続く。

社長「あワお〜っ!!どうしたらいいんだ!」

遠くに木霊する社長の慌てふためく声に微笑いながら、“あとはしっかりやれよ”とスリッパは一人呟き扉をパタリと閉めた。


932 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その9:2020/02/10 20:32:25.572 ID:xXkcYgXko
【K.N.C180年 会議所 時限の境界】

DBの生命の灯はもうすぐ消えようとしている。
だが、走る速さだけは衰えない。その原動力は激しい憎しみ、そして怨嗟。
巨大な悪だけが生命尽きようとしている彼を突き動かしている。

DB「ニクイニクイ…会議所ニクイィ、大戦がニクイ」

DBはうわ言のように恨みつらみを口にしながら疾走る。
向かう場所はK.N.C1年。第一次大戦をめちゃくちゃにして大戦の基礎の礎が出来る前に兵士の士気を根こそぎ削いで大戦世界を根本から破壊する。
世界が自分のものにならなければ破壊してしまえばいい。
DBの極端な思考と行動は、僅かではあるが大戦世界に危機をもたらしていた。

スリッパ「どこへ行くつもりだDB?」

DBが息を切らしながらもK.N.C1年の扉があるフロアについた時、既にスリッパは先回りし待ち構えていた。

DB「貴様は…たしか…」

スリッパ「俺が誰かなんてどうだっていいことだ。お前が向かう場所はもう決まっているッ!」

スリッパは失われていないDBの片手を掴むと、既に開け放っていたK.N.C2年の扉へDBを投げ入れた。

抗う気力もなくDBはK.N.C2年へ吸い込まれていく。それを確認してから、スリッパも扉の前に立った。

ほんの少し、僅かではあるがK.N.C180年への名残を感じながら、彼もすぐさまK.N.C2年へと向かった。


933 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その10:2020/02/10 20:34:12.501 ID:xXkcYgXko
【K.N.C2年 第二次きのこたけのこ大戦】

大戦は既に終盤を迎えていた。
大戦場は今とは違い、喧騒に包まれていた。集計係もいるが現代のように確固として確率された仕組みではなく、有志が行っていた。


「ほらほら現在は5:23でたけのこ軍が有利だよ。きのこ、負けんじゃねえぞ!!」


戦場の中央付近で銅鑼をしきりに鳴らしながら、集計結果を叫んでいるきのこ軍兵士の名は確かアルカリという名前だったはずだ。
ただ、この時代にはまだ彼にも名前はない。第二次大戦を期に【スリッパの活躍で】皆が名乗り始めるのだ。

「アンチきのこマシンが作動している!ウィーン・・・キノコキノコキノコキノコオラオラオラオラオラオラオラ!」

社長はいつの時代になっても変わらないなあと、先程別れを告げたはずの兵士が好き勝手に戦っているさまを見てスリッパは少し安心した。

この時代に兵の統率など無いに等しく、各々が個人の戦果のために戦っていたのだ。


―― 歴史を変えてはいけない。過去改変を起こさずに、大戦年表に書かれている通りの内容を起こし世界を持続させる。


強い決意を胸に時限の境界から大戦上に到着したスリッパは、この時代の彼自身になりきる必要があった。

934 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その11:2020/02/10 20:37:30.822 ID:xXkcYgXko
スリッパ「みんな、キノコ狩りに興味はないか?」

たけのこ軍兵士たちはキョトンとした表情でスリッパを見た。
スリッパはポケットに入っていた大尉のバッジをあわてて付けた。

スリッパ 大尉‡「皆の衆ご苦労ッ!一旦、手を止め聞いてくれッ!敵軍の前線に大将格の兵士がいるとの情報が入ったッ!」

スリッパ 大尉‡「我軍の勝利は近いが敵の息の根を完全に止めなければ意味がないッ!
これより単身で乗り込み大将格を討ち取ってくるッ!」

一瞬の間を置いて、途端にたけのこ軍は色めき立った。


「お気をつけて大尉!」

「うおおお、負けねえぞきのこの野郎!」

「アンチきのこマシンが作動している!ウィーン・・アンチきのこマシンが作動している!ウィーンウィーン・・」


スリッパの鼓舞に当てられたか、たけのこ軍は俄然勢いに乗った。

彼もすぐに歩みを進めようとするが、おっと忘れていた、と足を止めスリッパは皆にきこえるように叫んだ。

スリッパ 大尉‡「皆の者、よく覚えておけ。俺たちの軍を勝利に導く兵士の名をッ!
俺の名はスリッパ大尉ッ!大戦が終わったら皆も名前をつけろよ!存外悪くないものだぞッ!」



935 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その12:2020/02/10 20:39:40.935 ID:xXkcYgXko
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DBは命からがら時限の境界を離れ、大戦場にやってきた。

どこかで傷の手当をしたいが目の前の混戦の中だと休める場所はない。
何よりもスリッパに追われている身だ、まずは隠れないといけない。

DB「俺様の力をなめるなよ…まずはこの大戦をめちゃくちゃにして、その後は大戦世界を破壊してやるゥ」

DBは最後の力を振り絞り再びきのこ軍兵士に化けた。
きのこ軍陣内に行き、近くの高台に飛び移り、DBは周りの兵士の前で高々と宣言した。

DB「おいみんなァ!実は集計係はきのこ軍ではなくたけのこ軍のスパイだァ!あいつの言う情報はめちゃくちゃだッ!まずはあいつを始末してたけのこ軍を始末しようッ!」

「なんだと!?それは本当か!」

「ふざけるなッ!俺の集計にケチをつけるのはどこのどいつだッ!」

騒然とするきのこ軍陣内の様子にDBは満足げに頷く。力こそ奪われても、他者を利用して自らの思い通りに動かす力は彼の天賦の才だ。
それさえ失わなければ自分は消えることなど絶対に無い。

DBは自らの才能に受けた傷も忘れ一人高笑いをした。







(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

936 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その13:2020/02/10 20:41:56.334 ID:xXkcYgXko
「みろ!たけのこ軍だ!」

「げ、迎撃の準備をしろ!」

慌てふためくきのこ軍を尻目に、スリッパは詠唱を始めた。

DB「ま、待てスリッパ。俺様が悪かった。見逃してくれェ…」


虚しいDBの懇願はもうスリッパの耳には届かない。


スリッパは大魔法を唱えるべく、空中へ跳び上がった。
こういう時はインパクトを与えるほうがいい結果を生む。過去の歴史が証明している。

詠唱の最中、チラリと、かつて自身が住んでいたたけのこの里の方を見やる。
当時の自分は何も知らずにスヤスヤと寝ているんだろう。
きっと明日から事態は一変し、終いには嫌気が差し大戦から逃げ出してしまうことだろう。



だから、自分がサラというメイドロボになり若き自分を支えて上げよう。全ては今日この時を迎えるために。



これから頑張れよ、とスリッパははるか遠くにいる自分に届きもしないエールを送った。



937 名前:Chapter4.大戦に愛を 英雄譚編その13:2020/02/10 20:46:59.814 ID:xXkcYgXko





スリッパ「突き進む!そのさきが闇だったとしても!!」







DB「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!!」








スリッパの上空から放たれた巨大な火炎玉は瞬く間に脂ののったDBを飲み込み燃やし尽くした。
割れんばかりの大歓声が上がる中、創り上げた巨大な火炎柱と獄炎は、どこまでも青く澄んだ空に一際よく映えた。





(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

938 名前:Epilogue. :2020/02/10 20:48:11.954 ID:xXkcYgXko





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きのたけWARS 〜DB討伐〜
Epilogue.

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939 名前:Epilogue. その1:2020/02/10 20:53:11.844 ID:xXkcYgXko

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頬をなでるようなそよ風がこそばゆく、アイムは静かに目を覚ました。

自分の隣で立派に咲き並んでいた草花が風になびき、起きなさい、と囁いているように聞こえたのだ。
気のせいかもしれない。最近、ロマンティックな表現が頭に多く浮かぶようになったのはオニロにオススメの小説を多く借りすぎてるせいだな、と気恥ずかしさを隠すようにアイムは人のせいにした。

寝ぼけ眼で半身を起こすと、少し離れた丘の上からでも会議所はハッキリと視認でき、復興の様子が進んでいることが分かった。

以前のDB隊の突入により会議所は隅々まで破壊され、当初その復興には多大な時間がかかると予想された。
しかし、会議所兵士だけでなく両軍の一般兵士の力も進んで加わり手を貸すことで復興は着実に進んでいた。
一般兵士の中には元・会議所兵士も多く居て、皆との久々の再会を経て、次は戦場での再会だ、と約束した者までいると聞く。

建材の運ばれる運搬器材の作業音と、釘を打ち付けるコンコンという小気味良い音が響き渡る。アイムはその音を聞くのが好きだった。
活気あふれる会議所を象徴する調音を耳にしながら、アイムはもう一眠りつこうかと目を閉じた。



――『やあ、久しぶりだね』


アイム「久々という程、オレとそんなに面識はないだろあんたは」

アイムの頭の中に響いてきた【謎の声】は、今次討伐戦の中で時限の境界の【制約】をアイムに唯一告げてきた声と同じだった。


940 名前:Epilogue. その2:2020/02/10 20:54:12.412 ID:xXkcYgXko

――『そういえばそうだね。というか軍神<アーミーゴッド>のままじゃなくて、またアイムとオニロに戻っちゃったんだ?』

あっけらかんとした口調で声は続ける。アイムも大して気にせず、フンと一息ついて寝返りをうった。

アイム「あれから軍神<アーミーゴッド>の中でオニロとも話し合ったが、こうしたほうがそれぞれの軍の【希望の星】として、大戦を引っ張っていけるんじゃないかって思ってさ」

討伐戦後、軍神は¢に再度頼み込み圧縮装置でアイムとオニロに戻った。
今は二人ともきのこ軍、たけのこ軍に戻りそれぞれ希望の星として会議所になくてはならない存在となっている。


941 名前:Epilogue. その3:2020/02/10 20:55:42.666 ID:xXkcYgXko
――『そうなんだ。まあ何はともあれうまくいって良かったよ』

どこまでも他人事のような声に、アイムは少し黙っていたが意を決して口を開いた。


アイム「なぁ。オレからも質問していいか?」

一陣の風がアイムの頬を再び撫でた。先程とは違い少し警告するように強くだ。

――『なんだい?』




アイム「【預言書】を書いたのはお前だな?」

――『そうだよ』

あっさりと声は認めた。



942 名前:Epilogue. その4:2020/02/10 20:57:57.513 ID:xXkcYgXko

――『うまいストーリーだと思ったんだけどなあ。DBの存在は目に余っていたし、軍神<アーミーゴッド>も皆から忘れられてしょぼくれていたし。
お互い最期に活躍させるにはうってつけの機会だと思ったんだけどねえ』

アイムが軍神の“欠けたピース”でも構わず、声は自身の考えを述べた。

アイム「シューさんの行動はお前でも予想外だったんだな」

――『そうだねえ。あの兵士にも困ったもんだよ。地上と【避難所の避難所】という重要な連絡役を任せていたのに、こっちの予定外の動きをされちゃあ困っちゃうよねえ』

アイム「それでもシューさんを消すまでしなくても良かったんじゃないのか?」

――『あれは無口さんが強行したことだけど、まあどの道彼の動きを封じなくてはいけなかったから遅かれ早かれではあったけどね。
まあまた【策】は練らないとだけどね』

君たちがきてから全てめちゃくちゃだよ。謎の声はそういいからからと笑った。
怒りはなく、ただ本当におもしろがっているだけのようだ。


943 名前:Epilogue. その5:2020/02/10 20:59:41.326 ID:xXkcYgXko
アイム「編纂室もめちゃくちゃになったが、幸い大戦年表は無事だったようだ。テープで紙同士をつなぎ合わせているからちょっとみすぼらしいけどな」

アイムは喉の渇きを感じ、持ってきたチョコを口に含んだ。

――『時限の境界も編纂室もこの戦いの後にまだ使う予定があったけど、預言書が使えなくなっちゃったからね。まあ好きに使ってよ』

アイム「編纂室はともかく、時限の境界はもう使わねえよ、あんなところ。懲り懲りだ…」

アイムは再び草むらにその身を落とした。
木陰から零れる木漏れ陽を浴びながら、筍魂程ではないが最近はひなたぼっこの良さを分かってきた、これも戦闘術・魂の教えかな、と見当違いの冗談をアイムは考えた。
こんなくだらない考えができるようになったのも、目の前の謎の声とも平気で話していられるのも、全て平和が戻ってきたからだと実感した。


944 名前:Epilogue. その6:2020/02/10 21:02:06.313 ID:xXkcYgXko


アイム「なあ、これだけは一つ言っておく」

――『なんだい?』

アイムは暫く陽を浴びながら黙っていたが再び口を開いた。
謎の声は興味津々とばかりに聞き返してきた。

アイム「兵士にもよるだろうが、会議所の中にはあんたらを許してない兵士も多い」

――『まあそうだろうねえ』

DBと軍神<アーミーゴッド>を相打ちさせて世界を操っているなんて、いかにも悪の親玉みたいだものねえ。
屈託ない笑い声を上げながら謎の声は同調した。

アイム「だけど少なくともオレとオニロはあんたらのことを嫌ってはいない」

――『へえ。君たちを消そうとした張本人なのにかい?』

アイム「やり方に違いはあれど、テメエも大戦世界の継続、発展を願っているんだろう?皆と考えに違いはない、同士さ」

――『…』

初めて声は押し黙った。押し黙ったように聞こえただけかもしれないが、アイムは構わず続けた。


945 名前:Epilogue. その7:2020/02/10 21:02:59.847 ID:xXkcYgXko
アイム「オレとオニロはこれからも軍神の“欠けたピース”として、会議所を率いていく。
テメエらが裏で世界をより良くするようにこれまで通りコソコソ動き回るのは別にいい。
だけど、もし会議所で起こそうとしている案とテメエらの案が相反して、自分たちの案を押し通そうと騒乱を起こそうというのなら―」






― その時は世界の創始者であろうが容赦なく叩き斬るからな。








946 名前:Epilogue. その8:2020/02/10 21:05:44.769 ID:xXkcYgXko

アイムの最後の言葉に、謎の声こと大戦世界の創始者・たけのこ軍 まいうは少し黙った後、実に愉快そうに笑い始めた。


――『あはははは。やはり君たちはおもしろいねえ。見ていて飽きない。君たちに任せていれば会議所も大戦世界も安泰だッ。
そう考えると預言書を破棄して君たちを生き残らせた会議所の判断は間違ってなかったのかな』

アイム「あんたもたまには遊びに来いよ」


――『ふふ、考えておくよ。さて、そろそろお別れだ。こちらはこちらで忙しいんだよ。じゃあねアイム』


アイム「じゃあな、まいうさん」



――『大戦に幸あれ』



947 名前:Epilogue. その9:2020/02/10 21:07:23.884 ID:xXkcYgXko

声は途絶え、辺りには再び静けさが戻った。
さてと、と一人息を吐き、アイムは日課の昼寝に戻ろうとした。

すると、間髪入れずに丘を登ってくる一人のたけのこ軍兵士の姿が見えた。オニロだ。
オニロが走ってきた。何やら少し怒っている。

オニロ「やっぱりここにいたねアイムッ!定例会議の時間はもうすぐだっていうのに、サボって昼寝してッ!」

アイム「ゲッ。なんで此処が分かった、誰にも言ってなかったのにッ」

オニロ「ボクはアイムと同じ軍神<アーミーゴッド>の片割れだからね。アイムの考えることくらいお見通しさッ!」

アイム「気色の悪いことを言うな…眠気がふっとんだじゃねえか」


948 名前:Epilogue. その10:2020/02/10 21:10:14.207 ID:xXkcYgXko

オニロ「ほら戻るよ、アイムッ!今日は今度開かれる大戦に向けた新ルールの策定と、復興に向けた新プランを改めて考えないと」

アイムは渋々といった様子で起き上がる。

アイム「へいへい。段々、議長っぷりが板に付いてきたな。どっかにいるシューさんも浮かばれるなこりゃ」

オニロ「なんかシューさんの怠け癖をアイムが引き継いでいる気がするけどね…ほら、さっさと行くよッ!」



アイムとオニロの二人は会議所へ戻っていく。




二人のいた場所に再び、さあとそよ風が吹いた。
咲いていた草花が、二人を見送るようにゆらゆらと揺れていた。





Fin.


949 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 21:12:54.350 ID:xXkcYgXko
2014/01/11の投稿開始からなんとほぼ6年。
待ってくれていた方には大変申し訳無いと思いつつ、なんとか完結いたしました。
本当にありがとうございます。詳しい裏設定はこれよりwikiの方で公開したいと思いますが。

まずは、本当にありがとうございました。

950 名前:たけのこ軍:2020/02/10 21:18:28.075 ID:Ionp5xOk0
長年の投稿乙。
謎の声の正体、残ってそうなところから考えたけどまぁ順当?
ユリガミサマの外伝はあるのかなぁ?

951 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 21:39:52.538 ID:xXkcYgXko
>>950
ありがとうございます。ユリガミサマを昨日改めて読み返しましたが快作ですね、あれは。
最後の投稿を大いにアシストしました。ありがとうございます。お待ちしています。

ということで設定資料集を公開します。
結構盛りだくさんにしてみたのでお時間ある時にみてください。

wars設定(ネタバレ)
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%c0%df%c4%ea%a1%ca%a5%cd%a5%bf%a5%d0%a5%ec%a1%cb#history



952 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 21:40:22.518 ID:xXkcYgXko
>>951
すみませんURLはこちらのほうがいいかも。
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%c0%df%c4%ea%a1%ca%a5%cd%a5%bf%a5%d0%a5%ec%a1%cb


953 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/02/10 23:22:18.156 ID:xXkcYgXko
warsまとめ
https://seesaawiki.jp/kinotakelejend/d/wars%a4%de%a4%c8%a4%e1

wikiにも投下終わりました。
まだサイドストーリーとか書きたいものはあるけどとりあえずまずは一区切り。

954 名前:791:2020/03/12 23:06:03.020 ID:mSt92ZoMo
ss本当に本当にお疲れさまでした!!!
すごく面白かった!

955 名前:きのこ軍 wars完結しました:2020/03/15 23:25:15.111 ID:MbDkBLmQo
>>954
うれしい。ありがとうございます。791さんの応援もあり最後までがんばれました。

次回作も予定していますのでよかったらみてね。warsよりは短くします。
きのたけカスケード ss風スレッド
http://kinohinan4.s601.xrea.com/test/read.cgi/prayforkinotake/1584282254/


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