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ユリガミノカナタニ2

1 名前:社長:2016/09/04 00:44:24.091 ID:PNG5mMkE0
邪神スピリットJ あらすじ

鬼のマタギ、ディアナは人魚を狩る狩人を殺すとともに、襲われかけていた幼い人魚ネプトゥーンを助けた。
そして数十年後―――再び狩人を殺したディアナだが、最後の一人の自爆で大怪我を負って海の底に沈んでしまった。

そこには、ネプトゥーンの親が治める竜宮があり、ディアナも人魚の肉を狙った存在と勘違いされた。
それをネプトゥーンは訂正しようとしたが聞き入れられず、ディアナを助けて駆け落ちしようとした。

ディアナに人魚の血を飲ませ、傷を癒したネプトゥーン。
ネプトゥーンは助けられた時から好きになったとディアナに告白し、二人は逃げることにした。

そして―――無事に逃げ、海岸まで上がることができた。

133 名前:社長:2017/01/31 02:37:04.155 ID:.ZbqFavM0
勝手に設定作ってごめんなさい!

134 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:24:38.055 ID:kthCVMSY0
オモラシスが世界を蹂躙する中を、鈴鶴は駆け抜ける―――。

鈴鶴は、集計班の願いを思い返していた。

135 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:26:41.897 ID:kthCVMSY0
集計班「二つ目の願い……
    それは、来る未来に出現すると言われる、オモラシスの大量発生事件についての願い、なのです―――
    【預言書】のこの欄を見て頂きたいのですが……」

集計班は、【預言書】の当該部分を指でなぞり、鈴鶴に見せた。

神の力を秘めたる【剣】――。
其れは封じられた少女を目覚めさせ、そして少女を封じた乙女との決着を付けに行く―――。

鈴鶴「………
   それが【預言書】に或るなら―――わたしにこうして頼む必要はない―――
   貴方に頼まれなくとも、わたしは決着を着けに行くでしょう―――結果はどうなろうと…」

136 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:27:11.128 ID:kthCVMSY0
集計班「いいえ、頼む理由があるのです―――
    その理由は、【預言書】の、此方にに書いてあるこの部分―――
    きのたけ世界の滅亡を防ぐために、二人の救世主が命にかえて世界を存続させる―――

    わたしは此れを書き換える―――この救世主を死なせないために―――」

集計班は、虚空を見つめながら淡々と語った。

集計班「つまり、其れにより【預言書】も消え去ります」

鈴鶴「……つまり、この【預言】は幻に還るということになるわね
   けれど、それでは此の未来が起きることは分からなくて?」

137 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:29:12.667 ID:kthCVMSY0
集計班「いいえ……此の未来は、いつになるかは分かりませんが、起きる筈です―――」

鈴鶴「……如何して?何処にあるとも知れぬ【剣】が、如何して此処に来ると言える?」

集計班「其れは―――其の【剣】は、私が封印したから―――
    そして、少女のことをわたしは知っているから―――」

鈴鶴「………詳しく教えてもらいましょうか」

集計班「そう……貴女には、全て話さなければなりませんね」
    遙か昔の話です―――」

138 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:29:32.974 ID:kthCVMSY0
そして集計班は、過去を語り始めた。

139 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:32:35.950 ID:kthCVMSY0
此の世界に、大戦を行うという概念が起きる前、集計班はある街の市長と親交があった。
その市長には妻一人、娘二人が居た。最も、其の妻は、二人目の娘を産むと同時に亡くなってしまったが――。


集計班は、市長とは、妻を娶る前から親交があった。
というよりは、市長の妻との出会いにも関わっていた。

集計班は街の小さな役所で、街に関する事柄を処理していた。
その傍らで、二人は此の世界の根幹たる力は何なのかを探求していた。

140 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:32:48.971 ID:kthCVMSY0
そんなある日―――。

二人は、街の近くの砂浜を散歩していた。
その砂浜には、【鏡】を抱えた、黒髪の少女が流れ着いていた。
まるで、神に仕える特別な雰囲気を持った少女だった。

少女はひどく弱っており、二人は街の病院へ少女を運んだ。
話すところによれば、遠い暗闇の中から、此処にやってきた―――と。
そして、ある【剣】も持っていたが、其れは何処かに消えてしまった―――とも言った。

141 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:33:00.721 ID:kthCVMSY0
少女は行くあてがあるわけでもなく、市長がその少女の身柄を引き取った。
そしていつの日か―――市長と少女は結ばれ、子を1人設けた。

けれども―――2人目の子を産む時、少女は黄泉の國へと旅立ってしまった。

142 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:33:22.136 ID:kthCVMSY0
それから5年後――――。
集計班は、出先で此の世界の歴史を動かすものが何なのか、曖昧ながらも手掛かりを掴んでいた。

そして街に帰ってきた時―――街は業火に包まれ、そして住人達が逃げ惑い、死体が重なり、街は消えてしまった。
大切な友が、いなくなってしまった―――。
失意の元、其れでも市長は世界の謎を解き明かせと言うだろうと考えた集計班は、ひたすらに謎を追い求めた。

143 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:34:40.マオウ ID:kthCVMSY0
街が消えてから凡そ1年後―――緑色の悪魔、オモラシスが世界を襲った。
沢山のオモラシスは世界を荒らし、民を荒らした―――だが、突如其れはすべて倒された。

集計班は、その出来事について調べていた。
楽園に住まう二人の少女の争いに起因するものという噂も聞いた―――。

そして調べるうちに、きのことたけのこ―――この二つが起こす争いが、世界の根幹たるものであり、歴史を動かす力だと気が付いた。

144 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:35:21.184 ID:kthCVMSY0
その説に賛同したまいう等の実力者が、大戦を行って其れを確かめてみよう、と提案した。
そして大戦が執り行われ、きのこたけのこ大戦が生まれた。

また、大戦を総括する【会議所】という施設が作られることとなった。

145 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:35:35.625 ID:kthCVMSY0
【会議所】を建設するために、集計班は測量をしていた。
その時―――【剣】を拾った。

禍々しい蛇の鱗が刻まれた、白い【剣】を―――。
昔一度見た【鏡】に似たものを感じた集計班は、此れがあの少女の言っていた【剣】だと実感した。

146 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:35:55.161 ID:kthCVMSY0
其の【鏡】は少女の願いで封じていた。
集計班は、【剣】にも同じ事を施さねばならないだろうと考え、【剣】を強力な封印を込めた箱に詰めた。

其れは、【会議所】が建設された時、其れを自身の部屋で管理していた。

147 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:36:11.814 ID:kthCVMSY0
数年が立ち、wiki図書館に【地下編纂室】が作られたある日―――。
集計班は、【預言書】の指示に従って地下を調べていると其処に突如、闇の狭間が覗いている事を見つけた。

その中には―――本を抱えた幼い少女が、禍々しい瘴気を放ちながら眠っていた。
集計班は幼子に見覚えがあった。

そう―――それは市長の妻となった少女の娘、ヴェスタであった。
集計班は、救いだしたいという気持ちを抑え、【剣】を封じの中に放り込み、そして闇の狭間を閉じた。

148 名前:集計班の遺言:2017/02/12 01:36:22.520 ID:kthCVMSY0
その闇の封印を強固にするために、地形を利用した封じもつけた。
―――全ては、【預言書】に、百合神が少女との決着をつけると書いてあったからだ。

その引き金となる事件は、【封呪の聖晶糖】の破壊―――。
【剣】を握ったヴェスタが、其れを破壊させるように、【剣】の力でwiki図書館に兵を閉じ込めさせる、と―――。

149 名前:社長:2017/02/12 01:36:37.602 ID:kthCVMSY0
集計班さんに謎の設定をつけていくスタイル

150 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:14:56.016 ID:va.rwX9M0
―――。

鈴鶴「事情は分かったわ……
   【剣】が其処に或るならば、いずれ起きるということね
   けれど、【預言書】を書き換えるなら、其れが何時起きるかは分からないわけでしょう?
   どうやって、わたしに合図を送るか、決めているの?」

集計班「ヴェスタを封じるために使った封印の一つは【封呪の聖晶糖】
    貴女に動いてもらう合図は、其れが破壊された時、先ほど話した【社長】に、合図を送るようにします
    封筒に合言葉を入れて、届けさせる手筈です……」

151 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:15:20.739 ID:va.rwX9M0
鈴鶴「わたしに動いてもらうための―――合言葉は、何にしましょうか」

集計班「【集計班の遺言】―――といきましょう」

―――。

152 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:20:57.118 ID:va.rwX9M0
―――。

オモラシスが全てを駆逐し、一時は世界が破壊されかねない―――そんな極限状態にまで陥ろうとしていたが、
きのこたけのこ会議所の兵士の奮闘、そして百合神の手助けで其れはなんとか喰いとめられた。

ヴェスタは、戦場から姿を消し、会議所の向こうへと駆けて行った。
【創世書】を右手に、【剣】を左手に持ち―――ずっとずっと駆け抜けた。

鈴鶴は後を追って行った。
腰には愛刀姫百合を、そして左手に黄泉剣を構えて―――。

153 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:22:38.916 ID:va.rwX9M0
たとえ少女であろうと、オモラシスの元凶かもしれない少女。
ヴェスタを捕らえようとする輩は、鈴鶴が予想した通り存在した。

大抵は公な目的で動いていたが、その中には、肉欲を充たすために彼女を捕えようとする輩も居た。
しかし―――ヴェスタを捕えようとする輩は、誰彼構わずに眠りについた。

154 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:23:23.699 ID:va.rwX9M0
ディアナ「―――ネプトゥーン、まだ居るか?」

ネプトゥーン「10時の方向…!10人、会話内容はこの少女を生け捕りにして売る―――」

ディアナ「了解―――」


そう、ディアナ達が始末をつけていた。
方法はディアナ達に任せる―――鈴鶴はそう彼女たちに願ったため、その依頼を果たしているのだ。

155 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:23:42.300 ID:va.rwX9M0
ネプトゥーンに地面の中を泳いでもらい、其処から敵の粗方の位置、装備、ヴェスタを捕える目的を探らせ――
そして、敵に応じてディアナは弾丸を変えて狙撃した。

世界を脅かす存在を鎮静させる為―――そういう公な目的がある輩は、麻酔弾でしばらく眠ってもらい―――
肉欲で彼女を捕えたりと、欲を充たそうとする輩は、永久の眠りに―――常世に行ってもらった。

156 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:24:22.878 ID:va.rwX9M0
敵1「何処から狙ってるんだっ、敵はっ!?……此処から身を隠せる場所なんて、1キロも離れ―――」
この敵の集団は、常世に行くべき集団だ。其処にロケット弾が、武器を巻き込んで着弾した。

敵2「ぐっ!こんな狙撃が出来る奴なんて―――軍にいたか!?」

敵3「こんなに離れた所から精度の高い狙撃が出来る奴までは…
   いや、待て……聞いたことが或る、ディアナと言う名の女マタギが射撃に秀でていると……」

敵2「馬鹿な!マタギがこんな事に関わ―――」

そして、2つ目の着弾と共にその集団も全滅した。

ネプトゥーン「………しかし、此れほどまでに敵が多いなんて―――」

ディアナ「仕方がない―――俺たちの出会った緑色の悪魔だって、街一つを滅した奴だった
     それほどまでに恐ろしいものをいくらでも呼び出せる少女に、目を付けない奴は少ないだろう」


157 名前:集計班の遺言:2017/02/25 00:25:56.050 ID:va.rwX9M0
――――。

そして―――。

鈴鶴は、件の少女の―――ヴェスタのもとに辿り着いた。
其処は海の上に浮かぶ一枚岩だった。

158 名前:社長:2017/02/25 00:27:20.621 ID:va.rwX9M0
ロケットランチャーも使える系マタギ

159 名前:集計班の遺言:2017/03/06 00:58:58.536 ID:kTjTGIAk0
盾30尺、横36尺ほどのその岩は、天辺はまるで誰かに磨かれたかのように滑らかな平面をとり、
海底から海面まで、一繋ぎに刺さっていた。


鈴鶴「ヴェスタ――――」


黄泉剣を構えた鈴鶴に、ヴェスタは【預言書】を握り締め、左手の【剣】から瘴気を出しながら、見返った。
その顔は―――かつてヴェスタを封印したときのように、変わり果てた姿ではなく―――
それは、想い出の中にあるヴェスタの顔、そのものだった。

眼以外は。

眼は、朽縄のように妖しく輝いていた。
それは蛇眼であり―――邪眼であった―――。

160 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:02:59.172 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「鈴鶴、おねえちゃん―――」
けれども、心は――鈴鶴に対する気持ちは、縁の切れたあの時のままで―――。

ヴェスタ「この世界を創ったのは―――わたし―――」

その言葉と共に、右手に【剣】を構えた。



鈴鶴「何処から持ってきたのかは如何でもいい……
   けれども、その【剣】は―――

   【創世書】よりも、はるかに恐ろしいもの、なのよ――」


ヴェスタ「けれども―――この【剣】は―――
     おねえちゃんにとっての、左目に或るそれと同じようなもの――

    【創世書】と違って、この【剣】はわたしの【血】にとって一番合う―――そう、本能で分かったんだよ?」

161 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:04:06.817 ID:kTjTGIAk0
鈴鶴の言の葉にそう返したヴェスタは、【剣】を鈴鶴に向け、切りかかった。

その刃を、鈴鶴は黄泉剣の刃で受ける。
鈴鶴「っ―――!」

ヴェスタ「ほらほらほらっ!まだまだっ!」
その斬撃の嵐は―――あの時の彼女では出来ない芸当で――決して身に着けてはいない技術で―――。

其れは―――鈴鶴の操る剣術―――月影黄泉流そのものであった。

162 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:07:30.842 ID:kTjTGIAk0
鈴鶴「ちぃっ―――」

また、もう片方の手に持つ【創世書】も、鈴鶴の足止めにはぴったりだった。

鈴鶴に触れられないため、オモラシスは召喚されないものの、辺りに幻を生み出している。
しかも、鈴鶴の記憶の中の、辛く哀しいものの幻を生み出すのだ。

それは唯の幻―――けれども、鈴鶴にとってそれは苦しい幻であった。

163 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:07:58.599 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「おねえちゃん……ふふっ、やっぱり効くよね―――
     おねえちゃんに、過去仕留めた奴の幻なんて見せても、意味がない―――」

其れをヴェスタは、くすくすと笑いながら見つめていた。

鈴鶴「しぇっ!」
鈴鶴が如何にか振り払いながら剣を振るうも、その背中にも幻が纏わりつく。

幻は何も言わず、ただ鈴鶴の身体にしがみ付くだけだ。
だが、其れだけが、鈴鶴にとって一番効くことをヴェスタは感覚で実感していた。

164 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:15:06.715 ID:kTjTGIAk0
幻に翻弄される鈴鶴へと、其処に蟒を殺す程の剣筋を斬撃を、ヴェスタはその小さな身で斬り放つ。
回数を重ねるごとに、まるで其れに慣れたかのように、一振り一振りの速さを増していった。

鈴鶴「ぐぅッ―?!」

嗤いながら最速で斬りかかるヴェスタの【剣】の刃に、遂に鈴鶴は片腕を――右腕を少し、切り裂かれてしまった。

ヴェスタ「お姉ちゃん―――剣の一振りで、わたしは上回った―――
     わたしよりも弱いお姉ちゃんは、ふさわしくない―――創世主に―」

ヴェスタの嗤い声が響く。
走る痛みを感じながら、鈴鶴は後ろに跳び、冷静に考えていた。

165 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:17:02.654 ID:kTjTGIAk0
傷は浅い―――自身の不老不死の身体ならば、いずれ治る――だが、このままでは―――わたしは―――。
あの、【創世書】を消さなければ―――。


ヴェスタ「お姉ちゃん――わたしはお姉ちゃんなんて大嫌いよ
     だから、このまま斬られて御終いになって、ふふ、ふふっ―――

     幻に囚われて、わたしに負けてしまえ―――」

ヴェスタはさらに鈴鶴を挑発する。
そして、その言葉と共に、はるか上空に飛び上がり、そしてそこから鈴鶴に斬りかかった。

166 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:17:34.002 ID:kTjTGIAk0
鈴鶴「――――」

鈴鶴は、ヴェスタを眼で追わずに、眼を閉じた。

鈴鶴「そうはさせない―――」
腕の痛みに歯を食いしばりながら、鈴鶴はそう呟き――。

そして、右腕を無防備に、天に突きだした。

167 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:18:47.230 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「諦めたのね――――
     おねえちゃん―――さよなら―――」

その一言と共に、【剣】の刃が鈴鶴の右手に入った。
激しい痛みが伝わってくる―――。

しかし―――鈴鶴は、その【剣】が身体に触れた一瞬―――其れと同時に―――。


鈴鶴「月影黄泉流―――【姫百合】―――」
自身の右腕だけを切り飛ばされるように身体を折り曲げ、自身の剣術の奥義を、ヴェスタに叩き込んだ。


168 名前:集計班の遺言:2017/03/06 01:20:22.648 ID:kTjTGIAk0
ヴェスタ「―――!?」

其れは返し技。

相手の動きに合わせて、それを跳ね返す奥義。

其の性質上、対人での鍛錬のみでしか得られない技―――。
ヴェスタは、その技を見ていない―――。

だから―――ヴェスタは其れを避けられず―――。
その衝撃を受け、ヴェスタは吹き飛んだ。
しかし―――鈴鶴は、ヴェスタを狙って切ったのではない。


その刃は、【創世書】、ただそれだけを消し飛ばした。

169 名前:社長:2017/03/06 01:20:49.951 ID:kTjTGIAk0
なんか勝手に重要なもの壊してごめんなさい。

170 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:01:38.685 ID:/abCs7iU0
鈴鶴「痛い……右の手を犠牲にした……恐ろしく痛いわね……
   神剣と、それに混じる瘴気のせいで、ちぃっと治るまでに時間はかかるかもしれないけれど、その甲斐はあった―――」


ヴェスタ「――――!」
ヴェスタは、呆然とした表情で、消し飛んだ【創世書】の欠片を見つけている。


鈴鶴「……わたしと同じように、左手で【剣】を持っていた
   右手に持っていた【創世書】の位置は、【剣】の位置とあなたの技術を想定すれば、見ずとも―――」

171 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:09:22.252 ID:/abCs7iU0
ヴェスタ「ふふ―――ふふふ
     あはははははははははは―――っ」

ヴェスタの嗤い声が響く。
それは狂気にまみれた嗤い声だった。

172 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:13:07.198 ID:/abCs7iU0
ヴェスタ「なぁんて―――
     おねえちゃん―――

     【創生書】がなくなったから―――わたしを倒せるとでも、思っていた?
     所詮、おねえちゃんを苦しめる幻影も、オモラシスも――――
     小手調べみたいなものだよ」
ひとしきり嗤った後、ヴェスタは淡々とそう告げた。

鈴鶴「分かっているわ―――
   【創世書】なんて、永久にはいらなかった……
   確かにあれがなければ、わたしたちが幸せに暮らす始まりはなかったけれど…
   永久にあれはいらない―――あれは、安置すべきものだった……

   けれど、そうできないから、斬り伏せた」

ヴェスタ「ふふふ―――
     でも―――
     それだけのことするために、腕をひとつ犠牲にした――

     おねえちゃんは、わたしに見せていない奥義をついに見せてくれた―――」

鈴鶴「技術は、わたしと同じ
   貴女はその【剣】を操る資格があり―――そして、【剣】のせいかは知らないけれども
   恐ろしく洗練された技術がある

   多分―――貴女は蟒を斬った海神―――わたしの祖先にとっての弟神――の血でも引いているのでしょう
   其の血を引くならば―――片腕しか使えないわたしを越えられる可能性は充分―――」


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

173 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:13:30.338 ID:/abCs7iU0
鈴鶴は左手で黄泉剣を構え、ヴェスタを見つめた。

ヴェスタも同じく左手で、【剣】を構え、鈴鶴を見つめた。

そしてふたりは同時に斬りかかった。
剣と剣のぶつかる金属音が響いた―――。

174 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:23:43.409 ID:/abCs7iU0
黄泉剣―――。

其れはかつて神を斬り伏せた神剣。
其の剣自体は月女神と同じ――そして其れを支える【勾玉】は【力】の塊―――。

それらが合わさり、強力なる剣となる。


一方、【剣】も其れに負けぬ剣だ。

恐ろしく硬く、恐ろしく切れ、其処から流れる瘴気が斬られた側から入り、常人は狂って死ぬ。
耐えられるのは恐ろしい精神力を持った者のみ―――。

そしてまた、【剣】は素晴らしい剣術を授けてくれる。
そして記憶の中にある剣術を模倣し、最高の状態で扱えるようにしてくれる。


二つの違う剣同士はぶつかりあった。
共通点は、どちらも、不適切な血の持ち主が持つと、【力】に飲まれて狂うことだ―――。

175 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:24:18.446 ID:/abCs7iU0
月影黄泉流―――。

其れは、月の民の間でのみ伝わりし剣術―――。

其処に有る技は百合の華の名を冠している―――。

夕菅、藪萱草、姥百合、山百合、笹百合、袂百合、鬼百合、鉄砲百合、姫小百合―――。
そして、奥義である姫百合―――。

その技同士が、ぶつかり合う。
同じ技量、同じ性質の剣がぶつかり合う。

鈴鶴が技を繰り出せば、ヴェスタが其れに対して技を返して受け流す。
ヴェスタが技を繰り出せば、鈴鶴が其れに対して技を返して受け流す。

闘いは拮抗していた。

しかし、負傷の事を考れば、ヴェスタの方が優勢であった。
そしてヴェスタは、鈴鶴の斬り上げる黄泉剣の刃に向かい、奥義である姫百合を叩き込んだ。



176 名前:集計班の遺言:2017/03/16 23:24:36.213 ID:/abCs7iU0
―――。

――。

―。




177 名前:社長:2017/03/16 23:25:25.104 ID:/abCs7iU0
【剣】を持ったヴェスタならあの魔王様にも勝てそう感。

178 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:36:17.936 ID:4E9Vbmk.0
一瞬の閃光と金属音が、其処に走った―――。

鈴鶴とヴェスタは、背中合わせに其の場で対峙していた。


そして其の一瞬の後に―。

ヴェスタ「あぁああーーーっ!!」

ヴェスタの左腕が掻っ切られていた―――。
血が流れ、そして膝を突き、左手の力を失くしてしまったのか、【剣】を取り落としていた。

179 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:37:38.481 ID:4E9Vbmk.0
鈴鶴は姫百合を姫百合で返したのだ。
姫百合は、本来相手の振りかぶる刃に自発的に切り込みながら、威力を返す技だ。

だが、鈴鶴は―――姫百合を黄泉剣で受けた瞬間に、姫百合を放ったのだ。

其れは鈴鶴が咄嗟に放った一撃だった。
斬られる感覚から斬りこんだあの行動を―――剣の刃で真似たのだ。

180 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:37:56.921 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「っ―――はぁ、っはぁっ―――
     まだ――まだっ―――」


鈴鶴「まだ―――ヴェスタはわたしに斬り込める?
   もう―――その左手では、今のように斬れないわ―――

   右手に持ち変えてもいいけれど、負傷してもなお、斬り込める気概は―――」

181 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:39:50.540 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「っ―――」

鈴鶴は、言葉に詰まりながらも、きっと睨みつけるヴェスタに近寄った。
血の流れる右腕を修復しながら、ヴェスタに歩み寄った。

鈴鶴は、傍らに落ちている【剣】を拾えば直ぐに反撃してくる様に見え、ヴェスタは動けなかった。


鈴鶴は近づいてくる。
鈴鶴はヴェスタに歩み寄る。

黄泉剣を左手に構えた鈴鶴は、ヴェスタの目の前まで近づいてくる。

182 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:43:21.595 ID:4E9Vbmk.0
そして、ヴェスタの後ろに回り込んだ。

ヴェスタは、其れでもなお―――反撃の機会を伺っている。
【剣】を―――利き手ではない右手で、何時掴んでやろうかと思っていた。

183 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:44:28.793 ID:4E9Vbmk.0
鈴鶴は―――黄泉剣を仕舞い、神の力を解き―――。

百合神ではない、鈴鶴自身の姿になって、ヴェスタを抱きしめた。

鈴鶴「ごめんね、ヴェスタ―――
   どうしてわたしは、あの時あんな事を言ってしまったのだろう

   【預言書】は、ヴェスタがいなければできなかった
   世界の創造に、優劣なんてなかった、のに―――」

鈴鶴の涙が、ヴェスタの服に伝う。

鈴鶴「ヴェスタが居なくなって、わたしは初めて分かったの
   優劣がない事に―――

   わたしは如何して、あんな事を言ってしまったのかってずっと思っていたの
   わたしは、ずうっと後悔していたの―――」

鈴鶴は償いの言葉を紡ぎ、ヴェスタを抱きしめた。

184 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:47:26.780 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「え――」
ヴェスタは、戸惑いの表情を見せた。

鈴鶴「お願い―――
   勝手な言い分かもしれないけれど、わたしを、許して―――
   どうか、あの日々に――戻ろう?」

ヴェスタの表情は鈴鶴には見えていない。
けれども、多分―――彼女は、戸惑った表情を見せていると感じていた。


ヴェスタ「………」
ヴェスタは、今【剣】を拾い上げれば――、
傍らの【剣】で斬りつければ、即座に此の勝負に勝てると思っていた。

鈴鶴を超えられるのだと。
ヴェスタの右手は、落ちている【剣】へと伸び―――。

185 名前:集計班の遺言:2017/03/18 02:54:42.214 ID:4E9Vbmk.0
其の手を、鈴鶴は掴んだ。
斬りつけた右手は既に、10歳そこらの少女の肉体を掴むのには申し分ないほどに回復していた。

ヴェスタ「っ―――!」
鈴鶴が、そんな姑息な手に引っ掛かる訳がない―――。

ヴェスタは心の奥底では分かっていた。
曲がりなりにも鈴鶴と過ごし、曲がりなりにも鈴鶴と闘ったから―――。

【剣】を掴むことできず―――わたしは、此のまま鈴鶴に勝てない。
ヴェスタの心は絶望に満ちていた。

186 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:02:26.598 ID:4E9Vbmk.0
ふいに、鈴鶴の手の力が緩んだ。
それと同時に―――鈴鶴は言葉をヴェスタに、ぽつりぽつりとつぶやき始めた。

鈴鶴「貴女がわたしを、許してくれないなら、わたしをその【剣】で貫いても、いいよ―――

   わたしをその【剣】で斬り、そして首を獲ってしまってもいい
   わたしの血を奪い、その傷を癒し、わたしを超えた力を操っていい

   わたしはあなたが好きだから―――
   わたしを乗り越えてくれても―――

   あなたがわたしを嫌い、そして乗り越えるというのなら―――
   わたしは潔く其れを受け容れる―――

   此れがわたしの出来るすべて―――
   貴女を愛しているから、わたしは、貴女の糧となっても―――構わない」

ヴェスタ「あ―――」
ヴェスタは、鈴鶴の言葉に、何故だか涙が止まらなかった。

187 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:10:36.225 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタは、右手で【剣】を握りしめた。
けれども―――もう、鈴鶴を斬りつける気はなかった。


ヴェスタ「おねえちゃん―――
     ごめん―――」
ヴェスタの心にはもう、鈴鶴への怨念は一欠片もなくなっていた。

鈴鶴の身体の温かさが分かる。
鈴鶴の心は、ヴェスタの心を溶かしたのだ。

鈴鶴「ヴェスタ―――
   わたしだって―――ごめんなさい―――」
そして鈴鶴は、再度ヴェスタに償いの言葉をささげた。

188 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:11:07.965 ID:4E9Vbmk.0
しかし―――。

ヴェスタ「―――いいや」
突如、ヴェスタの声色が変わった。

鈴鶴は異変を察知し、其の場を飛びのき、再び黄泉剣を構えた。


189 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:12:22.956 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタ「ようやく俺の出番が来たぞォ―――
     このガキの恨みが解けやがったから、ようやく来れたな―――」

鈴鶴「貴様、ヴェスタではないわね―――」
ヴェスタの声は、小鳥のさえずりのように美しい声ではなく―――寧ろ、厳めしい男の様な声になっていた。

190 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:14:49.625 ID:4E9Vbmk.0
ユピテル「フハハハハハハハッ―――
     俺の名はユピテル!
     このガキにとりついた、俺の分霊という奴さ―――

     呪いぐらいしか出来なかったが、ようやく俺がここで顕現できる」
ヴェスタの姿形は変わらぬものの、人格は、あの日のヴェスタでも、今闘ったヴェスタでもなく。

其処に現れたのは―――。

ユピテル「貴様の血を流されたら、俺が消滅するところだった―――
     危ない、危ない……
     だが、ここで始末して、その持ってる【勾玉】を奪い、【剣】を併用して封じられた俺を奪いかえしてやるぞ」

鈴鶴「貴様―――」

ユピテル「―――生憎、雷の力はあっちにいっちまったが、式神ぐらいならなんとかなる―――
     【剣】さえあればなァ!!!」

ディアナ達の語った、緑色の悪魔だった―――。

191 名前:集計班の遺言:2017/03/18 03:20:24.513 ID:4E9Vbmk.0
ヴェスタの魄を借り奪った其の緑色の悪魔――ユピテルは、【剣】に念を込めた。

そして其の場には、鈴鶴よりも大きい―――六尺三寸の、乙女の姿をした緑色の悪魔の式神が現れた。

ユピテル「このガキが、お前を消す為に―――使おうとしていた式神だぜェ…
     名は、確かミネルヴァだったかな………
     このガキが心変わりしやがったから、使われる事はなかったがなァ…」

ミネルヴァは、鈴鶴を見下ろし睨みつけていた。

其の眼は月の民の様で―――。
其の髪色は、草原に広がるような緑色で―――。
人間としての耳は無く、猫のような耳が頭にあり―――。
また、顔や手に――ーそして恐らくは衣装で隠れた身体にも――蛇の模様が刻まれていた。

192 名前:社長:2017/03/18 03:25:02.387 ID:4E9Vbmk.0
此の式神の実力やいかに。ちなみに六尺三寸は191cmぐらい。

193 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:36:30.242 ID:TWcZdluA0
ユピテル「さぁ―――その女を倒しちまえ」

ユピテルの命を受け、ミネルヴァは鈴鶴へ向かっていった。
其の速度は、閃光の如き速さだった。

194 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:37:36.027 ID:TWcZdluA0
鈴鶴「ちぃっ!」

鈴鶴はそれをなんとかかわし、返す黄泉剣で脛をえぐるも、かすり傷ほどにしかなっていなかった。


鈴鶴「【剣】の力で、満ちている―――
   斬った手ごたえが―――まるで感じられない―――!」

195 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:39:40.557 ID:TWcZdluA0
目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。

あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。

軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。

そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。


かつてヴェスタが生み出したオモラシスと同じように―――、
式神、ミネルヴァは、それを兼ね揃えた暗黒の生命体だった。
男を吹き飛ばすほどの力を持つ鈴鶴の天敵である、乙女の存在の―――。


196 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:48:44.006 ID:TWcZdluA0

もしミネルヴァに、鈴鶴の操を狙おうとする意志があるなら、発現させたのが男であるユピテルにより吹っ飛ばす。
だが―――この式神は、鈴鶴の命にしか興味はない。


鈴鶴はどうにかその一撃をかわし、ミネルヴァを操る本体をどうにかしようとするが、ミネルヴァはそれを許さない。
こちらが式神を召喚しても、ミネルヴァに比べればちっぽけなものだ。
身一つでかわそうとしても、もともと鈴鶴を超えた存在であるミネルヴァは、鈴鶴を圧倒し始めた。

そして、鈴鶴に向かって振り下ろされた拳をかわしても、地面に訪れた衝撃は鈴鶴に伝わった。


197 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:50:39.179 ID:TWcZdluA0
鈴鶴「ぐぁっ――――」
鈴鶴の身体はバランスをとれずに倒れ込んでしまった。

ユピテル「てめェの眼が閉じられちゃァ悲劇が見せられねェ―――そのまま首以外を潰してやるぞ」

其の言葉と共に、鈴鶴のどてっぱらにミネルヴァの拳が飛んできた。


198 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:51:06.986 ID:TWcZdluA0
だが―――。
鈴鶴の身体には何も衝撃も痛みも来なかった。


鈴鶴の腹の上にはアポロが居て、そしてミネルヴァの片方の拳は消滅していた。

アポロ「鈴鶴、さん―――
    助けに、来ました………

    僕に出来るのは、此れしかないからっ」


199 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:51:34.175 ID:TWcZdluA0
ユピテル「なんだ、このガキっ―――!?」

ユピテルの驚愕の言葉もいざ知らず、アポロはミネルヴァへ突撃していった。


鈴鶴は、ディアナ達に協力を要請していた。
鈴鶴がヴェスタを追い掛けている間、何一つとして邪魔も入らなかったのは、此れによるものだ。

恐らく―――アポロは此の状況を見て、助けに来てくれたものだろう。

ふと鈴鶴が一枚岩の岸を見ると、モーターボートが一隻停まっていた。
どうやらこの一枚岩からわずかに見える、向こう岸の島から、
アポロが此処に船で駆け付けたらしい――。


200 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:54:42.074 ID:TWcZdluA0
アポロの力―――。
それは自身と触れた者が魔力を封じられる力―――。

式神は魔力と依代から創られる。
たとえば刃物を用いて式神を創れば、例え其れが敗れても其れで刺すこともできる。

しかし―――ミネルヴァはヴェスタの【血】と【剣】の瘴気から出来ていた。
それらは魔力に近い存在だ―――。

目に留まらぬ速さで地を海を空を駆ける神速の機動力―――。
あらゆる環境で生存する強靭無比の生命力―――。
軍神の一撃をも退け火風水のいずれにも傷つかぬ鉄壁の防御力―――。
そして古き世界の民草を押し流し滅ぼす無敵の攻撃力―――。

そういう性質があろうと―――存在そのものを消し飛ばせるアポロの力の前では全くの無力になってしまう。
アポロは、ミネルヴァに対して無傷で勝つことができるのだ。

201 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:55:33.731 ID:TWcZdluA0
アポロはミネルヴァの片足に思いっ切り抱きつき、其れを消し飛ばした。

ユピテル「クソッ、この地面を抉り取りそれを投げつけ―――」

そして、ユピテルがこの事態を執成そうと、直接的な攻撃を図ろうとした―――。


ヴェスタ「させない―――」
しかし、其れは為されることはなかった。
ヴェスタが、其の心を取り戻していたから。


202 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:57:37.362 ID:TWcZdluA0
式神を操る者は、其の式神の【力】が奪われると急激に気力を消耗する。
分霊としてヴェスタに憑依していたユピテルは、気力のみで存在しているともいって良かった。

そのため―――ユピテルが操るミネルヴァの【力】が削れていくと共に、ユピテルの【力】は弱まっていったのだ。

ユピテル「き、貴様ッ―――今ので、俺の力が失われていたために、出てきやがったか―――
     しかし………てめェのその神の血と【剣】で、此処の封じを解いてやる―――」

ユピテルはなおも抵抗を続けようとした。

鈴鶴は其れをさせまいと、ヴェスタと彼女に憑依したユピテルの元へ駆けた。

203 名前:集計班の遺言:2017/03/19 02:59:46.007 ID:TWcZdluA0
けれども――――。
其れよりも、早く―――。

刃が肉を貫く鈍い音が聞こえ、其れと共に血液が地面へと流れ落ちた。


鈴鶴「っ―――!」
アポロ「えっ―――!?」

鈴鶴とアポロは絶句していた。


ヴェスタは―――。
ヴェスタは、【剣】で己の腹を貫いていた。

204 名前:社長:2017/03/19 03:01:32.051 ID:TWcZdluA0
ミネルヴァ⇒鈴鶴⇒アポロ⇒ミネルヴァ的な相性図。

205 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:28:59.824 ID:CXciAxMo0
ヴェスタ「おねえちゃんを傷つけるのは、もう嫌だ―――
     それが例え、わたしに憑りついていた何かに、拠るものでも―――

     ミネルヴァは、わたしが、おねえちゃんに勝ちたい気持ちで―――
     あの暗闇で念じていたものだから―――
     例え操られて召喚したのだとしても、念じていたわたしにも原因はあるから―――」

ユピテル「や、やめろこのアマ…きさ―――」

ヴェスタ「おねえちゃん、ごめんね
     わたしのために、此処まで来て、此処までしてくれたのに……

     でも、こうしなければ、こいつは消えないから……」
ヴェスタは涙を流しながら、海の中へ其の身を投げた。

ヴェスタは、暗い海の底に沈みながら、【剣】に念を送り込んだ。
【剣】から迸る瘴気は、ヴェスタの身体の中をも包み込み、其れに巻き込まれてユピテルの分霊は消し飛んだ。

206 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:31:11.943 ID:CXciAxMo0
鈴鶴とアポロは呆然として、海の底を見つめていた。
鈴鶴「駄目―――」
鈴鶴は、またたいせつなひとに逝かれると思い―――。

アポロ「そんな―――」
アポロは、如何にもならなかった事に絶望を感じていた―――。

鈴鶴「貴女を、死なせるわけには―――」
そして鈴鶴は、海へと飛び込んだ。

207 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:31:27.397 ID:CXciAxMo0
鈴鶴「ヴェスターーーっ!」
鈴鶴はヴェスタに手を伸ばそうとする。

けれども届かない。
其の手はヴェスタに掠る事すらままならない。

其れは鈴鶴が金槌――泳ぐことに対しては大変不得手だったためだ。
もがきもがいて、果てには、鈴鶴は意識を失ってしまった。

208 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:34:52.847 ID:CXciAxMo0
薄れゆく意識の中、鈴鶴は自身が金槌である理由を感覚で実感した。
鈴鶴の能力は生命を生み出すことに逆らう力―――。

海は生命を生みだす源であり母―――。
生命を生み出すことに逆らう事は、大いなる海に逆らう事に通じる。

鈴鶴の能力の代償は、泳ぐ事を封じることだった―――。
アポロの魔法を封じる力の代償として、自身も魔法を使えないように―――。

けれども―――自身だけならば、自身が触れられないだけ。
其れで大海を彷徨えない代償は、あまりにも大きすぎる。

其処までの代償が或る―――此の能力の真意は―――。
其れは此の力が、血を介してほかの女にも移せるということ。
最も、何処までが操か如何かは、其の女の判断基準に依る―――。
鈴鶴のように恐ろしい心の者はそう居ないから、触れただけで吹き飛ばすことはない。

しかしそれでも、子を為すことは難しい。
やろうと思えば、世界全ての女の血を塗り替え、新たなる命を生みだせぬようにもできる。

此れこそが、大いなる海に逆らうという事なのだ―――。

209 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:35:07.149 ID:CXciAxMo0
――――。

―――

――。

―。

210 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:35:27.147 ID:CXciAxMo0
???「―――」

何処かから、声が聞こえる―――。

???「鈴姫―――」

211 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:36:17.902 ID:CXciAxMo0
其れは夢の中か、其れとも黄泉國(よもつくに)か―――?

???「鈴姫――」

鈴鶴「え…?」

鈴鶴は、何処とも分からない声に、ただ頷いていた。
其の声は初めて聞いた――けれども、とても懐かしい―――そんな声だった。

212 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:37:33.090 ID:CXciAxMo0
イサナ「わたしはイサナ―――
    鈴姫――貴女の双子の姉―――最も、生まれることすら叶わぬ蛭子だったから、
    貴女にこうして憑依している存在だけれど―――

    鈴姫を、ヴェスタを救えるのは―――今わたししか居ないから―――」

鈴鶴「あ……」

イサナ「鈴姫、貴女に一つだけ訊く
    ヴェスタを助ける為なら―――例え不老不死の肉体にしても―――助けたい?」

鈴鶴「もともと其のつもりで、ヴェスタを助けに―――
   でも、もしあの子が其れを嫌がるのなら―――楽にしてあげたい

   不老不死の肉体は、良い肉体ではないから―――」

イサナ「分かった―――」

母に似た声の其の人は、其れだけ言うと、其の場から離れた―――。

213 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:38:10.251 ID:CXciAxMo0
イサナは―――自身を覆う、強靭な鬼の鎧を―――自身の肉片で拵えた其れを、破壊した。

以前はいくらやっても破壊すること叶わなかったその鬼の鎧。
しかし鈴鶴が【剣】で身体を裂かれた余波か、今此の時、其れにひびが入っていた。

だから―――。

ぼろぼろに崩れる鬼の鎧を、自身の能力――触れたものをドロドロに溶かす力で溶かし、ぎゅうっと握り締めた。

そして、自身の魄なき身体で溶かした鎧を抱えながら、ヴェスタの元へ潜って行った。

214 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:38:40.678 ID:CXciAxMo0
イサナ「ヴェスタ―――」

ヴェスタ「おねえちゃん―――いいや、違う―――
     おねえちゃんに、似ているけれど―――」
ヴェスタは目を丸くして、イサナを見つめている。

イサナ「わたしは、鈴姫―鈴鶴の姉、イサナ」

ヴェスタ「おねえちゃんの、おねえちゃんが――
     どうして、こんなところに――」

215 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:38:54.766 ID:CXciAxMo0
イサナ「貴女を助けるために―――海に飛び込んだはいいけれども、上手く潜れなかった鈴姫の代わりに」

ヴェスタ「おねえちゃん、来てくれたんだ――」

イサナ「ヴェスタ、此のままでは―――其の傷のまま、生き永らえる事は叶わない
    鈴姫は―――例え不老不死の肉体にさせてでも、貴女を助けたいと貴女に言う筈―――

    しかし―――その選択は貴女にさせる」

216 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:39:27.560 ID:CXciAxMo0
ヴェスタ「わたしは―――」
ヴェスタはゆっくりと語り始めた。

ヴェスタ「わたしは、おねえちゃんが好き
     こんなばかなわたしを、金槌なのに、無理しても追い掛けてくれるほどに好いているおねえちゃんが、好き

     縁の糸を紡ぎ直しに、痛い想いをしてもあきらめなかったおねえちゃんが―――

     そんなおねえちゃんを支えたい―――
     だから―――」

217 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:40:31.148 ID:CXciAxMo0
イサナ「わかった―――
    鈴姫の不老不死の血を―――貴女に捧げよう―――
    最も、厳密にはわたしの血だから―――月女神だけではなく、太陽之女神のものも混じってしまうけれど―――
    傷は治るし、鈴鶴と共に暮らせることには変わりはない……」

イサナは、鬼の鎧の中に混じる血をすべてヴェスタにゆっくりと飲ませた。
乳呑み児の様に、ヴェスタは其の血をゆっくりとゆっくりと飲み始め、
やがて其れをすべて飲み干した。

218 名前:集計班の遺言:2017/03/20 00:43:29.565 ID:CXciAxMo0
血をすべて飲み干してすぐ、鈴鶴が斬られた腕を治したように
腹の傷は徐々に癒え、【剣】はヴェスタの身体から排出された。

イサナ「【剣】―――此れは、貴女のもの―大切に抱えていて―――」
イサナは、【剣】をヴェスタにしっかりと抱えさせた。

ヴェスタ「うん―――」
ヴェスタは、其の言葉に頷いた。


そしてヴェスタは、イサナに抱えられ鈴鶴のもとまで浮かび上がった。

イサナの出来損ないの肉体は、海の底へ沈んでいった。
もう、鬼の鎧が出来ることはないだろう―――。

鈴鶴に此の魂だけの身を晒すことになるだろう―――。
けれども、そうしようとも―――鈴鶴のたいせつなひとを救えるのならば、其れでいい。

イサナは、そう思いながら、沈む鬼の鎧を見つめていた。

219 名前:社長:2017/03/20 00:44:39.425 ID:CXciAxMo0
男を吹っ飛ばす力がやたら強くなるこの感じ。

220 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:39:31.789 ID:16FDJMqc0
――――。

鈴鶴が気が付くと、一枚岩からぼんやりと見えた向こう岸の上に居た。

鈴鶴が辺りを見回すと、ヴェスタが泣きながら鈴鶴を抱きしめていた。

鈴鶴「あれ―――ヴェスタ―――」
鈴鶴は困惑しながらも、ぎゅうっと自身の身体を抱きしめるヴェスタの頭を撫でていた。

221 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:42:44.260 ID:16FDJMqc0
ヴェスタ「鈴鶴おねえちゃんっ、やっと目覚めたっ
     大丈夫―――わたしは、おねえちゃんと、永久に一緒に居るよ」

ヴェスタの其の言葉に、鈴鶴は自然と涙を流していた。

ヴェスタ「おねえちゃん――――」

鈴鶴「わたしも、貴女を、離さない―――」

鈴鶴とヴェスタは、しばらく抱きしめあっていた。


222 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:44:21.698 ID:16FDJMqc0
ヴェスタと抱きしめあって、少しの時が経った。

鈴鶴「わたし―――海に飛び込んで―――そのまま気絶して――
   あれから、わたしは……とても懐かしい声を聞いて…」
そう言いながら、鈴鶴はふと背後に視線を合わせた。

イサナ「………」
其処には、イサナが目を瞑ったまま座っていた。

鈴鶴「あ………」
鈴鶴は、じっとイサナを見つめていた。

223 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:51:17.527 ID:16FDJMqc0
イサナ「鈴姫―――
    目覚めたみたいだね」

鈴鶴「わたしの、双子の姉…だよね?」

イサナ「ええ……
    あの鬼の鎧はもう、遠い海の底に消え失せた
    在るのは魂だけの、透けたこの姿のみだね」
イサナの声色は、達観したように落ち着いていた。

鈴鶴「ずっと、わたしを見ていたの?」

イサナ「そういうことになるね……
    最も……あの鬼の鎧は破る事出来ぬほど頑丈なものだったから――
    わたしは何もすることはできなかった―――ただ、貴女を見守るだけしか―――」

鈴鶴「そうなんだ………
   わたしの本当の姉―――なんだか、不思議な気分……」


224 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:57:05.588 ID:16FDJMqc0
鈴鶴はふと、目を瞑ったままのイサナに疑問を覚えた。

鈴鶴「そういえば、どうして目を?」

イサナ「……わたしの眼は、二つの瞳が重なり合っているんだ
    あまり―――人には見せたくない―――そんな眼なんだ」

鈴鶴「見たいな、イサナの眼
   そのままじゃ、わたしはイサナの事が分からない」

イサナ「わかった……」
イサナは渋々といった様子で、其の瞳を鈴鶴に見せた。

225 名前:集計班の遺言:2017/03/21 23:57:26.796 ID:16FDJMqc0
鈴鶴「…綺麗」
其の目は、恐ろしくも―――何処か不思議で、そして綺麗な月の民の眼だった。

イサナ「世辞でも―本心でも――そう言ってくれると嬉しいよ」
そう言いながら、イサナは少し頬を染めた。


226 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:01:26.951 ID:c2C.BhFo0
鈴鶴「そういえば、わたしたちは、どうしてこの岸辺に――?」

ヴェスタ「あっ、それは―――」

ディアナ「そこから先は、俺たちが話そう」

鈴鶴が新たな疑問を問うた時、丁度ディアナ達が其処に現れた。

鈴鶴「ディアナ……ネプトゥーン……アポロ……
   今回は、助けてくれて……本当にありがとう」

ネプトゥーン「何……ユノを助けることが、わたしたちの生きる目標みたいなものだから……」

ディアナ「さて、鈴鶴の疑問について語ろうか」

そしてディアナは語り始めた。


227 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:02:00.697 ID:c2C.BhFo0
ディアナ達は、ヴェスタを狙う敵を排除しきり、鈴鶴達が一枚岩の上に来た時には、その対岸で様子を見ていた。
此処までの移動手段として使用した車の中で、ディアナ、ネプトゥーン、アポロ――
そして、隠れ家にそのまま置いておくと危険と判断し、此処まで連れてきた眠り姫、ユノ―――。
この4人は、じっと闘いが終わる其の時を待っていた。

だが、ミネルヴァが登場した時―――アポロは、自身が万が一やられるかもしれないとしても、
此のまま見過ごしてユノを救うことは出来ないと、ディアナとネプトゥーンにユノを任せ、ミネルヴァを消しに行った。

その後イサナがヴェスタを救い、ヴェスタと鈴鶴と共に水面まで浮上した。
そして、アポロの乗って来たモーターボートにアポロ、ヴェスタ、鈴鶴が乗り込み、向こう岸まで帰って来た。

228 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:05:52.306 ID:c2C.BhFo0
鈴鶴が目覚めるまでに―――ヴェスタは、ディアナ達の身の上話を聞いた。
また、ユノの姿を見て―――ヴェスタは全てを思い出した。

自身はユノの妹である事―――。
滅ぼされた街の市長の娘である事―――。

そして、家が焼かれた時にユピテルの分霊に憑りつかれた事を。

ユピテルに憑りつかれたヴェスタは、【勾玉】や【剣】を探す為に抹茶売りの少女になっていたという。
血の力か、其れとも別の力か、鈴鶴に出会い―――そして今に繋がるということだ。

229 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:07:31.004 ID:c2C.BhFo0
ユピテルがヴェスタに憑りついたのは、ユノに近い存在であるからだろう。
万が一の事を考え、保険を作っておいたのだろう。
最も、その保険は消えてしまったが―――。

そして、ディアナの話が終わったと同時に、ヴェスタは言の葉を紡いだ。

ヴェスタ「………わたし、ユノおねえちゃんに、鈴鶴おねえちゃんに、イサナおねえちゃん―――
     たくさんおねえちゃんが居て、不思議な気分なの……
     でも、ユノおねえちゃんを目覚めさせないと、幸せにはなれない
     特に、ユノおねえちゃんが大好きな、アポロちゃんが………」

ヴェスタ「だから、おねえちゃん
     わたしも、おねえちゃんがやろうとしている事を…ユノおねえちゃんを助けることを、手伝ってもいい?」

鈴鶴「ええ……ありがとう……」


気が付くと、地平線からは朝日が昇ろうとしていた。

230 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:08:31.287 ID:c2C.BhFo0
ディアナ「………鈴鶴、このまま向かうのか?」
ディアナは鈴鶴に問うた。

鈴鶴「いいえ……準備をしてから、万全の状態で向かいたいから……
   だから、一度戻りたいの」

ディアナ「俺らの隠れ家か?」

鈴鶴「いえ、そうではない―――
   誰とも知れぬ場所にある、わたしと……ヴェスタの住んでいた家に……」

ディアナ「分かった……俺の車で行くか?」

鈴鶴「………お願いして貰っても、いいかしら?」

ディアナ「構わないさ……」


231 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:09:32.756 ID:c2C.BhFo0
鈴鶴は、窓の外から其の景色を見ていた。
一枚岩が遠ざかってゆく―――。

鈴鶴は其れを見ながら、あることを思っていた。

鈴鶴(集計班―――貴方の遺言は―――【預言】通りになった………)

鈴鶴(例えそれが運命だったのだとしても―――
   其れを導いた貴方には、感謝するわ……)


―――。

気が付くと鈴鶴は、夢の世界へと落ちていた。
また、アポロやネプトゥーンも眠っていた。

232 名前:集計班の遺言:2017/03/22 00:10:56.799 ID:c2C.BhFo0
ヴェスタ「おねえちゃん、寝ちゃったの?」

イサナ「……疲れているみたいだから、鈴姫は此のまま眠っていてもらおう
    あの家の場所は、わたしも知っているから……このままディアナに伝えておくよ」

ヴェスタ「その、ディアナは大丈夫?
     ディアナも、いっぱい仕事してきたんじゃあ…ないのかな?」

ディアナ「此れよりも面倒臭い仕事なんて、ザラさ……
     だから、気にするな―――

     それよりも、ヴェスタは―――大丈夫なのか?
     見た感じ、お前は九つか十の少女の肉体だろうに」

ヴェスタ「おねえちゃんに、【血】の力で助けられて―――疲れも、なんにもないから―――」

ディアナ「そうか―――」


そして車は、其の場所へ向かって走り去って行った。


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