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ユリガミノカナタニ2

1 名前:社長:2016/09/04 00:44:24.091 ID:PNG5mMkE0
邪神スピリットJ あらすじ

鬼のマタギ、ディアナは人魚を狩る狩人を殺すとともに、襲われかけていた幼い人魚ネプトゥーンを助けた。
そして数十年後―――再び狩人を殺したディアナだが、最後の一人の自爆で大怪我を負って海の底に沈んでしまった。

そこには、ネプトゥーンの親が治める竜宮があり、ディアナも人魚の肉を狙った存在と勘違いされた。
それをネプトゥーンは訂正しようとしたが聞き入れられず、ディアナを助けて駆け落ちしようとした。

ディアナに人魚の血を飲ませ、傷を癒したネプトゥーン。
ネプトゥーンは助けられた時から好きになったとディアナに告白し、二人は逃げることにした。

そして―――無事に逃げ、海岸まで上がることができた。

32 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:13.850 ID:7MO0iTZI0
ディアナ「………」
上空で、銀髪の天狗が一匹羽ばたいていた。

顔は優男といった風で、一見人喰い天狗の様には見えなかった。
だが、直感的に彼の人が狩る対象だと察知した。


33 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:26.443 ID:7MO0iTZI0
奴からは、血の匂いが―――拭っても消せぬ、命を奪った者だけが分かる独特の匂いがしたからだ。
ディアナの隠れ家には禊をする場所があり、ディアナは毎晩禊をしている。

それは、狩る対象に、自身の匂いを気取られないためだ――。
だが、それでも、時々幾つもの修羅場を経験した獣は、命を奪ったディアナを察知することがある――。

ディアナはマタギとして数々の狩猟をこなし、其れを知っていた。
そして何時しか、ディアナもその血の匂いを理解できるようになったのだ―――。

34 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:03:48.270 ID:7MO0iTZI0
ディアナは、身を隠しながら、恐らく奴の棲家で在る山の頂上へ登って行った。
其処には、天狗の隠れ家らしき洞穴があった。

ディアナは様子を伺い、中で聞こえる声に耳を傾けていた。

男の声「オラぁッ!いつ産まれるんだァ!さっさと産めっ、このアマァ!」

女の声「っ……うっ、うっ………」

男の声「けッ、俺が帰ってくるまでに産まなかったら、腹の子もろとも殺して喰うからな…
    そして、また里の人間でもさらってやるさ」

35 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:05:12.037 ID:7MO0iTZI0
ディアナ(……標的で、合っているな)

そして、ディアナは洞窟の入り口の近くで身を潜め、
肩を怒らせて外に出た天狗が外に出たのを見て、懐に隠した銃を抜き、天狗の頭を撃ち抜いた。

ディアナ「………脈もなし、息もなし、念のために首の骨を折っておこう……」
そして、天狗が死んだことを確認し、洞穴の中へ入って行った。

36 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:05:31.034 ID:7MO0iTZI0
洞穴の奥には、散らばった人骨、そして、赤ん坊を抱えた女が居た。

女「だ、誰っ……?」
女は怯えた表情で、ディアナを見つめていた―――。

ディアナ「俺は、ディアナ……
     里の人間に頼まれて、天狗狩りをしに来たマタギだ」

女「えっ……
  ま、まさか……あ、あいつを……」

ディアナ「此の手で殺したよ――
     失礼かもしれんが、洞穴に入った時に、会話が聞こえてね

     それで、奴を狩るべき対象と認識した」

37 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:06:38.726 ID:7MO0iTZI0
女「あ、ああ――――
  やっと―――やっと、誰も喰われることが、無くなるんだ――

  ありがとう―――ディアナ、さん……」
女は安堵した表情を見せた。

ディアナ「……そうなるだろう
     ところで、貴女(アンタ)と、その赤子は如何するのかな……

     其の身体では、山を一人では下れんだろう
     俺が手を貸そうか――?」

女「………あ、あの」

ディアナ「ん?」

女「わたしは、もう――もう、疲れてしまいました
  どうか、この赤ちゃんだけ―――赤ちゃんだけを、下山させて……」

38 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:06:56.806 ID:7MO0iTZI0
ディアナ「貴女は、此処で死ぬ――と言う事で、いい?
     それと―――その赤ん坊は、里の誰に渡せばいいのか教えて欲しい」

女「はい……
  でも、赤ちゃんはあいつとの子……だから、羽が生えている……

  里の人は、天狗に恐怖しているし、恨みを晴らすかもしれないから…
  別の、安全なところに、送り届けて……」

ディアナ「分かった―――
     そして――此処で、俺は貴女にとどめを刺すが――それでいい?」

ディアナの問いに、女は無言で頷いた。
ディアナは懐の銃を抜き、一発の弾丸で女を撃ち殺した。
そして、産声をあげている赤子に目をやった。

39 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:07:17.604 ID:7MO0iTZI0
ディアナは、その赤子を拾い上げると、不思議なことに気が付いた。
ディアナ「此の天狗の赤子―――両目の色が、違っている―――
     異相の子、か………」

其の後、ディアナは天狗の赤子を棲家へ持って帰った。

40 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:10:14.388 ID:7MO0iTZI0
ネプトゥーン「お帰り、無事に済んだんだ……え、えと…この赤ちゃんは?」
ネプトゥーンは、突然のことに面食らい、困惑した表情をしていた。

ディアナ「俺が狩りに行った人喰いの天狗が、女に産ませたものらしい―――
     女に赤子を頼まれた―何処か安全な処に送り届けて欲しいと―――」

ネプトゥーン「そうなんだ……で、この赤ちゃんを…どうするの?」

ディアナ「この赤子は、適当な天狗の里に送り届けるのもいいかもしれん――
     だが偶然、俺と出会った―――これも一つの運命だ、と俺は思った

     ならば、何かの縁ということでこの赤子を、育てようと思って、ね―」
ディアナは、優しい表情で赤子を見ていた。

ネプトゥーン「そういうことなら、問題ないよっ
       それに、わたしたちじゃ、子供はできないし―――」
ネプトゥーンは、ディアナの表情を見て、さらに彼女が好きになった。
少し顔を赤らめ、照れた表情を見せながら大きく頷いて、赤ん坊を撫でてあげた。

41 名前:邪神スピリットJ:2016/10/02 20:10:47.945 ID:7MO0iTZI0
二人は、天狗の赤子を育てることにした。
永久に生きる運命を背負わずに独り立ちさせる為に、余計な事をする【ザン】の血は、使わずに―――。

名は、アポロと名付けた―――。

42 名前:社長:2016/10/02 20:12:21.375 ID:7MO0iTZI0
この天狗は天狗ヶ里殺人事件に出てきた天狗の仲間という裏設定があるらしい
ちなみにまだ姿形出てない百合神様なら式神を使ったおとり作戦を使いそう。

43 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:21:22.352 ID:jaKMg8Jg0
赤子はすくすくと育ち、美しい銀色の髪と、右に琥珀色の、左に翡翠色の瞳を持つ少女になった。
純粋無垢で明るい性格の少女に―――。


アポロ「ねぇ、この恋物語―――胸をわくわくさせるね…
    僕も、この話の様な、綺麗な恋がしたいな……」

読書が好きで、色々な本を読む度に顔を明るくし、その魅力を伝える子。


ディアナ「―――
     ―――――という方法で、此の様にして、獲物を狩った……」

アポロ「成程……やっぱり、獲物の視点で視ると言うことが需要なんだねっ」

また、ディアナの【仕事】の話も聞き、其れにも興味津々の様子だった。


44 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:23:33.690 ID:jaKMg8Jg0
アポロ「う、どうして出ないの……どうしてっ
    精神力を引き出す―――引き出しても、まったく何も使えないのっ――?

    僕は、僕は、天狗として………」

ネプトゥーン「落ち着いてっ……
       焦らないで……わたしたちは、見棄てないからっ…」

だが――アポロは天狗でありながら、空を飛ぶことが出来なかった。
天狗というものは、風の術を用いて空を飛ぶ生き物だが、アポロは何故か、風の術を使うことが出来なかった。

アポロは羽の生えた人間、といえる存在だった。
天狗の里では、不具の者――ずっと飛ぶことのできない者は要らないと、殺す処も多いと聞く。

独り立ちをさせたくとも、難しい―――。

45 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:23:47.929 ID:jaKMg8Jg0
アポロ「ねぇ、ディアナ、ネプトゥーン……僕は……」
ネプトゥーン「大丈夫―――ずっとわたしたちの処に居てもいいから、ねっ」

ディアナとネプトゥーンは、アポロとずっと暮らす事を決めた。


46 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:24:20.407 ID:jaKMg8Jg0
三人は、まるで親子のような関係になっていた。

最も、親にあたるディアナとネプトゥーンは両方とも女だから、一般的な親子とは、少しだけ違うけれども―。

47 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:25:07.217 ID:jaKMg8Jg0
アポロが9歳の頃、旅をしようと三人は色々な処を巡った―――。

そして、とある街に辿り着いた。
街は平和で活気に溢れ、いい宿もあったので、其処を拠点に数日間滞在することにした。

48 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:26:57.659 ID:jaKMg8Jg0
ディアナは武器を買うために一度二人から離れ、ネプトゥーンとアポロはその間、街をぶらぶら歩いた。
―――そんなとき、二人の前に少年たちが現れた。


少年達は、アポロのその眼を見て、「呪われた奴がいるぞ」などと声を荒げ、仕舞には石を投げようとした。
ネプトゥーンは、さっとアポロの前に立ちはだかろうとした―――が、その前に一人の少女が大声を出していた。

49 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:28:57.433 ID:jaKMg8Jg0
少女「―――やめなさいっ、あなたたちっ!」

アポロぐらいの歳の、短めの髪の、美しいみどりの黒髪の、百合の綺麗な髪飾りをした少女が、アポロの前に立った。
どうやら、少女には、少年達は敵わないらしく、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

50 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:29:47.242 ID:jaKMg8Jg0
ネプトゥーン「あ、助けてくれたの…ね、助けてもらってありがとう……
       何とかしようとしたら、貴女が来てくれて、助かったわ
       よそものだから、もし何かやらかしたら、問題になるかもしれないし」
ネプトゥーンは礼の言葉を告げた。

少女「いいんですよ、これぐらい…あいつら、けっこう悪がきで…さっきのも、からかうためにやったのとは、思うんですけどね」
少女は丁寧にネプトゥーンにお礼を言いながら、少年達が逃げて行った方向を見つめた。

そして、アポロも「ありがとう」と、少女に礼を言った。
ネプトゥーンは、其の後、少女と共に喫茶店で休息することを決めた。

51 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:35:00.903 ID:jaKMg8Jg0
アポロと少女――その名はユノ――は、偶然にも同い年だった。
それが故、話も弾み、ネプトゥーンはその様子をにこにこしながら眺めていた。
しかし、その時間は永遠と続かず―――やがて、空が茜色に染まるころには、ユノも家に帰らねばならなかった。

アポロは、まだまだ、ユノとの触れ合いが足りないと思ったのか、ユノに言った。
アポロ「僕たち、しばらくこの街にいるから、ね?一緒に、またお話ししよう?」

ユノ「―――え……うん、わかった、いいよ!」
ユノは、その発言に呆気にとられたようだったが――すぐに、にっこりと笑って、快諾してくれた。

52 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:36:18.937 ID:jaKMg8Jg0
ネプトゥーンとアポロは宿に帰り、ディアナにユノとの出会いを話すと、
ディアナ自身がアポロを守れる位置に居なかったことを自省していたが、アポロとユノとの友情が芽生えた事を祝福してくれた。


53 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:37:35.444 ID:jaKMg8Jg0
そして翌日から、アポロとユノは一緒に遊んだり、話したりするようになった。
ユノは、この街の市長の娘だという―――だから、恐らく件の少年達も逃げたのだろうか。
家族は市長である父と妹ひとり――それと、家政婦―――ユノの母親は、妹を産んだ時に亡くなったという。
彼女の記憶にある母親は、神に仕えるもののような雰囲気を持っていた人らしく、その血が受け継がれているのか、彼女の髪もそう見えた。

また、市長は人柄のいい人物らしく、この街が平穏に保たれているのもその為らしかった。

54 名前:邪神スピリットJ:2016/10/22 01:40:00.661 ID:jaKMg8Jg0
其の様子を、ディアナとネプトゥーンは見守っていた。
けれども、ユノは人間、アポロは天狗―――アポロの服装は、羽が服装の一部に見えるような服を着ていたから違和感はないけれど、仲が深くなればいずれ分かる。

二人は、此の幸せな時が永久に続かない事に悩みながら、楽しそうなアポロとユノを見守っていた。

55 名前:社長:2016/10/22 01:42:14.527 ID:jaKMg8Jg0
某エヴァーグリーン・ソーマ氏の許可は得ています!

56 名前:社長:2016/10/22 01:54:00.221 ID:jaKMg8Jg0
アポロ
・身長  :132cm
・体重  :30kg
・スリーサイズ:62-49-67
・髪色  :銀
・目の色 :右眼は琥珀色、左眼は翡翠色
・利き手 :左利き
・一人称 :僕
・得意なこと :本を読む事、そして得た知識で思考する事。
・不得意なこと:天狗の風の術

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/886/Apollo.jpg


―アポロは風の術が使えない。
ヤミや、他の話で出てきた天狗は風の術が使え、その力も使って空を舞っている。
何故使えないのか―――それはもう少し先でわかるが、一体如何して、彼女はそうなのか―――。

若しかすれば、天狗と人の間から産まれた子のためなのだろうか?
其の真の理由は、だれにも分からない……。


57 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:32:00.438 ID:EkIxVLm.0
数日が経った。
―――そろそろ街を発たねばならぬ時が来た。

アポロは、永遠に居るという選択肢も考えたが、アポロは自身が天狗で在る事を考え、街を出る事を決めた。


そして、ディアナとネプトゥーンにこの街を経つ前日の日――、ユノに、自身が天狗で在ることを告白していいか―と問うた。
二人は、ユノが秘密を絶対に洩らさないこと――それを約束することを条件に、許可した。


58 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:39:17.990 ID:EkIxVLm.0
次の日―――。

アポロは、ユノに明日街を出て行くこと、そして自身が天狗である事を話した。
ユノ「そっか、さびしくなるね――
   アポロちゃんは、人とは違うイキモノなんだ―――すごいっ」

アポロ「そう言ってもらえるなんて…お世辞でも、うれしいな
    でも、此れは誰にも話しちゃ駄目なことなの…僕たちだけの、秘密だよ?」

ユノ「うん、わかった…秘密だよ―――」
アポロ「ユノちゃん――――」

ユノ「なら、わたしも秘密を…誰にも話してはいけない秘密を、教えるね
   わたしのお母さんは……なんでも、遠い国で神に仕えていたらしいの

   そして、神の【剣】を持ってて、其れが家に封じてあるの……」


アポロ「秘密……僕の秘密と比べると、なんだか大きい秘密だけど
    ありがとう、ユノちゃん……」

そして二人は、秘密を心に仕舞う合図のように―――口づけをした。

59 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:45:26.686 ID:EkIxVLm.0
ユノ「これで、遠くに、行っちゃうんだね――
   また逢えたらいいけれど、難しくなるかもね―」
ユノの顔は、どこか寂しそうだった。

そんなユノの顔を見て、アポロはふと思いついたことを口に出した。

アポロ「そうだね―そうだ、持っているものを交換しよう?」

ユノ「持っている、もの?」
ユノはきょとんとした顔で見つめたけれど、直ぐにその意図を理解したらしい。

ユノ「そうだね、持っているものを見て、想い出すことができれば――」

アポロ「うん―――僕は――持っているというと、変だけど――僕の背中の、此の羽を」

ユノ「うーん……じゃあ、わたしは、この髪飾りを――」

アポロ「ありがとうっ、
    ――ずっと、ずっと友達、だよ?」

ユノ「うんっ!
   そしてもし、大人になった時、また会えたらいいねっ」


ユノは羽を、アポロは髪飾りを受け取り―――別れのさみしさを隠すように、笑顔で別れた。


60 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:46:56.487 ID:EkIxVLm.0
―――その様子を……
遠くから見守っていたネプトゥーンとディアナにも気づかれない死角で、聞いていた【男】が居た。


男「…………くくっ、こんな処で巡り合うとは、な……
  其れにあの少女……いい名前だ……」



61 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:51:38.642 ID:EkIxVLm.0
―――そして、ディアナ達が街を去る前日の夜。

その【男】は、街を歩いていた。


名はユピテル―――筋骨隆々とした体格のいい男だが、その目つきは鋭く、人ではない――悪魔であった。
深緑色のコートを羽織り、そいつは市長の家に乗り込んだ。


ユノとアポロの会話を聞いて知った情報、封印された【剣】―――。
ユピテルは其れを求めて乗り込んだ。

ユピテルは雷を操る力を持ってして、家を荒らし、眠っていた【剣】を掘り起した。



62 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:52:27.166 ID:EkIxVLm.0
―――雷を操る力があるということは、轟音が響き渡るという事であり、街中にも其の音は響いた。
ディアナ達もそれに気が付き、市長の家に辿り着いた時には、家は業火に包まれていた。

それと共に、街の辺りにも雷の力により火が付き、辺りは阿鼻叫喚になってしまった。

アポロは、ディアナ達の制止も振り切り、街へ、市長の家へ駈け出して行った。

63 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:53:46.029 ID:EkIxVLm.0

市長の家は、業火に包まれていた。
業火の中から、アポロの前に、―――緑色の悪魔、ユピテルが、ユノを抱えて現れた。
その顔つきは険しく、頭に生えた猫のような耳をすこし跳ねてアポロを見つめていたが、
邪魔だと言わんばかりに、アポロに雷を飛ばした。


だが―――雷はアポロの身体に当たる前に、消滅した。
二度三度雷を飛ばしても受け付けぬアポロに気味の悪いものを覚えたユピテルは、ユノを投げ捨て、
アポロの注意を逸らした隙に遠く向こうへ逃げて行った。

64 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:54:34.197 ID:EkIxVLm.0
ユノは、まるで人形のように、硝子玉のような目をして、ただ虚空を見つめていた。
其れを見て、アポロは悟った――ユノは魂を抜き取られてしまったのだと。

アポロに遅れ、其処に辿り着いたディアナとネプトゥーンに、アポロは事情を伝えた。
ネプトゥーンには取り敢えずアポロ達を休ませる為に、安全な郊外まで行かせ、ディアナが独りでユピテルを追いかけた。

65 名前:訂正:2016/10/23 21:56:10.434 ID:EkIxVLm.0
>>58>>61
何故か【剣】になっていた……【鏡】だった…。

66 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 21:58:47.582 ID:EkIxVLm.0
ユピテルは、逃げながらも雷をあらゆるところに発射し、得た【鏡】の力を用い、【幻影】の力を持つ悪魔DBを大量に生み出した。
邪悪な顔貌、不快にさせる臭いと、辺りの動植物を殺す恐ろしい化け物―――。

ディアナは手持ちの武器で其れを蹴散らしながら、遠く向こうを駆けるユピテルを追いかけた―――。

だが、その姿は遠くなり―――そして、DBに足止めを食らっているうちにユピテルの姿が地平の向こうに消え――そして、檸檬色の光が輝いた―――。

ディアナは、その光の眩しさに目を眩ませながらも駆け抜け続けた。

だが、光が晴れた時―――、其処には、何も残っていなかった。
ユピテルの姿形は、全く持って消えていた。

67 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:08:42.643 ID:EkIxVLm.0
―――その時、アポロは、ネプトゥーンと共にユノの様子を見ていた。

ユノは、いまだ虚空を見つめていた。
その身体には、邪悪な瘴気が纏わりついていた。

ネプトゥーン「……【魂】が抜かれているうえに、呪いが込められているのね」

アポロ「……呪い?」

ネプトゥーン「昔、竜宮で聞いたことがある―――
       生き物すべてが欲しいとき、魂魄両方を取るのだと
       其の時、魂は引っこ抜いて自身の身体に入れ、魄は呪いで自身の身体になじむようにしてから取り込まさせるのだと――」

アポロ「つまり……あの、緑色の悪魔になじむ身体に呪われているってこと…?」

ネプトゥーン「そういうことになるね……このままでは、ユノの身体がいずれ崩壊してしまう…
       わたしの血を与えても、呪いの方が強いせいで、血の【力】が消されてしまう…」

アポロ「そんなっ、嫌だよおっ…」
そう言って、アポロはユノを抱きしめた。ユノを支えるように―――。

68 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:13:16.122 ID:EkIxVLm.0
すると、ユノの身体の瘴気が、すべて消え去った。

アポロ「え――っ?」

ネプトゥーン「此の呪いが、消えた―――?
       此の呪いは、非常に強い魔力の筈なのに―――」

ネプトゥーンの呟いた言葉に、アポロは気が付いた。

あの時、ユピテルの発した雷が自身の身体に届かなかったこと。
自身は風の術が使えない事。

アポロ「そうか―――僕は……特殊な体質だったんだ」

アポロ「僕の身体は、呪術、魔力、精神力――そういった類の力を受け付けないんだ
    いいや、僕だけじゃなく、僕に触れているものも」

ネプトゥーン「!
       ―――もしかして、アポロが天狗の術が使えないのも…」

アポロ「………そう、だと思う」

アポロは、皮肉にも、大切な人が眠り姫となった時、自身の【力】に気が付いた―――。


69 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:17:33.640 ID:EkIxVLm.0
ユピテルを逃してしまい、失意の中ディアナはネプトゥーン達のところに帰り、
事の顛末を伝え、またアポロは自身の持つ【力】について伝えた。

呪いの解けたユノは、身体が崩壊することはなくなった。
けれども、【魂】は未だない―――彼女は眠り姫となってしまった。


アポロ「―――あいつが悪いんだ、緑色の悪魔が―――っ!」
そして、アポロたちは名すら知らぬ悪魔―ユピテルをとても憎んだ。

ユピテルの出現によって多くの人間が死に、そして街そのものも燃え尽きてしまった。
そして、ユノの【魂】を奪われてしまった―。

ディアナ「……………俺も、ケリを付けなければならん
     追い付くことさえ、敵わなかった―――」
ネプトゥーン「うん……あの子の【魂】は、残っているから―――」
ディアナやネプトゥーンも熟考していたが、ユノを救わなければならない、という結論に至った。


―――そして、ディアナたちは緑色の悪魔ユピテルを探し、ユノの【魂】を取り戻すことを誓った。

70 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:18:27.965 ID:EkIxVLm.0
しかし―――魂の抜けた身体は、【魂】が在ろうとも何れ老い朽ち果ててしまう。

そこで、アポロが懇願し、少女の身体は、【ザン】の血が流され、永久にその肉体を保つようになった。
其れと同時に、アポロも――何時か【魂】が戻ることを信じ、自身も血を飲み、身体の時も止めた。

71 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:18:55.662 ID:EkIxVLm.0
―――三人は手掛かりを探し続けた。
狩りをしながら、見つからない手掛かりを探し続け、一つの手がかりを得た。

此の事件が起きてもう少し後、暗黒の生命体とも呼ばれ、緑色の悪魔とも呼ばれる存在が生まれたらしい――
―――けれども女神のような存在が退治したらしい事を。

三人は此の事に関わりが在るのかもしれない――と思い、
其の女神のような存在を捜したが、見つからなかった。

72 名前:邪神スピリットJ:2016/10/23 22:19:13.375 ID:EkIxVLm.0
だが、それと同時に女神として興味深い噂を聞いた。
―――【百合神】の噂を。

真に苦悩した人物――其の対象は、恋の悩みか、復讐が主という―――そういう人物が、
或る時偶然に闇の中に在る神社に辿り着き、適切な布施を渡し、願いを告げ、その女神が了承すると、その通りに叶うらしいと――。

その女神こそが何かの鍵を握っているのかもしれない。
そう思い、三人は【百合神】を探すことを決めた―――そして、【百合神】の噂を、集め続けた―――。

73 名前:社長:2016/10/23 22:19:46.009 ID:EkIxVLm.0
ようやく百合神様登場?
そしてWARSに唐突に出現した滝本みたいなミスを…。

74 名前:社長:2016/10/23 22:27:42.232 ID:EkIxVLm.0
・アポロの能力

アポロ、そしてアポロが触れているものは魔法やそれに準ずるものを受け付けない。
それは受ける分だけではなく、放つ分も―――。
そのため、彼女は天狗としての基本である飛行ができないのである。

簡潔に言えば、一切の魔法は禁じられる―――。
ただし、触れた相手が能力を封じることに対して反撃する力がある場合は、互いの身体は決して近づけない。

例を説明すると―――。
鈴鶴は男に操を奪われるのを防ぎ、吹っ飛ばす――ただし、其れを出来なくするものも吹っ飛ばす力がある。
此の場合、鈴鶴とアポロは決して触れられない。
【力】を封じることに対し、反撃するという【力】があるからだ。

また、魔法を封じるというものはどんなに力が強いものでも封じることが出来る。
あの魔王791のシトラスだろうがなんだろうが、アポロには通じない。
そしてアポロが魔王791に触れれば、魔王791はシトラスなどを唱えられないだろう。

此の【力】の弱点は、物理的な攻撃には無意味である。
そのため、格闘技でも、剣術でも――其の攻撃は防げない。
例えるなら、魔王791の通常攻撃は普通に食らってしまうという事である。

75 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:46:11.597 ID:a.I6dVgg0
そして、一つの情報を得た。
彼の因縁の地、【ワカクサ】にて、百合神が人魚を狙う海賊を退治したということを。

なんでも、表向きに宮処たる会議所の人間が退治したと伝えられているが、海賊の舟に百合神の力で破壊された跡があるらしい。


76 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:46:43.440 ID:a.I6dVgg0
ディアナとネプトゥーンは、因縁のある処であるが故、調べに行くのは少々面倒だと思ったが、アポロの為に調べることにした。
アポロを隠れ家に待機させ、竜宮で捕まったとしても大丈夫なように、充分な武器などの準備をし、海へと潜って行った――。

海に潜るにつれ、太陽が遠くに見えていく。
竜宮に近づくと、もう水面は遥か遥か遠く上に消えた。

さて、竜宮にて――二人は、捕まると予想していたが、ネプトゥーンが出て行った出来事が在った事、
或る人間と人魚の出来事が元で、以前よりも態度が柔らかくなっており、意外にも歓迎された。


77 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:47:16.424 ID:a.I6dVgg0
人魚の長はディアナへの無礼を謝り、ネプトゥーン達は如何するのか、と訊いたが、既にもう地上で長く暮らしているため、地上に戻ると答えた。
人魚の長は、その答えに頷き、ならば如何して此処に来たのかと問うた。

ネプトゥーンは、人魚を狙う海賊を退治した人物の顔を探している、と答えた。
そして予想通り、顔を見た、という人魚がおり、其の特徴を聞き、また似顔絵を描いてもらった。

長く美しい黒髪を携えた、黒い瞳を持ち、巫女服を着ている美しい女性。
傍らには、またも美しい刀を持っている―――。

其れを見聞きし、ディアナとネプトゥーンはその人物が百合神と確信した。
竜宮から地上に戻った二人は、アポロに其の事を教え、対象の人物を探すことにした。
細い糸かもしれないけれど、其れを手繰れば百合神に出会える、そう信じて―――。

78 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:52:21.746 ID:a.I6dVgg0
ある日――――ディアナは、マタギとしての仕事を果たしに行った。
とある山の中に大きな羆が現れ、ピクニックに来ていた家族連れが犠牲となってしまった。
腕利きのマタギ達が対処しに行ったが、そのマタギ達も全滅した。

最終手段として、マタギ達から、ディアナに仕事の依頼が来たのだ。
ディアナは、自身の血をザンの力で持ってして作り変えた時に、たった一人だけで狩りをするようにしてきた。

頼る物は自身の力のみ。其の不利な条件で、致命的な怪我も失敗も犯さずにここまでマタギとして生きられた。
その実力を買われて、ディアナに依頼が来たのだ。


そしてディアナは、其の山へと向かって行った。

79 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:53:22.602 ID:a.I6dVgg0
―――同時刻、とある小さな鍵屋―――。
百合神――鈴鶴は、其処に居た。

此処は、鈴鶴が援助してきた鍵屋だ。
鈴鶴は、此処を援助すると共に、此処で錠前の取り扱い、製作、その特性の知識と技術を会得した。

そして老人の家族が、羆の犠牲となったことを知った鈴鶴は、様子を見に来たのだ。

80 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:53:50.040 ID:a.I6dVgg0
老人「……わしの息子も、その嫁も、孫も一気に殺されてしまった
   マタギが対処しに行っても、そのマタギですら殺されてしまい、未だ山の中に居ると言う………

   鈴鶴……お前はマタギが専門ではないと知っているが、お前の腕で、羆を殺してくれないだろうか……
   お前は、そこらのマタギなんかよりもずっと強いからな……
   わしは、そういった世界は知らん……其れよりも、知っている強さの方を信じたい

   鈴鶴がせっかく目を付けてくれた此の店も、終わりになってしまうのが悔しいが…
   金は、少ないが……此れで、復讐を遂げて欲しい……
   老い先短いわしの、無念をっ……」

鈴鶴「わかったわ……
   技術を教えてくれた恩もあるし、そいつを殺してきましょう……」


81 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:54:00.308 ID:a.I6dVgg0
そして、山で、ディアナと鈴鶴は、何の運命の悪戯か、同じ標的を狙う事となった。

ディアナは自身のマタギの知識で、鈴鶴は人殺しをした者必ず解る血の匂いを辿って、羆の居る場所まで進んでいった。

82 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:54:17.027 ID:a.I6dVgg0
ディアナ「!」
羆の巣を見つけたディアナは、確実に羆を仕留められるように、巣から800m離れた木の上に昇り、猟銃を構えた。

一方の鈴鶴も、血の匂いから、巣の中に潜んでいる事を察知し、巣の近くの木の影で太刀を構えていた。
其の場所は、ディアナからは死角となる場所だ。
鈴鶴はディアナの存在に気が付かず、またディアナも鈴鶴には気が付いていなかった。

83 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:54:35.388 ID:a.I6dVgg0
そして―――羆が巣から出て来た。
勿論――其の巣の近くに居た鈴鶴の匂いを察知し、鈴鶴を喰おうと出て来たのだ―――。

羆が出て来るのを見て、ディアナは銃の引き金に指を掛けた。


飛びかかってきた羆に、鈴鶴は―――。

84 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:56:06.030 ID:a.I6dVgg0
鈴鶴「月影黄泉流―――【姫百合】―――」


奥義【姫百合】―――どんな得物だろうと、刀をも断ち切る、月影黄泉流の奥義。

その剣は羆の両腕を切り裂き、そして胴体をすっ飛ばした。
唯の剣術では、出来ぬその技術――。

その技は、自身の刀と共に、相手の攻撃を相手に投げ返す技――。
相手の力を、傷一つ無く受け流し、自身の力を加えて相手に跳ね返す技――。
其れを持ってして、羆を切り裂いたのだ。

85 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:05.642 ID:a.I6dVgg0
だが―――それと同時に、放たれた銃弾が羆の頭をひとつ、ふたつ、みっつ――貫いた。
いずれも羆の急所を狙う正確な射撃だった。

鈴鶴「!」
鈴鶴は、さっと羆から離れ、銃弾の放たれた方向を見つめていた。


鈴鶴(かなり遠い……腕利きのマタギね……)
鈴鶴は、血の匂いがその羆だけである事、他に羆の仲間がいない事を確認し、辺りの様子を伺っていた。

86 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:18.386 ID:a.I6dVgg0
ディアナは、その羆の巣の方へ、残党に注意を向けながら進んでいった。

鈴鶴は、ディアナ――鈴鶴にとっては名の知らぬマタギ――が近づいてくる事を察知し、太刀に手をかけていた。

87 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:31.967 ID:a.I6dVgg0
ディアナは、鈴鶴の潜んでいる木まで近づくと、持っていた猟銃を、懐に仕舞った銃を、ナイフを――、
全ての武器を其の場に捨て、鈴鶴に語りかけた。

ディアナ「……俺の名は、ディアナ―――
     マタギとして、此の羆を狩る為に此の山に訪れ、そして其れを為し遂げた――」

熊の死臭も、血の匂いもすらも飲み込む緊張感が辺りには在った。

ディアナ「もし違うのなら、聞き流してほしい―――
     此の世には、【百合神】の伝説がある

     俺は、いや…俺の家族ともども、貴女(アンタ)に叶えて貰いたい願いがある
     其之為に、俺は貴女を探していた――ずっと、ずっと―――」


88 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:57:48.885 ID:a.I6dVgg0
鈴鶴は、其の言葉を聞き、抜身の刀を構えながら、ディアナの前に現れた。

ディアナ「!」

鈴鶴「…………貴女は、わたしが【百合神】だという事を前提に話しかけた
   そして、武器を態々捨てたのも、わたしを狙いに来たことを示す―そういう事ではないみたい―――」

鈴鶴は、刀を鞘に納め、ディアナに歩み寄った。

89 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:58:15.853 ID:a.I6dVgg0
鈴鶴「そう―――わたしは【百合神】――――
   しかし、何処でわたしの人相を聞いた?」

ディアナは、【ワカクサ】の海岸での出来事を話した。

鈴鶴「なるほど―――分かったわ……
   そうまでして、わたしに逢いたい―――其処まで願い事を聞きましょう
   ただし、わたしの正体を漏らさないと確約してほしい―――もし守らなければ、願いは叶えないし、貴女を――」

ディアナ「勿論、確約する――」


90 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:58:28.221 ID:a.I6dVgg0
そして、ディアナは願いの内容を伝えた。
緑色の悪魔の事、ユノの事。何処かに二人が消えてしまった事。ユノの魂を救い出したいこと。
百合神は、確約は出来ないが、その少女を見せて欲しいと言い、ディアナの隠れ家へ向かった。

91 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:58:59.122 ID:a.I6dVgg0
ネプトゥーンとアポロは、百合神が本当に来たことに驚いていたが、直ぐに其の顔を真剣なものにし、ユノを見せた。

百合神は、ユノの様子を見た。
百合神はしばし何かを考えていたようだが、直ぐにディアナ達に向き、真剣な顔つきで言葉を紡いだ。

百合神「……………成程、願いは理解したわ―――引き受けましょう、願いを叶える事を―――
    ただし……此の事は、わたしにはいろいろと抱えている事情もあるから、今すぐには引き受けられない
    時間がかかってもいいならば―――」

ディアナ達は、迷わず其の言葉に頷いた。

92 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:59:30.863 ID:a.I6dVgg0
百合神「分かったわ…時間が来たら、貴女達の処に来る――必ず
    長い時間、待たされるかもしれないけれど、お願いだから信じていて――

    必ず、叶えるから―――」

そして、百合神はディアナの隠れ家を出て行った。

其の背中に、願いから逃げようという意志は感じられなかった。
絶対に叶えるという、心強い意志を秘めていた背中だった――――。

93 名前:邪神スピリットJ:2016/10/31 00:59:50.343 ID:a.I6dVgg0


                   邪神スピリットJ 完


              To be Continued――――――集計班の遺言

94 名前:社長:2016/10/31 01:01:17.481 ID:a.I6dVgg0
奥義【姫百合】は相手の動きに合わせて切るカウンター技。
過去の描写と矛盾するかもしれないけど気にしてはいけない。

95 名前:きのこ軍:2016/11/01 23:53:38.585 ID:aBfQOwy6o
乙乙。百合神様との邂逅のシーン、いいね。

96 名前:社長:2017/01/19 00:25:17.173 ID:i8ruWCxw0
※この物語は霊歌さんの『Eden of the lily girl』『花咲き誇る世界で』
滝本さんの『きのたけWARS』の設定を滅茶苦茶とは言わないまでも割と使ってます。多分。
そのため物語内の設定と矛盾してるところがあるかもしれませんが
そこは目をつぶってパラレルワールドかなんかと思ってくれて構いませぬ。

97 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:25:51.385 ID:i8ruWCxw0


              集計班の遺言

98 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:30:20.861 ID:i8ruWCxw0
K.N.C.???年、何処かの神社――――。

其の、蒼い目をした、悩める者は、百合神(ツクヨミ)を探していた。
百合神は、悩みを持つものが、どうしても百合神に頼みたい悩みを持つものだけが入れる、闇に居るという。

生半な人間など、そこに入ることすらできない。
その入り口は誰にも見えるけれど、見えることはない。

99 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:34:10.638 ID:i8ruWCxw0
其処に辿りつく為の扉は、悩みがなければ開かない境に隔てられている。

どれだけ探しただろう?
どれだけの路を辿ってきたのだろう?


悩める者「―――!」

―――そして、彼はついに百合神に願いを託せる、闇の中の神社を見つけることができた。

100 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:42:32.105 ID:i8ruWCxw0
辺りは暗黒の宇宙が広がり、その中に神社が立っている。
それは小さな神社だった。
まるで人が一人しか住まえないような小さな社に、小さな砦、小さな賽銭箱――。

けれども、彼は直感的に其処が探し求めていた場所であると理解していたため、言葉を紡ぐ。

悩める者「ようやく―――ようやく、この場所を見つけることができた
     願いを聞いてほしいのです―――」

跪いて、百合神に願いを告げようとする彼は、心から其の女神へ願いを告げた。

101 名前:集計班の遺言:2017/01/19 00:42:50.370 ID:i8ruWCxw0
言葉が紡がれた、その時――。


少女「………」
広く大きく積もる、一面の白銀の雪のような、足まで届くように長い髪と、
まるで珊瑚のように美しい、赤い瞳をした少女が現れた。
その肌も、透き通るように白いけれど、着ている服は対照的に黒を基本とした和装だ。

102 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:06.357 ID:i8ruWCxw0
悩める者「―――貴女が、百合神様ですか?」

少女「…いいえ、わたしは……百合神の使い――」
その問いに、鳥のように透き通る、美しい声で少女は答えた。

悩める者「……百合神様に会う事は、出来ませんか?」
柔らかい言葉と共に、彼の蒼い目が少女を見据える。

103 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:22.979 ID:i8ruWCxw0
少女「―――私は、百合神様に願いを伝えるだけの存在…
   百合神様は、貴方に会わない」
けれども、少女は、真っ直ぐな瞳で問を否定する答えを出す――。

悩める者「……そうですか、しかたありませんね」
悩める者は少し躊躇ってから言葉を紡ぎ、次いで名前を告げた。

集計班「私は集計班―――百合神様にどうしても聞き入れて欲しい願いがり、
    百合神へ願う、何処とも知れぬ此の場所を探し、探し、探し求め―――
    此処へようやく、辿り着きました」

104 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:40.284 ID:i8ruWCxw0
少女「………」
少女は何も語らず、ただ集計班を見つめている。

集計班「私の、願いは―――
    百合神様に叶えてもらいたい願いとは―――」
集計班は、そこで声色を低くし、それと同時に表情を険しくした。

105 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:19:53.336 ID:i8ruWCxw0
集計班「―――いいや、
    月夜見の遺産であり、神をも殺す剣を纏い、この世界を動かす切欠となった少女――
    ―――鈴鶴、貴女に叶えてもらいたい願いとは―――」

少女「―――」
集計班の言葉を遮って、少女は消え去り、其処には唯の百合の花弁が落ちた。

106 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:22:12.473 ID:i8ruWCxw0
集計班は、動じず、目の前を見据えた。
彼の蒼い瞳を、少女のように赤い瞳に変えて―――。

―――そして、百合の花弁が地面に落ちた時、百合の花びらの吹雪が舞い、
其れが消えた後には、集計班の探す其の人、鈴鶴が社の中に居た。

彼女は、背丈五尺四寸程の、百合神の使いのように足まで届く長い――、
けれど髪色は白銀ではなく、美しく寂しい、黒い色で、その目も同じく黒い少女だった。

107 名前:集計班の遺言:2017/01/19 01:22:57.068 ID:i8ruWCxw0
集計班との出会い。集計班はなんの願いを持ってきたのかな?

108 名前:社長:2017/01/19 01:23:10.650 ID:i8ruWCxw0
名前変えわすれ

109 名前:きのこ軍:2017/01/21 19:20:07.797 ID:fMRR3eJAo
どきどき。

110 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:34:35.301 ID:h1dO0fog0
そして、鈴鶴は何も言わずに、百合の花のように美しい歩き方で、集計班の前に降り立った。

鈴鶴「………何の御用?」
そう言いながら、鈴鶴は右眼を黒く青白く輝かせた。

それは美しく、そしてとても恐ろしい瞳。
集計班はその眼に吸いこまれて、身体を動かすことなど出来ない状況になった。


111 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:34:59.055 ID:h1dO0fog0
集計班は、身体が凍えるように感じた。
その冷たさは、深い海の底や、吹雪の夜のような、生半なものではないものだった。

集計班「………」
けれども、本当に願いがあるからこそ此処に来た集計班は、気力を振り絞り睨み返す。
燃えるような赤い瞳で、鈴鶴の、まさに邪眼と言えるようなその冷たい眼に――。

112 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:35:42.019 ID:h1dO0fog0
―――刹那の如き短い時間か、将又それより長い長い時間か――その睨み合いは、その均衡を破った。

鈴鶴「……どうやら、わたしを脅そうとでも考えた…そういう仕様もない目的で来たのではないようね
   本当に、恐ろしいものを見てしまっても、それでも頼みたい、抜き差しならないことがあるのね」
鈴鶴は、右の眼を、黒々としたものに戻し、そして問うた。

集計班「はい……
    けれどもそれは、噂に聞く貴女のように、一つの事柄ではない―――
    しかも、それは今から、何時になるかも分からぬ未来(さき)のことの……お願いなのです――
    貴女に頼まなければならない願いが―――2つあるのです……」
そして集計班は、燃える赤い瞳で鈴鶴に【願い】を告げた。

113 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:13.368 ID:h1dO0fog0
時代は経て、其れよりはるか先の未来―――――――――。
K.N.C190年頃――――。
この世界の中枢である、きのこたけのこ会議所の一員であるたけのこ軍兵士、社長は、部屋に突如として現れた手紙を読んでいた。

「―――社長へ
 この手紙を読んでいる時、私はもう現世にいない―――
 それは、あの時の選択で決まっていたことです。

 ――――この手紙を呼んだあと、百合神を探し、付記した封筒を渡し――集計班の願いをお願いする――と伝えて欲しい
 どうか、宜しくお願いします」

114 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:28.102 ID:h1dO0fog0
―――それは遺言だった。
集計班は行方不明になった――いいや、もう此の世には居ないと社長は分かっていた。

―――そして、集計班の遺言を、実行しなければならない。
社長は、百合神を探しに行った。


草の根を掻き分け、森を歩き回り、見果てぬ闇に飲まれたかと思えば―――、
百合神―――鈴鶴が社長の目の前に現れた。

115 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:39.037 ID:h1dO0fog0
社長は、集計班に言われた通り封筒を鈴鶴へと渡し、「集計班の願いをお願いする―」と伝えた。

鈴鶴「……分かったわ、もうあなたは帰っていい」
そして、淡々と鈴鶴が言葉と共に、いつの間にか社長は会議所の近くの竹林に居た。

不可思議なことに少し困惑しつつも、
鈴鶴という乙女はとても恐ろしく、そして強いものと知っていた社長は会議所へ戻った。

116 名前:集計班の遺言:2017/01/25 00:36:48.072 ID:h1dO0fog0
社長は、この世界に居ると言われる女神、百合神が鈴鶴その人だと知っているが、それは一切口にしなかった。
鈴鶴が百合神だと知った後、さらに百合神について調べると、深入りした者の無残な噂を聞いたからだ。

鈴鶴は、一見御淑やかな姿とは裏腹に、社会生活に向かない破滅的な心がある。
彼女にとって、人を殺すことよりも操を奪うことの方がとても重いのだ。

そんな彼女に刃向うのは、得策ではない。
いったい何を頼んだのか……其れは集計班が委ねたことに任せる、と、そう結論付けた。


117 名前:社長:2017/01/25 00:38:04.052 ID:h1dO0fog0
男を吹っ飛ばす能力が産まれるほどに破滅的な心を持っている鈴姫様。

118 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:42:43.028 ID:zD6DyXjs0
何処かの闇の中―――。
鈴鶴は、集計班から願いを聞いたことを思い返していた。

集計班「願い―――この願いが、未来のものというのは、
    本当に未来に、貴女に遂行してもらいたいことがあるから

    破らねばならない運命を、貴女に破ってもらいたい――ということなのです」

鈴鶴「………その前に、どうしてこのわたしが百合神ということを知っているか、教えて欲しい」


集計班「分かりました―――

    私はこの世界の中心である、きのこたけのこ会議所のメンバーです
    そして、其処にある図書館に―――貴女の経歴について書いた本があった…

    巷に溢れる百合神伝説と、共通点があることを発見し、そして貴女だと確信したのです
    その本の題名には、まさにユリガミ―――とあったのですから」

119 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:46:38.178 ID:zD6DyXjs0
鈴鶴「………理由は分かったわ…、その本は、見せて貰う事にして…
   貴方の願いについて教えて頂戴」


集計班「私は――【社長】という協力者と共に、この世界を、
    【預言書】と呼ばれる書物に書かれている通りに動かしてきました

    其処に書かれている、預言に書かれている内容―――
    其れが私の願いに大きく関わっています」

鈴鶴「………突拍子もない話ね、それにその預言書を持ってきているわけでもない――
   信じられるかしら?
   ―――わたしのことについては、兎も角、ね」

集計班「そう、それが問題なのです

    そこで、きのこたけのこ会議所に来て―――預言書を見、そしてそれが本物であると確かめて頂きたい
    加え―――貴女の経歴の本についても見て頂きたい

    そして、其処で私の願いについて聞いてほしい―――」

120 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:47:13.673 ID:zD6DyXjs0
鈴鶴「……預言書、ねぇ
   どういう預言…?わたしが、会議所で何かしでかす預言でも書いているのかしら?」

集計班「いいえ…この世界の根幹、大戦の預言です
    その預言内容は、かいつまんで話せば、強い武人が、きのこ軍の強靭な軍神をも打ち破ると―――」

鈴鶴「………ふむ」

集計班「そして、その武人は、女性であると―――」

鈴鶴「……分かったわ、きのこたけのこ会議所へと行ってみましょう

   ただ、もし嘘ならば、例えこの世界が滅びようとも、嘘をついたあなたを殺す…」

集計班「覚悟しています」

―――。

121 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:48:03.914 ID:zD6DyXjs0

きのこたけのこ会議所、地下編纂室――――。

集計班「これが、【預言書】です―――私の言った通りの内容が、書いてあります………
    こちらは、貴女の事について書かれた本です……」

集計班は、2冊の本を机に置いた。
鈴鶴は、本を手に取り、内容を一瞥し――――。

鈴鶴「……成程、貴方の言った事は嘘じゃあない、みたいね…」
   【預言書】については、理解したわ……

   願いを、聞きましょう―――」

集計班「ありがとうございます…
    と、その前に―――貴女の本の処遇について、それも聞きたかったのですが……」

鈴鶴「この地下室に、仕舞っておいていい、外に出さなければそれで良しとするわ」

122 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:50:46.709 ID:zD6DyXjs0
そして集計班は、第一の願いを鈴鶴に伝えた。

K.N.C146年、軍神をも破る女の武人が、きのこ軍を打ち破る。
女性は明言されていない。

鈴鶴が参戦し、その通りに運命が動くことを確認してほしい―――と。

123 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:53:08.347 ID:zD6DyXjs0
集計班「次いで……貴女の果たす第一の願い用に、一応の参戦用の物語を考えておきました――
    近くの竹林で、兵士に発見され――会議所と言う存在を知り、その後、大戦をする
    ただし、会議所も大戦も、初めて知った風で、お願いします

    大戦内では、先ほど話したことを遂行する―――その後、会議所から去る
    粗が在るかもしれませんが、どうでしょうか?」

鈴鶴「―――大筋は問題ないから、其れで行きましょう」

集計「ただし、此れでは、貴女の正体がバレる恐れがありますが……」

鈴鶴「大丈夫、それはわたしの方で何とかするわ―――
   会議所でそういう動きが在ったら、出来るだけ止めて欲しいけど」

集計班「了承しました――それと、後の布石の為に、予め【社長】と言う兵士に貴女の特徴を調べさせ、
    会議所が干渉しないようにさせておきたいのですが……宜しいでしょうか?

    彼は、貴女の本を初めて見つけた兵士でもあるので、わたしが頼んでも不審さはないですし…」

鈴鶴「構わないわ……
   不測の事態が起きた場合は、わたしが随時対応しておきましょう……」

124 名前:集計班の遺言:2017/01/30 01:53:47.698 ID:zD6DyXjs0
―――――。

そして、鈴鶴は見事に、1つ目の願いを叶えた――――。
集計班の伝えた通りの時の流れがそのまま起き、其れは預言書の力が本物の其れであることを示したのだ。


125 名前:社長:2017/01/30 01:54:21.635 ID:zD6DyXjs0
百合ノ季節の裏側。

126 名前:集計班の遺言:2017/01/31 00:56:36.676 ID:.ZbqFavM0
そして、再び先の世で―――――。
社長が百合神に集計班の遺言を伝えて数日後、会議所は、そして世界は大変な騒ぎになっていた。

「緊急!各地にマチャ・オモラシスが大量発生!」

きのこたけのこ会議所、その他さまざまな地域、きのたけ世界に緑色の悪魔【マチャ・オモラシス】が現れた。

127 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:18:12.820 ID:.ZbqFavM0
其の惨憺たるさまは、其の混沌たる状況は、
きのたけ会議所から遠く離れた、ディアナの隠れ家にも伝わっていた。

ディアナ「――――これは……奴か?」

ディアナは、空を覆う緑色の悪魔たちを見つめながら、そう呟いた。
幸い、険しい岩山の地形にある隠れ家であり、オモラシスに其処は感知されていなかった。

しかし、放送機関から流れる情報では、各地で被害が起きている事が報道されていた。
ディアナが様子を確認しに、空を見ていると―――。

鈴鶴が、ディアナの後ろに現れた。

128 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:33:53.583 ID:.ZbqFavM0
ディアナ「【百合神】―――いや、たしか鈴鶴だったか……」

ネプトゥーン「―――貴女は……!
       貴女が来たということは、つまり―――」

アポロ「時は満ちた―――ということ、ですか?」

鈴鶴の声を聞きつけ、直ぐにネプトゥーンとアポロも其処に駆け付けた。

鈴鶴「長い間、ずうっと待たせてしまってごめんなさい
   ―――単刀直入に言いましょう

   わたしは今ある依頼を受けている――
   其れに、【鏡】に近い存在のもの―――とある【剣】が、関わっている―――

   わたしは、奴の場所が掴めなかった―――。
   おそらく、奴は【鏡】の力を込めて封印されたから……。

   【鏡】と【剣】には、似た性質がある
   【剣】が【鏡】に引きつけられれば、つまりそれは奴に通じることになる
   此の依頼を完了させた時点で、貴女達の願いを叶えられる可能性がある―――」


129 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:39:20.475 ID:.ZbqFavM0
アポロ「本当……ですか?」

鈴鶴「ええ…
   けれど………【剣】を持つ其の存在は、わたしと因縁深いものなの―――
   其の強大なる力は―――悪巧みをする輩が奪いに来る可能性のあるほどに―――

   だから、これはわたしの流儀ではないのだけれど―――
   わたしに、協力してくれないかしら」

ディアナ「勿論だ……」
ネプトゥーン「当然、ですっ」
アポロ「ユノちゃんの為ならばっ」

三人は、鈴鶴の依頼を快く了承した。

130 名前:集計班の遺言:2017/01/31 01:52:19.525 ID:.ZbqFavM0
ディアナ「だが、俺らは具体的に何をすれば良い?」

鈴鶴「…………
   わたしは、【剣】を持った或る少女を追いかける

   其の少女を、第三者が始末しないように……無力化させてほしい
   方法は、一存するわ……
   いらないかもしれないけれど、依頼代も、此処に置いておく…」

ディアナ「分かった―――
     そして、その少女については、何か情報があるか?」

鈴鶴「……ええ」

そして、鈴鶴は懐からその少女の写真を取り出した。

131 名前:集計班の遺言:2017/01/31 02:11:22.745 ID:.ZbqFavM0
写真には、赤い頭巾に赤い服を纏った、金髪青眼の少女が写っていた。

鈴鶴「名前は、ヴェスタ―――
   昔、わたしが、雪降る街で拾った、抹茶売りの少女―――
   何故抹茶売りをしていたのか―――其れは自分でも覚えていなかった

   ………わたしは、この子とずっと過ごしていたけれど
   とある出来事で仲違いをしてしまい、世界を混乱させることになってしまった―――
   だから、闇の彼方へと封じた―――

   其の闇の彼方への入り口は、此の世界の中心たる【会議所】が或る場所―――
   土地を利用した強力な結界を貼っていた―――」

鈴鶴は、向こうの方を見つめながら、話を続けた。

鈴鶴「この子は、どういうわけか、神の持つ【剣】を持ち、封印を破り、顕現する―――
   そして、其れと同時に、あの子と共に封じた抹茶がオモラシスとなり出でる―――

   わたしは、この子を救い出す為に―――追いかけて決着をつける
   ―――おそらく、この子がたどり着く場所は、奴を封印した場所になるでしょう」



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