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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

425 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2015/02/20 23:52:38.61 ID:Uv1/0Gnco
あともう少しで第二章が終わります。今月中にはなんとしても。

426 名前:たけのこ軍 社長:2015/02/20 23:54:44.44 ID:eB7ZAYX.0
一瞬(うほ。展開に見えましたごめんなさい

427 名前:¢きのこ軍:2015/02/20 23:56:28.99 ID:ZZOue1.go
二人は幸せなキスをして終了

428 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2015/02/20 23:57:15.09 ID:Uv1/0Gnco
 【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】
これ重要ワードです。でもこの謎は次の更新の時に解けます(唐突

429 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/02/20 23:57:15.16 ID:Qvi.aIuoo
魂はアイムからホモ臭さを感じたからオニロに渡したらしい

430 名前:たけのこ軍 社長:2015/02/21 00:00:05.28 ID:hrDKcs4.0
マジかよ薔薇展開はいいぞ

431 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 共同生活修行編その1:2015/02/24 23:34:56.50 ID:t.StFK.so
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 一日目】

オニロ「いやあ、筍魂さんの鍛錬?とやらには驚かされるねアイム!でも、ボクはまたこうしてアイムとお話することができて嬉しいよ!」

アイム「わかったから声のボリュームをもう少し下げてくれ…横でキンキン騒がれたらたまらん」

オニロ「あっ、ごめん。面と向かって人と話すのも久しぶりだから、つい嬉しくなっちゃって」

アイムの師である筍魂が命じた訓練とは『オニロと3日間、行動を共にすること』だった。
二人の足首には足輪が紐を介して互いに繋がれ、彼らは寝食まで行動を共にしなければならなかった。

鍛錬自体に不可思議さは残るものの、アイムは概ね訓練内容に不満はない。元よりどれだけ理不尽な鍛錬でもアイムは耐えるつもりでいた。
ただ。ただ、なぜパートナーがよりにもよってオニロなのか。会議所連中のなかでも特に忌み嫌い、一番顔を会わせたくない存在であるオニロと
どうして3日間も同一行動を取らなければいけないのは、アイムにとっては苦痛以外の何物でもなかった。

432 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 共同生活修行編その2:2015/02/24 23:36:14.82 ID:t.StFK.so
オニロ「じゃあ早速、毎日の日課になってる部屋の掃除を…」

アイム「は?ふざけんな。オレは書庫のほうに行くぞ」

オニロ「え。でも部屋がグチャグチャになってるから綺麗にしたほうがいいよ…主にシューさんのせいだけど」

アイム「ゴミの山に沈めておけよ。そのうち苦しくなって出てくるって」

二人がそれぞれ反対の方向に歩き出そうとするので、紐で繋がれた足輪は互いの足をキツく締め合う。
ちなみに足輪は大魔法使い791お手製のもので、そう易易とは外れない仕組みになっている。

アイム「オレには時間がないんだよ!書庫のほうに行かせろってんだッ!」

オニロ「ム。日々の生活習慣が大事なんだよッ!それに、部屋を掃除したら後で書庫の棚の整理に行くからそれまで待ってればいいじゃないかッ!」

アイム「掃除、整理って…お前は家政婦か何かか!そんなんだからお前はアマちゃんなんだよッ!」

オニロ「アマちゃんって…この間大戦で戦った時はボクがアイムに勝利したじゃないかッ!」


集計班「…あのー。煩くて眠れません。もっと声のボリュームを下げてください」

433 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 共同生活修行編その3:2015/02/24 23:44:04.65 ID:t.StFK.so
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 二日目】

何も進展がないまま、二日目の夜が過ぎようとしていた。アイムには焦りしかない。しかし、行動をともにするオニロとの関係は悪化の一途を辿るばかり。
始めの方はアイムに同情して色々と話しを振ったりしてコミュニケーションを図ったオニロだが、
アイムのあまりのツッケンドンな態度に流石の温厚なオニロも業を煮やし、次第にオニロの態度も硬化し始めた。
二日目の朝からはお互いに一言も喋らず、オニロが黙々と書庫整理をする中、アイムは書物で筍魂からの課題について調べる。
しかし、普段録に本に読んでいないことが災いしてか、碌な手がかりを得られず今に至る。

アイムはこの期に及んでも気がつかない。横で寝ているそりが合わないパートナーと協力をすることが、
筍魂の課題を解決する一番の近道であり唯一の解決法であるということを。
ただ、自分さえ良ければいいという独りよがりの考えは、自らの首を締めるだけのものだと。しかし、アイムはオニロに頼れない。
それは勿論オニロが気に食わないということも理由の一端としてはあるが、一番の理由は他人への頼り方を知らないアイムの内面自体にあった。
人に頼ることを知らずに、自らの幸福を第一に追求して来た彼は、周りと協力する方法を知らない。
スタンドプレイでは異色の力を発揮してきた彼だが、ことチームプレイになると赤子も同然なのだ。

アイム「…」

灯りも落とされ、本棚の裏手にあるベッドにアイムとオニロは横たわっている。
最近は、歴史改変による時空震も少なくなり睡眠を妨げられることは少なくなったというが、ベッドで安らかに眠るオニロの目には深いクマができている。
こいつはこいつで苦労しているんだな、とその時になってアイムは初めてパートナーの顔をまじまじと見つめる。
しかしすぐに顔を目の前の書物の山に向ける。ベッドの脇に置かれている微かな灯篭の光を頼りに、アイムは必死に筍魂からの課題を解こうと躍起になっていた。

434 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 共同生活修行編その4:2015/02/24 23:47:07.35 ID:t.StFK.so
―― 【“生命力の流れ”は“世界の理”と同一のものである】
     この言葉の意味を、お前は3日間のうちに理解しなくてはいけない。

生命力の流れ、とは何を指すのか。そもそも生命力自身が世界とどう関係してくるのか。

焦りからか、本のページを捲る手が震える。
明日の朝には筍魂が来る。その時に、どう答えればいいのか。答えを今から自分なりに捻り出すか、しかし筍魂の前では通用するはずがない。
オレに向いてない鍛錬ではなかったんじゃないのか。仮にそうだとしても、あの時点で引き受けたオレに非があるのは明白だ。
そもそも、どんな理不尽な内容でも立ち向かうと決めたのはオレ自身じゃないか。オレはオレ自身に嘘をつかなくちゃいけないということなのか。そんなことは許されない…

オニロ「…ねえ、アイム」

アイムが自らの思考の迷路に入り込んでいた時、横からそっと声がかけられる。
アイムが無言でオニロに顔を向けると、半身起き上がったオニロと目が合う。灯篭の光に当てられ、オニロの薄白い肌が際立った。
互いに会話をするのは昨日の夜に寝る前の挨拶をして以来だ、とアイムは至極どうでもいいことを考えた。

オニロ「少し、話をしない?」

435 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 共同生活修行編その5:2015/02/24 23:49:46.70 ID:t.StFK.so
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 二日目】

パタパタと静かに部屋の上部へとはためている大戦年表を二人は眺めていた。座っている床には紙面の切れ端や紙くずが散乱している。
今朝、この付近はオニロが懸命に掃除していたはずだが、どうやら一瞬で集計班が汚して回ったらしい。オニロの苦労も耐えないな、と隣に座るパートナーに少し同情した。

オニロ「こうして喋るのも久し振りだね」

照れくさそうにポツリと声をだすオニロ。二人の視線はあくまで目の前の大戦年表を向いたまま。目を合わせようとはしない。
暫くの沈黙の後、意を決したようにオニロはアイムに話しかけた。

オニロ「アイムはさ、筍魂さんにボクと3日間この編纂室で過ごすように指示されたんだよね?」

アイム「…そうだな」

オニロ「本当にボクと一緒に過ごすだけが訓練の内容だって伝えられたの?」

アイム「…そうだ」

アイムはオニロに筍魂から出された課題については一言も伝えてはいなかったし、伝える必要もないと考えていた。

オニロ「…そうなんだ。でも、それが本当なら――」


――どうしてそんなに焦っているの?


部屋の上部から僅かにカリカリと筆記ペンの動作音が、アイムの気持ちをはやらせる。

436 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 共同生活修行編その6:2015/02/24 23:52:10.30 ID:t.StFK.so
オニロ「キミが嫌いなボクと3日間過ごすだけなら、この無味乾燥とした周りと時間の流れの違う部屋にいるキミは半ば自暴自棄気味に過ごしてもおかしくない。
それ程、キミにとっては退屈な部屋だろうからね」

――でも、キミはこの部屋で何かに抗おうとしている。

オニロ「怠けもせず書庫で必死に本でナニカを探そうとしているアイムを見て、
『アイムはボクと3日間過ごすことだけが目的じゃない。何か別の目的があるんだな』って思ったよ」

さすがのボクも何かおかしいなて気がつくよ。そう呟き、オニロはアイムに向き直る。

オニロ「アイム、キミが抱えている真の訓練の内容をボクに教えて欲しいんだ。アイムの力になりたいんだ」

アイム「…逆にオレから一つ聞いてもいいか」

オニロ「勿論いいよ」

アイム「どうして、オレにそこまで構うんだ」

オニロ「アイムがボクのことを嫌っているのは知ってるよ。ボクも昨日から今日にかけて、アイムにはほとほと愛想が尽きたと思ったよ。でも。でもさ、――」


――ボクらは仲間じゃないか。


オニロ「仲間は助けあうもの、そうじゃない?」

それに、嫌々ながらボクの掃除に付き合ってくれるアイムが悪い人だとは到底思えないよ。
そう語り、オニロはアイムに笑いかけた。

437 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 共同生活修行編その7:2015/02/24 23:57:15.66 ID:t.StFK.so
アイムはオニロの言葉を理解するように暫くの間、頭のなかで反芻した。
いつか、筍魂がアイムに言っていた。『オニロとアイムとの差はチームプレイかスタンドプレイにある』という言葉を思い出す。
昔なら一蹴していたが、今なら師の言葉もすんなりを受け入れられる気がする。長い時間、たっぷりとかけアイムは考え、考えぬいた末の結論を出す。
不思議と清々しい気分になる。目の前の漆黒の室内も、灯篭に照らされたように明るく見える。
息を一回深く吸い、深く吐く。心の準備はできた。

アイム「筍魂の野郎に、課題を出されたんだ――」

たどたどしくはあるが、アイムはオニロに語り始める。ポツリ、ポツリと語りながら、支離滅裂に話している内容にも、
懸命に相槌をうつオニロが印象的だと、アイムは感じた。
その日、アイムは初めて“仲間に頼る”術を知った。

438 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者:2015/02/24 23:57:36.77 ID:t.StFK.so
なげえよハゲ。でもまだもう少しだけ続くんじゃ。

439 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その1:2015/02/24 23:58:48.55 ID:t.StFK.so
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 二日目】

オニロ「うーん、“生命力の流れ”かあ。聞いたこと無いなあ」

アイム「過去に読んだ文献や書籍にそれらしい事は書いてなかったのか?」

オニロ「う、うーん。ボクが覚えている限りは。記憶力には自信があるほうなんだけどね、ごめんね」

アイム「…使えねえな」

アイムの毒づきに思わずオニロは苦笑する。二人は書庫に移動して、関連する文献がないか夜通しで調べていた。
棚から本を取り出しては、二人して少しでも関連した記述が無いかを探し出す。読み終えた本は周辺に置き、再度書庫棚から書物を取り出す。
足元に積み上がっていく本を見ながら、これじゃシューさんを叱れないな、とオニロは思った。

アイム「あークソ、これでもないか」

オニロ「…アイム。『ユリガミサマノカナタ二』なんて本からじゃ見つからないと思うよ」

アイム「うるせえ!何か手がかりがあるかも知れないだろッ!あーでも、この物語いいな…」

手がかりは未だ一向に掴めない。

440 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その2:2015/02/25 00:01:04.45 ID:sa5SyBRAo
オニロ「無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する、か…」

アイム「あーもう、ゴチャゴチャしててわかりにくいんだよ。そもそも秩序てなんだよ、生命力てなんだよ、世界の理てなんなんだよ」

オニロ「なんにもわからないねえ」

アイム「よくもそんな呑気なことを…あと数時間もすれば、オレは筍魂の野郎と会う。
その時に、『答えは見つからなかった』と素直に頭を下げるしかないんだ。ふざけるな、もうオシマイだ」

オニロ「物事をマイナスに考えちゃいけないよアイム」

アイム「クソッ、屈辱的だ。お前に勝負で負けて慰められた時以来の屈辱だ」

オニロ「あはは、それをボクに言うんだ…」

と、オニロはそこで、ほうと一息ついて隣のアイムから見えない天井に視線を向ける。
螺旋状に年表は天高く、暗闇の天井へと伸び続けている。

オニロ「ねえアイム、ボクたちは。“会議所にいるボクたちは”今を生きているんだよね?」

アイム「は?当たり前だろ」

何をおかしなことを言っているんだという目をオニロに向ける。しかし、オニロは視線を年表に向けながら話を続ける。

オニロ「ボクたちは今を生きている。そして、大戦世界で過ごしてきた多くの人たちは過去を“生きて”、
今を“生きて”、そしてこれからも未来に向かって“生き続ける”」

441 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その3:2015/02/25 00:02:57.26 ID:sa5SyBRAo
オニロ「ボクはね、アイム。この編纂室に来てから多くの書物を読んできたけど、大戦年表ほど惹かれる書物はなかったんだ。
これまでの大戦や会議所の歴史が詳細に記されている大戦年表。
過去の先人たちがどうやって大戦での戦いでどう振る舞ってきたか、大戦の繁栄を願ってどう行動してきたのか、すごく気になったし勉強になったんだ」

歴史に興味が薄いアイムにはわかりづらいかもしれないね。そう屈託ない笑みで気遣う話し方にカチンときたアイムだが、
今はオニロに話しの先を促すために黙っておくことにした。

オニロ「ボクは今まで大戦年表を“時代の流れ”を記録した歴史書だと思ってばかりいた。でも、いま思ったんだ。
大戦年表は、兵士の活力、いや、“生命力の流れ”を示しているものなんじゃないかって」

目を丸くしてアイムはオニロを見返す。

アイム「お前は、大戦年表にこそオレたちの探す答えが記してあると。そう言うのか?」

オニロ「それはボクにもわからない。でも、大戦年表に記されている時代の流れは、その時代にいる兵士たち一人ひとりの力や勇気といった
“兵士たちの生命力”が作り上げてきたものなんだ。ボクもまだ全て年表を読み終えていないけど、確信をもってそう言える」

オニロの真剣な眼差しに、アイムは暫く逡巡した後、わかったと頷く。

アイム「見てみよう。大戦年表を。時代の歴史を」

そう言い終わるや否や、勢い良く立ち上がり書庫を出ようとする。

オニロ「うわっアイム!痛ッ!痛い痛い!足輪が食い込んでるから!ボクまだ起き上がってないから!
ていうか、年表の側に行かなくても、年表読むことできるからッ!」

442 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その4:2015/02/25 00:05:25.28 ID:sa5SyBRAo
その後、二人は自らの身体を巻き付くように纏わりつく大戦年表に悪戦苦闘しながら大戦の歴史を紐解き始めた。
夜明けまでもう幾ばくの時間も残されていない。しかし、二人はまるで何かに取りつかれたかのように年表に描かれた時代の流れを、
兵士たちの“生命力の流れ”を追い続けた。

オニロ「K.N.C21年頃には、大戦内での撃破数不正が発覚して会議所から波及した騒ぎは大騒動へと発展する。
直後に¢さんは【階級制のルールを変更する】ということで不正騒動への対策を取って、大戦の“負”の流れを断ち切った」

アイム「K.N.C71年辺りでは、集計班さんが体調不良で集計係を長い期間休み、その影響で集計係が不足。
大戦開催が何度も見送られるといった事態にまで発展した。そんな危機を、抹茶や斑虎さんを始めとした一部の兵士が集計係を代替したり、
負担軽減のために複数集計体制を取ろうとするなどして、“正”の流れが大戦の勢いを取り戻した」

オニロ「他方で順調に兵士を増やしていたK.N.C170年頃では、集計班さんの一存で強行された新ルールが一部に不評で、
その“負”の流れが会議所にまで伝わって参加人数の低下を招いた…」

そして、二人は読み進めていくうちにある一つの法則に気がつく。大戦世界が創造されて間もない黎明期から、
大戦の歴史は様々な兵士たちの“正”と“負”の感情・思いによって創りあげられてきているものだと。

443 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その5:2015/02/25 00:08:08.75 ID:sa5SyBRAo
アイム「時代の変化のターニングポイントでは、必ず誰かが“正”か“負”の思いを持って行動に起こす。
たとえば集計の負担を軽減したいと考えた抹茶は集計ツールを開発するという“正”の思いで行動に起こし会議所が盛り上がり、
オレたちの敵であるスクリプトは大戦をメチャクチャに荒らしたいという“負”の思いを持ってかつての大戦を荒らし回り、
その結果として会議所は停滞した」

兵士個人の“正”や“負”の感情は巡り巡って世界を突き動かす流れとなる。

オニロ「兵士たちが持つポジティブな感情やマイナスの感情、即ち平面上に存在する“正”の流れと“負”の流れは
世界の変化で容易に“正”の方向に振れるし、“負”の方向にも振れる。兵士はそうやって生きている。
それこそが【生命力の流れ】…」

アイム「兵士たちの“正”や“負”の流れは、結果として大戦世界の変化の元になる“理”となる。
それこそが【世界の理】であり、同時に【生命力の流れ】でもある」

個々人の兵士たちが持つ“正”や“負”の感情から引き起こされる思想・行動は、結果として大多数の兵士たちをその方向に揺り動かす。
世界はメトロノームの両端にある“正”と“負”に向かって常に揺れ動いているようなもので、誰かがメトロノームの針をちょいと摘んでしまえば、
世界の流れはすぐに変化してしまう。


――【“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】


アイムとオニロは、筍魂の語った言葉を、きのこたけのこ大戦の歴史から理解したのだ。

444 名前:社長:2015/02/25 00:09:18.64 ID:p.Q7KfEY0
これは秘密だけどユリガミノカナタニなのは秘密だよ

445 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その6:2015/02/25 00:10:28.10 ID:sa5SyBRAo
アイム「生命力の流れ云々はわかった。ただ、その前の【無秩序の全は一に帰し】ていう文はどういう意味だ?」

オニロ「無秩序…そう言えば、前に読んだ本で『自然のエネルギー則というものは秩序から無秩序の方向に進む』て書いてあったような」

アイム「なんだそりゃ…」

オニロ「えと、たとえば部屋がきれいな状態を秩序、部屋が汚い状態を無秩序とすれば、
必ず部屋は汚くなっていく方向に進んでいく、ていうことかな」

アイム「それが万物の法則だっていうのか?ますますわけわかんねえな」

必ず部屋を汚す主犯格である集計班がそのエネルギー則のエネルギー量とでも言うのだろうか。
それ以上の考えは自らの頭を混乱させるだけなので、アイムは考えを遮断させる。
と、そこでアイムは一つの考えに辿り着く。

アイム「目に見えない大きな流れがあるということか。部屋の中の小さな誇りも、いま部屋の中にいるこの自分も、
ちっぽけな存在である“一”に変わりはない。その小さな一が集まって、全てが存在する」

目に見えない世界の流れ。
そこにいるそれぞれの兵士はそれぞれちっぽけな“一”であり、同時に“全”でもある。

ありとあらゆる全ては同じ一つの存在である。その“一”から生まれる“正”や“負”の流れは即ち“全”の流れ と同化する。
“一”は“全”、“全”は“一”。
それこそが世界の理。戦闘術魂の真理。

446 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その7:2015/02/25 00:12:25.52 ID:sa5SyBRAo
アイム「繋がった…繋がったぞッ!あいつの言っていることを、理解できた…」

オニロ「やったねアイム!これで修行はクリアできるねッ!」

アイム「つ、疲れた…なんか一気に疲れが」

オニロ「ホントだよ。でも起きたらまたシューさんの机の周りを掃除しないと、はぁ」

アイム「だからお前は家政婦かっての。ケッ、そんなんがたけのこ軍期待の星とは笑わせるな」

オニロ「なッ…アイムはシューさんの机周りを一人で掃除してみてご覧よ!あそこは魔境だよ!」

空が白み始めた頃、二人は世界の理を理解した。緊張の糸が切れたのか軽口を叩き合うようになった二人の様子を集計班は物陰で静かに確認して、そして独り頷いてベッドに戻っていった。

447 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その8:2015/02/25 00:14:15.87 ID:sa5SyBRAo
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 三日目】

筍魂「時間だ。【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】この答えを聞こう」

アイム「【無秩序の全】は世界、【一】はオレ。【一】が【全】の“正”・“負”を支配し、逆もまた然り。それが――」

オニロ「――それが【生命力の流れ】で【世界の理】の一部」

アイム「なッ」

筍魂「…正解だ」

アイム「おい!せっかく良いところだったのに、どうしてお前が言うんだッ!」

オニロ「いやあ。なんかつい言いたくなっちゃって。ほらチームプレイて言うじゃない?連携を取って筍魂さんに説明したてことだよ」

アイム「ハン!この修行はオレだけに出された課題だぞ。解答するのはオレだけだ!
それを出しゃばるとは、お前も個人プレーが過ぎるな」

オニロ「それをアイムには言われたくないよ…」


集計班「修行はクリア、ということですかね?」

筍魂「そうですね。『二つ』の課題をクリアしましたからね、彼は。いや、彼らか」

集計班「戦闘術魂の真理と、アイム君の精神的内面を同時に鍛える。さすがですね…まあ彼らはまだまだ未熟ですが」

ギャアギャアと騒ぐ二人を尻目に、集計班と筍魂は肩をすくめる。

448 名前:社長:2015/02/25 00:14:48.48 ID:p.Q7KfEY0
はまだ まだ未熟だぞ わかってるのか おい!!

449 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その9:2015/02/25 00:16:53.48 ID:sa5SyBRAo
791「随分と楽しそうだね。私も混ぜてよ」

気がつけば、オニロのすぐ横には大魔法使い791が立っていた。

オニロ「師匠!移動魔法使ったなら言ってください、吃驚します」

791「アハハ、ごめんごめん。アイム君も、オニロ君も修行お疲れさま」

アイム「おい791師匠様よお。弟子の指導は考えなおしたほうがいいぜ。
なんで一日三食ネギを弟子に徹底させてるんだ。お陰でネギを嫌いになりかけたぜ」

791「ネギは貴重な魔力補給源だから仕方ないよ」

パチンと指を鳴らすと、二人の足輪は音もなく消え去った。

筍魂「おめでとう。この修行は終わりだ。
負の考え方をすれば、世界は、負の流れになる。また、正の考え方をすれば、正の流れにもなる。
世界の理を、世界の大きな流れをお前は理解したということだ」

筍魂「私は世界そのものであり、世界は私そのものである。ありとあらゆる【全て】は同じ【一つ】の存在。
それを理解することことが【戦闘術魂】の基礎となる」

【戦闘術魂】は純粋な戦闘力を底上げする小手先の技を教えるものだけではない。
術者の精神を鍛え、目に見えない大きな流れに身を任せて同化する。それこそが【戦闘術魂】の真理。

アイム「よっしゃ!これでオレも【戦闘術魂】を修得したてわけだな!フフフ、筍魂、いや師<せんせい>、
三日前の再戦を願おう。泣きべそをかくまで傷めつけてやるよッ!!!」

450 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その10:2015/02/25 00:18:14.40 ID:sa5SyBRAo
【K.N.C180年 会議所 教練所 中庭】

筍魂「『ウッドハンマー』」

アイム「ぐえッ」

筍魂「『りゅうせいぐん』」

アイム「ぐッ!!」

筍魂「『アネ゙デパミ゙』」

社長「バグ技 きた!?」

アイム「な、なんでじゃあああああああ」


筍魂「たった三日で【戦闘術魂】を修得できるはずがないんだよなあ。
お前が学んだのは【戦闘術魂】の真理であって、これからの本修行で修得していくんやで(ニッコリ)」

筍魂「いい忘れた。ワイの“本気の”鍛錬は厳しいゾ」

アイム「ふ、ふざけるミ!」

社長「伝  染」

451 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 真理編その10:2015/02/25 00:19:15.23 ID:sa5SyBRAo
>>444
ああああああああああああああああああミスった。すまぬ。wiki掲載時には直します。

次の更新で二章終わります。アイム君とオニロ君は青春できたねよかったね的ストーリースタイル。

452 名前:社長:2015/02/25 00:20:10.72 ID:p.Q7KfEY0
社長ウゼェ

453 名前:社長:2015/02/25 00:26:23.35 ID:p.Q7KfEY0
てかアイム君ユリガミノカナタニに興味示してるすね

454 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その1:2015/02/28 01:54:24.82 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 会議】
きのこ軍 集計班「ここ数日。目に見えて会議所周辺の兵士の“士気”が下がっています」

編纂室の円卓テーブルに全員が着席するや否や、集計班はそう切り出した。

たけのこ軍 加古川「地上の事務棟の方では人気がない。何人かの事務員はここ数日無断欠勤していて、
連絡を取ると『仕事をする気力が無い』という返答ばかり」

たけのこ軍 社長「いつもの」

たけのこ軍 埼玉「たけのこの里の方もヒドイものだたま。少し前までは大通りに活気があったけど、
最近では兵士っ子一人も歩いてないたま」

たけのこ軍 社長「俺の名前は前田停学……」

きのこ軍 黒砂糖「きのこの山も概ね同じ現象が起きている。住民の多くが大戦へのヤル気、意欲を失いつつある」

たけのこ軍 社長「ひきこもりブルース」

たけのこ軍 抹茶「この現象が発生した時期を調べてみると、ちょうどこの部屋で最初に時空震が発生した日と一致します」

たけのこ軍 社長「かぁー!原因は!どこじゃー!」

455 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その2:2015/02/28 01:57:37.58 ID:GzBIaz3wo
冒険家 スリッパ「つまり…度重なる歴史改変が現代の兵士の士気に影響を与えているということか?」

スリッパの言葉に集計班は神妙に頷く。

きのこ軍 集計班「おそらく大戦の歴史がスクリプトによる“敗北”の歴史に書き換えられていくに連れ、
現代の兵士たちの大戦への求心力は弱まっているものと考えられます」

きのこ軍 ¢「もしこのまま歴史改変を許せば…大戦続行は不可能となるということか」

集計班と¢の言葉に、アイムとオニロは先日の筍魂の言葉を思い出した。

兵士たちが持つ“負”の感情が増幅されれば、それは世界全体を動かす“負”の流れとなる。
度重なる歴史改変により、きのたけの歴史は“スクリプトに敗北する”ものとなった。何も知らない兵士たちに植え付けられるのは大戦への“負”の感情なのだ。
たけのこ軍 791「正直、私たちも周りの兵士程ではないけど歴史改変の影響は受けていると思うよ。ここにいる兵士たちはまだ編纂室で歴史の真実を知ることができるから影響は小さいけど…」
たけのこ軍 社長「僕が社長だって?違うよ 違わないよ」

きのこ軍 アイム「つまり、このままじゃマズイてことだよな?」

重苦しくなった雰囲気を払拭するように、アイムは力強く拳を握る。

きのこ軍 アイム「原因究明はできている。だとしたら、方法は一つじゃないか?」

たけのこ軍 オニロ「【時限の境界】への再突入…」

オニロの言葉にアイムは同調するように頷く。しかし、加古川はアイムの言葉に首を振る。

たけのこ軍 加古川「私は反対だ。前回の突入で【時限の境界】に二つの【制約】の存在は確認した。
しかし、全ての制約を発見できたとは限らない。無闇に突入して、異なる制約に抵触すれば
今度は帰ってこられないということもある」
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456 名前:社長:2015/02/28 01:59:04.62 ID:yb2xdde20
はまだ 編集室で歴史の真実を知ることができるのだ わかってるのかおい!

457 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その3:2015/02/28 02:00:50.36 ID:GzBIaz3wo
きのこ軍 アイム「じゃあ他に解決法はあるって言うのか?」

スリッパが手を挙げる。

冒険家 スリッパ「今の発言に関連するかどうかわからないが、『スクリプト生産工場』と思わしき跡地を発見した」

たけのこ軍 社長「よし と?」

きのこ軍 アイム「待て。なんだその『スクリプト生産工場』ってのは」

きのこ軍 集計班「実はスリッパさんやサラさん、それに何人かの兵士に協力を依頼して、
歴史を跋扈する多くのスクリプト群が一体どこから生まれてきたのかを突き止めるようにお願いしたんです」

きのこ軍 集計班「スクリプトが宇宙から隕石のように降って湧いて出たなんて事じゃない限り、
スクリプトはDBの手でこの大戦世界の何処かで必ず生産され、増殖しているはずなのです」

たけのこ軍 社長「さすが シューさんは ちがうぜー」

たけのこ軍 スリッパ「シューさんの言うとおりさ。大戦世界の果てに『スクリプト生産工場』だと思われる跡地を発見した。
ただ、大分前に取り壊したのか跡形もなく風化してしまっていて痕跡らしい痕跡は見つからなかった」

きのこ軍 アイム「つまり、DBは過去の大戦世界でスクリプト生産工場を創って、
そこで大量のスクリプトを造った後に、工場ごと破棄したてことか?」

458 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その4:2015/02/28 02:02:22.89 ID:GzBIaz3wo
きのこ軍 集計班「恐らくはそうなるでしょう。我々に自分の痕跡を見せたくなかった」

つまり、DBは捕らわれていた会議所を秘密裏にスクリプトと一緒に抜けだした後、
【時限の境界】で遥か昔の大戦世界にワープ。そこでスクリプト生産工場を作り、スクリプトを大量生産したということになる。

たけのこ軍 社長「な 何の話だったの?」

きのこ軍 ¢「歴史に蔓延るスクリプトは全てDBたちによる勝手な過去の遺産。
俺たちが【時限の境界】を利用してタイムワープして、稼働している時点での【スクリプト工場】を破壊する」

たけのこ軍 オニロ「そうすれば、工場から生まれたスクリプトは存在しないことになり、
一連の歴史改変騒動は収まる…」

歴史改変を引き起こしているスクリプトの存在そのものを消してしまえば、必然的に歴史改変は発生しなかったということになる。

きのこ軍 集計班「流石は¢さんですね。ということで、ここに第二次DB討伐部隊を編成し、
DB討伐とともに『スクリプト工場の状況を確認する』という任務を同時遂行してもらいます」

459 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その5:2015/02/28 02:03:33.47 ID:GzBIaz3wo
きのこ軍 アイム「あれ、そういえば参謀は?」

DB討伐隊の隊長として陣頭指揮を取るはずの参謀の姿がない。

きのこ軍 集計班「ああ。参謀には…私がある頼み事をしたので、今ここには居ません」

珍しく言葉を詰まらせながら、集計班はアイムの質問に答える。
その態度には僅かばかりの逡巡が見られた。

社長「あっへほー!!」

きのこ軍 アイム「うるせえ大声挙げんな斬るぞ」

きのこ軍 集計班「ハハ、社長は変わらないなあ。勝手ながら、今回は参謀の代わりに私が討伐隊を編成いたします…メンバーは――」

460 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その6:2015/02/28 02:05:56.02 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

791「はい完成。この魔方陣の上に乗ると、時限の境界までの転移魔法が発動するよ。
ただ、転移したらこちらには戻って来れないから注意してね」

791は編纂室の端に魔法陣を作り上げ、満足気に会議所兵士に説明する。

筍魂「ちょっと転移魔法用意し終わるの早すぎませんかね…」

791「私は魔力使いきったから暫く休むよ。討伐隊のみんなは頑張ってね(ニッコリ」


オニロ「ねえアイム」

兵士たちが続々と地上に引き上げていく。アイムも、第二次討伐隊のメンバーとして地上に戻り準備を整えなければいけなかった。

アイム「なんだ」

オニロ「今度の【時限の境界】を利用したタイムワープは、初めから行く年代が決まっているんだよね?」

前回は【時限の境界】の【制約】を知らずに、一定時間経過後に無造作に近くの扉へと吸い寄せられた。
その反省を生かし、今回は自らの意志で【K.N.C55年】にワープし、正史にはいなかったスクリプトの撃退とスクリプト工場の確認。
この二つを目的として討伐隊は行動する。

オニロ「K.N.C55年。アイムはどんな年か知っておいたほうがいいんじゃない?」

アイムの表情を窺うように顔を覗き込むオニロは心配そうに語りかける。
いままでのアイムなら彼の提案など一蹴するか無視を決め込むかどちらかだっただろう。
ただ、今の彼は歴史の重要性を深く理解している。なにより――仲間の大切さを理解し始めている。
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461 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その7:2015/02/28 02:12:53.06 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C180年 時限の境界】

抹茶「それじゃあ時限の境界に突入します。アイム君、道案内をお願いね」

アイム「任せとけって。時限の境界内部に突入したら恐らく巨大スクリプトNEXTは次々にオレたちに襲いかかってくる。
構わず目的の扉<K.N.C55年の扉>まで急ぐぞッ」

討伐隊全員が頷き、時限の境界に進入する――



【K.N.C180年 大戦年表編纂室】

集計班「討伐隊も今頃は時限の境界に進入した頃でしょうかね」

オニロ「そうですねえ。はい、お茶です」

集計班「ありがとうございます。オニロ君、今日は疲れたでしょう。もうそろそろ寝ましょうか」

オニロ「そうですね。やっぱり会議は頭を使うからその分体力の浪費も激しいですね」

たははと笑うオニロを集計班は朗らかな笑顔で返し、奥の大戦年表に目線を移す。
大戦年表を中心に広がる薄暗くて物が散らかるだだっ広い部屋で、集計班は人生の大部分を過ごしてきた。
どこか名残惜しそうに、目を細め集計班は部屋を一度ぐるりと見回した。

オニロ「シューさん…?」

集計班「ん?ああ、なんでもないですよ。ほら、もう今日は寝ましょう。
今日こそは夜中に時空震が起きないといいですね。また夕飯を吐いちゃいますよ」
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462 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その8:2015/02/28 02:15:26.17 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C180年 時限の境界】

アイム「奴らに構うなッ!!一目散に走れッ!!」

時限の境界内部には、予想通り巨大スクリプトNEXTがアイムたちを待ち構えていた。
頭のなかで構築された地図を便りに、アイムたちは最短経路でK.N.C55年の扉に向かって走る。

someone「見えた!あそこが目的の扉ですね―――」

斑虎「よしッ!突撃―――」

someoneたちが目的の扉があるフロアへと足を踏み入れた瞬間。
フロアの天井に張り付き待ち伏せていた一体のNEXTが直下に走りこんできた斑虎とsomeoneに向けて猛烈な射撃を行い、二人の自由を奪った。

抹茶「二人ともッ!クソッ!『湯のみスロー』!!」

直上のスクリプトに全力で投げた湯のみは、NEXTの目の前で弾け中に詰まった茶葉が煙幕として機能した。

アイム「おい抹茶ッ!今のうちにお前はsomeoneさんと斑虎さん連れて先に扉をくぐれッ!!」

抹茶「で、でも二人に回復魔法をかけないと…」

アイム「バカヤロウッ!いまここで回復している暇なんてないッ!お前は二人を引きずってでも扉の中まで連れていくんだッ!」

視界が開けたNEXTはアイムたちの目の前に飛び降り、臨戦態勢を取る。

アイム「ここはオレが食い止める!はやく行けッ」

抹茶「わかったッ!!」
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463 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その9:2015/02/28 02:18:29.22 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C180年 会議所 大廊下】

久々に素肌で感じる外の風は気持ちよくも少し肌寒いほどだと集計班は実感した。
集計班とオニロの二人は地下部隊として歴史の改変をひたすら追わなければいけない。
そのため、一歩たりとも地上へ出ることはできない。

難儀な役回りに付いてしまったものだ。そう呟くと、集計班は自らのこれまでを振り返り自嘲するように頬を引き攣らせた。
自分の仕事は全て終わった。後は周りに任せておけばいい。現在の状況も、全て集計班の想定の範疇にある。

ただ一つ気がかりなのはアイムとオニロの二人。集計班は心から彼らに同情していた。元を辿れば“元凶”ともいえる二人の存在だが、
彼らがこの世界を訪れた事自体は何の罪もない。せめてもの願いは、“希望の星”である彼らが、“欠けたピース”の二人が、幸せな結末を迎えられること。
集計班はそれだけを願ってやまない。

集計班「…あー。そういえばもう一人いたな」

いつも目の前のような暗闇の中で集計班の話に付き合ってくれた人物。集計班の“共犯”ともいえる人物。
彼はこれから独りで生きていけるのだろうか――

―― コツ

誰もいない廊下に、突然足音が響く。正確にはその音が集計班の頭の中で“響き渡った”。

464 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その10 入れ忘れた:2015/02/28 02:20:46.87 ID:GzBIaz3wo
集計班「もう来たんですか。まあそろそろだとは思ったんですが」

招かれざる客を、集計班は素直に迎え入れる。

465 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その11:2015/02/28 02:21:27.70 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C55年 大戦場】

抹茶「よしッ!無事、スクリプトも撃退して【スクリプト生産工場】の証拠も突き止めた。後は現代に帰るだけだ!」

somone「ご迷惑をおかけしました。もう大丈夫です」

斑虎「今度あのスクリプトに会ったらただじゃおかねえぞ」

アイム「まあそれだけ減らず口を叩けるんならもう大丈夫だな…」

4人は任務を追え、時限の境界の扉の前に立つ。

抹茶「じゃあ帰りましょう」

抹茶、someone、斑虎の順に開かれた扉をくぐっていく。

アイム「やれやれ。まあ【時限の境界】も制約がわかれば過去に跳ぶなんてお手のものだな」

そう言いながら、アイムも3人の後を追おうとするが――



アイム「…ん?あれ?」

466 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その12:2015/02/28 02:25:22.78 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C180年 会議所 大廊下】

―― コツ

―― コツ コツ

その足音は徐々に集計班に近づくように音が次第に強く反響していく。姿は見えず、足音だけが鳴り響く。
そんな事態に動じること無く、集計班はこの“招かれざる客”の正体を知っていた。

きのこ軍 集計班「いつかシッペ返しが来るとは思っていましたが、まさか今日とはねえ」

誰もいない廊下で、集計班は誰かに話しかけるように独り語り始める。

きのこ軍 集計班「まあ最期にアイムとオニロの成長を見られたのが唯一の救いかな」

―― コツ コツ
足音は止むことなく一定のリズムで響いている。

きのこ軍 集計班「私一人の手で、『預言書』のシナリオは崩れ去った。あなたたちがそのシナリオを書き換え終わった時には“全てが”終わっている。
いい加減決められたシナリオ道理に進行するのには飽々していたところでして。私からすれば、してやったりです」

―― コツ コツ

きのこ軍 集計班「これからは、私もあなたたちも傍観者です」

―― コツ 
足音が、止まる。


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

467 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その13:2015/02/28 02:26:36.19 ID:GzBIaz3wo
【K.N.C55年 大戦場】

アイム「扉を…くぐれない」

つい先刻に抹茶たちがくぐっていった時代の扉。元を辿れば時限の境界からこの時代にワープするためにくぐってきた時代の扉。
扉の先に広がる暗闇に進もうとするも、見えない“壁”のようなものに遮られその進入を拒まれる。

アイム「そんな…馬鹿な」

予想し得ない事態。


【制約T】時限の境界フロア内に一定時間以上留まり続けることはできない。制限時間を超えると、強制的にどこかの『年代の扉』に吸い寄せられてしまう。

【制約U.】過去の時代へとタイムワープした場合、その時代の歴史を塗り替えるための行動を起こさない限り、現代へは戻れない。


会議所が知り得た【時限の境界】の【制約】はこの二つ。いずれも、討伐隊に予想外の事態が発生した時、
それは目に見えない【制約】として各々の前に現れる。

468 名前:Chapter2.悪しき時空の潮流者 再突入への会議編その14:2015/02/28 02:27:39.00 ID:GzBIaz3wo

先日の会議の場での加古川の言葉を思い出す。

― 【時限の境界】に潜む二つの【制約】の存在は確認した。しかし、全ての制約を発見できたとは限らない。
無闇に突入して、異なる制約に抵触すれば今度は帰ってこられないということもある


いま、まさにアイムは予想し得ない危機に直面していた。それは即ち――



アイム「新たな…【制約】」



加古川の予想は最悪の形となって的中した。

アイムは新たな制約に抵触し、そして過去の時代に、独り取り残された。

そして不幸なことに、その制約の内容を、まだ誰も知らない。

469 名前:きのこ軍:2015/02/28 02:29:16.19 ID:GzBIaz3wo
chapter2完。長えよハゲ。次からはもっと短くします。
去る集計。そしてアイム。

470 名前:社長:2015/02/28 02:31:25.25 ID:yb2xdde20
もつだぞ。誰だ…謎の男は…

471 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/04/05 21:45:06.66 ID:CNyKB9YQo
更新再開は5月始めくらいを予定している。それまで冬眠してますね。

472 名前:791:2015/04/05 22:33:52.77 ID:nhZqtZy.o
楽しみにしてます!

473 名前:きのこ軍:2015/04/29 01:11:22.065 ID:unimfom.o
・これまでのあらすじ

“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、
社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。(Chapter1まで)

そんなある日、捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走している事実が明らかになる。同時に、歴史改変の時空震を確認し、
会議所はDB一味が故意に歴史を改変していると推測。
参謀を隊長とするDB討伐隊は、歴史改変の根源を、DB一味の潜む『時限の境界』であることを突き止める。すぐさま『時限の境界』に突入するも、
内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。
結局、DBの姿すら確認できずに、半ば追い出される形になってしまう。(Chapter2 中盤まで)

第一次突入後、自身の不甲斐なさを悔い、討伐隊一員のアイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。オニロとの絆を深め、
師から『“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する』の教えを理解したアイムは、討伐隊員とともに再び時限の境界へと突入する。

しかし、見えざる【第三の制約】により、アイムは独り、タイムワープ先のK.N.C55年に置き去りにされてしまう。
時を同じくして、会議所の中心的存在だった集計班も姿を消してしまう。まさに絶体絶命――――

Chapter3. 無秩序な追跡者たち へとつづく。

474 名前:きのこ軍:2015/04/29 01:14:07.037 ID:unimfom.o
3章のタイトル変更

『時限の境界』⇒『無秩序な追跡者たち』

頑張ってサクサク進めていきたいです。

475 名前:791:2015/04/29 01:51:22.612 ID:LTwIl4uEo
正座で待機

476 名前:メテオ隊:2015/04/29 22:53:38.973 ID:jvoFxEoso
キター!

477 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち プロローグその1:2015/04/30 00:27:32.719 ID:ZLviXuD2o
きのたけWARS 〜DB討伐〜
Chpater3. 無秩序な追跡者たち

━━━━━━
━━━━

【K.N.C180年 某所】


『…
大戦に“や”まだかつてない危機が訪れようとしている。
かつてともに混迷の会議所を乗り越えた貴方の力を、
今一度会議所は必要としている。会議所への復帰を、検討していただけないだろうか。

会議所より
きのこ軍 集計班』



参謀「シューさんからの手紙入り封筒や。確かに渡したで」

手紙の兵士「…」

参謀から手渡された封筒から手紙を取り出す。読み終えると、手紙の宛名の兵士は、ほう、と一息ついた。

手紙の兵士「…もう私は隠居の身だ」

参謀「最近同じことを言っとった奴をもう一人知っとるわ。そいつはあんたよりも古株やが」


478 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち プロローグその2:2015/04/30 00:31:04.504 ID:ZLviXuD2o
手紙の兵士「いまさら私に何を求めるんだ」

参謀「さあ、それはシューさんに聞いてみんとわからん。ただ、今は詳しく話せんが、会議所は…
いや、『きのこたけのこワールド』は未曾有の危機に瀕している。これだけは確かや」

頬を撫でるような風が吹く。身に纏う黒いマントのはためく音を耳で感じながら、手紙の兵士は暫く逡巡するような面持ちをしていた。
その後、参謀に向かって大きく頷いてみせた。

手紙の兵士「大方の事情はわかった。行くよ。この老体が少しでも皆の役に立つというのなら、それに勝る喜びはない」

参謀「そうこなくちゃな。すぐに乗ってくれ。時間がないんや」

背後でチョコ色のエンジンをふかしているバイクに参謀は飛び乗った。
きのこ軍カラーであるエヴァーグリーンが日光に反射して、輝いて見える。

手紙の兵士「とりあえず、会議所に着いたら言いたいことがある」

参謀「なんや?」

手紙の兵士は手に持ったポンポンと貰った手紙を叩いた。

手紙の兵士「『シューさん、あなた相変わらず誤字脱字がヒドイですね』てな」

手紙の兵士も参謀に続き飛び乗ると、二人を乗せたバイクは嬉しそうな雄叫びを上げながら会議所へ向け発進した。

479 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち プロローグその3:2015/04/30 00:32:52.709 ID:ZLviXuD2o
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

集計班の失踪はすぐに会議所中に知れ渡ることとなった。

たけのこ軍 791「シューさんがいないてのは本当なの!?」

たけのこ軍 オニロ「は、はい。どこを探しても見当たらないんです…てっきり本の山に埋もれているものとばかり…」

きのこ軍 ゴダン「一体どこにいるんだ…」

地下部隊に所属している兵士は、基本的に“地上”に出ることを許されない。歴史改変を知覚できるのは地下の編纂室のみ。
誰かが地下に残り続け、“歴史の傍観者”となり続けなければならない。
その地下部隊に所属していた兵士が、集計班とオニロだった。つまり、集計班は地上に出てはいけない兵士なのである。

たけのこ軍 加古川「残った事務職員をかき集めて会議所中を捜索させているが、手掛かりなしだな」

スリッパ「討伐隊が時限の境界に突入している大事な時期に…なんということだ」

サラ「…」

きのこ軍 黒砂糖「まずいですよ」


480 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち プロローグその4:2015/04/30 00:45:28.177 ID:ZLviXuD2o
集計班の喪失は会議所全体にとっても大きな痛手だった。
集計係を長年務め、会議所では議長として全ての議案に関わってきた。裏方として常に大戦と会議所をまとめ、支えてきた大黒柱が、
事一大事のタイミングで忽然と姿を消してしまったのである。
失踪を無責任と捉え怒りを覚える者。一時的な失踪だとたかをくくりそれほど心配していない者。逆に、不安に駆られる者。
冷静に今後の動向について考えを巡らせる者。事件への捉え方は人それぞれ異なる。

ただ、オニロは、目の前の兵士だけは間違いなく“不安”を――いや、不安を通り越した“絶望”を誰よりも強く感じていると、
そう確信せずにはいられなかった。

たけのこ軍 オニロ「あの……社長……ですよね?大丈夫ですか?」

社長と呼ばれた兵士は、肩をビクッと震わせ、声のした方向へ顔を振り向いた。
オニロが目の前の兵士を社長であると断言できなかったのには理由がある。

社長の存在がバグっていないのである。いつもは、顔だけでなく全身バグまみれの社長が、
今はまるで獲物に狙われた子鹿のように全身を震わせ、悲しみ、際限ないほどに“恐怖”している。

たけのこ軍 オニロ「あの―――」

たけのこ軍 社長「……あっへほー!あっへほー!あっへほー!!!!!」

たけのこ軍 ビギナー「うるさいよお!少しは静かにしろ!」

たけのこ軍 社長「あ、はい」

たけのこ軍 ビギナー「ったく、シューさんがいなくなって一大事だってのに…社長は脳天気だなあ」

一瞬の間の後、社長は“全身バグ兵士”に戻った。その姿はいつもと変わりない。
しかし、オニロはハッキリと先程の社長の素面を見てしまっている。
それでも、社長の鬼気迫るバグ姿に気圧され、遂にオニロは尋ねることはできなかった。

481 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち プロローグその5:2015/04/30 00:46:14.553 ID:ZLviXuD2o
きのこ軍 ¢「参謀はどこにいったん?ボクだけじゃこの場を収拾できないんよ、びええええええん」

きのこ軍 黒砂糖「参謀はシューさんの頼み事とやらで、今朝たけのこの里に向けて出発したとか…」

たけのこ軍 埼玉「どうすればいいたま…」

スリッパ「経過時間からすると、そろそろ討伐隊員が帰ってきてもよさそうなものだが…」


たけのこ軍 抹茶「第二次討伐隊!ただいま帰還しました!」

編纂室の端にある魔法陣から、討伐隊員たちが次々に到着する。

きのこ軍 ¢「お帰りなんよ!怪我はなかったか!」

たけのこ軍 抹茶「斑虎さんとsomeoneさんの傷の手当をお願いします。
途中、NEXT(巨大スクリプト)に襲われ応急手当はしたんですが…」

たけのこ軍 山本「俺が医療室へ連れて行くッ!何人か手を貸してくれ」

編纂室の喧騒が激しくなり、数人が二人を抱え、地上へ出て行った。


482 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち プロローグその6:2015/04/30 00:48:05.430 ID:ZLviXuD2o
スリッパ「ご苦労だった。成果はあったのか?」

たけのこ軍 抹茶「え、ええ。とりあえず、目標としていた『スクリプト工場の跡地』を発見しました」

たけのこ軍 筍魂「これマジ?やったぜ。」

たけのこ軍 抹茶「は、はい。ですが、大変な事に――――」

たけのこ軍 オニロ「ちょっと待って。アイムは、アイムはどこにいるんですか?」

どこにも姿を見せないアイムを探し、視線を彷徨わせるオニロ。
抹茶はそんなオニロを沈痛そうな面持ちで見つめ、そして周りをさらなる絶望へ追いやる一言を言い放った。


たけのこ軍 抹茶「アイム君は――僕たちと一緒ではありません。
KNC.55年から帰還することができず、【時限の境界】に閉じ込められてしまいました……」

483 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち プロローグその7:2015/04/30 00:51:37.496 ID:ZLviXuD2o
【K.N.C55年 大戦場】

アイム「さて、どうするかな…」

つい先刻に抹茶たちがくぐっていった時代の扉。元を辿れば時限の境界からこの時代にワープするためにくぐってきた時代の扉。
扉の先に広がる暗闇に進もうとするも、見えない“壁”のようなものに遮られその進入を拒まれる。
予想だにしない事態だった。

アイム「これも、【制約】とやらの影響かな」

ポリポリと困ったように頭をかく。抹茶たちは先に現代に帰ってしまった。アイムは過去に取り残された形になる。

アイム「予想外に大変な状況だな」

言葉ほど、アイムは焦燥感を抱いてない。危機感に煽られ自らの冷静さを失い、的確な判断を誤ってしまえば、愚の骨頂。
危機的状況に陥っても平静さを保てるのが、アイムの強さの源である。
アイムは、自らの置かれた状況と、これまでの時限の境界の制約条件を照らしあわせ、考察する。今後自分が何をしなければならないのか。


・ 過去→現代への帰還は、【時限の境界】の制約U:『歴史改変の実施』が必要である。
・ 既に討伐隊(抹茶、アイムたち含む)は、スクリプトの退治で制約Uをクリアしている。
・ 抹茶たちは現代へ戻れた。アイムだけ戻れなかった。
・ 何らかの要因(原因不明)により、アイムだけ制約Uを履行できていない?
・ 過去へ戻る可能性を高めるためには、まず、制約Uの再履行が妥当。


・ 即ち、アイム自身の手で“再度”大戦の歴史改変を行わなければいけない。


アイム「…マジ?」

484 名前:きのこ軍:2015/04/30 00:53:40.702 ID:ZLviXuD2o
グッバイ集計係。あの世でも元気に暮らせよ。
果たして過去から現代へ帰還できるか。私は過去に帰ったまま戻りたくない。

485 名前:社長:2015/04/30 01:15:14.226 ID:uo9MT2og0
集計班さんと謎の会話をしていた人物はやっぱ社長を感じます。

486 名前:791:2015/04/30 01:44:26.712 ID:n0stEHH.o
更新おつ!

私は¢さんだと予想
ついでにたけのこの里から来た人はきっと竹内さん

487 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 諦めるのはまだ早いぞ編その1:2015/05/05 01:00:02.162 ID:8JJ93x5Yo
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

スリッパ「…つまり、アイムは新たな【制約】により、現代に戻れなくなった可能性が高いと?」

たけのこ軍 抹茶「多分、そうだと思います…」

たけのこ軍 オニロ「そんな…」

集計班の失踪に続き、アイムの実質的な喪失は、会議所に図りない衝撃を与えた。

きのこ軍 黒砂糖「【制約】の内容がわからない限り、我々に助ける術はない。寧ろ、明らかになったところで我々に何かできることはあるのか…?」

たけのこ軍 社長「時の流れは速い。ガムテープみたいにな。」

たけのこ軍 筍魂「…」

たけのこ軍 オニロ「アイム…」



488 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 諦めるのはまだ早いぞ編その2:2015/05/05 01:02:13.370 ID:8JJ93x5Yo
【K.N.C55年 大戦場】

アイム「…」

アイムは深く葛藤していた。現代へと帰らなくてはいけない。しかし、帰るためにはおそらく歴史改変が必須。
自らの手で、もう一度歴史改変を行わなければいけない。
あくまで可能性の一つにすぎないが、歴史改変はアイムの身に重大な重荷としてのしかかっていた。


― スリッパ『最小限の歴史改変に留めるべきだ』


K.N.C102年にタイムワープした際に、スリッパが放った言葉。
今回抹茶たち討伐隊が行った歴史改変は、“史実”には存在しないスクリプトの排除であり、書き換えられた歴史を元に戻すための正当手段だった。
その結果、スクリプトは排除され、今アイムがいる時間軸は、現代の大戦年表に記載されていた“史実”そのものである。
しかし、これより先にアイムが行う歴史改変は、完全な“歴史の塗り替え”であり、見方を変えればDB一味と同じ穴の狢になってしまうのだ。


489 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 諦めるのはまだ早いぞ編その3:2015/05/05 01:06:20.127 ID:8JJ93x5Yo
史実との改変の“幅”が広がるほど、現代への歴史に多大な影響を与える可能性がある。
例えば、K.N.C55年の【大戦の勝敗結果】を改変することで、個々のきのこ軍兵士の士気が下がり連敗するようになり、結果として多くのきのこ軍兵士が大戦から姿を消す。
その時点での歴史の変化の振幅が、まるで波の波紋のように、時間の経過と共に増大していく。

『バタフライ効果』
スリッパはタイムパラドックスの整合性を理解した上で、周りに注意喚起を促したのである。


一向にどうするべきか決断できない自らの思い切りの悪さに、アイムは思わず顔を顰めた。
少し前の自分なら、躊躇なく周りの影響など鑑みずに歴史改変を行ったことだろう。
【大戦の勝敗結果】の変更は容易でないが、不可能ではない。K.N.C55年の最終結果は0:1でたけのこ軍の勝利に終わっている。
ギリギリの攻防だっただけに、アイム一人の加入できのこ軍が形勢を立て直し、逆転勝利となる可能性は高い。

だが、勝敗結果の改変により、現代へ多大な悪影響を及ぼす可能性は0ではない。それ程までに、改変の幅が大きいのだ。
現代で奮闘する兵士たち。自分の成長に力を貸してくれた兵士。その思いを踏みにじる行為だけはできなかった。


490 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 諦めるのはまだ早いぞ編その4:2015/05/05 01:15:13.253 ID:8JJ93x5Yo
近くで轟音が鳴り響く。アイムがいる防空壕の周りでは、スクリプトが消えた後でも、引っ切り無しに銃撃音、怒号、悲鳴が響いていた。
防空壕の奥深くに隠れていたアイムは、自身と戦場で駆ける兵士とを対比させ、ますます身を縮こませた。

アイム「はぁ…いっそ、オレ一人がここで消えれば周りに迷惑かけないで済むんじゃねえか」

自嘲気味に笑う。今の自分は、歴史の潮流からすると邪魔者でしかない。この場で、綺麗さっぱり自身が“消滅”してしまえば、
この時点での戦場の兵士たちに、そして現代の会議所兵士たちに迷惑をかけないで済む。

アイム「ハハッ…」

少し前の自分なら、自滅の道を選ぶことなど、考えられなかった。仲間を盾にしてでも、独りで生き残る。


― 筍魂『“スタンドプレイ”か“チームプレイ”』


過去に、筍魂が語った言葉を思い出す。今のアイムは、仲間のために、戦友のために“死”を選ぼうとしている。
その行為の是非は置いとくにしても、今この時点で、間違いなく彼は会議所というチームのために行動しようとしている。
アイムは、大の字で横に寝転がった。戦場の各地から上がる硝煙がわき上がり、頭上の空は仄暗い。


491 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 諦めるのはまだ早いぞ編その5:2015/05/05 01:18:26.259 ID:8JJ93x5Yo
アイム「それでは最期に、これまでの自分の短い人生でも振り返るかね…」

アイムの脳裏に、走馬灯のように過去の思い出が駆け巡る。
記憶を失って、大戦に流れ着いたこと。同じ境遇で流れ着いたオニロ他さまざまな兵士との出会い。オニロがいけ好かない野郎だったこと。
初めての大戦で、そのオニロに惨敗したこと。
DB討伐騒動に巻き込まれもした。初めての時限の境界への突入。
そして、その後、筍魂へ弟子入りを志願し、オニロと突然の泊まり込みの鍛錬――

アイム「…ん?」

ほんの少しの違和感に、アイムは思わず眉を顰めた。なにか大事なことを忘れていないか。


―― “生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する。

―― 兵士個人の“正”や“負”の感情は、結果として大戦世界の変化の元になる“理”となる。それこそが『世界の理』であり、同時に『生命力の流れ』でもある



492 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 諦めるのはまだ早いぞ編その6:2015/05/05 01:22:26.439 ID:8JJ93x5Yo
アイム「!!」

鍛錬の中で得た教えを頭のなかで反芻し、アイムは急いで身を起こした。
最後に、ドヤ顔で語っていた師・筍魂の言葉をよく思い出す。

―― 筍魂『私は世界そのものであり、世界は私そのものである。ありとあらゆる【全て】は同じ【一つ】の存在。それを思い出すことが【戦闘術魂】の基礎となる』

アイムは、筍魂の言葉を全て理解できたわけではない。3日間の鍛錬では、オニロと協力し与えられた課題を、きのたけの歴史に当てはめ、あくまでその意味を解明しただけに過ぎない。

アイム「オレの気分が暗くなったら、オレが見えている世界そのものまで暗くなっちまう。見えるモノも見えなくなり、終いには目の前に落ちているヒントでさえ消え去ってしまう。そういうことだろう?」

それでも、今のアイムにとって現状を改善するには十分だった。
この場に居ない師に向かって悪態をつくように。アイムは小悪党のように口角をつり上げ、拳を握る。

アイム「あのクソ師匠が…ちっとは役に立つこと言うじゃねえか」


493 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 諦めるのはまだ早いぞ編その7:2015/05/05 01:34:42.336 ID:8JJ93x5Yo
負の感情に支配されていたアイムに、少しずつ活力が戻り始める。先程までとは打って変わって、アイムの顔には生気がみなぎっている。

アイム「よく考えろ。“思いだせ”…オレが得た情報で、この場を脱出するのに最も適したものはなにか」

記憶を辿る。現状を打破する打開策を、過去の記憶から呼び覚ます。

―― someone『あれが集計ツールと呼ばれるもので、今はあの機械が戦況を瞬時に把握しているようです』
現代と過去の違いを表す決定的な違い。だが、今回の脱出劇において役に立つだろうか?

―― きのこ軍¢部隊長 狙撃兵香瘰i化≫「俺たちが帰るときは、斃されバーボン送りになる時か敵陣地に我軍の旗を立てるときだけだッ!」
兵士は大戦中に斃れると、【バーボン墓場】に自動転送される。重要な情報だ。

―― 社長『まさか ソン・ウか!?』
うるせえ頭のなかに出てくるな、叩き斬るぞ。


さまざまな記憶を辿りながら、アイムは少しずつ必要な情報を整理していく。


―― オニロ「K.N.C55年。アイムはどんな年か知っておいたほうがいいんじゃない?」
―― アイム「…ハン。さっさとK.N.C55年についての情報とやらを教えろよ」


そして、遂に“核”となる情報を思い出した。

494 名前:きのこ軍:2015/05/05 01:36:04.105 ID:8JJ93x5Yo
頑張って、現代に戻るぞオー。
私の頭の中の社長はこんな感じ。


495 名前:社長:2015/05/05 02:32:53.475 ID:aQx5t7r20
我が名は大神官バロウジーニン!!パリメラ鉱山は生きてはかえさん!

496 名前:きのこ軍:2015/06/09 23:22:13.022 ID:HHeln1REo
野球も終わったので、近々更新を再開したいと思ってます。
まずはシナリオのまとめをしないとね。

497 名前:【中吉】【Rank⇒大尉‡ 】【Type⇒百合兵♀-♀】:2015/06/11 23:52:18.803 ID:ErL6itr.0
更新…待ってます

498 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/06/17 22:58:14.792 ID:AGc/Dpx.o
・これまでのあらすじ

“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、
社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。(Chapter1まで)

そんなある日、捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走している事実が明らかになる。同時に、歴史改変の時空震を確認し、
会議所はDB一味が故意に歴史を改変していると推測。
参謀を隊長とするDB討伐隊は、歴史改変の根源を、DB一味の潜む『時限の境界』であることを突き止める。すぐさま『時限の境界』に突入するも、
内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。
結局、DBの姿すら確認できずに、半ば追い出される形になってしまう。(Chapter2 中盤まで)

第一次突入後、自身の不甲斐なさを悔い、討伐隊一員のアイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。オニロとの絆を深め、
師から『“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する』の教えを理解したアイムは、スクリプト生産工場の手がかりを探るため
討伐隊員とともに再び時限の境界へと突入する。

しかし、見えざる【第三の制約】により、アイムは独り、タイムワープ先のK.N.C55年に置き去りにされてしまう。
時を同じくして、会議所の中心的存在だった集計班も姿を消してしまう。まさに絶体絶命――――


Chapter3. 無秩序な追跡者たち

499 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その1:2015/06/17 23:00:14.935 ID:AGc/Dpx.o
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

アイムの行方について、参加者の各々は真剣な面持ちで話し合っている最中だった。

スリッパ「仮に、アイムが時限の境界の【新たなる制約】に触れ、現代へ戻れないとした場合…」

スリッパ「アイムには二通りの未来がある」

たけのこ軍 オニロ「二通り…?」

こくりと頷き、スリッパは、スリッパは、真っ白な模造紙をサラに用意させると、時系列の整理を始めた。



 K.N.C55年 −−−−−−−−−−− K.N.C180年(現代) [→年代 ↓時系列]
【歴史改変】−−−−−−−−−→× 『時空震』
【歴史改変】←−−−【ワープ】−−  ●第二次討伐隊
●抹茶たち −−−−【ワープ】−→ ●抹茶、斑虎、someone 
 ●アイム 
  ↓    −−−−−【経過】−−−→  ??
【新制約突破?】−−−−【ワープ】−−→ アイム

500 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その2:2015/06/17 23:03:20.111 ID:AGc/Dpx.o
スリッパ「まず、K.N.C55年でDB一味により歴史改変が発生し、そのサインが時空震として現代の編纂室に伝わった」

スリッパ「アイムたち4人の討伐隊は時限の境界を経由し、K.N.C55年へとワープし、スクリプトを撃破し再度歴史改変を実施した」

スリッパ「その時点で抹茶、斑虎、someoneの三人は現代へ帰還した。ここまではいいな?」

その場にいる全員がスリッパの言葉に同意する。

スリッパ「アイムはこの時点でなおK.N.C55年に留まっている。もし、K.N.C50年に留まり続けるという選択をした場合…」

−−−−−【経過】−−−→ という部分の線を指さすスリッパ。

スリッパ「アイムはその後、K.N.C56年からK.N.C180年までを過ごし現在に至るということになる」

たけのこ軍 社長「百合の季節」

きのこ軍 ¢「アイム自身が『親殺しのパラドックス』を始めとした歴史改変の原因を引き起こさずにK.N.C180年まで過ごしていれば可能ということか」

たけのこ軍 791「当然、その間にアイム自身は誰にも正体を知られてはいけない…
なぜなら“今の”私たちが最初にアイムと出会ったのはK.N.C175年だという“記憶”があるから…」

時代の違う同一人物どうしがばったりと顔を合わせただけで予想の付かない歴史改変が発生する恐れがある。
また、K.N.C175年以前の会議所メンバーの誰かにでも“アイム”の存在を悟られれば、その時点で“歴史改変”が起こり、
今までの歴史は無くなる。K.N.C175年以前のアイムの登場は、即ち時間移動の存在を肯定するものである。

アイムの存在が会議所に伝わった時点で、今までひた隠しにしていた編纂室の存在意義も無くなり、誰も予測がつかない歴史改変が発生する。
アイムがK.N.C55年から大戦世界に留まり続けるためには自身の存在を誰にも知られてはいけないのである。

501 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その3:2015/06/17 23:12:21.999 ID:AGc/Dpx.o
たけのこ軍 オニロ「それなら、アイムは今この時点で現代に居るということなんですか?
だって、今この時点でも激しい時空震を確認できてないですよね!アイムはうまく今の時代まで存在を隠し通せていることになる!」

たけのこ軍 社長「へぇーいいね!」

ぱあと顔を明るくするオニロに、スリッパは厳しい表情で首を横に振った。

スリッパ「それなら、なぜ今この場に“姿を現さない”?」

この時点で元々いたアイムがタイムワープにより、この時代から姿を消したことを一番知るのはアイム本人である。
アイム自身は既に姿を隠し続ける必要性はない。寧ろ、喫緊の騒動解決のために一刻も早く皆の前に姿を見せるのが道理である。
スリッパはそう指摘している。

きのこ軍 きのきの「た、確かに…」

スリッパ「姿を見せない原因は複数考えられるが…
1. 大戦世界に潜伏していたが某かの事情で、姿を見せられなくなった。
2. そもそもK.N.C55年の時点で大戦世界に留まり続けるという選択をしていない。
このいずれかじゃないかな」

たけのこ軍 オニロ「某かの事情…それはもしかしてアイム本人に不幸な出来事が起きているとでも…」

スリッパ「当然、その可能性も考慮するべきだ。およそ100年以上の時を過ごす中で、別の異変に巻き込まれることも考えられなくない」

オニロの顔が青ざめていく中、スリッパは淡々と説明する。残酷ともいえる宣告に、アイム以外の会議所メンバーの表情も皆一様に暗い。
しかし、一連の会話の中で、スリッパの背後に控えているサラの表情にも微妙な変化が生じていたことに、誰が気づいただろうか。
苦悶、逡巡、慈愛。
普段のサラはアンドロイドロボよろしく感情の起伏が無いに等しい。
しかし今のサラの表情はまるで万華鏡のように、見る者の判断でコロコロと変化する。サラの秘めたる思いに気がつけるのは主たるスリッパただ一人。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

502 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その4:2015/06/17 23:14:46.956 ID:AGc/Dpx.o
たけのこ軍 抹茶「僕たちが会議所に帰還してから幾ばくの時間が経過した今でも、アイム君がこの場に“いない”。
だから、アイム君がK.N.C55年に留まり続けているという可能性は低い、と。
なるほど、それではもう一つの選択肢というのは…?」

そこで初めて、スリッパはニヤリとした表情で人差し指を立てた。

スリッパ「もう一つの選択肢は…アイム自身が【見えざる制約】を破り、無事現代へと帰還することさ」


【K.N.C55年 大戦場】

アイム「さて、と。やりますか」

口と鼻を覆うように深緑のバンダナを巻きつけ、アイムは立ち上がった。
自身の、そして会議所にとっての“最善の選択”のために、しんしんと積もる雪の中、彼は行動を開始した。

503 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 現代での会議編その4:2015/06/17 23:15:49.910 ID:AGc/Dpx.o
おしまい テスト的に投稿。くっそわかりにくいチャート図作成、恥ずかしくないの?

504 名前:【もみ吉】【Rank⇒軍曹¶】【Type⇒前線兵】【階級制】:2015/06/17 23:17:04.709 ID:PqIL.w2o0
へぇーいいね!もつだぞ

505 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 01:06:30.465 ID:f9SJtjjAo
tes

506 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 01:07:03.004 ID:f9SJtjjAo
第三章の簡単なあらすじ

・アイム君だけ過去の時代に取り残されてるよ!
・アイム君だけ過去の時代の歴史改変しないと現代に戻れないよ!
・社長「あワお〜っ!」


507 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その1:2015/07/12 01:09:37.831 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍兵士「撃て撃てーッ!!」
たけのこ軍兵士「きのこの野郎どもを一人足りとも通すんじゃないッ!」

戦場は、まるでスクリプトによる妨害など最初から無かったように、“平穏”を取り戻した。
両軍兵士は、敵軍陣地に突撃し防衛する。気を抜けばすぐに戦局はひっくり返る。
これぞ大戦の醍醐味である。

大戦場の端に、一際高く盛り上がった砂丘がある。物見山と呼ばれるその砂丘は大戦内で唯一の戦闘中立地帯であり、
その頂からは大戦場を一望できる風景が眼前に広がる。
大戦の観測者たる集計係は、物見山の頂から始終大戦の様子を観察している。大戦の醍醐味を独り占めできる絶好のポジションでもある。


508 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その2:2015/07/12 01:19:19.083 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 集計班「きのこ軍が一人退場…ああ、あそこではたけのこ軍がまた一人…」

ブツブツと独り言を呟きながら、今日も集計班は物見山の頂で集計を続けていた。
双眼鏡を構え、片手では二つの数取器を器用に持ちながら、カウントを進めている。

きのこ軍 集計班「最近は肩が凝るなあ。また湿布しなくちゃ…」

集計係といえど、この時代においては、集計班の他に集計活動を行える兵士はほとんどいなかった。
集計班は係の役職と同じ「集計」という名前で呼ばれ、物見山の上には常に集計班が居た。
集計は過酷な業務。そうしたイメージが付きまとい、結果として集計係の拡充ができない原因でもあった。

きのこ軍 集計班「スクリプトの襲来もいつの間にか収まって、もう終戦間際。早いものだなあ。あ、たけのこ軍兵士一人退場。
しかし、これが終わったら“例のブツ”にありつけると思うと…フフフ。今から笑いが止まらないなあ」

双眼鏡を構えニヤつく姿はあらぬ誤解を与えかねない。しかし、陽が照り雨風吹き付ける中でも、集計係は戦況をリアルタイムに把握し報告する義務がある。
双眼鏡で戦場に目を凝らし、豆粒のような兵士の戦況を把握し迅速に集計を公表する。本人が思っている以上に過酷な仕事である。
終戦後の楽しみを想像し顔がほころぶことぐらいは許されてもしかたがないだろう。

集計ツールが開発される前までは、集計には苛酷さが伴う重労働であったのである。

509 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その3:2015/07/12 01:20:56.195 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 集計班「…ん?なんだ、あれは?」

集計班は戦場のたけのこ軍陣地辺りを見やった。現在、たけのこ軍は苦戦を強いられているものの、未だきのこ軍からの本格的な拠点侵入を阻んでいる。
そんな中、一人のきのこ軍兵士が猛烈な速度で敵陣地に向かっているのが見えた。戦という熱に浮かされ、あるいは武勲にはやり、闇雲に突撃する兵士の数は少なくない。
しかし、双眼鏡に映るきのこ軍兵士は武器も持たない、まるで丸腰だった。攻撃する意思もないのか、たけのこ軍陣地の周りをただ走り回っている。
まるで、撃ってくれといわんばかり。

きのこ軍 集計班「…まあそうなるだろうな」

案の定、すぐに陣地を防衛しているたけのこ軍兵士に見つかり、複数の銃弾を浴びせられ、きのこ軍兵士は倒れた。
挑発するかのような行動を取っていたためか、随分と至近距離で撃たれたようだ。魔法の治癒力をもってしても傷痕が暫く残りそうだ。
大戦場で斃れた兵士は、実際には死ぬわけではない。大戦場に展開された魔法陣の力で、瞬時に傷が治癒し、
大戦場の横に併設されているバーボン墓場へ送られ、終戦まで待機することとなる。

きのこ軍 集計班「…きのこ軍兵士、一人退場っと…」

何やら得体のしれない気味悪さを感じながらも、職業病からか片手でカウントを進めることは忘れない集計班だった。


510 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その4:2015/07/12 01:23:41.310 ID:f9SJtjjAo
【K.N.C55年 バーボン墓場】

きのこ軍 アイム「…アイタタタ。くそッ、たけのこの奴らめ。近くで撃ちやがって…」

うつ伏せのまま墓地に転送されたアイムは、ムクリと起き上がった。
目の前には、十字の形をした墓標が、秩序をもった等間隔で整然と並んでいる。砂塵が舞い上がりながらも、墓標群は新品同然の艶、光沢を保ち続けている。

初見ではほとんどの兵士が、この場所に薄気味悪さと恐怖を感じる。アイムも始めは同じだった。
しかし、墓標はただの飾りに過ぎず初見兵士を驚かすための趣向の一つであること、負けた軍の兵士が墓標を綺麗に磨き上げる義務を背負う等の
裏事情がわかっていくにつれ、新米の兵士は新参を卒業し、そして新たな新米を驚かせるために“仕掛け側”に周る。
3回目の大戦で初めてバーボン墓場へ送られ静かに恐怖するアイムに対し、御機嫌に説明してくれた際の抹茶のしたり顔は今も忘れられない。
それ以降、バーボン墓場への恐怖は消え失せ、胸糞悪さだけが残るようになった。


511 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その5:2015/07/12 01:26:09.687 ID:f9SJtjjAo
たけのこ軍 Ω「やぁやぁ兄弟、お前も“バーボン送り”にあったか、お疲れさん」

たけのこ軍兵士Ωは、両手にシャンパンボトルを持ちながら、陽気にアイムに話しかけた。

きのこ軍 アイム「まぁそんなところだな。そいつはなんだ?」

銃撃の痕が残る臀部をさすりながら、アイムはΩの手元を指さした。

たけのこ軍 Ω「これは“シャンメリー”さ。どうやら今日の終戦後に会議所側から参加者に配る品だったみたいだけどよ。バーボン墓場では、一足先に頂いているてワケさ」

もう飲むことぐらいしかやることないからな、と語りボトルに口をつける。頬が赤らんでいるところを見ると、どうやら幾分か酔いが回っているらしい。
周りを見ると、バーボン送りの兵士たちは、そこらかしこでシャンパンボトルを空け、盛り上がっている。

たけのこ軍 Ω「お前も飲むかい?まだまだ数はある」

ぐいっと突き出されるボトルを受け取り、アイムはボトルの口に鼻を近づける。やはり酒臭い。シャンメリーとは名ばかりの、ただのシャンパンである。
誰がこのシャンパンをシャンメリーと呼んだのか。下戸が知らずに飲んだら倒れること間違いなしである。

512 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その6:2015/07/12 01:29:02.618 ID:f9SJtjjAo
たけのこ軍 Ω「では、きのこたけのこ大戦に――」

きのこ軍 アイム「…きのこたけのこ大戦に――」

Ωの掛け声で、慌ててアイムは自身のボトルをΩのボトルに近づける。カン、と乾いたガラスの音が鳴り、直後やけに下手な大法螺の音が鳴り響いてきた。


『ぷぶお〜〜ぷお〜〜 現在の兵力は20:13できのこ軍が有利です』

集計の合図を皮切りに、バーボン墓場ではヒューヒューと両軍兵士から囃し立てるような歓声が上がった。

「きのこ軍いけるじゃねーか!そのまま押し切れ押し切れッ!」

「おいおい集計!いい加減、笛うまく吹けるようになれよなッ!耳鳴りかと思って耳塞いじまって、結果を聞き逃しちまったよッ!」

ドッと墓場が笑いに沸く。K.N.C180年に聞いた時でさえド下手だと思っていたが、あれでも練習して上手くなったんだな、とアイムは変なところで感慨深くなった。


513 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その7:2015/07/12 01:34:01.378 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「…随分とうまいシャンメリーだな。どこで調達してきたんだ?」

ボトルに口をつける振りをしながら、逸る気持ちを抑えてアイムはΩに話しかけた。

たけのこ軍 Ω「たけのこ軍に調達係がいるのさ。大戦後に配るボトルを保管して、墓場でずっと待機していたようなんだが。
寂しがっていたんで、みんなで先にいただくことにしたのさ」

グイッとボトルを傾けるΩ。酔いが回っているからか、普段よりも口がよく回る。良い飲みっぷりだ、とアイムは賞賛し、その調達係の所在を訊ねた。

たけのこ軍 Ω「入り口の辺りにボトル積んだバイクと一緒に居るよ。ただ、もう酔いつぶれているかもわからんけどな」

きのこ軍 アイム「…そうか。ソイツからおかわりをもらってくるよ。もう空だろう?」

たけのこ軍 Ω「おお、ありがたい。きのこ軍にも気が利く奴がいたんだなッ!」

カラカラと笑うΩを尻目に、アイムは“調達係”の元へと向かう。勿論、もうこの場に戻ることはない。

514 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その8:2015/07/12 01:36:04.422 ID:f9SJtjjAo
Ωの話していた調達係はすぐに見つかった。バイクの横にある墓標に寄りかかるように、一人のたけのこ軍兵士が鼻歌を歌っていた。

きのこ軍 アイム「随分とご陽気だね。あんたが調達係さんかい?」

たけのこ軍 食糧班「そうさッ!チャーハンからシャンメリーまでなんでも用意するよッ!兵士の幸せを運ぶ食糧班とは僕のことさッ!」

不必要に大声で返答する食糧班は随分と酔いが回っているようだ。アイムにとっては好都合でしかない。

きのこ軍 アイム「そいつは良かった。あんたみたいな他人の幸せも願えるような兵士が、きのこ軍にも居てくれたらいいんだけどね」

たけのこ軍 食糧班「そうだろう、そうだろう!なんたって、僕ぁは、会議所の料理番も担当しているんだからねッ!」

アイムにとって面識のない兵士だが、この時代では会議所に関わっていた兵士の一人のようだ。
食糧班の横にはどでかい中華鍋が置かれている。これでいつも料理を振る舞っているのだろうか。


515 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 想定の範囲内編その9:2015/07/12 01:39:06.252 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「あんたの幸せをもっと多くの兵士に届けてあげたいんだ。たとえば…戦場で必死に戦う同胞とかに、な?」

たけのこ軍 食糧班「それはいい考えだねッ!ぜひともやろうじゃないかッ!」

シャンメリーは、終戦まで保管していないといけない代物である。本来、大戦中に配ることなどあってはいけない。
しかし、アイムの言葉をわかっているのかいないのか、食糧班は手を叩いて喜び、墓標にさらにもたれかかった。

きのこ軍 アイム「それじゃあ行ってくる。バイク、借りるな?」

食糧班の返答を待たずに、アイムは大量のボトルを載せたバイクを発進させた。
勿論、この場に戻ることはもうない。


516 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/07/12 01:40:23.442 ID:f9SJtjjAo
懐かしい人がちらほらと。ちなみにK.N.C55年は、2010年度クリスマス聖戦の日です。

517 名前:社長:2015/07/12 02:20:17.472 ID:jPm26BUM0
アイムくんキリキリ頑張れよ

518 名前:社長:2015/07/12 02:38:03.670 ID:jPm26BUM0
ちなみに魔の百合聖戦は今アイム君がいるところよりもうちっと先

519 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編1:2015/07/12 21:26:17.458 ID:f9SJtjjAo
専用の魔導エンジンと特殊な魔法技術を搭載したバイクは、バーボン墓場から戦場への再移動を可能とさせた。
無言でバイクの速度を上げるアイム。目的はきのこ軍陣地。最初から決まっている。
全て、計画通りだった。敢えてたけのこ軍兵士に撃たれバーボン送りとなることも、バーボン墓場にいる調達係と接触しバイクを奪うことも。
予めアイムは理解していたのだ。今次大戦でどちらの軍が勝利し、何が起こるか。小憎たらしい“相棒”から、今次大戦の全容を聞かされていた。


―― オニロ『K.N.C55年。アイムはどんな年か知っておいたほうがいいんじゃない?』

―― オニロ『まず、この戦いではたけのこ軍が勝利するんだ。途中まできのこ軍が優位に戦局を展開させていたんだけど、終盤にたけのこ軍の猛攻にあって逆転負けを喫する。
まるでいつものきのこ軍だね…アイタッ!殴ることはないじゃないかッ!』

―― オニロ『また、この日は世間一般で言うところのクリスマス。会議所側では、終戦後に、シャンメリーのボトルを参加者に一本ずつ配布する予定だったらしいんだけど。
調達係が、バーボン墓場にいる兵士たちにシャンメリーを振る舞いすぎて、用意されていたボトルは終戦後にはほとんどスッカラカンだったらしいよ』

―― オニロ『担当係曰く「悔いはない。でも、バーボン兵士に全部配るぐらいだったら、大戦中の兵士にも幸せを運べればよかった」と、
反省の弁を述べていた、と記載してあるね』

―― オニロ『シャンメリーてお酒のないシャンパンみたいなものだよね?そんなに美味しかったのかなあ』


520 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編2:2015/07/12 21:27:45.007 ID:f9SJtjjAo
アイムはきのこ軍陣地に向けてバイクを走らせる。歴史の大幅な改変は現代に多大な影響を及ぼす可能性がある。
あくまで歴史改変は、史実ベースに沿わなければならない。

アイム「…だからこそ、この大戦で“きのこ軍は負けなければいけない”」

アイムは今からきのこ軍を完全な敗北に追い込むための一手を打つ。
史実にはないアプローチの仕方で、愛してやまないきのこ軍を完膚なきまでに叩く。

521 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編3:2015/07/12 21:30:54.611 ID:f9SJtjjAo
【K.N.C55年 大戦場 きのこ軍前線拠点】

たけのこ軍陣地の程近くにきのこ軍の前線拠点が在ることを、アイムは先ほどの突撃の際に確認していた。
弾が当たらない最短ルートで拠点に辿り着くと、騒々しく慌ただしかった陣営は静まり、アイムただ一点に注目が集まった。

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「誰だ貴様はッ!前線への支援を頼んだ覚えはないぞッ!」

天幕の中で作戦指揮を執っていた戦闘隊長の黒砂糖は、アイムを見つけるや否や怒鳴りつけるように声を荒らげた。

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「本部の参謀大将Θに何度も伝えたはずだ。現有戦力で十分に戦えるとなッ!」

若き日の黒砂糖は今よりも幾分か猛っていた。闘士をむき出しにし、敵味方であろうと噛み付く姿勢は正に剛健。
黒砂糖の威圧に負けず、アイムは綺麗な敬礼ポーズを構え腹から声を出す。自らが敵でないことを証明する。

522 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編4:2015/07/12 21:39:34.213 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「大佐殿!我軍は現在、敵軍の最終防衛ラインに肉薄するほどの攻勢を仕掛けておりますッ!
状況は俄然我軍に有利ッ!援軍を検討していた参謀大将Θも黒砂糖隊の働きを十分に評価しております!ッ」

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「それは本当か。ようやく参謀も我が隊の実力を認めたか。だから言っているのだ、我が黒隊が敵を蹂躙するとな」

アイムの偽報に、満足気に頷く黒砂糖。参謀の懸念は決して間違いではない。
たけのこ軍の防衛戦術に一日の長があること、敵軍精鋭たちの組織的反抗戦を理解していた参謀は再三、黒砂糖へ増援を提案していた。
しかし、この案を黒砂糖は一蹴。自らの隊に信用が無いと誤解した黒砂糖は、頑なに増援を拒んでいた。
史実でも、この慢心が結果として敵軍に付け入る隙を与え敗北することになるが、アイムとしては知ったことではない。

きのこ軍 アイム「このシャンメリーは、本部から“祝の品”として黒砂糖隊に贈呈されたものです。 “勝利を記念して贈る”という参謀大将Θの言葉も請け賜っております」

アイムの言葉に、周りのきのこ軍兵から感嘆の声が上がった。現時点で祝の品が届けば、本部は勝利を確信している。
即ち、黒砂糖隊の力を十二分に評価していることへの表れ。

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「これはめでたいッ!すぐに前線で戦っている同胞にも届けよう。士気がますます高まり、我らきのこ軍の敗北はなくなるぞッ!」

きのこ軍兵士から大歓声が上がり、すぐにシャンメリーがせっせと運ばれていった。
単純だなあ、とまるでアイムは他人事のように思い、これから目の前で繰り広げられるであろう酒の宴を想像すると少しゲンナリとした。


523 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編5:2015/07/12 21:43:22.955 ID:f9SJtjjAo

きのこ軍 黒砂糖大佐▽「うおおおおおおお!祝いじゃ祝いじゃ!もっと飲めえ!」

きのこ軍兵士「サーイエッサーッ!うひゃひゃひゃ!」

きのこ軍兵士「たけのこ軍がナンボのもんじゃいッ!!」

緊張感で張り詰められた戦闘拠点は、ものの5分で酒乱の場と化した。
気難しい顔をした兵士は、シャンメリーを片手に隣の兵士と肩を組み軍歌を歌う。
前線に物資を補給していたはずの補給兵は弾の代わりにシャンメリーを運び続ける。
指揮隊長の黒砂糖は特に酔いがまわっているのか、天幕の上によじ登り裸踊りを始める始末。
頑強な指揮官の姿は今はない。

きのこ軍 アイム「…確かに、この惨状を見せられちゃあオニロにあんな風に言われても仕方ないよな」

予想した通りに事が進んだとはいえ、予想を遥かに上回る総崩れプリを見せつけられたアイムは、一人がっくりと肩を落とした。
おそらく、数分もしないうちにたけのこ軍の軍勢がこの拠点を突破することだろう。さっさと逃げる算段を整えようとした瞬間――


―――『おめでとう。クリア』


以前、頭のなかに響いた声と同じ。透き通るような声でアイムに向かって突然語りかけた。

524 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 歴史改変の実行編6:2015/07/12 21:45:05.292 ID:f9SJtjjAo
きのこ軍 アイム「…だから誰なんだよお前は」

どこかで聞いたこともあるような声。だが、その正体を探る時間はアイムに残されていない。
詳細は不明だが、今の声を聞き、アイムは再び歴史改変が実行されたと確信した。
即ち、時限の境界の第三の制約を破ったという事。

きのこ軍 アイム「うかうかしてられねえ。戻るぞッ!」

バイクに飛び乗り、アイムは急いで時限の境界に通じている塹壕の横穴に向けて発進する。



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