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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


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707 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その5:2016/09/04 00:09:10.169 ID:3CVJ9V6wo
オニロ「――ということがあって以来、兵士たちはスリッパさんのお陰で大戦の醍醐味、おもしろさを理解することができたっていうわけさ」

社長「(さすが、スリッパは違うぜーー」

竹内「ほう、それはいい話じゃのう」

アイム「大戦世界発展の第一人者というわけか。そりゃあ各所で神格化されるわな。そんなあんたが、どうしてすぐに大戦をやめたんだ?」

スリッパ「…理由なんてないさ。いや、強いて言えば……【理由を知りたくなったんだ】」

オニロ「理由?なんのですか?」

スリッパはオニロの問いには答えずに、ただ淋しげに微笑むだけだった。英雄の儚げな笑みに、どのような背景が隠されているのか。
アイムとオニロはまだその理由を知らない。
サラだけがスリッパに向けて憐れみの視線を送っていたが、不幸か幸いに、誰も気がつくことはなかった。


708 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その6:2016/09/04 00:11:59.941 ID:3CVJ9V6wo
社長「しかし、兵士の姿が見えないあひゃよ」

竹内「腹が減ってきたのう。香ばしい焼き魚の匂いもただよってきた」

アイム「爺さん、飯ならさっき食ったから素直に寝てろ。…ん?ただ、確かに何か臭うな」

図書館に向けて歩みを進めていると焦げた臭いがアイムたちの鼻をつくようになった。
屋外でバーベキューでもやっているのだろうかと、食い意地の悪いオニロは考えた。

オニロ「この方向は…wiki図書館のほうだね。行ってみようか」

??「そこをどいてくれッ!」

突然、一人の兵士が通路から飛び出してきて、オニロと肩をぶつけた。オニロはよろけ、その兵士も壁に背を付ける形になった。
その兵士は額に大粒の汗を浮かべ、肩で息をするほどに呼吸が乱れていた。

オニロ「あ、すみませ……」

アイム「なッ!!」

社長「うっっ!!」

709 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その7:2016/09/04 01:06:23.451 ID:3CVJ9V6wo
その兵士は、シルクハットに蒼いケープを着用していたが、なんと顔が社長と瓜二つだった。
正確には、現代の社長の顔には常にモザイクがかかっているため、顔のシルエット像が社長と酷似していた。

??「どうした。俺の顔になにか付いてるか?」

オニロ「いや、あの、その…」

社長「 」

兵士の問いに、オニロは返答につまりアイムは口をあんぐりと開け絶句している。社長は全身がバグまみれのためなにがなんだかわからない。

スリッパ「…久しいな、タッピー社長。いや、アンチきのこマシンと呼ぶべきかな」

紅茶淹れエスパータッピー社長「ん?スリッパさんじゃん。圧倒的再会…!…なんか老けた?」

スリッパ「これだけ苦労すればな。まぁお前から見たら、さしずめ私は浦島太郎といったところかな」

紅茶淹れエスパータッピー社長「?ん、おいそこのあなた、もしかして――」

タッピー社長が社長を指差すと、いまの社長とは似つかないツカツカとした確かな足取りで、本人に近づいた。

710 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その8:2016/09/04 01:08:30.595 ID:3CVJ9V6wo
社長「アッアアッヤバイ。。あ、あ、あワお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!あヅファイヤ〜〜!!」

アイム「うるせえ真っ二つに斬り伏せるぞ」

紅茶淹れエスパータッピー社長「なんだなんだおかしな兵士だ。そうだッ!こうしてはいられないッ!図書館が大変なんだッ!」

タッピー社長は社長本人たちには目もくれず、再び走りだした。

紅茶淹れエスパータッピー社長「すぐに消火…!迅速な消火…!そして無事に鎮火させたら、蒼星石に踏まれたい!!!」

タッピー社長は風のように現れ、風のように去っていった。

竹内「あれが過去の社長か。懐かしいのう」

アイム「お前にもバグってない時期なんてあったんだなあ。『どうした、俺の顔になにか付いてるか?』だってよ!」

社長「やめてね。」

アイムはここぞとばかりにニヤニヤ笑いながらバカにする。
当の社長は全身を縮こまらせ、バグの海と同化した。

711 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その9:2016/09/04 01:13:24.464 ID:3CVJ9V6wo
場の空気が二人のやり取りで緩む中、オニロは周りから離れ独り思案していた。
タッピー社長の顔を見るのは初めてではない。重ねあわせていたのだ。集計班が失踪した直後の社長の顔と――


―― たけのこ軍 オニロ「あの……社長……ですよね?大丈夫ですか?」
―― 社長の存在がバグっていないのである。いつもは、顔だけでなく全身バグまみれの社長が、
―― 今はまるで獲物に狙われた子鹿のように全身を震わせ、悲しみ、際限ないほどに“恐怖”している。


バグっていない顔が、タッピー社長と全く同じだった。やはりタッピー社長は現代の社長と同一人物であることは間違いないと、オニロは確信した。
同時にふとした疑問が湧き上がる。では、なぜ今の彼はバグっているのだろうか。

彼がバグに虜になったから?
蒼星石よりもバグを選んだからバグろうとしている?


それとも、【何かを隠すために】敢えてバグっているとしたら?


バグの特徴はその難解さと理解者の少なさにある。バグれば誰からも相手にしてもらえなくなる。
もし、敢えて誰からも相手にされないために、【疑われないために】、社長がバグるという選択をしているとしたら――

スリッパ「それよりも、タッピー社長の後を追うぞ。wiki図書館の方向で何か異変が起きているようだ」

アイム「『消火』なんて言葉を使ってたな、嫌な予感がする。急ごうッ」

スリッパの一言に、オニロは急激に意識を現実に戻した。社長もいつもの調子を取り戻したのか多種多様なバグの表情を見せている。
考えすぎだったのだろうか、とオニロは自らの懸念を半ば払拭させた。こうして6名はすぐにwiki図書館に急いだのだった。


712 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その10:2016/09/04 01:19:46.084 ID:3CVJ9V6wo
【K.N.C47年 wiki図書館付近】

図書館があるべき場所には、烈火の如く燃える炎が居座り、オニロ達を出迎えた。
澄んだ夜空に、建物を飲み込む赤い炎はよく映えた。

この時代のwiki図書館はオニロ達が思っている以上に会議所に隣接していた。
そもそも図書館の位置する場所が現代とは異なっていた。初代wiki図書館は、木造の建屋で存在感を放っていた。
ただ、その端然たる図書館は、口を大きく開けた獄炎に為す術なく、無残にも激しく燃え盛っていた。

アイム「こ、これは火事なんてレベルじゃあねえぞッ!」

竹内「ほほう、ここでBBQ大会をぉ」

オニロ「まさか…これが…ここが、【K.N.C47年】!?」

オニロは過去の会話、そして自らが読み漁った大戦年表を記憶の隅から引っ張った。

━━━━
━━

―― 冒険書の保存状況は酷いものだった。四隅についている銀の留め具は原型を留めないほどに溶けて形を変え
―― 本にこびりつき、金で刻印されていただろう表紙の文字・ロゴはススや埃ですっかりと隠れてしまっている。

―― きのこ軍 アイム「なんでそんな汚えんだよ…」

―― たけのこ軍 加古川「留め具や金箔が溶けているしススばかりだし、過去に火災にでも見舞われた本なのかね?」

━━
━━━━
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713 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その11:2016/09/04 01:22:03.039 ID:3CVJ9V6wo
オニロは、編纂室で読んだ大戦年表のK.N.C47年の項を思い出し、他の5名にすぐさま事実を伝えた。

アイム「それが本当だとすると、ここにいたら危険じゃねえか?」

オニロ「危険どころの話じゃないよ!すぐに火の手を消さないとッ!」

アイム「待て。ここでオレたちがすぐに火を消して全焼を防いだら、K.N.C180年にある二代目図書館はどうなる?
重大な歴史改変で周りの兵士を多く巻き込んじまうぞ」

オニロ「だったら、この状況を見過ごせっていうの!」

社長「ふたりとも、あぶないあひゃよ!!」

突如、図書館を包んでいた炎の一部が龍の頭を司り、オニロとアイムに襲いかかってきた。
すんでのところで二人は後ろに下がり難を避けたものの、龍の炎は再び図書館を飲み込まんと戻っていった。

スリッパ「これは一体どういうことだ!」

オニロ「この炎の形、まさか、炎の流れからして…みんな、ついてきてッ!気になることがあるんだッ!」

アイム「お、おい!ったく、オニロの野郎、普段と違ってこういう時はやけに強引だな」

頭を掻きながら、オニロとアイムたちは図書館の奥――二代目図書館の位置する場所――へと急いだ。


714 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その12:2016/09/04 01:26:05.501 ID:3CVJ9V6wo
【K.N.C47年 初代wiki図書館付近】

オニロ「やっぱり…これ、魔法の炎だよ。それも、すごく強力なね」

図書館の裏手に回るとそこには、光を放つ魔法陣が描かれていた。
そして、その魔法陣からは大量の炎渦が創られては図書館へと向かっていっていたのである。

オニロ「前に師匠が教えてくれたんだ。欺瞞としての魔法がある、と。龍の炎が襲いかかってきたのはおそらく近づけさせたくないための防衛行動だろう。
すごい魔法力だよ」

社長「ああ、なんて憂鬱なんだろう」

アイム「これじゃあ誰かが人為的に図書館を燃やしたってことじゃねえかッ!」

スリッパ「wiki図書館は自然発生の火災で消失していたと聞いていたが。大きな間違いだったようだな」


  ―― コツッ

オニロ「すぐに消そうッ!みんな、下がっててッ!この魔方陣を消すよ」

アイム「だから待てと言ってるだろう。ここで火を消したら、重大な歴史改変をしちまうかもしれないんだぞ」

  ―― コツッ


715 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その13:2016/09/04 01:29:19.382 ID:3CVJ9V6wo
オニロ「目の前で刻々と起こっている悪意の連鎖を、アイムは見逃せっていうのかい!?」

アイム「悔しいが、そのとおりだ。もし仮に初代wiki図書館消失という歴史を改変すれば、二代目wiki図書館は存在意義を失う。
そうなるとどうなる?重大な歴史改変には手を下さない、それが、【観測者】たるオレたちの務めだ」

 ―― コツッ

スリッパ「二人とも落ち着け。オニロ君、これがDBやスクリプトの仕業であるという保証はあるか?」

社長「ジ→す」

オニロ「DBの歴史改変の前に、wiki図書館が全焼したという文献は読みました。
目の前で起きていることは史実通りです。図書館消失に際し、初代図書館長も姿を消し――」


                    ―― コツッ


その瞬間、オニロたちの周りの全ての時間が静止した。
燃え盛る業火音、朽ちる木々の擦れる音。
決して4名の耳に届くはずのない兵士の刻む足音が、まるでゆっくりと心臓のビートと連動するように、全員の頭のなかに“響き渡った”。



     ―― コツッ


                    ―― コツッ 

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716 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その14:2016/09/04 01:37:02.937 ID:3CVJ9V6wo
オニロたちの背後で、静かに足音が止まった。全員が背後の音の主へ向かい振り返る。
兵士はすらりとした全身を紅い炎に包んでいたが、まるでベールを脱ぐように、炎は消え失せその姿が次第に顕となった。
一目見ても、その兵士が目の前の火災に関わりがあるだろうことは容易に想像できた。

オニロは集計班とのやり取りを思い出した。


―― オニロ「そういえば、参謀と山本さんの前の初代図書館長は一体誰なんでしょうか?」

―― 集計班「…彼は最後まで沈黙であり続けた」

―― オニロ「え?」

―― 集計班「我々はその沈黙から多くを学び―」




          ―― 同時に重大なものを失った ――




その名は――



オニロ「あなたは、無口さんッ、ですねッ!!」

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717 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/09/04 01:38:46.953 ID:3CVJ9V6wo
今日のカード更新よ。つよそう。

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/833/card-27.jpg

他にもいろいろと書きたいところですが、とりあえずはこんなところで。

718 名前:社長:2016/09/04 01:41:40.305 ID:PNG5mMkE0
無口さん意外と物理系!てか勝てるんすか

719 名前:たけのこ軍 791の人:2016/09/04 01:51:31.328 ID:wPO589KM0
頑張れみんな!

720 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その1:2016/12/25 23:51:19.592 ID:pQoUtWgco
火炎をまとった鎧の兵士は、燃え盛るwiki図書館を背に、オニロたちを迎えていた。

その兵士の名は無口。

きのこたけのこ大戦世界の礎を築き、wiki図書館を創設した傑物である。
両軍を言葉少なくまとめあげる力と、戦闘中では静かに敵を薙ぎ払うその姿は、【静】と【動】を兼ね備えた兵士として、かつて多くの歴史書には
必ずと言ってもいいほどその名が記録されていた。

しかし、今では無口の名を記した歴史書のほとんどは消失し、その名を知る者はもう数少ない。
全て、目の前の初代wiki図書館消失が原因である。

自ら創り上げた書物の激しく燃え上がる様を、なぜ無口は静観していられるのか。
今や貴重な歴史家となったオニロには、不思議でならなかった。

オニロ「無口さん。どうしてwiki図書館の火を消そうとしないのですかッ!ここはあなたが創り上げた空間のはずだッ!これじゃあ、まるで――」

――あなたが、火災の”犯人”みたいじゃないですかッ!

無口にそうあってほしくないという否定した感情と、目の前で書物が焼かれることへの悲壮感。
会議所兵士と歴史家の二面の顔を持つオニロならではの葛藤だった。


721 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その2:2016/12/25 23:54:13.400 ID:pQoUtWgco
しかし、全ての言葉を紡ぎ終える前に、オニロの身体は宙を舞った。
一瞬の斬撃。
オニロが立っていた場所には、既に無口が居た。
しかし無口の移動を、剣が振るわれた速さを誰も追うことができなかった。

アイム「オニロッ!」

オニロ「ぐッ!大丈夫だよッ!『わたパチガード』」

事前に展開していた『スーパーカップバリア』のお陰で、オニロは空中へ飛ばされたものの外的な傷はほとんどなかった。
そして、わたパチに包まれ、何かが弾けるような小さな炸裂音とともに、オニロは夜の空に溶けて消えてしまった。

無口「…」

そんなオニロは気にもせずに、無口がアイムたちの方へ顔を向ける。
言葉がなくても、アイムたちには無口の言葉が理解できた。

――次はお前たちだ、と。

アイムは咄嗟に口を開き、口汚い言葉で無口に揺さぶりをかけようとした。
だがしかし、無口がゆっくりと剣を振り上げた瞬間、アイムは肌で無口のオーラを感じた。
無口は確実にこの場を無言で支配していた。

722 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その3:2016/12/25 23:56:27.792 ID:pQoUtWgco
スリッパ「くそッ、奴は語る言葉を持たない。二発目がくるぞ、サラッ!」

スリッパの言葉に呼応し、背後に控えていたサラが一行の前に移動し防護壁を張る。

無口が剣を振るう。
空間を斬るように、大地が震えるほどの風切り音をアイムは聞いた。
いともたやすく防護壁は破られ、全員は地面に叩きつけられた。

スリッパ「まさか、サラの魔法が破られるなんて…」

無口は、地面に転がる一行を気にすることなく、眼前のwiki図書館に目を向けた。
木造の建物はよく燃える。ただ、無口はじっと燃え盛る炎を見つめていた。

アイム「どうしてアンタ、ただ見ているだけなんだッ!あんたがこの図書館を創り上げたんじゃないのかよッ!」

無口は答えず、ただwiki図書館一点だけを見つめていた。
鎧に隠れて表情は窺い知れない。しかし、その様子に儚げなものはない。
どこか飄々としている。まるで業務のように観察する彼の冷徹さを、アイムは感じ取った。

アイム「このまま終わってたまるかッ!社長、援護しろッ!」

アイムはすっくと立ち上がった。同じように、社長も立ち上がる。

社長「いいぜ。」

スリッパ「待てッ!ここで無口さんを倒したら歴史はどうなるんだッ!」


723 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その4:2016/12/25 23:59:15.338 ID:pQoUtWgco
アイム「安心しろ、ちょっと痛めつけてその後に消火活動に参加させてやるんだよ」

アイムの言葉に、倒れ伏したままのスリッパはやれやれと呟いた。

アイム「おい無口さんッ!あんたが放火魔だろうが、そんなことは関係ない。オレたちをコケにしたツケ、払ってもらうぜッ!」

社長「『おっと 社長が ぶんれいね。』」

社長はその場で詠唱を始めた。途端に、彼の周りに数字の0が表れ出す。社長特有の魔法陣だ。
そして、その場で飛び上がったアイムの周りに呼応するように、瞬く間におびただしい数のバグった社長が現れた。

社長1「あワお〜」

社長2「さあ、吹くわよ!」

社長3「スピード感与えちゃったかな。」

社長4「まけたらバツゲームですよ!」

社長5「だいじょうぶでーす。」


スリッパ「地獄絵図だな…」

あっという間に空を埋め尽くした数千体の社長とその中に埋もれたアイムが、一斉に無口へ向かって一様に突撃を始めた。


724 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その5:2016/12/26 00:03:22.312 ID:mmb/Z5VIo
無口「…」

量産型社長「ループを勝ち抜くぞ!」

量産型社長「しねばいいんでしょう?」

量産型社長「ンッンッン ひさしぶりだミ」

何体もの社長が突撃しては、見事な無口の剣さばきで斬り伏せられ消滅していく。
空中に浮遊したままの社長群はその数の多さからか、順番待ちをしながら無口に突撃する始末。
異様な緊張感のはずなのに、どこか締りがなかった。
さらに社長たちのバグ音声がうるさすぎて、まるで無口の周りは祭の縁日のような賑わいっぷりとなってしまっている。

社長「やはり16×16のドットアイコン群では、無口さんには立ち向かえないのか…」

遠くから事態の推移を見つめる社長は、この瞬間もドット絵アイコン社長を召喚し続けていた。

スリッパ「というか、あの中にアイムが混じってるんだよな?
全部、ダミーアイコンをアイムにしておかないとすぐに無口さんにバレるんじゃないのか?」

社長「あっ」

スリッパ「おめえはよお、考えが甘いんだよ!」


725 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その6:2016/12/26 00:17:25.033 ID:mmb/Z5VIo
アイム「おらァ!無口さん、覚悟ッ!」

社長の中に混じったアイムの見極めは、無口にとって容易いことだった。
一人だけ異色を放つ緑のバンダナを巻いていたら、ピンクまみれの社長アイコンの中では嫌でも目立つものである。

無口「…」

無口は流れるような所作でアイムの剣を払った。

アイム「クソッ、戦闘術・魂奥義『ストーンエッジ』!!」

アイムから放たれる鋭利な石弾も難なく無口は避け、そしてアイムの一瞬の隙を逃さず――無慈悲にも一突きした。

アイム「ガッッッ!!」

社長「アイムッ!!」


726 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その7:2016/12/26 00:33:47.760 ID:mmb/Z5VIo
アイムの腹部を、無口の大剣が貫通していた。
アイムの身体は無口の大剣に無残にも支えられ、宙に浮いている。
苦痛の表情に歪むアイム。無口は静かに見つめている。

だらりとアイムの身体が伸びる。

無口は大剣を振り払おうと、ゆっくりと腕を動かそうとした。
大剣でアイムを薙ぎ払えば、その瞬間にアイムの生命も断ち切ることとなる。


―― いざという時に、俺はまた何の力にもなれないのか。

アイムの様子を間近で見ていたその兵士は、消え行くアイムの生命を見ながら、ただ立ちすくむことしかできなかった。

―― 預言書通りにはさせない。あの人から、そう使命を受けたはずなのにこれでは…これでは。

震える膝をむち打ち、一歩。また一歩と無口とアイムの下へ歩き始めるも、とても遅く。
一歩一歩がアイムの拍動と連動するように、その足取りは次第に止まる程遅くなって、再びその兵士は立ち尽くしてしまった。

―― 違う、預言書など関係ない。俺は…俺は目の前の友人すら救えないというのか。
    これではあの時と同じじゃないか。

―― こんなことなら、あの人と一緒に消えてしまったほうがよかった…

死は一瞬で訪れる。
重要で受け止めきれないほどの事実の前に、全員は呆然と無口の死への乱舞を見届けることしかできなかった。
周りにいる誰もがアイムの死を予感した。


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727 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その8:2016/12/26 00:40:48.652 ID:mmb/Z5VIo
全員「!!」

頭を垂れていたはずのアイムは、勢い良く両手で大剣を掴んだ。
そして、脂汗と涙にまみれた顔を無口に向け、口角をくっとつり上げた。

アイム「――ようやく捕まえたッ」

無口「!」

瞬間、無口の足元から生えた蔦が腕と身体に勢い良く巻き付き、彼の自由を奪った。


アイム「誰がオレを“本命”だと言った?“頼む、やれッ”!!!」


無口の背後で、ポンとワタパチの弾ける音が響いた。

オニロ「秘策は最後まで隠し持っておくことさ。

     『ネギ流星群』ッ!!!!」

無口の頭上から火を吹いた大量のネギが降り注ぎ、勢い良く爆ぜた。

師である791から教わった窮地を打開する必殺技が、手加減無用の威力で発せられたのである。

爆炎、爆風、そしてそれらによって起こる砂煙はまるで生命の咆哮だといわんばかりに、一瞬で無口を、そしてアイムたちを包み込んだ。

728 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/12/26 00:41:03.475 ID:mmb/Z5VIo
年内にもう一度くらい更新します…おそらく

729 名前:社長:2016/12/26 00:44:14.948 ID:u79B.57.0
乙。そして予想通りSKさんの片割れはたぶん私ですね・・・

730 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その1:2017/01/09 01:00:12.243 ID:Lh4qoWnwo
強烈な爆風がスリッパたちを襲った。先程まで無口が立っていた場所は激しい爆炎が巻き起こり、その様子は窺い知れない。

社長「やるねえ!」

スリッパ「それはフラグじゃないのか…」

オニロ「アイムッ!アイムは無事なのッ!」

アイム「あまり耳元で騒ぐんじゃねえ…傷口が広がるだろ」

オニロの足元でアイムは蹲って転がっていた。喋るたびに激痛を伴うのか、息は上がり苦しそうな声色だ。
ネギ流星群が展開される寸前、アイムは自らを貫いていた剣先を瞬時に切断し、後方へ退避し、ネギ流星群を避けていたのである。

アイム「“チームプレイ”…ようやくわかった気がするぜ、魂」

オニロ「喋っちゃダメだ。傷口を塞がないと…」

スリッパ「しかし、お前の師匠譲りとはいえ、ネギ流星群はやりすぎじゃないのか。これじゃあ無口さんもろとも…」

オニロ「いや。あの人が――」

アイム「――この程度でくたばるわけないだろう?」


731 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その2:2017/01/09 01:19:04.988 ID:Lh4qoWnwo
――コツ
――コツ

足音が響く。

無口「…」

スリッパ「正真正銘の化物だな。あの魔法を喰らって、まだ元気でいられるなんてな」

オニロ「まずい…もう魔法力が残ってないよ…」

アイム「お前の師匠はネギ連発できるんだろう。真似してみせろよ」

オニロ「ボクをあんなバケモ…ゴホッ、英傑と一緒にしないでよ」

無口は腰を深く沈め、大剣を地上と水平になるように、右手を前に突き出すような突きの構えを取った。
その無口の動きに呼応するように、大剣の剣先が機械的に変形し、マスケット銃のような大きな銃口へ変わった。

スリッパ「サラ!」

社長「もうおしまいだあ!」

サラが再び防護壁を貼ろうとするも、無口の剣先の銃口から放たれた白い光束は社長、スリッパそしてサラに一直線に向かい、三人の身体は遠くに投げ飛ばされた。

オニロ「みんなッ!」

スリッパ「立てないが大丈夫だ…だが肋は何本か折れたな…」

竹内「ワシに任せろ!」
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732 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その3:2017/01/09 01:22:23.761 ID:Lh4qoWnwo
――コツ

無口は倒れ伏したままのアイムとオニロの前まで来ると、歩みを止めた。
物音一つ出さずに、市場で見つけた骨董品を物色するように、好奇な視線を二人に向けている。

アイム「狙いはオレたちか」

無口は答えない。アイムは覚悟を決めたように、目を閉じた。

アイム「…ヤるならオレ一人にしてくれ。隣のポンコツ魔法使いには手を出すんじゃねえぞ」

オニロ「アイムッ!なに馬鹿なことを言って――」

無口「――これは余興」

鎧の中から発せられた無口の声は、くぐもることなく、透き通るほど全員の耳に届いた。

オニロ「え!?」

パチンと一度、無口が指を鳴らすと、アイムたちの受けた傷はたちまち癒えてしまった。

無口「初めからお前たちを始末するつもりなどない。ただ【確認】しにきた」

アイム「なんだと?」

無口「この世界に堕ちた【救世主】たちを――」

それに、と無口は遠くにいたサラへ視線を向けた。

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733 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その4:2017/01/09 01:25:24.167 ID:Lh4qoWnwo
数十秒、あるいは数分も経ったのだろうか。
これ以上の会話は無用と思ったのか、無口はその場で踵を返し、再び燃え上がる図書館に向かい歩き始めた。

スリッパ「待て」

無口「…」

足を止めた無口に、スリッパは隠し事をせずに腹を割って話すことを決めた。

スリッパ「シワは増えたが、知らない顔ではないだろう。この際だから聞こう。この火事は、お前が仕組んだのか?」

無口は困ったように肩をすくめた。スリッパの問いにイエスとも、ノーとも取れるものだった。

無口「“犠牲は超時間的な、超感覚的な、無制限なものと結びついている。それは、たとえ『無駄』であろうと、『無意味』ではない。”」

スリッパ「どこかのきのたけ哲学者の引用か。自身の行為を正当化できるとでも?」

またもスリッパの問いには答えず、無口はオニロたちの方へ逆に問いかけた。

無口「『メルティカース』という魔法を知っているか」

オニロ「…本で読んだことがある。一度詠唱してしまえば、たとえ術者がいなくなっても、半永久的に自律的に起動し続ける永続補助魔法。
師匠でも詠唱には苦労するって」

無口「そうだ。その『メルティカース』はいま、起動の準備段階にある。魔法陣は…図書館の遥か下、地下階層に仕込んである」

アイム「まさか…大戦年表編纂室を創っているんですか!?」


734 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その5:2017/01/09 01:29:51.904 ID:Lh4qoWnwo
大戦年表編纂室がなぜ歴史改変の影響を受けない部屋なのか。
それは、編纂室自体がメルティカースにより生み出された魔法シェルターに他ならないからである。

歴史改変を受けず、時空の潮流に飲み込まれない唯一つの空間。
いまこの時より無口は編纂室をメルティカースにより召喚し続けていたのである。
そして、この図書館の大火の中で、無口は編纂室の召喚の準備を淡々と進めていた。

メルティカースは超高度魔法ゆえ、一度起動に失敗してしまえば詠唱に必要なエネルギーがそのまま術者に跳ね返ってくる。
即ち、周囲にある図書館ごと飲み込み、消え爆ぜてしまうリスクがある。
無口が用意した図書館の大火は、編纂室をメルティカースで創り上げる上で、兵士を図書館に寄せ付けないための策であった。

オニロ「そうだとしても…残った書物が一緒に燃えてしまうなんて、あんまりだ…」

無口「図書の犠牲は無駄であろうと、今後のことを考えると無意味にはならない。それはお前たちが一番よく知っている」

アイム「あんた…まるでオレたちの正体まで知っているようだが。まさか、化けたDBってことはないよなッ」

無口は答えない代わりに肩をすくめた。ナンセンスだ、と答えているようにアイムには感じられた。

735 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その6:2017/01/09 01:33:12.246 ID:Lh4qoWnwo
アイム「おい。あんたにだから言うが、オレたちは未来からきた。当然、あんたの結末は知っている。
包み隠さずに言おう。この図書館の大火であんたは歴史から消えちまうんだよ」

オニロ「ちょ、ちょっとアイム!まずいよ、未来の事を言うのは!」

アイム「どうせ消える兵士の方だ。ここで歴史改変が起きなければ、無口さんが消えるという事実は変わらない。そうだろう?」

いつもアイムの頭のなかに囁いてくる謎の声は聞こえてこない。
つまり、無口が歴史の表舞台から消えてしまう事実は不変だということの証明だった。

無口「――還りたいか?」

アイム「正確には、帰らなければいけないだな」

無口は暫しの沈黙の後、それならばと語った。

無口「…直に消火活動部隊が正面入口前に到着する。だが、奴らはことの事態に動揺し、力を発揮できん寄せ集め。
【消火活動を手伝い、少しでも書物を残す努力をしろ】。そうすれば、現代に帰れる」

社長「…」

スリッパ「なぜだ。あなたは間違いなく大戦年表編纂室の創設に関わり、未来で起きる騒動も予見している。時限の境界の事も知っている」

ならば俺達がなぜ過去に来ているのかも知っているかも、と続けた上でスリッパは核心をついた。

スリッパ「なぜ、こんな回りくどいことをさせるんだ」

無口「全ては『預言書』にしたがったまで。理由については、そうだな。そいつにでも聞いたらどうだ」

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736 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その7:2017/01/09 01:34:44.182 ID:Lh4qoWnwo
無口「――時間だ」

再び踵を返し、無口は歩き出した。

アイム「編纂室の準備が完了したってことか。どうやら、あんただけの意志では無さそうだが、後ろには誰が控えているんだ?」

無口は答えずに図書館へ還っていく。

アイム「まあいい。それで、あんたはこのまま消えるのか。随分と無責任じゃないか、消えた後は天から見守るとでもいうのかい」

そこで初めて無口は立ち止まり、静かに肩を震わせた。
笑っている。あの無口が。

無口「【天】か。なるほど、言い得て妙だな。そうか。それじゃあ“俺たち”は【天の上から】事の推移を見守るとしよう」


――大戦に幸あれ


消え入るような声で最期にそう呟いた後、無口の姿は夜の闇に溶けていった。
あとには静寂と、煌々と燃える図書館だけがアイムとオニロたちの前に残った。

737 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その8:2017/01/09 02:01:19.151 ID:Lh4qoWnwo
【K.N.C180年 会議所正門前】

オニロたちは無事、現代の会議所へ帰還した。
無口が消えた後、オニロたちは無口の遺した言葉通り、消火活動に参加した。迅速な消火活動の末、図書館の火は驚くほど早く消し止められた。
あるいは、早い段階で炎魔法の効力を失うように、無口がコントロールしていたのかもしれない。
結果的に、迅速な消火活動が【歴史改変】と認められ、オニロたちは時限の境界を経て現代へ帰還することができた。

結局は無口により、オニロたちは最初から踊らされていたのである。

無口との邂逅を経て各人がさまざま葛藤する中、DB襲撃の危惧からオニロたちは急ぎ会議所の前まで戻ってきた。

―― 【救世主】は生き残った。

オニロ「…長ッ!」

―― やはり、あの人の予見通り、預言書はただの紙クズと化したのか。

オニロ「社長ッ!」

何やら思案気に顔をバグらせていた社長は、オニロの言葉にハッとした様子で顔を上げた。

オニロ「社長。無口さんが最後に言っていた言葉の意味。あなたなら、何か知っていますよね」

社長「(そうでもないけど)」

オニロ「編纂室に戻ったら教えてください。話せる内容までで結構ですから」

社長「…はいよ」

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738 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その9:2017/01/09 02:03:14.016 ID:Lh4qoWnwo
竹内「すまんのう。ワシはおしっこ行ってくる」

会議所に着いたと同時に、竹内はフラフラとした様子でどこかへ行ってしまった。
その竹内に誰も言葉をかけない辺り、今回の時間旅行で何度同じ場面があったか想像するに難くない。

アイム「しかし、やけに静かだな…」

会議所の受付は昼間だというのに明かりが消えている。ただでさえ古びた受付が薄暗く肝試しに出てきそうな程に寂れて見えてしまっている。
静寂を通り越し生気がないのだ。そして、どこからか立ち込めている生臭い臭いが、先程からアイムたちの鼻をついていた。

加古川「おかえりィ」

ぬっと暗闇の中から出てきた加古川が、満面の笑みでオニロたちを出迎えた。

オニロ「加古川さん、戻っていたんですねッ!DBはまだ襲撃していませんかッ!」

オニロは不思議な違和感を覚えた。
いつもくたびれたような面持ちで皆を迎えていた加古川が、今日はやけに張り切っているように見えたからである。
そして、その目はどこか焦点があっていなかった。

加古川「予想より時間がかかったなァ。拘束ゥ」

オニロ「何を言って――」

なにか様子がおかしい。オニロたちが疑問を抱くよりも前に、加古川の命令はくだされた。
柱の陰に隠れていたsomeoneの放った麻痺魔法は、アイムたちに悲鳴を上げる暇すら与えず、身体の自由を奪った。
全員の身体は硬直し、直立したアイムたちはその場に倒れ伏した。


739 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その10:2017/01/09 02:06:55.435 ID:Lh4qoWnwo
someone「ヒュー。プッカライトニングが決まると気持ちいいなァ。拘束完了ゥ」

同じく身を潜めていた抹茶も姿を現し、倒れる一行を面白そうに眺めていた。

抹茶「おやァ。一人、兵士が足りないようですがァ」

黒砂糖「あの老人は放っておけェ。単体では何もできんよォ」

アイム「ッ!!」

somoneの麻痺魔法を少しでも破ろうと、必至の努力で顔だけ上げたアイムは、正面から現れた黒砂糖と目があった。
暗闇と同化するほどに真黒な祭服を着込んだ黒砂糖は、驚愕にまみれたアイムたちの顔を一瞥すると、口角をつりあげニタニタと笑いだした。
その笑い方は、まるでアイムたちが追っていた宿敵そのもので――

黒砂糖「それでは“あの方”の下にこいつらをお連れしろォ。
お前たちの帰りを今か今かと待っておられたのだ、【その身】で非礼を詫びるんだぞォ」


740 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2017/01/09 02:07:56.801 ID:Lh4qoWnwo
長かった第三章。次回最終。遂に物語はクライマックス第四章へ。
そして明かされるアイムとオニロの秘密、そして集計班の協力者。

741 名前:社長:2017/01/09 02:09:17.373 ID:c.vMjwHo0
更新乙。やばいよやばいよ・・・

742 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2017/01/09 02:26:01.235 ID:Lh4qoWnwo
第四章は第三章ほど文量はない(予定)ので、サクサクっといくぜ!

743 名前:791:2017/01/09 02:27:50.189 ID:abst9aJ20
ふおおお!
一体何が!?
続きを楽しみにしてます

744 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その1:2017/03/27 01:08:15.092 ID:JxG3Or5ko
【K.N.C180年 会議所地下 大戦開発室】

身動きの取れないアイムたちに縄をくくりつけ、黒砂糖は大廊下の端からのびる階段で地下へと下り始めた。
アイムにはその薄汚れた階段の入り口に見覚えがあった。
会議所に来たばかりのアイムが、埼玉と抹茶に案内を受けていた際に見つけた隠し階段と同一のものだったのだ。

誰かに抱えられながらアイムたちは階段を下っていった。アイムたちは身体を動かすことができないため、知る由もない。
階段はすぐに途切れた。大戦年表編纂室のように構造自体に魔法が施されているわけでもなく、そこには純粋な地下室が用意されているようだった。

着くやいなや、アイムたちは部屋に投げ出された。打ち身を気にする暇もなく、アイムたちの鼻を腐敗臭が襲った。
生臭さとも刺激臭とも取れる独特の臭いに、アイムとオニロは覚えがあった。

オニロ「お前は…DBッ!」

DB「おや久しぶりだねェ“君ィ”」

まるで玉座と言わんばかりに目の前で椅子に座りふんぞり返るDBを、アイムとオニロたちは苦々しそうな表情で見上げた。

745 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その2:2017/03/27 01:10:52.698 ID:JxG3Or5ko
漆黒の司祭服を羽織った黒砂糖は、当然のようにDBの横に付いた。
その左右にもオニロたちの見知った会議所兵士たちが、DBに忠誠を誓うかのように整然と並んでいる。
先刻までオニロやアイムと額を寄せ合い話し合い、DB討伐のために立ち上がった兵士たちだ。
DBの異臭に気にも留めず皆一様に下品な笑みを浮かべる兵士たちの姿は、彼らがDBの魔の手に落ちたことを瞬時に確信させた。

アイム「おかしいな。オレたちはDB討伐に湧くK.N.C180年に戻ってきたはずだが、こいつはどういう理由かな」

スリッパ「抹茶、黒砂糖、山本。目を覚ませッ!目の前にDBがいるんだぞッ!」

つい先刻まで同胞だった会議所兵士たちが、明確な敵意を以て相対す姿はスリッパたちにとって混乱よりも寧ろ畏怖を招いた。

抹茶「スリッパさん。まだそんな馬鹿げた事を言っているんですかァ」

加古川「俺たちは間違っていた。DB様の素晴らしさに触れェ、DB様の支配を助けようと思い直したんだよォ」

山本「アイムゥ。はやくお前も“こっち”に来いよォ。さもなければ…な?」

焦点が合わず人形のように歯をカタカタと鳴らしながら喋る兵士たちに、思わずアイムは見ていられないとばかりに目を逸らした。

オニロ「強力な洗脳魔法がかけられている…歴戦の兵士でも逃れられない」

しかしオニロはその言葉とは裏腹に一つの希望を持っていた。オニロたちの前に並ぶ兵士たちの中に、師匠791の姿が無い。
791は今もまだ編纂室で健在か、もしくは人知れず交戦の機会を探っているのではないか。オニロは791の強さを誰よりも肌で感じ絶大な信頼感を持っていた。

746 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その3:2017/03/27 01:12:46.189 ID:JxG3Or5ko
DB「その通りィ。兵士の“希望-心の本-”を喰らい今の俺様はなんだってできる。洗脳、破壊、支配――そう、あの大魔法使いですら今の俺様にとっては敵ではない」

オニロ「ッ!!まさか、師匠をッ!」

DBは溜息を一つついたのち、オニロの様子を見て鼻で笑った。
足を挫いてもなお悪足掻きをする獲物に憐憫の情を抱く肉食動物のように、DBは落ち着いていた。

DB「大戦年表編纂室――貴様らも考えたものだなァ。道理で、俺様とスクリプトの動きが読まれるわけだ。お陰で俺様の考えは看破され壊滅一歩手前だったァ」

DB「お前の師匠、大魔法使い791といったか。かなりの強者だったァ、かつての討伐戦の後に来た人材でェ俺様もデータはなかった。
ナメてかかれば今ここには居なかっただろう…だが幸いなことに俺様には優秀な片腕がいてなァ」

黒砂糖「大魔法使い791が強力魔法を使うゆえ、魔力消費が他の兵士より早いことをお伝えしたのだ」

――魔力切れを誘発し、一先ず早く寝てもらったわ。

黒砂糖はDBの賞賛に感銘を受けたように深々と頭を下げた。

社長「黒ちゃん…あんたって人は」

オニロ「ふ、ふざけるなッ!!!師匠の優しさに漬け込み、あなたはッ!!!信じていたんだぞッ!それを、それを踏みにじるように…」


747 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その4:2017/03/27 01:13:48.554 ID:JxG3Or5ko
アイム「抑えろ。黒砂糖さんも洗脳されているだけだ。寧ろ、791さんがこの場に居ないことは救いだ。オレたちはまだ運に見放されたわけじゃない」

激昂しかかる社長とオニロをアイムは冷静に諭した。DBはその様子が気に食わなかった。

DB「今の状況を理解しているのかァ?お前たち以外の討伐隊員は全て俺様のォ支配下に入った。そしてお前たちはまな板の上の鯉だァ。
俺様が一度、ふっと口から息を吐けばァ洗脳されるんだぞォ」

アイム「見かけ上はそうかもしれない。ただ、オレたちを操り人形にできたとしても、それからどうだ?
いつ切れるかわからない洗脳を頼りに怯えながら砂上の楼閣の王として暮らすか?本当の兵士の心までをお前は掴めない」

オニロ「掴めるはずがないよ、お前はボクたちを使って人形遊びをしているだけだから。そんなまやかしの世界を手に入れて、お前は何が楽しいんだ?」

途端、DBは椅子を転がすほどに勢い良く立ち上がり激昂した。


748 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その5:2017/03/27 01:17:00.762 ID:JxG3Or5ko
DB「貴様らに何がわかるッ!!兵士の士気高揚のためだけに生み出され、討伐、そして幽閉。
たまに大戦への参加意欲が下がると外に出されまた討伐される。
俺様は貴様らの欲望の捌け口として生まれてきた、見世物小屋の動物みたいなものなのだ。
檻の中の動物が、唾を吐く見物人に牙を剥いて、何が悪いと言うのかッ!!!」

一気にまくし立てたDBは肩で呼吸をするように荒々しく息を吐いた。

アイム「それでお前は――」

オニロ「――【満足】できたのか?」


              ――それでお前は満足できるのかい?

DBの脳裏には、いつか誰かから発せられた同じ言葉が蘇った。

DB「【同じ】だ、あの時と…貴様らは、否。“貴様”はまたも俺様を愚弄するのか…」

アイムとオニロの一言に、DBはよろめきながらブツブツと独り言を呟いた。

DB「貴様は…そうして“希望”を振りまき…俺様をまた闇へと追いやろうと…」

部屋の奥にある巨大な空調機のような機械から出る忙しない光が、広々とした部屋を薄ぼんやりと照らしていた。

オニロ「ねえ社長。どうしてDBはあんな狼狽えているの?」

社長「…さあ、ワシにはさっぱり。」

未だ麻痺魔法で身動きの取れないオニロたちだったが、目の前のDBから放出される目に見えない“自信”は、オニロたちに希望を与えた。
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749 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その6:2017/03/27 01:19:26.954 ID:JxG3Or5ko
DB「貴様ァ。ここがァどこかわかるか?」

アイム「さあな、初めて来た」

DB「嘘だァ、前にも俺様と一緒にここに来ただろうゥ?」

誰に向けられた話しなのかわからず、またDBの自信に満ちた返答に、一瞬アイムは困惑し言葉に詰まった。

アイム「気でも触れたか?オレとお前が一緒に行動なんてするわけないだろ」

DB「いやァ。確かに、“貴様”はあの時俺様とこうして対面していた」

アイムは違和感を覚えた。先程からDBと会話しているはずなのに、DBが自分に向けて話していると思いにくいのだ。
どこか会話がすれ違う。

アイム「だから違うと言っているだろッ遂に頭まで腐っちまったか」

DB「もう少し、足りない部分を使ってみれば“貴様”も思い出すはずだ」

アイムは困惑したようにオニロに助けの視線を送った。

オニロ「おい化物ッ。アイムは違うと言っているんだ、独りよがりはやめろ」

DB「“貴様”の答えをまだ完全に聞いていない。教えてくれ」

オニロ「ボクにきいているのか?それならば、アイムと同じだ。お前と一緒だったことなど無い」

アイムは違和感の正体に気がついた。DBは二人と話をする時に、決してアイムとオニロに視線を合わさないのだ。
必ず二人の間にある何もない空虚な空間を見て話す。ただ虚ろな視線を送っているのか。
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750 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その7:2017/03/27 01:21:03.521 ID:JxG3Or5ko
DB「ここは俺様が生み出された始まりの地でもあり、“貴様”の終わりの地でもあるゥ」

DBの背後で、¢の開発した【圧縮装置】から漏れ出した光がDBを照らしていた。

アイム「貴様、貴様とさっきからお前はオレとオニロのどちらに話しかけているんだ?」

いい加減にアイムは痺れを切らした。オニロも続いた。

オニロ「混乱させようとしてもそうはいかないぞッ」

DBは初めて口角を釣り上げ嘲笑した。

DB「何を言っているんだ。俺様は最初から“貴様”と会話していたぞォ」

アイム「だから、それがどちらだと――」

DB「思い出さないかァ?」

DBの一言に、アイムは口を開けたまま一瞬静止した。
オニロも何かを考え込むように、辺りを見回す。

先ほど見覚えのなかったはずの風景。

そこに。アイムとオニロの頭のなかに、同時に【例の夢】の光景が流れてきた。


751 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その8:2017/03/27 01:22:48.289 ID:JxG3Or5ko
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━━━━
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「…かった。…長年…ついに……やっと……」
―― 囁くような声を聞いて。ゆっくりと、夢の中で瞼を開ける ――

「…オー…結集……貴様を………掌握ッ………会議所を……」
―― 意識が定まらない、うすぼんやりとした感覚が身体を支配する ――

「貴様を……会議所の…全て断ち……」
―― どこか見覚えのある光景、覚醒しない脳を働かせようとする ――

「…ッここで………消える…」
―― 思い出すのは、暗い室内 ――

「………るく思うな…これも…全て……ため…歴史を……ため」
―― 思い出すのは、異様なまでに冷えた部屋の空気 ――

「覚悟……逃げること……………なッ!…自ら……馬鹿なッ…」
―― 思い出すのは、ふわふわ浮いているような不思議な心地良い感触と ――

「なぜだッ!!!なぜ!!!!なぜだーーーーーーーーッ!!」


          ―― 頭を鈍器で殴られたような酷く重たい感触 ――
━━━━━━━━
━━━━
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752 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その9:2017/03/27 01:29:34.706 ID:JxG3Or5ko
スリッパ「ど、どうしたんだふたりともッ!」

社長「アイムッ!オニロッ!戻ってこいッ!!思い出してはDBの思う壺だッ!」

DB「もう遅い…」

二人の悲鳴を最良の馳走とばかりにDBは舌なめずりをして見ていた。

DB「思い出したなァ。そう俺様は“貴様”と以前に、ここで対面している。否、それではない。それよりも以前からずっと、ずっと――」

社長「もう止めろDBォ!!!止めてくれッ!!」

アイム「オレたちに何をしたッ!」

オニロ「ボクたちに何をしたんだッ!」

アイムとオニロは満身創痍の中、目の前の邪悪な怪物に精一杯の虚勢をもって問いかけた。
社長の静止はDBにも、そして二人にも届くことはない。
いまこの瞬間、預言に無い運命は暴走を始めたのだ。

玉座に座るDBは待ちわびたとばかりに愉悦気に答えたのだった。

753 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その10:2017/03/27 01:33:51.809 ID:JxG3Or5ko
DB「そうか、今はアイムとオニロという名前になっていたのか。

         “貴様ら”は互いに欠けたピースゥ。


              元は一つの形だったァ。


何をしたか?その問いに答えよう。


            俺様は“貴様”を手に掛けた。
          その結果、出来たのが“貴様ら”だ。


分からないか?俺様は創り出した。
               

               アイムとオニロ。“貴様ら”二人を。



ここに“貴様”を招いたのもこの俺様。

そして、そこで不意打ちに“貴様”を討ち取ったのもこの俺様。

元々一つの存在であった“貴様”の魂が二つに分かれたのもこの俺様のせい。

つまり、つまりィ。ゴミのように転がっている“貴様ら”二人の生みの親は、この俺様ってことだよォッ!!」
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754 名前:きのこ軍:2017/03/27 01:37:04.940 ID:JxG3Or5ko
Chapter4.大戦に愛を へとつづく。

色々と反省しかありませんが、最終章へ向けて邁進するのみのみ。

755 名前:社長:2017/03/27 01:39:53.116 ID:6QMucJns0
ついにアイムとオニロの秘密が!乙。

756 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2017/05/07 23:44:27.343 ID:90JAJ7Q6o
社長のssに胸をうたれ、更新再開にむけて努力します。がんばるぞい。



757 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:37:54.363 ID:7NMTxnUEo
・これまでのあらすじ(ロングバージョン)

★Chapter1. 欠けたものたち
―― 「オレの名前はアイム、記憶喪失らしい。好きな食べ物はきのこ。この世で一番嫌いな食べ物はたけのこだ。所属はきのこ軍」
    ―― 「ボクの名前はオニロ、同じく記憶喪失みたいです。たけのこ軍所属ですけど、きのこも好きです」
―― 社長『こうして森部拳は 永遠にその姿を消した……』
    ―― 「二人はパズルのピースのようなものです。お互いに欠けたピースなんだ」

“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。
その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。

758 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:39:03.672 ID:7NMTxnUEo
★Chapter2. 悪しき時空の潮流者
―― 集計班「私の予測が正しければ、編纂室にいれば『歴史改変の影響を受けない』。」
    ―― ¢「堅牢な檻から獰猛な動物が二匹解き離れた。1匹目は愉快犯 スクリプト、そしてもう1匹は…邪悪の権化 DB<ダイヴォー>」
――  『【時限の境界】 自身の決意を込める意味で、魔法のタイムマシンフロアを以後こう呼びたいと思う。』
    ―― 筍魂「【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】」
―― アイム「【無秩序の全】は世界、【一】はオレ。【一】が【全】の“正”・“負”を支配し、逆もまた然り」オニロ「――それが【生命力の流れ】で【世界の理】の一部」

ある日、会議所で捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走していたことが判明。
同時に、DB一味は、禁忌のマップ『時限の境界』で、故意に会議所不利の歴史に改変していることも明らかになる。
世界の危機を救うため、参謀を隊長とするDB討伐隊は、すぐさま『時限の境界』に突入するも、内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。
結局、DBの姿すら確認できずに、撤退を余儀なくされる。

自身の不甲斐なさを悔い、アイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。
オニロとの絆を深め、師からの教えを理解したアイムは、再び時限の境界へと突入する。
しかし、新たな【制約】により、アイムは独り過去の時代に閉じ込められてしまう。

759 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:41:27.826 ID:7NMTxnUEo
★Chapter3. 無秩序な追跡者たち
―― 竹内「どうも皆さんお久しぶり――かくいう私はもう隠居した身でね」
    ―― たけのこ軍 社長『ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ!』『預言?しらね^^』『アア オワッタ・・・・・・・・!』
―― きのこ軍 アイム「兵士は誰しも『大戦の本』を心の中に宿している
    ―― DB「“相棒”に伝えておけ、『すぐに迎えに行く』とねェ…」
―― 無口「【天】か。なるほど、言い得て妙だな。そうか。それじゃあ“俺たち”は【天の上から】事の推移を見守るとしよう」
    ―― オニロ「ボクたちに何をしたんだッ!」
―― DB「つまり、つまりィ。ゴミのように転がっている“貴様ら”二人の生みの親は、この俺様ってことだよォッ!!」

持ち前の機転と戦闘術魂を利用し無事現代に帰還したアイムは、会議所の中心的存在だった集計班が突如として姿を消したことを知る。
悲観に暮れる間もなく、竹内の加入を経て、スクリプトたちが【スクリプト工場】を過去の時代に製造し過去改変を行うという恐ろしい事実を目のあたりにする。
そして順調に工場を破壊する中で、追い詰められていたDBと討伐隊は、時限の境界内で遂に運命の邂逅を果たす。

万事休すと思われたDBだが、自らの危機を逆手に取り、過去の時代で黒砂糖を洗脳。会議所の内通者として仕立てあげ、会議所を洗脳し制圧する。
一方、アイムとオニロはK.N.C47年で初代wiki館長無口と出会い、真実の糸を手繰り寄せるも。
現代の会議所で捕らえられたアイムとオニロはDBから恐ろしい真実を告げられるのだった――――


760 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:57:39.486 ID:7NMTxnUEo
本編投下

761 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その1:2017/05/20 02:04:26.270 ID:7NMTxnUEo
目を覚ました時、自分は何もない飴色の空間を所在無げにふわふわと浮いていた。
思い出そうとしても意識が朦朧としている。自分が誰なのか記憶を手繰り寄せようにも記憶がない。

完全に覚醒していない意識の中で直感する。
そうか、これは夢なのだと。

1秒かはたまた100年か。
時間の概念を忘れる程にその空間に漂い続けていると、不意に仄かな光が自身を徐々に包み、やがて一面が真白となった。
とても目を開けていられず、思わず腕で顔を覆った。まばゆい光が自分にはとても場違いな空間のように思え身を固くした。
だが暖かな光は自身を包み込むように体を芯から温め、その感触がこそばゆかったものの、次第に嫌ではなくなった。

暫く経つとまるで長い間自身が此処にいたようにくつろぐようになった。時間の概念がないので、こちらも1秒あるいは100年過ごしたかはわからない。
居心地がよく、夢のような空間だとさえ感じた。今、自身のいる空間が夢であるというのにおかしな話だと笑った。
まばゆい光に目は未だ慣れず顔を腕で覆い続けながらも、確かな幸せを感じていた。


762 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その2:2017/05/20 02:07:27.035 ID:7NMTxnUEo
至福の時間を過ごした空間に身を置きすぎ、だから気を許しすぎていたのだろう。
気が付かなかったのだ。

いつの間にか光の空間から叩き落され、自身が底知れぬ闇へ向かっていることに。
目を開けた時には、一面はうってかわり真暗の闇で覆われていた。
怯える。夢だとわかってはいても、底なし闇に堕ちていく自身の精神は二度と現実に戻れないのではないかという予感があった。

恐怖に打ち克つように、自身の両拳をぎゅっと握った。
目は瞑ったままで、力強く。

763 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その3:2017/05/20 02:10:21.983 ID:7NMTxnUEo

「長かった。長年かけて、ついにやっとここまでこれたァ」
― 囁くような声を聞いて。ゆっくりと、夢の中で瞼を開ける ―

「正のオーラで結集してできた貴様を、この場で俺様が戴くことで掌握ッ。完全に会議所を掌握する」
― 意識が定まらない、うすぼんやりとした感覚が身体を支配する ―

「貴様を消し去ることで、俺様は会議所の希望を全て断ち切る」
― どこか見覚えのある光景、覚醒しない脳を働かせる ―

「貴様はッここで俺様に喰われて消える」
― 思い出すのは、暗い室内 ―

「悔しいか?悪く思うなよ。これも全て俺様のため。会議所の歴史を変えるため」
― 思い出すのは、異様なまでに冷えた部屋の空気 ―

「覚悟しろ、逃げることなど なッ!自ら四散しただと。そんな馬鹿なッ!!」
― 思い出すのは、ふわふわ浮いているような不思議な心地良い感触と ―

「ふざけるなッ!!幾ばくもの月日をかけて今日を待っていた!貴様を喰らうことのみ考えて今日を生きてきた!なのに、なぜッ」

「なぜだッ!!!なぜッ!!!!なぜだーーーーーーーーッ!!」


          ―― 頭を鈍器で殴られたような酷く重たい感触 ――


夢から、覚めた。

764 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その4:2017/05/20 02:11:24.151 ID:7NMTxnUEo
━━━━
━━━━━━

きのたけWARS 〜DB討伐〜
Chpater4. 大戦に愛を

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━━━━


765 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その5:2017/05/20 02:15:12.368 ID:7NMTxnUEo
信じがたいことに、かつてきのこたけのこ大戦世界には【神】が存在した。
兵士たちが【神】という存在を忘れて久しい。
だが、大戦世界には数多もの【神】が存在した。

農家では、畑から収穫したきのことたけのこを出荷前に【農耕の神】へ供え、家庭で振る舞われる際には【食事の神】へ祈りを捧げ、
子供が夜更かしをしていると親は【幽霊神】の伝説を語り、やんちゃな童たちを震え上がらせた。

伝聞が伝聞を呼び、大戦世界黎明期の兵士たちは【神】の存在を認知するようになった。
日常生活のなかでどうにも自分たちの力で解決できない事象があると、兵士たちはまるで猿の一つ覚えのように【神】に縋るようになった。
時には居もしない【神】をその場で創り出して縋り、その願いに応える形で【神】は生まれてきた。兵士たち自身が【神】を創り上げてきたのだ。

もし世界を天の上から見守る管理者がいたら、当時の下界の兵士たちの様子にはだいぶ呆れたかもしれない。
それ程までに一時の大戦世界は兵士たちの懇願で溢れかえった。仕方なく、管理者たちは粘土をこねるように次々と【神】を造形し生み出していった。


766 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その6:2017/05/20 02:17:42.188 ID:7NMTxnUEo
暫く経ち、とりわけ大戦場ではいつからか【戦の神】への信仰が爆発的に強まり始めた。
初出は窮地のきのこ軍兵士が、居もしない【戦の神】をやけくそ気味に叫んだことが始まりと言われているが今となっては知る由もない。
その戦いはきのこ軍が大逆転勝利を収めた。

かくして、いつの間にか絶体絶命時に【戦の神】へ祈りを捧げると大逆転勝利できるという伝説が、まことしやかに囁かれ始めるようになった。
時代が進み文化的にも成熟した大戦世界では、一時の神信仰は鳴りを潜めつつあった。
代わりに神といえば【戦の神】と皆が認識するように、武運をまとった神を兵士たちは想起した。



兵士たちは、畏怖と敬意そしてほんの僅かの親しみをこめ、その神を【軍神<アーミーゴッド>】と名付けた。


767 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その7:2017/05/20 02:27:56.361 ID:7NMTxnUEo
軍神<アーミーゴッド>は大戦世界に生まれた。
そして常に戦場では先頭で兵士たちを鼓舞し続ける存在となった。
兵士たちが軍神<アーミーゴッド>に縋れば、たまに大逆転が起きる。
勝利の立役者を階級を超えた軍神Åとして表彰する動きも一時は盛んとなった。

かつて確かにきのこたけのこ大戦世界には【神】が存在した。
しかし兵士が大戦への興味を失うにつれ、軍神<アーミーゴッド>は兵士たちの心の拠り所では無くなり現世へ留まる必要が無くなった。
軍神<アーミーゴッド>は名残惜しつつも、現世から姿を消し天の上へと戻った。いつか兵士が“希望-心の本-”に胸を膨らませ、自身の存在を必要とされるまで世界を見守ることとした。

そして、現在。
歴史の歩みを止めたK.N.C180年で、思わぬ形で【神】は復活した。
その【神】は今。会議所の地下、冷たい地べたにその身を投げ飛ばされ、かつての栄華はどこにもなく、ただただ恥辱の神に見下されていた。

DB「久しぶりだなァ軍神<アーミーゴッド>。目覚めた気分はどうだィ?」

オニロ「DB…」

アイム「貴様という奴は…」

その【神】は自身の魂を二つの器に分けていたため不完全だった。
それ故、歴史を変えるほどの窮地に追い込まれていた。

768 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/05/20 02:31:00.393 ID:7NMTxnUEo
本当は軍神の訳だとゴッドオブウォーとかマーズとからしいけど、そんなことしるか直訳じゃ!



769 名前:社長:2017/05/20 02:33:31.004 ID:fvhsgqo20
その展開は予想していなかった。なるほど軍神!

770 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その1:2017/06/25 01:20:43.207 ID:YcJ1wk56o
【K.N.C??年 避難所の避難所】
きのこたけのこ大戦世界のはるか雲の上、高度な魔法で厳格に存在を秘匿される環境下に【避難所の避難所】は存在した。
【避難所の避難所】は大戦世界を正しく導くための管理所として、世界の始祖まいうが創造した。

黎明期は限られたメンバーだけしか利用していないことから別の世界に存在していたが、いつか地上から帰還した中心メンバーの一人である無口が
『今日からここは【天の上】となる』と無表情ながら茶目っ気ぽく語った時から、【避難所の避難所】は雲の上に移動し下界を見守る管理区域と化した。

冗談が過ぎる、と軍神はメンバーの一人として内心苛立ちを感じていた。ただ、この負の感情が正当なものかはたまたつい最近の自身への冷遇から出るものなのか、
どちらに因るものか自信を持てず、表立って不平を言うことはなかった。

771 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その2:2017/06/25 01:27:04.914 ID:YcJ1wk56o
白を基調とした広大な談話室の中心で、軍神は独り物思いにふけていた。

DB「おやおやァ。これはこれはァ軍神<アーミーゴッド>様ではないですか」

【恥辱の神】DBの声のした方向に首を向けると、それまで物憂げだった軍神は露骨に顔をしかめた。

軍神「久々に討伐戦に駆り出される予定だと今日の定例会議で言っていただろう。その醜い姿をひっさげてさっさと地上に降りたらどうだ」

DB「ツレないねェ。俺様と貴様の仲じゃないか、俺様の無事を祈っていてくれよなァ」

軍神「ああ祈っているよ、会議所が今度こそ貴様を捕えることを切にな」

短く言葉を切ると、軍神は中央に鎮座されている巨大な水晶に視線を移した。
透き通るほど澄んだ水晶は兵士を数十人は飲み込めるほど巨大でありながら、綺羅びやかに光を放ち続けていた。
軍神の視線を追うように水晶の中身を眺めていたDBだが、水晶の中に映し出されていた光景に下卑た笑いを浮かべた。

DB「連中も噛み合わないねェ。【スキル制】ルールなんてうまくいくわけないだろうにィ」

水晶の中には、大戦場で戦い続ける兵士たちの姿が映っていた。

軍神「哀れなオツムだと否定することしか出来ないのか。きっと上手くいく」

DB「いや、すぐに内外から紛糾してルール中止に追い込まれるさァ。俺様は“ネガティブ”な話題には人一倍に敏感だからわかるんだよ。『預言書』に書かれてなくても予測できるゥ」

水晶の中では、先程まで軍神たちと同じく会議に出席していた集計班が疲れ切った表情で集計作業にあたっていた。


772 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その3:2017/06/25 01:29:01.127 ID:YcJ1wk56o
DB「ところでェ。聞いたぜ、帰還命令が出て【避難所の避難所】に幽閉されるんだってな。かわいそうにィ。兵士たちに忘れられた武運の神様は、天の上から指を咥え下界を見ているしかない。
一方で悪役の俺様は強烈な存在感で忘れられずに近々また地上へ降りられる」

いわずともDBが軍神のことを語っていることは、軍神自身がよく理解していた。

軍神「今は新ルール運用等も含め、兵士たちの心に余裕がないからしかたがない。いつか再び大戦の人気が頂点を迎える時、我がまた姿を現せばいい」

DB「果たしてそれが叶うかなァ?」

DBの下賤な目線に応えることなく、軍神はただ水晶に映し出された大戦を眺め続けていた。

DB「また戻りたいだろゥ?懐かしいんだろゥ?」

軍神「…当たり前だ。だが、ここのメンバーはそう思っていないだろ。戦の神様をお役御免とでも思っているんじゃないのか」

DB「…あんたの願い、叶えてやろうかァ?」

思いがけない言葉に、軍神は思わず眉をひそめ初めて水晶から視線を外した。

軍神「君がか?馬鹿も休みも言え。それに誰が信じるんだッ」

DBの提案を一笑に付す軍神に、下品な笑みを絶やさず恥辱の神は言葉を続けたのだった。

DB「安心しろよォ。ここを離れようとすぐあんたを“迎えに行く”からよォ、【避難所の避難所】もそれを望んでいるだろ」


773 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その4:2017/06/25 01:32:32.650 ID:YcJ1wk56o
━━━━
━━━━━━
【K.N.C180年 会議所地下 大戦開発室】

DB「“あの時”の言葉どおり、俺様は“貴様”を再び地上へ連れ戻してやった。さあ感謝しろォ」

アイム「ふざけるなッ!混乱に乗じてオレたちをここに呼び出して――」

オニロ「ボクたちを消滅させて、全ての負のエネルギーを吸収しようとしただろうッ!」

DB「だってェ軍神<アーミーゴッド>がいる限りは、大戦世界には“希望”が振りまかれる。希望ってのは俺様の大嫌いなものなんだよォ。
つまり、“希望”の塊である貴様は俺様にとって天敵というわけだァ!!」

DBが指をパチンと鳴らすと、虚ろな意識でいた操り兵士たちは糸でひかれたようにすっくと背筋を伸ばした。

スリッパ「なんだ、何が起きているッ!?」

オニロ「事情は後で話しますッ!麻痺魔法は解除しましたので起ち上がってくださいッ!」

社長「この会議所荒らす 龍の穴」

操られた兵士たちは、まるでゾンビのようにヨロヨロとアイムたちに近づいていた。

加古川「おーいアイムゥ。残業のない世界は最高だぞォ」

抹茶「そうですよォ。特殊な性癖をもっていても非難されないんですゥ」

埼玉「もう一歩も外へ出なくてもいいたまァ」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

774 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その5:2017/06/25 01:36:23.508 ID:YcJ1wk56o
スリッパ「仲間と戦うのか、冗談がきついな…」

社長「ぼくら かんきんされとるんやで。」

アイム「全員おかしな夢を見ているんだ。だから、ちょっと頭を小突いて目を覚ましてやろうぜッ!」

オニロ「そうだよ。それにボクたちはあの無口さんにも一泡吹かせたんだ。DBがかけた操り如きに負けるボクたちじゃないよ」

アイムとオニロの自信に満ちた鼓舞は社長とスリッパ、そしてサラを目に見えて勇気づけた。事実、数は多くとも操り兵士たちはDBの急ぎかけた術ゆえ不完全で、今のアイムたちの敵ではなかった。
4人の前に操り兵士たちは一人、また一人と意識を失っていくのだった。

DB「バカなァ…」

アイム「ツメが甘いなあ。オレたちは皆の戦いをよく知ってるんだ、弱点もよく知ってるってことだろうが」

アイム「この場に791さんや筍魂<バカ師匠>を呼んでたらどうなってたかわからないが。オレたちほどあの野郎、スタミナ切れてまたどこかで寝てるんだろうな」

オニロ「師匠との修行に比べたら、こんな戦いへっちゃらだよッ!」

スリッパ「二人と戦っていると私まで勇気が湧いてくるな。サラッ!さっさと皆の目を覚ましてやろう!」

社長「いいぞ」

気がつけば、4人の周りには数名の操り兵士がかろうじて立ち向かうばかりになっていた。


775 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その6:2017/06/25 01:38:05.593 ID:YcJ1wk56o
DB「――もういい」

DBが椅子から立ち上がると、操り兵士たちは糸が切れたようにその場に全員倒れた。

アイム「もう降参か?」

オニロ「相変わらず堪え性がないね。だから【避難所の避難所】の忠告も無視し、長いこと会議所に捕えられるのさ」

二人の言葉に耳を一切貸さず、支配者は自分だとばかりの態度でDBは4人に向かい手をたたき賞賛した。

DB「負のオーラの兵士に、自身の希望 ―正のオーラ― を与えて相殺したな。見事な解決法だ、さすがは軍神<アーミーゴッド>」

そこでパタリと叩いていた手を下ろす。


DB「――だが、不完全な貴様が今の俺様に敵うと思うのか?」


瞬間、DBの体の周りを覆っていたどす黒いオーラが、勢い良く四方に放たれた。

スリッパ「ぐあああああああ」

社長「しねばいいんでしょう?」

アイム「くッ!!みんな、しっかりしろッ!!」

オニロ「ダメだアイムッ!身体が言うことを…きかないッ!」

意識を失うほどの刺激臭と腐敗臭が兵士の鼻をつき、一人また一人とその場で崩れ落ちていった。


776 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その7:2017/06/25 01:46:35.606 ID:YcJ1wk56o
スリッパ「も、もうダメだ…二人だけでも先に逃げるんだ」

アイム「そんなこと、できるわけねえだろッ!起き上がって…くっ足が動かねえ」

DB「いい顔になった、俺好みの苦しんでる顔だァ。最後の仕上げだッ」

再びDBがパチンと指を鳴らすと、暗闇の中からぬっと二人の兵士が姿を現した。
それはアイムとオニロの最も会いたくない兵士で、会議所内でも最強に属する兵士だった。

アイム「バカ師匠…!」

オニロ「師匠!」

791と筍魂は顔を伏せながら、怖気づく二人の前までゆらゆらと近づいていった。

DB「ゲハハハハハハッ!愉悦愉悦ゥ!感じるぞォ、追い詰められた貴様らの絶望!恐怖!なんて馳走だァ!」

その場で舌舐めずりをし歓喜に打ち震えるDBと対象的に、アイムとオニロは困惑し自らの師匠から逃げるようにジリジリと後退した。
希望に満ちた状況から一変し、起こり得るはずないと高をくくっていた事実が目の前に突きつけられ、出来すぎなまでのストーリーだった。
791と筍魂に囲まれる形で背中合わせになった二人はただ絶句した。

777 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その8:2017/06/25 01:55:17.597 ID:YcJ1wk56o
DB「あァ…うまい、なんてうまいんだ。これが“負のオーラ”。もう諦めろ軍神<アーミーゴッド>。
いやァ諦めるな。諦める前にもっと、も〜っと絶望しろォ。そして最期に希望を完全に失う瞬間が、俺様にとってメインディッシュとなるのだァ!!!!」

アイム「…ここまでか」

オニロは背中越しに、アイムが戦闘の構えを説いたことを察した。

オニロ「アイム…師匠に楯突くことを気にしているのかい?操られてるんだからノーカンだよ」

アイム「そりゃあテメエらの師弟関係じゃ…そうだな。お前の言うとおりだ。でもな。悔しいことにもう足が動かないんだ…先に言っておく、すまねえオニロ」

無口戦から精神的に溜まっていた疲労も極地に達し、遂にアイムは膝をついた。

オニロ「…次、また同じ弱音を吐いたらアイムでも容赦しないよ」

オニロは手に握る杖に力を込めた。
そしてアイムを護るように、オニロは二人の師匠の前に立ちはだかった。

オニロ「絶対にアイムをここから救い出して、後で笑い話にするんだ。『あの時、もうダメだ〜てアイムはボクに泣きついてきたんだ』てね」

アイム「やめろ、ムダな体力を使うな。お前は直感で行動しすぎだ、もっと考えろ生き残る道を」

オニロ「思い出すんだアイム。ボクたちは“希望の星”だろ?
希望を持つんだアイム。底なしの願いでも、希望を持つことをヤメてしまえば何も生まれないッ!」





(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

778 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その9:2017/06/25 01:59:18.914 ID:YcJ1wk56o
オニロ「!?」

一閃。
アイムとオニロの頬を撫でるように吹いた一陣の風は、数秒の沈黙の後、瞬撃の太刀筋として斬撃音とともに遅れて表れた。
太刀筋の中にいた791と筍魂は衝撃で吹っ飛ばされ、玉座に居たDBも巻き込み壁に叩きつけられた。

??「叶いっこない願い、大いに結構ッ!兵士はただ自身が描いた“夢”に向かい邁進する。それを叶えてあげる手助けとなるのが“希望”。正に底なしの“希望”よ!」

金属と金属が擦れあう音とともに、どこからか攻撃をした兵士は長剣を納刀した。

DB「ぐああああああッ!誰だあ貴様ッ!俺様の負のオーラを食らって動けるはずがないッ!!」

闇の中から現れたその兵士は、いつもの癖でシルクハットのツバに手をかけ不敵な笑みを浮かべた。

??「紹介がおくれたな。俺の名前はコンバット竹内。元・たけのこ軍兵士で、きのたけ“最後の希望”だ」


779 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/06/25 02:02:17.941 ID:YcJ1wk56o
サンキュー真打
そして>>547につながる。

780 名前:社長:2017/06/25 02:04:17.712 ID:zs9yol3k0
ジジイ(?)キャラがかっこいいところを見せる展開いいぞ。

781 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/06/25 02:05:54.972 ID:YcJ1wk56o
ミス
>>778
俺⇒ワシ だったわんわんワシわん

782 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/18 12:32:13.487 ID:4fe4A8w20
小ネタこーなー

・【大戦年表編纂室】 その2
超高度魔法『メルティカース』により、大戦世界から隔離された部屋。wiki図書館のはるか地下階層に存在し、外部からの歴史改変を受けない。
術者は無口兵士だが、無口自身はK.N.C47年に消失しているため、いまなお術者無しに自律的に編纂室は動き続けている。
部屋の中に誰かいる限りは、正史と改変後の歴史を知覚できるが、ひとたび全員が外界に出てしまうと歴史がいつ変わったのかわからなくなる。
そのため、DB騒動時には常に編纂室に人を立てなければならないという苦肉の策を取っていた(集計班、オニロ)


・【避難所の避難所】
大戦世界のどこかにあるといわれる、会議所とは別の運営詰め所。
会議所が大戦運営に従事しているのに対し、避難所の避難所は大戦世界全体を監視している。
昔は地上のどこかにあったが、無口兵士の気まぐれによりいつからか空中要塞となった。秘密結社的イメージ。
存在を知る者は極僅かで、メンバーとなっている者はいずれも地上からは消失してしまった者がほとんどを占める。集計班は地上にいる兵士でその存在を知る数少ない兵士だった。
DB、軍神といった現人神もかつては所属メンバーだったがいずれも物語開始時には既に追放されている。

・【神】
最初期の大戦世界の兵士たちが創造し、いつの間にか忘れ去られてしまった存在。
超常的な現象や人知を超えた事態に対し、兵士たちが縋り付くための存在として生み出され担ぎ上げられた。
最盛期には数百もの神が大戦世界に点在したと言われるが、物語開始時にはほぼ全ての神が忘れ去られ消失してしまっている。人々の活力、情熱が年を経るにしたがって失われていき、信仰が薄れていったためである。
高い信仰心や多くの兵士の関心を集める神は偶像崇拝等を経て具現化することがある。軍神や恥辱の神 DBが代表例。
大戦への情熱も失われていった結果、いつからか階級制には【軍神】階級が消えてしまっていた。


近いうちに更新しまーす。




783 名前:791:2017/09/18 13:49:08.743 ID:DOH3S10ko
>>782
乙!
こういう設定読むの好き

更新楽しみ!

784 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その1:2017/09/20 00:42:36.912 ID:6O1.YhIko
【K.N.C180年 会議所地下 大戦開発室】

アイム「爺さん…あんたなのか?」

竹内「ハハッ。年寄りもたまには身体を動かさねばな。ボケてしまう」

刀の切っ先に付いたチョコを軽快に払うその姿は、K.N.C28年での青年竹内を彷彿とさせる軽快さだった。

DB「貴様らァ、俺様を無視するなッ!どうして“負のオーラ”を浴びながら、平然と立っていられるッ!」

竹内「負だかふ菓子だか知らんが、ワシはただ後進の兵士のために、この老体に鞭打つだけよ」

喋りながらも、竹内は襲いかかってきた筍魂と791を難なく一振りで斬り伏せた。
地面に倒れた二人は、沸騰音を出しながら劇薬が蒸発したかのように消えてしまった。
アイムとオニロはそこで初めて、二人の師匠がDBの創り出した幻影だったと気がついた。

DB「俺様の力を使って創り出した“分身”がァ…これでまた、“負のオーラ”を集めなくてはいけなくなったァ」

二人の幻影の後からゆらゆらと上空へ向かう暗紅色の霧を見て、DBはそれを目で追いながら悲しげにつぶやいた。
その霧が“負のオーラ”そのものであることは明らかで、元々のDBの身体に戻らず霧散してしまっては弱体化してしまうのだ。
だがDBは続いてアイムとオニロをじろりと睨んだ。

DB「ちょうどいたなァ。“希望”を身にまとった、正義の味方サマがよォ」


785 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その2:2017/09/20 00:42:55.756 ID:6O1.YhIko
オニロ「くっ…竹内さん下がってください。かくなる上は、私が師匠から教わった“秘技”で…」

衰えても未だDBが強大な力を有しているのは、軍神<アーミーゴッド>の力を有すオニロには痛いほど理解できた。
通常の兵士が立ち向かえる強さでない。まるで地球が宇宙に挑むようなもので、竹内の一撃は暖簾に腕押しのようにオニロには思えた。

竹内「敵もろとも自爆するとでも?バカを言うな、老人を残して若い兵士(もの)が死んだら顔向けできんだろ――」

竹内「――古い友人にな」

竹内はハッと独り気を吐き、目にも留まらぬ速さで跳んだ。流れるような所作に一瞬呆気に取られたDBだったが、すぐに竹内へ臭い息を吐き出したのは歴戦の兵士としての第六感がそうさせたのだ。
しかし、通常の兵士なら気を失う上に吹き飛ばされる威力の噴流も、いともたやすく竹内は袈裟斬りで払い、肩を突き出しながらDBに突進した。
竹内ごと再び壁に叩きつけられたDBは、苦悶の表情を浮かべ口からチョコの代わりに暗紅色の霧を吐出した。

DBは困惑していた。軍神<アーミーゴッド>以外にまともに攻撃の通る相手など、想像もしていなかったためだ。
その後も竹内の攻撃の手は緩むことなく、自ら溜め込んでいる“負のオーラ”を吐き出していることも気づかず、DBは防戦一方になっていた。


786 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その3:2017/09/20 00:50:59.342 ID:6O1.YhIko
オニロ「すごい。竹内さんの動きはいつもとは別人だ。それに若返っているような気が…」

アイム「DBの元である“負のオーラ”を直に浴びて立っていられる兵士はいないと思っていたが…竹内さんは例外中の例外というわけか。シューさんも呼び戻したわけだ」

竹内は初代DB討伐隊隊長 黒砂糖の後を次いで、長年に渡りDBを追い続けてきた第一線級兵士である。
DBと事あるごとに対峙する度、竹内の身体は変化を帯びてきた。その結果、通常では数秒も経たないうちに事切れてしまうDBの臭気に対する耐性ができてしまった。
陰陽師が異変を解決せんがために悪鬼に近づきすぎたがゆえに、結局は怪異と同等の存在になってしまった例と同じである。
参謀は竹内のことを“最後の希望”と紹介した。図らずとも、”希望の星”であるアイムとオニロが砕け散る寸前になった今、DBに立ち向かえる兵士は“最後の希望”しかいなかった。

竹内「どうしたDB!昔を思い出すなッ!また吊るし上げられたいか?あぁ!?」

DB「はァはァ…貴様はいつも俺様の邪魔ばかりしやがる。折角、俺様の手で憎っくき“玩具”を潰せると思っていたところにィ!またしても、またしてもォ!!」

竹内に足蹴にされうつ伏せに倒れたDBは、アイムとオニロを地面から睨み上げ、拳を強く握りしめた。


787 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/20 00:55:07.263 ID:6O1.YhIko
とりあえず眠いのでここまで。またすぐ更新します。
当初、竹内さんはDBの臭気にあてられると若返る設定にしていました。だけど、ダンディおじいちゃん兵士の活躍かっこいいなあてユリガミss見て思ったので変更しますた。
791さんと筍魂さんは操られてませんでした、よかったよかった。

788 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その4:2017/09/23 19:30:20.816 ID:vbUhPLDko
オニロ「竹内さんッ!そいつは危険な存在ですッ!今この場で処断しないと後々どんな大災害を引き起こすかわかりませんッ!」

竹内「わかっておる。おいDB、昔を思い出すな。昔は黒砂糖さんがお前を抑えつけた。その後、ワシだけがお前を長年追い続けた。ずっとだ。そのカシをいま返してやる」

DB「転がしてやる。転がしてやる。転がしてやる。転がしてやる」

DBの怨嗟を含んだ繰り返される独り言に、オニロとアイムは背筋がゾッとした。竹内に身体を抑えつけられながら、二人を見つめるDBの目は諦めの色を見せるどころか、異様なまでにギラついていたからだ。
恨み、怒り、快楽、様々な要素を包括した歪んだ生命力を彷彿とさせる色をその眼は見せていた。

オニロ「竹内さん、はやくッ!」

DB「遅いッ!」

オニロの叫び声と同時に、DBは握りしめていた拳の中の砂を背中越しの竹内に向かって開き投げつけた。竹内が一瞬怯んだスキを、DBは逃さなかった。


789 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その4:2017/09/23 19:33:16.199 ID:vbUhPLDko
DB「ゲゲゲッゲハハハハハハッ」

短時間で吐き出したDBの息は瞬く間に紫煙の煙幕となり、部屋全体を妙な色で包みこんだ。

アイム「しまったッ!奴は出口から外に出る気だッ!オニロ、竹内さんを援護するんだッ!」

オニロ「わかってるよッ!『キシリフレッシュ』!これで煙幕が晴れますッ!」

竹内「くッ、ワシとしたことがッ!」

煙幕により方向感覚を失う中、退路を断つために部屋の唯一の出口へ向かったオニロと竹内の前に、倒れていたはずの兵士たち<操り人形>が対峙した。

オニロ「こんな時にDBの野郎、ボクたちの仲間を使って許さないッ!竹内さん、離れていてくださいッ!『アポロソーラ・レイ』!」

オニロの杖先から閃光が発せられ、放たれた熱光線が兵士たちを貫いた。兵士たちは身体から暗紅色の煙霧を出しながら倒れていった。

竹内「DBはッ!」

気絶した兵士たちを跨ぎながら、二人は外に出たがDBの姿は既になかった。
兵士たちが足止めをしている間に、まんまとDBは会議所を脱出してしまったのだった。

790 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その6:2017/09/23 19:44:24.859 ID:vbUhPLDko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

その後の捜索でも結局DBは見つからず、オニロと竹内は負傷していたアイムに加え、倒れていた会議所兵士たちを集め、編纂室へ連れて行った。
殆どの会議所兵士たちが集結した編纂室は、未だにアイムを含む数名の兵士の手当が行われており、さながら野戦病院のような体をなしていた。

someone「ごごめんなさいッ!みんなにプッカライトニングを射つだなんてどうかしていた…」

アイム「someoneさんの責任じゃない。みんなDBに操られていただけさ」

someoneとジンはお詫びとばかりに、簡易ベッドの上で横になっているアイムに回復魔法を乱発している。

¢「うぅ…DBが会議所であやっていたなんて」

加古川「会議所に帰ってきてから記憶がない…不覚だ」

操られていた兵士たちはすぐに意識を取り戻した。外傷のある兵士たちも、オニロたちに気絶させられた際にできたものであり程度はすぐ済むものだった。
しかし、全員が復帰できたわけではなかった。

抹茶「黒砂糖さんと一緒に警護任務に就いていたはずなのに、いつの間にか気絶していたんです…多分、時限の境界近くにDBが潜んでいて連れて行ってしまったんだ…」

操られていた兵士の中で、唯一黒砂糖の姿が消えていた。DBの人質として連れ去られたのではないか、という見方が大勢だった。
抹茶は同僚の危機に、顔を緑ざめている。

791 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その7:2017/09/23 19:46:43.322 ID:vbUhPLDko
参謀「DBはどこに逃げたと思う。大方の予想では時限の境界だと思うが」

参謀の問いに、スリッパが唸った。

スリッパ「その可能性もある。ただ、奴とスクリプトの目論見<歴史改変による負のオーラ集め>が看破された今、再び同じ作戦を取るとも考えにくい」

アイム「同感だ。オレなら敢えてこの時代に潜伏して、会議所乗っ取りの機会を再び狙うな」

791「なるほどね。DBの狙いはあくまで現代<この時代>の支配。無闇に過去の時代へ跳ぶのはDBにもリスクが高いね」

編纂室の入口から、話を聞いていた791は筍魂を担ぎながら会議に参加した。

オニロ「師匠!お身体は大丈夫なんですか」

791「まだ完全には程遠いな。とりあえずクリームソーダを常時補給してるわ」

791は米俵のように筍魂をその辺りに放り、仕事終わりの一杯とばかりにソーダ缶を手に取った。

筍魂「おお、我が弟子よ…なんと情けない姿だ」

アイム「お前ほどじゃねえよ、まず自分の足で歩け」

筍魂はスタミナ切れで中庭にて一歩も動けなくなっていたところを、791に拾われていた。


792 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その8:2017/09/23 19:49:33.018 ID:vbUhPLDko
参謀「話は戻るが、DBは人里に紛れ込んでいる可能性があるということか…黒ちゃんの安否も心配や。誰か里に見張りを立てておきたいが…」

山本「俺とゴダンさんが行こう。ゴダンさんがきのこの山、俺がたけのこの里を見張っておく。危険を感じたらすぐに戻るさ。おっぱい神の加護があらんことを!」

山本はゴダンを引き連れ、いの一番に立ち上がった。外に出る前に、十字架をきる要領でオッパイの輪郭をなぞるように手で線を引くと、さっそうと外に出ていった。
一陣の風のように去っていった山本たちを見て、加古川はポツリと不安を口にした。

加古川「もっさんが一番、DBの洗脳を受けやすい体質に思えてならないんだが」

ビギナー「どうにかなるっしょ」


793 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その9:2017/09/23 19:51:44.581 ID:vbUhPLDko
参謀「さて、DBが捕まるのも時間の問題や。その前に一つハッキリさせておきたいことがある――」

参謀は一度言葉を切り、オニロとアイムに人差し指を突き指した。

参謀「――お前らの記憶についてだ。おそらく、その落ち着き様を見ると、二人とも思いだしたんやな」

アイムとオニロは同時に頷く。

アイム「オレの記憶は、大戦の歴史に直結する――」

オニロ「ボクの記憶は、DB騒動の根幹に繋がる――」

加古川「話してくれ、お前たちが知っていることを」

¢「うぅ怖いんよ。でも、僕たちは知らなければならない」

抹茶「少しでもDB討伐の手がかりになるなら、僥倖です」

アイムとオニロは静かに皆に向かって頷き、同時に黙りこくったままでいる一人の兵士を見つめた。

アイム「オレたちが何者であるかを明かす前に。一人の兵士から今回の真相を話してもらいたい。
一連の騒動がどのように引き起こされたか、そろそろみんなで共有してもいい時だ」

オニロ「前にも言いましたよね。もう話す時じゃないですか――」

オニロ「――社長」

全員の視線は、部屋の端で俯向いたままの社長に集中した。


794 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その10:2017/09/23 19:55:29.822 ID:vbUhPLDko
社長「…」

アイム「オレは――いや“オレたち”は全てを思い出した。オレたちが話してもいいが、それは完全じゃない。
今回の騒動の主役は、おそらく“あんたたち”だろう」

オニロ「怖いのはわかります。ですが、社長の口から説明するべきだと思うんです。貴方の働きを闇に葬り去ることは、“彼”の頑張りを無下にすることと同じ。そうじゃないですか?」

社長「…」

なおも社長は無言を貫いていたが、チラッと一瞬横にあるロッキングチェアを見つめた。
在りし日に持ち主が好んで使っていたロッキングチェアは、今の主人不在の事態をどう見ているだろう。

オニロ「もし“彼”と同じ結末を辿ることに恐怖を感じているのであれば、安心してください。“ボクたち”が全力で貴方を守ると誓いましょう」

アイム「既に【裁き】とやらは終わった。ここはあくまで地上の【大戦世界】であり、【避難所の避難所】ではない。一地上の兵士が【天上世界】の奴らに、何を配慮することがある?」

全員が息を呑んで社長と二人を見つめている。

795 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その11:2017/09/23 20:03:35.704 ID:vbUhPLDko
社長「だけど、私のせいであの人は――」

オニロ「誰も悪くないんです。ボクもアイムも、みんなも、さらにいえばDBも。みんな【決められた通り】に動いていただけ」

アイム「それを正そうとしていたあんたたちの判断は間違っていなかった。結果として、混乱を招いたとしても――」

オニロ「――あなたの“責任”じゃない」

━━
━━━━

「計画は順調です。ですが…たとえ、順調に立ち回らなかったとしても、
それはあなたの“責任”じゃない。
私が保証します。
なにか問題が発生した時。慌てないことです。
私に頼ろうとせず、まずは自分で事態の本質を見極めることです」

━━━━
━━

社長はハッとしたように二人に向かい顔を上げた。オニロの言葉に唐突に記憶がフラッシュバックしのただ。
最後に同じ編纂室で彼と会話を交わした時、たしかに彼は“見極めろ”と社長にそう告げた。今まで誰かを頼りながら生きてきた社長にとって容易ではなかった。
しかし、忠実にその言葉を守り動いてきた。マラソンランナーのように、周りを振り返らず彼が消えてからは突っ走ってきたのだ。

―― もう、話してもいいのかもしれない。

走ることを止めたランナーは、周りを見渡してみると多くの仲間が心配していることに気がついた。
頼ってもいいのだろうか。居もしない兵士に決断を縋るように、社長は不安げに再びロッキングチェアを見た。
不安げな社長を笑うように、チェアはゆらゆらと愉快げに揺れている気がした。妙な安心感を覚え、社長は遂に決心した。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

796 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/23 20:06:01.769 ID:vbUhPLDko
ここにきてようやく言えますが、この物語のキーマンは社長です。実はまだもうふたりいますが、それはまた今度。

797 名前:社長:2017/09/24 02:14:55.088 ID:GBvzXfaY0
どのシーンで竹内さんの設定が変わったんだろう?更新乙

798 名前:791:2017/09/24 10:50:27.566 ID:rW0AVfB2o
更新乙
おお、いよいよ社長の話が聞ける
気になる

799 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その1:2017/10/01 01:35:31.285 ID:o
初めて社長が大戦に参加したのはK.N.C2年だった。

スリッパ『突き進む!突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

多くの兵士が試行錯誤していた時期、銃の使い方さえ覚束ないような兵士たちの戦いの中で、スリッパの一挙手一投足は一際輝いていた。
追い詰められたきのこ軍兵士を大量撃破で鮮やかに終戦させた英雄スリッパの一連の行動は、多くの兵士にその掛け声とともに強烈な印象を残した。
一時はスリッパによる英雄ブームが巻き起こり、不安定な大戦の恒久的な継続を決定づけた。目の前で英雄の活躍を見ていた若き社長も、彼に刺激と感銘を受けた兵士の一人だった。

社長「あの時は感動した…」

感慨深げに語る社長と罰が悪そうに押し黙っているスリッパの姿が、アイムには対称的に映った。


800 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その1:2017/10/01 01:36:07.628 ID:o
>>799
訂正
スリッパ『突き進む!突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

スリッパ『突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

801 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その2:2017/10/01 01:40:18.614 ID:o
以来、社長は最古参兵として会議所設立からK.N.C180年まで一部の期間を除きずっと大戦に関わってきた。
会議所に留まる最古参兵士はK.N.C180年時点で4人しかいなかった。知の参謀、発の¢、静の集計班、そしてバグの社長の4人である。
社長は本来大戦の重鎮として会議所を突き動かす兵士になるはずだった。

アイム「社長は重鎮っていう感じでもないだろう」

オニロ「こ、こらアイム。失礼なことを…」

アイムの率直な意見に、そうだな、と社長は素直に認めた。
ある時を境に社長は会議で意見を出さなくなった。否、意見を出すことができなくなった。

社長「あの日、あの時から私の運命は変わったのだ」

全員が、言葉を発さずに社長の説明を聞いている。
その奇異に満ちた行動から社長は“バグ兵士”としてばかりクローズアップされ、会議所設立の中心メンバーであることを理解している兵士はほんの一握りだった。
会議所の生き字引だった兵士が、いつから色物兵士へと転換したのか。そもそもなぜ転換したのか。



きっかけは、一つの【お告げ】だった。



802 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その3:2017/10/01 01:57:18.772 ID:o
社長「【お告げ】があった。ある日突然、百合神様から…」

社長は兼ねてより【百合神】という創造神に縋っていた。多くの兵士は社長のバグ発言の一環だろうと取り合っていなかったが、アイムたちの前で語る社長の顔は常に真剣そのものだった。
この場で再びその神の名前が出て突拍子のなさに全員が驚いたが、社長は構わず続きを話し続けた。

ある日、社長の夢の中で現れた【百合神】は、“大戦世界に関する秘密”を社長に語ったのだという。

―― 大戦世界には【避難所の避難所】という別の運営拠点がある。その観測所には過去にいなくなった重鎮兵士たちが集い、秘密裏に大戦を操っている。
―― そして、全ての過去現在未来の歴史は【預言書】と呼ばれる古ぼけた本の通りにするべく暗躍している。そのためなら、たけのこが不利に負けようが、きのこが惨めに負けようが構わない。

初めは社長も驚いたが、【百合神】の真剣な口調のトーンに圧倒されつつも、最終的には信じざるを得なかった。
始祖まいう、図書館館長の無口、きのこ軍のエースアルカリ。気がつけば大戦世界創世記にいた兵士たちは姿を消してしまい、誰しも口には出さずともそこに奇妙な違和感を持っていた。
もし彼女の話の通りそうした兵士たちが本当は【避難所の避難所】に移り、世界を監視しているとしたら空恐ろしいと社長は感じた。
亡者が実は生きていたという感動よりも、大戦世界に巣食う暗部を垣間見た気がして、今までの日常が保てなくなってしまうのではないかという恐怖がはるかに上回っていたのである。

朝目が覚めると、彼は真っ先に集計班に相談した。
会議所に係る問題は、当時から会議を束ねていた彼に相談するのが全兵士の暗黙の了解となっていた。
集計班ならば親身に相談に乗ってくれるだろう、もしくは突拍子もない話を笑い飛ばしてくれるのではないか。
どちらでもよいという思いを持って、社長は図書館に駆け込んだ。自身の気持ちを他者へ共有したかっただけなのだ。


社長の希望は、直後にコナゴナに粉砕されることになった。

803 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その4:2017/10/01 02:11:36.835 ID:o
静かに社長のトンデモ話を聞いていた集計班は、社長が話し終わると長い間考え込んでいたが、その後静かに問いかけた。

集計班「どこで、その話を?」

社長「いや、だから【百合神】様が――」

思わず社長は二の句が継げなくなった。集計班の明らかな異常な睨みに、社長の身体は硬直した。蛇に睨まれた蛙とは正に今の自身だと直感した。
乱暴なまでに野性的に濁った紅の瞳を向けられた社長は、そこで初めて集計班も件の観測所のメンバーなのだと悟った。

集計班が嘆息し椅子から立ち上がっても、社長は集計班から視線を外すことさえできず、自らの生命がここで尽きるのではないかと怯えていた。
彼はずいっと社長に向かい顔を突き出した。いつもの穏やかな表情を殺し無表情を顔にはりつけ、次のように語った。

集計班「あなたは【知る必要のない】情報を手に入れてしまった。いや、この際どうやって手に入れたかは重要ではないのです。ただ、貴方はもう逃げられません。
生きるか無くなるかなんて陳腐な選択肢も用意しません。貴方には事の最後まで付き合ってもらおう」

集計班の口調はあくまで冷徹で事務的だった。
見えない刃を首に突きつけられたかのように怯えていた社長だったが、気力を振り絞り微かに首を縦に一度振り微かに応えた。


804 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その5:2017/10/01 02:22:11.163 ID:o
『バグトラダムスの預言書』

大戦世界が一つの古ぼけた預言書通りに進められていると話され、誰が信じるだろうか。
その預言書にはK.N.C1年から遙か先の未来までの歴史が事細かに書かれているのだという。
識者はその預言書に従い、【避難所の避難所】を造り、混迷に満ちていた世界を預言書通りに修正するように務めるようにした。
預言書に従えば、遙か先でも大戦の継続は保証され、大戦世界は反映し続けるからである。

集計班「私は【避難所の避難所】から、大戦世界が預言書に書いている通り、“世界にとって”正しい方向に進むように監視役を申し付けられています。
関係者曰く『バグトラダムスの預言書』には大戦世界を良くするための未来が全て書かれているとか」

集計班曰く監視の役目はトップシークレットであり、大戦世界では本人以外に誰も知らないという。
なぜ、『バグトラダムスの預言書』に大戦世界の過去、現在、未来が全て予言されているのか。誰が書いた書なのか当時も今も社長にもわからない。
ただ、はた迷惑な物があったものだ、と当時の社長は自分の置かれた立場を置いてそう感じた。

通常であれば正体を知られた時点で始末しないといけませんが――と、集計班は前置きした上で、次のように語った。

集計班「貴方の命運は私が握りました。ちょうどいい、一人じゃ“仕事”が回らなかったんです。今後は、私のお手伝いをしてもらいましょう」

最悪を超える未来が社長の脳裏に浮かんだ。希望から絶望への突き落としに思わず乾いた嗤いが出てしまいそうになるのを集計班に覚られないように口を抑えた。
いっそこの時点で狂ってでもしまえば楽になれたのかもしれない。しかし、最も信頼していた兵士に目の前で裏切られてもなお、社長は現実を直視し運命に身を委ねた。
この場で狂人になれるほど弱い兵士ではなかったのである。


805 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/01 02:23:16.306 ID:o
ひとまずここまで。
本物の社長はしっかり重鎮兵士なのでご安心を。バグトラダムスの預言書、一冊ください!

806 名前:社長:2017/10/01 12:56:12.417 ID:0
ついに終盤へ・・・


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