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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

738 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その9:2017/01/09 02:03:14.016 ID:Lh4qoWnwo
竹内「すまんのう。ワシはおしっこ行ってくる」

会議所に着いたと同時に、竹内はフラフラとした様子でどこかへ行ってしまった。
その竹内に誰も言葉をかけない辺り、今回の時間旅行で何度同じ場面があったか想像するに難くない。

アイム「しかし、やけに静かだな…」

会議所の受付は昼間だというのに明かりが消えている。ただでさえ古びた受付が薄暗く肝試しに出てきそうな程に寂れて見えてしまっている。
静寂を通り越し生気がないのだ。そして、どこからか立ち込めている生臭い臭いが、先程からアイムたちの鼻をついていた。

加古川「おかえりィ」

ぬっと暗闇の中から出てきた加古川が、満面の笑みでオニロたちを出迎えた。

オニロ「加古川さん、戻っていたんですねッ!DBはまだ襲撃していませんかッ!」

オニロは不思議な違和感を覚えた。
いつもくたびれたような面持ちで皆を迎えていた加古川が、今日はやけに張り切っているように見えたからである。
そして、その目はどこか焦点があっていなかった。

加古川「予想より時間がかかったなァ。拘束ゥ」

オニロ「何を言って――」

なにか様子がおかしい。オニロたちが疑問を抱くよりも前に、加古川の命令はくだされた。
柱の陰に隠れていたsomeoneの放った麻痺魔法は、アイムたちに悲鳴を上げる暇すら与えず、身体の自由を奪った。
全員の身体は硬直し、直立したアイムたちはその場に倒れ伏した。


739 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その10:2017/01/09 02:06:55.435 ID:Lh4qoWnwo
someone「ヒュー。プッカライトニングが決まると気持ちいいなァ。拘束完了ゥ」

同じく身を潜めていた抹茶も姿を現し、倒れる一行を面白そうに眺めていた。

抹茶「おやァ。一人、兵士が足りないようですがァ」

黒砂糖「あの老人は放っておけェ。単体では何もできんよォ」

アイム「ッ!!」

somoneの麻痺魔法を少しでも破ろうと、必至の努力で顔だけ上げたアイムは、正面から現れた黒砂糖と目があった。
暗闇と同化するほどに真黒な祭服を着込んだ黒砂糖は、驚愕にまみれたアイムたちの顔を一瞥すると、口角をつりあげニタニタと笑いだした。
その笑い方は、まるでアイムたちが追っていた宿敵そのもので――

黒砂糖「それでは“あの方”の下にこいつらをお連れしろォ。
お前たちの帰りを今か今かと待っておられたのだ、【その身】で非礼を詫びるんだぞォ」


740 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2017/01/09 02:07:56.801 ID:Lh4qoWnwo
長かった第三章。次回最終。遂に物語はクライマックス第四章へ。
そして明かされるアイムとオニロの秘密、そして集計班の協力者。

741 名前:社長:2017/01/09 02:09:17.373 ID:c.vMjwHo0
更新乙。やばいよやばいよ・・・

742 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2017/01/09 02:26:01.235 ID:Lh4qoWnwo
第四章は第三章ほど文量はない(予定)ので、サクサクっといくぜ!

743 名前:791:2017/01/09 02:27:50.189 ID:abst9aJ20
ふおおお!
一体何が!?
続きを楽しみにしてます

744 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その1:2017/03/27 01:08:15.092 ID:JxG3Or5ko
【K.N.C180年 会議所地下 大戦開発室】

身動きの取れないアイムたちに縄をくくりつけ、黒砂糖は大廊下の端からのびる階段で地下へと下り始めた。
アイムにはその薄汚れた階段の入り口に見覚えがあった。
会議所に来たばかりのアイムが、埼玉と抹茶に案内を受けていた際に見つけた隠し階段と同一のものだったのだ。

誰かに抱えられながらアイムたちは階段を下っていった。アイムたちは身体を動かすことができないため、知る由もない。
階段はすぐに途切れた。大戦年表編纂室のように構造自体に魔法が施されているわけでもなく、そこには純粋な地下室が用意されているようだった。

着くやいなや、アイムたちは部屋に投げ出された。打ち身を気にする暇もなく、アイムたちの鼻を腐敗臭が襲った。
生臭さとも刺激臭とも取れる独特の臭いに、アイムとオニロは覚えがあった。

オニロ「お前は…DBッ!」

DB「おや久しぶりだねェ“君ィ”」

まるで玉座と言わんばかりに目の前で椅子に座りふんぞり返るDBを、アイムとオニロたちは苦々しそうな表情で見上げた。

745 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その2:2017/03/27 01:10:52.698 ID:JxG3Or5ko
漆黒の司祭服を羽織った黒砂糖は、当然のようにDBの横に付いた。
その左右にもオニロたちの見知った会議所兵士たちが、DBに忠誠を誓うかのように整然と並んでいる。
先刻までオニロやアイムと額を寄せ合い話し合い、DB討伐のために立ち上がった兵士たちだ。
DBの異臭に気にも留めず皆一様に下品な笑みを浮かべる兵士たちの姿は、彼らがDBの魔の手に落ちたことを瞬時に確信させた。

アイム「おかしいな。オレたちはDB討伐に湧くK.N.C180年に戻ってきたはずだが、こいつはどういう理由かな」

スリッパ「抹茶、黒砂糖、山本。目を覚ませッ!目の前にDBがいるんだぞッ!」

つい先刻まで同胞だった会議所兵士たちが、明確な敵意を以て相対す姿はスリッパたちにとって混乱よりも寧ろ畏怖を招いた。

抹茶「スリッパさん。まだそんな馬鹿げた事を言っているんですかァ」

加古川「俺たちは間違っていた。DB様の素晴らしさに触れェ、DB様の支配を助けようと思い直したんだよォ」

山本「アイムゥ。はやくお前も“こっち”に来いよォ。さもなければ…な?」

焦点が合わず人形のように歯をカタカタと鳴らしながら喋る兵士たちに、思わずアイムは見ていられないとばかりに目を逸らした。

オニロ「強力な洗脳魔法がかけられている…歴戦の兵士でも逃れられない」

しかしオニロはその言葉とは裏腹に一つの希望を持っていた。オニロたちの前に並ぶ兵士たちの中に、師匠791の姿が無い。
791は今もまだ編纂室で健在か、もしくは人知れず交戦の機会を探っているのではないか。オニロは791の強さを誰よりも肌で感じ絶大な信頼感を持っていた。

746 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その3:2017/03/27 01:12:46.189 ID:JxG3Or5ko
DB「その通りィ。兵士の“希望-心の本-”を喰らい今の俺様はなんだってできる。洗脳、破壊、支配――そう、あの大魔法使いですら今の俺様にとっては敵ではない」

オニロ「ッ!!まさか、師匠をッ!」

DBは溜息を一つついたのち、オニロの様子を見て鼻で笑った。
足を挫いてもなお悪足掻きをする獲物に憐憫の情を抱く肉食動物のように、DBは落ち着いていた。

DB「大戦年表編纂室――貴様らも考えたものだなァ。道理で、俺様とスクリプトの動きが読まれるわけだ。お陰で俺様の考えは看破され壊滅一歩手前だったァ」

DB「お前の師匠、大魔法使い791といったか。かなりの強者だったァ、かつての討伐戦の後に来た人材でェ俺様もデータはなかった。
ナメてかかれば今ここには居なかっただろう…だが幸いなことに俺様には優秀な片腕がいてなァ」

黒砂糖「大魔法使い791が強力魔法を使うゆえ、魔力消費が他の兵士より早いことをお伝えしたのだ」

――魔力切れを誘発し、一先ず早く寝てもらったわ。

黒砂糖はDBの賞賛に感銘を受けたように深々と頭を下げた。

社長「黒ちゃん…あんたって人は」

オニロ「ふ、ふざけるなッ!!!師匠の優しさに漬け込み、あなたはッ!!!信じていたんだぞッ!それを、それを踏みにじるように…」


747 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その4:2017/03/27 01:13:48.554 ID:JxG3Or5ko
アイム「抑えろ。黒砂糖さんも洗脳されているだけだ。寧ろ、791さんがこの場に居ないことは救いだ。オレたちはまだ運に見放されたわけじゃない」

激昂しかかる社長とオニロをアイムは冷静に諭した。DBはその様子が気に食わなかった。

DB「今の状況を理解しているのかァ?お前たち以外の討伐隊員は全て俺様のォ支配下に入った。そしてお前たちはまな板の上の鯉だァ。
俺様が一度、ふっと口から息を吐けばァ洗脳されるんだぞォ」

アイム「見かけ上はそうかもしれない。ただ、オレたちを操り人形にできたとしても、それからどうだ?
いつ切れるかわからない洗脳を頼りに怯えながら砂上の楼閣の王として暮らすか?本当の兵士の心までをお前は掴めない」

オニロ「掴めるはずがないよ、お前はボクたちを使って人形遊びをしているだけだから。そんなまやかしの世界を手に入れて、お前は何が楽しいんだ?」

途端、DBは椅子を転がすほどに勢い良く立ち上がり激昂した。


748 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その5:2017/03/27 01:17:00.762 ID:JxG3Or5ko
DB「貴様らに何がわかるッ!!兵士の士気高揚のためだけに生み出され、討伐、そして幽閉。
たまに大戦への参加意欲が下がると外に出されまた討伐される。
俺様は貴様らの欲望の捌け口として生まれてきた、見世物小屋の動物みたいなものなのだ。
檻の中の動物が、唾を吐く見物人に牙を剥いて、何が悪いと言うのかッ!!!」

一気にまくし立てたDBは肩で呼吸をするように荒々しく息を吐いた。

アイム「それでお前は――」

オニロ「――【満足】できたのか?」


              ――それでお前は満足できるのかい?

DBの脳裏には、いつか誰かから発せられた同じ言葉が蘇った。

DB「【同じ】だ、あの時と…貴様らは、否。“貴様”はまたも俺様を愚弄するのか…」

アイムとオニロの一言に、DBはよろめきながらブツブツと独り言を呟いた。

DB「貴様は…そうして“希望”を振りまき…俺様をまた闇へと追いやろうと…」

部屋の奥にある巨大な空調機のような機械から出る忙しない光が、広々とした部屋を薄ぼんやりと照らしていた。

オニロ「ねえ社長。どうしてDBはあんな狼狽えているの?」

社長「…さあ、ワシにはさっぱり。」

未だ麻痺魔法で身動きの取れないオニロたちだったが、目の前のDBから放出される目に見えない“自信”は、オニロたちに希望を与えた。
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749 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その6:2017/03/27 01:19:26.954 ID:JxG3Or5ko
DB「貴様ァ。ここがァどこかわかるか?」

アイム「さあな、初めて来た」

DB「嘘だァ、前にも俺様と一緒にここに来ただろうゥ?」

誰に向けられた話しなのかわからず、またDBの自信に満ちた返答に、一瞬アイムは困惑し言葉に詰まった。

アイム「気でも触れたか?オレとお前が一緒に行動なんてするわけないだろ」

DB「いやァ。確かに、“貴様”はあの時俺様とこうして対面していた」

アイムは違和感を覚えた。先程からDBと会話しているはずなのに、DBが自分に向けて話していると思いにくいのだ。
どこか会話がすれ違う。

アイム「だから違うと言っているだろッ遂に頭まで腐っちまったか」

DB「もう少し、足りない部分を使ってみれば“貴様”も思い出すはずだ」

アイムは困惑したようにオニロに助けの視線を送った。

オニロ「おい化物ッ。アイムは違うと言っているんだ、独りよがりはやめろ」

DB「“貴様”の答えをまだ完全に聞いていない。教えてくれ」

オニロ「ボクにきいているのか?それならば、アイムと同じだ。お前と一緒だったことなど無い」

アイムは違和感の正体に気がついた。DBは二人と話をする時に、決してアイムとオニロに視線を合わさないのだ。
必ず二人の間にある何もない空虚な空間を見て話す。ただ虚ろな視線を送っているのか。
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750 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その7:2017/03/27 01:21:03.521 ID:JxG3Or5ko
DB「ここは俺様が生み出された始まりの地でもあり、“貴様”の終わりの地でもあるゥ」

DBの背後で、¢の開発した【圧縮装置】から漏れ出した光がDBを照らしていた。

アイム「貴様、貴様とさっきからお前はオレとオニロのどちらに話しかけているんだ?」

いい加減にアイムは痺れを切らした。オニロも続いた。

オニロ「混乱させようとしてもそうはいかないぞッ」

DBは初めて口角を釣り上げ嘲笑した。

DB「何を言っているんだ。俺様は最初から“貴様”と会話していたぞォ」

アイム「だから、それがどちらだと――」

DB「思い出さないかァ?」

DBの一言に、アイムは口を開けたまま一瞬静止した。
オニロも何かを考え込むように、辺りを見回す。

先ほど見覚えのなかったはずの風景。

そこに。アイムとオニロの頭のなかに、同時に【例の夢】の光景が流れてきた。


751 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その8:2017/03/27 01:22:48.289 ID:JxG3Or5ko
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「…かった。…長年…ついに……やっと……」
―― 囁くような声を聞いて。ゆっくりと、夢の中で瞼を開ける ――

「…オー…結集……貴様を………掌握ッ………会議所を……」
―― 意識が定まらない、うすぼんやりとした感覚が身体を支配する ――

「貴様を……会議所の…全て断ち……」
―― どこか見覚えのある光景、覚醒しない脳を働かせようとする ――

「…ッここで………消える…」
―― 思い出すのは、暗い室内 ――

「………るく思うな…これも…全て……ため…歴史を……ため」
―― 思い出すのは、異様なまでに冷えた部屋の空気 ――

「覚悟……逃げること……………なッ!…自ら……馬鹿なッ…」
―― 思い出すのは、ふわふわ浮いているような不思議な心地良い感触と ――

「なぜだッ!!!なぜ!!!!なぜだーーーーーーーーッ!!」


          ―― 頭を鈍器で殴られたような酷く重たい感触 ――
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(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

752 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その9:2017/03/27 01:29:34.706 ID:JxG3Or5ko
スリッパ「ど、どうしたんだふたりともッ!」

社長「アイムッ!オニロッ!戻ってこいッ!!思い出してはDBの思う壺だッ!」

DB「もう遅い…」

二人の悲鳴を最良の馳走とばかりにDBは舌なめずりをして見ていた。

DB「思い出したなァ。そう俺様は“貴様”と以前に、ここで対面している。否、それではない。それよりも以前からずっと、ずっと――」

社長「もう止めろDBォ!!!止めてくれッ!!」

アイム「オレたちに何をしたッ!」

オニロ「ボクたちに何をしたんだッ!」

アイムとオニロは満身創痍の中、目の前の邪悪な怪物に精一杯の虚勢をもって問いかけた。
社長の静止はDBにも、そして二人にも届くことはない。
いまこの瞬間、預言に無い運命は暴走を始めたのだ。

玉座に座るDBは待ちわびたとばかりに愉悦気に答えたのだった。

753 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 地下室編その10:2017/03/27 01:33:51.809 ID:JxG3Or5ko
DB「そうか、今はアイムとオニロという名前になっていたのか。

         “貴様ら”は互いに欠けたピースゥ。


              元は一つの形だったァ。


何をしたか?その問いに答えよう。


            俺様は“貴様”を手に掛けた。
          その結果、出来たのが“貴様ら”だ。


分からないか?俺様は創り出した。
               

               アイムとオニロ。“貴様ら”二人を。



ここに“貴様”を招いたのもこの俺様。

そして、そこで不意打ちに“貴様”を討ち取ったのもこの俺様。

元々一つの存在であった“貴様”の魂が二つに分かれたのもこの俺様のせい。

つまり、つまりィ。ゴミのように転がっている“貴様ら”二人の生みの親は、この俺様ってことだよォッ!!」
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754 名前:きのこ軍:2017/03/27 01:37:04.940 ID:JxG3Or5ko
Chapter4.大戦に愛を へとつづく。

色々と反省しかありませんが、最終章へ向けて邁進するのみのみ。

755 名前:社長:2017/03/27 01:39:53.116 ID:6QMucJns0
ついにアイムとオニロの秘密が!乙。

756 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2017/05/07 23:44:27.343 ID:90JAJ7Q6o
社長のssに胸をうたれ、更新再開にむけて努力します。がんばるぞい。



757 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:37:54.363 ID:7NMTxnUEo
・これまでのあらすじ(ロングバージョン)

★Chapter1. 欠けたものたち
―― 「オレの名前はアイム、記憶喪失らしい。好きな食べ物はきのこ。この世で一番嫌いな食べ物はたけのこだ。所属はきのこ軍」
    ―― 「ボクの名前はオニロ、同じく記憶喪失みたいです。たけのこ軍所属ですけど、きのこも好きです」
―― 社長『こうして森部拳は 永遠にその姿を消した……』
    ―― 「二人はパズルのピースのようなものです。お互いに欠けたピースなんだ」

“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。
その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。

758 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:39:03.672 ID:7NMTxnUEo
★Chapter2. 悪しき時空の潮流者
―― 集計班「私の予測が正しければ、編纂室にいれば『歴史改変の影響を受けない』。」
    ―― ¢「堅牢な檻から獰猛な動物が二匹解き離れた。1匹目は愉快犯 スクリプト、そしてもう1匹は…邪悪の権化 DB<ダイヴォー>」
――  『【時限の境界】 自身の決意を込める意味で、魔法のタイムマシンフロアを以後こう呼びたいと思う。』
    ―― 筍魂「【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】」
―― アイム「【無秩序の全】は世界、【一】はオレ。【一】が【全】の“正”・“負”を支配し、逆もまた然り」オニロ「――それが【生命力の流れ】で【世界の理】の一部」

ある日、会議所で捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走していたことが判明。
同時に、DB一味は、禁忌のマップ『時限の境界』で、故意に会議所不利の歴史に改変していることも明らかになる。
世界の危機を救うため、参謀を隊長とするDB討伐隊は、すぐさま『時限の境界』に突入するも、内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。
結局、DBの姿すら確認できずに、撤退を余儀なくされる。

自身の不甲斐なさを悔い、アイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。
オニロとの絆を深め、師からの教えを理解したアイムは、再び時限の境界へと突入する。
しかし、新たな【制約】により、アイムは独り過去の時代に閉じ込められてしまう。

759 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:41:27.826 ID:7NMTxnUEo
★Chapter3. 無秩序な追跡者たち
―― 竹内「どうも皆さんお久しぶり――かくいう私はもう隠居した身でね」
    ―― たけのこ軍 社長『ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ!』『預言?しらね^^』『アア オワッタ・・・・・・・・!』
―― きのこ軍 アイム「兵士は誰しも『大戦の本』を心の中に宿している
    ―― DB「“相棒”に伝えておけ、『すぐに迎えに行く』とねェ…」
―― 無口「【天】か。なるほど、言い得て妙だな。そうか。それじゃあ“俺たち”は【天の上から】事の推移を見守るとしよう」
    ―― オニロ「ボクたちに何をしたんだッ!」
―― DB「つまり、つまりィ。ゴミのように転がっている“貴様ら”二人の生みの親は、この俺様ってことだよォッ!!」

持ち前の機転と戦闘術魂を利用し無事現代に帰還したアイムは、会議所の中心的存在だった集計班が突如として姿を消したことを知る。
悲観に暮れる間もなく、竹内の加入を経て、スクリプトたちが【スクリプト工場】を過去の時代に製造し過去改変を行うという恐ろしい事実を目のあたりにする。
そして順調に工場を破壊する中で、追い詰められていたDBと討伐隊は、時限の境界内で遂に運命の邂逅を果たす。

万事休すと思われたDBだが、自らの危機を逆手に取り、過去の時代で黒砂糖を洗脳。会議所の内通者として仕立てあげ、会議所を洗脳し制圧する。
一方、アイムとオニロはK.N.C47年で初代wiki館長無口と出会い、真実の糸を手繰り寄せるも。
現代の会議所で捕らえられたアイムとオニロはDBから恐ろしい真実を告げられるのだった――――


760 名前:きのこ軍:2017/05/20 01:57:39.486 ID:7NMTxnUEo
本編投下

761 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その1:2017/05/20 02:04:26.270 ID:7NMTxnUEo
目を覚ました時、自分は何もない飴色の空間を所在無げにふわふわと浮いていた。
思い出そうとしても意識が朦朧としている。自分が誰なのか記憶を手繰り寄せようにも記憶がない。

完全に覚醒していない意識の中で直感する。
そうか、これは夢なのだと。

1秒かはたまた100年か。
時間の概念を忘れる程にその空間に漂い続けていると、不意に仄かな光が自身を徐々に包み、やがて一面が真白となった。
とても目を開けていられず、思わず腕で顔を覆った。まばゆい光が自分にはとても場違いな空間のように思え身を固くした。
だが暖かな光は自身を包み込むように体を芯から温め、その感触がこそばゆかったものの、次第に嫌ではなくなった。

暫く経つとまるで長い間自身が此処にいたようにくつろぐようになった。時間の概念がないので、こちらも1秒あるいは100年過ごしたかはわからない。
居心地がよく、夢のような空間だとさえ感じた。今、自身のいる空間が夢であるというのにおかしな話だと笑った。
まばゆい光に目は未だ慣れず顔を腕で覆い続けながらも、確かな幸せを感じていた。


762 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その2:2017/05/20 02:07:27.035 ID:7NMTxnUEo
至福の時間を過ごした空間に身を置きすぎ、だから気を許しすぎていたのだろう。
気が付かなかったのだ。

いつの間にか光の空間から叩き落され、自身が底知れぬ闇へ向かっていることに。
目を開けた時には、一面はうってかわり真暗の闇で覆われていた。
怯える。夢だとわかってはいても、底なし闇に堕ちていく自身の精神は二度と現実に戻れないのではないかという予感があった。

恐怖に打ち克つように、自身の両拳をぎゅっと握った。
目は瞑ったままで、力強く。

763 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その3:2017/05/20 02:10:21.983 ID:7NMTxnUEo

「長かった。長年かけて、ついにやっとここまでこれたァ」
― 囁くような声を聞いて。ゆっくりと、夢の中で瞼を開ける ―

「正のオーラで結集してできた貴様を、この場で俺様が戴くことで掌握ッ。完全に会議所を掌握する」
― 意識が定まらない、うすぼんやりとした感覚が身体を支配する ―

「貴様を消し去ることで、俺様は会議所の希望を全て断ち切る」
― どこか見覚えのある光景、覚醒しない脳を働かせる ―

「貴様はッここで俺様に喰われて消える」
― 思い出すのは、暗い室内 ―

「悔しいか?悪く思うなよ。これも全て俺様のため。会議所の歴史を変えるため」
― 思い出すのは、異様なまでに冷えた部屋の空気 ―

「覚悟しろ、逃げることなど なッ!自ら四散しただと。そんな馬鹿なッ!!」
― 思い出すのは、ふわふわ浮いているような不思議な心地良い感触と ―

「ふざけるなッ!!幾ばくもの月日をかけて今日を待っていた!貴様を喰らうことのみ考えて今日を生きてきた!なのに、なぜッ」

「なぜだッ!!!なぜッ!!!!なぜだーーーーーーーーッ!!」


          ―― 頭を鈍器で殴られたような酷く重たい感触 ――


夢から、覚めた。

764 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その4:2017/05/20 02:11:24.151 ID:7NMTxnUEo
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きのたけWARS 〜DB討伐〜
Chpater4. 大戦に愛を

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765 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その5:2017/05/20 02:15:12.368 ID:7NMTxnUEo
信じがたいことに、かつてきのこたけのこ大戦世界には【神】が存在した。
兵士たちが【神】という存在を忘れて久しい。
だが、大戦世界には数多もの【神】が存在した。

農家では、畑から収穫したきのことたけのこを出荷前に【農耕の神】へ供え、家庭で振る舞われる際には【食事の神】へ祈りを捧げ、
子供が夜更かしをしていると親は【幽霊神】の伝説を語り、やんちゃな童たちを震え上がらせた。

伝聞が伝聞を呼び、大戦世界黎明期の兵士たちは【神】の存在を認知するようになった。
日常生活のなかでどうにも自分たちの力で解決できない事象があると、兵士たちはまるで猿の一つ覚えのように【神】に縋るようになった。
時には居もしない【神】をその場で創り出して縋り、その願いに応える形で【神】は生まれてきた。兵士たち自身が【神】を創り上げてきたのだ。

もし世界を天の上から見守る管理者がいたら、当時の下界の兵士たちの様子にはだいぶ呆れたかもしれない。
それ程までに一時の大戦世界は兵士たちの懇願で溢れかえった。仕方なく、管理者たちは粘土をこねるように次々と【神】を造形し生み出していった。


766 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その6:2017/05/20 02:17:42.188 ID:7NMTxnUEo
暫く経ち、とりわけ大戦場ではいつからか【戦の神】への信仰が爆発的に強まり始めた。
初出は窮地のきのこ軍兵士が、居もしない【戦の神】をやけくそ気味に叫んだことが始まりと言われているが今となっては知る由もない。
その戦いはきのこ軍が大逆転勝利を収めた。

かくして、いつの間にか絶体絶命時に【戦の神】へ祈りを捧げると大逆転勝利できるという伝説が、まことしやかに囁かれ始めるようになった。
時代が進み文化的にも成熟した大戦世界では、一時の神信仰は鳴りを潜めつつあった。
代わりに神といえば【戦の神】と皆が認識するように、武運をまとった神を兵士たちは想起した。



兵士たちは、畏怖と敬意そしてほんの僅かの親しみをこめ、その神を【軍神<アーミーゴッド>】と名付けた。


767 名前:Chapter4.大戦に愛を オープニング編その7:2017/05/20 02:27:56.361 ID:7NMTxnUEo
軍神<アーミーゴッド>は大戦世界に生まれた。
そして常に戦場では先頭で兵士たちを鼓舞し続ける存在となった。
兵士たちが軍神<アーミーゴッド>に縋れば、たまに大逆転が起きる。
勝利の立役者を階級を超えた軍神Åとして表彰する動きも一時は盛んとなった。

かつて確かにきのこたけのこ大戦世界には【神】が存在した。
しかし兵士が大戦への興味を失うにつれ、軍神<アーミーゴッド>は兵士たちの心の拠り所では無くなり現世へ留まる必要が無くなった。
軍神<アーミーゴッド>は名残惜しつつも、現世から姿を消し天の上へと戻った。いつか兵士が“希望-心の本-”に胸を膨らませ、自身の存在を必要とされるまで世界を見守ることとした。

そして、現在。
歴史の歩みを止めたK.N.C180年で、思わぬ形で【神】は復活した。
その【神】は今。会議所の地下、冷たい地べたにその身を投げ飛ばされ、かつての栄華はどこにもなく、ただただ恥辱の神に見下されていた。

DB「久しぶりだなァ軍神<アーミーゴッド>。目覚めた気分はどうだィ?」

オニロ「DB…」

アイム「貴様という奴は…」

その【神】は自身の魂を二つの器に分けていたため不完全だった。
それ故、歴史を変えるほどの窮地に追い込まれていた。

768 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/05/20 02:31:00.393 ID:7NMTxnUEo
本当は軍神の訳だとゴッドオブウォーとかマーズとからしいけど、そんなことしるか直訳じゃ!



769 名前:社長:2017/05/20 02:33:31.004 ID:fvhsgqo20
その展開は予想していなかった。なるほど軍神!

770 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その1:2017/06/25 01:20:43.207 ID:YcJ1wk56o
【K.N.C??年 避難所の避難所】
きのこたけのこ大戦世界のはるか雲の上、高度な魔法で厳格に存在を秘匿される環境下に【避難所の避難所】は存在した。
【避難所の避難所】は大戦世界を正しく導くための管理所として、世界の始祖まいうが創造した。

黎明期は限られたメンバーだけしか利用していないことから別の世界に存在していたが、いつか地上から帰還した中心メンバーの一人である無口が
『今日からここは【天の上】となる』と無表情ながら茶目っ気ぽく語った時から、【避難所の避難所】は雲の上に移動し下界を見守る管理区域と化した。

冗談が過ぎる、と軍神はメンバーの一人として内心苛立ちを感じていた。ただ、この負の感情が正当なものかはたまたつい最近の自身への冷遇から出るものなのか、
どちらに因るものか自信を持てず、表立って不平を言うことはなかった。

771 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その2:2017/06/25 01:27:04.914 ID:YcJ1wk56o
白を基調とした広大な談話室の中心で、軍神は独り物思いにふけていた。

DB「おやおやァ。これはこれはァ軍神<アーミーゴッド>様ではないですか」

【恥辱の神】DBの声のした方向に首を向けると、それまで物憂げだった軍神は露骨に顔をしかめた。

軍神「久々に討伐戦に駆り出される予定だと今日の定例会議で言っていただろう。その醜い姿をひっさげてさっさと地上に降りたらどうだ」

DB「ツレないねェ。俺様と貴様の仲じゃないか、俺様の無事を祈っていてくれよなァ」

軍神「ああ祈っているよ、会議所が今度こそ貴様を捕えることを切にな」

短く言葉を切ると、軍神は中央に鎮座されている巨大な水晶に視線を移した。
透き通るほど澄んだ水晶は兵士を数十人は飲み込めるほど巨大でありながら、綺羅びやかに光を放ち続けていた。
軍神の視線を追うように水晶の中身を眺めていたDBだが、水晶の中に映し出されていた光景に下卑た笑いを浮かべた。

DB「連中も噛み合わないねェ。【スキル制】ルールなんてうまくいくわけないだろうにィ」

水晶の中には、大戦場で戦い続ける兵士たちの姿が映っていた。

軍神「哀れなオツムだと否定することしか出来ないのか。きっと上手くいく」

DB「いや、すぐに内外から紛糾してルール中止に追い込まれるさァ。俺様は“ネガティブ”な話題には人一倍に敏感だからわかるんだよ。『預言書』に書かれてなくても予測できるゥ」

水晶の中では、先程まで軍神たちと同じく会議に出席していた集計班が疲れ切った表情で集計作業にあたっていた。


772 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その3:2017/06/25 01:29:01.127 ID:YcJ1wk56o
DB「ところでェ。聞いたぜ、帰還命令が出て【避難所の避難所】に幽閉されるんだってな。かわいそうにィ。兵士たちに忘れられた武運の神様は、天の上から指を咥え下界を見ているしかない。
一方で悪役の俺様は強烈な存在感で忘れられずに近々また地上へ降りられる」

いわずともDBが軍神のことを語っていることは、軍神自身がよく理解していた。

軍神「今は新ルール運用等も含め、兵士たちの心に余裕がないからしかたがない。いつか再び大戦の人気が頂点を迎える時、我がまた姿を現せばいい」

DB「果たしてそれが叶うかなァ?」

DBの下賤な目線に応えることなく、軍神はただ水晶に映し出された大戦を眺め続けていた。

DB「また戻りたいだろゥ?懐かしいんだろゥ?」

軍神「…当たり前だ。だが、ここのメンバーはそう思っていないだろ。戦の神様をお役御免とでも思っているんじゃないのか」

DB「…あんたの願い、叶えてやろうかァ?」

思いがけない言葉に、軍神は思わず眉をひそめ初めて水晶から視線を外した。

軍神「君がか?馬鹿も休みも言え。それに誰が信じるんだッ」

DBの提案を一笑に付す軍神に、下品な笑みを絶やさず恥辱の神は言葉を続けたのだった。

DB「安心しろよォ。ここを離れようとすぐあんたを“迎えに行く”からよォ、【避難所の避難所】もそれを望んでいるだろ」


773 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その4:2017/06/25 01:32:32.650 ID:YcJ1wk56o
━━━━
━━━━━━
【K.N.C180年 会議所地下 大戦開発室】

DB「“あの時”の言葉どおり、俺様は“貴様”を再び地上へ連れ戻してやった。さあ感謝しろォ」

アイム「ふざけるなッ!混乱に乗じてオレたちをここに呼び出して――」

オニロ「ボクたちを消滅させて、全ての負のエネルギーを吸収しようとしただろうッ!」

DB「だってェ軍神<アーミーゴッド>がいる限りは、大戦世界には“希望”が振りまかれる。希望ってのは俺様の大嫌いなものなんだよォ。
つまり、“希望”の塊である貴様は俺様にとって天敵というわけだァ!!」

DBが指をパチンと鳴らすと、虚ろな意識でいた操り兵士たちは糸でひかれたようにすっくと背筋を伸ばした。

スリッパ「なんだ、何が起きているッ!?」

オニロ「事情は後で話しますッ!麻痺魔法は解除しましたので起ち上がってくださいッ!」

社長「この会議所荒らす 龍の穴」

操られた兵士たちは、まるでゾンビのようにヨロヨロとアイムたちに近づいていた。

加古川「おーいアイムゥ。残業のない世界は最高だぞォ」

抹茶「そうですよォ。特殊な性癖をもっていても非難されないんですゥ」

埼玉「もう一歩も外へ出なくてもいいたまァ」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

774 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その5:2017/06/25 01:36:23.508 ID:YcJ1wk56o
スリッパ「仲間と戦うのか、冗談がきついな…」

社長「ぼくら かんきんされとるんやで。」

アイム「全員おかしな夢を見ているんだ。だから、ちょっと頭を小突いて目を覚ましてやろうぜッ!」

オニロ「そうだよ。それにボクたちはあの無口さんにも一泡吹かせたんだ。DBがかけた操り如きに負けるボクたちじゃないよ」

アイムとオニロの自信に満ちた鼓舞は社長とスリッパ、そしてサラを目に見えて勇気づけた。事実、数は多くとも操り兵士たちはDBの急ぎかけた術ゆえ不完全で、今のアイムたちの敵ではなかった。
4人の前に操り兵士たちは一人、また一人と意識を失っていくのだった。

DB「バカなァ…」

アイム「ツメが甘いなあ。オレたちは皆の戦いをよく知ってるんだ、弱点もよく知ってるってことだろうが」

アイム「この場に791さんや筍魂<バカ師匠>を呼んでたらどうなってたかわからないが。オレたちほどあの野郎、スタミナ切れてまたどこかで寝てるんだろうな」

オニロ「師匠との修行に比べたら、こんな戦いへっちゃらだよッ!」

スリッパ「二人と戦っていると私まで勇気が湧いてくるな。サラッ!さっさと皆の目を覚ましてやろう!」

社長「いいぞ」

気がつけば、4人の周りには数名の操り兵士がかろうじて立ち向かうばかりになっていた。


775 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その6:2017/06/25 01:38:05.593 ID:YcJ1wk56o
DB「――もういい」

DBが椅子から立ち上がると、操り兵士たちは糸が切れたようにその場に全員倒れた。

アイム「もう降参か?」

オニロ「相変わらず堪え性がないね。だから【避難所の避難所】の忠告も無視し、長いこと会議所に捕えられるのさ」

二人の言葉に耳を一切貸さず、支配者は自分だとばかりの態度でDBは4人に向かい手をたたき賞賛した。

DB「負のオーラの兵士に、自身の希望 ―正のオーラ― を与えて相殺したな。見事な解決法だ、さすがは軍神<アーミーゴッド>」

そこでパタリと叩いていた手を下ろす。


DB「――だが、不完全な貴様が今の俺様に敵うと思うのか?」


瞬間、DBの体の周りを覆っていたどす黒いオーラが、勢い良く四方に放たれた。

スリッパ「ぐあああああああ」

社長「しねばいいんでしょう?」

アイム「くッ!!みんな、しっかりしろッ!!」

オニロ「ダメだアイムッ!身体が言うことを…きかないッ!」

意識を失うほどの刺激臭と腐敗臭が兵士の鼻をつき、一人また一人とその場で崩れ落ちていった。


776 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その7:2017/06/25 01:46:35.606 ID:YcJ1wk56o
スリッパ「も、もうダメだ…二人だけでも先に逃げるんだ」

アイム「そんなこと、できるわけねえだろッ!起き上がって…くっ足が動かねえ」

DB「いい顔になった、俺好みの苦しんでる顔だァ。最後の仕上げだッ」

再びDBがパチンと指を鳴らすと、暗闇の中からぬっと二人の兵士が姿を現した。
それはアイムとオニロの最も会いたくない兵士で、会議所内でも最強に属する兵士だった。

アイム「バカ師匠…!」

オニロ「師匠!」

791と筍魂は顔を伏せながら、怖気づく二人の前までゆらゆらと近づいていった。

DB「ゲハハハハハハッ!愉悦愉悦ゥ!感じるぞォ、追い詰められた貴様らの絶望!恐怖!なんて馳走だァ!」

その場で舌舐めずりをし歓喜に打ち震えるDBと対象的に、アイムとオニロは困惑し自らの師匠から逃げるようにジリジリと後退した。
希望に満ちた状況から一変し、起こり得るはずないと高をくくっていた事実が目の前に突きつけられ、出来すぎなまでのストーリーだった。
791と筍魂に囲まれる形で背中合わせになった二人はただ絶句した。

777 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その8:2017/06/25 01:55:17.597 ID:YcJ1wk56o
DB「あァ…うまい、なんてうまいんだ。これが“負のオーラ”。もう諦めろ軍神<アーミーゴッド>。
いやァ諦めるな。諦める前にもっと、も〜っと絶望しろォ。そして最期に希望を完全に失う瞬間が、俺様にとってメインディッシュとなるのだァ!!!!」

アイム「…ここまでか」

オニロは背中越しに、アイムが戦闘の構えを説いたことを察した。

オニロ「アイム…師匠に楯突くことを気にしているのかい?操られてるんだからノーカンだよ」

アイム「そりゃあテメエらの師弟関係じゃ…そうだな。お前の言うとおりだ。でもな。悔しいことにもう足が動かないんだ…先に言っておく、すまねえオニロ」

無口戦から精神的に溜まっていた疲労も極地に達し、遂にアイムは膝をついた。

オニロ「…次、また同じ弱音を吐いたらアイムでも容赦しないよ」

オニロは手に握る杖に力を込めた。
そしてアイムを護るように、オニロは二人の師匠の前に立ちはだかった。

オニロ「絶対にアイムをここから救い出して、後で笑い話にするんだ。『あの時、もうダメだ〜てアイムはボクに泣きついてきたんだ』てね」

アイム「やめろ、ムダな体力を使うな。お前は直感で行動しすぎだ、もっと考えろ生き残る道を」

オニロ「思い出すんだアイム。ボクたちは“希望の星”だろ?
希望を持つんだアイム。底なしの願いでも、希望を持つことをヤメてしまえば何も生まれないッ!」





(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

778 名前:Chapter4.大戦に愛を 絶望と希望編その9:2017/06/25 01:59:18.914 ID:YcJ1wk56o
オニロ「!?」

一閃。
アイムとオニロの頬を撫でるように吹いた一陣の風は、数秒の沈黙の後、瞬撃の太刀筋として斬撃音とともに遅れて表れた。
太刀筋の中にいた791と筍魂は衝撃で吹っ飛ばされ、玉座に居たDBも巻き込み壁に叩きつけられた。

??「叶いっこない願い、大いに結構ッ!兵士はただ自身が描いた“夢”に向かい邁進する。それを叶えてあげる手助けとなるのが“希望”。正に底なしの“希望”よ!」

金属と金属が擦れあう音とともに、どこからか攻撃をした兵士は長剣を納刀した。

DB「ぐああああああッ!誰だあ貴様ッ!俺様の負のオーラを食らって動けるはずがないッ!!」

闇の中から現れたその兵士は、いつもの癖でシルクハットのツバに手をかけ不敵な笑みを浮かべた。

??「紹介がおくれたな。俺の名前はコンバット竹内。元・たけのこ軍兵士で、きのたけ“最後の希望”だ」


779 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/06/25 02:02:17.941 ID:YcJ1wk56o
サンキュー真打
そして>>547につながる。

780 名前:社長:2017/06/25 02:04:17.712 ID:zs9yol3k0
ジジイ(?)キャラがかっこいいところを見せる展開いいぞ。

781 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/06/25 02:05:54.972 ID:YcJ1wk56o
ミス
>>778
俺⇒ワシ だったわんわんワシわん

782 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/18 12:32:13.487 ID:4fe4A8w20
小ネタこーなー

・【大戦年表編纂室】 その2
超高度魔法『メルティカース』により、大戦世界から隔離された部屋。wiki図書館のはるか地下階層に存在し、外部からの歴史改変を受けない。
術者は無口兵士だが、無口自身はK.N.C47年に消失しているため、いまなお術者無しに自律的に編纂室は動き続けている。
部屋の中に誰かいる限りは、正史と改変後の歴史を知覚できるが、ひとたび全員が外界に出てしまうと歴史がいつ変わったのかわからなくなる。
そのため、DB騒動時には常に編纂室に人を立てなければならないという苦肉の策を取っていた(集計班、オニロ)


・【避難所の避難所】
大戦世界のどこかにあるといわれる、会議所とは別の運営詰め所。
会議所が大戦運営に従事しているのに対し、避難所の避難所は大戦世界全体を監視している。
昔は地上のどこかにあったが、無口兵士の気まぐれによりいつからか空中要塞となった。秘密結社的イメージ。
存在を知る者は極僅かで、メンバーとなっている者はいずれも地上からは消失してしまった者がほとんどを占める。集計班は地上にいる兵士でその存在を知る数少ない兵士だった。
DB、軍神といった現人神もかつては所属メンバーだったがいずれも物語開始時には既に追放されている。

・【神】
最初期の大戦世界の兵士たちが創造し、いつの間にか忘れ去られてしまった存在。
超常的な現象や人知を超えた事態に対し、兵士たちが縋り付くための存在として生み出され担ぎ上げられた。
最盛期には数百もの神が大戦世界に点在したと言われるが、物語開始時にはほぼ全ての神が忘れ去られ消失してしまっている。人々の活力、情熱が年を経るにしたがって失われていき、信仰が薄れていったためである。
高い信仰心や多くの兵士の関心を集める神は偶像崇拝等を経て具現化することがある。軍神や恥辱の神 DBが代表例。
大戦への情熱も失われていった結果、いつからか階級制には【軍神】階級が消えてしまっていた。


近いうちに更新しまーす。




783 名前:791:2017/09/18 13:49:08.743 ID:DOH3S10ko
>>782
乙!
こういう設定読むの好き

更新楽しみ!

784 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その1:2017/09/20 00:42:36.912 ID:6O1.YhIko
【K.N.C180年 会議所地下 大戦開発室】

アイム「爺さん…あんたなのか?」

竹内「ハハッ。年寄りもたまには身体を動かさねばな。ボケてしまう」

刀の切っ先に付いたチョコを軽快に払うその姿は、K.N.C28年での青年竹内を彷彿とさせる軽快さだった。

DB「貴様らァ、俺様を無視するなッ!どうして“負のオーラ”を浴びながら、平然と立っていられるッ!」

竹内「負だかふ菓子だか知らんが、ワシはただ後進の兵士のために、この老体に鞭打つだけよ」

喋りながらも、竹内は襲いかかってきた筍魂と791を難なく一振りで斬り伏せた。
地面に倒れた二人は、沸騰音を出しながら劇薬が蒸発したかのように消えてしまった。
アイムとオニロはそこで初めて、二人の師匠がDBの創り出した幻影だったと気がついた。

DB「俺様の力を使って創り出した“分身”がァ…これでまた、“負のオーラ”を集めなくてはいけなくなったァ」

二人の幻影の後からゆらゆらと上空へ向かう暗紅色の霧を見て、DBはそれを目で追いながら悲しげにつぶやいた。
その霧が“負のオーラ”そのものであることは明らかで、元々のDBの身体に戻らず霧散してしまっては弱体化してしまうのだ。
だがDBは続いてアイムとオニロをじろりと睨んだ。

DB「ちょうどいたなァ。“希望”を身にまとった、正義の味方サマがよォ」


785 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その2:2017/09/20 00:42:55.756 ID:6O1.YhIko
オニロ「くっ…竹内さん下がってください。かくなる上は、私が師匠から教わった“秘技”で…」

衰えても未だDBが強大な力を有しているのは、軍神<アーミーゴッド>の力を有すオニロには痛いほど理解できた。
通常の兵士が立ち向かえる強さでない。まるで地球が宇宙に挑むようなもので、竹内の一撃は暖簾に腕押しのようにオニロには思えた。

竹内「敵もろとも自爆するとでも?バカを言うな、老人を残して若い兵士(もの)が死んだら顔向けできんだろ――」

竹内「――古い友人にな」

竹内はハッと独り気を吐き、目にも留まらぬ速さで跳んだ。流れるような所作に一瞬呆気に取られたDBだったが、すぐに竹内へ臭い息を吐き出したのは歴戦の兵士としての第六感がそうさせたのだ。
しかし、通常の兵士なら気を失う上に吹き飛ばされる威力の噴流も、いともたやすく竹内は袈裟斬りで払い、肩を突き出しながらDBに突進した。
竹内ごと再び壁に叩きつけられたDBは、苦悶の表情を浮かべ口からチョコの代わりに暗紅色の霧を吐出した。

DBは困惑していた。軍神<アーミーゴッド>以外にまともに攻撃の通る相手など、想像もしていなかったためだ。
その後も竹内の攻撃の手は緩むことなく、自ら溜め込んでいる“負のオーラ”を吐き出していることも気づかず、DBは防戦一方になっていた。


786 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その3:2017/09/20 00:50:59.342 ID:6O1.YhIko
オニロ「すごい。竹内さんの動きはいつもとは別人だ。それに若返っているような気が…」

アイム「DBの元である“負のオーラ”を直に浴びて立っていられる兵士はいないと思っていたが…竹内さんは例外中の例外というわけか。シューさんも呼び戻したわけだ」

竹内は初代DB討伐隊隊長 黒砂糖の後を次いで、長年に渡りDBを追い続けてきた第一線級兵士である。
DBと事あるごとに対峙する度、竹内の身体は変化を帯びてきた。その結果、通常では数秒も経たないうちに事切れてしまうDBの臭気に対する耐性ができてしまった。
陰陽師が異変を解決せんがために悪鬼に近づきすぎたがゆえに、結局は怪異と同等の存在になってしまった例と同じである。
参謀は竹内のことを“最後の希望”と紹介した。図らずとも、”希望の星”であるアイムとオニロが砕け散る寸前になった今、DBに立ち向かえる兵士は“最後の希望”しかいなかった。

竹内「どうしたDB!昔を思い出すなッ!また吊るし上げられたいか?あぁ!?」

DB「はァはァ…貴様はいつも俺様の邪魔ばかりしやがる。折角、俺様の手で憎っくき“玩具”を潰せると思っていたところにィ!またしても、またしてもォ!!」

竹内に足蹴にされうつ伏せに倒れたDBは、アイムとオニロを地面から睨み上げ、拳を強く握りしめた。


787 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/20 00:55:07.263 ID:6O1.YhIko
とりあえず眠いのでここまで。またすぐ更新します。
当初、竹内さんはDBの臭気にあてられると若返る設定にしていました。だけど、ダンディおじいちゃん兵士の活躍かっこいいなあてユリガミss見て思ったので変更しますた。
791さんと筍魂さんは操られてませんでした、よかったよかった。

788 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その4:2017/09/23 19:30:20.816 ID:vbUhPLDko
オニロ「竹内さんッ!そいつは危険な存在ですッ!今この場で処断しないと後々どんな大災害を引き起こすかわかりませんッ!」

竹内「わかっておる。おいDB、昔を思い出すな。昔は黒砂糖さんがお前を抑えつけた。その後、ワシだけがお前を長年追い続けた。ずっとだ。そのカシをいま返してやる」

DB「転がしてやる。転がしてやる。転がしてやる。転がしてやる」

DBの怨嗟を含んだ繰り返される独り言に、オニロとアイムは背筋がゾッとした。竹内に身体を抑えつけられながら、二人を見つめるDBの目は諦めの色を見せるどころか、異様なまでにギラついていたからだ。
恨み、怒り、快楽、様々な要素を包括した歪んだ生命力を彷彿とさせる色をその眼は見せていた。

オニロ「竹内さん、はやくッ!」

DB「遅いッ!」

オニロの叫び声と同時に、DBは握りしめていた拳の中の砂を背中越しの竹内に向かって開き投げつけた。竹内が一瞬怯んだスキを、DBは逃さなかった。


789 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その4:2017/09/23 19:33:16.199 ID:vbUhPLDko
DB「ゲゲゲッゲハハハハハハッ」

短時間で吐き出したDBの息は瞬く間に紫煙の煙幕となり、部屋全体を妙な色で包みこんだ。

アイム「しまったッ!奴は出口から外に出る気だッ!オニロ、竹内さんを援護するんだッ!」

オニロ「わかってるよッ!『キシリフレッシュ』!これで煙幕が晴れますッ!」

竹内「くッ、ワシとしたことがッ!」

煙幕により方向感覚を失う中、退路を断つために部屋の唯一の出口へ向かったオニロと竹内の前に、倒れていたはずの兵士たち<操り人形>が対峙した。

オニロ「こんな時にDBの野郎、ボクたちの仲間を使って許さないッ!竹内さん、離れていてくださいッ!『アポロソーラ・レイ』!」

オニロの杖先から閃光が発せられ、放たれた熱光線が兵士たちを貫いた。兵士たちは身体から暗紅色の煙霧を出しながら倒れていった。

竹内「DBはッ!」

気絶した兵士たちを跨ぎながら、二人は外に出たがDBの姿は既になかった。
兵士たちが足止めをしている間に、まんまとDBは会議所を脱出してしまったのだった。

790 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その6:2017/09/23 19:44:24.859 ID:vbUhPLDko
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

その後の捜索でも結局DBは見つからず、オニロと竹内は負傷していたアイムに加え、倒れていた会議所兵士たちを集め、編纂室へ連れて行った。
殆どの会議所兵士たちが集結した編纂室は、未だにアイムを含む数名の兵士の手当が行われており、さながら野戦病院のような体をなしていた。

someone「ごごめんなさいッ!みんなにプッカライトニングを射つだなんてどうかしていた…」

アイム「someoneさんの責任じゃない。みんなDBに操られていただけさ」

someoneとジンはお詫びとばかりに、簡易ベッドの上で横になっているアイムに回復魔法を乱発している。

¢「うぅ…DBが会議所であやっていたなんて」

加古川「会議所に帰ってきてから記憶がない…不覚だ」

操られていた兵士たちはすぐに意識を取り戻した。外傷のある兵士たちも、オニロたちに気絶させられた際にできたものであり程度はすぐ済むものだった。
しかし、全員が復帰できたわけではなかった。

抹茶「黒砂糖さんと一緒に警護任務に就いていたはずなのに、いつの間にか気絶していたんです…多分、時限の境界近くにDBが潜んでいて連れて行ってしまったんだ…」

操られていた兵士の中で、唯一黒砂糖の姿が消えていた。DBの人質として連れ去られたのではないか、という見方が大勢だった。
抹茶は同僚の危機に、顔を緑ざめている。

791 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その7:2017/09/23 19:46:43.322 ID:vbUhPLDko
参謀「DBはどこに逃げたと思う。大方の予想では時限の境界だと思うが」

参謀の問いに、スリッパが唸った。

スリッパ「その可能性もある。ただ、奴とスクリプトの目論見<歴史改変による負のオーラ集め>が看破された今、再び同じ作戦を取るとも考えにくい」

アイム「同感だ。オレなら敢えてこの時代に潜伏して、会議所乗っ取りの機会を再び狙うな」

791「なるほどね。DBの狙いはあくまで現代<この時代>の支配。無闇に過去の時代へ跳ぶのはDBにもリスクが高いね」

編纂室の入口から、話を聞いていた791は筍魂を担ぎながら会議に参加した。

オニロ「師匠!お身体は大丈夫なんですか」

791「まだ完全には程遠いな。とりあえずクリームソーダを常時補給してるわ」

791は米俵のように筍魂をその辺りに放り、仕事終わりの一杯とばかりにソーダ缶を手に取った。

筍魂「おお、我が弟子よ…なんと情けない姿だ」

アイム「お前ほどじゃねえよ、まず自分の足で歩け」

筍魂はスタミナ切れで中庭にて一歩も動けなくなっていたところを、791に拾われていた。


792 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その8:2017/09/23 19:49:33.018 ID:vbUhPLDko
参謀「話は戻るが、DBは人里に紛れ込んでいる可能性があるということか…黒ちゃんの安否も心配や。誰か里に見張りを立てておきたいが…」

山本「俺とゴダンさんが行こう。ゴダンさんがきのこの山、俺がたけのこの里を見張っておく。危険を感じたらすぐに戻るさ。おっぱい神の加護があらんことを!」

山本はゴダンを引き連れ、いの一番に立ち上がった。外に出る前に、十字架をきる要領でオッパイの輪郭をなぞるように手で線を引くと、さっそうと外に出ていった。
一陣の風のように去っていった山本たちを見て、加古川はポツリと不安を口にした。

加古川「もっさんが一番、DBの洗脳を受けやすい体質に思えてならないんだが」

ビギナー「どうにかなるっしょ」


793 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その9:2017/09/23 19:51:44.581 ID:vbUhPLDko
参謀「さて、DBが捕まるのも時間の問題や。その前に一つハッキリさせておきたいことがある――」

参謀は一度言葉を切り、オニロとアイムに人差し指を突き指した。

参謀「――お前らの記憶についてだ。おそらく、その落ち着き様を見ると、二人とも思いだしたんやな」

アイムとオニロは同時に頷く。

アイム「オレの記憶は、大戦の歴史に直結する――」

オニロ「ボクの記憶は、DB騒動の根幹に繋がる――」

加古川「話してくれ、お前たちが知っていることを」

¢「うぅ怖いんよ。でも、僕たちは知らなければならない」

抹茶「少しでもDB討伐の手がかりになるなら、僥倖です」

アイムとオニロは静かに皆に向かって頷き、同時に黙りこくったままでいる一人の兵士を見つめた。

アイム「オレたちが何者であるかを明かす前に。一人の兵士から今回の真相を話してもらいたい。
一連の騒動がどのように引き起こされたか、そろそろみんなで共有してもいい時だ」

オニロ「前にも言いましたよね。もう話す時じゃないですか――」

オニロ「――社長」

全員の視線は、部屋の端で俯向いたままの社長に集中した。


794 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その10:2017/09/23 19:55:29.822 ID:vbUhPLDko
社長「…」

アイム「オレは――いや“オレたち”は全てを思い出した。オレたちが話してもいいが、それは完全じゃない。
今回の騒動の主役は、おそらく“あんたたち”だろう」

オニロ「怖いのはわかります。ですが、社長の口から説明するべきだと思うんです。貴方の働きを闇に葬り去ることは、“彼”の頑張りを無下にすることと同じ。そうじゃないですか?」

社長「…」

なおも社長は無言を貫いていたが、チラッと一瞬横にあるロッキングチェアを見つめた。
在りし日に持ち主が好んで使っていたロッキングチェアは、今の主人不在の事態をどう見ているだろう。

オニロ「もし“彼”と同じ結末を辿ることに恐怖を感じているのであれば、安心してください。“ボクたち”が全力で貴方を守ると誓いましょう」

アイム「既に【裁き】とやらは終わった。ここはあくまで地上の【大戦世界】であり、【避難所の避難所】ではない。一地上の兵士が【天上世界】の奴らに、何を配慮することがある?」

全員が息を呑んで社長と二人を見つめている。

795 名前:Chapter4.大戦に愛を 希望VS絶望編その11:2017/09/23 20:03:35.704 ID:vbUhPLDko
社長「だけど、私のせいであの人は――」

オニロ「誰も悪くないんです。ボクもアイムも、みんなも、さらにいえばDBも。みんな【決められた通り】に動いていただけ」

アイム「それを正そうとしていたあんたたちの判断は間違っていなかった。結果として、混乱を招いたとしても――」

オニロ「――あなたの“責任”じゃない」

━━
━━━━

「計画は順調です。ですが…たとえ、順調に立ち回らなかったとしても、
それはあなたの“責任”じゃない。
私が保証します。
なにか問題が発生した時。慌てないことです。
私に頼ろうとせず、まずは自分で事態の本質を見極めることです」

━━━━
━━

社長はハッとしたように二人に向かい顔を上げた。オニロの言葉に唐突に記憶がフラッシュバックしのただ。
最後に同じ編纂室で彼と会話を交わした時、たしかに彼は“見極めろ”と社長にそう告げた。今まで誰かを頼りながら生きてきた社長にとって容易ではなかった。
しかし、忠実にその言葉を守り動いてきた。マラソンランナーのように、周りを振り返らず彼が消えてからは突っ走ってきたのだ。

―― もう、話してもいいのかもしれない。

走ることを止めたランナーは、周りを見渡してみると多くの仲間が心配していることに気がついた。
頼ってもいいのだろうか。居もしない兵士に決断を縋るように、社長は不安げに再びロッキングチェアを見た。
不安げな社長を笑うように、チェアはゆらゆらと愉快げに揺れている気がした。妙な安心感を覚え、社長は遂に決心した。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

796 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/09/23 20:06:01.769 ID:vbUhPLDko
ここにきてようやく言えますが、この物語のキーマンは社長です。実はまだもうふたりいますが、それはまた今度。

797 名前:社長:2017/09/24 02:14:55.088 ID:GBvzXfaY0
どのシーンで竹内さんの設定が変わったんだろう?更新乙

798 名前:791:2017/09/24 10:50:27.566 ID:rW0AVfB2o
更新乙
おお、いよいよ社長の話が聞ける
気になる

799 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その1:2017/10/01 01:35:31.285 ID:o
初めて社長が大戦に参加したのはK.N.C2年だった。

スリッパ『突き進む!突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

多くの兵士が試行錯誤していた時期、銃の使い方さえ覚束ないような兵士たちの戦いの中で、スリッパの一挙手一投足は一際輝いていた。
追い詰められたきのこ軍兵士を大量撃破で鮮やかに終戦させた英雄スリッパの一連の行動は、多くの兵士にその掛け声とともに強烈な印象を残した。
一時はスリッパによる英雄ブームが巻き起こり、不安定な大戦の恒久的な継続を決定づけた。目の前で英雄の活躍を見ていた若き社長も、彼に刺激と感銘を受けた兵士の一人だった。

社長「あの時は感動した…」

感慨深げに語る社長と罰が悪そうに押し黙っているスリッパの姿が、アイムには対称的に映った。


800 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その1:2017/10/01 01:36:07.628 ID:o
>>799
訂正
スリッパ『突き進む!突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

スリッパ『突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』

801 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その2:2017/10/01 01:40:18.614 ID:o
以来、社長は最古参兵として会議所設立からK.N.C180年まで一部の期間を除きずっと大戦に関わってきた。
会議所に留まる最古参兵士はK.N.C180年時点で4人しかいなかった。知の参謀、発の¢、静の集計班、そしてバグの社長の4人である。
社長は本来大戦の重鎮として会議所を突き動かす兵士になるはずだった。

アイム「社長は重鎮っていう感じでもないだろう」

オニロ「こ、こらアイム。失礼なことを…」

アイムの率直な意見に、そうだな、と社長は素直に認めた。
ある時を境に社長は会議で意見を出さなくなった。否、意見を出すことができなくなった。

社長「あの日、あの時から私の運命は変わったのだ」

全員が、言葉を発さずに社長の説明を聞いている。
その奇異に満ちた行動から社長は“バグ兵士”としてばかりクローズアップされ、会議所設立の中心メンバーであることを理解している兵士はほんの一握りだった。
会議所の生き字引だった兵士が、いつから色物兵士へと転換したのか。そもそもなぜ転換したのか。



きっかけは、一つの【お告げ】だった。



802 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その3:2017/10/01 01:57:18.772 ID:o
社長「【お告げ】があった。ある日突然、百合神様から…」

社長は兼ねてより【百合神】という創造神に縋っていた。多くの兵士は社長のバグ発言の一環だろうと取り合っていなかったが、アイムたちの前で語る社長の顔は常に真剣そのものだった。
この場で再びその神の名前が出て突拍子のなさに全員が驚いたが、社長は構わず続きを話し続けた。

ある日、社長の夢の中で現れた【百合神】は、“大戦世界に関する秘密”を社長に語ったのだという。

―― 大戦世界には【避難所の避難所】という別の運営拠点がある。その観測所には過去にいなくなった重鎮兵士たちが集い、秘密裏に大戦を操っている。
―― そして、全ての過去現在未来の歴史は【預言書】と呼ばれる古ぼけた本の通りにするべく暗躍している。そのためなら、たけのこが不利に負けようが、きのこが惨めに負けようが構わない。

初めは社長も驚いたが、【百合神】の真剣な口調のトーンに圧倒されつつも、最終的には信じざるを得なかった。
始祖まいう、図書館館長の無口、きのこ軍のエースアルカリ。気がつけば大戦世界創世記にいた兵士たちは姿を消してしまい、誰しも口には出さずともそこに奇妙な違和感を持っていた。
もし彼女の話の通りそうした兵士たちが本当は【避難所の避難所】に移り、世界を監視しているとしたら空恐ろしいと社長は感じた。
亡者が実は生きていたという感動よりも、大戦世界に巣食う暗部を垣間見た気がして、今までの日常が保てなくなってしまうのではないかという恐怖がはるかに上回っていたのである。

朝目が覚めると、彼は真っ先に集計班に相談した。
会議所に係る問題は、当時から会議を束ねていた彼に相談するのが全兵士の暗黙の了解となっていた。
集計班ならば親身に相談に乗ってくれるだろう、もしくは突拍子もない話を笑い飛ばしてくれるのではないか。
どちらでもよいという思いを持って、社長は図書館に駆け込んだ。自身の気持ちを他者へ共有したかっただけなのだ。


社長の希望は、直後にコナゴナに粉砕されることになった。

803 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その4:2017/10/01 02:11:36.835 ID:o
静かに社長のトンデモ話を聞いていた集計班は、社長が話し終わると長い間考え込んでいたが、その後静かに問いかけた。

集計班「どこで、その話を?」

社長「いや、だから【百合神】様が――」

思わず社長は二の句が継げなくなった。集計班の明らかな異常な睨みに、社長の身体は硬直した。蛇に睨まれた蛙とは正に今の自身だと直感した。
乱暴なまでに野性的に濁った紅の瞳を向けられた社長は、そこで初めて集計班も件の観測所のメンバーなのだと悟った。

集計班が嘆息し椅子から立ち上がっても、社長は集計班から視線を外すことさえできず、自らの生命がここで尽きるのではないかと怯えていた。
彼はずいっと社長に向かい顔を突き出した。いつもの穏やかな表情を殺し無表情を顔にはりつけ、次のように語った。

集計班「あなたは【知る必要のない】情報を手に入れてしまった。いや、この際どうやって手に入れたかは重要ではないのです。ただ、貴方はもう逃げられません。
生きるか無くなるかなんて陳腐な選択肢も用意しません。貴方には事の最後まで付き合ってもらおう」

集計班の口調はあくまで冷徹で事務的だった。
見えない刃を首に突きつけられたかのように怯えていた社長だったが、気力を振り絞り微かに首を縦に一度振り微かに応えた。


804 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編その5:2017/10/01 02:22:11.163 ID:o
『バグトラダムスの預言書』

大戦世界が一つの古ぼけた預言書通りに進められていると話され、誰が信じるだろうか。
その預言書にはK.N.C1年から遙か先の未来までの歴史が事細かに書かれているのだという。
識者はその預言書に従い、【避難所の避難所】を造り、混迷に満ちていた世界を預言書通りに修正するように務めるようにした。
預言書に従えば、遙か先でも大戦の継続は保証され、大戦世界は反映し続けるからである。

集計班「私は【避難所の避難所】から、大戦世界が預言書に書いている通り、“世界にとって”正しい方向に進むように監視役を申し付けられています。
関係者曰く『バグトラダムスの預言書』には大戦世界を良くするための未来が全て書かれているとか」

集計班曰く監視の役目はトップシークレットであり、大戦世界では本人以外に誰も知らないという。
なぜ、『バグトラダムスの預言書』に大戦世界の過去、現在、未来が全て予言されているのか。誰が書いた書なのか当時も今も社長にもわからない。
ただ、はた迷惑な物があったものだ、と当時の社長は自分の置かれた立場を置いてそう感じた。

通常であれば正体を知られた時点で始末しないといけませんが――と、集計班は前置きした上で、次のように語った。

集計班「貴方の命運は私が握りました。ちょうどいい、一人じゃ“仕事”が回らなかったんです。今後は、私のお手伝いをしてもらいましょう」

最悪を超える未来が社長の脳裏に浮かんだ。希望から絶望への突き落としに思わず乾いた嗤いが出てしまいそうになるのを集計班に覚られないように口を抑えた。
いっそこの時点で狂ってでもしまえば楽になれたのかもしれない。しかし、最も信頼していた兵士に目の前で裏切られてもなお、社長は現実を直視し運命に身を委ねた。
この場で狂人になれるほど弱い兵士ではなかったのである。


805 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/01 02:23:16.306 ID:o
ひとまずここまで。
本物の社長はしっかり重鎮兵士なのでご安心を。バグトラダムスの預言書、一冊ください!

806 名前:社長:2017/10/01 12:56:12.417 ID:0
ついに終盤へ・・・

807 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その1:2017/10/15 15:51:37.198 ID:hcxs5DM2o
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

抹茶「この世界は預言書に管理された世界ってことか…?」

参謀「そんな阿呆な。信じられん。シューさんの行動もそうやし、【避難所の避難所】なんて知らん」

¢「せっかく僕が作った多くのルールが無くなってしまったのも預言書通りってことか。びええええええん」

社長の話を聞いていた兵士たちは全員が驚愕の思いを隠しきれない様子だった。特に古参組の反応が顕著だった。

アイム「気持ちはわかる。誰か¢さんにちり紙を用意してやってくれ」

オニロ「ひとまず話の続きを聞いてみようよ」

オニロの視線に社長は頷き、続きを語り始めた。



━━
━━━━

社長「内容については異論ありません。ですが、少し一人にさせてください」

急転直下の展開に頭がついていかず、気持ちを整理するための時間がほしい。社長の恐る恐るといった頼みを、その考えは最もだと集計班は二つ返事で了承した。
てっきり渋られると思っていた社長は、集計班のあっさりとした様子に戸惑った。
だが、どうせ自分が会議所の暗部から逃げられるはずもなく、また集計班も自身を逃がすつもりもないことを見越されているのだと思うと、社長は暗澹たる気持ちになった。


808 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その2:2017/10/15 15:55:06.050 ID:hcxs5DM2o
それから暫く、社長はたけのこの里から離れた山中で大戦とは無縁の生活を送った。あまりにも大きな世界の闇を目の当たりにし、彼の心は平穏でいられなかった。
大戦と会議所は当時の兵士たちが全て0から苦労して創り上げた上の産物で、当時の一員だった社長自身も誇りを持っていた。

それが、何処にあるかもわからない【避難所の避難所】の思惑通りに造られた物だと気がついたら、彼には途端に目の前の世界が空虚に映った。
これまでの行動が、あまりにも虚しく思えてしまったのだ。

味方だと思っていた兵士に裏切られたことも彼の喪失感を増大させていた。
特に睨まれた集計班の紅い瞳は、夢の中で何度も出てきては社長をすくみあがらせた。

眼前に広がる晴れ晴れとした青空さえまやかしではないかと疑心暗鬼に陥った。
心配して彼の下を訪れた兵士に対しても集計班の時の二の舞いを恐れるあまり心を開かない本人に対し、兵士たちは次第に社長を忘れ、社長も極力忘れるように努めた。


そんな少しずつ別の生活に慣れ大戦を忘れかけてきた頃、社長は再び夢の中で【お告げ】をきいた。


―― 自らの使命を思い出せ。苦しみに耐えることは死ぬよりも勇気がいる。
―― どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない。
―― もし耐えることを諦めたら、その瞬間に地獄へ送る。

夢の中で百合神から半ば説教を食らい、目覚めたばかりの社長は顔面蒼白だったが、次第に意識が覚醒してからはすぐさま会議所帰還への支度を始めた。
今の生活は仮初めで自分自身は大戦から逃げられない運命であることを彼自身は理解していた。
百合神からの最後の一押しが彼自身を運命へ立ち向かう決断をさせた。
夢の中の神へ感謝と畏怖を感じながら、社長は小屋を離れ会議所へ復帰した。

809 名前:Chapter4.大戦に愛を 回想編2その3:2017/10/15 15:59:57.413 ID:hcxs5DM2o
集計班「お帰りなさい。“旅行”は楽しめましたか?」

会議所へ戻り、社長は早々に集計班に会った。編纂室でロッキングチェアをゆらゆらと揺らしながら、彼は余裕綽々といった面持ちで社長を迎えた。
自身の行動を予測されているようで思わず腹が立ったが、社長はぐっとこらえ百合神のお告げから考えた末に出した決意を述べた。

社長「私の命運は貴方が握ったと言いましたね。大いに結構です。ならば、私は預言書の通り、【世界の命運】を預かることにしましょう」

社長の言い回しに集計班は可笑しくなったのか声を出して笑った。

集計班「お元気になったようでなによりです。ですが大言壮語を吐く割に、貴方は怯えているように見える。それが少し滑稽に見えて笑ってしまったのです」

しかし、と集計班は続けた。

集計班「その度胸は武器になる。心得なさい、貴方は今日から大戦世界の安定のためにその身を私に預けました。
【避難所の避難所】に知られることなく、私は全力で貴方を守ることを誓いましょう。貴方は貴方で自身を守る術を身につけなさい」

これ以後、社長は【きれぼし語】という言語を用い、一方的な話しで周りを困惑させるようになった。
以前にも増して兵士たちは社長に変人のレッテルを貼り、その反応が増えるほど社長は流暢に【きれぼし語】を操りバグった姿を見せつけた。
その振る舞いが、他者からの翻弄を一切許さず預言書通りに【世界】を護らんとする社長の決意の現れだと、集計班を除いて誰も知る由はなかった。


810 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/15 16:01:16.592 ID:hcxs5DM2o
ひとまずここまで。近いうちに残りを投稿します。

811 名前:社長:2017/10/16 23:06:33.784 ID:88boJ95A0
あの人つよい!

812 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その1:2017/10/22 23:50:57.961 ID:ywvP1kCco
社長と集計班の【会合】は大抵、丑三つ時に人目の付かない場所で行われた。
集計班が持ってきた預言書が書かれた紙の切れ端を互いに目を通し、未来を正しい方向に導くための確認をするのだ。
会合は不定期で、集計班の思いつきで突然呼び出されることが多かった社長としては、内心穏やかではない日々が続いていた。

彼は預言書を丸ごと地上に持ち込むことはせず、なぜか決まって預言書の内容をコピーした紙の切れ端だけを社長の前に持参した。
その方がワクワクするでしょうと真顔でその理由を告げられた時には、睡眠不足だった社長は思わず目の前の集計係を殴ってやろうかと思ったほどだ。

人の気持ちがわからない兵士だと【会合】に加わってから都度、社長は心の中でパートナーを何度も毒づいた。預言の内容について彼に食いかかったことも数度だけではない。
【会合】に参加してからというものの、社長の集計班への評価は180度転換した。それほど彼と社長の馬は合わなかった。

この日も、二人は夜中に人気のない場所で話をしていた。

集計班「王様制のルール凍結は預言書通り、これで実行完了しました」

社長「¢さんの頑張りが報われませんね。あれだけルール作成に躍起になっていたのに」

社長の皮肉に、彼は一切動じることはなかった。

集計班「仕方がないことです」

他人行儀な集計班の言動に、社長はカチンときた。


813 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その2:2017/10/22 23:55:26.963 ID:ywvP1kCco
社長「仕方がない?貴方は定着しつつあった王様制を、会議所内部から反対意見を出させて潰したんです。少しは責任を感じないのですか?」

集計班「仕事ですから」

意に介さず集計班は涼しい顔をして、ただ――と言葉を続ける。

集計班「この王様制に関する議論が今後の大戦繁栄のためには不可欠。預言書にはそう書かれているので」

社長「預言書、預言書と。本当に預言書通りに進めば世界は安定するんですか?私には未だに信じられない事が多い」

集計班「…あなたはただ監視していればいい」

唐突に集計班は読み終わった預言書の切れ端を跡形もなく燃やして立ち去っていった。
それがいつも一方的な終了の合図だった。

814 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その3:2017/10/23 00:03:29.971 ID:o4m7nuLYo
彼は平時とは違い監視役の仕事に関しては一切の私情を持ち込まない主義のようだった。
表での彼の姿を知っていただけに、当初は社長も彼の裏の顔に面食らった。

会議所では仲間とともに運営のために各地を奔走し時には心を痛める顔をしながら、裏では一連の首謀者として躊躇なく全てを切り捨てる決断を下す。
会議所の内乱を表では鎮圧しながら、裏では焚き付ける工作活動をする。
社長の目には、集計班という兵士が預言書を体現するための悪魔の化身にさえ映った。
目の前で蒼い瞳を宿す兵士の真の姿を見て、狂っているとさえ思ったことも少なくない。

社長自身も、自身をバグで狂わせていなければ良心の呵責に苛まれとうに発狂していただろう。
淡々と与えられた任務をこなす非道な彼の精神状態を、社長はある種の尊敬を抱きながらも、それを大きく上回る恐怖感と嫌悪感を持っていた。

そして、幾度の歴史が流れた。
最初は工作活動に反抗的で何度も反発していた社長も、自らの生命を集計班に握られている立場上、嫌々ながらも活動に従事してきた。
すると次第に感覚は麻痺して、ある程度感情を圧し殺すこともできるようになってしまった。

自らが嫌う相棒と同じ姿に変化しつつあった社長はふとこれまでを立ち返ったときに自己嫌悪に陥るも、
心の底では【工作活動】にある種楽しみを見出すようになっていた。


そんな時、一つの預言が二人の運命をこれまで以上に変えていくことになった。

815 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その4:2017/10/23 00:09:00.959 ID:o4m7nuLYo
その日、珍しく集計班は【会合】に遅れて到着した。
彼曰く【避難所の避難所】の会議が長引き、預言書の内容を地上に持ち出すのに時間がかかったという。
彼自身もまだ預言の内容を見られていないというのだから、まるでおみくじの結果を開けて待つような、社長はどこか生の預言を見ることへの奇妙な連帯感と高揚感に支配されていた。

―― 集計班「私は【避難所の避難所】ではペーペーですから預言を見せてくれないんですよ」

かつてどうして数年毎の預言しか持ってこないのかという問いに、彼が社長にそう語ったことがある。
未だに避難所の避難所のメンバーが誰なのか把握しておらず、特段知りたくもなかった社長だが、彼が下座に位置する会議とは一体どれ程の規模なのか想像もつかなかった。

集計班「DBが地下牢から逃げ出したことは知っていますね」

社長「ええ。まさか本当に預言書通りになるとは。てっきり私が檻を解き放つ役目だと思っていましたよ」

改めて預言書の正確性に驚く社長に、何をいまさら――と集計班は呆れながら言葉を続ける。

集計班「近々、DBが暴走し世界を巻き込む大騒動が起きます」

社長「本当ですか」


816 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その5:2017/10/23 00:14:04.458 ID:o4m7nuLYo
集計班「DBが兵士の【負のオーラ】を集め強大化して、会議所を制圧しようとするのです。DBから活力を吸われた世界は衰退し、暫くの大戦休止に追い込まれる。世界の危機を迎えます」

まるで朗読の一説のように感情を込めず、集計班は預言書の切れ端を読み上げていった。

社長「このままではDBにやられてしまいます」

それに対し、社長もひどく無機質な相槌をうった。
その問いに対し、急いで文字を追いながら集計班は続きを読み上げた。

集計班「安心なさい。直に、窮地を救う“希望の星”が会議所に到着します。その英雄とDBを戦わせるのです」

社長「それならば安心だ。して、その正体は?」

話の内容は現実離れしているのに、不思議と社長は冷静になりつつあった。

集計班「軍神<アーミーゴッド>の生まれ変わりです。覚えていますか?」

彼の口から出るまで、社長は軍神<アーミーゴッド>の存在を忘れていた。そんな社長の様子に、“彼”も寂しがるでしょうに、と集計班は漏らした上で預言書の続きを読み始めた。

集計班「DBはまず自身と対極に位置する軍神<アーミーゴッド>を壊しに行きます。その際に危険を察知した軍神が、自らの魂を宿した器を大戦世界へ投げ込む。
それが“希望の星”の正体です。私たちがその器を回収し一人前の兵士に育てあげます」


817 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その6:2017/10/23 00:15:58.817 ID:o4m7nuLYo
途方もない話だが、かつてこうした突拍子もないことを幾多もやり遂げてきた二人にはすんなりと腑に落ちた。

社長「久方ぶりに会議所にもニューホープの登場ですね。DBを倒し英雄になった彼は正に【軍神】として今後も会議所を引っ張り続けるでしょう」

集計班「ええ。――いや」

社長の言葉に頷きながら預言書の切れ端を読んでいた集計班の動きが止まった。
その様子に訝しんで彼の顔を覗き込んだ社長は、そこで初めて戸惑いと苦悶の表情を浮かべる彼の顔を見た。

集計班「英雄<希望の星>はDBと相打ちになります。預言書にそう書かれている」

社長「え?」

集計班「私たちは赤子同然の新参兵士を育て我々の代わりにDBと戦わせ、そして役目が終わればその場で消失させると。そう書いてあります…」

言い終えるや否や、集計班は切れ端を強く握りつぶし手のひらの中で消し炭にしてしまった。
彼の背中は怒りで小刻みに揺れていた。

社長は唖然とした気分になった。
係る未来の悲惨さに唖然としたのではない。目の前で憤る相棒に対し、他人を慮るほどの一人前の人情があったのか、と社長は真っ先に衝撃を受けたのだった。


818 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その7:2017/10/23 00:17:21.860 ID:o4m7nuLYo
加古川「アイムとオニロは、軍神<アーミーゴッド>の生まれ変わりだって…?」

¢「軍神<アーミーゴッド>、久しく聞いてなかった言葉なんよ。階級制でずっと使っていた制度のはずなのに、いつの間にか無くなっていた…」

軍神制度を形にした立役者のはずの¢も、軍神という存在を忘れていたようだった。

アイム「昔は軍神制度により大味な展開で、逆転に次ぐ逆転、先の読めない展開に大戦は大いに盛り上がった。
だが、いつしか兵士たちはマンネリを感じるようになり、兵士たちからの支持を失った軍神も消えてしまった」

オニロ「ボクたちが――ええっと便宜上、軍神<アーミーゴッド>と呼ぶね――軍神<アーミーゴッド>は【避難所の避難所】に事実上幽閉されてしまったんです。
兵士の願いがなければ、彼は世界に姿を現せられない」

アイム「そんな鬱屈とした日々を避難所の避難所で過ごす中、“アイツ”が悪魔のような囁きで軍神<アーミーゴッド>に語りかけてきた」


―― 行っただろう、“迎えに行く”となァ。さァ、大戦に帰ろう。


819 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その8:2017/10/23 00:19:16.727 ID:o4m7nuLYo
>>818
書き忘れました。>>818では現代に話が戻ってます。一時回想中断中

820 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その8:2017/10/23 00:19:37.061 ID:o4m7nuLYo
会議所に幽閉されていたはずのDBからの突然の連絡に、不審感を抱きつつも忘れられない大戦への憧れから、軍神<アーミーゴッド>は結果的にDBの提案を受け入れてしまった。
その結果、彼は地下の大戦開発室へと誘い込まれDBの策略により瀕死寸前まで追い詰められた。

アイム「そこで軍神<アーミーゴッド>は、近くにあった【圧縮装置】を使い自らの魂を分けることにした」

参謀「【圧縮装置】って¢さんが作った機械か。確か大戦の長期化に対応するために、でかすぎる大戦場の大きさを狭める次元装置だったか」

¢「そんな大それたものじゃないけど。実際は黎明期に誰かが魔法で作った大戦場の区域を制限するトリガーをつけただけなんだ。
例えるならサッカーコートをフットサルコートの大きさに変える装置みたいなもんだな」

オニロ「そうです。軍神<アーミーゴッド>はその機能を逆手に取り、自らの魂を圧縮しその結果、魂は四散したんです。」

筍魂「なんとまあギャンブルを…」

社長「いま正に二人が語った内容は、K.N.C174年に起こった出来事です。アイム君とオニロ君が来る1年前の出来事でした。そして先の預言について、私とあの人はある決意を固めます――」

━━
━━━━

821 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その9:2017/10/23 00:26:58.331 ID:o4m7nuLYo
【K.N.C??年 会議所 大戦年表編纂室】

社長「どうでしたか?【上申】は」

集計班「…ダメでした。預言書の内容は変更できない、と突き返されるばかりで」

拳をテーブルに叩き集計班は珍しく悔しさを露わにした。先日の希望の星の預言から彼はひどく感情的になり、明らかに工作活動に私情を挟んでいるように社長には見えていた。
この日、集計班は預言書の内容の変更を訴えるべく【避難所の避難所】へ直談判をしに行った。
未だ現れていない“希望の星”をDB騒動後も生かすように、歴史を修正したいと申し出たのだ。

集計班「なぜ、彼らが犠牲にならないといけないんだ…」

社長「…」

預言の内容に食い下がる彼と、酷く冷静な自分自身。一時とは立場が真逆だな、と社長は奇妙な違和感を持った。
彼が熱くなれば熱くなるほど、社長の心は急激に冷めていった。

工作活動で誰かを殺めたことはないにせよ、いつも預言で世界の発展を促すときには他方で立場の弱い何らかを虐げてきた。
進化とは成長の裏で悲劇が起こり得るものなのだと社長は既に納得していた。
自分は誰かに不幸を植え付ける死神だ、と社長は自身の役割を認知していた。

そのもう一人の死神が、なぜかとある兵士の不幸に哭いている。
愚かだ、と社長は彼を憐れんだ。
“たかが兵士の死”ぐらいで、なにをそこまで叫んでいるんだと軽蔑に似た感情を目の前の集計係に向けた。

822 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その9:2017/10/23 00:27:37.500 ID:o4m7nuLYo
>>821
修正

集計班「なぜ、彼らが犠牲にならないといけないんだ…」

集計班「なぜ、彼が犠牲にならないといけないんだ…」

この時点では希望の星が二人になることを知らないので修正

823 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その10:2017/10/23 00:29:41.392 ID:o4m7nuLYo
社長「貴方は、今までどんな汚い仕事でもこなしてきた…教えてください、なにが今の貴方をそこまで突き動かすんですか」

彼を突き放すような冷めた自身の声に、社長は内心で驚いた。

集計班「…私たちの目的はなんですか?」

質問を質問で返され、面食らいながらも社長は当然のように答えた。

社長「『預言書通り』に大戦世界を構築し、維持し続けることです」

集計班は静かに頭を振った。

集計班「違いますよ。私たちの目的はあくまで『大戦世界』の繁栄と発展を支え続けること。預言書はそれを達成するための一つの手段にすぎないんです」

頭をガツンと殴られたような衝撃を社長は受けた。


824 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その11:2017/10/23 00:44:13.831 ID:o4m7nuLYo
その夜、久々に夢に現れた神に社長は事の次第を話しすと、百合神は彼を張り手、貫手、正拳突き、目突、あらゆる手段で彼をふっ飛ばし、後は自分で考えろと早々に去ってしまった。

独り残された暗い夢の空間で、起き上がれずに仰向けに転がりながら、夢の中で社長は考え始めた。

集計班という兵士は、自身が工作活動に協力するようになってから残忍で冷徹な面ばかりが映った。
間近で彼の仕事ぶりを見れば彼への拒否感が増し、その度に社長自身は彼を反面教師として、工作活動にも人情だけは持ち続けなければいけないと思っていた。
ルールをお蔵入りにされ、大戦は一時休止に追い込まれ、クリスマス聖戦では結婚ルールという摩訶不思議ルールで大戦は混迷し、多くの兵士が苦しんできた。

全て預言の内容に沿うために、社長は仕方なく裏工作に勤しんだ。だがその度に、社長は常に未来で苦しむことになる兵士に心のなかで謝罪をしながら、
常に贖罪を背負っている気持ちで今日までを過ごしてきた。一方で彼を見ていると、そのような事を微塵も感じてないような振る舞いをする。
社長自身は常に預言書の内容を疑い、彼の預言書への傾倒具合と行動姿勢に真っ向から対立することで、自身の存在価値の重要性を確認してきた。
確認してきたはずだった。

――“たかが兵士の死”ぐらいで、なにをそこまで叫んでいるんだ。

そこで社長は、今日自身が抱いた思いを振り返り、背筋を凍らせた。

―― いつからだろう、工作活動を強制ではなく自発的に行うようになったのは。
少し前までは嫌々行っていたはずの作業を、何の躊躇いもなく実行できるようになったのは。

変わっていないと信じていたはずの自身の思考が、いつの間にか“慣れ”という毒蟲に感覚を蝕まれ、いつしか自身から人情を破壊し非情さだけを増大させていた。
社長は思わず怖くなり声を上げて叫んだ。叫び、叫び、叫び続けたが、叫んでも心のなかに在る自身の残忍な部分が口から外に出ていくわけでもなく、そのうち気分が悪くなり嗚咽混じりに小さくうずくまった。

825 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その12:2017/10/23 00:54:17.336 ID:o4m7nuLYo
―― 私たちの目的はあくまで『大戦世界』の繁栄と発展を支え続けること。預言書はそれを達成するための一つの手段にすぎないんです。

彼の発した言葉が、社長の頭のなかに繰り返しこだました。

頭痛がひどくなる中、彼を理解しようと百合神の教え通り社長は考えた。
てっきり彼は預言書の内容が絶対だと思いこんでいるものばかりだと思っていた。しかし、彼は常に預言書の書かれた未来と、大戦世界の繁栄を願う自身の信念を天秤にかけていたのではないか。
今までは預言書の未来が世界の繁栄へ繋がると信じていたから、何の疑問も持たずに工作活動を実行してきた。

しかし、今回ばかりは預言書の内容を信じきれなくなったのではないか。
彼の真意が次第にわかってきた。

自らが作り出したDB騒動劇を、新参兵士が相打ちになりながらも沈める。描かれる未来は世界を救う英雄の崇拝だ。
会議所はDB討伐により英雄を奉り、それに触発された多くの兵士が大戦へ一時復帰するかもしれない。

だが、軍神を失ってしまったことへの喪失感は戻ってくることはない。
いくら兵士たちの感情が正負で表され、DBの持つ“負のオーラ”が解放されたとしても、同時に“正のオーラ”を創り出す軍神も居なくなっては意味がない。
恒久的に続く大戦を考えると軍神の存在が不可欠であると、彼は結論付けのではないか。

否、寧ろそのような複雑な事情を抜きに“新参兵士を生贄にすることへのやるせなさ”が、彼を預言修正へと突き動かしているのかもしれない。
それでもいいかもしれない、社長からしたらどちらでもよかった。
どちらも真理だと思った。

社長「ずっと変わってないのは彼のほうじゃないか…」

夢の中でポツリと呟いた言葉はどこにも反響すること無く、泡のように闇の中に溶けて消えていった。
頭痛は収まった。心のなかにあったチクチクした思いもいつの間にか消えてしまった。
どうすればいいか再び社長は考える。自身が取る最善の行動とはいったい何か――


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

826 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その13:2017/10/23 00:57:31.624 ID:o4m7nuLYo
集計班「『預言書』の内容には従わず、私で新たな未来をつくります」

突拍子のない集計班の発言にも、夢の中で考え抜いた末の社長にはその内容が胸にストンと落ちた。

社長「ご一緒しますよ」

以前では考えられないほど、社長は自然に同調できた。
てっきりいつものように突き放されるものだとばかり思っていたのか、声高に宣言したはずの彼はなぜか面食らう格好となった。

集計班「これは危険な賭けです。【避難所の避難所】に気づかれないように、新たな未来の道筋をつくらないといけない。
バレればおじゃんだ、私ひとりでやります」

彼の言葉に、さすがに社長は嗤った。

社長「いまさらそんな言葉は止めてください。事に巻き込んだ張本人じゃないですか」

それに私が否定しても付き合わせる気でしたでしょう、との社長の言葉に集計班は言葉をつまらせた。

社長「それに、私も見てみたくなったんです。【預言に縛られない未来】というやつをね」

集計班「…ですが」


827 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その14:2017/10/23 01:39:59.512 ID:o4m7nuLYo
なおも煮え切らない集計班に、社長は予てより恐れて口に出せなかった自身の思いを伝えてみることにした。

社長「この際だからはっきり言います。

私は貴方が嫌いです。
私を変えたすべての元凶は貴方であり、貴方には私を変えたことへの重い責任がある。
純粋に大戦を楽しめなくなった事への責任、会議で予定調和の発言しかできず皆への贖罪で胸を痛めた事への責任、それに私をバグらせた事への責任。
この他にも挙げればごまんとあります。その全ての責任を貴方は背負っている。

そもそも貴方の非道っぷりも虫酸が走ります。
その度に私は心を痛めてきた。

さらに貴方はいつも唐突だ。
貴方の一挙手一同に付き合わされる私の身にもなってください。何度尻拭いの役割に徹したか、数え切れません。

貴方と付き合えば付き合うほど、預言書という存在を恨んだし世界を恨んだりもした。
その中で、私は工作活動のせいで貴方の性格が豹変したと勝手に決めつけ、貴方をこき下ろし蔑むことで自身の自我を保ってきたんです。
貴方を見る度に自分自身は絶対に貴方みたいにならない、なってはいけないと。この思いだけは絶やさないようにしてきたつもりだった」

集計班「…」

社長の独白に、集計班は目を閉じて俯向いた。その姿を一瞥しながら社長は、ですが、と続けた。

社長「変わったのは私の方だった。
いつからか私は工作活動の内容に疑問を持たず流れ作業のように活動を続けるようになってしまった。
そこに、大戦を良くしようという感情は一切なかった。

変わっていないのは貴方のほうだった。貴方は常に預言書の内容が大戦への繁栄に繋がるかどうかを考え、決断を下していた。
貴方はずっと大戦の事を考えていた。誤っていたのは私の方だったと気づきました」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

828 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その15:2017/10/23 01:45:32.134 ID:o4m7nuLYo
社長「いつか私は、世界の命運を握っていると言いましたね。その気持ちは今も変わらない」

頭を上げると鳩が豆鉄砲を食ったように慌てている彼と目があった。間抜けな面だ、と素直に社長は思った。
こんな奴に今まで指図を受けていたのか、という感情がふつふつと湧いてきたが今は抑えることにした。目の前の小事より大事に目を向けた。

社長「繰り返しますが私は貴方が嫌いです。
貴方は卑怯だ。
私が逆らえないことをいいことに、最後は自分の意見を押し通す。そうやって先程から否定していても、最後は貴方の思い通りになるべく私は付き合うしかない。
これまで何度も何度も経験してきた。もういい加減うんざりだ。


だから、今度ばかりは私が決断します。
自分の判断で、自分の意志で、貴方の考えに同調し付き従うことを約束します。


貴方の片腕となりましょう。
大戦世界を恒久的な繁栄継続に導くため。なにより“希望の星”を救うため。
どんな危険も覚悟の上です」

集計班「いや、だから…貴方は参加する必要はない。今日はお別れの挨拶なんです、今までご苦労様でした」

これほどまでに慌てふためく兵士を翻弄するのは楽しいものだ、と社長は愉悦気に笑った。
特に今までやり込められていた存在を出し抜いた時の充足感は何事もにも代え難い嬉しさだ、と社長は感じた。

これこそが自身の目指す道だと社長はその場で直感した。


829 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その16:2017/10/23 01:54:03.921 ID:o4m7nuLYo
社長「貴方の驚く顔を見れて、これほど“してやったり”と思える時が来るなんて不思議ですね。
考えてみれば貴方も、預言書というどこの馬の骨とも知れない奴が書いた未来予想図に付き合わされて、内心腹立たしかったでしょう」

集計班「…私は――」

社長「【避難所の避難所】が全て悪いとは言いません。ですが地上と天空との板挟みにされた貴方にも同情の余地はある」

社長は晴れ晴れとした気持ちだった。明快な一本の道筋が見えたのだ。

社長「未来は、預言書なんてカビの生えた本に決められるほど単純なモノじゃない。
貴方が一番よく理解してるはずだ。

やってやりましょう。
【避難所の避難所】を出し抜いて、後塵へ希望を託しましょう」

すっと社長は集計班に向かって手を差し出した。
彼は意味が分からず暫くじっと差し出された社長の手を見つめていたが、すぐに全てを理解しホウと一息つき頭を垂れた。

集計班「全てを許してくれとはとても言えません。ただ、私は貴方を信じきれなかったのかもしれない。もっと早くこの考えに至れば良かった――」

そうして、再び集計班が顔を上げた時。社長は彼の蒼い瞳が熱意に燃えていることを悟った。
彼は社長の手をがっちりと掴み、不敵に笑った。

集計班「一世一代の大勝負ですよ」

社長「もとより覚悟の上です」

二人は声を出して笑いあった。【会合】で二人がこうして心から意思を通わせたのは初めてだった。


830 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その17:2017/10/23 02:10:18.272 ID:o4m7nuLYo
社長「私が手伝えることといえば、誰にも気づかれず皆を誘導することぐらいしかできない。ただし、それも私はバグっているため正攻法ではないでしょう。
時間がない今回の預言破棄に関して、私の直接的な行動は役に立たないかもしれません。

それでは、私は敢えて道化師となりましょう」

集計班「道化師?」

ニヤリとして社長は頷いた。先程、社長が彼を出し抜いた時、もし彼ではなく【避難所の避難所】を出し抜けるとしたら、どれほど可笑しいか。
恐ろしい事を想像してしまったのだ。

社長「私が貴方の信念を皆に伝える水先案内人となりましょう。
そうですね、【占い師】なんてどうですか。私は今このときより【占い師】となりましょう。きれぼし語で預言書通りの内容を占うんです。
怪しくて胡散臭くて、とても中身がなく根拠のない役割に見える。

ただそれは仮初めの姿にすぎない。
誰しもが安心して気がつかない中、貴方が変えたいと思う未来を秘密裏に導く。そのために私が矢面に立ち皆の注目を逸らせ、時には呆れさせ、笑わせ続けるのです。
皆に誰も知らない未来を前もって案内するための先導も兼ねて」

831 名前:Chapter4.大戦に愛を 対立編その18:2017/10/23 02:13:30.095 ID:o4m7nuLYo
集計班「それはあまりにも危険だ。貴方のこれまでの行動は【避難所の避難所】に認知されていないんです。わざわざ危険に身を置く必要はないのでは」

社長「危険に身を置いたピエロは虚言を織り交ぜながら可笑しなショーを続ける。一際輝きますよ。
【避難所の避難所】は始めこそ私を疑うかもしれないが、そのうち害がないとわかれば放置をする。
見方を変えれば、世界に忠誠を誓っているピエロでもあるのです。そうすると、私の振る舞いを知らず知らずのうちに【避難所の避難所】は黙認するというわけです。

だからこそ、こちらが預言を破棄したと奴らが気がついたときには、既に預言の未来などどこへやら。取り返しの付かないことになる。
これほど痛快なことはないでしょう?

私の行動はただの自己満足に過ぎません、ただ貴方と私の決意の表れを形に残したいんです。
この狂った世界で踊り続けた私たち二人の勇姿を、そしてこれから世界に産み落とされる悲しき英雄にエールを贈りたいのです。

大戦世界という大舞台で私は見事に道化師を演じてみせましょう。

道化師はなにも人を笑わせるだけでなく奇術も行うものです。
奇術というものは皆を心底驚かせて初めて成功なんです。


失われるはずの生命を救う。


全てが変わった時、貴方と私の一世一代のショーは終焉を迎えカーテンコールに応えるというわけです。いかがですか?」

ぼうと呆けていたままの集計班は、“可笑しな話だ”と笑った。
その後の決意に満ちた瞳を見て、言葉に出さずともその時から二人は真の同士となった。

832 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/23 02:16:37.519 ID:o4m7nuLYo
長かったですが、社長回想編は以上です。
当初正体のしれなかった二人は、明確な意志があって行動してたんですねってお話でした。
社長のキャラがかなり踏み込んでいますが、お許しください〜 最初からこう描きたかったんです

833 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/10/23 02:17:25.028 ID:o4m7nuLYo
社長の占いも次回の更新でようやくご紹介できます。3年ぶりに日の目を浴びます。

834 名前:社長:2017/10/23 16:20:10.807 ID:/wucmrI20
更新乙。色々と明らかになる感じがいいすね

835 名前:社長:2017/11/03 23:15:30.246 ID:0
アイム/オニロ
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/954/wars01.jpg

軍神/DB
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/955/wars02.jpg

オニロ君は中性的なイメージがあるけどどうも女の子っぽくなってしまう・・・
DBは本編描写では人間よりでかいって描いてるにも関わらず軍神よりちっちゃくなってるけどそこは遠近法みたなものだと・・・

836 名前:Chapter4.大戦に愛を:2017/11/04 01:08:42.642 ID:o
>>835
おいおい神か
オニロ君は元々そんなイメージで書いたキャラなんでイメージ通りだと思います。アホ毛は正義。
アイムくんは思ったより凛々しくてかっこいいでつね。
DB死すべし

837 名前:社長:2017/11/05 00:05:53.614 ID:0
魔王791/筍魂
https://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/956/wars03.jpg

魔王様は閉眼キャラって感じに。開眼したら強い感じだけど、魔王様に限っては開眼しなくても強いよね…。あと服装は参謀の書いた奴とほぼ一緒。(魔王っぽい)
魂さんはフィリピン・パブ店長っぽい感じに。ポーズはアイム君といっしょ。(戦闘術魂の構え?)



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