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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

550 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その1:2015/08/11 22:54:25.408 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 参謀「竹内さんの下へ向かうように指示してきたのはシューさんや。
“一生のお願いだから頼む”と置き手紙に書いてありゃ、行かないわけにはいかんしな」

参謀、竹内、そしてアイムが集合した編纂室では情報を整理するために円卓テーブルを囲むように会議が開かれた。
アイムが現代に戻るまでの経緯、そして竹内が連れてこられた経緯などが滔々と話されていった。
その会議の中心にいたはずの集計班の姿はない。

冒険家 スリッパ「つまり、シューさんの置き土産が竹内さんということになるのか…」

たけのこ軍 オニロ「スリッパさん…そんな言い方は、まるでシューさんが二度と戻ってこないかのような…」

たけのこ軍 社長「みんな!いやだよね!」

きのこ軍 アイム「戻ってきたらシューさんがいなかったのはショックだな。なあ、もしかしてオレがムリヤリ過去の歴史を改変したから、シューさんが消えたんじゃないか?」

たけのこ軍 オニロ「それはないと思うよアイム。ボクたちは、アイムが現代に戻るために起こしたであろう歴史改変の“波”を体感した。
その時点で、シューさんの姿はもう無かったんだ」

たけのこ軍 社長「ちなみに百合神さまは時を超えられる」

きのこ軍 ¢「…こんな時に落ち込ませるようなこと言うのは悪いけど、もうシューさんは帰ってこない。そんな気がするんよ」

たけのこ軍 社長「ふざけてんだべ?」


551 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その2:2015/08/11 22:55:21.970 ID:gOOLcBf2o
冒険家 スリッパ「いや、¢くんの言うとおり、最悪の事態は常に想定しないといけない。
シューさんの無事が一番だが、もう戻ってこないと想定した上で今後の対策を練ったほうがいいだろう」

長い間、編纂室に沈黙が訪れた。集計班の失踪は、会議所の実務的な損失よりも、各々の心の支えを失った精神的な損失のほうが遥かに大きかった。
良くも悪くも、集計班は常に会議所に“居た”。だからこそ、兵士たちは集計班を頼り困ったことや面倒事を全て押し付けることもできたのである。
久々にほぼ全員が集まった会議は、まるで通夜のように全員が押し黙り、深い沈黙に包まれていた。


552 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その3:2015/08/11 22:56:20.883 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 アイム「…おいテメエ、“アレ”はやらないのか?」

たけのこ軍 社長「オニロ君、キミだね?」

きのこ軍 アイム「いや、お前だよお前」

たけのこ軍 社長「えっ!? オレ!?」

たけのこ軍 オニロ「もしかして、社長の占いのこと?」

きのこ軍 アイム「そうだよ。何時だって、流れの転換点にはアイツの占いがあった」

たけのこ軍 社長「え」

きのこ軍 参謀「そういえばそうや…」

竹内「昔から社長は変人だったな。昔とはまたベクトルが違うがな」

たけのこ軍 社長「ちょ、ちょっと待ってくれアイム君。百合本5冊で手を打とう」

きのこ軍 アイム「誰も意味なんて理解できやしないが、会議とアイツの占いは切っても切れないモノなんだろ。それはオレも認めてやる。さあ占いを出しやがれ」

たけのこ軍 筍魂「申し訳ないがきのこ軍兵士のツンデレはNG」

たけのこ軍 社長「…」

社長は顔を伏せ、一言も言葉を発す素振りはない。
それどころか、小刻みに身体を震わせ始めた。身体も全体的に青ざめバグっぽい。


553 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その4:2015/08/11 22:57:19.267 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 ¢「しゃ、社長の様子がいつもと違うんよ」

たけのこ軍 加古川「いつもはシューさんにフラれると間髪入れずに預言してたような」

たけのこ軍 斑虎「無理に占わせようとしているからおかしくなったんじゃ」

たけのこ軍 オニロ「いや、でもよく考えたらおかしいのはいつものことじゃあ…」


たけのこ軍 社長『おきのどくです!!!!!』


全員「!?」

社長の突然叫びに全員は目を見開いて、社長の方を見つめた。
社長は立ち上がり、血色の良いバグを全面に貼り付けた様相で、占いを始める。


554 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その5:2015/08/11 22:58:16.557 ID:gOOLcBf2o
たけのこ軍 社長『ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ!』

そう告げ、周りに座っている全員を見回す。
社長の視線が、一瞬、空白の集計班の席で止まったかのようにオニロには見えたが、占いは続く。


たけのこ軍 社長『預言?しらね^^』


きのこ軍 アイム「はぁ?お前、なに自分の存在を否定してるんだよ」


たけのこ軍 社長『皆食べようぜ〜☆』


たけのこ軍 社長『アア オワッタ・・・・・・・・!』


ストンと社長は自分の席に着く。占いは終わったらしい。


555 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 悲しみの会議編その6:2015/08/11 22:59:48.087 ID:gOOLcBf2o
きのこ軍 参謀「えーと、占いの内容は
『おきのどくです!ふねもでていったし、あんたたちのおかげだよ! 預言?しらね^^ 皆食べようぜ〜☆ アア オワッタ・・・・・・・・!』
やな」

きのこ軍 アイム「相変わらず意味不明だな。おい、要訳しやがれ」

たけのこ軍 社長「ダクソして寝よ」

きのこ軍 アイム「プッツン。殺すッ!」

たけのこ軍 斑虎「タンマ!アイム、タンマ!」

竹内「ハハッ。見ない間に、随分と賑やかになったものだな」

冒険家 スリッパ「ふふ、本当にな」


へんてこな占いが、初めて会議を正しい方向に導いた。会議の沈黙を打破したのだ。
こうして社長の占いで、兵士たちは再び少しだけ活気を取り戻したのだった。


556 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/08/11 23:00:10.659 ID:gOOLcBf2o
少しずつでも更新していくスタイル

557 名前:社長:2015/08/11 23:05:15.091 ID:xpuHfegQ0
タネフフっぽい

558 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その1:2015/08/22 23:48:16.915 ID:4S8Gc2Yoo
冒険家 スリッパ「聞きたいことは山ほどあるが…まず、本来の『目的』について話してもらってもいいか」

たけのこ軍 抹茶「『過去の時代で、スクリプト工場の跡地を見つける』ことですね。はい、確かに工場の跡地をK.N.C55年でも見つけました」

時限の境界に居座り続ける膨大な数のスクリプト。会議所の地下に幽閉されていたスクリプトの数から明らかに増加している。さらに今まで誰も目撃したことがなかった巨大スクリプト『NEXT』の登場。
DB主導で『スクリプト生産工場』を現代、過去のいずれかの時代で建設し、スクリプトを生産した作成した事実に他ならない。スリッパや集計班を始めとした兵士は、予てより生産工場の痕跡を追っていたのである。

そして、アイムが筍魂に訓練をつけてもらっている頃、調査班は現代にて風化した生産工場らしき跡地を発見。
上記の仮説のもと、会議所は適当な時代に目星をつけ、第二次討伐隊を過去の時代に送り込んだ。

生産工場の痕跡を追跡するため――
あまつさえDBを発見し捕獲するため――


559 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その2:2015/08/22 23:52:00.056 ID:4S8Gc2Yoo
たけのこ軍 抹茶「工場はK.N.C55年時にも同じく破壊されていましたが、破壊されてからまだ日は浅いものと見られました」

きのこ軍 someone「おそらく破壊されてから4、5年ぐらいて感じだったかな」

たけのこ軍 社長「百合神様は全てを破壊できる能力を持っているらしい」

きのこ軍 参謀「ふむ。なら、スクリプト工場建設年代を特定するのは思っていたよりも容易いかもしれんな」

たけのこ軍 斑虎「それが…そう、うまくはいかないかもしれないんだ」

きのこ軍 ¢「どういうことだ?」

たけのこ軍 社長「ふざけてんだべ?」

たけのこ軍 抹茶「スクリプト工場の規模から考えて、時限の境界に跋扈しているスクリプトの数と生産数とで整合性が取れない気がするんです…つまり――」

たけのこ軍 オニロ「――スクリプト工場は“複数”ある?」

オニロの言葉に神妙な面持ちで頷く抹茶。

きのこ軍 黒砂糖「…そういえば、今回の騒動中にDBを見た者は誰も居ないことに少し前に気がついたんだ。それで、ここにいる兵士と、DBの行動について話し合っていたんだが――」


560 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その3:2015/08/22 23:58:17.470 ID:4S8Gc2Yoo
DB討伐隊は、今回の騒動の主犯格であるDB捜索を第一の目的として設立された軍団だ。

――しかし、未だにDBの姿すら捉えられていない。

冒険家 スリッパ「…DBの現在の行動パターンとして、大きく分けて二通り」

DBの所在の推理は以下の通り。
1. DBは現代[K.N.C185年]に留まっており、今もどこかに姿を隠し続けている。DBが本騒動の主犯であることは間違いないだろうが、現在の歴史改変は主にスクリプトが自主的に行っている。

2. DBはスクリプトと同じく、時限の境界に留まり続けている。時限の境界の制約T【時限の境界に一定時間以上留まり続けられない】を利用し、ランダムな年代に跳び、スクリプトと同じように歴史改変を実行。
  その際に、新たなスクリプト工場を作成し、その場で破壊するか、数年後に破壊するかして、スクリプトを無尽蔵に増やし続けている。
  歴史改変を行うと制約U【その時代の歴史改変を行わない限り、現代へ戻ることはできない】の内容を履行することになり、再び時限の境界に戻り、またランダムな年代に跳び…と、無限にリピートする。


きのこ軍 きのきの「選択肢2の方が、現実味があるな。時限の境界で籠城を続けているスクリプトたちと行動ルーチンは同じことになるな」

たけのこ軍 社長「北斗「貴方は同じ事を繰り返すでしょう」」

たけのこ軍 オニロ「極端な案だけど、例えば選択肢2の通りDBが行動しているとして。過去の年代へループしてワープしているとしても、限りはありますよね。
過去は有限。無限じゃない。つまり、DBが過去の時代を全て跳び終わり、これ以上時限の境界を利用できない時を狙って捕獲、もしくは討伐するっていうのはどうなんでしょう?」

たけのこ軍 筍魂「根気よく待つ作戦か。悪くないな」

たけのこ軍 加古川「それが…どうも長く待っていられないみたいなんだ」

たけのこ軍 筍魂「そんな長い時間、用意されているわけ無いだろッ!!(テノヒラクルー)」

老眼鏡を外し、目頭を抑えている加古川の姿は、いつもよりも酷くくたびれて見えた。

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

561 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 生産工場とは編その4:2015/08/22 23:59:43.731 ID:4S8Gc2Yoo
【K.N.C??年 ???】

???「フハ、フハハハハハハ!!」

歓喜に満ちた笑い声。気色悪いガラガラ声が、ガランとしたフロア内によく響いた。

???「感じますねぇ、この瞬間もッ。オレ樣の元に【世界の力】が集結しているのがッ。“実感”できるゥ」

舌を突き出し、まるで尻尾を振る犬のように声の主は興奮状態に包まれている。両の手の拳を握りしめ、自らがより強大な存在になりつつあるこの瞬間に感銘を受ける。
声の主の身体からは、僅かではあるが薄ぼんやりとした光が放たれている。この瞬間こそが至福で愉悦な時間。

“全世界の兵士から奪った力”を吸収し続け成長を続ける自身の現状に、笑いをこらえることができない。


???「兵士の気力を、精神力を、魂を奪い“喰らうッ”!!これ程までに楽しいことがあるだろうかッ!愉快、愉快ッ!!!」

会議所が歴史改変に手をこまねいている間にも、異型の存在は強大化し続ける―――


562 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/08/23 00:00:01.634 ID:sh12dLiwo
ラスボスが出てこないことで有名なssです

563 名前:社長:2015/08/23 02:01:10.730 ID:87lDBqGs0
更新乙

564 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 改変と歴史の関係編その1:2015/08/30 23:25:00.526 ID:qhQJv00go
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

たけのこ軍 加古川「最新の統計で明らかになったことだが。
きのこの山、たけのこの里、両方で以前に比べて大戦にやる気を見せる兵士が激減している」

『街角アンケート〜あなたは大戦にどれくらい興味を持っていますか?〜』という、
ポップな字体で書かれたアンケート用紙を見せる加古川。しかし、結果はなかなかおぞましいことになっていた。

たけのこ軍 加古川「騒動前は、『大戦に参加する』と答えた兵士が93%だったのに対し、最近は22%にまで低下。
しかも現在も、刻一刻とその数は減り続けている」

たけのこ軍 社長「参加ダウンの原因はトイレじゃないの」

たけのこ軍 791「つまり、歴史改変の多さと大戦兵士のやる気には少なからず相関がある。そう言いたいんだね?」

たけのこ軍 加古川「ああ、そのとおりだ。これはあくまで私の所感だが、スクリプトがきのたけを敗北の歴史に塗り替えられる度、
現代の兵士の士気が落ちている。歴史改変の修正を受けた一般兵士たちは、大戦を
『スクリプトに妨害され続け終戦まで戦える機会が少ない』戦いだと認識するようになり、やる気を無くしているのだろう」

たけのこ軍 社長「大戦○、たけのこ○、改変×」

きのこ軍 ¢「このままじゃあ大戦を開こうとしても、参加する兵士が少なすぎて大戦を遂行できない。
大戦ができなければ“歴史は前に進まない”。
僕たちの時間は一生止まったままになってしまうんよ、びえええええええええええええええん」

たけのこ軍 山本「待ち続けるのは得策じゃ無さそうだな」


565 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 改変と歴史の関係編その2:2015/08/30 23:30:22.911 ID:qhQJv00go
冒険家 スリッパ「もし、DBの行動パターンが選択肢2の場合。今この時も、スクリプトは数を増やし続けている。
これを阻止するためには、過去に行われた歴史改変を全て元の歴史に書き直し、結果的にスクリプトを全滅させる方法がひとつ。
まあ、歴史改変を完全に知覚できているのは、現在オニロだけだが…

あるいは、スクリプト工場を発見することに力を注ぎ、討伐隊の手で随時破壊。
スクリプト工場を破壊さえすれば、歴史を荒らしていたスクリプトは存在しない事になり、
結果として複数同時の歴史が基に書き直されることになる」

きのこ軍 アイム「もしくは両者の意見を取ったハイブリッド案はどうだ?
歴史改変を行った年代に跳びスクリプトを破壊しながら、スクリプト工場を捜索し破壊する。これならどうだ?」

たけのこ軍 社長「いいぜ。」

きのこ軍 参謀「なるほど。歴史再改変の片手間で、スクリプト工場を発見し破壊すれば一石二鳥となるわけや」


566 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 改変と歴史の関係編その3:2015/08/30 23:31:08.375 ID:qhQJv00go
冒険家 スリッパ「いい案だ。オニロにはキツイ仕事になるが、今から歴史改変されたままの時代を全て探してもらい、
地上部隊の兵士を手当たり次第、時限の境界に送り込もう」

たけのこ軍 オニロ「…はい(ゲッソリ)」

たけのこ軍 加古川「これが社畜だ」

冒険家 スリッパ「…後は、時限の境界の仕組みさえわかればいいのだが…」

きのこ軍 アイム「そこで、オレの話になるわけだな。オレが抹茶や斑虎さん、someoneさんと違い、
過去の時代に取り残されたのはもう皆知ってるよな?」

たけのこ軍 オニロ「よく帰ってこれたねアイム!本当にすごいや、さすがアイム!」

きのこ軍 アイム「…それはテメエのおかげでもある。ありがとな」

思わぬお礼の言葉に、キョトンとするオニロ。

たけのこ軍 筍魂「申し訳ないが、きのこ軍のツンデレはNG」


567 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/08/30 23:31:31.278 ID:qhQJv00go
短いですがここまで。次回、ようやく新たな制約の内容が明らかに。

568 名前:社長:2015/08/31 01:26:15.937 ID:G.zWVLss0
制約ははじめ複数人で境界に入らないといけないかと思ってたらしい。
でも違うのかなー

569 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その1:2015/09/07 00:07:45.895 ID:wh2Sobtso
アイムは全員に、これまでの経緯を改めて説明した。
時限の境界に突入してからのスクリプトとの戦闘。過去の時代への跳躍、過去の大戦での行動。そして、独りだけ過去の時代での幽閉。
今回の第二次討伐隊の行動だけでなく、前回の第一次討伐隊の際のアイムの行動も周りに話し。比較することにした。

きのこ軍 ¢「アイムが他の3人と違い現代に戻れなかったてことは。他の3人と違う行動を取っている可能性が高いと思うんよ」

たけのこ軍 抹茶「確かにそうですね。ですが、K.N.C55年の大戦中は始終私達と行動をともにしていて、特に変わった行動も見られませんでした」

きのこ軍 ゴダン「つまり、アイムくんと3人の行動に違いがあるとしたら――」

全員「――時限の境界内(ガキどもの美肉?)」

たけのこ軍 ビギナー「時限の境界内の突入から、もう一回話を聞いたほうが良くない?」

もう一度時限の境界突入から説明するアイム。

たけのこ軍 791「うーん、わからないなあ。アイム君と他の3人の違い…頭にバンダナを巻いているか巻いてないか、とか?」

たけのこ軍 社長「(人間?)」


570 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その2:2015/09/07 00:12:27.752 ID:wh2Sobtso
きのこ軍 someone「…それなら、第一次討伐隊の時もアイムは取り残されたはずじゃないかな?」

第一次討伐隊突入の際も、アイムはバンダナを巻いていた。

たけのこ軍 791「ああ、そっかあ…抹茶にシトラス」

たけのこ軍 抹茶「え!?」


たけのこ軍 ジン「時限の境界内でスクリプトに攻撃した回数が一番多いとかはどうでしょう?」

たけのこ軍 社長「北斗「いいぞォ兄貴ィ!!」」

たけのこ軍 抹茶「今回の戦闘ではアイム君は専らアシストだったので、攻撃回数としては僕のほうが多いと思います」

たけのこ軍 ジン「そうですか…」

たけのこ軍 791「抹茶にシトラス」

たけのこ軍 抹茶「これ僕が悪いんですかね?…」

きのこ軍 黒砂糖「だあああ、わからないなあ」


571 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その3:2015/09/07 00:14:46.898 ID:wh2Sobtso
たけのこ軍 筍魂「こんな周りに迷惑をかけるデキの悪い弟子をもった覚えはないゾ」

きのこ軍 アイム「随分とヒドイいわれようじゃねえか…」

たけのこ軍 オニロ「ま、まあまあ。アイムもそう怒らずに。えーと、えーと。
アイムはスクリプトからの攻撃を受けてないよね。スクリプトからの攻撃を受けているか、受けていないで制約が決まる、とかはどうでしょう?」

きのこ軍 参謀「確かにアイムはスクリプトから攻撃を受けてないが、それなら抹茶も攻撃は受けてないやん。
まあ、抹茶は負傷したsomeoneと斑虎を抱えていたから攻撃を防いでいたのは専らアイムだが――」

そこで、参謀は何かに気がついたように言葉を止め、瞬時に思考を巡らせた。

きのこ軍 アイム「おいどうした、わかったのか参謀」

たけのこ軍 社長「これマジ?」

きのこ軍 参謀「ちょっと黙ってろや、いま分かりそうなんや」

アイムはなぜ今回だけ取り残されたのか。

第一次討伐隊と第二次討伐隊の違い。
突入の経緯。
扉への突入。


572 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その3:2015/09/07 00:17:31.412 ID:wh2Sobtso

第一次討伐隊時
――扉に一番近かったジンが真っ先に吸い込まれそうになるが、咄嗟にアイムが……つかむ。
――アイム「全…、互いに……手を……なよッ!」
――全員が……の…掴み、必死に見えない力に抵抗する。

第二次討伐隊時
――アイムの背後で、負傷するsomeoneと斑虎を抱え抹茶は扉に向かって一目散に走りだす。
そして、抹茶は……ら、扉に飛び込んだ。
――NEXTの動きが一瞬止まった瞬間にアイムはすぐさま背後の扉に……で飛び込んだ。

冒険家 スリッパ「まさか…そういうことなのか」

きのこ軍 参謀「ああ、そのまさかやな。わかったぞ、【新たな制約】がッ!!」


573 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その5:2015/09/07 00:19:38.535 ID:wh2Sobtso
きのこ軍 参謀「まず、今回の【新たな制約】は第二次討伐隊突入時にアイムにだけ降りかかったもので。
それは即ち、アイムが他の隊員とは違う【行動】を取り、それが結果として制約に抵触してしまったということや」

たけのこ軍 オニロ「でも、話を聞いても別段アイムが特異な行動を取っているとは思えなかったです…」

きのこ軍 参謀「第一次と第二次を比べても、アイムの行動のおかしさは無いように思える。
しかし、一つだけあるんや…決定的な違いが」


―― 【時限の扉】の通過時


574 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その6:2015/09/07 00:22:59.017 ID:wh2Sobtso
きのこ軍 参謀「時限の扉を通る時。第一次討伐隊での行動は以下のとおりだ」


――扉に一番近かったジンが真っ先に吸い込まれそうになるが、咄嗟にアイムが【手をつかむ】。
――アイム「全員、互いに掴んだ手を離すなよッ!」
――全員が【互いの手を掴み】、必死に見えない力に抵抗する。


きのこ軍 参謀「続いて第二次討伐隊」


――アイムの背後で、負傷するsomeoneと斑虎を抱え抹茶は扉に向かって一目散に走りだす。
そして、抹茶は【二人を抱きかかえながら】扉に飛び込んだ。
――NEXTの動きが一瞬止まった瞬間にアイムはすぐさま背後の扉に【単独で】飛び込んだ。


たけのこ軍 オニロ「??これに違いがあるんですか?」

きのこ軍 アイム「…!!そうか、わかったぞ。『共有動作』だなッ!」

無言で頷く参謀。


575 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その7:2015/09/07 00:27:27.172 ID:wh2Sobtso
第一次討伐隊。
制約Tにより、アイムたち討伐隊は、近くに位置する時限の扉に吸い寄せられることになった。
その際、吸引力に少しでも抵抗しようと、全員はお互いの手を握り合い、 “触れていた”。


第二次討伐隊。
今度は自らの意志で時限の扉をくぐることに成功したものの。
スクリプトの攻撃により斑虎とsomeoneは負傷。抹茶は二人を抱えながら、時限の扉を通る。
三人は“繋がっていた”。
一方で、アイムは三人の突入を確認してから単独で突入。誰とも“繋がっていない”。


全員が身体の一部に触れていた状態で時限の扉を通り、誰かが歴史改変のトリガーを引いた場合
―つまり、直接的な歴史改変者になった場合―制約Uは、他の隊員にも“間接的”に共有される。

しかし、複数の隊員が誰とも触れ合っていない状態のまま時限の扉を通った場合。
隊員Aが歴史改変を実施したとしても、制約Uの履行は【残りの隊員には共有されない】。
隊員Bは、別の歴史改変を実施しない限り制約Uは履行されず、現代へ戻ることはできない。

参謀の推理は、【時限の扉を通る際、各員が身体に触れ合うことによる“共有”動作を行うことで、
一人の歴史改変行為は全員に“共有”される】ということなのだ。


576 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 制約V編その8:2015/09/07 00:29:20.220 ID:wh2Sobtso
冒険家 スリッパ「時限の境界に関する制約という観点からすれば、
時限の境界内における制約、時間跳躍した時代での制約、そして――時間跳躍する際の制約。
制約の分類としては、何らおかしいことではないな」

たけのこ軍 オニロ「これ、もしかしてたまたま全員が触れ合わずに突入していた場合は、
4人とも別々に歴史改変をしなくちゃいけなかったてことですよね…」

たけのこ軍 加古川「考えただけでもゾッとするな…」



――【制約V】 時限の境界で複数が時限跳躍をする際、身体の一部分でも触れたまま時限の扉を通れば、
残りの時限の境界に関する制約状況が複数員同士で、“共有”される。


577 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち :2015/09/07 00:30:10.460 ID:wh2Sobtso
時間制限、歴史改変、共有。
制約の内容って難しい。

578 名前:社長:2015/09/07 00:33:21.730 ID:swZFropA0
なるほど同じ行動か…

579 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/09/13 20:16:25.536 ID:RwNPcQxY0
今週の更新はお休みくさい。また来週

580 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その1:2015/09/14 22:39:56.546 ID:Dl16hwNgo
きのこ軍 参謀「時限の境界に関する制約は大分明らかにされてきたな。
アイムの言っていたハイブリッド案(スクリプトに荒らされている時代で歴史再改変&工場発見)を推していくべきやな」

きのこ軍 ¢「いや、僕は反対なんよ。現状で明らかにされている制約だけが全てとは思えない。
アイム君はなんとか帰ってこられたけど、今後ふとした拍子で未帰還者が出ることも考えられなくはないんよ」

たけのこ軍 791「でも、私たちが行動を起こさないと、会議所や大戦世界は、活力を失い終いには崩壊に追い込まれる。
それを黙って見過ごせって言うの?」

きのこ軍 ¢「それでも反対なんよ。そもそも791さんの言うように、大戦世界がすぐに崩壊すると決まったとわけではない。
皆がわざわざ時限の境界に飛び込もうとしなくても、何か解決策があるかもしれないんよ」

きのこ軍 黒砂糖「そんな悠長なことは言ってられないのでは…」

581 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その2:2015/09/14 22:41:20.291 ID:Dl16hwNgo
きのこ軍 ¢「そうは思わないんよ。今までだって、僕たちはみんなで額を寄せあって、話し合いで喫緊の事態に対処してきた。
今度もきっとそうだ。今こそ全員が一致団結して会議をすることでこの騒動に対する名案が生まれ、
そして結果として兵士の安全も確保されるんよ!」

たけのこ軍 オニロ「確かにそうかもしれません…しかし、このまま現代に留まり続けてもDBは見つけられません。
ボクたちはDBを必ず見つけ、討伐しなければいけないんです」

きのこ軍 ¢「だからッ!“討伐”ではなくて“捕獲”だと言っているだろ。
集計さんもいた以前の会議で捕獲をメインに据えることは決定されていたはずだ!何度言えばわかるんだッ」

¢が苛ついたように声を荒げオニロに反論した。
珍しいな、と遠巻きに傍観に徹していたアイムは、¢の違和感に誰よりも早く気がついた。


582 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その3:2015/09/14 22:44:38.481 ID:Dl16hwNgo
¢は会議所内で一番の現実主義者であり、理知的で客観的視点を持つ兵士だ。
集計班が理想主義者だったということもあってか、度々繰り出される集計班の突拍子もない意見に、
¢がたしなめるという会議の流れが常態化していた。

今回も会議に参加しているメンバーのほとんどが、過去に跋扈するスクリプトやDBの討伐に躍起とする中、
¢だけが声高に討伐隊派遣に反対を表明している。

熱に浮かされた兵士たちを自制させる意味で、¢は会議内で重要な役職を担っている。
常に会議兵士の考え方からは一歩引いた思考は、その主張が正しい、誤りに限らず。全員の逸る気持ちを一度抑え、
全員が冷静になる場面を¢から与えられ、そして全員を成長させる。

しかし、アイムには、今日の¢の主張は現実論とは程遠い、時限の境界突入反対に固執しすぎているように思えた。
冷静な¢が声を荒げていることが、¢自身に焦りが生じていることへの表れだ。
非常事態だからしょうがないとも言えるが、果たしてそれだけなのだろうか。

本当に会議所の兵士の安全を守るためだけに主張しているのか。
激しい意見が飛び交う議論の中、アイムは独り訝しむ。


583 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その4:2015/09/14 22:46:44.943 ID:Dl16hwNgo
なぜ、¢は討伐隊派遣を頑なまでに反対するのか。アイムは考える。


―― 時限の境界の制約内容が全て明らかにされてない可能性があるから? ―― 

一理ある。これに関して¢の主張は最もだ。時限の境界に係る制約の総数は明らかになっていない。
3つの制約こそ見つかれど、この制約が時限の境界に係る全てだとは到底断言できない。
つまり、これからも、討伐隊は目に見えない制約に気をつけながら行動をしなくてはいけない。


―― 現代に留まることで解決策が生まれるかもしれない? ―― 

一理ない。現代に留まり続け捜索を続くてもDBを見つける術がない事は以前に証明されている。
さらに、現代には地下部隊(現在はオニロのみだが)が留まり続け、本丸の編纂室は情報の最前戦として機能している。
現代にいる兵士の役割は、あくまで過去へ跳ぶ兵士たちの補佐に過ぎない。
全員が現代に留まり続けることは、寧ろ悪化の一途を辿りかねない。
それは¢もよく理解しているはずだ。


584 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その5:2015/09/14 22:48:44.852 ID:Dl16hwNgo
兵士の安全を殊更に主張し、その主張の“副産物”として、現代に留まり続けることが必要だという主張が
生まれるのならばまだ分かる。
ただ、今の¢はこの二論を同列に語ってしまっている。意見の軸がぶれているのだ。
兵士の安全を守りたいのか、留まり続けたいのか。どちらかはっきりしない。

彼の中ではっきりとした軸は“DBを撃破せずに捕獲する”という信念、ただひとつだ。


――では、なぜ¢はDBを“討伐”したがらないのか? ――


アイム「…まさかッ…!」

短時間で辿り着いた自身の答えに、さすがのアイムも驚愕し咄嗟に否定の意味で首を振る。

あの¢が、そんなことはありえない。だが、しかし――


585 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その6:2015/09/14 22:50:40.426 ID:Dl16hwNgo

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━━━━

きのこ軍 ¢「いや、捕獲するべきだ」
それまで終始黙っていた¢が静かにそう告げると、部屋はシンと静まり返った。
¢の言葉には、常人には表現できないような使命感とそれをも上回る焦燥感が入り交じっていた。
集計班がチラと¢に目配りをする。二人の視線が一瞬交差する。アイムは二人のなんでもない所作が気になった。

きのこ軍 集計班「DBは討伐せずに捕獲することにしましょう。まあまずは発見が先ですがね。いったいどこにいるのやら…」

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━━━━


以前の会議での¢の発言。DB討伐論が主流を占めていた中、¢の鬼気迫る発言に会議の決着は180度方向転換した。
集計班が¢の発言を認めた意図はわからない。それでも、もし今の¢の主張を許してしまえば。

きのこ軍 ¢「このままでは埒が明かない。兵士の危険が考慮される以上、討伐隊派遣は見送るべきだ」

会議所の動きは止まり、無為な時間が流れ。
そして、大戦世界は崩壊の一途をたどる。


586 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 疑念と決意編その7:2015/09/14 22:54:41.074 ID:Dl16hwNgo
きのこ軍 アイム「そうかい。オレはあんたの“尻拭い”をさせられるってことか、シューさん…」

まさか、大戦の未来をオレが案じる日が来るなんてな。そう心のなかで自嘲気味に笑ったアイムは、
先程まで聞く気のなかった会議に意識を向かわせた。
先程まで騒がしかった編纂室は、議論は平行線をたどっているのか、次第に静けさを取り戻しつつあった。

アイムは覚悟を決めた。
目の前に居る兵士たちに、自分自身が説かなければならない。

¢の主張を覆せるほどの論を、アイムが述べなければいけない。
危険を乗り越えてでも大戦世界を守る意思を。覚悟を。







――たとえ、目の前に居る兵士の中に“敵”が潜んでいたとしても。


587 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/09/14 22:56:11.577 ID:Dl16hwNgo
小さな疑念はやがて大きな確信へと変わる。
三章も中盤に差し掛かったと思わせ、まだもうちょい続くらしい。

588 名前:社長:2015/09/14 22:57:45.806 ID:sigWRjo20
ついに中枢に近づいてゆくのか…
オニロ君の出番はまだまだ。

589 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/09/23 21:14:49.579 ID:cNKrK7qYo
今週はシルバーウィークがあったからお休みだぞ(鼻くそホジホジ)

590 名前:791:2015/09/23 22:34:05.735 ID:GMUkgOpco
え?シルバーウィーク中に更新があるって聞いてたんだけど…

591 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/10/14 00:17:34.941 ID:i8mQOukQo
とりあえず明日更新します

592 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その1:2015/10/15 23:07:46.197 ID:oMRm09hso
きのこ軍 参謀「そこまで強く言うとはなあ。確かに¢の言うことも一理ある。
ここは少し休憩を取って、後に会議を再開ということで――」

きのこ軍 アイム「いや、その必要はないぜ参謀」

鬱屈とした空気が蔓延する中、静寂を切り裂いて、一人のきのこ軍兵士が鋭い声を発した。
希望の星。きのこ軍新参、アイムである。

きのこ軍 アイム「思い違いをしているな。全員ここに留まり続けても、オレたちには百害あって一利もない」

きのこ軍 ¢「そんなことはないんよ。きっと打開策は生まれるんよ」

きのこ軍 アイム「その逆だよ¢さん。待てば待つほど、事態は悪化する」

たけのこ軍 オニロ「どういうこと、アイム?」

オニロなら食いついてくると思ったとばかりに口角を釣り上げ、アイムはとうとうと説明し始めた。


593 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その2:2015/10/15 23:09:57.475 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「加古川さん。あんたはさっき『敗北の歴史に塗り替えられる度に、現代に居る大戦兵士の士気が下がっている』。
こう言ったな?」

たけのこ軍 社長「いえてる‥‥‥」

たけのこ軍 加古川「確かにそう言った」

たけのこ軍 オニロ「つまり、多くの兵士は士気を“失いつつある”ということだよね」

きのこ軍 ¢「仮に士気が下がっているとしても、現代に居る僕らには皆を盛り上げる策を講じることはいくらでもできる!
まずは王様制とスキルMT制を復活させて兵士の期待に応え――」

きのこ軍 アイム「その一度失った“士気”てのは、いったいどこへ“向かう”んだろうな?」

¢の言葉を遮り、鋭く相手に切りこむようにアイムは周りにそう問いかけた。

たけのこ軍 社長「よのなかどうなっとるんかのう。」

きのこ軍 someone「向かう?どういうこと?」

たけのこ軍 筍魂「おもしろい、続けてみろ(王者の貫禄)」


594 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その3:2015/10/15 23:15:54.139 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「オレは師であるクソ筍魂から二つの教訓を受けた。その内の一つが、【無秩序の全は一に帰す】という訓えだ」

【無秩序の全は一に帰す】
【“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】

難解とも取れる筍魂から残された言葉の意味を、オニロと探しだした際の訓えの一つである。
オニロは【秩序】と【無秩序】を部屋の汚さに喩え、こう表現した。

オニロ『えと、たとえば部屋がきれいな状態を秩序、部屋が汚い状態を無秩序とすれば、
必ず部屋は汚くなっていく方向に進んでいく、ていうことかな』

全ての万物は、秩序から必ず無秩序に向かって変化していく。
無秩序の要員をたどれば、それは一つの秩序から発生したものなのである。

たけのこ軍 筍魂「クソは余計だゾ」

たけのこ軍 斑虎「兵士の士気消失と、【無秩序の全は一に帰す】てのは、どう繋がるんだ?」

595 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その4:2015/10/15 23:19:43.405 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「たとえば、そうだな」

ここでアイムは席を立ち、手近な本棚から本を数冊手に持ちまた席に戻ってきた。

きのこ軍 アイム「オレは、一人の兵士の心の中には、こうした何冊もの『心の本』が存在していると思っている」

きのこ軍 参謀「なんやそれ素敵やん」

きのこ軍 アイム「兵士の関心事はさまざまだ。¢さんなら自動ツール・引きこもり、参謀ならバイク・お笑いに、
抹茶ならお茶・おしっこに関心があるといったように――」

たけのこ軍 抹茶「おい待て」

きのこ軍 アイム「兵士は、関心事をそれぞれまとめた『心の本』を数冊、数十冊も胸の内に宿している。
心の本には自身の出来事、関心事が日々連々と書き加えられている。
千の兵士がいれば万とも億とも心の本は存在するかもしれない。しかし、中でも全ての兵士が持っている“共通の”本が一冊ある。
それは――」

たけのこ軍 オニロ「『大戦に関する本』」

スリッパ「なるほどッ」


596 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その5:2015/10/15 23:26:16.418 ID:oMRm09hso
きのこ軍 アイム「兵士は誰しも『大戦の本』を心の中に宿している。古参であればあるほどその本のページ数は
膨大なものになっていることだろう。また、新参である兵士も大戦に胸を躍らせているうちは、
心の本には次々に大戦関連の内容が書き加えられていっていることだろう」

ちょうど、あのオリバーのようにな。と、アイムは、年表近くの空中で眠りこけているかのように静止する自動筆記ペンを一瞥した。

たけのこ軍 オニロ「素敵な話だね、アイム。
つまり心の本の一頁、一頁が『兵士の士気、情熱、やる気』そのものってことだよね!さすがはアイムッ!わかりやすい!」

たけのこ軍 社長「さすが 希望の星は 違うぜーー」

きのこ軍 アイム「おまえ…折角のオレの決め台詞をッ」


心の本。

兵士が持つ関心事だけ存在するこの本は、決して最後の頁まで書き切ることはない。
頁は無限、果てなき探求心と好奇心さえあれば、その兵士における心の本は膨大な頁数で満たされ続けることになる。

本の内容はほとんどが至極些細なものだ。その折に、自らが見聞きしたモノ・コト、感じたコトなどが雑多に、
しかし一切漏れることなく連々と今この瞬間も書き加えられていっているのである。

時折、兵士は自らの過去を心の本をそっと開くことで回想し在りし日の栄華に思いを馳せ、胸を躍らせる。
また、他人の熱き思いに充てられた時などは、元気のなかった自分も「今こそ!」という気分になり、
同時に、本の執筆に取り掛かっている心の筆は激烈な速度となる。

詰まる所、自らが積み重ねてきた本の一頁一頁が、当該の関心事への士気であり、やる気であり即ち情熱なのである。


597 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その6 :2015/10/15 23:29:49.182 ID:oMRm09hso
たけのこ軍 山本「でも、それじゃあ。古参であればあるほど心の本の頁数が多くなるというのは必然。
頁数が多いほど士気も断然高まるということになるのでは?」

きのこ軍 アイム「ところがそうはならないよ山本さん。
言った筈だ、万物事象は必ず【秩序】から【無秩序】に変化していく、と」

本は手入れをしなければ劣化していく。否、手入れをしてもいつか必ず劣化していく。

書物で劣化が始まるのは硬い表紙部ではなく、紙でできた頁本体である。
時間が経てば経つほど、紙やそこに書かれた文字は色褪せていく。紙は染み、埃が飛び、カビが生え、蜘蛛の巣を貼る。

目を凝らさないと読めない程度の視認度までに落ちた頁に対する興味は減り、頁をめくる回数は次第に減少していく。
兵士の関心事への情熱は低下していく。そして、完全に心の本の文字が色褪せ、中身が風化してしまった時、
兵士は一切のやる気を喪失するのである。


たけのこ軍 社長「か  い  め  つ」

たけのこ軍 オニロ「心の本の手入れを怠れば―すなわち関心事へ注目を払っていなければ―、
心の本は朽ちていく。兵士は士気を失う」

きのこ軍 ゴダン「なるほどなあ。日々失われつつある士気を、必死につなぎとめているのが会議所の役目でもあるわけか」

兵士のやる気の有無は、心の本の“読むことができる”頁数の多さに左右される。
アイムはそう語っている。

598 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その7 :2015/10/15 23:31:44.181 ID:oMRm09hso
たけのこ軍 791「うん、よくわかったよ。でも、その失われた士気とアイムが言わんとしていることの関係がまだよくわからないな」

きのこ軍 アイム「万物事象が【秩序】から【無秩序】へと向かうのは抗うことのできない自然則だ。

しかし、もしその変化の速度を急激に早めている“邪魔者”がいたとしたら、どうする?」

その“邪魔者”は平時から、人々の心に巣食うゴミやチリといった穢れをこよなく愛する生物だった。

たけのこ軍 オニロ「【秩序】から【無秩序】への急激な変化。有り余る士気から、士気の消失。
つまり、兵士の士気を急激に低下させている…」

たけのこ軍 791「世界から消えてしまったはずの兵士の“士気”を…邪魔者が掻き集めようとしている?」

たけのこ軍 オニロ「そして…そんなことをしようとする奴は唯一…」


全員「――DBッ!!(ジジイ!)』


599 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その8:2015/10/15 23:58:37.214 ID:oMRm09hso
アイムは全員の声に呼応するように、手に持った本を開き、勢い良く手に掛けた頁ごと引きちぎった。

たけのこ軍 オニロ「なにをするんだアイム!貴重な本なのに!
あっ、ていうかそれボクが密かに書いていた小説本じゃないかッ!ヒドイよッ!」

きのこ軍 アイム「士気は、情熱は、正しく心の本の“頁(ページ)”だと、オニロは言った。
こうして引きちぎられた頁はその兵士から失われ、結果的にそいつ自身の士気は低下する。
その頁を、【手当たり次第DBが喰らっている】と考えたらどうだ?」

スリッパ「手当たり次第、DBは兵士の心の本の頁を喰らい続けている。度重なる歴史改変がその行為を可能とさせる。
兵士の士気が、あいつにとっての“餌”だというんだな?
だから平時よりも大幅に士気が下がり、その分DBが増長する」


600 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その9:2015/10/16 00:01:11.710 ID:n5SAhc92o
たけのこ軍 埼玉「だとしたら、DBは、現代で失われた筈の兵士たちの士気をどこかで喰らい続け、
この瞬間も強大化し続けているということたま?」

たけのこ軍 オニロ「あぁ…折角中編まで書いてたのに…」

きのこ軍 黒砂糖「加古川さんが言っていたように、歴史改変と現代兵士の士気喪失は一定の相関があるのは明白」

たけのこ軍 ビギナー「つまり、こちらが時限の境界を使わずに現代に留まれば留まるほど、
歴史改変は行われDBは強大化し続ける…そして強大化したDBは現代に帰還し世界を乗っ取る。それが奴の狙いか…」

きのこ軍 アイム「そういうことだ」

悲観にくれる会議所勢。待てば待つほど、世界の大勢は悪化の一途を辿る。
そうした気持ちを予め見越していたうえで、アイムは逆転策を語る。

きのこ軍 アイム「ただ、失われた頁を貯めこんで成長を続ける醜悪な“掃除機”も――」

いつの間にかテーブルに置かれていた抹茶人形をぶっ叩くと、人形の下敷きになっていた紙は衝撃で俄に宙に浮いた。
その紙をアイムは力を込めてしっかりと掴む。

きのこ軍 アイム「本体をぶっ叩けば、頁を吐き出し元の所有者に戻る。
つまり、失われた士気は元通りになる、てことだ」

アイムは言葉を切り、ぐるりと全員を見回す。大勢は決した。
¢の慎重案支持から一転、会議所は、無茶をしてでもDBの企てを阻止しないといけないという立場を明確にした。


601 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その10:2015/10/16 00:04:23.147 ID:n5SAhc92o
やりきった思いでアイムが頬を緩めようとしたその時――


??『まさか、加古川の発言からDB騒動の企てを看破するだけでなく、慎重案を破棄するまでに至るとは。
末恐ろしい兵士だ、この世界の『秘密』を暴く一歩手前までたどり着いた推測力は、記憶を失っていても流石の一言。だが――』


瞬間、アイムは何処からか向けられる鋭い視線を感じ、背筋を寒くした。


慈愛。悲愴。冷淡。

全てを見透かしたかのようにアイムに突き刺さる“複雑な感情”を伴った其れは、
会議所の反応を見て浮かれかかっていたアイムの心を瞬く間に冷静にした。


602 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その11:2015/10/16 00:10:04.361 ID:n5SAhc92o
瞬時に視線の出処を探す。円卓テーブル内で、ほとんどの兵士は他者の意見に耳を傾け時折口を出し、
アイムを気にかけているものなどいない。
ほとんど居ないはず―――


きのこ軍 ¢と目が合うことさえなければ、アイムは先の視線をまやかしだと思い込んでいただろう。


¢とアイムの視線は交錯したまま、両者ともに離れない。
¢は言葉を発さず、ただアイムをじっと見つめている。

きのこ軍 アイム「――どうやら話し合いは終わったようだな。
¢さん、オレの提案していたハイブリッド案―時限の境界を利用しスクリプトを破壊しながら、スクリプト工場も捜索し破壊する―でいいか?」

編纂室内は静まり、皆の視線が¢に注がれる。
長い間を置いて、¢は表情を変えないまま一回だけ頷いた。

きのこ軍 ¢「――僕はそれでいいんよ」

会議所はこの日、DB討伐に向けて大きな“賭け”へと打って出た。


小さな猜疑心はやがて大きな疑念へと変わる。
アイムは未だ¢を真の敵と見なしていない。だが、一度盛り始めた疑惑の種たる篝火はなかなか鎮火しない。
少しでも疑い始めた相手は完全な味方には成り得ない。これが世間の常識であるし、アイムにとっての常識でもあった。

DBへの打開策を見つけ熱意に燃える会議所兵士勢とは裏腹に、小さな疑念がアイムの中で燃え盛りつつあった。


603 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その12:2015/10/16 00:11:54.499 ID:n5SAhc92o
ちなみに。


たけのこ軍 オニロ「竹内さんは滝本さんに呼ばれたということですけど、どうしてここに?」

竹内「それがワシにもさっぱりとわからん!ハハハッ」

たけのこ軍 社長「わんわんわしわん」

きのこ軍 黒砂糖「見ないうちに、すっかりと老けこんだな竹内さん。まだあの頃の動きは健在かい?」

竹内「もう身体を動かさなくなって久しいのお。老いぼれの日課といったら朝の散歩と昼過ぎのティータイムよ」

たけのこ軍 抹茶「…その腰に携えた長剣は」

竹内「もう何十年も抜刀してないのお。おそらく錆びて鞘から抜くこともできんじゃろ。腰の重りとしてはよう役立ってるな。ハハハッ!」

きのこ軍 アイム「おい、どうすんだよこの老いぼれ」


604 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/10/16 00:12:48.573 ID:n5SAhc92o
DBの目的がようやく公になってきた。
次からけっこう動きます。


605 名前:社長:2015/10/16 00:13:54.190 ID:xpK5m/Ns0
遂に敵の動きが。

606 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編1:2015/10/20 23:51:34.288 ID:gWhnk41wo
【K.N.C180年 会議所】

たけのこ軍斑虎を擁する討伐隊は前回の工場跡地発見からまもなく、K.N.C53年に稼働中のスクリプト工場を発見した。
元々、大戦年表ではスクリプト工場の建造、破壊日時などの情報は一切示されない。
大戦に関し、さらにあくまで表向きの情報しか大戦年表は記載しないのだ、とスリッパたちは結論づけた。
その様をオニロは「オリバーも気まぐれだなあ」と、自動筆記ペンのせいにした。

そのため、半ば人海戦術のようなもので工場の破壊に当たらなくてはいけないので、気力との戦いでもあった。
その中で、幸先良く斑虎たちは一回目で工場を発見した。


工場は完全に無人で稼働していた。幾多の小型スクリプトが、巨大スクリプトを製造し続ける無機物の饗宴を目の前にして、
斑虎たちは大きな衝撃を覚えたものの、迅速にかつ的確に破壊した。


607 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編2:2015/10/20 23:53:17.678 ID:gWhnk41wo
スクリプト工場の破壊は、すぐさま“時空震”として編纂室に歴史改変が通知される。
スクリプト工場を破壊したための改変通知ではない。

過去の討伐隊が“討伐した筈の”スクリプトたちが、今回の工場破壊によって謂わば未然に破壊されてしまった。
つまり、件のスクリプトは、過去の年代で大戦を中止させる悪行を働く前に破壊されたという歴史に“上書き”される。

アイムたち討伐隊が破壊したという歴史も無くなるため、その帳尻合わせのための時空震が発生するのである。

608 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編3:2015/10/20 23:57:54.376 ID:gWhnk41wo
過去に参加した討伐隊全員は、歴史の流れから身を守るシェルターでもある編纂室で過ごす機会が必然的に増加した。
徒に外に出て改変の煽りを受けると、歴史再構築の流れによっては、自身の存在に危険を及ぼす可能性があるためである。
編纂室で地震に関する歴史改変の瞬間を迎えてしまえば、その後に地上に出ても自らの身に変化はない。
過去の経験から証明されている。


実働メンバーは、前述のことから、基本的に編纂室から外出することはなくなった。
そのため、ただでさえ人気のない会議所に拍車がかかり、遂には“過疎所”と一部の兵士たちから揶揄されるようになってしまうのだが。
それはまた別の話。


609 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編4:2015/10/21 00:03:37.434 ID:bVkP.1Nco
また、スリッパを始めとした幾人かの兵士の予想通り、スクリプト工場は一拠点だけではなかった。
幾多のそれぞれの歴史の時代に、スクリプト工場を作っては破棄し、また作っては破棄するを繰り返していた。

同じ場所のK.N.C53年にスクリプト工場が建造、破棄されたら、残党はK.N.C100年に移動し、同じスクリプト工場を建造し
一定数のスクリプトを生産したらすぐに破棄する。ひたすら繰り返す。時限の境界にスクリプトが存在し続ける限り。
時限の境界に留まり続けるスクリプトたちは、自分と姿が同じ物言わぬ同士をそのような手段で急速に拡充していった。


そのような状況が徐々に明らかになる中で、アイム発案によるハイブリッド作戦
――時限の境界を利用しスクリプト&スクリプト工場の捜索、破壊の同時進行―は、会議所兵士の士気の高さも相まって、
徐々に効果を出し始めていた。

アイムのように見えざる制約に触れること無く、討伐隊は時限の境界を使って任務を遂行し続けた。
隊員たちは必ず前もって改変する年代を決めてから時限の境界へ突入し、時限の扉をくぐる際は隊員通しで必ず手を繋いだ。

討伐隊員が時限の境界を恐れず、歴史の波にのまれ続けていることも大きかった。
慎重論派の筆頭であった¢も、一度会議で方針が決まってからというもの、一度も不平不満を漏らさず寧ろ進んで討伐隊に参加した。
彼の真摯で寡黙な態度が、会議所勢の士気をさらに向上させたことは疑いしれない。

アイムも¢の行動に深く感銘を受けた一方で、先日の一件から彼を完全に信用しきれない思いがあることもまた事実だった。


610 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編5:2015/10/21 00:10:58.941 ID:bVkP.1Nco
工場を次々に破壊し、歴史を修正し人々の心の本の“ページ”を修復していく。
長く行われなかった大戦に対して声を上げる気力すら失っていた民衆は、俄に会議所に対して不平不満を語り始めた。
それは一般兵士に徐々に活気が戻りつつあるという証拠に他ならない。

だが、その士気は意外な方向性に向けられた。
一部民衆の声は、歴史修正を行うほどに大きくなり、今では集落内で会議所デモを起こすほどには復活した。
兵士たちは口々に会議所に向かって思いの丈をぶつけ始める。

「大戦を指揮しない会議所はどうかしているいッ!」
「神に祈りお願いし続けた!しかしその縋る神などいなかったッ!信じられるものなどないんだッ!」
「出てこい会議所勢ッ!お前らの顔を見せろッ!」

定例会議でその様子を報告した加古川は、苦笑しながら次のように締めくくった。

加古川「まあ両軍問わず、大戦の開催を望む者は徐々にではあるが増えてきている。熱気があるのはいいことだな。
…その熱意が別のものに向けられなければ、の話だがな」

兵士たちからの意外な罵倒に、思わずアイムとオニロはお互いを見やり不思議な気分に陥った。

オニロ「神などいない…か」

アイム「まあオレは無宗教だからいいがな」

社長「百合神さまの強さはガチ」

しかし、こうした兵士の声はほんの一部であり、未だ大衆は大戦への意欲を失い続けたままである。
スクリプトの完全撲滅、加えてDBの捕獲・討伐を果たさないかぎりは、以前のように活気に満ち溢れた世界には戻らない。
会議所は戦い続ける。兵士の熱意を取り戻すために。たとえその兵士たちから非難されようとも。

611 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編6:2015/10/21 00:13:04.901 ID:bVkP.1Nco
四季は移り変わる。それでも年度は進まない。

オニロは如何なる時も編纂室で地下部隊の要として、大戦年表とともに歴史の傍観者で在り続けた。
目の前でアイムたちが命を賭して戦うのをオニロは地下から待ち続けることしかできない。
一緒に戦えない無念さはいかようなものか。討伐隊を送り出す以外に、オニロの顔は終始暗いものだった。
そんなある夜。

791「やあ浮かない顔だね」

オニロ「師匠ッ!部屋で寝ていなくていいんですか」

791「オニロこそ寝なくていいのかな?」

オニロ「ボクは…歴史を観測する必要がありますから。みんなが頑張っている時に、一人寝ていることなんてできません…」

791「アイムは筍魂さんから『戦闘術・魂』を伝承したらしいよ。すごいね」

オニロ「はい、やっぱりアイムはすごいですね…」

791「…強くなりたいかい?」

オニロ「強くなっても使う機会がなければ意味がないです…強くなんてなりたく――」

791「私はね。嘘つきと意気地なしが何より嫌いなんだ。わかっているだろう?」

791「思い出せ。あの時の訓練を」

オニロ「…ボクが間違っていました。お願いします、師匠」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

612 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/10/21 00:13:26.850 ID:bVkP.1Nco
この辺の話はいずれ外伝としてかけたらいいですね。

613 名前:791:2015/10/21 21:38:25.278 ID:BgX9UIbUo
>>595
たけのこ軍 抹茶「おい待て」
抹茶さんは、この後おしっことお漏らしの違いについて語りたかったに違いない

>>612
魔王791が愛弟子を一人前に育て上げる、愛と感動のストーリーに違いない

614 名前:社長:2015/10/22 00:35:50.356 ID:vPw9oc.E0
魔王様の最強キャラ感。

魔王様が関わる話はこっちも構想中なおいろいろとお話終わらせよと突っ込みやめて。

615 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その1:2015/11/02 00:02:34.846 ID:72l30Wboo
【K.N.C??年 ???】

???「何かがおかしいですよなァ」

薄暗いホールの中央に居座る巨大で醜悪なる異形のモノは、ぽつりとそう疑問を投げかけた。
刻一刻と変貌しつつある状況の変化に、困惑を隠すことができていない面持ちである。

???「なぜ、奴らは“工場の在処”を把握しているんだッ」

怒気をはらんだ不快な音波は、伽藍堂としたホールによく反響した。怒りとも嘆きともとれるその声に、しかしさしたる反応はない。
彼の側に居たスクリプトは軒並み消えてしまった。過去に点在した工場をDB討伐隊が破壊する度にスクリプトたちは消えてしまった。

討伐隊に直接、手を下されてずに消えたものも数多い。
歴史の整合性のために、世界は、工場生産のスクリプトを一体、また一体この騒乱の中で消え失せているのだった。

616 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その2:2015/11/02 00:04:21.190 ID:72l30Wboo
討伐隊が工場の存在を突き止めることは、異型のモノにとっては想定内だった。スクリプトの増加を鑑みるに、会議所がスクリプト工場に辿り着くのは時間の問題だ。
だからこそ、工場を数多の時代に点在させた。スクリプトに一任させ、スクリプトがスクリプトを生産させる無限サイクルを作り上げた。

数多の時代に点在するうちの一つが破壊されたところで大した打撃ではない。たまたま討伐隊が工場1箇所を見つけられたとしても、その間にもスクリプトたちは工場を増産しスクリプトを量産する。
そして、大戦の歴史をスクリプト敗北のものに書き換え、兵士の士気を完全に吸収する。

計画はおおまかにこのようなものだった。計画の始動時点で、彼とスクリプトは勝利を確信さえした。
最初の頃は高笑いが止まらず、感情がないはずのスクリプトさえ、その時はもんどりをうって喜びを前面に押し出していたように思えた。


617 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その3:2015/11/02 00:07:20.899 ID:72l30Wboo
しかし、討伐隊はまるでその余裕を嘲るかのように、迅速すぎる程に各年代の工場を発見、破壊していった。

数多の工場を個々に特定していくのは、工場稼働の一年代を特定してないといけないという条件上、不可能といっていい。
また、時限の境界を使用する際に避けては通れない【制約】を考えると、総当りで過去の年代へ突入するといった大胆な行動は制限される筈である。

過去の改変で現在の会議所兵士に多大な影響を与える可能性もある。
それこそ、会議所に情報を漏らす内通者がいるか、会議所が“魔法”でも使わないかぎり、工場特定は不可能なのだ。

???「…まさかッ」

ハッとしたように口を半開きにする。開け放たれた口内から、毒々しい吐息が静かに霧消していく。

???「会議所内にも存在するんですかねェ…“ここ”と同じような場所がッ」

自らの居る場所を指し示すかのように、異型のモノは脚を二度、三度踏み鳴らした。


―――


彼は、時限の境界の【制約】を全て把握していた。

否、スクリプトとともに“事前に”知らされていた。


―――

618 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その4:2015/11/02 00:10:55.291 ID:72l30Wboo
━━
━━━━

最早、彼にとって遠い過去のように思える、運命を分けたその日。彼とスクリプトを閉じ込めていた牢は何者かによって突如として開け放たれた。
大戦中で会議所内の兵士が全てで払っている中、びくびくとしながら牢を飛び出し、急いで会議所を脱出した彼は。
その傍らにいるスクリプトとともに、突如頭の中に響いてくる【声】を聴いた。


――『君たちは、いまからとある場所を目指さないといけない』

――『【時限の境界】。そこは、過去へ時間跳躍できる力を持つ場所だ。また、時限の境界内は【歴史改変の影響を受けない】、いわば歴史の波から君たちを守るシェルターだ。有効に使うと良い』

――『安心してほしい。会議所の、きのたけ兵士たちには、今から話す内容を決して口外したりはしないよ。君たちだけのものだ』


???「な、なぜオレ様たちにそこまで教える。怪しいですなァ」

【声】は冷静に、彼を諭した。


――『君たちは、この牢から逃亡するという選択を選んだ。即ち、会議所との全面対決に他ならない。我々はその選択を大いに歓迎するよ』

――『いつの日か、君たちの行方を追跡するために、会議所から討伐隊が結成されるだろう。その時において、【時限の境界】は重要な意味をもってくる』


???「な、なるほどォ!フハハハッ、オレ様とスクリプトはその時限の境界に逃げ込み、会議所勢を迎え撃てばいいわけだなッ!痛快ッ!愉快ッ!愉悦ッ!」


619 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その5:2015/11/02 00:16:12.102 ID:72l30Wboo
――『ただ、時限の境界には【制約】が存在する。この【制約】を理解しない者には然るべき罰が与えられる。今から、君たちには、その制約の全てを訓えよう…』

━━━━
━━

時限の境界は、“歴史改変の影響を受けない空間”である。
始めに【声】から受けた説明だ。

仮に、同胞のスクリプトが、世界を創り変えるほどの歴史改変を過去にて行い、自身の存在が危ぶまれたとしても、時限の境界内にいればその影響は一切受けない。
たとえば、過去の時代において自分が存在を消されてしまったとする。その歴史改変を、時限の境界内で過ごしていれば、自分という存在は残る。
時限の境界で歴史改変の瞬間をやり過ごしてさえしまえば、自らの身は保証される。
この事実は、彼に多大な安心を与えた。

とはいえ、時限の境界の【制約】により、時限の境界内に長時間留まり続けることはできない。
跳躍先の過去においては、時限の境界(シェルター)から出てしまうため歴史改変の影響を受けてしまう。その行動には細心の注意を払わなければいけない。
そして、彼の元から消え去ったスクリプトたちは、跳躍先の過去で討伐隊による再改変の影響を受け、次々とその存在ごと抹消されているのだった。


620 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その6:2015/11/02 00:17:49.083 ID:72l30Wboo
???「時限の境界と同等の機能を有した場所が存在する筈だ。いや、寧ろそれ以上だァ。たとえば、“大戦歴史を逐一確認できる場所”とかなァ…」

彼は、【大戦の歴史を変えないと現代に戻れない】という時限の境界の制約を知っている。
これ程までに正確に工場を破壊してくる様は、会議所側に歴史を逐一閲覧できるシステムが存在してもおかしくない。そう考えた。

彼の読みは概ね正しかった。ただ一つの読み違えたとすれば、会議所側もスクリプト工場設立の時代を正確に把握しているわけではないということだった。
そのため、会議所側は半ば総当りに近い工場捜索作戦を実施している。
ただ、スリッパ発案によりある程度の年代絞り込みがあった上でのことだが、当の異型のモノは知る由もない。

621 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その7:2015/11/02 00:25:08.775 ID:72l30Wboo
???「オレ樣自身で動かなくてはいけないのか…いや、しかしィ今ここで動くわけにも…」

一時期自身の元に集まっていた兵士の“士気”も、討伐隊の歴史再改変により、今は彼の手を離れ元の兵士の下に戻りつつある。
彼は悩んでいた。兵士の士気を喰らうことが必要だった。
ただ、今ここで崩壊一歩手前のまま外に姿を見せるのは会議所側の思惑通りといっていい。即ち、敗北の二文字。

そして、悩んでいる間にも時限の境界は彼をまた次の過去へと引きずり込むべく彼の脚を見えない力で掴む。
同時に、謎の吸引力を感じながら、彼は手近に居たスクリプトの脚を掴み、歴史改変の行動共有を取るための準備を整える。

会議所側と同じく、彼にもまた十分に思案するだけの時間は残されていない。
ふわりと宙に浮く感触を得ながら、思考を張り巡らせる。そして、扉をくぐる直前に、彼は閉じていた両の瞳をかっと見開いた。
どうやら最善手の行動を発見したようだが、時間跳躍の衝撃でその閃きを維持できたかどうかは定かでない。

時限の境界が微かに揺れる。時代跳躍を行う際、時限の境界は微かに空間全体が微弱に震動する。
両陣営を翻弄してやまないこの空間も、彼らの時間跳躍が済めば、束の間の休息に入る。
長い間、震動するその揺れは、まるで近く訪れるであろう決戦を予期させた武者震いのように、時限の境界は両陣営の動きを観戦者として見守り続ける。

622 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/11/02 00:26:05.523 ID:72l30Wboo
徐々に明らかになっていく裏側。謎の【声】さん万能説。

623 名前:社長:2015/11/02 00:30:52.819 ID:YK2TJf/s0
何故声の主はDBと協力するのだろう?声の主も世界崩壊でも目指してるんだろうか

624 名前:社長:2015/11/17 17:43:50.803 ID:TJ1iY9R20
てかマテや >>603の滝本さんって誰だよ。

625 名前:きのこ軍:2015/11/19 18:39:34.293 ID:qOWLVtxs0
>>624
きれぼし脳は誤字脱字に厳しい。

正しくは
滝本→シューさん
どうして間違えてしまったんだろうか…

なんとか今月中の更新を目指します。

626 名前:たけのこ軍:2015/12/05 23:27:52.116 ID:M3Ohlnhk0
http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/765/wars1.png
アイム

http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/766/wars2.png
オニロ

まあクオリテーは期待しないで。あとオニロ君の性別がどっちなのか感がする。。。

627 名前:きのこ軍 :2015/12/06 16:03:48.876 ID:XeND0tuM0
>>626
感謝感謝なお感謝
オニロ君長髪ポニーテールは採用させてもらおうそうしよう。
やったぜ。

628 名前:きのこ軍 :2015/12/06 16:11:09.408 ID:XeND0tuM0
更新しなくちゃ(焦燥感)

629 名前:たけのこ軍 援護兵 Lv1:2015/12/06 16:31:38.242 ID:07wBGBBYo
>>626
2人とも性格のイメージがちゃんと表現されてるね!

>>628
これは更新宣言

630 名前:きのこ軍:2015/12/31 18:18:31.869 ID:Bkzcex/wo
結局今月は忙しくて更新できませんでした、すみませぬ…
来年中の完結目指します!

631 名前:きのこ軍:2016/02/14 22:53:59.272 ID:BAYhqydco
今週中には更新できると思います。頑張ります。

632 名前:きのこ軍:2016/02/21 11:35:27.564 ID:gMmpaUS.o
よくわからないあらすじ

・これまでのあらすじ

“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。
その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。(Chapter1まで)

そんなある日、会議所で捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走していたことが判明。同時に、DB一味は、禁忌のマップ『時限の境界』で、故意に会議所不利の歴史に改変していることも明らかになる。
世界の危機を救うため、参謀を隊長とするDB討伐隊は、すぐさま『時限の境界』に突入するも、内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。結局、DBの姿すら確認できずに、撤退を余儀なくされる。
自身の不甲斐なさを悔い、アイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。オニロとの絆を深め、師からの教えを理解したアイムは、再び時限の境界へと突入する。
しかし、新たな【制約】により、アイムは独り過去の時代に閉じ込められてしまう(Chapter2まで)

それでも持ち前の機転と戦闘術魂を利用し無事現代に帰還したアイムは、会議所の中心的存在だった集計班が突如として姿を消したことを知る。悲観に暮れる間もなく、竹内の加入を経て、
会議所は遂にスクリプト大量増殖の問題に触れることとなる。それは、過去のあちこちにスクリプトたちが【スクリプト工場】を製造し、過去の時代に送り込んでいるという、ネズミ講のような恐ろしい実態だった。
すぐさま、時限の境界に潜んでいるDBの捕獲及び工場破壊の『ハイブリッド作戦』が開始されたのであった――――



633 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その1:2016/02/21 11:37:28.198 ID:gMmpaUS.o
【K.N.C180年 時限の境界 入口前】

スリッパ「段々と、ここに来るのがライフワークになってきたな」

筍魂「わかる(真顔)」

額の汗を拭い、スリッパはサラから渡された水筒の中身を一気に飲み干した。
炎天下の下、転移魔法陣から下りた討伐隊一行は時限の境界に向かって歩を進める。

朱の鳥居群の隙間から差し込む陽がアイムの目に刺さる。橙と朱の代る代るのコントラストは、視界だけでなく思考をも狂わせる不思議な空間になっていた。
狂った思考といえば―――アイムは先頭を歩くスリッパの背中をじっと見る。背後にいるサラが、主人を守る猫のようにアイムを見てくるが、気にしない。
アイムには今のスリッパを信じきることができないのである。原因は、先日の会話の一幕に因るものだった。


634 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その2:2016/02/21 11:39:06.602 ID:gMmpaUS.o
━━━━
━━
スリッパ「なぜDBは歴史改変を続けるのか、考えたことはあるかい?サラ、紅茶を頼む」

今日も慌ただしく討伐隊が出立した後、すっかり会議所の一員となったスリッパは静かに問いかけた。

オニロ「ボクも気になっていました。DBはどうしてこんな面倒くさい手段で襲撃しているのかなって…」

アイム「どうしてって…歴史改変で兵士の士気を“奪って”、会議所を支配するのが目的だろう」

非番のアイムは紙の山に寝そべる。ふわりと柔らかい感触は、無き集計班の置き土産としては上出来だ。オニロは不満気ではあるが。

スリッパ「会議所を支配したいのなら、そう歴史を書き換えればいい。『DBが会議所を支配する』と改変し、現代に戻ってきたらその瞬間、覇者だ」

アイム「それができたら奴も苦労しないだろう」

スリッパ「その通り。DBには【できない】。大量のスクリプトを従えて、過去の時代の警備が手薄な時代の会議所に乗り込んでしまえば、それで終わりだというのに」

二人の話を横で聞いていたオニロは、ひらめいたようにポンと手をついた。

オニロ「そうか、DBは【恐れている】んですね」

スリッパは大きく頷く。テーブルに置かれているクッキーを齧る。

スリッパ「恐らく、奴は過度な歴史改変に因る修正を恐れている」

竹内「おーいアイムや、飯はまだかの」

アイム「うるせえ爺さん寝てろ」


635 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その3:2016/02/21 11:40:30.065 ID:gMmpaUS.o
アイム「過去の大幅な歴史改変は、自分の身を危うくする。若しくは奴自身もどのような副作用が起こるか予想し得えていない。だから迂闊に手を出せないのか」

スリッパ「ひたすら大戦の歴史改変に拘り続けているのは兵士の士気を奪う意外にも、奴なりの安全策ということだろう。
その結果、“宝の山”たる時限の境界に、あんな醜悪な化物が篭もりきりになったことは皮肉だけどね」

スリッパの“宝の山”という表現に、アイムはどこか気味悪さを覚えた。

アイム「おいスリッパさんよ。職業柄、あんたが時限の境界に憧れるのはわからなくもないが。あそこは宝の山でも楽園でもないだろ」

オニロ「ボクは目にしたことがないけど、確かにみんなを苦しめているだけの場所のような…」

アイム「過去へのタイムワープなんて弊害しか生まないさ。過去は覗き見できるかもしれないが、本来は修正なんてできるわけない。【過去なんて本来変えるべきものではないんだ】。
過去の経験、記憶を蓄積させたものが今の自分であって、それを真っ白にしてしまえば、それは死んだも同じ――」

スリッパ「そんなことはないッ!!」

突然の剣幕に、アイムは驚いて二の句を継げなくなった。


636 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その4:2016/02/21 11:42:09.972 ID:gMmpaUS.o
スリッパ「DB達は使い方を間違えているだけだ、正しい運用方法で時限の境界は素晴らしいタイムワープ装置となり得るんだッ!」

勢い良く立ち上がり、まくし立てて喋るスリッパを前にアイムとオニロは閉口した。気味が悪い。二人は純粋にそう感じた。

スリッパ「君たちにはわからないのか、あの時限の境界の素晴らしさがッ!望んだ時代へ往来できる高い利便性、何度でも使える簡易性だッ!」

スリッパ「今の自分を殺してしまう?確かに、客観的に見ればそうかもしれない。ただ、記憶は残る。そう、過去はやり直せるんだ!そうだ、あの時だってッ時限の境界を利用さえすればッ――」

コツン。

スリッパの背後から、サラが静かにティーカップを置く。しかし、その音は目の前が見えていないスリッパの中に瞬く間に響き渡り、彼を冷静にした。
瀟洒なメイドサラの主人への意思表示を、二人は初めて見た気がした。

スリッパ「――すまない。熱くなりすぎた」

脱力したように着席し、一口紅茶をすする。後には、居心地の悪い静寂が残った。

━━━━
━━


637 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その5:2016/02/21 11:43:28.549 ID:gMmpaUS.o
スリッパは時限の境界を識者として評価しているのか、それとも過去に戻りたいから、あのように激昂したのだろうか。
アイムにはわからない。
ただ、¢はDBに、そしてスリッパは過去に固執している。¢に続き、またも仲間に疑いの目線を向けてしまっている。
自身の冷淡さにうんざりしてしまう。

筍魂「おい愛弟子よ」

アイム「なんだよバカ師匠」

前を歩いていたはずの筍魂は、いつの間にかアイムの横にぴったりと付いていた。時折、こうして気配を殺して筍魂はアイムを吃驚させることがある。
気配を操るから当然の事だと本人は語るが、ただ単に存在感がないだけではないかとアイムは勘ぐっている。

筍魂「気を抑えろ、お前の不安、疑念をひしひしと感じるぞ。感情をコントロールしきれないことが、お前の欠点であり長所でもあるが…これでは一人前の魂・伝承者にはなれないな」

アイム「いや、元よりなる気はないんだが」

ただ、と筍魂は途端に声を潜める。

筍魂「俺にもなにか良くないことが起こる“予感”はある。粘りつくような風が吹きつけているのがその証拠だ。このまま、無事帰ってこられればいいがな」

アイムは顔を上げる。朱の鳥居を抜けると、そこには毒々しく禍々しい、辟易とするほど真紅の鉄扉が見えてきた。


638 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その6:2016/02/21 11:46:53.216 ID:gMmpaUS.o
【K.N.C180年 時限の境界】

ビギナー「さて、今回は何年にいけばいいんだっけか」

スリッパ「K.N.C125年だ。この近辺の年で比較的新しいスクリプト工場の痕跡があるのは確認済みだ。もしかしたらスクリプト工場が見つかるかもしれない」

年代が記されたメモを見ながら、一行は時限の境界を歩いて行く。スリッパを中心に、ビギナー、筍魂、アイムそしてサラが円形陣で防衛している布陣だ。

―――『いよいよだね』

アイムの頭のなかで、いつもの通り謎の声が語りかけてくる。
はいはいそうだな、とおざなりな対応でアイムは先に進んでいく。



暗い。時限の境界の内部は、底なし沼のようにどこまでも暗い。その暗黒の中を、ひたひたと一定のリズムの足音で徘徊する者がいる。
彼は急いでいた。未だ策敵しない強大な敵集団から逃れるべく、今日も時限の境界内を移動し続ける。

??「ハッ、ハァハァ…」

彼は同胞達を探していた。
孤独はもう御免だ。地下で収監されていた頃の生活を思い出し、額の汗を拭う。
彼は好んで暗闇で暮らしたが、元来の小心ぷりからか、独りでいることに恐怖感を覚える性質だった。歩く速度が早まる。
スクリプトが隣にいた頃は、母親の胎内のように居心地の良さを感じた。だが、その同胞も今は数えるほどしか残っておらず、
それを嘲笑うかのように、その暗闇は底なし沼のように彼を暗い未来へと引きずり込もうとしていた。
未来は確定されていない。そう、目の前の空間があれば過去は、そして未来は変えられるのだ。自身の雑念を振り払うかのように、歩を早める。

恐怖に慄く彼は、目の前の異変に気が付いていない。
いつもの彼なら聴き逃さない、複数の足音が彼の下に、刻一刻と近づいてきていることを。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

639 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その7:2016/02/21 11:48:47.207 ID:gMmpaUS.o
スリッパ「次のホールを抜ければK.N.C125年の扉に辿り着くぞ」

何度となく読み返されてきた時限の境界マップを手に、スリッパは先を急ぐ。

ビギナー「しかし、スクリプトが全然見当たらないな」

筍魂「最近はフロア内に居るスクリプトもめっきり数を減らしてるな。この勢いじゃあ、DBを見つけるのも時間の問題かもしれないな」

アイム「そう簡単にいけばいいんだけ―――」











その時は、突然訪れた。





ホールに足を踏み入れた一行は、中心で蠢く、どす黒い“異型のモノ”と目があった。


640 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その8:2016/02/21 11:51:27.504 ID:gMmpaUS.o
心臓が早鐘を打つ―― 
     呼吸を忘れるほど、口をあんぐりと開けたまま―― 

俺たちは悟る―― 
     俺様は理解する―― 

彼こそが――               
     彼らこそが――

血眼に探していた会議所の宿敵であり――  
     追撃から振り切らなければいけなかった宿敵であり―― 

一連の騒動を引き起こした元凶でもある――  
     俺様を狂わせた元凶でもある―― 

絶対に出会わなければいけなかった存在である―― 
     絶対に出会ってはいけなかった存在である―― 

その名は――
     その名は――





アイム「DBォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!」

DB「会議所一味ィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

641 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/02/21 11:53:08.565 ID:gMmpaUS.o
投稿を開始してから2年半、ようやく会議所がラスボスと出会いました(白目)
全体で見ればそろそろ佳境です頑張ります。

642 名前:社長:2016/02/21 17:41:17.936 ID:F7k9y9fw0
ついに現れたDB。ただまだ1章分あるてことはまだひと波乱ありそう。

643 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その1:2016/02/27 23:22:29.016 ID:3t.Kr4Eso
両者ともに呆気にとられ、一歩も動けない。だが、最初にたじろいだのは討伐隊員だった。

スリッパ「予想していたとはいえすさまじい腐臭だ…」

彼の身体から放たれる刺激臭は、2〜3m離れた位置でも臭うほど自己主張が強い。

ビギナー「なんてグロテスクな外見なんだ…」

筍魂「一理ある」

DB「……」

常人の二倍ほどの縦横幅はある図体は、存在自体が醜悪だ。身体の形状こそきのこに似ているが、笠となっている頭頂部は不自然に尖り、腹は中年兵士のように膨らみダボついている。
また、何度も時間跳躍を繰り返し、砂埃にまみれた身体は不気味な黒光りを放っている。
胴体からおまけのようにちょこんと生えた手足が間抜けさを誘う。しかし、一足動けば、車輪のように高速で足を動かすさまは、古来より忌み嫌われてきた害虫を連想させる。

討伐隊の面々が思わず顔を背ける程の状況の中、ただ一人、アイムは目の前の異型のモノを直視したまま動かなかった。

アイム「…お前が、DBか」

アイムの中の既視感。この感触は、大戦年表編纂室を初めて訪れた時と同じ。
初めてなのに初めてでない。
自分のことなのに自分がわからない。記憶を失う前、DBと会敵したことがあるというのか。


644 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その2:2016/02/27 23:25:25.298 ID:3t.Kr4Eso
DB「…アァ」

討伐隊員と同じく、未だ混乱しているDBだったが、目の前のアイムを見て思わず声が漏れる。
パニック状態に陥っても仕方ない状況下の中で、DBは瞬時に策を巡らせ、自身の未来を決め、不敵にニヤつく。
這いつくばってでも諦めず生き延びる術を探しだす。これこそがDBの強みだった。

DB「――なんだ。“君”、一人だけかァ」

アイム「なんだと…?」

ニタニタとDBが口角をつり上げる。

DB「“相棒”に伝えておけ、『すぐに迎えに行く』とねェ…」

DBの舐め回すような視線に、思わずアイムの背筋にゾクリと悪寒が走る。
この視線は初めてではない、身体がそう告げている。

アイム「うる…せえッ!!」

風切り音とともに、アイムの手から放たれた短刀がDBの頬を掠める。


645 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その3:2016/02/28 00:12:23.130 ID:HqJ60wngo
DB「ひ、ヒイイイィィィ!」

思わず耳をふさぐような金切り音がホール内に木霊する。アイム以外の討伐隊員が途端に意識を戻す。

スリッパ「…サラ、頼むッ!」

スリッパの背後に構えていたサラが流れるような所作で、用意したクラスター銃で大量のベビークラスターを放つ。

筍魂「よくやったぞ弟子!捕獲だッ!DBを捕獲するッ!『いわなだれ』!」

ビギナー「うおおおおおおおおおお」

それに続き、筍魂がDBの頭上から石塊を降らせ、鉤爪を研いだビギナーがDBを捉えに走りだす。連携は完璧だった。

DB「た、助けてくれェェェェェェ!」

喚き散らしながら、DBは両の手を地面に付いた。そして、四本足で走る獣のように、また部屋を動きまわる害虫のように、
縦横無尽にホール内の天井を駆け回り連携の取れた攻撃を交わした。

スリッパ「サラ、次弾装填を急げッ!筍魂さん、敵をホールから逃がすなッ!」

筍魂「かしこまりッ!いでよ、リフレク――チッ!!」

ホールの四方に壁を貼りDBを閉じ込めようと目論んだ筍魂だったが、その四方から登場したスクリプトたちを前に詠唱を中断し、防戦態勢を取った。
一転、筍魂たちは追い詰められてしまった。

DB「ふは、フハハハハ!形勢逆転だな、ではさらばだ君たち!」

アイム「逃げるぞ、追えッ!どうせ奴は時限の境界からは逃げられない!」


646 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その4:2016/02/28 00:26:29.749 ID:HqJ60wngo
DBは逃げ続け、アイム達は追い続けた。時代のホールをひたすら走り抜けるDBを、スクリプトの残党が足止めといわんばかりの抵抗をする。
果てもないイタチごっこを繰り返し、そろそろ頃合いだと睨んだDBは、“ある扉”の前で立ち止まった。

DB「それではさらばだ諸君。スクリプト君、“しっかり”と頼んだよ」

間髪をいれずに、DBは扉をくぐり過去の時代へワープする。それを見届けたスクリプトたちが、行方を追うアイムたちの妨害をする。

アイム「そこをどけッ!ビギナーさん、DBはどの扉に入ったッ!?」

ビギナー「【8の扉】だッ!ただ、ここが何年のホールかはもうわからないッ!」

スクリプトの猛攻を凌ぎながら、ビギナーは大声でアイムに答える。

時限の境界は、ホール毎に存在する扉に【0】から【9】の数字が割り振られている。
一つのホールごとに10年ずつ時が進んでいるので、K.N.C60年台のホールの【5】の扉をくぐれば、扉の先はK.N.C65年となる。
アイム達はDBがXX8年の時代に飛び込んだのはわかったが、正確な年代までは特定できていないのだ。

スリッパ「スクリプトたちめ、最期の勢いとばかりに攻勢を強めてやがるッ!このままじゃあ、ホールから押し出されるぞッ!」

筍魂「走り回って体力も奪われつつあるな、ぜえぜえ。これじゃ¢さんを笑えないな」

ビギナー「ひとまず戻るか、待てば海路の日和ありだッ!」


647 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その5:2016/02/28 00:28:53.530 ID:HqJ60wngo
―――『時間切れ』

アイムの頭のなかで響く針の音がカチリと止まる。それは時限の境界内での移動のタイムリミットを意味する。

アイム「…どうやらそうはいかないらしい。【時間切れの制約】で、近くの扉に吸い寄せられるぞッ!」

スリッパ「なんだとッ!DBめ、時間をかけて逃げ回っていたのは、この時のためかッ!」

アイム「みんな、力を貸してくれッ!なんとかして目の前のスクリプト群を突破して、DBの入った扉に辿り着くぞッ!!」

ビギナー「承知ッ!ビギナーズラックの申し子、ビギナー!いざ推して参るッ!!」

スリッパ「サラ、ビギナーさんの援護を頼むッ!みんな、二人の後に続けッ!」

ゆらりとした豹の構えからビギナーが決死の力でスクリプトへの突破口を開くため突進する。
ビギナーの後ろからは、サラが、両手に構えた大筒からアイスの実弾を次々に発射しスクリプトを怯ませていく。

筍魂「ぜぇぜぇ。弟子よ、最早私はこれまで…会議所に戻ったらきのこ軍に伝えてくれ、“やはりきのこの山は不味い”とな」

アイム「てめえ、¢さんみたいに少しでもその場でヘタってみろッ!尻を蹴飛ばしてでも這い上がらせてやるからなッ!」

スリッパの後をバテ気味の筍魂、殿をアイムが続く。巨大スクリプトNEXTの足元をすり抜け、ホールの中盤へ一行は進んでいく。
すると――


648 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その6:2016/02/28 00:31:48.265 ID:HqJ60wngo
ビギナー「うお、身体が勝手に宙にッ…!」

スリッパ「時間切れかッ!しかし目論見通り、全員【8】の扉に吸い寄せられていくぞッ!」

アイム「よっしゃッ!これで【制約】もクリアし…た…し」


――【制約V】 時限の境界で複数人が時限跳躍をする際。
互いに身体の一部分でも触れたまま全員が一緒に時限の扉を通れば、時限の境界に関する制約状況は互いに、“共有”される。


今の状況では全員がバラバラに扉に吸い寄せられていっている。つまり、歴史改変の情報を互いに“共有”できない。
一人ひとり、別の歴史改変が必要になる。
アイムの頭の中を、K.N.C55年に閉じ込められた時の記憶が掠める。このままではあの時の二の舞いになってしまう。

アイム「まずいッ!みんな、互いの服でも掴みあって――」


649 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その7:2016/02/28 00:33:45.098 ID:HqJ60wngo
瞬間、鋭い風切り音とともに、緑色の触手がアイムの身体に巻き付く。
残りの隊員も一様に、宙に浮きながら謎の触手に巻き付かれている。触手の出処を辿ると――

筍魂「『つるのムチ』、これで【制約】は問題ないだろう?」

アイム「――やればできるじゃねえか、バカ師匠ッ!追うぞ、DBをッ!」

全員はひとまとまりになったまま、開け放たれた扉をくぐる。
DBを追いかけるために幾度と無く繰り返された過去の時代へのワープを行うのだった。


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