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きのたけWARS ss風スレッド
- 1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
- きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。
そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。
舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。
しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――
― “DB” が世界の前に立ちはだかった―
DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
『きのたけWARS ~DB討伐~』
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 596 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その5:2015/10/15 23:26:16.418 ID:oMRm09hso
- きのこ軍 アイム「兵士は誰しも『大戦の本』を心の中に宿している。古参であればあるほどその本のページ数は
膨大なものになっていることだろう。また、新参である兵士も大戦に胸を躍らせているうちは、
心の本には次々に大戦関連の内容が書き加えられていっていることだろう」
ちょうど、あのオリバーのようにな。と、アイムは、年表近くの空中で眠りこけているかのように静止する自動筆記ペンを一瞥した。
たけのこ軍 オニロ「素敵な話だね、アイム。
つまり心の本の一頁、一頁が『兵士の士気、情熱、やる気』そのものってことだよね!さすがはアイムッ!わかりやすい!」
たけのこ軍 社長「さすが 希望の星は 違うぜーー」
きのこ軍 アイム「おまえ…折角のオレの決め台詞をッ」
心の本。
兵士が持つ関心事だけ存在するこの本は、決して最後の頁まで書き切ることはない。
頁は無限、果てなき探求心と好奇心さえあれば、その兵士における心の本は膨大な頁数で満たされ続けることになる。
本の内容はほとんどが至極些細なものだ。その折に、自らが見聞きしたモノ・コト、感じたコトなどが雑多に、
しかし一切漏れることなく連々と今この瞬間も書き加えられていっているのである。
時折、兵士は自らの過去を心の本をそっと開くことで回想し在りし日の栄華に思いを馳せ、胸を躍らせる。
また、他人の熱き思いに充てられた時などは、元気のなかった自分も「今こそ!」という気分になり、
同時に、本の執筆に取り掛かっている心の筆は激烈な速度となる。
詰まる所、自らが積み重ねてきた本の一頁一頁が、当該の関心事への士気であり、やる気であり即ち情熱なのである。
- 597 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その6 :2015/10/15 23:29:49.182 ID:oMRm09hso
- たけのこ軍 山本「でも、それじゃあ。古参であればあるほど心の本の頁数が多くなるというのは必然。
頁数が多いほど士気も断然高まるということになるのでは?」
きのこ軍 アイム「ところがそうはならないよ山本さん。
言った筈だ、万物事象は必ず【秩序】から【無秩序】に変化していく、と」
本は手入れをしなければ劣化していく。否、手入れをしてもいつか必ず劣化していく。
書物で劣化が始まるのは硬い表紙部ではなく、紙でできた頁本体である。
時間が経てば経つほど、紙やそこに書かれた文字は色褪せていく。紙は染み、埃が飛び、カビが生え、蜘蛛の巣を貼る。
目を凝らさないと読めない程度の視認度までに落ちた頁に対する興味は減り、頁をめくる回数は次第に減少していく。
兵士の関心事への情熱は低下していく。そして、完全に心の本の文字が色褪せ、中身が風化してしまった時、
兵士は一切のやる気を喪失するのである。
たけのこ軍 社長「か い め つ」
たけのこ軍 オニロ「心の本の手入れを怠れば―すなわち関心事へ注目を払っていなければ―、
心の本は朽ちていく。兵士は士気を失う」
きのこ軍 ゴダン「なるほどなあ。日々失われつつある士気を、必死につなぎとめているのが会議所の役目でもあるわけか」
兵士のやる気の有無は、心の本の“読むことができる”頁数の多さに左右される。
アイムはそう語っている。
- 598 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その7 :2015/10/15 23:31:44.181 ID:oMRm09hso
- たけのこ軍 791「うん、よくわかったよ。でも、その失われた士気とアイムが言わんとしていることの関係がまだよくわからないな」
きのこ軍 アイム「万物事象が【秩序】から【無秩序】へと向かうのは抗うことのできない自然則だ。
しかし、もしその変化の速度を急激に早めている“邪魔者”がいたとしたら、どうする?」
その“邪魔者”は平時から、人々の心に巣食うゴミやチリといった穢れをこよなく愛する生物だった。
たけのこ軍 オニロ「【秩序】から【無秩序】への急激な変化。有り余る士気から、士気の消失。
つまり、兵士の士気を急激に低下させている…」
たけのこ軍 791「世界から消えてしまったはずの兵士の“士気”を…邪魔者が掻き集めようとしている?」
たけのこ軍 オニロ「そして…そんなことをしようとする奴は唯一…」
全員「――DBッ!!(ジジイ!)』
- 599 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その8:2015/10/15 23:58:37.214 ID:oMRm09hso
- アイムは全員の声に呼応するように、手に持った本を開き、勢い良く手に掛けた頁ごと引きちぎった。
たけのこ軍 オニロ「なにをするんだアイム!貴重な本なのに!
あっ、ていうかそれボクが密かに書いていた小説本じゃないかッ!ヒドイよッ!」
きのこ軍 アイム「士気は、情熱は、正しく心の本の“頁(ページ)”だと、オニロは言った。
こうして引きちぎられた頁はその兵士から失われ、結果的にそいつ自身の士気は低下する。
その頁を、【手当たり次第DBが喰らっている】と考えたらどうだ?」
スリッパ「手当たり次第、DBは兵士の心の本の頁を喰らい続けている。度重なる歴史改変がその行為を可能とさせる。
兵士の士気が、あいつにとっての“餌”だというんだな?
だから平時よりも大幅に士気が下がり、その分DBが増長する」
- 600 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その9:2015/10/16 00:01:11.710 ID:n5SAhc92o
- たけのこ軍 埼玉「だとしたら、DBは、現代で失われた筈の兵士たちの士気をどこかで喰らい続け、
この瞬間も強大化し続けているということたま?」
たけのこ軍 オニロ「あぁ…折角中編まで書いてたのに…」
きのこ軍 黒砂糖「加古川さんが言っていたように、歴史改変と現代兵士の士気喪失は一定の相関があるのは明白」
たけのこ軍 ビギナー「つまり、こちらが時限の境界を使わずに現代に留まれば留まるほど、
歴史改変は行われDBは強大化し続ける…そして強大化したDBは現代に帰還し世界を乗っ取る。それが奴の狙いか…」
きのこ軍 アイム「そういうことだ」
悲観にくれる会議所勢。待てば待つほど、世界の大勢は悪化の一途を辿る。
そうした気持ちを予め見越していたうえで、アイムは逆転策を語る。
きのこ軍 アイム「ただ、失われた頁を貯めこんで成長を続ける醜悪な“掃除機”も――」
いつの間にかテーブルに置かれていた抹茶人形をぶっ叩くと、人形の下敷きになっていた紙は衝撃で俄に宙に浮いた。
その紙をアイムは力を込めてしっかりと掴む。
きのこ軍 アイム「本体をぶっ叩けば、頁を吐き出し元の所有者に戻る。
つまり、失われた士気は元通りになる、てことだ」
アイムは言葉を切り、ぐるりと全員を見回す。大勢は決した。
¢の慎重案支持から一転、会議所は、無茶をしてでもDBの企てを阻止しないといけないという立場を明確にした。
- 601 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その10:2015/10/16 00:04:23.147 ID:n5SAhc92o
- やりきった思いでアイムが頬を緩めようとしたその時――
??『まさか、加古川の発言からDB騒動の企てを看破するだけでなく、慎重案を破棄するまでに至るとは。
末恐ろしい兵士だ、この世界の『秘密』を暴く一歩手前までたどり着いた推測力は、記憶を失っていても流石の一言。だが――』
瞬間、アイムは何処からか向けられる鋭い視線を感じ、背筋を寒くした。
慈愛。悲愴。冷淡。
全てを見透かしたかのようにアイムに突き刺さる“複雑な感情”を伴った其れは、
会議所の反応を見て浮かれかかっていたアイムの心を瞬く間に冷静にした。
- 602 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その11:2015/10/16 00:10:04.361 ID:n5SAhc92o
- 瞬時に視線の出処を探す。円卓テーブル内で、ほとんどの兵士は他者の意見に耳を傾け時折口を出し、
アイムを気にかけているものなどいない。
ほとんど居ないはず―――
きのこ軍 ¢と目が合うことさえなければ、アイムは先の視線をまやかしだと思い込んでいただろう。
¢とアイムの視線は交錯したまま、両者ともに離れない。
¢は言葉を発さず、ただアイムをじっと見つめている。
きのこ軍 アイム「――どうやら話し合いは終わったようだな。
¢さん、オレの提案していたハイブリッド案―時限の境界を利用しスクリプトを破壊しながら、スクリプト工場も捜索し破壊する―でいいか?」
編纂室内は静まり、皆の視線が¢に注がれる。
長い間を置いて、¢は表情を変えないまま一回だけ頷いた。
きのこ軍 ¢「――僕はそれでいいんよ」
会議所はこの日、DB討伐に向けて大きな“賭け”へと打って出た。
小さな猜疑心はやがて大きな疑念へと変わる。
アイムは未だ¢を真の敵と見なしていない。だが、一度盛り始めた疑惑の種たる篝火はなかなか鎮火しない。
少しでも疑い始めた相手は完全な味方には成り得ない。これが世間の常識であるし、アイムにとっての常識でもあった。
DBへの打開策を見つけ熱意に燃える会議所兵士勢とは裏腹に、小さな疑念がアイムの中で燃え盛りつつあった。
- 603 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情熱編その12:2015/10/16 00:11:54.499 ID:n5SAhc92o
- ちなみに。
たけのこ軍 オニロ「竹内さんは滝本さんに呼ばれたということですけど、どうしてここに?」
竹内「それがワシにもさっぱりとわからん!ハハハッ」
たけのこ軍 社長「わんわんわしわん」
きのこ軍 黒砂糖「見ないうちに、すっかりと老けこんだな竹内さん。まだあの頃の動きは健在かい?」
竹内「もう身体を動かさなくなって久しいのお。老いぼれの日課といったら朝の散歩と昼過ぎのティータイムよ」
たけのこ軍 抹茶「…その腰に携えた長剣は」
竹内「もう何十年も抜刀してないのお。おそらく錆びて鞘から抜くこともできんじゃろ。腰の重りとしてはよう役立ってるな。ハハハッ!」
きのこ軍 アイム「おい、どうすんだよこの老いぼれ」
- 604 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/10/16 00:12:48.573 ID:n5SAhc92o
- DBの目的がようやく公になってきた。
次からけっこう動きます。
- 605 名前:社長:2015/10/16 00:13:54.190 ID:xpK5m/Ns0
- 遂に敵の動きが。
- 606 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編1:2015/10/20 23:51:34.288 ID:gWhnk41wo
- 【K.N.C180年 会議所】
たけのこ軍斑虎を擁する討伐隊は前回の工場跡地発見からまもなく、K.N.C53年に稼働中のスクリプト工場を発見した。
元々、大戦年表ではスクリプト工場の建造、破壊日時などの情報は一切示されない。
大戦に関し、さらにあくまで表向きの情報しか大戦年表は記載しないのだ、とスリッパたちは結論づけた。
その様をオニロは「オリバーも気まぐれだなあ」と、自動筆記ペンのせいにした。
そのため、半ば人海戦術のようなもので工場の破壊に当たらなくてはいけないので、気力との戦いでもあった。
その中で、幸先良く斑虎たちは一回目で工場を発見した。
工場は完全に無人で稼働していた。幾多の小型スクリプトが、巨大スクリプトを製造し続ける無機物の饗宴を目の前にして、
斑虎たちは大きな衝撃を覚えたものの、迅速にかつ的確に破壊した。
- 607 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編2:2015/10/20 23:53:17.678 ID:gWhnk41wo
- スクリプト工場の破壊は、すぐさま“時空震”として編纂室に歴史改変が通知される。
スクリプト工場を破壊したための改変通知ではない。
過去の討伐隊が“討伐した筈の”スクリプトたちが、今回の工場破壊によって謂わば未然に破壊されてしまった。
つまり、件のスクリプトは、過去の年代で大戦を中止させる悪行を働く前に破壊されたという歴史に“上書き”される。
アイムたち討伐隊が破壊したという歴史も無くなるため、その帳尻合わせのための時空震が発生するのである。
- 608 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編3:2015/10/20 23:57:54.376 ID:gWhnk41wo
- 過去に参加した討伐隊全員は、歴史の流れから身を守るシェルターでもある編纂室で過ごす機会が必然的に増加した。
徒に外に出て改変の煽りを受けると、歴史再構築の流れによっては、自身の存在に危険を及ぼす可能性があるためである。
編纂室で地震に関する歴史改変の瞬間を迎えてしまえば、その後に地上に出ても自らの身に変化はない。
過去の経験から証明されている。
実働メンバーは、前述のことから、基本的に編纂室から外出することはなくなった。
そのため、ただでさえ人気のない会議所に拍車がかかり、遂には“過疎所”と一部の兵士たちから揶揄されるようになってしまうのだが。
それはまた別の話。
- 609 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編4:2015/10/21 00:03:37.434 ID:bVkP.1Nco
- また、スリッパを始めとした幾人かの兵士の予想通り、スクリプト工場は一拠点だけではなかった。
幾多のそれぞれの歴史の時代に、スクリプト工場を作っては破棄し、また作っては破棄するを繰り返していた。
同じ場所のK.N.C53年にスクリプト工場が建造、破棄されたら、残党はK.N.C100年に移動し、同じスクリプト工場を建造し
一定数のスクリプトを生産したらすぐに破棄する。ひたすら繰り返す。時限の境界にスクリプトが存在し続ける限り。
時限の境界に留まり続けるスクリプトたちは、自分と姿が同じ物言わぬ同士をそのような手段で急速に拡充していった。
そのような状況が徐々に明らかになる中で、アイム発案によるハイブリッド作戦
――時限の境界を利用しスクリプト&スクリプト工場の捜索、破壊の同時進行―は、会議所兵士の士気の高さも相まって、
徐々に効果を出し始めていた。
アイムのように見えざる制約に触れること無く、討伐隊は時限の境界を使って任務を遂行し続けた。
隊員たちは必ず前もって改変する年代を決めてから時限の境界へ突入し、時限の扉をくぐる際は隊員通しで必ず手を繋いだ。
討伐隊員が時限の境界を恐れず、歴史の波にのまれ続けていることも大きかった。
慎重論派の筆頭であった¢も、一度会議で方針が決まってからというもの、一度も不平不満を漏らさず寧ろ進んで討伐隊に参加した。
彼の真摯で寡黙な態度が、会議所勢の士気をさらに向上させたことは疑いしれない。
アイムも¢の行動に深く感銘を受けた一方で、先日の一件から彼を完全に信用しきれない思いがあることもまた事実だった。
- 610 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編5:2015/10/21 00:10:58.941 ID:bVkP.1Nco
- 工場を次々に破壊し、歴史を修正し人々の心の本の“ページ”を修復していく。
長く行われなかった大戦に対して声を上げる気力すら失っていた民衆は、俄に会議所に対して不平不満を語り始めた。
それは一般兵士に徐々に活気が戻りつつあるという証拠に他ならない。
だが、その士気は意外な方向性に向けられた。
一部民衆の声は、歴史修正を行うほどに大きくなり、今では集落内で会議所デモを起こすほどには復活した。
兵士たちは口々に会議所に向かって思いの丈をぶつけ始める。
「大戦を指揮しない会議所はどうかしているいッ!」
「神に祈りお願いし続けた!しかしその縋る神などいなかったッ!信じられるものなどないんだッ!」
「出てこい会議所勢ッ!お前らの顔を見せろッ!」
定例会議でその様子を報告した加古川は、苦笑しながら次のように締めくくった。
加古川「まあ両軍問わず、大戦の開催を望む者は徐々にではあるが増えてきている。熱気があるのはいいことだな。
…その熱意が別のものに向けられなければ、の話だがな」
兵士たちからの意外な罵倒に、思わずアイムとオニロはお互いを見やり不思議な気分に陥った。
オニロ「神などいない…か」
アイム「まあオレは無宗教だからいいがな」
社長「百合神さまの強さはガチ」
しかし、こうした兵士の声はほんの一部であり、未だ大衆は大戦への意欲を失い続けたままである。
スクリプトの完全撲滅、加えてDBの捕獲・討伐を果たさないかぎりは、以前のように活気に満ち溢れた世界には戻らない。
会議所は戦い続ける。兵士の熱意を取り戻すために。たとえその兵士たちから非難されようとも。
- 611 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 導入編6:2015/10/21 00:13:04.901 ID:bVkP.1Nco
- 四季は移り変わる。それでも年度は進まない。
オニロは如何なる時も編纂室で地下部隊の要として、大戦年表とともに歴史の傍観者で在り続けた。
目の前でアイムたちが命を賭して戦うのをオニロは地下から待ち続けることしかできない。
一緒に戦えない無念さはいかようなものか。討伐隊を送り出す以外に、オニロの顔は終始暗いものだった。
そんなある夜。
791「やあ浮かない顔だね」
オニロ「師匠ッ!部屋で寝ていなくていいんですか」
791「オニロこそ寝なくていいのかな?」
オニロ「ボクは…歴史を観測する必要がありますから。みんなが頑張っている時に、一人寝ていることなんてできません…」
791「アイムは筍魂さんから『戦闘術・魂』を伝承したらしいよ。すごいね」
オニロ「はい、やっぱりアイムはすごいですね…」
791「…強くなりたいかい?」
オニロ「強くなっても使う機会がなければ意味がないです…強くなんてなりたく――」
791「私はね。嘘つきと意気地なしが何より嫌いなんだ。わかっているだろう?」
791「思い出せ。あの時の訓練を」
オニロ「…ボクが間違っていました。お願いします、師匠」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 612 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/10/21 00:13:26.850 ID:bVkP.1Nco
- この辺の話はいずれ外伝としてかけたらいいですね。
- 613 名前:791:2015/10/21 21:38:25.278 ID:BgX9UIbUo
- >>595
たけのこ軍 抹茶「おい待て」
抹茶さんは、この後おしっことお漏らしの違いについて語りたかったに違いない
>>612
魔王791が愛弟子を一人前に育て上げる、愛と感動のストーリーに違いない
- 614 名前:社長:2015/10/22 00:35:50.356 ID:vPw9oc.E0
- 魔王様の最強キャラ感。
魔王様が関わる話はこっちも構想中なおいろいろとお話終わらせよと突っ込みやめて。
- 615 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その1:2015/11/02 00:02:34.846 ID:72l30Wboo
- 【K.N.C??年 ???】
???「何かがおかしいですよなァ」
薄暗いホールの中央に居座る巨大で醜悪なる異形のモノは、ぽつりとそう疑問を投げかけた。
刻一刻と変貌しつつある状況の変化に、困惑を隠すことができていない面持ちである。
???「なぜ、奴らは“工場の在処”を把握しているんだッ」
怒気をはらんだ不快な音波は、伽藍堂としたホールによく反響した。怒りとも嘆きともとれるその声に、しかしさしたる反応はない。
彼の側に居たスクリプトは軒並み消えてしまった。過去に点在した工場をDB討伐隊が破壊する度にスクリプトたちは消えてしまった。
討伐隊に直接、手を下されてずに消えたものも数多い。
歴史の整合性のために、世界は、工場生産のスクリプトを一体、また一体この騒乱の中で消え失せているのだった。
- 616 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その2:2015/11/02 00:04:21.190 ID:72l30Wboo
- 討伐隊が工場の存在を突き止めることは、異型のモノにとっては想定内だった。スクリプトの増加を鑑みるに、会議所がスクリプト工場に辿り着くのは時間の問題だ。
だからこそ、工場を数多の時代に点在させた。スクリプトに一任させ、スクリプトがスクリプトを生産させる無限サイクルを作り上げた。
数多の時代に点在するうちの一つが破壊されたところで大した打撃ではない。たまたま討伐隊が工場1箇所を見つけられたとしても、その間にもスクリプトたちは工場を増産しスクリプトを量産する。
そして、大戦の歴史をスクリプト敗北のものに書き換え、兵士の士気を完全に吸収する。
計画はおおまかにこのようなものだった。計画の始動時点で、彼とスクリプトは勝利を確信さえした。
最初の頃は高笑いが止まらず、感情がないはずのスクリプトさえ、その時はもんどりをうって喜びを前面に押し出していたように思えた。
- 617 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その3:2015/11/02 00:07:20.899 ID:72l30Wboo
- しかし、討伐隊はまるでその余裕を嘲るかのように、迅速すぎる程に各年代の工場を発見、破壊していった。
数多の工場を個々に特定していくのは、工場稼働の一年代を特定してないといけないという条件上、不可能といっていい。
また、時限の境界を使用する際に避けては通れない【制約】を考えると、総当りで過去の年代へ突入するといった大胆な行動は制限される筈である。
過去の改変で現在の会議所兵士に多大な影響を与える可能性もある。
それこそ、会議所に情報を漏らす内通者がいるか、会議所が“魔法”でも使わないかぎり、工場特定は不可能なのだ。
???「…まさかッ」
ハッとしたように口を半開きにする。開け放たれた口内から、毒々しい吐息が静かに霧消していく。
???「会議所内にも存在するんですかねェ…“ここ”と同じような場所がッ」
自らの居る場所を指し示すかのように、異型のモノは脚を二度、三度踏み鳴らした。
―――
彼は、時限の境界の【制約】を全て把握していた。
否、スクリプトとともに“事前に”知らされていた。
―――
- 618 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その4:2015/11/02 00:10:55.291 ID:72l30Wboo
- ━━
━━━━
最早、彼にとって遠い過去のように思える、運命を分けたその日。彼とスクリプトを閉じ込めていた牢は何者かによって突如として開け放たれた。
大戦中で会議所内の兵士が全てで払っている中、びくびくとしながら牢を飛び出し、急いで会議所を脱出した彼は。
その傍らにいるスクリプトとともに、突如頭の中に響いてくる【声】を聴いた。
――『君たちは、いまからとある場所を目指さないといけない』
――『【時限の境界】。そこは、過去へ時間跳躍できる力を持つ場所だ。また、時限の境界内は【歴史改変の影響を受けない】、いわば歴史の波から君たちを守るシェルターだ。有効に使うと良い』
――『安心してほしい。会議所の、きのたけ兵士たちには、今から話す内容を決して口外したりはしないよ。君たちだけのものだ』
???「な、なぜオレ様たちにそこまで教える。怪しいですなァ」
【声】は冷静に、彼を諭した。
――『君たちは、この牢から逃亡するという選択を選んだ。即ち、会議所との全面対決に他ならない。我々はその選択を大いに歓迎するよ』
――『いつの日か、君たちの行方を追跡するために、会議所から討伐隊が結成されるだろう。その時において、【時限の境界】は重要な意味をもってくる』
???「な、なるほどォ!フハハハッ、オレ様とスクリプトはその時限の境界に逃げ込み、会議所勢を迎え撃てばいいわけだなッ!痛快ッ!愉快ッ!愉悦ッ!」
- 619 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その5:2015/11/02 00:16:12.102 ID:72l30Wboo
- ――『ただ、時限の境界には【制約】が存在する。この【制約】を理解しない者には然るべき罰が与えられる。今から、君たちには、その制約の全てを訓えよう…』
━━━━
━━
時限の境界は、“歴史改変の影響を受けない空間”である。
始めに【声】から受けた説明だ。
仮に、同胞のスクリプトが、世界を創り変えるほどの歴史改変を過去にて行い、自身の存在が危ぶまれたとしても、時限の境界内にいればその影響は一切受けない。
たとえば、過去の時代において自分が存在を消されてしまったとする。その歴史改変を、時限の境界内で過ごしていれば、自分という存在は残る。
時限の境界で歴史改変の瞬間をやり過ごしてさえしまえば、自らの身は保証される。
この事実は、彼に多大な安心を与えた。
とはいえ、時限の境界の【制約】により、時限の境界内に長時間留まり続けることはできない。
跳躍先の過去においては、時限の境界(シェルター)から出てしまうため歴史改変の影響を受けてしまう。その行動には細心の注意を払わなければいけない。
そして、彼の元から消え去ったスクリプトたちは、跳躍先の過去で討伐隊による再改変の影響を受け、次々とその存在ごと抹消されているのだった。
- 620 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その6:2015/11/02 00:17:49.083 ID:72l30Wboo
- ???「時限の境界と同等の機能を有した場所が存在する筈だ。いや、寧ろそれ以上だァ。たとえば、“大戦歴史を逐一確認できる場所”とかなァ…」
彼は、【大戦の歴史を変えないと現代に戻れない】という時限の境界の制約を知っている。
これ程までに正確に工場を破壊してくる様は、会議所側に歴史を逐一閲覧できるシステムが存在してもおかしくない。そう考えた。
彼の読みは概ね正しかった。ただ一つの読み違えたとすれば、会議所側もスクリプト工場設立の時代を正確に把握しているわけではないということだった。
そのため、会議所側は半ば総当りに近い工場捜索作戦を実施している。
ただ、スリッパ発案によりある程度の年代絞り込みがあった上でのことだが、当の異型のモノは知る由もない。
- 621 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 慟哭編その7:2015/11/02 00:25:08.775 ID:72l30Wboo
- ???「オレ樣自身で動かなくてはいけないのか…いや、しかしィ今ここで動くわけにも…」
一時期自身の元に集まっていた兵士の“士気”も、討伐隊の歴史再改変により、今は彼の手を離れ元の兵士の下に戻りつつある。
彼は悩んでいた。兵士の士気を喰らうことが必要だった。
ただ、今ここで崩壊一歩手前のまま外に姿を見せるのは会議所側の思惑通りといっていい。即ち、敗北の二文字。
そして、悩んでいる間にも時限の境界は彼をまた次の過去へと引きずり込むべく彼の脚を見えない力で掴む。
同時に、謎の吸引力を感じながら、彼は手近に居たスクリプトの脚を掴み、歴史改変の行動共有を取るための準備を整える。
会議所側と同じく、彼にもまた十分に思案するだけの時間は残されていない。
ふわりと宙に浮く感触を得ながら、思考を張り巡らせる。そして、扉をくぐる直前に、彼は閉じていた両の瞳をかっと見開いた。
どうやら最善手の行動を発見したようだが、時間跳躍の衝撃でその閃きを維持できたかどうかは定かでない。
時限の境界が微かに揺れる。時代跳躍を行う際、時限の境界は微かに空間全体が微弱に震動する。
両陣営を翻弄してやまないこの空間も、彼らの時間跳躍が済めば、束の間の休息に入る。
長い間、震動するその揺れは、まるで近く訪れるであろう決戦を予期させた武者震いのように、時限の境界は両陣営の動きを観戦者として見守り続ける。
- 622 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2015/11/02 00:26:05.523 ID:72l30Wboo
- 徐々に明らかになっていく裏側。謎の【声】さん万能説。
- 623 名前:社長:2015/11/02 00:30:52.819 ID:YK2TJf/s0
- 何故声の主はDBと協力するのだろう?声の主も世界崩壊でも目指してるんだろうか
- 624 名前:社長:2015/11/17 17:43:50.803 ID:TJ1iY9R20
- てかマテや >>603の滝本さんって誰だよ。
- 625 名前:きのこ軍:2015/11/19 18:39:34.293 ID:qOWLVtxs0
- >>624
きれぼし脳は誤字脱字に厳しい。
正しくは
滝本→シューさん
どうして間違えてしまったんだろうか…
なんとか今月中の更新を目指します。
- 626 名前:たけのこ軍:2015/12/05 23:27:52.116 ID:M3Ohlnhk0
- http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/765/wars1.png
アイム
http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/766/wars2.png
オニロ
まあクオリテーは期待しないで。あとオニロ君の性別がどっちなのか感がする。。。
- 627 名前:きのこ軍 :2015/12/06 16:03:48.876 ID:XeND0tuM0
- >>626
感謝感謝なお感謝
オニロ君長髪ポニーテールは採用させてもらおうそうしよう。
やったぜ。
- 628 名前:きのこ軍 :2015/12/06 16:11:09.408 ID:XeND0tuM0
- 更新しなくちゃ(焦燥感)
- 629 名前:たけのこ軍 援護兵 Lv1:2015/12/06 16:31:38.242 ID:07wBGBBYo
- >>626
2人とも性格のイメージがちゃんと表現されてるね!
>>628
これは更新宣言
- 630 名前:きのこ軍:2015/12/31 18:18:31.869 ID:Bkzcex/wo
- 結局今月は忙しくて更新できませんでした、すみませぬ…
来年中の完結目指します!
- 631 名前:きのこ軍:2016/02/14 22:53:59.272 ID:BAYhqydco
- 今週中には更新できると思います。頑張ります。
- 632 名前:きのこ軍:2016/02/21 11:35:27.564 ID:gMmpaUS.o
- よくわからないあらすじ
・これまでのあらすじ
“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。
その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。(Chapter1まで)
そんなある日、会議所で捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走していたことが判明。同時に、DB一味は、禁忌のマップ『時限の境界』で、故意に会議所不利の歴史に改変していることも明らかになる。
世界の危機を救うため、参謀を隊長とするDB討伐隊は、すぐさま『時限の境界』に突入するも、内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。結局、DBの姿すら確認できずに、撤退を余儀なくされる。
自身の不甲斐なさを悔い、アイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。オニロとの絆を深め、師からの教えを理解したアイムは、再び時限の境界へと突入する。
しかし、新たな【制約】により、アイムは独り過去の時代に閉じ込められてしまう(Chapter2まで)
それでも持ち前の機転と戦闘術魂を利用し無事現代に帰還したアイムは、会議所の中心的存在だった集計班が突如として姿を消したことを知る。悲観に暮れる間もなく、竹内の加入を経て、
会議所は遂にスクリプト大量増殖の問題に触れることとなる。それは、過去のあちこちにスクリプトたちが【スクリプト工場】を製造し、過去の時代に送り込んでいるという、ネズミ講のような恐ろしい実態だった。
すぐさま、時限の境界に潜んでいるDBの捕獲及び工場破壊の『ハイブリッド作戦』が開始されたのであった――――
- 633 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その1:2016/02/21 11:37:28.198 ID:gMmpaUS.o
- 【K.N.C180年 時限の境界 入口前】
スリッパ「段々と、ここに来るのがライフワークになってきたな」
筍魂「わかる(真顔)」
額の汗を拭い、スリッパはサラから渡された水筒の中身を一気に飲み干した。
炎天下の下、転移魔法陣から下りた討伐隊一行は時限の境界に向かって歩を進める。
朱の鳥居群の隙間から差し込む陽がアイムの目に刺さる。橙と朱の代る代るのコントラストは、視界だけでなく思考をも狂わせる不思議な空間になっていた。
狂った思考といえば―――アイムは先頭を歩くスリッパの背中をじっと見る。背後にいるサラが、主人を守る猫のようにアイムを見てくるが、気にしない。
アイムには今のスリッパを信じきることができないのである。原因は、先日の会話の一幕に因るものだった。
- 634 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その2:2016/02/21 11:39:06.602 ID:gMmpaUS.o
- ━━━━
━━
スリッパ「なぜDBは歴史改変を続けるのか、考えたことはあるかい?サラ、紅茶を頼む」
今日も慌ただしく討伐隊が出立した後、すっかり会議所の一員となったスリッパは静かに問いかけた。
オニロ「ボクも気になっていました。DBはどうしてこんな面倒くさい手段で襲撃しているのかなって…」
アイム「どうしてって…歴史改変で兵士の士気を“奪って”、会議所を支配するのが目的だろう」
非番のアイムは紙の山に寝そべる。ふわりと柔らかい感触は、無き集計班の置き土産としては上出来だ。オニロは不満気ではあるが。
スリッパ「会議所を支配したいのなら、そう歴史を書き換えればいい。『DBが会議所を支配する』と改変し、現代に戻ってきたらその瞬間、覇者だ」
アイム「それができたら奴も苦労しないだろう」
スリッパ「その通り。DBには【できない】。大量のスクリプトを従えて、過去の時代の警備が手薄な時代の会議所に乗り込んでしまえば、それで終わりだというのに」
二人の話を横で聞いていたオニロは、ひらめいたようにポンと手をついた。
オニロ「そうか、DBは【恐れている】んですね」
スリッパは大きく頷く。テーブルに置かれているクッキーを齧る。
スリッパ「恐らく、奴は過度な歴史改変に因る修正を恐れている」
竹内「おーいアイムや、飯はまだかの」
アイム「うるせえ爺さん寝てろ」
- 635 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その3:2016/02/21 11:40:30.065 ID:gMmpaUS.o
- アイム「過去の大幅な歴史改変は、自分の身を危うくする。若しくは奴自身もどのような副作用が起こるか予想し得えていない。だから迂闊に手を出せないのか」
スリッパ「ひたすら大戦の歴史改変に拘り続けているのは兵士の士気を奪う意外にも、奴なりの安全策ということだろう。
その結果、“宝の山”たる時限の境界に、あんな醜悪な化物が篭もりきりになったことは皮肉だけどね」
スリッパの“宝の山”という表現に、アイムはどこか気味悪さを覚えた。
アイム「おいスリッパさんよ。職業柄、あんたが時限の境界に憧れるのはわからなくもないが。あそこは宝の山でも楽園でもないだろ」
オニロ「ボクは目にしたことがないけど、確かにみんなを苦しめているだけの場所のような…」
アイム「過去へのタイムワープなんて弊害しか生まないさ。過去は覗き見できるかもしれないが、本来は修正なんてできるわけない。【過去なんて本来変えるべきものではないんだ】。
過去の経験、記憶を蓄積させたものが今の自分であって、それを真っ白にしてしまえば、それは死んだも同じ――」
スリッパ「そんなことはないッ!!」
突然の剣幕に、アイムは驚いて二の句を継げなくなった。
- 636 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その4:2016/02/21 11:42:09.972 ID:gMmpaUS.o
- スリッパ「DB達は使い方を間違えているだけだ、正しい運用方法で時限の境界は素晴らしいタイムワープ装置となり得るんだッ!」
勢い良く立ち上がり、まくし立てて喋るスリッパを前にアイムとオニロは閉口した。気味が悪い。二人は純粋にそう感じた。
スリッパ「君たちにはわからないのか、あの時限の境界の素晴らしさがッ!望んだ時代へ往来できる高い利便性、何度でも使える簡易性だッ!」
スリッパ「今の自分を殺してしまう?確かに、客観的に見ればそうかもしれない。ただ、記憶は残る。そう、過去はやり直せるんだ!そうだ、あの時だってッ時限の境界を利用さえすればッ――」
コツン。
スリッパの背後から、サラが静かにティーカップを置く。しかし、その音は目の前が見えていないスリッパの中に瞬く間に響き渡り、彼を冷静にした。
瀟洒なメイドサラの主人への意思表示を、二人は初めて見た気がした。
スリッパ「――すまない。熱くなりすぎた」
脱力したように着席し、一口紅茶をすする。後には、居心地の悪い静寂が残った。
━━━━
━━
- 637 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その5:2016/02/21 11:43:28.549 ID:gMmpaUS.o
- スリッパは時限の境界を識者として評価しているのか、それとも過去に戻りたいから、あのように激昂したのだろうか。
アイムにはわからない。
ただ、¢はDBに、そしてスリッパは過去に固執している。¢に続き、またも仲間に疑いの目線を向けてしまっている。
自身の冷淡さにうんざりしてしまう。
筍魂「おい愛弟子よ」
アイム「なんだよバカ師匠」
前を歩いていたはずの筍魂は、いつの間にかアイムの横にぴったりと付いていた。時折、こうして気配を殺して筍魂はアイムを吃驚させることがある。
気配を操るから当然の事だと本人は語るが、ただ単に存在感がないだけではないかとアイムは勘ぐっている。
筍魂「気を抑えろ、お前の不安、疑念をひしひしと感じるぞ。感情をコントロールしきれないことが、お前の欠点であり長所でもあるが…これでは一人前の魂・伝承者にはなれないな」
アイム「いや、元よりなる気はないんだが」
ただ、と筍魂は途端に声を潜める。
筍魂「俺にもなにか良くないことが起こる“予感”はある。粘りつくような風が吹きつけているのがその証拠だ。このまま、無事帰ってこられればいいがな」
アイムは顔を上げる。朱の鳥居を抜けると、そこには毒々しく禍々しい、辟易とするほど真紅の鉄扉が見えてきた。
- 638 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その6:2016/02/21 11:46:53.216 ID:gMmpaUS.o
- 【K.N.C180年 時限の境界】
ビギナー「さて、今回は何年にいけばいいんだっけか」
スリッパ「K.N.C125年だ。この近辺の年で比較的新しいスクリプト工場の痕跡があるのは確認済みだ。もしかしたらスクリプト工場が見つかるかもしれない」
年代が記されたメモを見ながら、一行は時限の境界を歩いて行く。スリッパを中心に、ビギナー、筍魂、アイムそしてサラが円形陣で防衛している布陣だ。
―――『いよいよだね』
アイムの頭のなかで、いつもの通り謎の声が語りかけてくる。
はいはいそうだな、とおざなりな対応でアイムは先に進んでいく。
暗い。時限の境界の内部は、底なし沼のようにどこまでも暗い。その暗黒の中を、ひたひたと一定のリズムの足音で徘徊する者がいる。
彼は急いでいた。未だ策敵しない強大な敵集団から逃れるべく、今日も時限の境界内を移動し続ける。
??「ハッ、ハァハァ…」
彼は同胞達を探していた。
孤独はもう御免だ。地下で収監されていた頃の生活を思い出し、額の汗を拭う。
彼は好んで暗闇で暮らしたが、元来の小心ぷりからか、独りでいることに恐怖感を覚える性質だった。歩く速度が早まる。
スクリプトが隣にいた頃は、母親の胎内のように居心地の良さを感じた。だが、その同胞も今は数えるほどしか残っておらず、
それを嘲笑うかのように、その暗闇は底なし沼のように彼を暗い未来へと引きずり込もうとしていた。
未来は確定されていない。そう、目の前の空間があれば過去は、そして未来は変えられるのだ。自身の雑念を振り払うかのように、歩を早める。
恐怖に慄く彼は、目の前の異変に気が付いていない。
いつもの彼なら聴き逃さない、複数の足音が彼の下に、刻一刻と近づいてきていることを。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 639 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その7:2016/02/21 11:48:47.207 ID:gMmpaUS.o
- スリッパ「次のホールを抜ければK.N.C125年の扉に辿り着くぞ」
何度となく読み返されてきた時限の境界マップを手に、スリッパは先を急ぐ。
ビギナー「しかし、スクリプトが全然見当たらないな」
筍魂「最近はフロア内に居るスクリプトもめっきり数を減らしてるな。この勢いじゃあ、DBを見つけるのも時間の問題かもしれないな」
アイム「そう簡単にいけばいいんだけ―――」
その時は、突然訪れた。
ホールに足を踏み入れた一行は、中心で蠢く、どす黒い“異型のモノ”と目があった。
- 640 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その8:2016/02/21 11:51:27.504 ID:gMmpaUS.o
- 心臓が早鐘を打つ――
呼吸を忘れるほど、口をあんぐりと開けたまま――
俺たちは悟る――
俺様は理解する――
彼こそが――
彼らこそが――
血眼に探していた会議所の宿敵であり――
追撃から振り切らなければいけなかった宿敵であり――
一連の騒動を引き起こした元凶でもある――
俺様を狂わせた元凶でもある――
絶対に出会わなければいけなかった存在である――
絶対に出会ってはいけなかった存在である――
その名は――
その名は――
アイム「DBォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!」
DB「会議所一味ィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 641 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/02/21 11:53:08.565 ID:gMmpaUS.o
- 投稿を開始してから2年半、ようやく会議所がラスボスと出会いました(白目)
全体で見ればそろそろ佳境です頑張ります。
- 642 名前:社長:2016/02/21 17:41:17.936 ID:F7k9y9fw0
- ついに現れたDB。ただまだ1章分あるてことはまだひと波乱ありそう。
- 643 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その1:2016/02/27 23:22:29.016 ID:3t.Kr4Eso
- 両者ともに呆気にとられ、一歩も動けない。だが、最初にたじろいだのは討伐隊員だった。
スリッパ「予想していたとはいえすさまじい腐臭だ…」
彼の身体から放たれる刺激臭は、2~3m離れた位置でも臭うほど自己主張が強い。
ビギナー「なんてグロテスクな外見なんだ…」
筍魂「一理ある」
DB「……」
常人の二倍ほどの縦横幅はある図体は、存在自体が醜悪だ。身体の形状こそきのこに似ているが、笠となっている頭頂部は不自然に尖り、腹は中年兵士のように膨らみダボついている。
また、何度も時間跳躍を繰り返し、砂埃にまみれた身体は不気味な黒光りを放っている。
胴体からおまけのようにちょこんと生えた手足が間抜けさを誘う。しかし、一足動けば、車輪のように高速で足を動かすさまは、古来より忌み嫌われてきた害虫を連想させる。
討伐隊の面々が思わず顔を背ける程の状況の中、ただ一人、アイムは目の前の異型のモノを直視したまま動かなかった。
アイム「…お前が、DBか」
アイムの中の既視感。この感触は、大戦年表編纂室を初めて訪れた時と同じ。
初めてなのに初めてでない。
自分のことなのに自分がわからない。記憶を失う前、DBと会敵したことがあるというのか。
- 644 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その2:2016/02/27 23:25:25.298 ID:3t.Kr4Eso
- DB「…アァ」
討伐隊員と同じく、未だ混乱しているDBだったが、目の前のアイムを見て思わず声が漏れる。
パニック状態に陥っても仕方ない状況下の中で、DBは瞬時に策を巡らせ、自身の未来を決め、不敵にニヤつく。
這いつくばってでも諦めず生き延びる術を探しだす。これこそがDBの強みだった。
DB「――なんだ。“君”、一人だけかァ」
アイム「なんだと…?」
ニタニタとDBが口角をつり上げる。
DB「“相棒”に伝えておけ、『すぐに迎えに行く』とねェ…」
DBの舐め回すような視線に、思わずアイムの背筋にゾクリと悪寒が走る。
この視線は初めてではない、身体がそう告げている。
アイム「うる…せえッ!!」
風切り音とともに、アイムの手から放たれた短刀がDBの頬を掠める。
- 645 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その3:2016/02/28 00:12:23.130 ID:HqJ60wngo
- DB「ひ、ヒイイイィィィ!」
思わず耳をふさぐような金切り音がホール内に木霊する。アイム以外の討伐隊員が途端に意識を戻す。
スリッパ「…サラ、頼むッ!」
スリッパの背後に構えていたサラが流れるような所作で、用意したクラスター銃で大量のベビークラスターを放つ。
筍魂「よくやったぞ弟子!捕獲だッ!DBを捕獲するッ!『いわなだれ』!」
ビギナー「うおおおおおおおおおお」
それに続き、筍魂がDBの頭上から石塊を降らせ、鉤爪を研いだビギナーがDBを捉えに走りだす。連携は完璧だった。
DB「た、助けてくれェェェェェェ!」
喚き散らしながら、DBは両の手を地面に付いた。そして、四本足で走る獣のように、また部屋を動きまわる害虫のように、
縦横無尽にホール内の天井を駆け回り連携の取れた攻撃を交わした。
スリッパ「サラ、次弾装填を急げッ!筍魂さん、敵をホールから逃がすなッ!」
筍魂「かしこまりッ!いでよ、リフレク――チッ!!」
ホールの四方に壁を貼りDBを閉じ込めようと目論んだ筍魂だったが、その四方から登場したスクリプトたちを前に詠唱を中断し、防戦態勢を取った。
一転、筍魂たちは追い詰められてしまった。
DB「ふは、フハハハハ!形勢逆転だな、ではさらばだ君たち!」
アイム「逃げるぞ、追えッ!どうせ奴は時限の境界からは逃げられない!」
- 646 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その4:2016/02/28 00:26:29.749 ID:HqJ60wngo
- DBは逃げ続け、アイム達は追い続けた。時代のホールをひたすら走り抜けるDBを、スクリプトの残党が足止めといわんばかりの抵抗をする。
果てもないイタチごっこを繰り返し、そろそろ頃合いだと睨んだDBは、“ある扉”の前で立ち止まった。
DB「それではさらばだ諸君。スクリプト君、“しっかり”と頼んだよ」
間髪をいれずに、DBは扉をくぐり過去の時代へワープする。それを見届けたスクリプトたちが、行方を追うアイムたちの妨害をする。
アイム「そこをどけッ!ビギナーさん、DBはどの扉に入ったッ!?」
ビギナー「【8の扉】だッ!ただ、ここが何年のホールかはもうわからないッ!」
スクリプトの猛攻を凌ぎながら、ビギナーは大声でアイムに答える。
時限の境界は、ホール毎に存在する扉に【0】から【9】の数字が割り振られている。
一つのホールごとに10年ずつ時が進んでいるので、K.N.C60年台のホールの【5】の扉をくぐれば、扉の先はK.N.C65年となる。
アイム達はDBがXX8年の時代に飛び込んだのはわかったが、正確な年代までは特定できていないのだ。
スリッパ「スクリプトたちめ、最期の勢いとばかりに攻勢を強めてやがるッ!このままじゃあ、ホールから押し出されるぞッ!」
筍魂「走り回って体力も奪われつつあるな、ぜえぜえ。これじゃ¢さんを笑えないな」
ビギナー「ひとまず戻るか、待てば海路の日和ありだッ!」
- 647 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その5:2016/02/28 00:28:53.530 ID:HqJ60wngo
- ―――『時間切れ』
アイムの頭のなかで響く針の音がカチリと止まる。それは時限の境界内での移動のタイムリミットを意味する。
アイム「…どうやらそうはいかないらしい。【時間切れの制約】で、近くの扉に吸い寄せられるぞッ!」
スリッパ「なんだとッ!DBめ、時間をかけて逃げ回っていたのは、この時のためかッ!」
アイム「みんな、力を貸してくれッ!なんとかして目の前のスクリプト群を突破して、DBの入った扉に辿り着くぞッ!!」
ビギナー「承知ッ!ビギナーズラックの申し子、ビギナー!いざ推して参るッ!!」
スリッパ「サラ、ビギナーさんの援護を頼むッ!みんな、二人の後に続けッ!」
ゆらりとした豹の構えからビギナーが決死の力でスクリプトへの突破口を開くため突進する。
ビギナーの後ろからは、サラが、両手に構えた大筒からアイスの実弾を次々に発射しスクリプトを怯ませていく。
筍魂「ぜぇぜぇ。弟子よ、最早私はこれまで…会議所に戻ったらきのこ軍に伝えてくれ、“やはりきのこの山は不味い”とな」
アイム「てめえ、¢さんみたいに少しでもその場でヘタってみろッ!尻を蹴飛ばしてでも這い上がらせてやるからなッ!」
スリッパの後をバテ気味の筍魂、殿をアイムが続く。巨大スクリプトNEXTの足元をすり抜け、ホールの中盤へ一行は進んでいく。
すると――
- 648 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その6:2016/02/28 00:31:48.265 ID:HqJ60wngo
- ビギナー「うお、身体が勝手に宙にッ…!」
スリッパ「時間切れかッ!しかし目論見通り、全員【8】の扉に吸い寄せられていくぞッ!」
アイム「よっしゃッ!これで【制約】もクリアし…た…し」
――【制約Ⅲ】 時限の境界で複数人が時限跳躍をする際。
互いに身体の一部分でも触れたまま全員が一緒に時限の扉を通れば、時限の境界に関する制約状況は互いに、“共有”される。
今の状況では全員がバラバラに扉に吸い寄せられていっている。つまり、歴史改変の情報を互いに“共有”できない。
一人ひとり、別の歴史改変が必要になる。
アイムの頭の中を、K.N.C55年に閉じ込められた時の記憶が掠める。このままではあの時の二の舞いになってしまう。
アイム「まずいッ!みんな、互いの服でも掴みあって――」
- 649 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その7:2016/02/28 00:33:45.098 ID:HqJ60wngo
- 瞬間、鋭い風切り音とともに、緑色の触手がアイムの身体に巻き付く。
残りの隊員も一様に、宙に浮きながら謎の触手に巻き付かれている。触手の出処を辿ると――
筍魂「『つるのムチ』、これで【制約】は問題ないだろう?」
アイム「――やればできるじゃねえか、バカ師匠ッ!追うぞ、DBをッ!」
全員はひとまとまりになったまま、開け放たれた扉をくぐる。
DBを追いかけるために幾度と無く繰り返された過去の時代へのワープを行うのだった。
- 650 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/02/28 00:36:41.218 ID:HqJ60wngo
- きゃー魂かっこいい(黄色い声援)そしてビギナーさんかっこいい。
今日のカード更新。遂にラスボス登場です。
http://dl6.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/782/card-26.jpg
- 651 名前:たけのこ軍:2016/02/28 01:35:28.881 ID:kRuAvnE20
- さすが魂
- 652 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その1:2016/03/06 23:32:22.358 ID:3p9ZTm1.o
- 【K.N.C28年 会議所】
??「…いッ…お…、オイッ!大丈夫かッ!」
アイム「!!」
兵士の呼びかけで意識を取り戻したアイムは、勢い良く顔を上げた。
うおっ、とアイムから飛び散った泥を避けるために、腰に携えた長剣を鳴らしながら声の主は後ろに飛び退いた。
スリッパ「無事でよかったなアイムッ」
兵士の隣に立っていたスリッパたちが、アイムの手を取り起き上がらせた。
アイム「イテテ、頭を打ったな…というか、なんでみんな泥だらけなんだ?」
四人の顔は、一様に泥だらけだ。
筍魂「安心しろ、お前もだゾ」
??「みんな、この小庭園の水溜りに顔突っ伏して倒れていたんだ。息ができなくなる前に見つけられてよかったよ」
若い兵士は豪快に、しかし屈託ない笑顔で討伐隊員を迎える。よく見ると、純白のシルクハットにゆったりとした袴を身に着けている、
このアンバランスで奇妙な出で立ちを、アイムには覚えがある。
??「丁度、【討伐戦】が始まるところだったんだ。みんなも、そのために来たんだろう?こっちだ、案内するよ」
??「申し遅れた。俺の名前はコンバット竹内、会議所に来てまだ日は浅いが、よろしくな」
ハツラツとした青年の自己紹介を聞き、アイム達は無事、過去の時代へ跳躍できたことを知った。
- 653 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その2:2016/03/06 23:35:19.590 ID:3p9ZTm1.o
- アイム「若竹内さんが言っていた【討伐戦】てなんだよ」
スリッパ「わからない。だが、この頃、私はもう会議所を離れていたからな…詳しい内容は覚えていないよ」
ビギナー「この時代に生まれてないからわからない」
筍魂「同じく」
先頭を歩く竹内の後ろで、アイム達は額を寄せあい小声で話し合う。
ビギナー「でも、幸いにして全員。顔面が泥パック状態だから、正体はバレずにすむね」
筍魂「まあ現代の竹内さんはただのボケ老人だから、どの道なんとかなったかもしれないが…」
竹内「おーい、そろそろ着くぞ!」
一行は見慣れた中庭に到着した。中庭には見たことのない規模で、人だかりが出来ていた。
??「ほう・・・君たち・・・まさかこの大戦の愛らしいマスコットキャラクターである私に自分を・・・いや、勝負を売るつもりかね・・・」
たけのこ軍 ドライヴィング「奴を倒すぞ…!」
たけのこ軍 抹茶「これは訓練ではない…!本番だ!」
きのこ軍 黒砂糖「仕方があるまい」
アイム「あれは、DBじゃねえかッ!」
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- 654 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その3:2016/03/06 23:42:24.721 ID:3p9ZTm1.o
- コンバット竹内「おっもう始まっているな、【討伐戦】が」
竹内の呟きなど露知らず、いきり立ったアイムがDBに怒号を浴びせる。
アイム「てめえッ!よくもノコノコと過去の時代に姿を現せたものだなッ!この場でその存在ごと消し去ってやるッ!」
スリッパ「ちょ、ちょっと待つんだアイム…この【討伐戦】てもしかしたら…」
制止するスリッパの手を振りほどき、アイムは中庭の中心に居るDBにぐんぐんと向かっていく。
きのこ軍 黒砂糖「おっ威勢がいいねえ、入隊希望者か」
たけのこ軍 ペーペー山本「期待のきのこ軍新人じゃないか。でも、なんで泥だらけなんだ?」
DB「よろしい、ならば戦争だ。こっちが勝ったらDBはきのこ軍のマスコットキャラだ。さて・・・この戦い・・・呑むか?」
目の前のDBはアイムのことなど気にせず、予定調和のように淡々と目の前の兵士たちに宣戦布告を告げる。
アイム「まだ白を切り通すかッ!」
筍魂「待てアイム、なにか様子が変だ。周りを見てみろ」
筍魂の言葉に、アイムは周囲を見渡しハッとした。両軍兵士が混在する中、誰も啀み合っていない。
寧ろ互いに協力しあうように、ジリジリとDBとの間合いを詰めにかかっている。
その様子はどこか楽し気で、自らの武器でDBに一太刀浴びせんという流行る気持ちを必死に抑えているように見えた。
コンバット竹内「いよいよ始まったな、【DB討伐戦】が」
- 655 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その4:2016/03/06 23:43:34.558 ID:3p9ZTm1.o
- ―― DB討伐戦
オニロ『過去には、会議所では【DB討伐戦】というものが数度開かれていたんだってさ。
その度に会議所はDBに勝利したんだ。討伐や捕獲こそできないまでも、兵士の士気を保っていたんだよ』
竹内の言葉に、過去にオニロが語っていた与太話を思い出す。
DB討伐戦は過去に開催されていたイベント戦の一種である。つまり、アイムの目の前にいるDBは、K.N.C28年に初めて会議所に姿を表した、過去のDBなのだ。
過去DB「大量撃破の産声が聴こえる・・・」
言われてみればと、アイムはもう一度目の前のDBを見返す。
先程まで見ていたDBよりも血色がよく黒光りしていない。声色もしわがれてはいるものの、どこか若々しさを感じさせる。
過去DB「ハハハ、かかってきたまえ」
きのこ軍 参謀「そこの泥んこ共ッ!手を貸してくれッ!DBを討伐するッ!」
スリッパ「今は流れに身を任せるしかない。史実では、DB討伐戦に勝利しているはず、その大元の歴史を再現するんだ。後は戦っている内に考えよう」
今よりもモミアゲが濃くて長い参謀の号令の下、アイムたちは過去のDB討伐のために闘うことになった。
- 656 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その5:2016/03/06 23:45:59.006 ID:3p9ZTm1.o
- スリッパ「みんな、この戦い。過去のDBを絶対に“討伐”してはいけないぞ」
戦いが激化する中、スリッパは密かに現代討伐隊員に向かってそう囁いた。
ビギナー「どうしてだい。この場でDBを討ち取れば、現代で続いているDB討伐戦争は綺麗さっぱり無くなり、収まるじゃないか」
スリッパ「DB討伐戦争という歴史が消失すると、DBはともかく、その戦争に巻き込まれている会議所兵士たちは一体どうなる。
竹内、集計班、そして私。本来DB討伐戦争がなければ居ない、または居続けた兵士たちのイレギュラー要素が、“歴史を大きく狂わせる”要因ともなっているんだ。
安易な歴史改変によって、会議所を取り巻く環境が変貌し、予想だにしない事態になることも否定出来ない」
アイム「つまり、DB討伐戦争という“歴史”事体を無かった事にしてはいけない。オレたちは【現代のDB】のみ討伐できるイレギュラーな存在、ということだな?」
神妙に頷くスリッパ。なんたる歯がゆさ、とアイムは爪を噛んだ。目の前に瓜二つの宿敵がいるというのに、止めを刺せない。
沈黙する討伐隊員、彼らの様子は織り込み済みといった体で、スリッパは驚くべき策を提案する。
スリッパ「とは言いつつもだ。過去DBの討伐は現代DBの【死】を意味する、その意味を最もよく理解しているのは、討伐隊員以外に誰がいるのか…?
よく考えてみろ、“奴”は【私たちよりも前にこの年代にワープした】。つまり、“奴”は必ずこの会議所のどこかに居るはずだ。
そして、これから、奴を誘き出すために一つ芝居を打つッ…」
- 657 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その6:2016/03/06 23:48:01.698 ID:3p9ZTm1.o
- DB「ハァハァ…」
間一髪だった。あと少しで、過去のDBと現代のDBの鉢合わせが実現してしまうところだった。
時限の境界を通る者によって、ワープする先の時間帯が異なることは、事前に『謎の声』より知らされていた。
しかし、まさか降り立った地の目と鼻の先で第一次DB討伐戦の準備をしていようとは、さしものDBも予想していなかった。懐かしさを感じる前に、本能的に身体が逃げる選択をした。
逃げ込んだ建物の柱の影から、中庭の討伐戦の行方を伺うDBには、一つ気がかりな事がある。
目の前で開かれている戦いにはさしたる関心を持たない。過去の自分は、勝負に負けこそするものの、討伐されずに逃げきれる。
途中どのような経緯になれど、【そのような手筈になっている】。自身の経験であるDBが一番理解している。
DB「…あいつらァッ!」
気が気でならないのは、討伐隊に参加しているアイム一行の動向である。
もしも誤って、その場で過去DBをアイムたちが討伐してしまえば。その瞬間、DBという存在は歴史の波から消し飛ぶ。
より正確に言えば、K.N.C28年に時代跳躍をしてきたDB自身が消えることはない。大戦年表編纂室と同じく、過去に時代跳躍中の兵士は歴史改変の影響を受けることはないためだ。
ただし、元の時代に戻ったとしても、歴史に爪痕を残してきたDBの存在を、誰も感知することはない。つまり、自身という存在は【歴史改変によって死滅してしまう】のだ。
自己顕示欲の強すぎるDBにとって、誰からも認知されなくなってしまうことは、恐怖以外の何者でもない。
アイムの気の短さを知っているだけに、DBとしては自身の思惑通りに事が進むかどうか、息ができないほどに心配している。
- 658 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その7:2016/03/06 23:50:49.685 ID:3p9ZTm1.o
- 筍魂「ほい、『サイコキネシス』」
過去DB「アッー!」
たけのこ軍 ドライヴィング「トンファーキック!!」
過去DB「アッー!」
たけのこ軍 抹茶「う、うおおおおおおお」
過去DB「ンギノッゴイイ!!」
コンバット竹内「おいおい今年の新人は有望だなッ!俺の出番なんて無さそうだなッ!」
筍魂が念力を起こしDBを怯ませれば、トライヴィングがトンファーを持ってDBに一蹴り浴びせ、若き抹茶が勇猛果敢にマシンガンを撃ちこむ。
急造チームの割に、連携は完璧だった。
DB「ま、まずい押されてる…」
史実に比べ戦闘経験豊富な人員が増え、過去DBは史実よりも大分早く劣勢に転じた。
この分では直に捕縛されてしまうと、その先の結末も想像し、現代のDBは背筋を凍らせた。
アイム「大分弱っているなッ!おい黒さんッ!DBを吊るしあげることはできるかッ!?」
きのこ軍 黒砂糖「どこの誰かは知らないが、やってみよう」
キャンパスに描かれた投げ縄が、活きのいい魚のように過去DBに跳びかかった。息も絶え絶えのDBは縄を振りほどく力も残っておらず、
これまた黒砂糖お手製の絞首台に吊るしあげられてしまった。
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- 659 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その8:2016/03/07 00:00:56.469 ID:MMdSeg6Eo
- アイムがライフルの銃口をDBの眉間に目掛けて構える。
過去のDBは、もう疲れきってしまったのか抵抗する意思を見せずに、静かに項垂れている。執行を待つ死刑囚のようなものだ。
現代のDBの柱を掴む力が強くなる。
このままでは討伐されてしまう。アイムの行動により、これまでの努力が。苦労が。計画が全て破綻する。
討伐されてしまう。指を咥え見ているままで良いのか。
敵の暴挙を、許して良いのか。
―――― マズイ!
銃声音よりも刹那に早く、DBの身体は反応していた。ライフル発射よりもコンマ秒分だけ早く、DBは短刀を投げていた。
放たれた刀は、過去DBを縛っている縄を目掛けて一直線に飛び、小気味良い音とともに、縄をぶった切った。
直後に乾いた銃声音が響く。
助かった、これで阿呆で短気な敵の手で無秩序な歴史修正は免れた。DBはホッと胸を撫で下ろし、次の瞬間――
討伐隊のスリッパと『目があった』。
ゾクリと背筋を悪寒が走るDBは、瞬時に、一連の行動がアイム達によって仕組まれた策であることを悟った。
過去DBの眉間の位置には、銃痕など残っていなかった。会議所内には、無情にも銃口の先から奏でられた空砲音だけが木霊していた。
それは、現代の討伐隊員と現代のDBの死闘の再開を告げるゴングだった。
- 660 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その9:2016/03/07 00:03:41.006 ID:MMdSeg6Eo
- スリッパ「短刀の出処及び“本体”を視認!バルコニー2階、教練室付近からだッ!」
スリッパが鋭い声で冷静に状況を報告する。図られた、と頭で理解するより前に、DBは会議所の外へ向かって走りだした。
スリッパ「サラ、頼むッ!DBは裏階段から会議所の外へ出る気だッ!」
御意と云わんばかりに、サラは風切り音を残して快速をもってDBを追跡し始める。
ビギナー「サラに続いて先行するッ!」
ビギナー、スリッパ、筍魂が相次いで中庭から去っていった。残ったアイムはぽかんとする一同に向かってにやりと笑い、指をパチンと鳴らすと、DBの転がり落ちた地面にぽっかりと大きな穴があいた。
アイム「落とし穴です、これで捕獲する準備は整った。なにもいま討伐しなくても、後で煮るなり焼くなりすればいいでしょう」
そう言い残し、アイムもくるりと踵を返し去っていった。
続いて、どこから出てきたのか、間髪いれずに¢はDBの大穴に向けて捕獲網を投げ入れた。
そして、見たことのない満面の笑みで周りにこう告げた。
きのこ軍 ¢「みなさんお疲れさまでした。私は諸事情で参加出来ませんでしたが、DB討伐戦は会議所側の大勝利に終わりましたね。
謎の存在たるDBはすぐさま会議所側で身柄を確保し、“然るべき”タイミングで“適切な処置”を取ります。後は私に任せてください、お疲れさま」
- 661 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その10:2016/03/07 01:17:28.250 ID:MMdSeg6Eo
- ―――『おめでとう。クリア』
アイムの頭のなかに謎の声が響く。つまり、歴史の改変に成功したという証。
討伐戦こそ勝利するもののDBの逃亡を許した史実に比べ、勝利し捕獲まで果たした輝かしい歴史に塗り替えられたのだ。
アイム「おそらく歴史は改変された。オレたちはいつでも現代に戻れるッ!」
筍魂「がははは、グッドだ~!後はこのK.N.C28年で、現代のDBを捕獲すれば、全てはハッピーエンドだ」
スリッパ「サラ、DBの姿を見失うなよッ!」
DB「ハァハァ…なんて、足の速いメイドだァ。さすがの俺様でも逃げきれないぞ」
いつまで経ってもしつこく追いかけてくるメイドに辟易としながら、DBはようやく辿り着いた時限の境界の出口で立ち止まる。
DB「仕方がない…使いたくないが、俺様の力を一部解放しないと乗りきれないなァ」
そう呟くや否や、DBの周りを黒い霧が覆った。
- 662 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その11:2016/03/07 01:22:03.678 ID:MMdSeg6Eo
- スリッパ「うお、霧で視界が見えないぞッ!」
討伐隊員の視界はすぐに黒の世界で覆われた。
アイム「うわっ、なんだこれ毒霧じゃねえかクセエ!」
スリッパ「アイム、止まれッ!目の前は時限の境界の出口だッ!」
先行するスリッパの声を頼りに、アイムは足を止めしきりに目をこする。
アイム「クソッ、目に染みる!てかゴミみたいな臭さだッ!」
スリッパ「大丈夫かいアイム君。ほら、このハンカチ使いなよォ」
アイムの“背後”にいるスリッパからハンカチを渡され、一心不乱にアイムは顔を拭き取った。
――背後?
霧が晴れると同時に、アイムの眼前には、スリッパを含む四人が飛び込んでくる。
時限の境界に通じる扉の前で静止してDBを必死に捜している様子だ。
では背後にいるスリッパは何者なのか。
恐る恐るアイムが背後を振り返ると――
DB「やァ、アイム君」
スリッパの声色を喉から出しながら、DBが立っていた。
アイム「ダイヴォッ――」
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- 663 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/03/07 01:22:21.953 ID:MMdSeg6Eo
- 更新終わり
逃げ足に定評のあるラスボス
- 664 名前:きのこ軍:2016/03/07 19:57:42.385 ID:3htL7.Cw0
- 歴史のお勉強
【兵士急募】きのこたけのこ大戦 戦闘場&会議所★18【職歴不問】
(2010.08.14~2010.08.20)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1281755474/
【話題は】きのこたけのこ大戦 戦闘場&会議所★19【自由だ】
(2010.08.20~2010.08.24)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1282313300/
実際に、DB討伐戦は行われていました。もう5年も前の話になります。
★18の>>750あたりから。DB VS 会議所メンツ(討伐隊員)で突発紛争が行われています。
この後、断続的にDB討伐戦は行われますが、2012年8月頃を最後に、討伐戦は行われなくなり現在まで至ります。
warsでは、最後の討伐戦でDBが遂に捕獲され牢屋に放り込まれたという設定で、物語を構成しています。
どこからDBが出てきたのか、そして何故¢さんが参加していないのか。謎は深まるばかり。
- 665 名前:たけのこ:2016/03/07 19:59:00.352 ID:OnAnuYjYo
- 更新おつ!
気になることばかり
- 666 名前:きのこ軍:2016/03/07 20:18:25.611 ID:3htL7.Cw0
- 頑張って週一更新を目指します。
- 667 名前:社長:2016/03/07 20:38:08.551 ID:MuNNbt0k0
- DB地味にこえ真似とかヤヴァス
- 668 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その1:2016/03/26 23:51:25.781 ID:x3Oks6oUo
- 【K.N.C28年 会議所】
DB「ハッ、ハッ、ハッ」
荒野のなかを独り、DBは激走する。
既に限界を迎えているはずの身体から悲鳴が上がることはなかった。アドレナリンが苦しさを打ち消しているのだ。
DBは極度の興奮状態にあった。思い出すは先程までのアイム達との死闘。
あの時、スリッパたちは現代のDBを誘き出すために、過去DBを囮にして現代のDBを討伐隊の前に引きずりだした。
討伐隊の完璧な作戦勝ちに見えたが、同時にDBはその作戦を“利用していた”。
知性の高い兵士は、その敏さ故に、物事を見通す力が他の兵士よりも抜きん出ている。その多くは作戦参謀や指揮官といった要職に付く。
そして、自らが持つ賢さを、自分のためから他人を助けるために昇華させ使う。その過程で、兵士は内面の上でも飛躍的に成長するのである。
DBも元は知性の高い兵士の一人だった。ただDBは天涯孤独であり、生まれた時より世界から【忌み嫌われた】存在であった。
他人を導くために持ち前の力を使用するはずもなく、DBは常に自分のために使い続けた。
そのため、どの兵士よりも知力や感性は冴え渡り、同時に誰よりも狡猾となった。
スリッパの策にハマったのはDB自身が生んだ油断からだった。その時点ではスリッパたちが優位に立った。
しかし、メイドからの追跡に逃げきれないフリをしながら、DBは討伐隊員をうまく時限の境界まで誘い込み、そして討伐隊員だけを現代に還した。
中庭で討伐隊の策にハマる中で、瞬時の判断能力が生んだ、狡猾さゆえの良案だった。
- 669 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その2:2016/03/26 23:52:42.944 ID:x3Oks6oUo
- 狂喜の中に居たDBだが、次第に走る力は衰え、終いには息を切らして倒れこんでしまった。
元来、兵士の“心の本の頁(ページ)”を餌にして生きてきたDBである。歴史改変で兵士たちの余った“心の本”を喰らい、肥大化してきた。
しかし、一度、討伐隊が歴史修正に繰り出せば、手に入れた筈の力は、元の所有者に戻ってしまう。
元々の計画では“下手な歴史修正には手を出さず、兵士の心の本を食べ続け現代の会議所を支配する”ことだったが、ここにきてDBは計画修正の岐路に立たされていた。
DB「しかしィ…過去への過大な干渉は、自らの身も滅ぼしてしまう…」
――『でも何か策を打たないと、討伐隊は君のことを絶対に見つけるよ?』
仰向けのまま肩で息をするDBに、久方ぶりに謎の【声】が語りかけてきた。
DB「ッ、そんなことはわかっている。スクリプトももう期待できない、このままでは俺様の世界支配計画が――」
――『君には“力”があるじゃないか、忘れたのかい?』
DB「!!ッ。そうだった、俺様には兵士の負の力を取り込んで手に入れた“力”がある。そうか、それを利用すれば…ハハ、ギャハッ、ゲハハハハハハハハッ!!!」
けたたましい奇声を上げ、DBは独りで高笑いする。
思いついた、思いついてしまった。
重要な歴史修正を伴わずに、簡単に会議所を支配する方法を。
- 670 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その3:2016/03/26 23:56:40.249 ID:x3Oks6oUo
- 【K.N.C28年 会議所 裏庭】
¢「よしよし痛かったろう、ゆっくりと休め。次の戦いは近いからな」
縛られたDBの縄を解きながら、¢は子を見守る親のように在りし日のDBを労った。
過去DB「びええええええええん」
泣き喚きながら過去DBは人里離れた奥地へと逃げ去っていく。過去の光景を物陰からじっと見つめていたDBは、何も言わずに静かにその場を立ち去った。
会議所兵士の中でも当時の¢はDBの唯一の理解者だった。それも今は昔、今のDBには選択肢がない。¢には恩義を感じている、だが会議所にいる以上、対決は避けられない。
なにより、自身がこの先生き残るためには自分以外の全員を敵に回さないといけないのだ。その覚悟はとうの昔にできている。
昔の自分と決別を付け、DBは恐考えた計画を実行に移す。
- 671 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その4:2016/03/26 23:58:54.237 ID:x3Oks6oUo
- 黒砂糖「お、お前はッ!」
DB「やあやあ黒砂糖君。時間がないからさっさと催眠にかかってくれたまえ。
ようこそ、我が【DB教】へ」
廊下を歩いていた黒砂糖を捕まえ、全身全霊を込めた臭い息を吹きかけ、黒砂糖を失神させる。
DB「さて、黒砂糖くん。お前はァ、今日から【DB教】の一員だ」
黒砂糖「……はい」
DB「DB様のためならなんでもするよな?」
黒砂糖「……はい」
目を虚ろにし、催眠状態にかかった黒砂糖はDBの言葉に次々と同意していく。
DB「しかしィ。この時代から黒砂糖くんが【DB教】の一員であることがバレるといろいろとマズイ。どうしてだかわかるかね?」
黒砂糖「…はい。愚かな私が過去から暴れてしまうことで、予知できない歴史改変が起こり、DB様の崇高な計画が崩れしまいます…」
DB「そうだ。だからァ、君には【制約の魔法】を施そう。これから俺様が口にする『キーワード』を耳にした瞬間、君ィは【DB教員】であることを思い出し、俺様のために尽くす。
それまで君はただの善良な会議所兵士を演じるんだ。いいね?」
黒砂糖「……はい」
DB「さて、そのキーワードはァ―――」
- 672 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その5:2016/03/27 00:03:03.545 ID:SQHz6Ouso
- 【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】
きのこ軍 アイム「クソっ、DBの野郎に嵌められたッ!!」
たけのこ軍 社長「なに そん」
きのこ軍 参謀「気にすることはない。DBは確実に追い詰められている」
なおもアイムは机に拳を叩きつけ、悔しさを露わにする。
たけのこ軍 オニロ「アイム達の歴史改変を確認して以降、時空震は発生していない。ということは、まだDBがK.N.C28年に残っていることになるね」
たけのこ軍 社長「詰みです でなおしてまいれ」
きのこ軍 黒砂糖「次に時空震が発生したら、すぐさま時限の境界に急行して、DBを捕獲すればいいな」
たけのこ軍 社長「いまさら逃げても無駄にいい事を教えてやろう。」
- 673 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その6:2016/03/27 00:16:27.688 ID:SQHz6Ouso
- 大きな音に続き。
オニロは意識を失ったように椅子から転がり落ちた。
きのこ軍 アイム「おい、どうしたッ!!」
たけのこ軍 オニロ「あ、あああああああああああああァアアアアアアッ!!な、なんだこれはッ…頭のなかに記憶が、記憶が流れてくるッ!!」
頭を抱え嗚咽を漏らすオニロにアイムを始め、多くの兵士が彼に駆け寄る。
―― 安心しろよォ。ここを離れようとすぐあんたを“迎えに行く”からよォ、***もそれを望んでいるだろ。
―― 行っただろう、“迎えに行く”となァ。さァ、***へ帰ろう。
―― “迎えに行く”よ、約束するさ、必ず。だから二人で帰ろう***に。
決壊したダムから溢れ出る水の如く、容量外の記憶がオニロに襲いかかる。
オニロはただ身を縮こまらせ、いまこの時が過ぎ去るのを待つしかなかった。
頭のなかに反芻する幾多の会話。その会話に共通する単語が、オニロの頭のなかを次第に占有するようになっていた。
だから、頭のなかから振り払うように。弱々しく、ポツリとオニロはその単語を声に出してみた。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 674 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その7:2016/03/27 00:18:05.316 ID:SQHz6Ouso
- たけのこ軍 社長「な 何の話だったの?」
きのこ軍 黒砂糖「ッ!!!」
オニロの言葉に、不可思議なまでに身を震わせ反応した兵士が一人いた。しかし、会議所兵士が黒砂糖の異変に気がつくことはなかった。
なぜなら、同時にDBの歴史改変による時空震が編纂室を襲ったためである。
たけのこ軍 加古川「ぐおおおおおッ!こんな大事な時にいいい!」
きのこ軍 参謀「みんなしっかり耐えるんやッ!この時空震は会議所に訪れた好機ッ!DB捕獲のための最後のチャンスやッ!」
会議所兵士が頭を抱え必死に揺れに耐える中、淡々と自動筆記ペン オリバーは、大戦年表に改変された歴史を記載していく。
DBの歴史改変を編纂室が捉えた。つまり、DBはアイム達を現代に送り戻したK.N.C28年で歴史改変を行い、現代へ帰還する手筈を整えた。
DBが編纂室の存在を知らない限り、会議所は時限の境界にてDBを待ち伏せすればいい。
やがて数十秒続いた時空震はピタリと止まった。
たけのこ軍 791「大戦年表にはなんて書かれているの!?」
たけのこ軍 社長「さっ白い」
きのこ軍 アイム「追加された歴史は…【第一次DB討伐戦に敗れ捉えられたはずのDBは、隙を突いて脱走。
すぐさまDB討伐戦が再開されたものの討伐隊の働きですぐさま終戦。DBは涙目で敗走した。】
クソっ。あいつ、過去のDBを偽ってDB討伐戦の続きを開きやがったッ!」
- 675 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その8:2016/03/27 00:20:12.618 ID:SQHz6Ouso
- たけのこ軍 791「ただ、これでDBの歴史改変が確定した。今から急いで時限の境界前に移動してDBを捕えよう」
きのこ軍 参謀「DBは時限の境界の外に戻ってくるはずや。時限の境界に入らせるよりも前に捕えるしかないやろうな」
きのこ軍 ¢「ぼくを行かせて欲しいんよ」
きのこ軍 someone「同じく、きっと役に立つはずです」
たけのこ軍 加古川「私も」
きのこ軍 黒砂糖「…俺も」
たけのこ軍 オニロ「…ボクも、行かせてください」
次々と兵士が呼応する中、力なく倒れていたオニロからも声が上がる。
きのこ軍 アイム「テメエ、休んでろ。それにお前は編纂室部隊で地下に留まっていないと…」
たけのこ軍 オニロ「DBと決着を付けなくちゃいけない…それに、ボクもみんなと一緒に戦いたいんだ」
たけのこ軍 791「私がオニロの代わりに地下に残る。歴史はオニロ以外でも確認することができる。オニロ、行っておいで」
たけのこ軍 オニロ「師匠ッ!」
きのこ軍 アイム「…ッチ。足手まといにはなるんじゃあねえぞッ!少しでもヘバッたら尻を蹴りあげてでも起き上がらせてやる」
こうしてかつてない規模で、大所帯の討伐隊はDBを捕えるべく時限の境界へと急いだ。
それが、巧妙に張り巡らされたDBの罠だとも誰も知らずに。
- 676 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/03/27 00:20:27.910 ID:SQHz6Ouso
- オニロ、遂に参戦確定
- 677 名前:たけのこ軍:2016/03/27 00:21:28.766 ID:ha93.1z60
- 後催眠やめろ!!
預言のアイムオニロの死はどう吹き飛ばされるんだろう
- 678 名前:たけのこ軍:2016/03/27 00:22:16.163 ID:ha93.1z60
- そして¢君の過去がちょっと明らかになったすね
- 679 名前:きのこ軍:2016/04/21 01:07:01.464 ID:ytMPNuj.0
- リアルの都合で更新はもうちょっと先になりそう。ちなみにもう3章後半です。
- 680 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/05/23 00:42:33.249 ID:dsHugUWUo
- 今月も更新できそうにありません。6月中にはなんとか。
- 681 名前:たけのこ軍 791:2016/05/23 12:45:16.186 ID:Jv1Rg9AQo
- 無理せず頑張れ
待ってる
- 682 名前:社長:2016/05/23 17:36:53.000 ID:3exyDMeY0
- 無理はするな
- 683 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/07/24 22:38:08.937 ID:B2xggK/2o
- ・これまでのあらすじ
“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。(Chapter1まで)
そんなある日、会議所で捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走していたことが判明。同時に、DB一味は、禁忌のマップ『時限の境界』で、故意に会議所不利の歴史に改変していることも明らかになる。
世界の危機を救うため、参謀を隊長とするDB討伐隊は、すぐさま『時限の境界』に突入するも、内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。結局、DBの姿すら確認できずに、撤退を余儀なくされる。
自身の不甲斐なさを悔い、アイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。オニロとの絆を深め、師からの教えを理解したアイムは、再び時限の境界へと突入する。
しかし、新たな【制約】により、アイムは独り過去の時代に閉じ込められてしまう(Chapter2まで)
それでも持ち前の機転と戦闘術魂を利用し無事現代に帰還したアイムは、会議所の中心的存在だった集計班が突如として姿を消したことを知る。
悲観に暮れる間もなく、竹内の加入を経て、過去のあちこちにスクリプトたちが【スクリプト工場】を製造し過去改変を行うというネズミ講のような恐ろしい事実を目のあたりにする。
すぐさま、時限の境界に潜んでいるDBの捕獲及び工場破壊の『ハイブリッド作戦』が開始された。
順調に工場を破壊する中で、追い詰められていたDBとアイム達討伐隊は、時限の境界内で遂に運命の邂逅を果たす。
万事休すと思われたDBだが、自らの危機を逆手に取り、アイム達から逃れるだけでなく過去の時代で黒砂糖を洗脳。自らの内通者として仕立てあげ、計略を張り巡らしはじめる。
一方、会議所はDBを捕えるべく、前例のない人数で時限の境界に向かうのだが――――
- 684 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その1:2016/07/24 22:40:38.147 ID:B2xggK/2o
- 【K.N.C180年 時限の境界 入口】
アイム「さあ逃げ場はねえぞ、化物野郎ッ!!」
社長「勝ちますよきのたけは」
会議所からの転移を終えた、開口一番のアイムの怒号は、静かな時限の境界入口によく響いた。
風になびく草花のざわめきは、場にそぐわない無礼者に静かに怒っている表れにも思えた。
オニロ「ここが…時限の境界。なんて幻想的で、そして禍々しいんだ」
社長「アオし」
手で日差しをよけながら、オニロは目を細めた。穏やかな空の蒼と草原の翠が同居する空間の中で、時限の境界へと続く千本鳥居は毒々しいまでに紅く。
長い間地下に居たオニロの青白い肌は、朱の鳥居と比較すると病的なまでに映えた。
アイム「おい…あまり無茶するなよ。お前は地上に出たばかりの”病み上がり”なんだからよ」
オニロ「うん、ありがとう」
社長「美美美美美ち良かったね。」
放っておけばオニロはそのままこの空間内に溶けてしまうのではないか。なぜだか自分自身のように、アイムは心配した。
¢「感慨に浸っている時間はないんよ。DBは時限の境界を一度脱出し、もしかしたらこの付近に潜伏している可能性がある。探しだすんよ」
参謀「手分けして捜索やッ!時限の境界に入る時は一斉に突入やぞ」
- 685 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その2:2016/07/24 22:42:14.196 ID:B2xggK/2o
- 鬱蒼とした未開の地の中にポツンと存在するこの一帯は、まるで隕石が落ちたかのように、ぽっかりと木々が抜け落ちた草原になっている。
丘を降りた先に広がる、兵士の腰程度まで伸びきった草原は、丘の上からの明快な眺めと比較し、暗然たる隠れ蓑になっていた。
総勢十数名近い討伐隊員の多くは、丘を降り、方方でDBの捜索を始めた。
斑虎「うえっぷ…隊員の身長くらいまで伸びてるじゃねえか、もしDBを討伐したらここを会議所の庭園にしよう。手入れしないとな」
オニロ「だったら、今すぐに”手入れ”しますか?」
杖を構えるオニロに、斑虎は冗談ぽく肩をすくめた。
斑虎「そいつはいい。だが、その方法は、できれば俺たちが丘を下りきる前に言ってもらいたかったな」
草をかき分ける度に擦れあう音、枯れ草を踏みしめ進む音が響く。高台から眼下を臨む参謀も、揺れ動く草から隊員の無事を確認するだけだ。
黒砂糖「……」
人目を避けて何か企てを働こうとする者にとって、これほど絶好の機会はない。
この時、討伐隊員達は誰一人、黒砂糖の動きを感知できなかった。
- 686 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その3:2016/07/24 22:43:55.043 ID:B2xggK/2o
- 参謀「何名かはまだ捜索に当たってくれ、残りは丘に戻って別地点での捜索も敢行する」
時間をかけ捜索にあたったものの、DBは見つからないままだった。
アイム「既に、DBは時限の境界に戻っちまってる、なんてことはないよな…」
意外と傾斜のある丘を登り終わり、アイムは額の汗を拭った。視線の先には毒々しい朱鳥居と土壁がそびえ立っている。
someone「これまでの経験から推測するに、大戦年表― オリバーが歴史改変を告げるタイミングは『歴史が正に書き換えられた』時だ。
つまり、DBはまだ改変先の過去の時代に留まっている可能性が非常に高い」
竹内「つまり、どういうことかのう」
アイム「爺さん、あんた付いてきていたのか。寝てろって言っただろ。ほら、これ水筒だ。日射病になるんじゃねえぞ」
社長「やっほ^^」
参謀「竹内さんはシューさん最後の希望やからな。連れていかないわけにはいかんやろ」
スリッパ「目を離すと勝手に出歩くから監視が必要だけどな…介護の資格でも取るかな」
数十分経てど、DBが潜伏しているような形跡は見つからなかった。
DBが元の時代に戻るまで待つべきか、と多くの隊員が思う中、突如として―――
- 687 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その4:2016/07/24 22:45:11.956 ID:B2xggK/2o
- DB「ひいいいいいいいいいいいいいぃぃ」
耳をつんざく金切り音。声の方向へ全員が振り返ると、そこには鳥居の前で立ちすくむDBの姿があった。
アイム「飛んで火に入る夏の虫とはこのことだな、DB!!」
参謀「各員、目標は『DBの捕獲』ッ!急げッ!!」
DB「ひいいいいぃぃぃ」
参謀の命令よりも早く、DBは千本鳥居へ駆け出した。
¢「DBォ!僕だ、¢だ!止まってくれッ!」
¢の声は届かない。
黒砂糖「私と抹茶はここに残って後方支援に回るッ!!抹茶、いいな!?」
抹茶「う、うん!わかりましたッ!」
- 688 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その5:2016/07/24 22:46:23.819 ID:B2xggK/2o
- DBの悲鳴を遮るように、討伐隊から銃器の轟音、魔法の攻撃音が響き渡る。
しかし、DBは、時に鳥居を盾に銃器や魔法からの攻撃を防ぎ、時には鳥居をよじ登り、時限の境界へと急いだ。
いかに手慣れの兵士たちといえど、逃げ足だけは一級品だと評されるDBの動きに翻弄されていた。
DB「ハァハァ…ひいいいいいいいい!!」
いの一番に、入口まで辿り着いたDBは、躊躇うことなく扉を開け放ち、時限の境界へと逃げて行った。
参謀「これより時限の境界に突入するッ!怖気づいたものは、すぐさま引き返せ!黒砂糖や抹茶に連れて帰ってもらうッ!」
引き返す者はいなかった。全員が全員、覚悟を決めた表情をしている。
参謀「…わかった、ならば俺に続けッ!」
こうして十名近くの討伐隊員達は一斉に時限の境界へと飛び込んでいった。
- 689 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その6:2016/07/24 23:02:37.084 ID:B2xggK/2o
- 抹茶「はぁ…みんな大丈夫かなあ。とりあえずは、会議所に戻って残留組に現状を報告ですかね?」
黒砂糖「…」
隣に佇む黒砂糖から返答がないことに、抹茶は訝しんだ。
抹茶「黒砂糖さん?どうかしまし――」
ヒュッという風切り音とともに、抹茶は声を発することなく仰向けに倒れた。
黒砂糖「みぞおちだ、すまんな抹茶。でも気がつけば、お前もすぐに“目覚める”さ」
倒れている抹茶を一瞥した後、黒砂糖は丘の上から先程の草むらに向かって呼びかけた。
黒砂糖「…DB樣、私めです。準備は整ってございます」
ヌッと、異型の怪物は草むらから頭だけを覗かせ、静かに口角を釣り上げた。
- 690 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その7:2016/07/24 23:04:58.746 ID:B2xggK/2o
- DB「ご苦労、黒砂糖君。
いや、君には我が【DB教】の信者として、洗礼名を与えよう。神父黒飴、それが今日からの君の名前だ」
黒砂糖「ありがたき幸せです、DB樣」
黒砂糖は丘を登り切ったDBに向かって、まるで目の前に神がいるかのように頭を垂れるとともに膝を折り、従順の証を見せた。
DB「くくく…やはり過去の時代での洗脳は未だ効力を失っていなかった。うまくいったようだな、なんて賢い俺様なんだ…」
黒砂糖「討伐隊は、DB様が創りだした【幻影】を誰も偽物だと気づかずに追っていきました」
DB「どうだ、よくでてきていてだろう。俺様の力の一部をあの【幻影―人形―】につぎ込んだのだ。似てもらわなきゃ困る」
黒砂糖「はい、愚かにも討伐隊はDB様の幻影を追って、時限の境界へと突入していきました」
DB「【幻影】は撒き餌ァ。時限の境界という罠に、うまく討伐隊を放り込むことができたァ。
もし、そこで討伐隊が居なくなってくれれば俺様にとっては万々歳ィ、万が一生還したとしても…時既に遅しィ」
黒砂糖「貴方様の思い通りに事は進みます。しかし、ここに来た時は驚きました、すぐに私が草むらを具現化して擬態したからよかったものの…」
DB「君ィへの信頼の証ということさ。それも計略のうちよ」
討伐隊が訪れるほんの僅か前に、DBは時限の境界を抜けだしていた。
咄嗟に丘の斜面に横穴を掘り、そこに身を隠した。しかし、DBの歩いた跡は草花すら残らない。
枯れ果てた草花がDBの歩いていた道筋を示していた。黒砂糖は、時限の境界に到着してから、瞬時にその部分を自らの絵画能力で隠したのだ。
- 691 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その8:2016/07/24 23:05:58.061 ID:B2xggK/2o
- DB「まァそれは置いといて…さて、黒飴君。私がこれから何をしたいかわかるかな?」
黒砂糖「勿論でございます、DB樣。貴方様を一方的に迫害した会議所を、正しい道に【導いて】やらねばなりません」
DB「その通りだァ。誰がこの世界を統べる者か、教えてやらなければならないなァ。
しかし、いいのかね?君は討伐隊に身を置く兵士の筈。立場としては、俺様の考えに背く者ではないか?」
黒砂糖「…私は今やDB教の神父として、DB様の素晴らしさを説いて回らねばならぬ立場です。たとえ会議所が私にとってかけがえのない空間だとしても…
DB様に楯突こうする者には、血の涙を流しても、訓えに背く者を裁くでしょう。私の全てはDB樣とともにあります」
DB「Goodだァ黒飴くん。それでは、DB様の会議所への凱旋としゃれこもうじゃないかァ。その緑色の兵士も持って行きなさい。
そうだ、忘れていた。どうして、会議所はあんなに時限の境界に詳しいのか。
まあその辺りは、道中にて、詳しく聞かせてもらおゥ。ハハ、ギャハッ、ゲハハハハハハハハッ!!!」
そして、DBと一人の神父は会議所に向かって歩き出した。後には草花すら残らず、一迅の黒い風が舞うのみだった。
- 692 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/07/24 23:08:13.753 ID:B2xggK/2o
- http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/807/card-10.jpg
純粋な絵描き兵士は、神父に成り果てた。
既に決戦は始まっている。
あと、DBは幻影とかを操れる能力とかで落ち着きそうです。
- 693 名前:社長:2016/07/28 00:53:23.230 ID:YDXj/Jq60
- 魔王様なんとかしてくれー!
- 694 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その1:2016/08/28 23:06:14.901 ID:y6C4AGoco
- 【K.N.C180年 時限の境界】
幻影のDB「ひいいいいいいいいいいいいいい!」
加古川「悲鳴のする方向だ!急げッ!」
数多のホールを駆け抜け、DBへ向かって走り続けるが、討伐隊は未だその姿を捉えることができずにいた。
斑虎「声の方向はあっちだ!」
someone「いや、真逆の方からも聞こえたぞ!」
スリッパ「奴の移動の速さ、それにホール内で声が反響しているから、特定し辛いな…」
オニロ「二手に分かれて捜索したほうがいいですかね?」
¢「人数を分散すると、それだけ歴史改変を多くするリスクが高まる。僕は反対なん――」
¢が言い終わらない内に、慟哭とともに巨大スクリプトNEXTたちは討伐隊の前に姿を現した。
- 695 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その2:2016/08/28 23:08:54.765 ID:y6C4AGoco
- アイム「みんなッ!避けろッ!」
数体のスクリプトがアイム達の元へ跳躍し、轟音を唸らせながらその巨体を地面へぶつけた。金属の擦れる耳障りな音に、何人かは顔をしかめ動きを止める。
その間に、十数名いた討伐隊員たちは巨大スクリプトによって、隊が分断されてしまった。
アイム「くッ!砂煙が目に入っちまった…みんな、無事かッ!!」
ホール内に反響し続けるスクリプトの慟哭に負けないくらいの大声で、アイムは周囲の状況を確認しようとした。
アイムが滲む目を擦り辺りを見回すと、分断されたアイム側には、オニロを含め数人居るようだった。
オニロ「大丈夫だよアイムッ!!けど、なんて耳障りな音なんだッ!『ネギトロ爆弾』!!」
詠唱と同時にオニロは勢いに任せて杖を振りかざした。
すると、杖の先から液状の緑色の球体がスクリプトに当たりそして弾け、強烈な刺激臭と毒により、スクリプトの自由を奪った。
アイム「よくやったぞアイムッ!てかなんだよそのネーミングは…」
オニロ「『ネギにちなんだネーミングにすれば、集計さんの手向けになる』って師匠が言ってたから…」
スリッパ「軽口は後だ。どうやら団体さんのお出ましだ」
竹内「ホッホ。こりゃまた、図ったようにわらわら湧いてくるのお」
社長「アッアアッヤバイ」
残党の勢揃いといった具合に、討伐隊がいるホールに四方から巨大スクリプトが押し寄せてきた。
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