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きのたけWARS ss風スレッド

1 名前:きのこ軍 @移転作業中:2014/03/24 00:18:40.76 ID:L0nBYOkw
きのこ軍とたけのこ軍で"大戦"をすることで、時代が進むフシギな世界―
              ―きのこたけのこワールド―
最盛期は頻繁に大戦が行われ、お互いを憎みあい、お互いを意識し、撃破しあうことで、
兵士たちは情熱とやる気を保ち、世界は発展していった。

そんな栄光の時代も、今は昔。数多くの戦闘を経て、兵士たちはかつての大戦への熱気を失いつつあった。
大戦への希望と熱気で包まれていたかつての"大戦の歴史"は、
干満で怠惰が支配するものへと塗りかえられつつあった。

舞台は K.N.C歴175年。
ある日、大戦運営を管理する大戦会議所のもとに、記憶を失った
きのこ軍兵士とたけのこ軍兵士が流れ着く。
二人の兵士の登場を機に、大戦は徐々に熱気を取り戻し始める。

しかし、突然世界は意図せず"歴史"を塗り替え始める。
今現在の歴史だけではなく、過去の栄光までも無かったことにして、歴史を喰らう異型の存在――

                 ― “DB” が世界の前に立ちはだかった―


DBを討伐するため。大戦の"歴史"を取り戻すため。
そして自分たちの"存在意義"を知るため…
様々な想いを抱きながら、二人の兵士を始めとした会議所兵士たちは、
時空を越え、過去を取り戻す旅をする…
 

                    『きのたけWARS 〜DB討伐〜』


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

632 名前:きのこ軍:2016/02/21 11:35:27.564 ID:gMmpaUS.o
よくわからないあらすじ

・これまでのあらすじ

“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。
その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。(Chapter1まで)

そんなある日、会議所で捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走していたことが判明。同時に、DB一味は、禁忌のマップ『時限の境界』で、故意に会議所不利の歴史に改変していることも明らかになる。
世界の危機を救うため、参謀を隊長とするDB討伐隊は、すぐさま『時限の境界』に突入するも、内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。結局、DBの姿すら確認できずに、撤退を余儀なくされる。
自身の不甲斐なさを悔い、アイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。オニロとの絆を深め、師からの教えを理解したアイムは、再び時限の境界へと突入する。
しかし、新たな【制約】により、アイムは独り過去の時代に閉じ込められてしまう(Chapter2まで)

それでも持ち前の機転と戦闘術魂を利用し無事現代に帰還したアイムは、会議所の中心的存在だった集計班が突如として姿を消したことを知る。悲観に暮れる間もなく、竹内の加入を経て、
会議所は遂にスクリプト大量増殖の問題に触れることとなる。それは、過去のあちこちにスクリプトたちが【スクリプト工場】を製造し、過去の時代に送り込んでいるという、ネズミ講のような恐ろしい実態だった。
すぐさま、時限の境界に潜んでいるDBの捕獲及び工場破壊の『ハイブリッド作戦』が開始されたのであった――――



633 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その1:2016/02/21 11:37:28.198 ID:gMmpaUS.o
【K.N.C180年 時限の境界 入口前】

スリッパ「段々と、ここに来るのがライフワークになってきたな」

筍魂「わかる(真顔)」

額の汗を拭い、スリッパはサラから渡された水筒の中身を一気に飲み干した。
炎天下の下、転移魔法陣から下りた討伐隊一行は時限の境界に向かって歩を進める。

朱の鳥居群の隙間から差し込む陽がアイムの目に刺さる。橙と朱の代る代るのコントラストは、視界だけでなく思考をも狂わせる不思議な空間になっていた。
狂った思考といえば―――アイムは先頭を歩くスリッパの背中をじっと見る。背後にいるサラが、主人を守る猫のようにアイムを見てくるが、気にしない。
アイムには今のスリッパを信じきることができないのである。原因は、先日の会話の一幕に因るものだった。


634 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その2:2016/02/21 11:39:06.602 ID:gMmpaUS.o
━━━━
━━
スリッパ「なぜDBは歴史改変を続けるのか、考えたことはあるかい?サラ、紅茶を頼む」

今日も慌ただしく討伐隊が出立した後、すっかり会議所の一員となったスリッパは静かに問いかけた。

オニロ「ボクも気になっていました。DBはどうしてこんな面倒くさい手段で襲撃しているのかなって…」

アイム「どうしてって…歴史改変で兵士の士気を“奪って”、会議所を支配するのが目的だろう」

非番のアイムは紙の山に寝そべる。ふわりと柔らかい感触は、無き集計班の置き土産としては上出来だ。オニロは不満気ではあるが。

スリッパ「会議所を支配したいのなら、そう歴史を書き換えればいい。『DBが会議所を支配する』と改変し、現代に戻ってきたらその瞬間、覇者だ」

アイム「それができたら奴も苦労しないだろう」

スリッパ「その通り。DBには【できない】。大量のスクリプトを従えて、過去の時代の警備が手薄な時代の会議所に乗り込んでしまえば、それで終わりだというのに」

二人の話を横で聞いていたオニロは、ひらめいたようにポンと手をついた。

オニロ「そうか、DBは【恐れている】んですね」

スリッパは大きく頷く。テーブルに置かれているクッキーを齧る。

スリッパ「恐らく、奴は過度な歴史改変に因る修正を恐れている」

竹内「おーいアイムや、飯はまだかの」

アイム「うるせえ爺さん寝てろ」


635 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その3:2016/02/21 11:40:30.065 ID:gMmpaUS.o
アイム「過去の大幅な歴史改変は、自分の身を危うくする。若しくは奴自身もどのような副作用が起こるか予想し得えていない。だから迂闊に手を出せないのか」

スリッパ「ひたすら大戦の歴史改変に拘り続けているのは兵士の士気を奪う意外にも、奴なりの安全策ということだろう。
その結果、“宝の山”たる時限の境界に、あんな醜悪な化物が篭もりきりになったことは皮肉だけどね」

スリッパの“宝の山”という表現に、アイムはどこか気味悪さを覚えた。

アイム「おいスリッパさんよ。職業柄、あんたが時限の境界に憧れるのはわからなくもないが。あそこは宝の山でも楽園でもないだろ」

オニロ「ボクは目にしたことがないけど、確かにみんなを苦しめているだけの場所のような…」

アイム「過去へのタイムワープなんて弊害しか生まないさ。過去は覗き見できるかもしれないが、本来は修正なんてできるわけない。【過去なんて本来変えるべきものではないんだ】。
過去の経験、記憶を蓄積させたものが今の自分であって、それを真っ白にしてしまえば、それは死んだも同じ――」

スリッパ「そんなことはないッ!!」

突然の剣幕に、アイムは驚いて二の句を継げなくなった。


636 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その4:2016/02/21 11:42:09.972 ID:gMmpaUS.o
スリッパ「DB達は使い方を間違えているだけだ、正しい運用方法で時限の境界は素晴らしいタイムワープ装置となり得るんだッ!」

勢い良く立ち上がり、まくし立てて喋るスリッパを前にアイムとオニロは閉口した。気味が悪い。二人は純粋にそう感じた。

スリッパ「君たちにはわからないのか、あの時限の境界の素晴らしさがッ!望んだ時代へ往来できる高い利便性、何度でも使える簡易性だッ!」

スリッパ「今の自分を殺してしまう?確かに、客観的に見ればそうかもしれない。ただ、記憶は残る。そう、過去はやり直せるんだ!そうだ、あの時だってッ時限の境界を利用さえすればッ――」

コツン。

スリッパの背後から、サラが静かにティーカップを置く。しかし、その音は目の前が見えていないスリッパの中に瞬く間に響き渡り、彼を冷静にした。
瀟洒なメイドサラの主人への意思表示を、二人は初めて見た気がした。

スリッパ「――すまない。熱くなりすぎた」

脱力したように着席し、一口紅茶をすする。後には、居心地の悪い静寂が残った。

━━━━
━━


637 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その5:2016/02/21 11:43:28.549 ID:gMmpaUS.o
スリッパは時限の境界を識者として評価しているのか、それとも過去に戻りたいから、あのように激昂したのだろうか。
アイムにはわからない。
ただ、¢はDBに、そしてスリッパは過去に固執している。¢に続き、またも仲間に疑いの目線を向けてしまっている。
自身の冷淡さにうんざりしてしまう。

筍魂「おい愛弟子よ」

アイム「なんだよバカ師匠」

前を歩いていたはずの筍魂は、いつの間にかアイムの横にぴったりと付いていた。時折、こうして気配を殺して筍魂はアイムを吃驚させることがある。
気配を操るから当然の事だと本人は語るが、ただ単に存在感がないだけではないかとアイムは勘ぐっている。

筍魂「気を抑えろ、お前の不安、疑念をひしひしと感じるぞ。感情をコントロールしきれないことが、お前の欠点であり長所でもあるが…これでは一人前の魂・伝承者にはなれないな」

アイム「いや、元よりなる気はないんだが」

ただ、と筍魂は途端に声を潜める。

筍魂「俺にもなにか良くないことが起こる“予感”はある。粘りつくような風が吹きつけているのがその証拠だ。このまま、無事帰ってこられればいいがな」

アイムは顔を上げる。朱の鳥居を抜けると、そこには毒々しく禍々しい、辟易とするほど真紅の鉄扉が見えてきた。


638 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その6:2016/02/21 11:46:53.216 ID:gMmpaUS.o
【K.N.C180年 時限の境界】

ビギナー「さて、今回は何年にいけばいいんだっけか」

スリッパ「K.N.C125年だ。この近辺の年で比較的新しいスクリプト工場の痕跡があるのは確認済みだ。もしかしたらスクリプト工場が見つかるかもしれない」

年代が記されたメモを見ながら、一行は時限の境界を歩いて行く。スリッパを中心に、ビギナー、筍魂、アイムそしてサラが円形陣で防衛している布陣だ。

―――『いよいよだね』

アイムの頭のなかで、いつもの通り謎の声が語りかけてくる。
はいはいそうだな、とおざなりな対応でアイムは先に進んでいく。



暗い。時限の境界の内部は、底なし沼のようにどこまでも暗い。その暗黒の中を、ひたひたと一定のリズムの足音で徘徊する者がいる。
彼は急いでいた。未だ策敵しない強大な敵集団から逃れるべく、今日も時限の境界内を移動し続ける。

??「ハッ、ハァハァ…」

彼は同胞達を探していた。
孤独はもう御免だ。地下で収監されていた頃の生活を思い出し、額の汗を拭う。
彼は好んで暗闇で暮らしたが、元来の小心ぷりからか、独りでいることに恐怖感を覚える性質だった。歩く速度が早まる。
スクリプトが隣にいた頃は、母親の胎内のように居心地の良さを感じた。だが、その同胞も今は数えるほどしか残っておらず、
それを嘲笑うかのように、その暗闇は底なし沼のように彼を暗い未来へと引きずり込もうとしていた。
未来は確定されていない。そう、目の前の空間があれば過去は、そして未来は変えられるのだ。自身の雑念を振り払うかのように、歩を早める。

恐怖に慄く彼は、目の前の異変に気が付いていない。
いつもの彼なら聴き逃さない、複数の足音が彼の下に、刻一刻と近づいてきていることを。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

639 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その7:2016/02/21 11:48:47.207 ID:gMmpaUS.o
スリッパ「次のホールを抜ければK.N.C125年の扉に辿り着くぞ」

何度となく読み返されてきた時限の境界マップを手に、スリッパは先を急ぐ。

ビギナー「しかし、スクリプトが全然見当たらないな」

筍魂「最近はフロア内に居るスクリプトもめっきり数を減らしてるな。この勢いじゃあ、DBを見つけるのも時間の問題かもしれないな」

アイム「そう簡単にいけばいいんだけ―――」











その時は、突然訪れた。





ホールに足を踏み入れた一行は、中心で蠢く、どす黒い“異型のモノ”と目があった。


640 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 運命編その8:2016/02/21 11:51:27.504 ID:gMmpaUS.o
心臓が早鐘を打つ―― 
     呼吸を忘れるほど、口をあんぐりと開けたまま―― 

俺たちは悟る―― 
     俺様は理解する―― 

彼こそが――               
     彼らこそが――

血眼に探していた会議所の宿敵であり――  
     追撃から振り切らなければいけなかった宿敵であり―― 

一連の騒動を引き起こした元凶でもある――  
     俺様を狂わせた元凶でもある―― 

絶対に出会わなければいけなかった存在である―― 
     絶対に出会ってはいけなかった存在である―― 

その名は――
     その名は――





アイム「DBォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!」

DB「会議所一味ィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

641 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/02/21 11:53:08.565 ID:gMmpaUS.o
投稿を開始してから2年半、ようやく会議所がラスボスと出会いました(白目)
全体で見ればそろそろ佳境です頑張ります。

642 名前:社長:2016/02/21 17:41:17.936 ID:F7k9y9fw0
ついに現れたDB。ただまだ1章分あるてことはまだひと波乱ありそう。

643 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その1:2016/02/27 23:22:29.016 ID:3t.Kr4Eso
両者ともに呆気にとられ、一歩も動けない。だが、最初にたじろいだのは討伐隊員だった。

スリッパ「予想していたとはいえすさまじい腐臭だ…」

彼の身体から放たれる刺激臭は、2〜3m離れた位置でも臭うほど自己主張が強い。

ビギナー「なんてグロテスクな外見なんだ…」

筍魂「一理ある」

DB「……」

常人の二倍ほどの縦横幅はある図体は、存在自体が醜悪だ。身体の形状こそきのこに似ているが、笠となっている頭頂部は不自然に尖り、腹は中年兵士のように膨らみダボついている。
また、何度も時間跳躍を繰り返し、砂埃にまみれた身体は不気味な黒光りを放っている。
胴体からおまけのようにちょこんと生えた手足が間抜けさを誘う。しかし、一足動けば、車輪のように高速で足を動かすさまは、古来より忌み嫌われてきた害虫を連想させる。

討伐隊の面々が思わず顔を背ける程の状況の中、ただ一人、アイムは目の前の異型のモノを直視したまま動かなかった。

アイム「…お前が、DBか」

アイムの中の既視感。この感触は、大戦年表編纂室を初めて訪れた時と同じ。
初めてなのに初めてでない。
自分のことなのに自分がわからない。記憶を失う前、DBと会敵したことがあるというのか。


644 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その2:2016/02/27 23:25:25.298 ID:3t.Kr4Eso
DB「…アァ」

討伐隊員と同じく、未だ混乱しているDBだったが、目の前のアイムを見て思わず声が漏れる。
パニック状態に陥っても仕方ない状況下の中で、DBは瞬時に策を巡らせ、自身の未来を決め、不敵にニヤつく。
這いつくばってでも諦めず生き延びる術を探しだす。これこそがDBの強みだった。

DB「――なんだ。“君”、一人だけかァ」

アイム「なんだと…?」

ニタニタとDBが口角をつり上げる。

DB「“相棒”に伝えておけ、『すぐに迎えに行く』とねェ…」

DBの舐め回すような視線に、思わずアイムの背筋にゾクリと悪寒が走る。
この視線は初めてではない、身体がそう告げている。

アイム「うる…せえッ!!」

風切り音とともに、アイムの手から放たれた短刀がDBの頬を掠める。


645 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その3:2016/02/28 00:12:23.130 ID:HqJ60wngo
DB「ひ、ヒイイイィィィ!」

思わず耳をふさぐような金切り音がホール内に木霊する。アイム以外の討伐隊員が途端に意識を戻す。

スリッパ「…サラ、頼むッ!」

スリッパの背後に構えていたサラが流れるような所作で、用意したクラスター銃で大量のベビークラスターを放つ。

筍魂「よくやったぞ弟子!捕獲だッ!DBを捕獲するッ!『いわなだれ』!」

ビギナー「うおおおおおおおおおお」

それに続き、筍魂がDBの頭上から石塊を降らせ、鉤爪を研いだビギナーがDBを捉えに走りだす。連携は完璧だった。

DB「た、助けてくれェェェェェェ!」

喚き散らしながら、DBは両の手を地面に付いた。そして、四本足で走る獣のように、また部屋を動きまわる害虫のように、
縦横無尽にホール内の天井を駆け回り連携の取れた攻撃を交わした。

スリッパ「サラ、次弾装填を急げッ!筍魂さん、敵をホールから逃がすなッ!」

筍魂「かしこまりッ!いでよ、リフレク――チッ!!」

ホールの四方に壁を貼りDBを閉じ込めようと目論んだ筍魂だったが、その四方から登場したスクリプトたちを前に詠唱を中断し、防戦態勢を取った。
一転、筍魂たちは追い詰められてしまった。

DB「ふは、フハハハハ!形勢逆転だな、ではさらばだ君たち!」

アイム「逃げるぞ、追えッ!どうせ奴は時限の境界からは逃げられない!」


646 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その4:2016/02/28 00:26:29.749 ID:HqJ60wngo
DBは逃げ続け、アイム達は追い続けた。時代のホールをひたすら走り抜けるDBを、スクリプトの残党が足止めといわんばかりの抵抗をする。
果てもないイタチごっこを繰り返し、そろそろ頃合いだと睨んだDBは、“ある扉”の前で立ち止まった。

DB「それではさらばだ諸君。スクリプト君、“しっかり”と頼んだよ」

間髪をいれずに、DBは扉をくぐり過去の時代へワープする。それを見届けたスクリプトたちが、行方を追うアイムたちの妨害をする。

アイム「そこをどけッ!ビギナーさん、DBはどの扉に入ったッ!?」

ビギナー「【8の扉】だッ!ただ、ここが何年のホールかはもうわからないッ!」

スクリプトの猛攻を凌ぎながら、ビギナーは大声でアイムに答える。

時限の境界は、ホール毎に存在する扉に【0】から【9】の数字が割り振られている。
一つのホールごとに10年ずつ時が進んでいるので、K.N.C60年台のホールの【5】の扉をくぐれば、扉の先はK.N.C65年となる。
アイム達はDBがXX8年の時代に飛び込んだのはわかったが、正確な年代までは特定できていないのだ。

スリッパ「スクリプトたちめ、最期の勢いとばかりに攻勢を強めてやがるッ!このままじゃあ、ホールから押し出されるぞッ!」

筍魂「走り回って体力も奪われつつあるな、ぜえぜえ。これじゃ¢さんを笑えないな」

ビギナー「ひとまず戻るか、待てば海路の日和ありだッ!」


647 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その5:2016/02/28 00:28:53.530 ID:HqJ60wngo
―――『時間切れ』

アイムの頭のなかで響く針の音がカチリと止まる。それは時限の境界内での移動のタイムリミットを意味する。

アイム「…どうやらそうはいかないらしい。【時間切れの制約】で、近くの扉に吸い寄せられるぞッ!」

スリッパ「なんだとッ!DBめ、時間をかけて逃げ回っていたのは、この時のためかッ!」

アイム「みんな、力を貸してくれッ!なんとかして目の前のスクリプト群を突破して、DBの入った扉に辿り着くぞッ!!」

ビギナー「承知ッ!ビギナーズラックの申し子、ビギナー!いざ推して参るッ!!」

スリッパ「サラ、ビギナーさんの援護を頼むッ!みんな、二人の後に続けッ!」

ゆらりとした豹の構えからビギナーが決死の力でスクリプトへの突破口を開くため突進する。
ビギナーの後ろからは、サラが、両手に構えた大筒からアイスの実弾を次々に発射しスクリプトを怯ませていく。

筍魂「ぜぇぜぇ。弟子よ、最早私はこれまで…会議所に戻ったらきのこ軍に伝えてくれ、“やはりきのこの山は不味い”とな」

アイム「てめえ、¢さんみたいに少しでもその場でヘタってみろッ!尻を蹴飛ばしてでも這い上がらせてやるからなッ!」

スリッパの後をバテ気味の筍魂、殿をアイムが続く。巨大スクリプトNEXTの足元をすり抜け、ホールの中盤へ一行は進んでいく。
すると――


648 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その6:2016/02/28 00:31:48.265 ID:HqJ60wngo
ビギナー「うお、身体が勝手に宙にッ…!」

スリッパ「時間切れかッ!しかし目論見通り、全員【8】の扉に吸い寄せられていくぞッ!」

アイム「よっしゃッ!これで【制約】もクリアし…た…し」


――【制約V】 時限の境界で複数人が時限跳躍をする際。
互いに身体の一部分でも触れたまま全員が一緒に時限の扉を通れば、時限の境界に関する制約状況は互いに、“共有”される。


今の状況では全員がバラバラに扉に吸い寄せられていっている。つまり、歴史改変の情報を互いに“共有”できない。
一人ひとり、別の歴史改変が必要になる。
アイムの頭の中を、K.N.C55年に閉じ込められた時の記憶が掠める。このままではあの時の二の舞いになってしまう。

アイム「まずいッ!みんな、互いの服でも掴みあって――」


649 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会敵編その7:2016/02/28 00:33:45.098 ID:HqJ60wngo
瞬間、鋭い風切り音とともに、緑色の触手がアイムの身体に巻き付く。
残りの隊員も一様に、宙に浮きながら謎の触手に巻き付かれている。触手の出処を辿ると――

筍魂「『つるのムチ』、これで【制約】は問題ないだろう?」

アイム「――やればできるじゃねえか、バカ師匠ッ!追うぞ、DBをッ!」

全員はひとまとまりになったまま、開け放たれた扉をくぐる。
DBを追いかけるために幾度と無く繰り返された過去の時代へのワープを行うのだった。

650 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/02/28 00:36:41.218 ID:HqJ60wngo
きゃー魂かっこいい(黄色い声援)そしてビギナーさんかっこいい。
今日のカード更新。遂にラスボス登場です。

http://dl6.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/782/card-26.jpg

651 名前:たけのこ軍:2016/02/28 01:35:28.881 ID:kRuAvnE20
さすが魂

652 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その1:2016/03/06 23:32:22.358 ID:3p9ZTm1.o
【K.N.C28年 会議所】

??「…いッ…お…、オイッ!大丈夫かッ!」

アイム「!!」

兵士の呼びかけで意識を取り戻したアイムは、勢い良く顔を上げた。
うおっ、とアイムから飛び散った泥を避けるために、腰に携えた長剣を鳴らしながら声の主は後ろに飛び退いた。

スリッパ「無事でよかったなアイムッ」

兵士の隣に立っていたスリッパたちが、アイムの手を取り起き上がらせた。

アイム「イテテ、頭を打ったな…というか、なんでみんな泥だらけなんだ?」

四人の顔は、一様に泥だらけだ。

筍魂「安心しろ、お前もだゾ」

??「みんな、この小庭園の水溜りに顔突っ伏して倒れていたんだ。息ができなくなる前に見つけられてよかったよ」

若い兵士は豪快に、しかし屈託ない笑顔で討伐隊員を迎える。よく見ると、純白のシルクハットにゆったりとした袴を身に着けている、
このアンバランスで奇妙な出で立ちを、アイムには覚えがある。

??「丁度、【討伐戦】が始まるところだったんだ。みんなも、そのために来たんだろう?こっちだ、案内するよ」

??「申し遅れた。俺の名前はコンバット竹内、会議所に来てまだ日は浅いが、よろしくな」

ハツラツとした青年の自己紹介を聞き、アイム達は無事、過去の時代へ跳躍できたことを知った。


653 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その2:2016/03/06 23:35:19.590 ID:3p9ZTm1.o
アイム「若竹内さんが言っていた【討伐戦】てなんだよ」

スリッパ「わからない。だが、この頃、私はもう会議所を離れていたからな…詳しい内容は覚えていないよ」

ビギナー「この時代に生まれてないからわからない」

筍魂「同じく」

先頭を歩く竹内の後ろで、アイム達は額を寄せあい小声で話し合う。

ビギナー「でも、幸いにして全員。顔面が泥パック状態だから、正体はバレずにすむね」

筍魂「まあ現代の竹内さんはただのボケ老人だから、どの道なんとかなったかもしれないが…」

竹内「おーい、そろそろ着くぞ!」


一行は見慣れた中庭に到着した。中庭には見たことのない規模で、人だかりが出来ていた。

??「ほう・・・君たち・・・まさかこの大戦の愛らしいマスコットキャラクターである私に自分を・・・いや、勝負を売るつもりかね・・・」

たけのこ軍 ドライヴィング「奴を倒すぞ…!」

たけのこ軍 抹茶「これは訓練ではない…!本番だ!」

きのこ軍 黒砂糖「仕方があるまい」

アイム「あれは、DBじゃねえかッ!」

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654 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その3:2016/03/06 23:42:24.721 ID:3p9ZTm1.o
コンバット竹内「おっもう始まっているな、【討伐戦】が」

竹内の呟きなど露知らず、いきり立ったアイムがDBに怒号を浴びせる。

アイム「てめえッ!よくもノコノコと過去の時代に姿を現せたものだなッ!この場でその存在ごと消し去ってやるッ!」

スリッパ「ちょ、ちょっと待つんだアイム…この【討伐戦】てもしかしたら…」

制止するスリッパの手を振りほどき、アイムは中庭の中心に居るDBにぐんぐんと向かっていく。

きのこ軍 黒砂糖「おっ威勢がいいねえ、入隊希望者か」

たけのこ軍 ペーペー山本「期待のきのこ軍新人じゃないか。でも、なんで泥だらけなんだ?」

DB「よろしい、ならば戦争だ。こっちが勝ったらDBはきのこ軍のマスコットキャラだ。さて・・・この戦い・・・呑むか?」

目の前のDBはアイムのことなど気にせず、予定調和のように淡々と目の前の兵士たちに宣戦布告を告げる。

アイム「まだ白を切り通すかッ!」

筍魂「待てアイム、なにか様子が変だ。周りを見てみろ」

筍魂の言葉に、アイムは周囲を見渡しハッとした。両軍兵士が混在する中、誰も啀み合っていない。
寧ろ互いに協力しあうように、ジリジリとDBとの間合いを詰めにかかっている。
その様子はどこか楽し気で、自らの武器でDBに一太刀浴びせんという流行る気持ちを必死に抑えているように見えた。

コンバット竹内「いよいよ始まったな、【DB討伐戦】が」


655 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その4:2016/03/06 23:43:34.558 ID:3p9ZTm1.o
―― DB討伐戦


オニロ『過去には、会議所では【DB討伐戦】というものが数度開かれていたんだってさ。
その度に会議所はDBに勝利したんだ。討伐や捕獲こそできないまでも、兵士の士気を保っていたんだよ』


竹内の言葉に、過去にオニロが語っていた与太話を思い出す。
DB討伐戦は過去に開催されていたイベント戦の一種である。つまり、アイムの目の前にいるDBは、K.N.C28年に初めて会議所に姿を表した、過去のDBなのだ。

過去DB「大量撃破の産声が聴こえる・・・」

言われてみればと、アイムはもう一度目の前のDBを見返す。
先程まで見ていたDBよりも血色がよく黒光りしていない。声色もしわがれてはいるものの、どこか若々しさを感じさせる。

過去DB「ハハハ、かかってきたまえ」

きのこ軍 参謀「そこの泥んこ共ッ!手を貸してくれッ!DBを討伐するッ!」

スリッパ「今は流れに身を任せるしかない。史実では、DB討伐戦に勝利しているはず、その大元の歴史を再現するんだ。後は戦っている内に考えよう」

今よりもモミアゲが濃くて長い参謀の号令の下、アイムたちは過去のDB討伐のために闘うことになった。


656 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その5:2016/03/06 23:45:59.006 ID:3p9ZTm1.o
スリッパ「みんな、この戦い。過去のDBを絶対に“討伐”してはいけないぞ」

戦いが激化する中、スリッパは密かに現代討伐隊員に向かってそう囁いた。

ビギナー「どうしてだい。この場でDBを討ち取れば、現代で続いているDB討伐戦争は綺麗さっぱり無くなり、収まるじゃないか」

スリッパ「DB討伐戦争という歴史が消失すると、DBはともかく、その戦争に巻き込まれている会議所兵士たちは一体どうなる。
竹内、集計班、そして私。本来DB討伐戦争がなければ居ない、または居続けた兵士たちのイレギュラー要素が、“歴史を大きく狂わせる”要因ともなっているんだ。
安易な歴史改変によって、会議所を取り巻く環境が変貌し、予想だにしない事態になることも否定出来ない」

アイム「つまり、DB討伐戦争という“歴史”事体を無かった事にしてはいけない。オレたちは【現代のDB】のみ討伐できるイレギュラーな存在、ということだな?」

神妙に頷くスリッパ。なんたる歯がゆさ、とアイムは爪を噛んだ。目の前に瓜二つの宿敵がいるというのに、止めを刺せない。
沈黙する討伐隊員、彼らの様子は織り込み済みといった体で、スリッパは驚くべき策を提案する。

スリッパ「とは言いつつもだ。過去DBの討伐は現代DBの【死】を意味する、その意味を最もよく理解しているのは、討伐隊員以外に誰がいるのか…?
よく考えてみろ、“奴”は【私たちよりも前にこの年代にワープした】。つまり、“奴”は必ずこの会議所のどこかに居るはずだ。
そして、これから、奴を誘き出すために一つ芝居を打つッ…」


657 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その6:2016/03/06 23:48:01.698 ID:3p9ZTm1.o
DB「ハァハァ…」

間一髪だった。あと少しで、過去のDBと現代のDBの鉢合わせが実現してしまうところだった。

時限の境界を通る者によって、ワープする先の時間帯が異なることは、事前に『謎の声』より知らされていた。
しかし、まさか降り立った地の目と鼻の先で第一次DB討伐戦の準備をしていようとは、さしものDBも予想していなかった。懐かしさを感じる前に、本能的に身体が逃げる選択をした。

逃げ込んだ建物の柱の影から、中庭の討伐戦の行方を伺うDBには、一つ気がかりな事がある。
目の前で開かれている戦いにはさしたる関心を持たない。過去の自分は、勝負に負けこそするものの、討伐されずに逃げきれる。
途中どのような経緯になれど、【そのような手筈になっている】。自身の経験であるDBが一番理解している。

DB「…あいつらァッ!」

気が気でならないのは、討伐隊に参加しているアイム一行の動向である。
もしも誤って、その場で過去DBをアイムたちが討伐してしまえば。その瞬間、DBという存在は歴史の波から消し飛ぶ。

より正確に言えば、K.N.C28年に時代跳躍をしてきたDB自身が消えることはない。大戦年表編纂室と同じく、過去に時代跳躍中の兵士は歴史改変の影響を受けることはないためだ。
ただし、元の時代に戻ったとしても、歴史に爪痕を残してきたDBの存在を、誰も感知することはない。つまり、自身という存在は【歴史改変によって死滅してしまう】のだ。

自己顕示欲の強すぎるDBにとって、誰からも認知されなくなってしまうことは、恐怖以外の何者でもない。
アイムの気の短さを知っているだけに、DBとしては自身の思惑通りに事が進むかどうか、息ができないほどに心配している。


658 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その7:2016/03/06 23:50:49.685 ID:3p9ZTm1.o
筍魂「ほい、『サイコキネシス』」

過去DB「アッー!」

たけのこ軍 ドライヴィング「トンファーキック!!」

過去DB「アッー!」

たけのこ軍 抹茶「う、うおおおおおおお」

過去DB「ンギノッゴイイ!!」

コンバット竹内「おいおい今年の新人は有望だなッ!俺の出番なんて無さそうだなッ!」

筍魂が念力を起こしDBを怯ませれば、トライヴィングがトンファーを持ってDBに一蹴り浴びせ、若き抹茶が勇猛果敢にマシンガンを撃ちこむ。
急造チームの割に、連携は完璧だった。

DB「ま、まずい押されてる…」

史実に比べ戦闘経験豊富な人員が増え、過去DBは史実よりも大分早く劣勢に転じた。
この分では直に捕縛されてしまうと、その先の結末も想像し、現代のDBは背筋を凍らせた。

アイム「大分弱っているなッ!おい黒さんッ!DBを吊るしあげることはできるかッ!?」

きのこ軍 黒砂糖「どこの誰かは知らないが、やってみよう」

キャンパスに描かれた投げ縄が、活きのいい魚のように過去DBに跳びかかった。息も絶え絶えのDBは縄を振りほどく力も残っておらず、
これまた黒砂糖お手製の絞首台に吊るしあげられてしまった。

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

659 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その8:2016/03/07 00:00:56.469 ID:MMdSeg6Eo
アイムがライフルの銃口をDBの眉間に目掛けて構える。
過去のDBは、もう疲れきってしまったのか抵抗する意思を見せずに、静かに項垂れている。執行を待つ死刑囚のようなものだ。

現代のDBの柱を掴む力が強くなる。
このままでは討伐されてしまう。アイムの行動により、これまでの努力が。苦労が。計画が全て破綻する。

討伐されてしまう。指を咥え見ているままで良いのか。

敵の暴挙を、許して良いのか。


―――― マズイ!


銃声音よりも刹那に早く、DBの身体は反応していた。ライフル発射よりもコンマ秒分だけ早く、DBは短刀を投げていた。
放たれた刀は、過去DBを縛っている縄を目掛けて一直線に飛び、小気味良い音とともに、縄をぶった切った。

直後に乾いた銃声音が響く。

助かった、これで阿呆で短気な敵の手で無秩序な歴史修正は免れた。DBはホッと胸を撫で下ろし、次の瞬間――

討伐隊のスリッパと『目があった』。

ゾクリと背筋を悪寒が走るDBは、瞬時に、一連の行動がアイム達によって仕組まれた策であることを悟った。

過去DBの眉間の位置には、銃痕など残っていなかった。会議所内には、無情にも銃口の先から奏でられた空砲音だけが木霊していた。
それは、現代の討伐隊員と現代のDBの死闘の再開を告げるゴングだった。


660 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その9:2016/03/07 00:03:41.006 ID:MMdSeg6Eo
スリッパ「短刀の出処及び“本体”を視認!バルコニー2階、教練室付近からだッ!」

スリッパが鋭い声で冷静に状況を報告する。図られた、と頭で理解するより前に、DBは会議所の外へ向かって走りだした。

スリッパ「サラ、頼むッ!DBは裏階段から会議所の外へ出る気だッ!」

御意と云わんばかりに、サラは風切り音を残して快速をもってDBを追跡し始める。

ビギナー「サラに続いて先行するッ!」

ビギナー、スリッパ、筍魂が相次いで中庭から去っていった。残ったアイムはぽかんとする一同に向かってにやりと笑い、指をパチンと鳴らすと、DBの転がり落ちた地面にぽっかりと大きな穴があいた。

アイム「落とし穴です、これで捕獲する準備は整った。なにもいま討伐しなくても、後で煮るなり焼くなりすればいいでしょう」

そう言い残し、アイムもくるりと踵を返し去っていった。
続いて、どこから出てきたのか、間髪いれずに¢はDBの大穴に向けて捕獲網を投げ入れた。
そして、見たことのない満面の笑みで周りにこう告げた。

きのこ軍 ¢「みなさんお疲れさまでした。私は諸事情で参加出来ませんでしたが、DB討伐戦は会議所側の大勝利に終わりましたね。
謎の存在たるDBはすぐさま会議所側で身柄を確保し、“然るべき”タイミングで“適切な処置”を取ります。後は私に任せてください、お疲れさま」


661 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その10:2016/03/07 01:17:28.250 ID:MMdSeg6Eo
―――『おめでとう。クリア』


アイムの頭のなかに謎の声が響く。つまり、歴史の改変に成功したという証。
討伐戦こそ勝利するもののDBの逃亡を許した史実に比べ、勝利し捕獲まで果たした輝かしい歴史に塗り替えられたのだ。

アイム「おそらく歴史は改変された。オレたちはいつでも現代に戻れるッ!」

筍魂「がははは、グッドだ〜!後はこのK.N.C28年で、現代のDBを捕獲すれば、全てはハッピーエンドだ」

スリッパ「サラ、DBの姿を見失うなよッ!」

DB「ハァハァ…なんて、足の速いメイドだァ。さすがの俺様でも逃げきれないぞ」

いつまで経ってもしつこく追いかけてくるメイドに辟易としながら、DBはようやく辿り着いた時限の境界の出口で立ち止まる。

DB「仕方がない…使いたくないが、俺様の力を一部解放しないと乗りきれないなァ」

そう呟くや否や、DBの周りを黒い霧が覆った。


662 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 討伐戦編その11:2016/03/07 01:22:03.678 ID:MMdSeg6Eo
スリッパ「うお、霧で視界が見えないぞッ!」

討伐隊員の視界はすぐに黒の世界で覆われた。

アイム「うわっ、なんだこれ毒霧じゃねえかクセエ!」

スリッパ「アイム、止まれッ!目の前は時限の境界の出口だッ!」

先行するスリッパの声を頼りに、アイムは足を止めしきりに目をこする。

アイム「クソッ、目に染みる!てかゴミみたいな臭さだッ!」

スリッパ「大丈夫かいアイム君。ほら、このハンカチ使いなよォ」

アイムの“背後”にいるスリッパからハンカチを渡され、一心不乱にアイムは顔を拭き取った。

――背後?

霧が晴れると同時に、アイムの眼前には、スリッパを含む四人が飛び込んでくる。
時限の境界に通じる扉の前で静止してDBを必死に捜している様子だ。
では背後にいるスリッパは何者なのか。

恐る恐るアイムが背後を振り返ると――

DB「やァ、アイム君」

スリッパの声色を喉から出しながら、DBが立っていた。

アイム「ダイヴォッ――」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

663 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/03/07 01:22:21.953 ID:MMdSeg6Eo
更新終わり
逃げ足に定評のあるラスボス


664 名前:きのこ軍:2016/03/07 19:57:42.385 ID:3htL7.Cw0
歴史のお勉強
【兵士急募】きのこたけのこ大戦 戦闘場&会議所★18【職歴不問】
(2010.08.14~2010.08.20)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1281755474/

【話題は】きのこたけのこ大戦 戦闘場&会議所★19【自由だ】
(2010.08.20~2010.08.24) 
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1282313300/

実際に、DB討伐戦は行われていました。もう5年も前の話になります。
★18の>>750あたりから。DB VS 会議所メンツ(討伐隊員)で突発紛争が行われています。
この後、断続的にDB討伐戦は行われますが、2012年8月頃を最後に、討伐戦は行われなくなり現在まで至ります。
warsでは、最後の討伐戦でDBが遂に捕獲され牢屋に放り込まれたという設定で、物語を構成しています。

どこからDBが出てきたのか、そして何故¢さんが参加していないのか。謎は深まるばかり。

665 名前:たけのこ:2016/03/07 19:59:00.352 ID:OnAnuYjYo
更新おつ!
気になることばかり

666 名前:きのこ軍:2016/03/07 20:18:25.611 ID:3htL7.Cw0
頑張って週一更新を目指します。

667 名前:社長:2016/03/07 20:38:08.551 ID:MuNNbt0k0
DB地味にこえ真似とかヤヴァス

668 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その1:2016/03/26 23:51:25.781 ID:x3Oks6oUo
【K.N.C28年 会議所】

DB「ハッ、ハッ、ハッ」

荒野のなかを独り、DBは激走する。
既に限界を迎えているはずの身体から悲鳴が上がることはなかった。アドレナリンが苦しさを打ち消しているのだ。
DBは極度の興奮状態にあった。思い出すは先程までのアイム達との死闘。

あの時、スリッパたちは現代のDBを誘き出すために、過去DBを囮にして現代のDBを討伐隊の前に引きずりだした。
討伐隊の完璧な作戦勝ちに見えたが、同時にDBはその作戦を“利用していた”。

知性の高い兵士は、その敏さ故に、物事を見通す力が他の兵士よりも抜きん出ている。その多くは作戦参謀や指揮官といった要職に付く。
そして、自らが持つ賢さを、自分のためから他人を助けるために昇華させ使う。その過程で、兵士は内面の上でも飛躍的に成長するのである。

DBも元は知性の高い兵士の一人だった。ただDBは天涯孤独であり、生まれた時より世界から【忌み嫌われた】存在であった。
他人を導くために持ち前の力を使用するはずもなく、DBは常に自分のために使い続けた。
そのため、どの兵士よりも知力や感性は冴え渡り、同時に誰よりも狡猾となった。

スリッパの策にハマったのはDB自身が生んだ油断からだった。その時点ではスリッパたちが優位に立った。
しかし、メイドからの追跡に逃げきれないフリをしながら、DBは討伐隊員をうまく時限の境界まで誘い込み、そして討伐隊員だけを現代に還した。
中庭で討伐隊の策にハマる中で、瞬時の判断能力が生んだ、狡猾さゆえの良案だった。


669 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その2:2016/03/26 23:52:42.944 ID:x3Oks6oUo
狂喜の中に居たDBだが、次第に走る力は衰え、終いには息を切らして倒れこんでしまった。
元来、兵士の“心の本の頁(ページ)”を餌にして生きてきたDBである。歴史改変で兵士たちの余った“心の本”を喰らい、肥大化してきた。

しかし、一度、討伐隊が歴史修正に繰り出せば、手に入れた筈の力は、元の所有者に戻ってしまう。
元々の計画では“下手な歴史修正には手を出さず、兵士の心の本を食べ続け現代の会議所を支配する”ことだったが、ここにきてDBは計画修正の岐路に立たされていた。

DB「しかしィ…過去への過大な干渉は、自らの身も滅ぼしてしまう…」

――『でも何か策を打たないと、討伐隊は君のことを絶対に見つけるよ?』

仰向けのまま肩で息をするDBに、久方ぶりに謎の【声】が語りかけてきた。

DB「ッ、そんなことはわかっている。スクリプトももう期待できない、このままでは俺様の世界支配計画が――」

――『君には“力”があるじゃないか、忘れたのかい?』

DB「!!ッ。そうだった、俺様には兵士の負の力を取り込んで手に入れた“力”がある。そうか、それを利用すれば…ハハ、ギャハッ、ゲハハハハハハハハッ!!!」

けたたましい奇声を上げ、DBは独りで高笑いする。
思いついた、思いついてしまった。
重要な歴史修正を伴わずに、簡単に会議所を支配する方法を。


670 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その3:2016/03/26 23:56:40.249 ID:x3Oks6oUo
【K.N.C28年 会議所 裏庭】

¢「よしよし痛かったろう、ゆっくりと休め。次の戦いは近いからな」

縛られたDBの縄を解きながら、¢は子を見守る親のように在りし日のDBを労った。

過去DB「びええええええええん」

泣き喚きながら過去DBは人里離れた奥地へと逃げ去っていく。過去の光景を物陰からじっと見つめていたDBは、何も言わずに静かにその場を立ち去った。
会議所兵士の中でも当時の¢はDBの唯一の理解者だった。それも今は昔、今のDBには選択肢がない。¢には恩義を感じている、だが会議所にいる以上、対決は避けられない。
なにより、自身がこの先生き残るためには自分以外の全員を敵に回さないといけないのだ。その覚悟はとうの昔にできている。
昔の自分と決別を付け、DBは恐考えた計画を実行に移す。


671 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その4:2016/03/26 23:58:54.237 ID:x3Oks6oUo
黒砂糖「お、お前はッ!」

DB「やあやあ黒砂糖君。時間がないからさっさと催眠にかかってくれたまえ。
ようこそ、我が【DB教】へ」

廊下を歩いていた黒砂糖を捕まえ、全身全霊を込めた臭い息を吹きかけ、黒砂糖を失神させる。

DB「さて、黒砂糖くん。お前はァ、今日から【DB教】の一員だ」

黒砂糖「……はい」

DB「DB様のためならなんでもするよな?」

黒砂糖「……はい」

目を虚ろにし、催眠状態にかかった黒砂糖はDBの言葉に次々と同意していく。

DB「しかしィ。この時代から黒砂糖くんが【DB教】の一員であることがバレるといろいろとマズイ。どうしてだかわかるかね?」

黒砂糖「…はい。愚かな私が過去から暴れてしまうことで、予知できない歴史改変が起こり、DB様の崇高な計画が崩れしまいます…」

DB「そうだ。だからァ、君には【制約の魔法】を施そう。これから俺様が口にする『キーワード』を耳にした瞬間、君ィは【DB教員】であることを思い出し、俺様のために尽くす。
それまで君はただの善良な会議所兵士を演じるんだ。いいね?」

黒砂糖「……はい」

DB「さて、そのキーワードはァ―――」



672 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その5:2016/03/27 00:03:03.545 ID:SQHz6Ouso
【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

きのこ軍 アイム「クソっ、DBの野郎に嵌められたッ!!」

たけのこ軍 社長「なに そん」

きのこ軍 参謀「気にすることはない。DBは確実に追い詰められている」

なおもアイムは机に拳を叩きつけ、悔しさを露わにする。

たけのこ軍 オニロ「アイム達の歴史改変を確認して以降、時空震は発生していない。ということは、まだDBがK.N.C28年に残っていることになるね」

たけのこ軍 社長「詰みです でなおしてまいれ」

きのこ軍 黒砂糖「次に時空震が発生したら、すぐさま時限の境界に急行して、DBを捕獲すればいいな」

たけのこ軍 社長「いまさら逃げても無駄にいい事を教えてやろう。」


673 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その6:2016/03/27 00:16:27.688 ID:SQHz6Ouso
大きな音に続き。
オニロは意識を失ったように椅子から転がり落ちた。


きのこ軍 アイム「おい、どうしたッ!!」

たけのこ軍 オニロ「あ、あああああああああああああァアアアアアアッ!!な、なんだこれはッ…頭のなかに記憶が、記憶が流れてくるッ!!」

頭を抱え嗚咽を漏らすオニロにアイムを始め、多くの兵士が彼に駆け寄る。



 ―― 安心しろよォ。ここを離れようとすぐあんたを“迎えに行く”からよォ、***もそれを望んでいるだろ。


                                    ―― 行っただろう、“迎えに行く”となァ。さァ、***へ帰ろう。


               ―― “迎えに行く”よ、約束するさ、必ず。だから二人で帰ろう***に。



決壊したダムから溢れ出る水の如く、容量外の記憶がオニロに襲いかかる。
オニロはただ身を縮こまらせ、いまこの時が過ぎ去るのを待つしかなかった。

頭のなかに反芻する幾多の会話。その会話に共通する単語が、オニロの頭のなかを次第に占有するようになっていた。
だから、頭のなかから振り払うように。弱々しく、ポツリとオニロはその単語を声に出してみた。


(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

674 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その7:2016/03/27 00:18:05.316 ID:SQHz6Ouso
たけのこ軍 社長「な 何の話だったの?」

きのこ軍 黒砂糖「ッ!!!」

オニロの言葉に、不可思議なまでに身を震わせ反応した兵士が一人いた。しかし、会議所兵士が黒砂糖の異変に気がつくことはなかった。
なぜなら、同時にDBの歴史改変による時空震が編纂室を襲ったためである。

たけのこ軍 加古川「ぐおおおおおッ!こんな大事な時にいいい!」

きのこ軍 参謀「みんなしっかり耐えるんやッ!この時空震は会議所に訪れた好機ッ!DB捕獲のための最後のチャンスやッ!」

会議所兵士が頭を抱え必死に揺れに耐える中、淡々と自動筆記ペン オリバーは、大戦年表に改変された歴史を記載していく。

DBの歴史改変を編纂室が捉えた。つまり、DBはアイム達を現代に送り戻したK.N.C28年で歴史改変を行い、現代へ帰還する手筈を整えた。
DBが編纂室の存在を知らない限り、会議所は時限の境界にてDBを待ち伏せすればいい。
やがて数十秒続いた時空震はピタリと止まった。

たけのこ軍 791「大戦年表にはなんて書かれているの!?」

たけのこ軍 社長「さっ白い」

きのこ軍 アイム「追加された歴史は…【第一次DB討伐戦に敗れ捉えられたはずのDBは、隙を突いて脱走。
すぐさまDB討伐戦が再開されたものの討伐隊の働きですぐさま終戦。DBは涙目で敗走した。】
クソっ。あいつ、過去のDBを偽ってDB討伐戦の続きを開きやがったッ!」


675 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 誘い罠編その8:2016/03/27 00:20:12.618 ID:SQHz6Ouso
たけのこ軍 791「ただ、これでDBの歴史改変が確定した。今から急いで時限の境界前に移動してDBを捕えよう」

きのこ軍 参謀「DBは時限の境界の外に戻ってくるはずや。時限の境界に入らせるよりも前に捕えるしかないやろうな」

きのこ軍 ¢「ぼくを行かせて欲しいんよ」

きのこ軍 someone「同じく、きっと役に立つはずです」

たけのこ軍 加古川「私も」

きのこ軍 黒砂糖「…俺も」

たけのこ軍 オニロ「…ボクも、行かせてください」

次々と兵士が呼応する中、力なく倒れていたオニロからも声が上がる。

きのこ軍 アイム「テメエ、休んでろ。それにお前は編纂室部隊で地下に留まっていないと…」

たけのこ軍 オニロ「DBと決着を付けなくちゃいけない…それに、ボクもみんなと一緒に戦いたいんだ」

たけのこ軍 791「私がオニロの代わりに地下に残る。歴史はオニロ以外でも確認することができる。オニロ、行っておいで」

たけのこ軍 オニロ「師匠ッ!」

きのこ軍 アイム「…ッチ。足手まといにはなるんじゃあねえぞッ!少しでもヘバッたら尻を蹴りあげてでも起き上がらせてやる」

こうしてかつてない規模で、大所帯の討伐隊はDBを捕えるべく時限の境界へと急いだ。


それが、巧妙に張り巡らされたDBの罠だとも誰も知らずに。

676 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/03/27 00:20:27.910 ID:SQHz6Ouso
オニロ、遂に参戦確定

677 名前:たけのこ軍:2016/03/27 00:21:28.766 ID:ha93.1z60
後催眠やめろ!!

預言のアイムオニロの死はどう吹き飛ばされるんだろう

678 名前:たけのこ軍:2016/03/27 00:22:16.163 ID:ha93.1z60
そして¢君の過去がちょっと明らかになったすね

679 名前:きのこ軍:2016/04/21 01:07:01.464 ID:ytMPNuj.0
リアルの都合で更新はもうちょっと先になりそう。ちなみにもう3章後半です。

680 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/05/23 00:42:33.249 ID:dsHugUWUo
今月も更新できそうにありません。6月中にはなんとか。

681 名前:たけのこ軍 791:2016/05/23 12:45:16.186 ID:Jv1Rg9AQo
無理せず頑張れ
待ってる

682 名前:社長:2016/05/23 17:36:53.000 ID:3exyDMeY0
無理はするな

683 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/07/24 22:38:08.937 ID:B2xggK/2o
・これまでのあらすじ

“大戦”を運営する『会議所』は、日に日に増大する大戦参加者の士気・意欲低下に頭を悩ませていた。その最中、会議所に流れ着いたアイムとオニロは、社長の【占い】により、『大戦の希望』として鍛えられる。(Chapter1まで)

そんなある日、会議所で捕らえていたはずの世界の宿敵【DB】、【スクリプト】が脱走していたことが判明。同時に、DB一味は、禁忌のマップ『時限の境界』で、故意に会議所不利の歴史に改変していることも明らかになる。
世界の危機を救うため、参謀を隊長とするDB討伐隊は、すぐさま『時限の境界』に突入するも、内部に潜むスクリプトや、時限の境界の【制約】の前に悪戦苦闘。結局、DBの姿すら確認できずに、撤退を余儀なくされる。
自身の不甲斐なさを悔い、アイムは戦闘術魂の伝承者・筍魂に弟子入りを志願。オニロとの絆を深め、師からの教えを理解したアイムは、再び時限の境界へと突入する。
しかし、新たな【制約】により、アイムは独り過去の時代に閉じ込められてしまう(Chapter2まで)

それでも持ち前の機転と戦闘術魂を利用し無事現代に帰還したアイムは、会議所の中心的存在だった集計班が突如として姿を消したことを知る。
悲観に暮れる間もなく、竹内の加入を経て、過去のあちこちにスクリプトたちが【スクリプト工場】を製造し過去改変を行うというネズミ講のような恐ろしい事実を目のあたりにする。
すぐさま、時限の境界に潜んでいるDBの捕獲及び工場破壊の『ハイブリッド作戦』が開始された。

順調に工場を破壊する中で、追い詰められていたDBとアイム達討伐隊は、時限の境界内で遂に運命の邂逅を果たす。
万事休すと思われたDBだが、自らの危機を逆手に取り、アイム達から逃れるだけでなく過去の時代で黒砂糖を洗脳。自らの内通者として仕立てあげ、計略を張り巡らしはじめる。
一方、会議所はDBを捕えるべく、前例のない人数で時限の境界に向かうのだが――――


684 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その1:2016/07/24 22:40:38.147 ID:B2xggK/2o
【K.N.C180年 時限の境界 入口】

アイム「さあ逃げ場はねえぞ、化物野郎ッ!!」

社長「勝ちますよきのたけは」

会議所からの転移を終えた、開口一番のアイムの怒号は、静かな時限の境界入口によく響いた。
風になびく草花のざわめきは、場にそぐわない無礼者に静かに怒っている表れにも思えた。

オニロ「ここが…時限の境界。なんて幻想的で、そして禍々しいんだ」
社長「アオし」

手で日差しをよけながら、オニロは目を細めた。穏やかな空の蒼と草原の翠が同居する空間の中で、時限の境界へと続く千本鳥居は毒々しいまでに紅く。
長い間地下に居たオニロの青白い肌は、朱の鳥居と比較すると病的なまでに映えた。

アイム「おい…あまり無茶するなよ。お前は地上に出たばかりの”病み上がり”なんだからよ」

オニロ「うん、ありがとう」

社長「美美美美美ち良かったね。」

放っておけばオニロはそのままこの空間内に溶けてしまうのではないか。なぜだか自分自身のように、アイムは心配した。

¢「感慨に浸っている時間はないんよ。DBは時限の境界を一度脱出し、もしかしたらこの付近に潜伏している可能性がある。探しだすんよ」

参謀「手分けして捜索やッ!時限の境界に入る時は一斉に突入やぞ」

685 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その2:2016/07/24 22:42:14.196 ID:B2xggK/2o
鬱蒼とした未開の地の中にポツンと存在するこの一帯は、まるで隕石が落ちたかのように、ぽっかりと木々が抜け落ちた草原になっている。
丘を降りた先に広がる、兵士の腰程度まで伸びきった草原は、丘の上からの明快な眺めと比較し、暗然たる隠れ蓑になっていた。
総勢十数名近い討伐隊員の多くは、丘を降り、方方でDBの捜索を始めた。

斑虎「うえっぷ…隊員の身長くらいまで伸びてるじゃねえか、もしDBを討伐したらここを会議所の庭園にしよう。手入れしないとな」

オニロ「だったら、今すぐに”手入れ”しますか?」

杖を構えるオニロに、斑虎は冗談ぽく肩をすくめた。

斑虎「そいつはいい。だが、その方法は、できれば俺たちが丘を下りきる前に言ってもらいたかったな」

草をかき分ける度に擦れあう音、枯れ草を踏みしめ進む音が響く。高台から眼下を臨む参謀も、揺れ動く草から隊員の無事を確認するだけだ。

黒砂糖「……」

人目を避けて何か企てを働こうとする者にとって、これほど絶好の機会はない。
この時、討伐隊員達は誰一人、黒砂糖の動きを感知できなかった。


686 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その3:2016/07/24 22:43:55.043 ID:B2xggK/2o
参謀「何名かはまだ捜索に当たってくれ、残りは丘に戻って別地点での捜索も敢行する」

時間をかけ捜索にあたったものの、DBは見つからないままだった。

アイム「既に、DBは時限の境界に戻っちまってる、なんてことはないよな…」

意外と傾斜のある丘を登り終わり、アイムは額の汗を拭った。視線の先には毒々しい朱鳥居と土壁がそびえ立っている。

someone「これまでの経験から推測するに、大戦年表― オリバーが歴史改変を告げるタイミングは『歴史が正に書き換えられた』時だ。
つまり、DBはまだ改変先の過去の時代に留まっている可能性が非常に高い」

竹内「つまり、どういうことかのう」

アイム「爺さん、あんた付いてきていたのか。寝てろって言っただろ。ほら、これ水筒だ。日射病になるんじゃねえぞ」

社長「やっほ^^」

参謀「竹内さんはシューさん最後の希望やからな。連れていかないわけにはいかんやろ」

スリッパ「目を離すと勝手に出歩くから監視が必要だけどな…介護の資格でも取るかな」

数十分経てど、DBが潜伏しているような形跡は見つからなかった。
DBが元の時代に戻るまで待つべきか、と多くの隊員が思う中、突如として―――


687 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その4:2016/07/24 22:45:11.956 ID:B2xggK/2o
DB「ひいいいいいいいいいいいいいぃぃ」

耳をつんざく金切り音。声の方向へ全員が振り返ると、そこには鳥居の前で立ちすくむDBの姿があった。

アイム「飛んで火に入る夏の虫とはこのことだな、DB!!」

参謀「各員、目標は『DBの捕獲』ッ!急げッ!!」

DB「ひいいいいぃぃぃ」

参謀の命令よりも早く、DBは千本鳥居へ駆け出した。

¢「DBォ!僕だ、¢だ!止まってくれッ!」

¢の声は届かない。

黒砂糖「私と抹茶はここに残って後方支援に回るッ!!抹茶、いいな!?」

抹茶「う、うん!わかりましたッ!」

688 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その5:2016/07/24 22:46:23.819 ID:B2xggK/2o
DBの悲鳴を遮るように、討伐隊から銃器の轟音、魔法の攻撃音が響き渡る。
しかし、DBは、時に鳥居を盾に銃器や魔法からの攻撃を防ぎ、時には鳥居をよじ登り、時限の境界へと急いだ。
いかに手慣れの兵士たちといえど、逃げ足だけは一級品だと評されるDBの動きに翻弄されていた。

DB「ハァハァ…ひいいいいいいいい!!」

いの一番に、入口まで辿り着いたDBは、躊躇うことなく扉を開け放ち、時限の境界へと逃げて行った。

参謀「これより時限の境界に突入するッ!怖気づいたものは、すぐさま引き返せ!黒砂糖や抹茶に連れて帰ってもらうッ!」

引き返す者はいなかった。全員が全員、覚悟を決めた表情をしている。

参謀「…わかった、ならば俺に続けッ!」

こうして十名近くの討伐隊員達は一斉に時限の境界へと飛び込んでいった。


689 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その6:2016/07/24 23:02:37.084 ID:B2xggK/2o
抹茶「はぁ…みんな大丈夫かなあ。とりあえずは、会議所に戻って残留組に現状を報告ですかね?」

黒砂糖「…」

隣に佇む黒砂糖から返答がないことに、抹茶は訝しんだ。

抹茶「黒砂糖さん?どうかしまし――」

ヒュッという風切り音とともに、抹茶は声を発することなく仰向けに倒れた。

黒砂糖「みぞおちだ、すまんな抹茶。でも気がつけば、お前もすぐに“目覚める”さ」

倒れている抹茶を一瞥した後、黒砂糖は丘の上から先程の草むらに向かって呼びかけた。

黒砂糖「…DB樣、私めです。準備は整ってございます」

ヌッと、異型の怪物は草むらから頭だけを覗かせ、静かに口角を釣り上げた。


690 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その7:2016/07/24 23:04:58.746 ID:B2xggK/2o
DB「ご苦労、黒砂糖君。
いや、君には我が【DB教】の信者として、洗礼名を与えよう。神父黒飴、それが今日からの君の名前だ」

黒砂糖「ありがたき幸せです、DB樣」

黒砂糖は丘を登り切ったDBに向かって、まるで目の前に神がいるかのように頭を垂れるとともに膝を折り、従順の証を見せた。

DB「くくく…やはり過去の時代での洗脳は未だ効力を失っていなかった。うまくいったようだな、なんて賢い俺様なんだ…」

黒砂糖「討伐隊は、DB様が創りだした【幻影】を誰も偽物だと気づかずに追っていきました」

DB「どうだ、よくでてきていてだろう。俺様の力の一部をあの【幻影―人形―】につぎ込んだのだ。似てもらわなきゃ困る」

黒砂糖「はい、愚かにも討伐隊はDB様の幻影を追って、時限の境界へと突入していきました」

DB「【幻影】は撒き餌ァ。時限の境界という罠に、うまく討伐隊を放り込むことができたァ。
もし、そこで討伐隊が居なくなってくれれば俺様にとっては万々歳ィ、万が一生還したとしても…時既に遅しィ」

黒砂糖「貴方様の思い通りに事は進みます。しかし、ここに来た時は驚きました、すぐに私が草むらを具現化して擬態したからよかったものの…」

DB「君ィへの信頼の証ということさ。それも計略のうちよ」

討伐隊が訪れるほんの僅か前に、DBは時限の境界を抜けだしていた。
咄嗟に丘の斜面に横穴を掘り、そこに身を隠した。しかし、DBの歩いた跡は草花すら残らない。
枯れ果てた草花がDBの歩いていた道筋を示していた。黒砂糖は、時限の境界に到着してから、瞬時にその部分を自らの絵画能力で隠したのだ。


691 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 既に計略始まってる編その8:2016/07/24 23:05:58.061 ID:B2xggK/2o
DB「まァそれは置いといて…さて、黒飴君。私がこれから何をしたいかわかるかな?」

黒砂糖「勿論でございます、DB樣。貴方様を一方的に迫害した会議所を、正しい道に【導いて】やらねばなりません」

DB「その通りだァ。誰がこの世界を統べる者か、教えてやらなければならないなァ。
しかし、いいのかね?君は討伐隊に身を置く兵士の筈。立場としては、俺様の考えに背く者ではないか?」

黒砂糖「…私は今やDB教の神父として、DB様の素晴らしさを説いて回らねばならぬ立場です。たとえ会議所が私にとってかけがえのない空間だとしても…

DB様に楯突こうする者には、血の涙を流しても、訓えに背く者を裁くでしょう。私の全てはDB樣とともにあります」

DB「Goodだァ黒飴くん。それでは、DB様の会議所への凱旋としゃれこもうじゃないかァ。その緑色の兵士も持って行きなさい。
そうだ、忘れていた。どうして、会議所はあんなに時限の境界に詳しいのか。
まあその辺りは、道中にて、詳しく聞かせてもらおゥ。ハハ、ギャハッ、ゲハハハハハハハハッ!!!」

そして、DBと一人の神父は会議所に向かって歩き出した。後には草花すら残らず、一迅の黒い風が舞うのみだった。


692 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/07/24 23:08:13.753 ID:B2xggK/2o
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/807/card-10.jpg
純粋な絵描き兵士は、神父に成り果てた。
既に決戦は始まっている。

あと、DBは幻影とかを操れる能力とかで落ち着きそうです。

693 名前:社長:2016/07/28 00:53:23.230 ID:YDXj/Jq60
魔王様なんとかしてくれー!

694 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その1:2016/08/28 23:06:14.901 ID:y6C4AGoco
【K.N.C180年 時限の境界】

幻影のDB「ひいいいいいいいいいいいいいい!」

加古川「悲鳴のする方向だ!急げッ!」

数多のホールを駆け抜け、DBへ向かって走り続けるが、討伐隊は未だその姿を捉えることができずにいた。

斑虎「声の方向はあっちだ!」

someone「いや、真逆の方からも聞こえたぞ!」

スリッパ「奴の移動の速さ、それにホール内で声が反響しているから、特定し辛いな…」

オニロ「二手に分かれて捜索したほうがいいですかね?」

¢「人数を分散すると、それだけ歴史改変を多くするリスクが高まる。僕は反対なん――」

¢が言い終わらない内に、慟哭とともに巨大スクリプトNEXTたちは討伐隊の前に姿を現した。


695 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その2:2016/08/28 23:08:54.765 ID:y6C4AGoco
アイム「みんなッ!避けろッ!」

数体のスクリプトがアイム達の元へ跳躍し、轟音を唸らせながらその巨体を地面へぶつけた。金属の擦れる耳障りな音に、何人かは顔をしかめ動きを止める。
その間に、十数名いた討伐隊員たちは巨大スクリプトによって、隊が分断されてしまった。

アイム「くッ!砂煙が目に入っちまった…みんな、無事かッ!!」

ホール内に反響し続けるスクリプトの慟哭に負けないくらいの大声で、アイムは周囲の状況を確認しようとした。
アイムが滲む目を擦り辺りを見回すと、分断されたアイム側には、オニロを含め数人居るようだった。

オニロ「大丈夫だよアイムッ!!けど、なんて耳障りな音なんだッ!『ネギトロ爆弾』!!」

詠唱と同時にオニロは勢いに任せて杖を振りかざした。
すると、杖の先から液状の緑色の球体がスクリプトに当たりそして弾け、強烈な刺激臭と毒により、スクリプトの自由を奪った。

アイム「よくやったぞアイムッ!てかなんだよそのネーミングは…」

オニロ「『ネギにちなんだネーミングにすれば、集計さんの手向けになる』って師匠が言ってたから…」

スリッパ「軽口は後だ。どうやら団体さんのお出ましだ」

竹内「ホッホ。こりゃまた、図ったようにわらわら湧いてくるのお」

社長「アッアアッヤバイ」

残党の勢揃いといった具合に、討伐隊がいるホールに四方から巨大スクリプトが押し寄せてきた。

696 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その3:2016/08/28 23:10:41.468 ID:y6C4AGoco
アイム「ちくしょう、時間がねえってのに――」

スリッパ「おいッ!あそこにDBがッ!!」

アイム「なんだとッ!」

目を凝らすとアイム達から見て西方に、ホールを走るDBの姿が遠目でも確認できた。

オニロ「ここで逃すと、もう捕まえられないかもしれないよッ!」

スリッパ「だが、分断されている¢たちとの合流を待たないと…」

¢??「オレらのことなら大丈夫なんよ!先に行って、DBを討伐して欲しいんよ!」

悩んでいるオニロたちの耳に、スクリプトにより離れ離れになったはずの¢の言葉が届いた。
雑音で近くの兵士同士の声すら聞きにくい状況の中で、¢の言葉はオニロとスリッパの耳に不可思議なほど明瞭に届いた。

アイム「どうしたッ!¢さんたちと連絡は取れたかッ!?」

オニロ「¢さん達は先に行っていてくれってッ!!」

アイム「ん?よく聞こえねえぞ!てか、うるせえぞテメエッ黙ってろッッ!」

身をかがめつつアイムは短刀を横投げすると。意志を持ったように同心円状に回転しながら移動した刀は、瞬く間に、スクリプトの四肢を切り取ってしまった。

社長「あワお〜〜流石っすねアイム君」

アイム「見たか、これが鍛え上げた戦闘術の実力だッ!」

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697 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その4:2016/08/28 23:11:30.759 ID:y6C4AGoco
¢「ん?」

背後にそびえるスクリプトの残骸の山に振り返るも、向う側に居るはずのアイムたちの声は聞こえてこない。

参謀「どうしたんや¢!」

目の前のスクリプトを薙ぎ払いながら、戦友の違和感に真っ先に気がついた。

¢「いや、アイム君たちの声が聞こえた気がしたんよ。だけど、気のせいか」

加古川「¢さん、もっと腹に力を込めて大声で話してくれッ!全然、聞こえないぞ!」

¢「びえええええええん」

someone「しかし、奴らは狙い澄ましたかのように我々の中腹を攻めて、そこになだれ込んできましたね。
お陰で、斃れているこいつらを動かすのにもう少しだけ時間がかかりそうです」

斑虎「まあ向こうも戦い続けていることだろう。¢さんの合流するまで動かないっていう指示に従っているだろうよ!」

筍魂「…いやな予感がするな…」


698 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その5:2016/08/28 23:14:12.523 ID:y6C4AGoco
オニロ「くそお!どこだDBォ!!」

怒りを発散するかのように、ポイフルバーストの光弾を散らせながらオニロは先頭を走り続けていた。
火花がバチバチと散りながら、彼方で炸裂した光弾の反響音が伝わってくる。

アイム「お、おい止めろオニロ。これじゃあ自分の居場所を相手に教えているようなもんだ!少しは落ち着け」

オニロ「ああ、そうだね。ありがとうオニロ」

スリッパ「オニロは随分と激情型だな…」

社長「戦闘になると先が見えなくなるって奴すかね」

アイム「しかし、DBをまた見失っちまったか…竹内の爺さんもいるから速くは走れねえし…」

竹内「ホッホッホ、今夜の夕飯はなんじゃろう」

スリッパ「安心しろ、もう既にサラを周りに走らせてある。DBを発見したら知らせをよこすはずだ」

社長「段々忍者みたいになってきたっすね」

その時、近くのホールから短い炸裂音と同時に化物の悲鳴が響いてきた。

スリッパ「サラが見つけたッ!こっちだッ!」

699 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その6:2016/08/28 23:16:39.239 ID:y6C4AGoco
サラのいるホールに駆けつけると、ワイヤーガンを構えたサラの目の前に、フック付きワイヤーにがんじがらめにされているDBが藻掻いていた。
地べたに腹をつけ手足だけをばたつかせるDBと、それを見下ろすサラ。勝敗は歴然だった。

スリッパ「よくやったぞサラ!」

社長「もうあの子だけで いいんじゃないかな」

オニロ「すごいよサラさん!DBを捕まえた!」

サラは照れる素振り一つ見せずに、流れるような所作でスリッパの背後に移った。

アイム「すぐさま¢さんたちと合流して、DBを捕獲した旨を伝えよう」


社長「そんな時間あるかなあ?」



―――『時間切れ』



社長の声と、謎の声がアイムに届いたのはほぼ同タイミングだった。
ふわりと全員の身体が静かに浮かび上がった。

スリッパ「くっ、こんな時に時間切れなんて…」

幻影のDB「ひいいいいいいいいいいいいい」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

700 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その7:2016/08/28 23:27:57.034 ID:y6C4AGoco
アイムたちの眼前にある過去の扉が勢い良く開け放たれた。
時限の境界によって、自動的に放り込まれる年代が決まったようだ。

幻影のDB「ひいいいいいいいいいいい」

アイム「うるせえ!黙ってろッ!」

幻影のDB「ひいい…ひひひ…イヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!」

アイム「!!」

突如笑い出したDBにギョッとするアイム。すると――

幻影のDB「ヒヒヒヒヒイッヒヒヒヒ」

DBの身体から、眩い光が発せられる。否、光源はDBの奥にある開け放たれた扉の光が漏れたものだった。
DBの身体が徐々に透けているのだ。

アイム「DB、テメエは――」

幻影のDBと目が合う。
”また、ダマサれた”
偽物の器の眼は、確かにアイム達をそう嘲笑するように嗤っていた。

扉に吸い込まれる直前に、オニロは一連のDBの仕組まれた行動に合点がいった。しかし初めての時間跳躍に困惑し、推測した制約を元に、アイムと社長の手を絶対に離さないように心がけた。
社長も平常時のバグ様子で、ただオニロと竹内の手を握ったままだった。
竹内も動揺せずにじっと時が流れるのを待った。それは老練の経験からくるものか、それとも単にボケているのか。事前の話を元に、社長とスリッパの手は最後まで離さなかった。
スリッパは、DBの策略に再度ハマったことに下唇を噛んだ。感情を表に出す様は、大戦黎明期に見られた若かりし“英雄・スリッパ”を彷彿とさせた。
その後ろで、サラはじっとスリッパの背中を見つめている。その瞳から特定の感情は読み取れない。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

701 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 情動編その7:2016/08/28 23:28:35.022 ID:y6C4AGoco
アイム、オニロ、社長、竹内、スリッパ
役者は揃った、さあ旅だ旅だァ

702 名前:社長:2016/08/29 03:26:15.743 ID:e/8l8.Hg0
足取り軽く旅に出ようよ 重いわ

703 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その1:2016/09/04 00:03:16.203 ID:3CVJ9V6wo
【K.N.C47年 会議所】

オニロが意識を取り戻し勢い良く起き上がると、その眼前には、見慣れた会議所正門とそれを取り巻く石壁が延々と広がっていた。

オニロ「皆さん、無事ですかッ!」

アイム「オニロ…お前、まんまとDBに騙されたな」

同じく起き上がったアイムが、時間跳躍時にぶつけたであろう後頭部をさすりながら溜息を付いた。
DBが¢の声色を使い偽の司令を出し錯乱させたことを、自身も同じ手口で欺かれたことを引き合いに、アイムは他の5名に説明した。

スリッパ「そもそも声の小さい¢さんの声が、あんな環境下できこえるはずがない、か…盲点だったな」

社長「よくもわしを、だましおったな〜っ!!」

オニロ「た、確かに…」

アイム「討伐隊の分断はDBの目論見通りだ。【幻影】と【幻想】を操る奴の能力の前に、翻弄されっぱなしだな」

オニロ「捕まえたはずのDBが偽物だとすると…もしかして、時限の境界で発見したはずの奴も最初から【幻影】だったのかもしれない」

スリッパ「討伐隊本隊を引き付けることが陽動だとしたら、奴の真の狙いは…」

竹内「昼飯を食うことかのう?」

社長「原因は!かぁー!どこじゃー!」

オニロ「そうかッ!【手薄になった会議所の襲撃】ッ!」


704 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その2:2016/09/04 00:04:27.498 ID:3CVJ9V6wo
本隊は自らの分身で時限の境界に引きつけ、その間に会議所に襲撃をしかける。DBのプランは単純ながら明快だった。

スリッパ「なるほど、DBからしたらこれ程の名案はないだろう。ただ、時限の境界の外には黒砂糖さんと抹茶さんが残っている」

オニロ「会議所には師匠も残っているし、問題なしだね。逆にこれが決定打となって追いつめられたりしてね」

とにかくオレたちは早く帰ろうと述べ、アイムはすっくと立ち上がり辺りを見回した。とうに陽が落ちているのか、一帯はすっかり闇に覆われている。
K.N.C180年頃には正門の両脇には灯籠が立ち会議所を照らしていたが、この時代には灯籠はおろか道も舗装されていなかった。
相当前の時代に来たのではないかと、オニロは直感した。

オニロ「しかし人の気配がないですね…みんな、大戦中でしょうか」

スリッパ「ともかく会議所内に入ってみよう」


705 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その3:2016/09/04 00:06:21.278 ID:3CVJ9V6wo
会議所内を歩けど明かりは落ち、辺りは静まり返っていた。建物は現代と比べて随所に小綺麗さを感じる。
今ではすっかり色褪せてしまった会議所受付も、この時代では光沢を放つテーブル、椅子がオニロとアイムにとっては新鮮だった。

月は雲に隠れ、月明かりすら頼りにならない中、討伐隊6名は会議所中心に位置する中庭からwiki図書館に向けて歩いていた。
未だ、この時代の兵士一人もすれ違っていない。
就寝時刻をとうに過ぎた夜半に飛ばされたのではないか、と一行は壁伝いに歩きながら薄々そう感じはじめていた。

スリッパ「明かりが灯ってない。どこか懐かしい感じがするな…」

アイム「…そういえばスリッパさんは何時頃まで大戦にいたんだ?あまりその辺の話を聞けていなかったな」

スリッパ「それは…」

オニロ「スリッパさんは凄いんだよッ!大戦黎明期における英雄的存在なんだッ!」

言葉に詰まるスリッパを押しのけるように、オニロは目を輝かせた。
大戦年表編纂室で読書にふけるしか無かった彼は、ここぞとばかりに読書で得た知識を披露し始めた。


706 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その4:2016/09/04 00:07:57.555 ID:3CVJ9V6wo
オニロ「まだ会議所ができる前の話さ…戦いをしない限り世界に進展がないと兵士たちの間で判明して間もない頃。一人の英雄が戦いを終結に導いたんだ」

当時の複数の文献には、その英雄について、みな一様に次のように記している。

“きのこたけのこ世界が創造されて数年。動乱が続いていた中で、その世界が真の産声を上げたのは、英雄スリッパが第二次大戦を終結させたその時である”

兵士たちは生を受け世界へ降り立ったその時から、生きることに必死だった。
生きるためには、その世界に留まり続ける必要があり、その世界は兵士たちの戦いのエネルギーを糧とし維持する材料とした。

皆、余裕は無かった。戦いは生きるために必要であるという、兵士たちは謂わば義務感に駆られ戦いを続けていた。
そんな第二次大戦中、生気のない顔で兵士たちが戦闘を続けていた正にその時だった。
ある一人のたけのこ軍兵士が突然、隊列から独り離れ、軍団の前に出た。周りがギョッとする中、その兵士は茶目っ気たっぷりな表情で辺りを見回した。

『みんな、キノコ狩りに興味はないか?』

当時、兵士に名前はなく互いを個として認識していなかった時分、その兵士は自らをスリッパと名乗り周囲を煽動した。
スリッパの熱にあてられ、たけのこ軍は戦いにノリと酔狂を見出し、勢いのまま進撃を続けた。
そして、きのこ軍を追い詰めた際、後年まで語り続けられることとなる名言とともに、軍団長スリッパはきのこ軍を壊滅させた。



『突き進む!そのさきが闇だったとしても!!』



707 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その5:2016/09/04 00:09:10.169 ID:3CVJ9V6wo
オニロ「――ということがあって以来、兵士たちはスリッパさんのお陰で大戦の醍醐味、おもしろさを理解することができたっていうわけさ」

社長「(さすが、スリッパは違うぜーー」

竹内「ほう、それはいい話じゃのう」

アイム「大戦世界発展の第一人者というわけか。そりゃあ各所で神格化されるわな。そんなあんたが、どうしてすぐに大戦をやめたんだ?」

スリッパ「…理由なんてないさ。いや、強いて言えば……【理由を知りたくなったんだ】」

オニロ「理由?なんのですか?」

スリッパはオニロの問いには答えずに、ただ淋しげに微笑むだけだった。英雄の儚げな笑みに、どのような背景が隠されているのか。
アイムとオニロはまだその理由を知らない。
サラだけがスリッパに向けて憐れみの視線を送っていたが、不幸か幸いに、誰も気がつくことはなかった。


708 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その6:2016/09/04 00:11:59.941 ID:3CVJ9V6wo
社長「しかし、兵士の姿が見えないあひゃよ」

竹内「腹が減ってきたのう。香ばしい焼き魚の匂いもただよってきた」

アイム「爺さん、飯ならさっき食ったから素直に寝てろ。…ん?ただ、確かに何か臭うな」

図書館に向けて歩みを進めていると焦げた臭いがアイムたちの鼻をつくようになった。
屋外でバーベキューでもやっているのだろうかと、食い意地の悪いオニロは考えた。

オニロ「この方向は…wiki図書館のほうだね。行ってみようか」

??「そこをどいてくれッ!」

突然、一人の兵士が通路から飛び出してきて、オニロと肩をぶつけた。オニロはよろけ、その兵士も壁に背を付ける形になった。
その兵士は額に大粒の汗を浮かべ、肩で息をするほどに呼吸が乱れていた。

オニロ「あ、すみませ……」

アイム「なッ!!」

社長「うっっ!!」

709 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その7:2016/09/04 01:06:23.451 ID:3CVJ9V6wo
その兵士は、シルクハットに蒼いケープを着用していたが、なんと顔が社長と瓜二つだった。
正確には、現代の社長の顔には常にモザイクがかかっているため、顔のシルエット像が社長と酷似していた。

??「どうした。俺の顔になにか付いてるか?」

オニロ「いや、あの、その…」

社長「 」

兵士の問いに、オニロは返答につまりアイムは口をあんぐりと開け絶句している。社長は全身がバグまみれのためなにがなんだかわからない。

スリッパ「…久しいな、タッピー社長。いや、アンチきのこマシンと呼ぶべきかな」

紅茶淹れエスパータッピー社長「ん?スリッパさんじゃん。圧倒的再会…!…なんか老けた?」

スリッパ「これだけ苦労すればな。まぁお前から見たら、さしずめ私は浦島太郎といったところかな」

紅茶淹れエスパータッピー社長「?ん、おいそこのあなた、もしかして――」

タッピー社長が社長を指差すと、いまの社長とは似つかないツカツカとした確かな足取りで、本人に近づいた。

710 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その8:2016/09/04 01:08:30.595 ID:3CVJ9V6wo
社長「アッアアッヤバイ。。あ、あ、あワお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!あヅファイヤ〜〜!!」

アイム「うるせえ真っ二つに斬り伏せるぞ」

紅茶淹れエスパータッピー社長「なんだなんだおかしな兵士だ。そうだッ!こうしてはいられないッ!図書館が大変なんだッ!」

タッピー社長は社長本人たちには目もくれず、再び走りだした。

紅茶淹れエスパータッピー社長「すぐに消火…!迅速な消火…!そして無事に鎮火させたら、蒼星石に踏まれたい!!!」

タッピー社長は風のように現れ、風のように去っていった。

竹内「あれが過去の社長か。懐かしいのう」

アイム「お前にもバグってない時期なんてあったんだなあ。『どうした、俺の顔になにか付いてるか?』だってよ!」

社長「やめてね。」

アイムはここぞとばかりにニヤニヤ笑いながらバカにする。
当の社長は全身を縮こまらせ、バグの海と同化した。

711 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その9:2016/09/04 01:13:24.464 ID:3CVJ9V6wo
場の空気が二人のやり取りで緩む中、オニロは周りから離れ独り思案していた。
タッピー社長の顔を見るのは初めてではない。重ねあわせていたのだ。集計班が失踪した直後の社長の顔と――


―― たけのこ軍 オニロ「あの……社長……ですよね?大丈夫ですか?」
―― 社長の存在がバグっていないのである。いつもは、顔だけでなく全身バグまみれの社長が、
―― 今はまるで獲物に狙われた子鹿のように全身を震わせ、悲しみ、際限ないほどに“恐怖”している。


バグっていない顔が、タッピー社長と全く同じだった。やはりタッピー社長は現代の社長と同一人物であることは間違いないと、オニロは確信した。
同時にふとした疑問が湧き上がる。では、なぜ今の彼はバグっているのだろうか。

彼がバグに虜になったから?
蒼星石よりもバグを選んだからバグろうとしている?


それとも、【何かを隠すために】敢えてバグっているとしたら?


バグの特徴はその難解さと理解者の少なさにある。バグれば誰からも相手にしてもらえなくなる。
もし、敢えて誰からも相手にされないために、【疑われないために】、社長がバグるという選択をしているとしたら――

スリッパ「それよりも、タッピー社長の後を追うぞ。wiki図書館の方向で何か異変が起きているようだ」

アイム「『消火』なんて言葉を使ってたな、嫌な予感がする。急ごうッ」

スリッパの一言に、オニロは急激に意識を現実に戻した。社長もいつもの調子を取り戻したのか多種多様なバグの表情を見せている。
考えすぎだったのだろうか、とオニロは自らの懸念を半ば払拭させた。こうして6名はすぐにwiki図書館に急いだのだった。


712 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その10:2016/09/04 01:19:46.084 ID:3CVJ9V6wo
【K.N.C47年 wiki図書館付近】

図書館があるべき場所には、烈火の如く燃える炎が居座り、オニロ達を出迎えた。
澄んだ夜空に、建物を飲み込む赤い炎はよく映えた。

この時代のwiki図書館はオニロ達が思っている以上に会議所に隣接していた。
そもそも図書館の位置する場所が現代とは異なっていた。初代wiki図書館は、木造の建屋で存在感を放っていた。
ただ、その端然たる図書館は、口を大きく開けた獄炎に為す術なく、無残にも激しく燃え盛っていた。

アイム「こ、これは火事なんてレベルじゃあねえぞッ!」

竹内「ほほう、ここでBBQ大会をぉ」

オニロ「まさか…これが…ここが、【K.N.C47年】!?」

オニロは過去の会話、そして自らが読み漁った大戦年表を記憶の隅から引っ張った。

━━━━
━━

―― 冒険書の保存状況は酷いものだった。四隅についている銀の留め具は原型を留めないほどに溶けて形を変え
―― 本にこびりつき、金で刻印されていただろう表紙の文字・ロゴはススや埃ですっかりと隠れてしまっている。

―― きのこ軍 アイム「なんでそんな汚えんだよ…」

―― たけのこ軍 加古川「留め具や金箔が溶けているしススばかりだし、過去に火災にでも見舞われた本なのかね?」

━━
━━━━
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

713 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その11:2016/09/04 01:22:03.039 ID:3CVJ9V6wo
オニロは、編纂室で読んだ大戦年表のK.N.C47年の項を思い出し、他の5名にすぐさま事実を伝えた。

アイム「それが本当だとすると、ここにいたら危険じゃねえか?」

オニロ「危険どころの話じゃないよ!すぐに火の手を消さないとッ!」

アイム「待て。ここでオレたちがすぐに火を消して全焼を防いだら、K.N.C180年にある二代目図書館はどうなる?
重大な歴史改変で周りの兵士を多く巻き込んじまうぞ」

オニロ「だったら、この状況を見過ごせっていうの!」

社長「ふたりとも、あぶないあひゃよ!!」

突如、図書館を包んでいた炎の一部が龍の頭を司り、オニロとアイムに襲いかかってきた。
すんでのところで二人は後ろに下がり難を避けたものの、龍の炎は再び図書館を飲み込まんと戻っていった。

スリッパ「これは一体どういうことだ!」

オニロ「この炎の形、まさか、炎の流れからして…みんな、ついてきてッ!気になることがあるんだッ!」

アイム「お、おい!ったく、オニロの野郎、普段と違ってこういう時はやけに強引だな」

頭を掻きながら、オニロとアイムたちは図書館の奥――二代目図書館の位置する場所――へと急いだ。


714 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その12:2016/09/04 01:26:05.501 ID:3CVJ9V6wo
【K.N.C47年 初代wiki図書館付近】

オニロ「やっぱり…これ、魔法の炎だよ。それも、すごく強力なね」

図書館の裏手に回るとそこには、光を放つ魔法陣が描かれていた。
そして、その魔法陣からは大量の炎渦が創られては図書館へと向かっていっていたのである。

オニロ「前に師匠が教えてくれたんだ。欺瞞としての魔法がある、と。龍の炎が襲いかかってきたのはおそらく近づけさせたくないための防衛行動だろう。
すごい魔法力だよ」

社長「ああ、なんて憂鬱なんだろう」

アイム「これじゃあ誰かが人為的に図書館を燃やしたってことじゃねえかッ!」

スリッパ「wiki図書館は自然発生の火災で消失していたと聞いていたが。大きな間違いだったようだな」


  ―― コツッ

オニロ「すぐに消そうッ!みんな、下がっててッ!この魔方陣を消すよ」

アイム「だから待てと言ってるだろう。ここで火を消したら、重大な歴史改変をしちまうかもしれないんだぞ」

  ―― コツッ


715 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その13:2016/09/04 01:29:19.382 ID:3CVJ9V6wo
オニロ「目の前で刻々と起こっている悪意の連鎖を、アイムは見逃せっていうのかい!?」

アイム「悔しいが、そのとおりだ。もし仮に初代wiki図書館消失という歴史を改変すれば、二代目wiki図書館は存在意義を失う。
そうなるとどうなる?重大な歴史改変には手を下さない、それが、【観測者】たるオレたちの務めだ」

 ―― コツッ

スリッパ「二人とも落ち着け。オニロ君、これがDBやスクリプトの仕業であるという保証はあるか?」

社長「ジ→す」

オニロ「DBの歴史改変の前に、wiki図書館が全焼したという文献は読みました。
目の前で起きていることは史実通りです。図書館消失に際し、初代図書館長も姿を消し――」


                    ―― コツッ


その瞬間、オニロたちの周りの全ての時間が静止した。
燃え盛る業火音、朽ちる木々の擦れる音。
決して4名の耳に届くはずのない兵士の刻む足音が、まるでゆっくりと心臓のビートと連動するように、全員の頭のなかに“響き渡った”。



     ―― コツッ


                    ―― コツッ 

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716 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 必然編その14:2016/09/04 01:37:02.937 ID:3CVJ9V6wo
オニロたちの背後で、静かに足音が止まった。全員が背後の音の主へ向かい振り返る。
兵士はすらりとした全身を紅い炎に包んでいたが、まるでベールを脱ぐように、炎は消え失せその姿が次第に顕となった。
一目見ても、その兵士が目の前の火災に関わりがあるだろうことは容易に想像できた。

オニロは集計班とのやり取りを思い出した。


―― オニロ「そういえば、参謀と山本さんの前の初代図書館長は一体誰なんでしょうか?」

―― 集計班「…彼は最後まで沈黙であり続けた」

―― オニロ「え?」

―― 集計班「我々はその沈黙から多くを学び―」




          ―― 同時に重大なものを失った ――




その名は――



オニロ「あなたは、無口さんッ、ですねッ!!」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

717 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/09/04 01:38:46.953 ID:3CVJ9V6wo
今日のカード更新よ。つよそう。

http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/833/card-27.jpg

他にもいろいろと書きたいところですが、とりあえずはこんなところで。

718 名前:社長:2016/09/04 01:41:40.305 ID:PNG5mMkE0
無口さん意外と物理系!てか勝てるんすか

719 名前:たけのこ軍 791の人:2016/09/04 01:51:31.328 ID:wPO589KM0
頑張れみんな!

720 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その1:2016/12/25 23:51:19.592 ID:pQoUtWgco
火炎をまとった鎧の兵士は、燃え盛るwiki図書館を背に、オニロたちを迎えていた。

その兵士の名は無口。

きのこたけのこ大戦世界の礎を築き、wiki図書館を創設した傑物である。
両軍を言葉少なくまとめあげる力と、戦闘中では静かに敵を薙ぎ払うその姿は、【静】と【動】を兼ね備えた兵士として、かつて多くの歴史書には
必ずと言ってもいいほどその名が記録されていた。

しかし、今では無口の名を記した歴史書のほとんどは消失し、その名を知る者はもう数少ない。
全て、目の前の初代wiki図書館消失が原因である。

自ら創り上げた書物の激しく燃え上がる様を、なぜ無口は静観していられるのか。
今や貴重な歴史家となったオニロには、不思議でならなかった。

オニロ「無口さん。どうしてwiki図書館の火を消そうとしないのですかッ!ここはあなたが創り上げた空間のはずだッ!これじゃあ、まるで――」

――あなたが、火災の”犯人”みたいじゃないですかッ!

無口にそうあってほしくないという否定した感情と、目の前で書物が焼かれることへの悲壮感。
会議所兵士と歴史家の二面の顔を持つオニロならではの葛藤だった。


721 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その2:2016/12/25 23:54:13.400 ID:pQoUtWgco
しかし、全ての言葉を紡ぎ終える前に、オニロの身体は宙を舞った。
一瞬の斬撃。
オニロが立っていた場所には、既に無口が居た。
しかし無口の移動を、剣が振るわれた速さを誰も追うことができなかった。

アイム「オニロッ!」

オニロ「ぐッ!大丈夫だよッ!『わたパチガード』」

事前に展開していた『スーパーカップバリア』のお陰で、オニロは空中へ飛ばされたものの外的な傷はほとんどなかった。
そして、わたパチに包まれ、何かが弾けるような小さな炸裂音とともに、オニロは夜の空に溶けて消えてしまった。

無口「…」

そんなオニロは気にもせずに、無口がアイムたちの方へ顔を向ける。
言葉がなくても、アイムたちには無口の言葉が理解できた。

――次はお前たちだ、と。

アイムは咄嗟に口を開き、口汚い言葉で無口に揺さぶりをかけようとした。
だがしかし、無口がゆっくりと剣を振り上げた瞬間、アイムは肌で無口のオーラを感じた。
無口は確実にこの場を無言で支配していた。

722 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その3:2016/12/25 23:56:27.792 ID:pQoUtWgco
スリッパ「くそッ、奴は語る言葉を持たない。二発目がくるぞ、サラッ!」

スリッパの言葉に呼応し、背後に控えていたサラが一行の前に移動し防護壁を張る。

無口が剣を振るう。
空間を斬るように、大地が震えるほどの風切り音をアイムは聞いた。
いともたやすく防護壁は破られ、全員は地面に叩きつけられた。

スリッパ「まさか、サラの魔法が破られるなんて…」

無口は、地面に転がる一行を気にすることなく、眼前のwiki図書館に目を向けた。
木造の建物はよく燃える。ただ、無口はじっと燃え盛る炎を見つめていた。

アイム「どうしてアンタ、ただ見ているだけなんだッ!あんたがこの図書館を創り上げたんじゃないのかよッ!」

無口は答えず、ただwiki図書館一点だけを見つめていた。
鎧に隠れて表情は窺い知れない。しかし、その様子に儚げなものはない。
どこか飄々としている。まるで業務のように観察する彼の冷徹さを、アイムは感じ取った。

アイム「このまま終わってたまるかッ!社長、援護しろッ!」

アイムはすっくと立ち上がった。同じように、社長も立ち上がる。

社長「いいぜ。」

スリッパ「待てッ!ここで無口さんを倒したら歴史はどうなるんだッ!」


723 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その4:2016/12/25 23:59:15.338 ID:pQoUtWgco
アイム「安心しろ、ちょっと痛めつけてその後に消火活動に参加させてやるんだよ」

アイムの言葉に、倒れ伏したままのスリッパはやれやれと呟いた。

アイム「おい無口さんッ!あんたが放火魔だろうが、そんなことは関係ない。オレたちをコケにしたツケ、払ってもらうぜッ!」

社長「『おっと 社長が ぶんれいね。』」

社長はその場で詠唱を始めた。途端に、彼の周りに数字の0が表れ出す。社長特有の魔法陣だ。
そして、その場で飛び上がったアイムの周りに呼応するように、瞬く間におびただしい数のバグった社長が現れた。

社長1「あワお〜」

社長2「さあ、吹くわよ!」

社長3「スピード感与えちゃったかな。」

社長4「まけたらバツゲームですよ!」

社長5「だいじょうぶでーす。」


スリッパ「地獄絵図だな…」

あっという間に空を埋め尽くした数千体の社長とその中に埋もれたアイムが、一斉に無口へ向かって一様に突撃を始めた。


724 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その5:2016/12/26 00:03:22.312 ID:mmb/Z5VIo
無口「…」

量産型社長「ループを勝ち抜くぞ!」

量産型社長「しねばいいんでしょう?」

量産型社長「ンッンッン ひさしぶりだミ」

何体もの社長が突撃しては、見事な無口の剣さばきで斬り伏せられ消滅していく。
空中に浮遊したままの社長群はその数の多さからか、順番待ちをしながら無口に突撃する始末。
異様な緊張感のはずなのに、どこか締りがなかった。
さらに社長たちのバグ音声がうるさすぎて、まるで無口の周りは祭の縁日のような賑わいっぷりとなってしまっている。

社長「やはり16×16のドットアイコン群では、無口さんには立ち向かえないのか…」

遠くから事態の推移を見つめる社長は、この瞬間もドット絵アイコン社長を召喚し続けていた。

スリッパ「というか、あの中にアイムが混じってるんだよな?
全部、ダミーアイコンをアイムにしておかないとすぐに無口さんにバレるんじゃないのか?」

社長「あっ」

スリッパ「おめえはよお、考えが甘いんだよ!」


725 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その6:2016/12/26 00:17:25.033 ID:mmb/Z5VIo
アイム「おらァ!無口さん、覚悟ッ!」

社長の中に混じったアイムの見極めは、無口にとって容易いことだった。
一人だけ異色を放つ緑のバンダナを巻いていたら、ピンクまみれの社長アイコンの中では嫌でも目立つものである。

無口「…」

無口は流れるような所作でアイムの剣を払った。

アイム「クソッ、戦闘術・魂奥義『ストーンエッジ』!!」

アイムから放たれる鋭利な石弾も難なく無口は避け、そしてアイムの一瞬の隙を逃さず――無慈悲にも一突きした。

アイム「ガッッッ!!」

社長「アイムッ!!」


726 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その7:2016/12/26 00:33:47.760 ID:mmb/Z5VIo
アイムの腹部を、無口の大剣が貫通していた。
アイムの身体は無口の大剣に無残にも支えられ、宙に浮いている。
苦痛の表情に歪むアイム。無口は静かに見つめている。

だらりとアイムの身体が伸びる。

無口は大剣を振り払おうと、ゆっくりと腕を動かそうとした。
大剣でアイムを薙ぎ払えば、その瞬間にアイムの生命も断ち切ることとなる。


―― いざという時に、俺はまた何の力にもなれないのか。

アイムの様子を間近で見ていたその兵士は、消え行くアイムの生命を見ながら、ただ立ちすくむことしかできなかった。

―― 預言書通りにはさせない。あの人から、そう使命を受けたはずなのにこれでは…これでは。

震える膝をむち打ち、一歩。また一歩と無口とアイムの下へ歩き始めるも、とても遅く。
一歩一歩がアイムの拍動と連動するように、その足取りは次第に止まる程遅くなって、再びその兵士は立ち尽くしてしまった。

―― 違う、預言書など関係ない。俺は…俺は目の前の友人すら救えないというのか。
    これではあの時と同じじゃないか。

―― こんなことなら、あの人と一緒に消えてしまったほうがよかった…

死は一瞬で訪れる。
重要で受け止めきれないほどの事実の前に、全員は呆然と無口の死への乱舞を見届けることしかできなかった。
周りにいる誰もがアイムの死を予感した。


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727 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 突発戦闘編その8:2016/12/26 00:40:48.652 ID:mmb/Z5VIo
全員「!!」

頭を垂れていたはずのアイムは、勢い良く両手で大剣を掴んだ。
そして、脂汗と涙にまみれた顔を無口に向け、口角をくっとつり上げた。

アイム「――ようやく捕まえたッ」

無口「!」

瞬間、無口の足元から生えた蔦が腕と身体に勢い良く巻き付き、彼の自由を奪った。


アイム「誰がオレを“本命”だと言った?“頼む、やれッ”!!!」


無口の背後で、ポンとワタパチの弾ける音が響いた。

オニロ「秘策は最後まで隠し持っておくことさ。

     『ネギ流星群』ッ!!!!」

無口の頭上から火を吹いた大量のネギが降り注ぎ、勢い良く爆ぜた。

師である791から教わった窮地を打開する必殺技が、手加減無用の威力で発せられたのである。

爆炎、爆風、そしてそれらによって起こる砂煙はまるで生命の咆哮だといわんばかりに、一瞬で無口を、そしてアイムたちを包み込んだ。

728 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち:2016/12/26 00:41:03.475 ID:mmb/Z5VIo
年内にもう一度くらい更新します…おそらく

729 名前:社長:2016/12/26 00:44:14.948 ID:u79B.57.0
乙。そして予想通りSKさんの片割れはたぶん私ですね・・・

730 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その1:2017/01/09 01:00:12.243 ID:Lh4qoWnwo
強烈な爆風がスリッパたちを襲った。先程まで無口が立っていた場所は激しい爆炎が巻き起こり、その様子は窺い知れない。

社長「やるねえ!」

スリッパ「それはフラグじゃないのか…」

オニロ「アイムッ!アイムは無事なのッ!」

アイム「あまり耳元で騒ぐんじゃねえ…傷口が広がるだろ」

オニロの足元でアイムは蹲って転がっていた。喋るたびに激痛を伴うのか、息は上がり苦しそうな声色だ。
ネギ流星群が展開される寸前、アイムは自らを貫いていた剣先を瞬時に切断し、後方へ退避し、ネギ流星群を避けていたのである。

アイム「“チームプレイ”…ようやくわかった気がするぜ、魂」

オニロ「喋っちゃダメだ。傷口を塞がないと…」

スリッパ「しかし、お前の師匠譲りとはいえ、ネギ流星群はやりすぎじゃないのか。これじゃあ無口さんもろとも…」

オニロ「いや。あの人が――」

アイム「――この程度でくたばるわけないだろう?」


731 名前:Chapter3.無秩序な追跡者たち 会話編その2:2017/01/09 01:19:04.988 ID:Lh4qoWnwo
――コツ
――コツ

足音が響く。

無口「…」

スリッパ「正真正銘の化物だな。あの魔法を喰らって、まだ元気でいられるなんてな」

オニロ「まずい…もう魔法力が残ってないよ…」

アイム「お前の師匠はネギ連発できるんだろう。真似してみせろよ」

オニロ「ボクをあんなバケモ…ゴホッ、英傑と一緒にしないでよ」

無口は腰を深く沈め、大剣を地上と水平になるように、右手を前に突き出すような突きの構えを取った。
その無口の動きに呼応するように、大剣の剣先が機械的に変形し、マスケット銃のような大きな銃口へ変わった。

スリッパ「サラ!」

社長「もうおしまいだあ!」

サラが再び防護壁を貼ろうとするも、無口の剣先の銃口から放たれた白い光束は社長、スリッパそしてサラに一直線に向かい、三人の身体は遠くに投げ飛ばされた。

オニロ「みんなッ!」

スリッパ「立てないが大丈夫だ…だが肋は何本か折れたな…」

竹内「ワシに任せろ!」
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