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S-N-O The upheaval of iteration

1 名前:SNO:2020/08/14(金) 23:03:59.555 ID:nQ7ybU.E0
数多くの国が生み出す世界。
かつては個々の国が独自に作り上げた文化は、やがて国々が混じり合うことで発展と変容を遂げた。
やがて……世界の理は、とある研究者によって見出されることになる。
きのことたけのこのような、二つの陣営が争うことによって世界が発展する物理法則を……。

初めは懐疑的に見られていたその理論は、ある出来事を経て証明されることになり、
この物理法則は、世界を発展する礎となった。

――その法則をコントロールする組織は【会議所】と呼ばれ、
――その法則をコントロールする行事は【大戦】と呼ばれていた。

【大戦】では、人々が兵士となり日々戦いを続け…【会議所】では、さらなる世界の発展のための活動が行われていた。
――また、【大戦】の内外で、様々な思惑が働いていた。すべてを把握することができないほどに……。

これは、世界に翻弄されながらも、真実に向かう4人の女性の物語。

    目覚めた乙女たちの見る世界は――光か、陰か、あるいはその狭間か。
    様々な要素が複雑に織り成す世界で、彼女らが辿り着くのは実か虚か。
    交差する陰陽の中で、今乙女たちが目覚める……。

ワタシガ               見ルノハ
    真 偽 ト
              虚 実 ノ
          世 界

201 名前:SNO:2020/09/06(日) 22:42:41.495 ID:OkrZNOqs0
魔王様の強いところが出てなくね?

202 名前:きのこ軍:2020/09/06(日) 22:43:12.680 ID:tngxbY9Ao
魂ちゃんがすごいイケメン強キャラになってる

203 名前:Route:A-8:2020/09/09(水) 22:21:53.804 ID:YOyIm8lo0
Route:A

                 2013/4/15(Mon)
                   月齢:4.7
                    Chapter8

204 名前:Route:A-8 trickster:2020/09/09(水) 22:25:36.629 ID:YOyIm8lo0
――――――。

月曜日……オレは、筍魂の店――フィリップ・パブを訪れた。
昼食のついでに――戦闘術魂の鍛錬をテストしてみる、という算段だ。

筍魂
「おお、よく来たな――飯にしてから、話でもしよう
 今日は俺のおごりで構わんぞ、光栄に思えっ」

乙海
「……ありがとうございます」

筍魂は、機嫌よくオレを出迎えてくれた。
オレはその張り切った様子にすこしげんなりしながら謝礼の意を伝えた。

フィン
「久しぶりに来たかと思えば――あなた、戦闘術魂に挑戦するのねぇ」

対照的に、フィンは、この前の純粋でにこやかなものとは違い、訝し気な顔でじろじろとオレの顔を見ていた。


205 名前:Route:A-8 trickster:2020/09/09(水) 22:30:04.202 ID:YOyIm8lo0
フィン
「言っておくけど、アタシが先輩だからね」

出来上がった料理を運びながらも、フィンはえへんと胸を張りながら言った。
ほかの客はいない。いたら――おそらくはこういった態度はとらないだろう。
現に初めてオレに出会ったときもそうだった。

乙海
「はぁ……」

筍魂
「まぁ、フィンは一応先に弟子にしたが――兵士ではないからな」

フィン
「うっ……アタシ、年齢足りてないからしょうがないでしょ!」

大戦は18歳以上の者が参加できる。……ということは、フィンは年下なのか。
フィンは顔を赤くしながら反論する様子を、食事を口に運びながらオレは見ていた。

筍魂
「まぁそうだが……スリッパさんも、なんで俺のところに寄越したかよくわからんし……」

乙海
「ルミナス・マネイジメントの社長が、どうしてここに……?」

運ばれた料理を食しながら、オレは素朴な疑問を投げかけた。

フィン
「そんなことは、どうでもいいでしょ?
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

206 名前:Route:A-8 trickster:2020/09/09(水) 22:33:34.231 ID:YOyIm8lo0
筍魂
「まぁ、そうだな
 今日の昼は早めに閉めるつもりだし、いつも通り客も来なさそうだしな」

フィン
「2桁来ればいい方の店に居たら、アタシ暇で死にそうなんだけど……」

――そういえば、オレが来た時も……客はいなかった気がする。

筍魂
「これは趣味だからいいんだよ――それに、退屈に耐えるのも精神修行の一つだ」

フィン
「〜〜〜っ」

不満げな感情を隠そうともしないフィンに対し、筍魂は平然とした表情をしていた。
……この男は、フィンとは違って、奥が読めない。まるで先の見えない暗がりのようだ。

乙海
「ごちそうさまでした」

ややあって、オレは食事を終えた。
味は、前回同様――見たことのない料理ながらも、食が進み、すぐに完食できた。


207 名前:Route:A-8 trickster:2020/09/09(水) 22:35:10.081 ID:YOyIm8lo0
筍魂
「さて……店は閉めるか」

フィンが皿洗いをしている間に、筍魂はカーテンやらなにやらを閉め始め、表の看板には店を閉めたことを示す看板を立てていた。
オレは……その様子を、椅子に座りながら見るだけ。何か手伝った方がいいのかもしれないが――。

フィン
「あんた……あのオッサンは、結構適当だから覚悟した方がいいわよ」

流し台の前に居たフィンが、視線だけこちらに向けて、本人に聞こえないように小声で言った。

筍魂
「はっはっは……なんせ俺は会議所の訓練もサボったりしているからなぁ!」

――しかし、筍魂は笑いながら、胸を張って答えた。
内容は、胸を張るべきかは分からないが……。


208 名前:Route:A-8 trickster:2020/09/09(水) 22:35:39.810 ID:YOyIm8lo0
フィン
「げっ」

筍魂
「なに――誹謗中傷じゃない限り俺は気にせん
 ま、地獄耳なのは伝えたほうがいいけどな」

気まずそうなフィンに対して、筍魂は気にしたそぶりも見せずに答えた。
余裕綽々な態度……それは己の内面を見せつけないための仮面なのだろうか……?

オレは、改めて¢の言葉を思い出していた。

¢
「――人は、みんな仮面をかぶっているんだ
 ぼくも、エースという仮面をかぶって、優秀な人間として見られているが――その中身――性格はこういうものだぞ?」

その内面……それはまったくわからない。
わからないが、オレは戦闘術魂をこれから学ぶことに違いはないのだ……。

209 名前:SNO:2020/09/09(水) 22:36:08.513 ID:YOyIm8lo0
みんなのヒロインは清楚かと思ったら意外と毒を吐くタイプ?でした

210 名前:きのこ軍:2020/09/10(木) 23:10:24.962 ID:EFvf57pko
現実のフィンはまるで言葉が通じなかったというのに…

211 名前:Route:A-8 tactics "sprirt":2020/09/12(土) 20:38:00.252 ID:60ldZAIo0
筍魂は、店の掃除をしながらどこかから持ち出したマットを敷き始めた。

乙海
「これは……?」

フィン
「めんどぉだけど、この上で座禅を組んだりするのよ」

フィンが、胸を張りながら答えた。
――オレが年上であることは、オレが軍服を着ていることからも察していそうではある。
だからこそ、先輩風を吹かせて、アイデンティティを保っているのだろうか……?

オレは、フィンがどういった人物かも知らない。
今後も顔を合わせるかは分からないが――今後も同門の弟子として付き合うことになるだろうから、知っていた方がいいかもしれない。




212 名前:Route:A-8 tactics "sprirt":2020/09/12(土) 20:41:01.045 ID:60ldZAIo0
筍魂
「さて――」

筍魂は、後ろ手を組んでオレたちを見た。

筍魂
「戦闘術魂――これは、かつてブルボン王朝のルーヴェラに伝わる古武術だった」

ブルボン王朝……オーガの住まうルマンド大陸の一国。ルーヴェラはその地域の一つだ。
その青い瞳と、そして男女問わず高い身長がオーガの特徴であり…筍魂の外見も、その特徴をよく反映していた。

乙海
「ブルボン王朝の武術……ということは、貴方もオーガ?」

筍魂
「ああそうだ――お前もその背の高さと、目の色はオーガと見受けると……どうなんだ?」

浮かんだ素朴な疑問の答えと、返される質問は、想定できていた。

乙海
「母が――オーガの血を引いている」

――そう、幼いころに亡くなった母親も、ブルボン王朝出身だったのだ。


213 名前:Route:A-8 tactics "sprirt":2020/09/12(土) 20:44:29.177 ID:60ldZAIo0
筍魂
「ほー、それならこの戦闘術魂は合ってるかもしれないな」

感心したように、筍魂は頷いた。

フィン
「……アンタ、オッサン側だったの?エルフのアタシが仲間はずれみたいじゃない」

筍魂
「フフフ、性別は同じだろう……それに、素質があるかなんてまだ見てないぞ」

そして、オレに突っかかるフィンと……それを諫める筍魂。
二人は、師弟というよりは、親戚関係――例えるならば、叔父と姪のように――見えた。
そのやり取りは、オレが親父とはしたとはない類の会話で……どこか、オレに足りないものがそこにあるようにも思えた。

筍魂
「……話は脱線したが、戦闘術魂は云わば精神と肉体の完全な融合を成し遂げるもの
 自分の中にある力の扱い方を引き出すことができる武術だ……」

自信満々に、筍魂は語った。

214 名前:Route:A-8 tactics "sprirt":2020/09/12(土) 20:47:52.235 ID:60ldZAIo0
乙海
「……?」

複雑で、難解な言葉を並び建てられ……オレの脳は、疑問符で頭を埋めていた。

フィン
「難しいこと言ってるようだけど、言い直せば……
 メイジでない人間でも、メイジのように魔力を操れる――ってことよ」

そんなオレに、フィンが答えをくれた。
それは端的で、オレの中にあった疑問が次々と氷解した。

……なるほど、もともと体内に魔力を多く持つ――それがメイジの定義の一つだ。
しかし、魔力自体はどんな生物や物質の中にも存在している……魔力の閉じ込められた特殊な結晶もあることもそれを裏付けている。
だからこそ、それを操ることができるというもう一つの定義によって、メイジという存在が決定されるのだ。

とはいえ――魔力を操ることなら、誰でも行うことができる。
それを証拠に、魔力を動力とした器具も多い。伝線から魔力を流すシステムも存在している。

筍魂
「まぁ、そういうことだ――大戦で見せた攻撃も、微弱魔力を操ったということだな」

筍魂は、自慢げに、したり顔をして答えた。


215 名前:Route:A-8 tactics :2020/09/12(土) 20:52:54.026 ID:60ldZAIo0
乙海
「それと、メンタル・トレーニングがどう繋がるのかが分からない……」

しかし、新たな疑問は生まれた。

筍魂
「ふっ、メイジが魔力を操るためには精神的な修行が必要なんだ
 当然、この武術でもしている――まぁ、メイジのものと趣は多少違うかもしれないが」

乙海
「……なるほど」

――メイジについて、オレは表在的な知識はあれど深い部分まではオレは理解していなかった。
……しかし、筍魂の言葉と新人教育課程や、世間一般的な知識が絡み合い、すとんと腑に落ちた。

筍魂
「さて――戦闘術魂の素晴らしさを解説したところで……
 とりあえず、今から鍛錬するか!」

そんなオレの表情を読んでか、筍魂は張り切って言葉を紡いだ。

フィン
「うるさいなぁ――言われなくてもわかってるけど、その無駄にうるさいのはやめて……」

乙海
「はぁ」

――そして、どこか冷めたフィンと……様子を伺うオレの答えが同時に紡がれた。
どちらとも、その張り切った感情にうんざりしている……そういった点では、共通していた。

216 名前:Route:A-8 meditation:2020/09/12(土) 20:58:27.133 ID:60ldZAIo0
筍魂
「戦闘術魂は、精神を重要視する――
 戦闘術魂は、今から示す言葉が全てだ」

筍魂
「無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する」

ニッと歯を見せながら、筍魂は人差し指をチッチッと振りながら言った。

乙海
「……?」

――真剣な顔つきで語る筍魂の言葉の意味が、どうしても…掴めなかった。
なんだ――なにが言いたいんだ……。
どういう意味だろうか……オレが、誰から見てもわかるぐらいに悩んでいた。
今までも、わからないことに直面したことはあったが――この謎かけはオレにとって一番の難問だった。

フィン
「アンタわからないんだ――ふふっ、うふふっ」

そんなオレを見ながら、フィンはしたり顔で笑っていた。

乙海
「………フィンは、分かるのか?」

オレは、ゆっくりと、絞り出す声でフィンに訊ねた。

217 名前:Route:A-8 meditation:2020/09/12(土) 21:01:30.773 ID:60ldZAIo0
フィン
「そうよっ、なんせ先輩だからねぇ
 年下だけどあんたより学んでるからねぇ」

胸を張るフィン。……小さな身体を大きく見せて自慢しているのは虚勢を張っているのか、それとも自信の裏付けなのか……。

筍魂
「フィン……確かにお前は理解はできてるが、アウトプットがまだまだだからな」

筍魂は、ニヤリとしながら淡々と指摘した。

フィン
「うっ!」

その言葉は図星なのか、フィンは目を丸くしてぴくりと一瞬跳ねた。
――その光景から察するに、その言葉の意味にたどり着くことと身に着けることは完全なイコールではないようだ。

筍魂
「まぁ、乙海はこの意味を考えることが一つ目の鍛錬で――もう一つは、その意味を自分に使えるかってことだ」

乙海
「ふむ……」


218 名前:Route:A-8 meditation:2020/09/12(土) 21:05:39.361 ID:60ldZAIo0
筍魂
「そのためにも――精神を集中させる瞑想は大切だ
 瞑想の中で言葉の意味を考え――そして実行することが鍛錬の一つだ」

筍魂の言葉は鋼のようにしっかりとした説得力があった。
…その重みのある言葉は、フィンもうなずくだけ……オレは、この言葉の意味を知らなければならないようだ。

それから、マットの上で座禅を組み、オレは瞑想を始めた……。

目を瞑り、極力当たりの音を聞かないように――意識の中にトランスした。

……はじめは、思い出が頭を駆け巡った。
小学校――徐々に背が高くなるオレ――人魚の少女との出会い――
中学校――オレの力だけで、生活していく日々――父とはたまに会うぐらいで――
高等学校――射撃部に入り、練習し――全国大会まで進む光景――。

けれど、そのレパートリーがなくなるにつれ……オレが見る光景は、奥深くに沈んでいった……。

心の中で光景が浮かぶ――それはオレ自身がどこかに居る光景だ。
それは暗黒――宇宙の中に――ぽつんと佇むオレだった。


219 名前:Route:A-8 meditation:2020/09/12(土) 21:06:00.945 ID:60ldZAIo0
オレは――どこにいる?
オレの見る世界は、すべて――なのだろうか――。

その闇の中は、世界すべてのようにも見えるが――世界の中の一部のような気もする。
遠くで見える瞬きもまた、世界を構成するものだから……。

それでは、オレは一体、世界の中でどういう存在なのだ……?
オレは光なのか闇なのか――正なのか負なのか――その闇を漂うオレにはわからない。

そもそも――オレは何を求めている?
勝利か?あるいは夢幻の一時か?

オレは……。
……………………………。

オレ
「―――――!」

乙海
「!」

――気が付くと、オレはトランス状態から戻っていた。

220 名前:Route:A-8 meditation:2020/09/12(土) 21:08:37.195 ID:60ldZAIo0
何か……掴んだような気もするが……。

筍魂
「……その顔、少しは真理に近づいた顔だな」

筍魂は、したり顔でオレを見ていた。

フィン
「へー、このおっさんが言うからにはセンスはあるのね……」

フィンは、不満そうな顔をしながらも、認めるような発言をしていた。

筍魂
「今後も瞑想を続ければ……たどり着くんじゃないか?
 会議所での作業の割り振りがなかったらここへ来い、どうせ客なんてほぼいないからなぁ、はっはっは……」

筍魂は、あまり誇るべきではないことを誇らしそうに語っていた。
……やはり、この男は、底が読めない。
そんなことを思っていながら、オレはただそこに佇んでいた。

221 名前:SNO:2020/09/12(土) 21:09:00.286 ID:60ldZAIo0
意外!それはWARSのパクリ!

222 名前:きのこ軍:2020/09/13(日) 09:39:08.185 ID:Xqoo728so
うれしすありがとう 習得がんばれ

223 名前:Route:A-9:2020/09/15(火) 22:43:34.264 ID:lPQrte8s0
Route:A

                 2013/4/20(Sat)
                   月齢:9.7
                    Chapter9

224 名前:Route:A-9 church:2020/09/15(火) 22:45:10.578 ID:lPQrte8s0
――――――。
あれから、5日が経った。
同時にオレにとって三度目の大戦の日でもあった。

オレは、手が空いているときはひたすら瞑想を続けていた。
……瞑想するたび、何か掴みそうになりながらも……その決定的な部分までには触れられない。
なんとも歯痒く、消化不良な日々を送っていた。

筍魂
「この分だと……真理は、大戦で掴めるかもしれんな」

乙海
「……はぁ」

……昨日、修行を終えたオレに、筍魂はそう言った。
心なしか嬉しそうにも見えた。表情と声色からは、それを伺わせなかったが……。
どことなく、彼の醸し出す雰囲気が、そう言っているように思えた。


225 名前:Route:A-9 church:2020/09/15(火) 22:45:48.946 ID:lPQrte8s0
フィン
「アタシは大戦じゃなくても、真理にたどり着いたけどね」

その横で、フィンは誇らしげにしたり顔をしていた。

筍魂
「……まぁ、真理の理解と実戦での発揮は全然違うがな」

フィン
「うぅぅ……っ」

その横で、筍魂は横やりを入れて、フィンは悔しそうに顔を赤くしながらぶるぶると震えていた。
やはり二人は、叔父と姪のようなそんな雰囲気を見せていた。

オレは――昔から、家族との付き合いが少なかった。そして、それで特に困る事もなかった。
だが……この光景を見る限りは、その体験も必要だったのだろうか……少しだけ、そう感じていた。

……まだ、集合時間に充分早い。
オレは、これまでの出来事を思い返しながら、会議所内部にある教会を訪れていた。
なぜなら――そこには黒砂糖が常にいる場所だからだ。

黒砂糖は教会でカウンセラーのような役割を担っており、
筍魂の謎かけのヒントがないかを探りにやってきた……とういうわけだ。


226 名前:Route:A-9 church:2020/09/15(火) 22:49:46.250 ID:lPQrte8s0
黒砂糖
「乙海――おはよう」

神父装束に身を包んだ黒砂糖が、オレに短く挨拶を交わした。

黒砂糖
「その様子からするに、悩んでる――ってところのようだ
 まぁ、この衣装は単なる趣味で、私は無神論者であることは先に言っておこう
 カウンセラーの役割であることは確かだけれど」

――その立場にありながらも責任感を半分放棄している部分が、筍魂のように思えた。

乙海
「……戦闘術魂の謎かけに、今悩んでいる
 たどり着けそうでたどり着けない――筍魂は、大戦で辿り着けるとは言っていたが……たどり着けるのかが少し不安だ」

黒砂糖
「戦闘術魂――そういえば、乙海の空き時間はいつもあのパブに行っていたな」

納得したように、黒砂糖は何か考え事をしていた。


227 名前:Route:A-9 church:2020/09/15(火) 22:52:40.029 ID:lPQrte8s0
黒砂糖
「……大戦は実戦の一つで、毎回展開が異なる
 その特徴からいえば……謎かけの答えに辿り着ける可能性はあるだろう」

乙海
「……」

黒砂糖
「端的に言えば、無限の可能性があるのだから――答えを見つけられることには違いない」

乙海
「……なるほど、ありがとうございます」

黒砂糖
「これは完全な私の持論で、確実な答えではないが……
 ひとつの参考になったら幸いといったところ」

黒砂糖の一言は、確かにひとつの納得となってオレの中に染み渡り……大戦でその結論を見つける目標に昇華された。
オレは――答えを見つけるために今日の大戦で戦うのだ!


228 名前:Route:A-9 church:2020/09/15(火) 22:58:21.149 ID:lPQrte8s0
乙海
「……これは別件だけれど、どうして神父なのに無神論者なのかを教えてほしい」

黒砂糖
「神という概念は――全てを見、理解している存在――私はそう考えている
 我々が神と呼んでいる存在は――そうではない
 例えば、大戦の軍神だが――軍神になったからとはいえ知識が手に入るわけではない」

淡々と――しかし、確固たる自信があるのだろう、淀みなくすらすらと持論を語った。

黒砂糖
「それに――本当に神がいるのなら……すべてを知っている者が存在するのなら――
 われわれが会議所で会議する必要はないし、会議所の名も必要ない」

……きのこたけのこ大戦を運営する会議所の名前――それは、意見を出し合うことで協力することがもとになっている。
つまり――。

乙海
「ここが神ではない、すべてを知りえない者たちが集まったからできた組織だから……神はいない、ということ」

黒砂糖
「そう――あるいはすでに神は私たちに介入したくないという考えにもなるかもしれないな
 どちらにせよ、信じるのは自由だろう――社長はユリガミとかいう女神を信仰しているように」

――そういえば、あの社長という兵士はそういう人物だったと、黒砂糖の言葉でいま一度思い出した。


229 名前:Route:A-9 church:2020/09/15(火) 22:59:48.126 ID:lPQrte8s0
黒砂糖
「私が神父なのは、昔――神職に近いことをしていたから――それだけだ
 社長が語っているユリガミのほかにも――そのほかにも……恐ろしい力を秘めた剣と鏡と勾玉が存在するやら、
 この世の理は神とやらが作ったやら――そんな眉唾物の話もいろいろ聞いたりもしたな」

そして、黒砂糖は遠い眼をしながら、小さくそう呟いた。
すこし言葉が詰まったのは……何かを思い出そうとしたがゆえだろうか。

不思議と、黄昏の海岸を――人魚の少女と出会った日を思い出すときのオレに似ていると、思った。

黒砂糖
「まぁ、こんな戯言は捨て置いてほしい
 今、乙海が考えるべきことは先に相談した内容だろうから……」

そう言うと、黒砂糖は椅子に座って本を読み始めた……。

乙海
「はい」

そしてオレは小さく御辞宜をしてその場を立ち去った……。

230 名前:Route:A-9 inferiority:2020/09/15(火) 23:02:59.089 ID:lPQrte8s0
あれから、オレはストレッチをしながら集合場所――大戦場へと向かい、
大戦を待っている兵士たちの隙間で、係員の動きをじっと見ながら、真理について考えていた。
今日のルールは階級制で、階級バッヂが配られるのを待ちつつも、その手さばきを見る。

きのこ軍兵士
「ほれ、今回は二等兵=だ」

オレが思考の海に漂っているうちに、いつのまにかバッヂを受け取った。
最下級の階級バッヂを軍服につけながら、オレは考える――実戦でたどり着くべき真理を見れるのだろうか?

黒砂糖
「先ほどのこと、まだ悩んでいるのか」

その肩を、黒砂糖にぽんと叩かれた。

乙海
「……真理を見つけられるかが、まだ分からない」

黒砂糖
「……さっきも言ったが、大戦には無限の可能性があるし、きみにもその素質はあるから問題ないだろう
 焦りすぎても答えにはたどり着かないしな」

黒砂糖は、オレの肩を再びぽんと叩きながらそう答えた。


231 名前:Route:A-9 inferiority:2020/09/15(火) 23:09:56.572 ID:lPQrte8s0
集計班
「お待たせしました、ただいまより第164次きのこたけのこ大戦の準備が完了いたしました
 それにつき、定刻通り13:00から大戦を開始します……」

オレがその言葉に何か返そうとした瞬間、集計班のアナウンスに遮られた。

集計班
「ファイエルッ!」

そして……何か返す間もなく、代り映えのしない合図とともに戦いが始まった。

…………。
しかし、今回の戦いは劣勢だった。

始めはきのこ軍側が優勢だったが、参加したきのこ軍兵士とたけのこ軍兵士の割合に差があり、
ここぞとばかりに、たけのこ軍が獅子奮迅の活躍を見せた。
じわじわと、味方は徐々にやられ――気が付けば兵力差も大きくついていた。


232 名前:Route:A-9 inferiority:2020/09/15(火) 23:15:48.727 ID:lPQrte8s0
集計班
「ただいまの戦力差は、きのこ軍46%、たけのこ軍71%です」

そのアナウンスに、オレの近くに居た兵士はがくりとうなだれ、どんよりとした雰囲気になっていた。
……対照的に、スコープで見た敵は士気を高め、気持ちが昂った雰囲気……に見えた。

オレは――その状況に心は揺れなかった。
それはオレが勝利以外の目標に向かっているからなのだろうか?

黒砂糖
「……これは面倒、やろうと思えばいけるかもしれないけれど――かなり無茶が必要」

いつの間にか、黒砂糖はオレの隣に立ち言葉を紡いでいた。

黒砂糖
「この味方の不甲斐なさ――見捨ててもいいが、奥の手を使って少しでも粘ってみよう
 少なくとも乙海は動揺していないようだから、実質、きみの援護として――」

黒砂糖はちらりと周りの兵士を見やり、そしてオレに向き直って言った。

233 名前:Route:A-9 inferiority:2020/09/15(火) 23:19:09.894 ID:lPQrte8s0
その仕草は、面倒くさそうにも見えるが――黒砂糖は、指を虚空に滑らした。
……これは、何かを描いているのか?その軌跡は何らかの物体を形取り……。

そこには、きのこ軍兵士の幻影が具現化していた。

乙海
「……!」

オレは、思わず息を呑む……このような形の魔術も、あるのか……と。
同時に――海岸で絵を描いていたときの情景も脳裏に浮かんだ。

黒砂糖
「さっきも言った通り――私の隠し玉、生きている兵士ではなく、ただの分身にすぎない
 簡易的なデコイのようなもの……乙海はこれを利用しながら射撃で抵抗してほしい」

黒砂糖は、そう言いながら魔術を詠唱し始めた。
……分身を生み出しながら、さらに攻撃魔術を使おうとする……そこには圧倒的な魔術の技量のようなものが感じ取れた。

……ともかく、オレもうかうかしてはいられない。ライフルを構え、敵の様子を確認することにした……。

234 名前:Route:A-9 learning:2020/09/15(火) 23:23:34.885 ID:lPQrte8s0
乙海
「…………」

スコープ越しの敵は、勢いに乗りながら味方を次々と撃破していた。
ダメージを負い、バーボン墓場に転送されていく味方……オレは、それをただじっと見ていた。

集計班
「ただいまの戦力差は、きのこ軍29%、たけのこ軍68%です」

――――。

きのこ軍兵士
「うっ、負けたくねぇええ!!うおおーっ!」

きのこ軍兵士
「軍神様、俺らに力をーーー!」

B`Z
「待て!無駄に行くんやない!!ここは冷静に反撃を……」

その劣勢を耐えきれずに、一人、また一人と玉砕覚悟で突っ込んでは撃破される。
参謀――B`Zはその行為が愚かであると知っているようだが……周りの兵士はそうではないということか。

乙海
(見る……オレは、相手を視る)


耐えなくてはいけない――苦しくても、焦燥感が胸を包んでも……。
飛び出してどうにかしようというのは、心が乱れた愚かな行動なのだ――。


235 名前:Route:A-9 learning:2020/09/15(火) 23:24:20.321 ID:lPQrte8s0
集計班
「ただいまの戦力差は、きのこ軍22%、たけのこ軍60%です」

時間が経つごとに、きのこ軍の兵力は風前の灯火となり……一方のたけのこ軍は半分以上の兵力を残していた。
その優位な状況に、たけのこ軍の中にはどこか緩んだような雰囲気も見える……。
が、浮かれず淡々と攻撃する兵士――それこそ、筍魂や、加古川もおり、対応が難しい。

オレはその様子をスコープ越しに眺めていた。
隣で黒砂糖の作ったデコイが撃ち抜かれても、不思議と動揺はなかった。

オレの思考にはある一つの考えだけがあり――もはや、オレが狙われるかというのは意識の外に追いやられていた。
兵士が集まった全体、それが軍というグループ……。それは――無秩序の全にあたるのではないか?

いや、何も軍だけではない。……オレの住む町、あるいは会議所……それも、様々なものが集まった全だ。
……全と解釈できるものは、幅広くこの世に存在するのかもしれない……。


236 名前:Route:A-9 learning:2020/09/15(火) 23:25:42.655 ID:lPQrte8s0
――――。

集計班
「ただいまの戦力差は、きのこ軍15%、たけのこ軍58%です」

徐々に追い詰められている。このまま戦力差で押し切られる可能性も高い。
しかし――それでも、オレは冷静に戦いの推移を見る。

¢
「ぼくは何とかなっているが、相手の攻勢が激しい!
 くっ!また来た――」

……通信機越しの声も、遠ざかる。オレの思考には考えが浮かんでいた。
グループは、個々人の集まりによって構成されている……。すなわち一にあたるのではないか?

世界は一括りにして俯瞰できるが、事細かく見れば……それは無限の一の集まりではないか?

……すなわち、オレ。スコープ越しのたけのこ軍兵士の一人一人……。
少なくとも彼らは、余裕の表れか、あるいは油断か……どこか真剣味を失った表情をしている。


237 名前:Route:A-9 learning:2020/09/15(火) 23:26:11.862 ID:lPQrte8s0
乙海
「そこか――!」

オレは、何かを悟り……そして、彼らの隙を見つけた。
もはや蟷螂之斧かもしれないが……それでも、オレのなすべきことをなす!

たけのこ軍兵士
「うぁっ!?」

たけのこ軍兵士
「あがが……ッ」

油断した兵士の、意志の弱い銃の動きを、オレは読むことができた。
その銃口に、ライフルの弾丸を当て……同時に暴発させる!

集計班
「ただいまの戦力差は、きのこ軍5%、たけのこ軍43%です」

――戦局への影響はわからないが、悟りの果てに得た攻撃……。
不思議と、オレの中には何かが満たされた――そんな感覚があった。

238 名前:Route:A-9 learning:2020/09/15(火) 23:30:02.836 ID:lPQrte8s0
集計班
「きのこ軍の兵力が0%となったので、終戦となります――たけのこ軍の残兵力は32%でした――」

終戦を告げるアナウンスも、オレにとってはもはやどうでもよかった。

きのこ軍兵士
「うぅぅう……たけのこ軍、数で押すとは卑怯だぞ!」

B`Z
「落ち着くんや、きのこ軍の人を増やすために何ができるかが重要や」

きのこ軍兵士
「次回は勝つぞオラァ!練習、鍛錬、やったるぞ!」

味方は敗北したことに何らかの反応を示していたが……オレには全く持ってその感情がなかった。

黒砂糖
「乙海……何か掴んだような瞳をしている?」

黒砂糖の声に、オレは納得するように頷くだけだった。

――そう。オレは、戦いの中で真理を垣間見た……そんな感覚を受けていたのだ……。
その足掛かりを――劣勢の中の反撃で……。

この感覚を忘れないように、オレは両手を握り締めていた。

¢
「乙海も悔しいようだ……次は頑張ろう」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

239 名前:SNO:2020/09/15(火) 23:30:31.468 ID:lPQrte8s0
実際の大戦の展開まんまなので描写し大戦できのこ軍三連敗してますね・・・

240 名前:きのこ軍:2020/09/16(水) 21:52:12.010 ID:2L/.r96go
黒ちゃんマジレギュラー

241 名前:Route:A-10:2020/09/19(土) 00:01:27.980 ID:ig2Z2/yg0
Route:A

                 2013/4/26(Fri)
                   月齢:15.7
                    Chapter10

242 名前:Route:A-10 trance:2020/09/19(土) 00:03:59.013 ID:ig2Z2/yg0
――――――。

それから、6日が経過した。
大戦の中で真理のようなものが見えてもなお、オレは足しげくフィリップ・パブに通っては瞑想を続けた。

『無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する』

その言葉の意味を、心の中で探し続けた。
大戦で、垣間見た真理を、意識の中で追い求め続ける……。

その日――オレが瞑想して訪れた世界は……まったくの暗闇だった。


243 名前:Route:A-10 trance:2020/09/19(土) 00:06:40.279 ID:ig2Z2/yg0
ふと、ごぼり、とあぶくが立った。
オレは深い深い処にトランスしていた。

ここは海の底なのか――?あるいは別の場所なのか――。
塩辛い液体が全身を包む感覚を、オレの心は捉えていた。

何も見えない場所。それでも、何かの溶液に包まれていることだけはわかる。
それは体温に近い温度で、オレはその中で一人佇んでいた。

オレは……その世界そのものなのか?
いいや――違う。オレはその世界の一部のはずだ……この溶液はオレではないからだ。

しかし……世界のかけらであることに違いはない。
この世界は、オレが居て成り立つ――そういった予感を覚えたからだ。

――その暗闇に、一筋の光が差した。
……陰の世界に陽が混じり――それでも、この世界は存在している。

オレは――陰陽に交じって溶け合っている……。
流動する溶液に、オレは流され――オレは世界と融合する……。

それは――まるで――。

244 名前:Route:A-10 trance:2020/09/19(土) 00:07:28.686 ID:ig2Z2/yg0
ああ、そうか――と思う。

無秩序の全……世界はとても無秩序なものなのだ。
オレの居たこの暗闇は、光と混じり変容する――それでも、世界そのものであることに変わりはない。
……そして、その変容を続ける世界の中に、オレという個人が、一として存在している。

――その世界は、光と影に――陰陽に支配されているのだ。
そうだ。陰陽はマイナスとプラスの関係と同義だ。
例えば、大戦で劣勢の時、味方には絶望するものがいて、敵には喜ぶものが居た。

世界は陰陽で包まれ――オレはその構成された要素の一つであり――同時に、オレの行動でも陰陽を操れる。
オレが初めて参加した大戦では、オレの行動によって味方の気持ちは高まった……。
そう、オレが陰陽のうちの陽を引き出すことができたのだ……。

つまり、それこそが――。

その瞬間、オレの意識は急激に引き戻される。
溶液から投げ出された意識が、フィリップ・パブまで戻り――そして、かっとオレは目を見開いていた。

同時に、全てを掴んだ感覚が、オレにあった。

245 名前:Route:A-10 verity:2020/09/19(土) 00:09:33.040 ID:ig2Z2/yg0
筍魂は、オレの表情を見て、ニヤリと笑っていた。

筍魂
「……その顔は、ついに気が付いたか」

乙海
「おそらく……」

筍魂
「お前の考えを述べてみろ、聞いてやる」

フィン
「へー、やっといけたんだぁ、教えて教えてっ」

真剣な筍魂と、どこかからかうようなフィンの態度は対照的で――それもまた、オレが語ろうとする結論の後押しをしていた。


246 名前:Route:A-10 verity:2020/09/19(土) 00:10:17.246 ID:ig2Z2/yg0
乙海
「…………」

オレは、どうにか辿り着いた結論を頭の中で整理し――反芻する。

乙海
「『無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する』」

乙海
「無秩序の全――これは、この世界そのもの
 世界は数多の無秩序によって進行しているが故――」

筍魂
「………」

フィン
「………」

オレが語り始めると、筍魂も、フィンも真剣な表情になっていた。
……フィンもそういった態度をとるのは、正直意外だったが……オレは、話を続けた。


247 名前:Route:A-10 verity:2020/09/19(土) 00:10:57.859 ID:ig2Z2/yg0
乙海
「次に、一に帰し――これは、オレそのもの
 この世界の無秩序さは、個々の存在がかかわっている」

乙海
「例えば、オレが呼吸することによって大気の酸素と二酸化炭素のバランスが変化するが……
 秩序あるバランスがわずかに変化した無秩序になる……
 あるいは、大戦でオレの攻撃によって味方の気持ちが高まり、逆に敵の気持ちが低まるのも――そう言える」

乙海
「……それが生命力の流れに繋がる
 オレが生存するための行動――その流れだけでも、世界の理の一部に――同化することになる」

乙海
「……加えれば、そこに陰陽が絡んでいる
 光と影、影と光――この二つの概念は切っても切れない関係で、個々が複雑に交じり合って世界を作っている」

乙海
「これが、オレの出した、結論……」

――どうにか、オレのたどり着いた結論を述べることができた。
すらすらと――流暢に語ることができたが、緊張のためか、喉がからからになっていた。

思わずオレはよろけそうになり、足に力を込めてなんとか耐える……。

248 名前:Route:A-10 verity:2020/09/19(土) 00:12:29.505 ID:ig2Z2/yg0
筍魂
「ほう……」

興味深そうに、顎に手を当てながら話を聞いていたかと思うと、突然拍手を始めた。

筍魂
「いいだろう、その解釈で問題はない――」

乙海
「そうですか」

オレは内心胸を撫で下ろした。
オレの感じ取った世界が――オレの受け取った感覚が――どうにか、求めるべき答えに辿り着いたことに。

とにかく……これで、メンタルという部分ではある程度成長できたはずだ。
あとは、技術面だ。筍魂はこれが全てとは言ってはいない……。

フィン
「アタシと同じこと言ってる、やっぱり結論は似たり寄ったりなんだぁ」

乙海
「そうかもしれないな……」

一方で、フィンは、相変わらず突っかかるように――それでも、少し柔らかめの口調で言った。
多少は、オレのことを評価したのだろうか……?


249 名前:Route:A-10 verity:2020/09/19(土) 00:13:26.927 ID:ig2Z2/yg0
筍魂
「さて――その言葉が戦闘術魂の基礎の基礎というわけだ
 戦闘術魂の肝である、いわば微弱魔力の操作もその言葉通りになるわけだが……
 それは、このフィンもまだ会得していない」

筍魂は、フィンをちらりと見ながら言った。

フィン
「っ〜!」

フィンは地団駄を踏みながら、悔しそうに筍魂を見つめる……。

筍魂
「これからは……技術を鍛えることになる……
 まぁ、時間はいつも通りで構わないがな」

そんなフィンの視線をスルーしながら、筍魂はオレに語った。

筍魂
「とはいえ、もういい時間だ――修行は今度で、
 今日は晩飯でも食べていくか?もちろん俺のおごりだ、成長祝いとしてのな」

フィン
「あ、あたしも食べるからね」

乙海
「……お願いします」

筍魂
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

250 名前:SNO:2020/09/19(土) 00:15:06.464 ID:ig2Z2/yg0
解釈これであってるのかはわからーん

251 名前:きのこ軍:2020/09/19(土) 00:32:07.980 ID:uha7bd/Io
あってるでしょ。
--
目に見えない世界の流れ。
そこにいるそれぞれの兵士はそれぞれちっぽけな“一”であり、同時に“全”でもある。

ありとあらゆる全ては同じ一つの存在である。その“一”から生まれる“正”や“負”の流れは即ち“全”の流れ と同化する。
“一”は“全”、“全”は“一”。
それこそが世界の理。戦闘術魂の真理。

252 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:35:19.911 ID:ig2Z2/yg0
――夕飯を終え、オレはハーブティーを飲みながらほっと溜息をついていると……。

フィン
「乙海、悔しいけど貴女はライバルね……あたしの中でのライバル2号よ、気に入った」

フィンは、手を握ったり開いたりしながら、オレに話しかけた。

乙海
「そうか……」

思えば――オレはこうやって突っかかってくる手合いと出会ったことがなかった。
射撃競技も――己との闘いであるため、それをする暇があればとことんまでに目的に向かう方が効率的だった。

その新鮮さに、オレは思わず口元を緩ませていた。

フィン
「よし!あたし、友達から教えてもらったタロット占いでもしてあげる」

フフンと胸を張りながら、フィンは机の上に22枚のカードを散らばせた。
表裏がばらばらになるように、全体をかき混ぜ……それを3つの山に分け、目を瞑りながら1つの山に戻す……。

フィン
「手慣れてるでしょ?練習したんだから……」

そう言いながら、フィンは22枚のカードをオレに見せた。

253 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:38:05.090 ID:ig2Z2/yg0
フィン
「……じゃあ、あなたの悩みや心に秘めてること、ぼかしてもいいからまず教えて」

オレの悩み――いろいろあるが……一番オレにとって重要なのは、人魚の少女のことだろうか。

乙海
「じゃあ、幼いころに出会った友人……遠い場所に行ってしまったが、再開できるか――これについて尋ねよう」

しかし……人魚のことを話すわけにもいけないので、オレはぼかしながら答えた。

フィン
「へぇ……孤独そうだけどあなたにもそんな人いたんだね、意外ね
 じゃあ、あなた自身のを示すカードをこの中から選んで」

乙海
「……それを」

オレが選んだカードは、戦車の正位置……。
二輪の戦車に乗った兵士……彼はその手にきのこの錫杖を持ち、馬に引かれて陣地に凱旋している……。
その様子を称えるきのこ軍兵士たちが遠くに描かれている……。

フィン
「この図柄は、前に進もうとする意思――負けず嫌い――勝利――そういった意味合いがある」

フィン
「意外ね、乙海ってそんな素振りないのに……実は自分と戦ってるとかぁ?」

筍魂
「射撃は己との闘いと言うから、合ってそうだな」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

254 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:38:48.578 ID:ig2Z2/yg0
フィン
「うるさいなぁ……リズムが崩れるからあまり話しかけないで
 続いて、乙海に立ちふさがるもの……引いて」

オレの選んだカードは、悪魔の正位置……。
厳つい角を携えた屈強な大男……その脇には、打ちひしがれたきのこ軍とたけのこ軍の兵士が座り込んでいる。
大男の顔は牡鹿。その爪は猛禽類のもの……キマイラのようにぐちゃぐちゃに混ぜ合わされた雰囲気がある。

フィン
「乙海に立ちふさがるのは混沌とした恐怖……何か面倒なトラブルに巻き込まれるかもよぉ?」

ふさげたように語るフィン。悪魔のカードを戦車のカードの上に重ねる。

フィン
「次は……あなたが認識している事柄についてね」

オレの引いたカードは……吊られた男の正位置。
逆さに吊るされたたけのこ軍兵士が、味方にヤジを飛ばされている……。
つまりは……戦犯への非難、というわけか?連続で、あまりよくない絵柄を引いているような気がする……。

フィンは、吊られた男のカードを戦車の上方に置いた。

フィン
「乙海は忍耐の人……射撃をやっているからそれも当然かぁ」

筍魂
「フィンも忍耐がいるんじゃないのか?」

納得したようなフィンの言葉に、筍魂が再び茶々を入れる。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

255 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:40:00.602 ID:ig2Z2/yg0
フィン
「うるさぁい……次、次行くよっ
 乙海の認識してない事柄、潜在意識!さぁ引いて!」

急かされるように引いたカードは、皇帝のカードの正位置だった。
玉座に座るたけのこ軍兵士。その胸には元帥のバッヂが輝いている。
しっかりとした姿勢で、軍配を掲げた姿はまさにリーダーのようだ。

フィン
「積極性、向上心――前者はあなたの雰囲気からすると意外ねぇ
 まぁ、戦闘術魂を学ぶのは積極的かもしれなけどぉ」

筍魂
「そうだぞ」

積極性……確かに、戦闘術魂で鍛錬することを決めたのは、オレの心がそうすべきと判断したからだ。
それは己に何か足りないと思っていたが故の行動……そういうことなのか……?

フィン
「じゃあ、次は乙海の最近の出来事!それから、これから起きるであろう問題の原因!」

皇帝のカードを吊られた男の真逆に置き、フィンは再びカードを選ばせようとちらりとこちらを見やる。

オレが引いたカードは……世界のカードの逆位置だった。
初めて、逆位置の絵柄を引いたことになる……。
空に浮かぶきのこ軍とたけのこ軍の兵士。その周りをカラスやシラサギが祝福するように舞っている……。


256 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:41:28.817 ID:ig2Z2/yg0
フィン
「初めて逆位置が出たねぇ、この意味合いは低迷したり未完成なところがあるためってところ
 ふっふーん、これはまだまだ戦闘術魂の修行が必要そうねぇ」

筍魂
「それはお前もだぞ、フィン」

フィン
「うぅ〜〜〜っ……」

いじわる気に言ったフィンは、筍魂の言葉にあっさりと肩を落とした。
……しかし、フィンの言うことは間違いでもない。オレはまだ、戦闘術魂の意味を知っただけに過ぎないのだ。

フィン
「……つ、次よ
 これからあなたに起きる未来!さぁ引いて!」

皇帝のカードを右に置き、フィンはぶっきらぼうにカードを指さした……オレがそれを引くと、それは塔のカードの逆位置が現れた。
会議所のように雄大な塔が、雷によってひび割れ、茨のように崩れ落ちようとしている……。
その絵柄を見た途端、フィンの表情が少し強張った。

フィン
「あぁーっ、これは最悪ね……乙海の未来は最悪ねぇ
 受難だとか不安定だとか緊迫だとかよくない意味しかないカードよぉ」

フィン
「しかも逆位置だから、不安定な状態が長続きする――こわぁい」

フィンは口をすぼめながら、塔のカードを左に置き、カードの十字架を作る。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

257 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:44:12.884 ID:ig2Z2/yg0
フィン
「気を取り直してぇ、7枚目――乙海のこれからの役割について引いてみて」

オレは促されるままに引いたカード……それは太陽のカードの正位置だった。
さんさんと輝く太陽の下に佇む女性――鏡を抱えて祈りを捧げている。

フィン
「へぇ……いい絵柄ねぇ、真逆って感じ?
 成功とか祝福とか――その意味は活躍してる新人兵士にはぴったりかもね」

乙海
「ふむ…」

オレは、フィンの言葉に不思議な気分になっていた。
ランダムにかき混ぜられたカード――その中から、オレに近しい意味合いのカードが出る……。
それは今までの体験と似たようなことを結び付けただけの詭弁なのか――あるいは何者かの采配なのか……。


258 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:44:54.819 ID:ig2Z2/yg0
フィン
「じゃあ、次は乙海を見る他人の目がどうかよ――」

太陽のカードを十字架の右に置きながら、フィンはカードに目配せをする。

オレの引いたカード……それは星のカードの正位置だった。
満天の星空の下、少女が疲れ切った兵士に声をかけようとしている絵柄。それは煌めくような光景にも見える。

フィン
「へーっ、希望の星と思われてる?まぁ、活躍する新人兵士なら、ベテランでも新人でもそう思うかもしれないねぇ」

にやにやと笑うフィン。その仕草は、どこかオレに突っかかっているようにも見える。

フィン
「じゃあ、次――あなたを変える出来事について……引いて」

星のカードを太陽の上に置きながら、フィンはふらふら揺らせながらカードに指さした。
促されるように引いたカード……それは隠者のカードの正位置。
ローブを着込んだきのこ軍兵士が、月明りをランプのようにして、迷った味方を導いている……。

フィン
「意味合いとしては、慎重さとか思慮深さとか……冷静な感情について
 へぇ……乙海には悟りを開くときが来るみたいだね
 ……ひょっとしてさっきの修行?もう変わってるかもねぇ」

筍魂
「はっはっは、意外とあるかもしれんなぁ」

冗談にけらけらと笑うフィンに、筍魂もおどけて同調した。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

259 名前:Route:A-10 fortune telling:2020/09/19(土) 23:46:55.604 ID:ig2Z2/yg0
フィン
「じゃあ最後――これまでの結果を踏まえた質問の答えを、このカードで決めて」

しかし、オレの疑問も晴れることなく、急かされるようにそのカードを引いた。

それは――審判のカードの正位置だった。
軍神が、傷つく兵士の上に現れ、加勢しようとしている絵柄――。

フィン
「ふぅん……この意味合いからして、乙海はいろいろな障害に巻き込まれるけれども――そのおともだちと再開できるんじゃない?」

両手を広げて、フィンはあっけらかんと笑った。

乙海
「そういうものか……」

オレは、半信半疑でフィンの答えに頷いた。

フィン
「所詮占いは信じるか信じないかはその人次第だからぁ……ねっ
 あたしの友達はもっと神々しく話せるけど、あたしには無理ねぇ」

フィンは、おどけたようにぺろっと舌を出して笑った。

260 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/19(土) 23:49:26.586 ID:ig2Z2/yg0
……そんなとき、店舗の電話が鳴りだした。オレが来てからは初めて聴いた着信音……一体、何事だろうか。

筍魂
「ああ、俺だ……なに?シューさんか……ああ、ああ……わかった、すぐ行く
 ん?ほかの兵士?乙海ならここにいるが……ああ、わかった」

筍魂は、真剣な口調で相手と会話している。シューさん……と言っていたが、集計班のことだろう。
オレが会議所で作業しているとき、たびたび彼はそう呼ばれていた。

……それにしても、オレの名前が出るとは、いったいどういう内容なのだ?
そう思っていると……。

筍魂
「乙海、今から会議所本部棟に行くぞ
 フィンは片づけと留守番していてくれ」

フィン
「はああい…」

急かすような筍魂の後にオレは続いた。
その後ろでフィンは不満そうに両脇にマットを抱えていたが……オレはそれを後ろ目でちらりと見ただけだった。


261 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/19(土) 23:51:32.683 ID:ig2Z2/yg0
……慌てて、オレと筍魂は会議所本部棟の会議室に入った。
初めて、オレはその部屋に入った……というよりは筍魂に導かれるように入らされたというべきか。
オレらのような一般兵士には縁のない場所だから、オレは部屋の内装を見回していた。

会議は、一部のメンバーが執り行う。
一般兵士はルールの採用といった一部の案件の賛否に投票するぐらいしか、会議には関わらないことが多い。

……部屋の中には、名だたる兵士が円卓を囲んでいる。オレはとりあえず筍魂の隣の椅子に座った。
神妙な顔をした兵士たち――¢に、黒砂糖に、B`Zといったきのこ軍兵士……
山本、加古川、791といったたけのこ軍兵士……彼ら彼女らの間には緊張が走っていた。

集計班
「夜分に緊急のお呼び出し、申し訳ない……」

集計班が、部屋に入ってきた。紙をまとめた資料を抱え、緊張した顔で最上座に座った。

集計班
「竹内乙海さんは会議は初めてだとは思いますが――話を聞くだけでも大丈夫ですので」

優しい口調で集計班はそう言った。そして……人数分の資料が配られた。


262 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/19(土) 23:55:58.442 ID:ig2Z2/yg0
その資料には、新聞の切り抜きで作られたいびつで不揃いな文字で、こう書かれてあった。

『明日4月27日の大戦を中止させる
 ――かつて会議所に現れた化け物DBを引き連れて
                           ――嵐』

集計班
「テロ組織の嵐が、DBをけしかける――そう犯行声明を出してきました」

真剣な口調。その言葉は部屋の空気を一瞬で張り詰めさせた……。

B`Z
「はぁ?奴は討伐したはずだが……
 それに、嵐やと……?
 確か、4月の頭にブルボン王朝でテロを起こしたぐらいしか聞いてはないが……今回の標的は会議所ということなんか?」

B`Zは、意味が分からないと言わんばかりに顔をしかめていた。

¢
「で、DB――ありえない、奴は……いなくなったはずだ」

一方、¢は極度の焦燥感を見せ、全力疾走した後のように息を切らせながら呟いた。
その様子は、まるで幽霊でも見たかのように、ありえない――とった雰囲気だ。
エースと呼ばれた彼がここまで取り乱すとは……DBとはいったい、なんなのだ……?

黒砂糖
「………」

黒砂糖は、沈黙したまま資料を見つめていた。
その表情は鉄仮面を張り付けたかのようにも見えた。

263 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/20(日) 00:00:05.842 ID:C8ftq5ew0
集計班
「改めてDBについて説明しなければなりませんね
 資料の最初をご覧ください」

示された通り、オレは資料を開いた。
そこには、DBについての情報が細かく記されていた。

――DB。Devil Beast(デヴィル・ビースト)の略称。
写真に写っていたのは、きのこの笠のような頭頂部。性格の捻じ曲がったかのような醜悪な顔面。
胴体と比べてとても短い手足のアンバランスさに、目を背けそうになる。

……しかし、移動する場合は車輪のようにそれが動き、その長さに見合わぬ機動力を見せるそうだ。
薄汚れ、脂肪で覆われた全身からはひどい刺激臭を放ち、口からは毒ガス、歩いた場所は毒で汚染され、その声は聴くだけで気力の失せるだみ声……。

文章だけで、気が滅入ってくる雰囲気があった……。
周りの兵士は、思い出した気な顔をしたり、露骨に顔をしかめている者もいた。

集計班
「会議所では……1年前の8月に討伐し、消滅したはずですが……
 どういうわけか、テロリストの嵐はDBをけしかけるぞ、と予告しています」

淡々と、事実を語る集計班の姿に、オレはごくりと固唾を飲んだ。


264 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/20(日) 00:01:30.928 ID:C8ftq5ew0
加古川
「私は今まで、DBは一匹狼の存在だと思っていたんだが……DBは、嵐の仲間だったのかい?」

集計班
「……それは判断しかねますね、何しろ情報が少ないし、本当にDBが来るのかもわからない」

B`Z
「そうやな……ただ、考えられるケースは二つ
 もともと嵐の仲間だったか、あるいは討伐した後に何らかの方法で仲間になったか……」

B`Zは、やはり参謀――と言われるぐらいに、重々しい顔ながら意見はすっきりとまとまっていた。

791
「……で、どうするの?明日の大戦は……」

791は、苦々しそうな顔でクリームソーダを飲みながら言った。

山本
「そうだな……これまでは、偶然にもDBは大戦の日には来ていなかったがゆえに休戦措置もいらなかったが……」

山本
「あのDBは、ただ兵が集まれば倒せる存在でもないだろうしな……」

社長
「一時休戦ガ妥当デスカね?」

ブラック
「……その意見に一理ありますね」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

265 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/20(日) 00:03:24.178 ID:C8ftq5ew0
791
「乙海は、どう?筍魂さんに連れられて来たみたいだけど――」

乙海
「!」

突然、791がオレに話を振ってきた。皆の視線がオレに注目している……。

791
「新人さんの、何もわからない状況での意見を聞いてみたいな」

乙海
「……オレはDBのことはわかりませんが、テロリストの嵐が犯行声明を出したなら、近隣の集落にも影響は出るかもしれないですね」

791のフォローに、オレはなんとか意見をひねり出した……。
とはいえ、とてもありふれた意見ではあったが――。

B`Z
「ああ、確かに――DBの面倒さを知っているから、そっちに目が行きがちやが――
 その考えは大いにあり得るな」

B`Zは、感心したように腕を組んでオレに頷いた。


266 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/20(日) 00:04:37.702 ID:C8ftq5ew0
山本
「いい意見だ、乙海……
 会議所で自警団を作って、嵐に備える必要がありそうだな」

オレが一石を投じたことで、周りはさらに建設的な意見を出し合い、わいわいがやがやと騒がしくなっていた。
その中で、オレは内心ほっとしながらその様子を見ていた。

やがて――。

集計班
「……意見が出そろったようなので、結論に移ります」

集計班
「一つは、明日の大戦は一時休止にすること
 もう一つは、嵐とDBに備えて緊急に軍を組織すること――」

山本
「ふむ……一般兵たちは嵐の方に対応して、私たち会議所組の半分はDBへの対応がいいだろうか?」

B`Z
「そうやな……山本さんやワシみたいに、ある程度統率できる会議所組も均等にしておきたいしな」


267 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/20(日) 00:06:42.849 ID:C8ftq5ew0
791
「私はDBの方で――」

筍魂
「俺も791さんと同じだ――」

皆は、集計班のまとめる言葉に続いて、思い思いに意見を言っていた。

¢
「ぼくは、嵐の方へ……」

黒砂糖
「DBも面白そうだが――今回は嵐側に行くよ」

抹茶
「僕も、黒ちゃんと同じで…」

ブラック
「私はDBで――気になることがありますので」

社長
「オナジく」

集計班
「……私は嵐に対応する側に回りますが、乙海さんはどうしますか?」

青い髪を指でいじりながら、集計班はオレに尋ねた。
その青い瞳が一瞬赤く燃えたように見えるが――気のせいだろうか。
今見える瞳は青いまま……ともかく、オレが立ち向かうのは……。

268 名前:Route:A-10 a claim of responsibility:2020/09/20(日) 00:09:57.030 ID:C8ftq5ew0
乙海
「DB側に行きます」

あえて、DBに対抗する選択を取った……。
どうしてだろうか……それは、現在、戦闘術魂の師である筍魂が居るからかもしれない。
戦闘術魂の扱い方を、その目で盗み取りたい――というところなのか。
オレにも、そのはっきりとした理由はわからなかった。

集計班
「わかりました――頼もしい言い回しで、さすが竹内さんの娘といったところ」

集計班は、予期していたような表情で答えていた。

抹茶
「そうですね……コンバット竹内さんもDBと戦っていましたし」

――ああ、そういうことか。父がDBと戦っていたから、その血を引き継いでいると解釈されたらしい。
集計班の表情もそういうことなのか。オレは少し腑に落ちないものを覚えつつも、同調して頷いた。

やがて、集計班は明日の大戦が中止になる件を、各情報機関に送り始めた。
同時に、加古川も兵士たちにも可能な限り伝達していた……。

会議所は、少しずつ兵士が立ち去り、円卓のテーブルが残る孤独な部屋に様変わりした。
オレは筍魂の後についていき、フィリップ・パブへと戻ることになった。

――オレは、明日、DBと戦うはずだ。大戦ではない戦い……それは今までに体験したことのない事象。
果たしてオレは、悪魔の獣と戦えるだろうか。

少々の不安はあるが、立ち向かうことで、オレの選択の理由も見えるかもしれない……。

269 名前:SNO:2020/09/20(日) 00:10:10.405 ID:C8ftq5ew0
物語やっと動いた

270 名前:きのこ軍:2020/09/20(日) 00:53:10.120 ID:OEiG2AyM0
タロットから今後の展開が見えますねー。
そしてみんなちゃんと会議してる感動した。

271 名前:Route:A-11:2020/09/23(水) 23:46:28.413 ID:3YCUBldw0
Route:A

                 2013/4/27(Sat)
                   月齢:16.7
                    Chapter11

272 名前:Route:A-11 idle talk:2020/09/23(水) 23:48:43.775 ID:3YCUBldw0
――――――。
翌日――メディアを通した報道のほか、会議所を訪れた兵士に、随時大戦が中止になるというアナウンスと、自警団の参加の確認が行われていた。
オレは、既に会議所で意思を伝えていたから、面倒な手続きに巻き込まれることもなく、手がすいており……。
大戦場へ行く前に……wiki図書館で嵐の情報を集めることにした。

目指すは資料室。直近1、2か月のニュース番組の記録はあるだろう……
また、DBと戦った映像もあるかもしれない。何しろ大戦の映像も保管していることもある。
そう思って資料室に入ると……。

筍魂
「DB――俺たちとはまったく異なる種族――そして、その面倒な部分は手ごたえがありそうだ」

791
「魂さん……あなた本当にバトルマニアだね」

黒砂糖
「………」

オレと同じ発想だったのか、DBとの闘いを記録した映像を丁度見終えたらしい兵士が3人いた。
ぐっと両こぶしを握る筍魂と、それを冷めた目で見る791……。
黒砂糖は、いつも通り鉄仮面を張り付けたまま、ディスクを元のケースにしまっていた。


273 名前:Route:A-11 idle talk:2020/09/23(水) 23:51:36.516 ID:3YCUBldw0
筍魂
「俺は強い奴と戦いたいんでね――無口さんとも戦ってみたかったし、何なら791さんや黒ちゃんとも戦いたい」

791
「ああ、そうなんだ……」

無口――wiki図書館の創設者。武術と魔術の両方に優れたきのこ軍兵士――今は行方不明の存在。
筍魂は、別のディスクを取り出して再生させる……そこには、先ほど彼が語っていた無口が映っていた。

筍魂
「俺は過去の大戦を何回か見返していたが……
 あの人は映像を見る限り女――791さんと同じぐらいの強さを持っていると確信するぜ」

ニヤリと、筍魂が笑った。

791
「はぁ……私も無口さんが戦う映像見たことあるけれど、あれは男じゃないの?
 女だから、そういうのはぴんと来るもんだよ?」

791はやれやれと呆れたように肩をすくめていた。

筍魂
「はぁー、さすがの魔王様には分からんかねぇ……黒ちゃんはどうだい」

からかうように791を見つめる筍魂……791の表情は、心なしか苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

黒砂糖
「……あれは女だろう、足周りの動きでそう判断する
 まぁ、そうカムフラージュしているかもしれないから、確定はできないだろうが」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

274 名前:Route:A-11 idle talk:2020/09/23(水) 23:52:55.206 ID:3YCUBldw0
791
「あら、乙海――」

遅れて791もオレに気が付いたようで、いつもの柔和な笑顔でオレに微笑んだ。

乙海
「どうも……」

791
「それでぇ、乙海はどう思う?無口さんの性別……」

そして791は先ほどの会話で出た疑問をオレに訊いた。
オレは、映像をちらりと見てみる――。

映像の中では、顔を隠した白髪の人物が、漆黒の棍を振り回して戦っている。
その足取りは完璧にバランスが取れている。体重のかけ方は、足にかかる衝撃を一番散らすことのできる姿勢だ。

魔術の詠唱も、極めて短時間かつ、棍での攻撃を織り交ぜており、隙が全く見えない。
無口のサイドテールがゆらゆら揺れる……その軌道すらも、理で定められたもののようにも見える……・
まるで、筍魂のように、技術を研鑽したのだ――とオレは思った。

オレの選択は――。

乙海
「女……だと思う」

――それは、確信はなかったが……その動きを視たオレは、そう思えた。
それは同じ性別というシンパシーなのか……あるいは第六感によるものなのか……。それは説明できない……。

275 名前:Route:A-11 idle talk:2020/09/23(水) 23:53:37.890 ID:3YCUBldw0
筍魂
「ほう……オレや黒ちゃんと同意見か」

黒砂糖
「………」

791
「えー……乙海もぉ……?」

たった一人、791だけが意見を違えていた。
不満げにオレの目を見る791……その紫の瞳がオレを見据える……。

791
「うーっ、私と同じ女の子の意見も違ってしまうなんて…なんだかショックだなぁ」

大げさに肩をすぼめながら、791はやれやれと言わんとばかりに手を投げ出した。

黒砂糖
「そんな戯言はともかく――乙海もDBの映像を見に来たのか?」

乙海
「はい」

――質問に答えていて、本来の目的を忘れていた。そうだ……オレのやるべきことはそれなのだ。
危うく当初の目的を忘れるところだった……。

276 名前:Route:A-11 idle talk:2020/09/23(水) 23:54:12.700 ID:3YCUBldw0
すぐにオレはDBを映像で確認する……。資料通りの醜い生物が、少数の会議所兵士と相対している。

手に持つ巨大な電電太鼓からは空気を震わせた振動で攻撃しているらしい。
臭いによって兵士たちは顔をしかめているが、遠距離攻撃の応酬で互角――といったところか。

ざっと、数戦ぶんのビデオを見てみる……。
B`Z、黒砂糖、抹茶、加古川……名だたる兵士がその面倒な相手と戦っている様子が見える。
その中には、オレの親父も居た。太刀を構えて切り込む姿は、長年の鍛錬によって得られた技術を感じ取った。

筍魂
「相手が新たな戦法を編み出しているかもしれないが……今の乙海なら対応は問題ないだろう」

筍魂は頷く。オレも頷き返し、嵐と戦う決意を込めながら、拳を握った。

乙海
「そういえば……¢さんや集計班さんの姿が見えない気がする」

ふと、映像を見て気になった事実を呟いた。この事実は偶然なのだろうか……?


277 名前:Route:A-11 idle talk:2020/09/23(水) 23:55:40.204 ID:3YCUBldw0
筍魂
「シューさんは……この戦いでも戦局の分析をしていたからな……
 彼自身も戦闘能力は高い――魔術に優れたメイジだが、立場上あまり前線出ないのが惜しい」

――そうだ。集計班は大戦で集計している立場にあるのだから、それ以外でもそう言った行為をしている可能性だってある。
オレの視野の狭さに、少し気を引き締めなければならない点がある……
このままでは、いずれ壁にぶち当たってしまう。そう思い知らされた気がした。

791
「そうだねぇ――まぁ¢さんはちょっと自信がなくてヘタレな部分があるから、出なかったのかもねぇ」

一方で791はため息を交えて答えた。そういえば――彼はDBに対して怯えている態度を見せていた。
それはDBと戦わないが故の態度なのだろうか……。

791
「さて、そろそろ行こうか――みんな」

791が、部屋の時計を見上げながら呟いた。
確かに、そろそろ集合していたほうがいい頃合だ。オレたちは頷き合い、大戦場へと向かった……。

278 名前:Route:A-11 defense:2020/09/23(水) 23:57:16.005 ID:3YCUBldw0
オレたちは、大戦場でその時が来るのを待っていた。
会議所に常駐する兵士のほか、普段は会議所に居ない兵士も緊急事態とあって駆け付け、
普段の大戦より少し少ないぐらいの人数が集まっていた。

その時……ザッ――ザザッ――、
手元の通信機から音が聞こえた。なにやら連絡事項があるらしい……。

¢
「嵐がきのこ軍居住地に出現……今から、きのこ軍防衛隊、作戦に入る――」

山本
「こちらたけのこ軍防衛隊、嵐出現――これより作戦に入る」

791
「わかった、¢さん、山本さん――みんな、頑張って――」

……嵐は、予告通りに訪れたようだ。その場の空気は一気に張り詰め始める。
通信機の向こうでは緊張した声が響く。オレも固唾を飲んで、これからの動向を確認するために神経をとがらせた。


279 名前:Route:A-11 defense:2020/09/24(木) 00:02:16.061 ID:87BecFbw0
嵐というテロ組織――。
オレが会議所に入所したその日にも、ブルボン王朝でテロ行為をしていたという。
また、明治国の果汁組刑務所から囚人を脱走させたこともあるそうだ。

オレは大戦や会議所での忙しさにかまけ、そのことを知ったのは予告されてからだった。
恐らくは、大戦に直接かかわらない親父などは知っていたのかもしれない。

乙海
(親父が仕事にかまけてるのと、似たようなものか――)

……自嘲気味にため息をつきつつ、オレは嵐の情報を改めて整理していた。
構成員は、はぐれ者、ならず者――破壊や略奪を繰り返す迷惑者。

その行動原理は不明で、ただ破壊しては悲しみ憤る人々の様子を見て楽しんでいる――という説もあるそうだ。
構成員は逮捕されたことがあっても、リーダーや幹部の名前は絶対に漏らさない。
時には自殺する輩もいるそうだ。一体、どうやってその忠誠心が身に付くのだろう……。

ざっ――足音が聞こえた。
これはオレたちのものではない――すなわち――。

乙海
「!」

ブラック
「……どうやら、お出ましのようですね」

そして――そいつらは、現れた……。

社長
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280 名前:Route:A-11 storm:2020/09/24(木) 00:04:41.739 ID:87BecFbw0
乙海
「………!」

オレは、思わず息を呑んでいた。

嵐の軍団が、現実にオレたちの前に現れたからだ。
青い軍服を着ている山賊のようなひげ面の男たち……チンピラのような風貌の男たち……。
社会性というものが皆無――恐らくは、オレたちの平均的価値観とは外にある集団なのだ。


「ハーッ!ここが本番みたいですぜ、ボス!」

一人は通信機で何らかのやり取りをしていた。……ボス、という存在と連絡を取っているということは、リーダー格はここにはいないということか。
男たちの向こうには、車輪の付いた檻があった……。その中は、暗くて見えない。
だが、恐らくはDBがいるのだろう……不吉でおぞましい雰囲気がそこにはあった。


281 名前:Route:A-11 storm:2020/09/24(木) 00:06:49.254 ID:87BecFbw0

「……行け、DBォォォ!」

そして……男の声とともに、檻が開け放たれた。
中からは――。
その、ブラックホールのように真っ暗な檻の中からは――。

DB
「ヴォオオオオオオオオオーーーーッ!」

――DBが、獣のようなうなり声をあげて勢いよく飛び出してきた。
それはまさにケダモノ――悪魔のような恐ろしさが全身からにじみ出ている。

791
「…………これは、まさか」

ブラック
「はぁ……いつ見ても醜悪ですね、アレは――」

791は何かを思い出したように、ブラックはげんなりとした顔でDBを見ていた……。
DBの顔は、欲望しか考えていない汚らわしい醜悪な表情をしていた。
そのぶくぶくに太った腹と脂肪が張り付いた腕からは、堕落に身をやつしたものの末路にも思えた。

……奴は人間なのか?オーガなのか?魔族なのか……?
どれも違うような気がするし、正解なような気もする……オレの背中には冷や汗が流れ、焦燥感に苛まれていた。


282 名前:Route:A-11 storm:2020/09/24(木) 00:08:09.833 ID:87BecFbw0
筍魂
「乙海ぇ、気を張れ――奴と相対するときは精神力がものをいう」

ぽん、と肩を叩かれた。
その言葉に、オレの焦燥感はすっと消え――冷静に相手を見据える心が浮かび上がった。

そうだ――敵を見据える――それがオレのやるべきことだ。
嵐のメンバーと、DB。恐ろしいのはDB。嵐のメンバーは……武器こそ持っているが、見た限りではメイジはいない。

メイジは、詠唱用に杖を持っていることが多い。791や黒砂糖は杖なしでも魔術を操れるが――
そういった強者の雰囲気は、向こうから感じ取ることはできない……。

乙海
「………」

ライフルと、大戦場に行く途中に抹茶から借り受けた試作中の銃に手を触れる。

抹茶
「ああ、乙海さん――ちょうどよかった貴女のアドバイスを元にさらなる試作品を作ってみましたよ
 名前はディアナ――狩猟を得意とする女神の名にあやかってみました
 とりあえず、弾詰まりを起こさない形の銃に変えてみました」

その時交わした抹茶の声が脳裏に浮かんだ。その場で試し撃ちしても、使用感に問題はなかった。
彼の研究者としての誇りを、新人のオレに託す――これはある意味名誉なことなのかもしれない。

大丈夫だ……これは大戦とは違う戦いだが、感じ取るものは似ている。

乙海
「よし……行ける」
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283 名前:Route:A-11 storm:2020/09/24(木) 00:10:30.348 ID:87BecFbw0
DB
「ヴォオオオオオオオオオーーーーッ!!」

けたたましい、耳をつんざくような咆哮。
同時に電電太鼓を振り衝撃波がオレたちをぴりぴりと刺激する。
奴が本能のままに叫んでいるだみ声は、心臓をわしづかみにされるような恐怖感がある……しかし……。

乙海
「!」

だが、オレは、銃を構える。
その手は震えない――なぜなら、その恐怖も世界の構成要素だから。
世界の一部。だからオレはそれを避けるのではなく、あえて向かい合い――オレと同じものだと認識する。

筍魂
「ほう……あの瞑想でメンタル・コントロールは会得したか」

筍魂は、興味深そうに頷いた。……あの鍛錬の成果は、もうここで発露しているのだ。

ブラック
「行きましょう――ホルンウィンド」

ブラックが、静かに言霊を呟くと、真空の刃が空気を切り裂いた。
その魔術を皮切りに……戦いの火蓋は切って落とされた。

284 名前:SNO:2020/09/24(木) 00:11:18.ウンコ ID:87BecFbw0
抹茶さんの出番あってよかったネ

285 名前:きのこ軍:2020/09/24(木) 00:20:43.324 ID:DdKEqu9wo
決戦が始まるッ!…

286 名前:Route:A-11 a united front:2020/09/24(木) 22:42:32.231 ID:87BecFbw0
ブラックの真空の刃は、嵐の兵士を瞬く間に切断した。
まるで包丁で魚をさばくかのように……バターナイフでバターを切り取るかのように……
ずばりと、嵐の兵士の腰を、えぐり、血をまき散らす。

乙海
「…………」

どちゃりと音を立てて崩れ落ちる兵士……血と臓物が地面に散らばる。
死――大戦とは違い、これは敗北すれば死を意味する戦い。
内臓をこぼしながら倒れる男たち――その残酷な光景に、周りの兵士は少し動揺を覚えていた。

しかしオレは……特に、何も感じてはいなかった……。
どうしてだろうか……敵であろうと何であろうと、生物の死であることに変わりはないのに……。

――しかし、今はその理由を考えている必要はない!

乙海
「そこだ!」

オレは敵の武器目がけて弾丸を放った。魔力を宿した弾丸は見事に命中し、弾き飛ばすことに成功する。
さらにもう一弾、もう一弾……相手の武器を、冷静に弾き飛ばしてゆく……。


287 名前:Route:A-11 a united front:2020/09/24(木) 22:48:10.532 ID:87BecFbw0
筍魂
「戦闘術魂――リーフブレード」

そして、思わずよろけた敵に、筍魂が草の刃で追撃した。
連携――きのこ軍とたけのこ軍の枠を超えた共闘が今ここで織りなされている。

オレは、嵐のメンバーの動きを視ながら、DBの方に目を見やると……。

791
「シトラス――」

791が、レモン色の魔法弾をDBに叩き込んでいた。
矢継ぎ早に魔術を連打する……その威力は、地面がえぐれ、その衝撃波だけで小石が砕けるほどだ。
DBは、それをかわすことに専念していた……。

幸いながら、距離が遠いためかDBの悪臭は感じない。やつの咆哮だけが気になるぐらいだ……。

社長
「ツインポップミサイル――」

オレの隣で、社長も魔力の塊の小型ミサイルをDBに撃っていた。
小規模な爆発――791の魔法弾よりも威力は低そうだが、それでも奴をひるませるのには充分……。

そして、そのよろめきと同時に、シトラスがDBに直撃した。

DB
「ギィイヤヤアアアアアアア!!!」

DBの身体からボタボタと血が落ちる。同時に土は腐りぶよぶよに散らばった。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

288 名前:Route:A-11 a united front:2020/09/24(木) 22:50:32.671 ID:87BecFbw0
¢
「こちらきのこ軍防衛隊、嵐は突然撤退した――」

山本
「奴らは、まるで示し合わせたかのように、思い切り逃走したぞ?――」

――同時に、居住地で任務にあたっていた二人からも連絡が入った。
実に不可解だ……犯行声明までしておいて、こんなにあっさりと逃げ出すとは……。

その違和感を覚える状況に、オレは疑問符を浮かべていた……。
周りでは、困惑したように兵士がざわついている。ほっとしているような声も聞こえる。
……命に係わる可能性があるのだから、当然かもしれないが。

791
「乙海……多分、これは前哨戦じゃないかな」

筍魂
「そうだな……奴らはある程度いたはずなのに、その数を活かした攻撃もしなかった……
 DBを檻から放つことぐらいしかやっていない……あとは少々の抵抗といったところか」

オレの疑問は、他の兵士も考えていたらしく、791や筍魂もまた、考察を始めていた。


289 名前:Route:A-11 hope the staunch:2020/09/24(木) 22:53:18.603 ID:87BecFbw0
社長
「DBノテストトカ?」

ブラック
「――私も、その意見はありうると思います」

……その場では、会議のような雑談が行われていた。
向こうでは嵐の男たちの肉片が転がっている……その異様な雰囲気の中、オレの中にある想いがあった。

乙海
(……この人たちは、強い)

……そう。少なくともオレより場数は踏んでおり、戦闘経験があるのだ……。
オレは確かに大戦で活躍したとはいえど、射撃大会で入賞しただけの存在だ。

オレとは違い、彼らには実戦での実力もある。戦闘術魂を操る武術家。強力な魔力の持ち主。
兵器として、高い威力を持つ武器を搭載できる義肢の持ち主。そして義肢の制作に関わっている者……。

先の大戦で、社長は、出会い頭に攻撃を加えただけで、791とは交戦する機会はなく、実力は未だわかっていなかった。
しかし、大戦経験の多さは、確かに実感できる。
完璧にDBに攻撃を当てるための布石を打っていたのだから……。

乙海
(オレは……強くなれるのだろうか?)

確かに……戦闘術魂の鍛錬の一環の、瞑想によってオレはメンタル面では多少強くなった。
しかし……戦闘技術の技量は、まだまだだろう。オレには銃の腕が多少あるだけ……。
弾丸を失ったとき、オレは戦えるのだろうか?


290 名前:Route:A-11 hope the staunch:2020/09/24(木) 22:53:45.196 ID:87BecFbw0
筍魂
「心配するな、乙海」

そんなオレの表情を、筍魂は見抜いていた……。

筍魂
「お前のスナイプ技術を磨くんだ……さらにな
 戦闘術魂は技術が大切なんだ、どんな技術でも構わない……それが魔術でもいいんだ
 その経験が糧になるし、強くもなれる……」

その言葉は、今のオレにとって頼れる言葉でもあった。

筍魂
「お前が敵と戦う目はどこかいきいきとしていた……おそらくは、自分自身を鍛えたいという気持ちの発露だろう
 ――射撃も、自分との闘いだから納得できる」

続く筍魂の言葉に、オレは感服するしかなかった……そしてオレは、その言葉を聞いてようやく気が付いた。


291 名前:Route:A-11 hope the staunch:2020/09/24(木) 22:55:07.020 ID:87BecFbw0
オレが会議所に入った理由――それは、己を鍛えるため、なのだと……。

乙海
「そうですね、たしかにそう――オレは大戦の勝敗で心が揺れ動かなかった――
 その理由は、恐らくそういうことです」

すっきりとしたような気持ち。オレはすらすらと筍魂に言葉を紡ぐ……。

筍魂
「フフフ、戦闘術魂の鍛錬の時間はいつでも取るぜ、また今度来い」

オレの自信をもった答えに満足したのか、筍魂も親指を立ててニヤリと笑った。

それから、援軍にやってきた兵士たちは帰され……
会議に関わったオレたちだけで、大戦場にできた攻撃の後と、嵐のメンバーの死体を片付けることになった。


292 名前:Route:A-11 hope the staunch:2020/09/24(木) 23:01:08.508 ID:87BecFbw0
¢
「うぅう……死体は初めて見るから怖いよ」

青い顔をしながら、¢は血の痕を片付けていた。

B`Z
「まぁ仕方ないとはいえ――あまり殺しはようないかもな」

B`Zも真剣な顔でブラックに話しかけていた。

ブラック
「申し訳ございません――私の嫌いな存在でしたから」

ブラックは丁寧な言葉をしていながらも、言葉の節々からは後悔も動揺も感じられなかった。
いったい、彼女はどういう精神構造をしているのだろう……。

そんなことを思いながら、オレはDBの血で腐った地面を掘り返し、新たな土を入れていた……。

791
「それにしても、DB――シトラスが当たっても軽い出血で済むのは、普通の生き物じゃないのかもね」

黒砂糖
「DBは……そんな奴だったのか」

791
「うん――まるで私のように……特別タフな存在なんじゃないかなって……
 まぁあんなのと同一視されたくないけど」

意味深な791の言葉……そういえば、791は攻撃への耐久力が優れていると聞いたことがある。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

293 名前:Route:A-11 hope the staunch:2020/09/24(木) 23:07:32.454 ID:87BecFbw0
筍魂
「まぁ、ともかく――奴らはまた来るだろうな」

筍魂が、死体を袋に詰めながらそう言った。
彼は死体を動揺もなく処理している……肚が座っているのか、あるいは別の理由があるのだろうか。

山本
「……それにしても、嵐のメンバーの武器はそこまでいいものではないな
 質もまちまちだから、密造したものだろう」

遺品を拾い上げながら山本はそう答えた。
ごつい肉体と武器の大小から織りなされる――支援を受けられない立場にあるテロリストという推測。

兵士たちの意見を耳に入れながら、オレは、ただ、ただ、土を掘り返していた……。

294 名前:SNO:2020/09/24(木) 23:08:10.671 ID:87BecFbw0
乙海の目的もはっきりしたけどまだまだ続くよ

295 名前:きのこ軍:2020/09/24(木) 23:22:33.809 ID:DdKEqu9wo
明確な意志がモテる主人公は強くなるの法則

296 名前:Route:A-12:2020/09/25(金) 23:24:23.159 ID:.gg7iJa60
Route:A

                 2013/5/4(Sat)
                   月齢:23.7
                    Chapter11-2

297 名前:Route:A-12:2020/09/25(金) 23:27:45.490 ID:.gg7iJa60
――――――。

嵐との戦いから1週間が経過した……。
その間のオレは、相変わらず戦闘術魂の鍛錬を行いながら、会議所の業務を手伝っていた。

その日の朝――嵐からの犯行声明が、再び会議所に送り付けられていたのだ。
嵐の対応に当たった、会議所の代表――その中にはオレも含まれる――が、再び会議室に集められたのだ。

集計班
「皆さん……朝早くからご足労ありがとうございます
 非常に面倒な事態――嵐からの犯行声明がまた届きました、文面は前と同じような内容です」

深刻そうな表情を浮かべた集計班は、指でトントンと机の上を叩きながらそう告げた。

『今日5月4日の大戦を中止させる
 ――かつて会議所に現れた化け物DBを引き連れて
                           ――嵐』

前回は、あっさりと退いた嵐……しかし、しつこく犯行声明を出してきている。
今回は当日――大戦が執り行えないようにする妨害を続ける……これもテロリズムの一種だろうか?゜

298 名前:Route:A-12 crisis conference:2020/09/25(金) 23:31:43.076 ID:.gg7iJa60
¢
「で、DB……本当に居たって聞いたけど、また持って……来るのか……」

¢は、またもひどく怯えていた。
まるで、不安に苛まれた赤子のように、顔を青くしてぶるぶると震えている。
顔に流れる汗をハンカチで拭い取っているが、その手もまたぶるぶると震えていた。

エースと呼ばれた彼とは真逆のイメージ。心なしか、DBに関する話を聞くと動揺しているようにも思える……。

黒砂糖
「………」

黒砂糖は、相変わらず無言だった。
何を考えているのか……その鉄仮面からは読み取ることはできない……。

集計班
「それに――ルミナス・マネイジメントに所属するきのこ軍のtejasさんによると、
 開発中の機械人形装置を奪われた――そういう報告もあがっています
 嵐が、会議所への攻撃を続行すると見ていいでしょう」

社長
「マサカ……ヴァルトラングなどノ大企業にモ攻撃をシカケルカモシレマセンネ」

嵐は、会議所と、その周り――あらゆるものに噛みつこう、というのだろうか。
オレは、嵐の思惑に薄気味悪さを覚えていた。


299 名前:Route:A-12 crisis conference:2020/09/25(金) 23:32:52.327 ID:.gg7iJa60
B`Z
「このまま手をこまねているわけにもいかんが、兵士たちの安全も考えないといかん」

山本
「そうだな参謀……防衛隊の皆は、一般生活も送っているものが多いから死は絶対に避けたい」

やがて、前回のようにB`Zと山本が意見を出し合う。それを呼び水として、議論が活発化していく……。

791
「それに……このままずーっと休戦すると、会議所の存在意義もなくなっちゃうよね」

……791の意見はもっともだ。脅せば休止する――という流れが形成されたら、向こうの思うがままかもしれない。

乙海
「相手の様子を見ながら、大戦はどこかで行ったりする必要があるのだろうか……」

オレは、思いついた意見を推敲することなくただ呟いた。
それは意見として挙げるのも自信がない、小さな声だったが……。

筍魂
「おっと乙海……その意見はもっともだな」

筍魂は、その小さな意見を聞きつけて、肯定しながら頷いた。
そういえば彼は地獄耳と自称していたと、改めて思い出し……彼の顔を見ると、したり顔でオレを見ていた。


300 名前:Route:A-12 crisis conference:2020/09/25(金) 23:33:56.290 ID:.gg7iJa60
乙海
「ふむ……」

筍魂
「小規模な大戦を執り行う、例えば俺らが外敵から守りながら、一部の会議所兵士が指揮を執る大戦――こういう形をとるのも重要かもしれない
 いえば紛争を少しスケールアップしたような……」

社長
「ソレハ言えている……魔王様の言う通りに、会議所は大戦を運営する場所デス」

抹茶
「……大戦そのものに携われない兵士も居れど、僅かにでも世界の流れを動かすことは重要……そういうわけですね」

オレの素朴な言葉が、ほかの兵士によって噛み砕いた表現になり、発展していく……。
この光景は、大戦の縮図なのか……?議論という戦いによる影響なのか……?

議論に沸き立つ会議室を、オレはどこか遠くで見ているように眺めていた……。
そういえば、ブラックがここにはいない。彼女はどうしたのだろうか……少なくとも社長の秘書なら隣には居るとは思ったのだが……。

そんなことを考えている間にも、議論は活発に進み……会議はいつの間にか終わっていた。



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