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ユリガミノカナタニ
- 1 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:54:48.03 ID:XUiZ9x7c0
- ??「―――――――。」
―――声が聞こえる。
これは、わたしの一番古い記憶?
何も、見えない。
そこは、暗闇の中―。
- 2 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:56:01.50 ID:XUiZ9x7c0
- けれど、音は聞こえる。
―男と女が、いることが分かる。
男と女が何かを話している。
男「――――――」
女「――――――」
男「――――――」
- 3 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:56:50.53 ID:XUiZ9x7c0
- ただ、何かを話しているようではあるけれど。
それは、わたしの中にある記憶の、一番底にあるもの?
何かを話している、というものはわかるのだけれど、何を話しているのかは分からない。
そして、その声はだんだん小さく――。
- 4 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:57:52.19 ID:XUiZ9x7c0
- ―――。
暗闇から光が―――。
夢の中の海―記憶の海から、浮かんでゆく。
光の射す水面へと浮かんでゆく。
- 5 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 23:02:39.46 ID:XUiZ9x7c0
- ??「鈴鶴(すずる)様、おはようございます」
ゆさゆさと身体を揺らし、わたしを呼ぶ声。
鈴鶴(すずる)とは、私の名前のことだ―。
鈴鶴「ああ、おはよう……」
わたしは、目をこすりながら、その声に答える。
- 6 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 23:04:26.17 ID:XUiZ9x7c0
- わたしを起こしたのは、わたしの乳母(めのと)のような存在であり、わたしの姉のような存在の女性。
けれど、彼女は人に在らざるものである。
人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、狗にて狗ならず、
足手かしらは人であり、左右に羽根はえ、飛び歩くもの―――。
つまり、天の狗―。
- 7 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 23:06:33.88 ID:XUiZ9x7c0
- 彼女の名前は、闇美(ヤミ)―。
わたしがこの世に生まれたときに、ここに命からがら逃げてきた天の狗。
妖殺しという集団に、仲間を皆殺しにされて、ここまで逃げてきた、と彼女は語っていた。
だから、身体中に傷跡がある。
そして、右目と、左手の中指の半分と、左手の薬指と小指を全て失っている。
- 8 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 23:09:31.27 ID:XUiZ9x7c0
- ヤミ「鈴鶴様、寝覚めでも悪かったのですか?」
ぼーっとしていると、ヤミが声を掛けてくる。
鈴鶴「いいえ、ちょっと夢が気になるところで終わったから」
ヤミ「あら、それはお邪魔でした?」
ヤミが、わたしを見つめて言う。
鈴鶴「ううん、それほどでもないから」
ヤミ「では、布団から出ましょう」
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