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ユリガミノカナタニ

1 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:54:48.03 ID:XUiZ9x7c0
??「―――――――。」


―――声が聞こえる。



これは、わたしの一番古い記憶?


何も、見えない。


そこは、暗闇の中―。

952 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:39:21.490 ID:ufdOp7qs0



ディアナは、ボウガン、短刀、吹き矢等を携え、【ワカクサ】の海岸へと向かった。





953 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:41:11.330 ID:ufdOp7qs0
―――【ワカクサ】の海の底には、竜宮があった。
波の下の都――海の果て――ザンー人魚が住まう宮処。

人魚は、半身は人、もう半身が魚(うお)のようなものも居れば、人と寸分違わぬ者、あるいは身体のある一部分だけが魚のものなど多々居た。

特に宮処の長――所謂海原の王者は、人と寸分違わぬ見た目と、美しき見た目、海原の様に透き通る青色の髪をしていた。


その長の娘の一人――此れも人の姿をした――ネプトゥーンは海の外の世界が気になり、
禁じられてい行為とは知っていても、竜宮を抜け出し―水面まで、【ワカクサ】の海岸まで浮上した。

だが――前述した通り、阿呆な狩人達が丁度海岸へ居た。
言うならば、飛んで火に入る夏の虫―――彼女は獲物と成ろうとしていた。

954 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:41:57.129 ID:ufdOp7qs0
―――再び【ワカクサ】の海岸。
狩人達は、ネプトゥーンの存在を察知してか、手持ちの槍を構えて今か今かと待っていた。

そして、ネプトゥーンが其れに気が付いた時には――狩人達は槍をネプトゥーンに向けた。
ネプトゥーンの齢は3ほど―――必死に逃げようとするものの、運よくかわせているというだけで、今にも槍で刺されようとしていた。

955 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:42:25.889 ID:ufdOp7qs0
その最中――闇を翔る一筋の線が、一人の狩人の頭を貫いた。
狩人達がその方向を向くと、もう一人の眼窩を線が貫く―――。

其処には、冷徹な表情をし、クロスボウを構えたディアナが立っていた。

ディアナはクロスボウに次の矢を込め、さっさと残りの二人の狩人も殺した。
矢には致死性の毒を仕込んでいたため、狩人達は立ち上がらなかった。

956 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:44:08.868 ID:ufdOp7qs0
そしてディアナは、呆気にとられていたネプトゥーンに、淡々と言葉を告げた。

ディアナ「……【ザン】の肉というものは、狂わせる恐ろしいもの…
     俺が居なければ、お前は死んでいたかもしれない……

     俺は、【ザン】の肉を求めんが……同じ生業の奴らは、また狩りに来るかもしれない……
     危険に、あえて触れる必要は、ない……
     住処に、今のうちに帰ってほしい―――」


そして、ディアナは背中を向け、振り返りもせずに其の場を立ち去った。

957 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:45:42.501 ID:ufdOp7qs0
ネプトゥーンは、助かったことに安堵しながらディアナの背中を、ただ見つめていた。
そして、その立ち振る舞いに、恋心のようなものを覚えた。
二度と出会えることはないだろう、鬼の女性に―――。

ネプトゥーンは遠くへ消えていく、其の固い意志を抱えた背中を、見えなくなるまでいつまでも見ていた――。

958 名前:社長:2016/08/20 02:47:20.840 ID:ufdOp7qs0
勝手にきのたけ世界の設定を作る感じ。
ちなみにディアナは身長183cmと高身長の女の子の設定です。

959 名前:社長:2016/08/20 03:31:47.862 ID:ufdOp7qs0
あとこの話の途中で次スレに行きそう。その時はいいところで切る感じかな…。

960 名前:きのこ軍 エース滝 魂11シュート1:2016/08/24 20:58:12.157 ID:ISBjVOBM0
ふつくしい。鬼の女の子というジャンルいいぞ。

961 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:09:31.230 ID:lZt02eug0
それから数十年後―――。


ディアナは、再び――【ワカクサ】の海岸でザンの肉を得ようとする狩人達を殺す依頼を受けた。

ザンの見えない海の上、狩人達が乗った漆黒の大船が海に浮かんでいた。
夜であり、只の人間ならば見えない船を、ディアナは見つけた。


ディアナは鬼だ―――鬼というものは人間に比べればはるかに高い身体能力が有る。

たとえディアナが、鬼の中では力が平凡だったとしても、人間に比べればはるかに高いもので――。
だから、人間の肉眼では見落とすような漆黒の大船を見つけられたのだ。

962 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:13:35.057 ID:lZt02eug0
ディアナは、単身小舟で大舟へ近づき、揺れる小舟の上から弓矢、ボウガン、吹き矢等を用い、
きっちりと急所に的中させ―――粗方の狩人達を殺した。

そして、船の中に隠れた残りの狩人を殺す為、大船へと飛び乗った。

射程距離の関係で、ディアナは短刀を用い、冷静に狩人達の首を掻っ切り、淡々と始末していった。

そして最後の一人を殺そうとした瞬間――ディアナは或る事に気が付いた。
残り一人は、ディアナに負ける事を悟ったか、相打ち覚悟で船に仕掛けたらしい火薬を炸裂させ、自爆しようとしていたのだ。


963 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:15:45.455 ID:lZt02eug0
其れに気付いたディアナは、頭を庇いながら咄嗟に海に身を投げたが、それは最後の一人が自爆した瞬間と同じで―――。



ディアナは、身体に船の破片などが刺さり、爆発の衝撃で、骨を折る等の重い怪我を負って海の底へと沈んでいった―――。





964 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:18:12.858 ID:lZt02eug0

―――【ワカクサ】の海の底には、竜宮があった。
竜宮の民は、大怪我を負ったディアナが、海の底に沈んでいるのを見つけ、拾い、取り敢えず適当な庵へと移した。



初め、竜宮の民は、迷い人―――あるいは鬼か―――目を覚まさぬディアナの傷を癒していたが、
ディアナの持ち物から、彼女が狩りを行う存在であると確信した。


そういう存在は、人魚の肉を狙う――そういう固定観念が在ったから、
竜宮の民は他の同胞についても聞けやしないかと思い、ディアナを捕らえることにした。

965 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:20:55.232 ID:lZt02eug0
――――ディアナに助けられたネプトゥーンは、其の後竜宮に戻り、長に状況を話した。
長に叱られ、「ディアナが見逃したのも、お前が幼かったからだ」と、

まるでディアナがザンに興味があるように捉える発言をしていたことに、
心にしこりを残してはいたものの、普通の生活を送っていた。


そしてすくすくと育ち、美しい見た目の女人となっていた。


ネプトゥーンは、女のマタギが沈んできた噂を聞きつけ、在り得ないとは思いつつも、其の姿をこっそりと見に行った。
―――其の、まさかだった。


966 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:24:12.923 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンが運よく生還できたのは、ディアナの存在が在ったから。
ディアナが悪いマタギでないことは充分知っていたから、ネプトゥーンは竜宮の民に早速周知しようとした。


――だが、ネプトゥーンの言葉でも、竜宮の民達は考えを取り消そうとしなかった。
其の態度に、ネプトゥーンは、あの時―自分の言葉が信じられていないのだ、と確信し、悲しくなってしまった。


其の後、邪魔にならないように、ネプトゥーンは一時的に部屋に閉じ込められた。

967 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:24:47.765 ID:lZt02eug0
部屋に閉じ込められている時、ふとディアナを拷問にかけ、最終的には処刑しようとする声が聞こえた。

それを聞いたネプトゥーンは、自身の持っていた特別な【力】でディアナを助け、地上へ逃げようと思った。

968 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:27:27.471 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンの持つ【力】――それは、壁の中を泳げる力だ。
自分と自分が触れているものが、自分自身が【壁】と認識した壁の中を泳ぐことが出来る【力】―――。
海の宮処において、ネプトゥーンは自由に動き回れるも同然の【力】――。
最も――水のない場所が壁の向こうにあれば、泳げずに投げ出されてしまうが――。


其の【力】については、長を含め、誰にも知らせていなかった。
其れは、おそらく――ディアナの事を、認めない民への反抗心だったのだろう。

969 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:28:41.246 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンは【力】を使い、閉じ込められた部屋の壁をすり抜け、
ディアナの捕えられている部屋に行き、ディアナを担ごうとした。


けれども、ネプトゥーンよりも身長も高く、体格のいいディアナは持ちあがらない。
どうしようかと悩んでいると、ディアナは目を覚ました。


970 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:31:34.862 ID:lZt02eug0
ディアナ「……君は」

ディアナは、ネプトゥーンを見て―あの時見た顔だと言おうとしたが、その言葉をネプトゥーンは遮った。

ネプトゥーン「話は、後で、早く逃げないと、処刑されちゃう…
       わたしが担ごうとしたんだけど、その、持ち上げられなくて…」

ディアナ「………!」
ディアナは、その言葉に直ぐ反応し、身体を動かそうとしたが、身体がうまく立ち上がらなかった。
最低限の傷だけを治され、そのまま放置されていたからだ。

971 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:36:33.304 ID:lZt02eug0
ディアナは、其の時点で―此の侭、恐らく自身が朽ち果ててしまうのだろう、と考えた。

ディアナ「……俺が此処で死ぬのなら、其れも仕方のない事だ」
そして――落ち着いてネプトゥーンに告げた。

ディアナは、獣を、或いは鬼等を此の手で狩ってきた。
直接的な勝負もあれば、罠に嵌めたり、或いは偶発的なもの全てを利用して仕留めてきた。

だから、こうして怪我を負った自分が死ぬことについて、人魚が此方側を狩るものと捉え、仕方ないと考えたのだ。

972 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:38:18.895 ID:lZt02eug0
ディアナ「君は、此処からさっさと戻ったほうがいい……これ以上巻き込むつもりはない
     俺は、此処で死ぬことになるから――」


しかし――そのディアナの言葉に、ネプトゥーンは―。

ネプトゥーン「わたしは、貴女が好き…なのっ!
       好きな人を、殺されたくなんてないよっ……」

悲痛な泣き声をあげ、大粒の涙を零し、ディアナの身体にぎゅうっと抱きついた。

973 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:41:16.314 ID:lZt02eug0
ネプトゥーン「………
       それに、あの時命を助けてくれたのに、如何して、助けてはいけないの?
       恩返し、したいのにっ

       いいマタギだと思う、貴女を、殺させたくっ…」

ネプトゥーンは、さらにディアナの胸に顔を埋め、涙を流した。
其れと同時に――ネプトゥーンは、ディアナの大きな胸の感触に、少し心音を速くさせた。

974 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:42:59.722 ID:lZt02eug0

ディアナ「………」
ディアナは、此処まで独りで生きてきた。
そして、彼女は恋などしなかった。誰とも子を作ることもしなかった。


孤独に狩りをするマタギであった彼女は、此のような事は初めてであり、少し戸惑い、少し思考した後―――。



ディアナ「……分かった、俺は君について行こう
     最も、此の身体をどうにかしないといけないが……」
―――少々、初めての感情に戸惑いを覚えながらも、肯定の意思を示した。


其れは、ディアナの鋼のように硬く厚い心に、ネプトゥーンの優しい心が入り込み、融かしただからだろうか。


975 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:44:47.264 ID:lZt02eug0

ネプトゥーン「!……あ、あり、ありがとう…」
その言葉に、ネプトゥーンは顔を明るくし、たどたどしく感謝の言葉を告げた。


ネプトゥーン「その、傷を癒す方法……ひとつは、治癒の【力】を使うことだけど、その方法は、今なくて……
       だけど、もう一つ―――人魚の血を飲むことが、あるの」


ディアナ「ザンの肉を食うことと、同じというわけだ…」

ネプトゥーン「うん……その、不老長寿か不老不死かは分からないけれど――
       そういう肉体になってしまうけれど、それならば――」

ネプトゥーンは、言いづらそうに告げた。

976 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:46:02.626 ID:lZt02eug0
ディアナは、数秒考えていたが―。

ディアナ「………分かった、飲もう」
直ぐに、答えを出した。



もし、単なる気まぐれで血を貰うと言うのなら、ディアナは飲まなかっただろう。
自分自身を助けようとするネプトゥーンの心に、ディアナが初めて恋する感情を得たから―。
だから、ディアナは血を飲む事ほ決めた。


そして、ネプトゥーンは、自身の血をディアナに飲ませた。

977 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:48:13.950 ID:lZt02eug0
ザンの肉は素晴らしい。

ならば、その血も素晴らしいのは当たり前だ――。

ディアナの傷はたちまち治り、ディアナにネプトゥーンが掴まり、
【力】を使う事で、ネプトゥーンとディアナは竜宮から逃げ出すことに成功した。



―――見張りも追っ手も、気が付いた時には既に二人は水面まで逃げていた。
海の外へ出る事を望まない竜宮の民は、其処で追い掛けるのを諦めた。

978 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:48:35.486 ID:lZt02eug0
海岸に誰もいないのを確認し、ディアナとネプトゥーンは地上に手をかけた。
其処で、ディアナとネプトゥーンはようやく、逃走に成功したことを確信し、ほっとした。


979 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:51:13.554 ID:lZt02eug0
海岸に辿りつき――其処でようやく、二人は名前を教え合った。


ディアナ「俺は、ディアナ―――君は?」

ネプトゥーン「あ、あのっ、わたしは、ネプトゥーンっ
       そっか、ディアナって名前だったんだぁ―――綺麗な名前だね」
ネプトゥーンが、無邪気な表情でそう言葉を紡ぐ様子に、ディアナは何故か安らぎを覚えた。

ディアナ「ネプトゥーン――其の名も、悪くない―良い名前だ」
そして、ディアナも、微笑みながら、そう言った。

980 名前:社長:2016/08/26 03:54:15.034 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンは身長157cmぐらいの人魚の設定。身長差が凄い百合ップルだ…。

981 名前:名無しのきのたけ兵士:2016/08/30 23:34:52.812 ID:KVOQ909.o
いいぞ。浦島伝説かミ

982 名前:社長:2016/09/04 00:22:34.492 ID:PNG5mMkE0
19レスしかないので一旦埋め

983 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:31:55.363 ID:PNG5mMkE0
フチ「んーっ…!やった、やったっ」

あたしに、シズと久々に一緒にいられる日が来た。

姫の御付の仕事の休みと、シズの鍛冶仕事の休みだ。

984 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:32:08.553 ID:PNG5mMkE0
あたしは、シズの家に来てみたら、シズは、布団の中でまだ眠っている。
その寝姿は、やっぱり可愛らしい。

985 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:33:45.484 ID:PNG5mMkE0
シズは、着ている衣をはだけさせて眠っていた。

シズは、あたしより、ずうっと女の子した見た目の癖に、女の子という自覚が薄くて、油断しているところがあって…。
まぁ、男の大半は男にしか興味がないからいいのだけれど、それでも一部の奴は気にするから…。

あたしはシズにもうちょっと、そのことに気に留めてもらわないと、恥ずかしくて死にそうだ。

986 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:34:03.926 ID:PNG5mMkE0
そんな油断の多い恰好に溜め息をつきながら、シズの家の中を見ている。

ああ、シズ、やっぱり…。

987 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:34:30.414 ID:PNG5mMkE0
シズに再三注意してるけど、シズはやっぱこう…家庭的なことが苦手なんだよねえ。
頑張ってるみたいだけども、やっぱり……。

あたし、一緒に過ごそうかなぁ…?
同棲―――幼なじみだし、昔から時々そうしたことはあるけれど、もしずうっといれたら……。

988 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:35:02.018 ID:PNG5mMkE0
でも、生業がそれをさせないから、なぁ…。
だから、ひと時だけ逢えるこの生き方だけでも、大切にしよう。

シズの部屋の掃除をして、シズのくしゃくしゃになっている衣を畳んで。
時間が経っても、シズはすぅすぅと寝息を立てている。

989 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:35:11.620 ID:PNG5mMkE0
フチ「………」
だめ、あたし――――。

あたしは、顔が真っ赤に赤くなるのを実感した。
何を、なにを想像しているんだ、あたしは……。


990 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:35:29.433 ID:PNG5mMkE0
―――。
けれども、やっぱりシズから目を逸らせられない。
そして、あたしはシズの眠る布団にもぐりこんだ。

フチ「は―――っ」
あたしは、シズの隣に寝転がり、シズの手を撫でた。

シズの手は、鍛冶仕事をしているだけあって、傷があったり、ざらざらとした手だ。
でも、この手がいい。

991 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:36:56.250 ID:PNG5mMkE0
そしていつかは、あたしは眠くなってしまった。
フチ「おやすみ――シズ―――」

あたしは、シズの、温かい、あたたかい手を握って、あたしは眠りについた―――。
適当に縛ったシズの髪も、ちゃんと結んであげなきゃ――と思いながら。

992 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:11.654 ID:PNG5mMkE0
―――わたしは、目覚めた。
久々にフチと居られる休みだけれど、日々の疲れか起きた時には、隣にフチが眠っていた。

993 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:31.866 ID:PNG5mMkE0
フチの小さな手は、わたしの右手を握っている。
わたしは、立ち上がれないので部屋を見渡すと、いつの間にか綺麗になっていることが分かった。

994 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:42.068 ID:PNG5mMkE0
…ああ、わたしが寝ている間に――
フチに感謝して、わたしは布団の中に再び入る。

995 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:53.467 ID:PNG5mMkE0
フチの髪を手で撫でてあげて、わたしはぼそっと「ありがとう」とフチに囁いた。
フチの手を、放すこともあるまい――と思ったからだ。

996 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:38:29.706 ID:PNG5mMkE0
フチの手は、まるで子供のように、柔らかな感触だ。
わたしとは違う、素敵な手だ―――。

997 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:38:49.812 ID:PNG5mMkE0
けれども、例えフチがわたしのようなざらざらの手だとしても、別に素敵ではないと――そうは思わない。
フチは何故だか童の姿ままで育ってしまったけれど、それが何だ。
わたしは、フチと一緒に居られる一時に安らぎを憶えられる。

998 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:38:59.644 ID:PNG5mMkE0
そしてわたしは、手持無沙汰になってしまったので、フチの寝顔をじいっと見ながら、休みを過ごすことにした。

999 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:39:11.459 ID:PNG5mMkE0
―――そして、気が付けばわたしはまた眠っていたらしい。
気が付くと、フチは「そろそろ帰るね」という書置きを残して帰っていた。

今度からは、わたしは頑張って起きよう―――。そう思いながら、再び床についた。

1000 名前:社長:2016/09/04 00:44:58.565 ID:PNG5mMkE0
http://kinohinan4.s601.xrea.com/test/read.cgi/prayforkinotake/1472917464/

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