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ユリガミノカナタニ

1 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:54:48.03 ID:XUiZ9x7c0
??「―――――――。」


―――声が聞こえる。



これは、わたしの一番古い記憶?


何も、見えない。


そこは、暗闇の中―。

301 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:08:43.14 ID:hWYwm.1U0
月の民の男「お前には関係ない
      殺されたくないのならどこかに行け―」



初老の男「…そうか」
一瞬、顔を下に逸らし。



そして、その初老の男は―。


初老の男「そこの娘よ、その得物を貸せ」



そう、わたしに言った。


わたしは、言われるがまま初老の男に太刀を渡した。

302 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:09:44.31 ID:hWYwm.1U0
そして、初老の男は、その太刀を抜いた。


月の民の男「ふん、歯向かう気か―
      人間なぞ100年も生きぬ存在なら、こんな下らぬことは無視しては良かったのにな
      命を無駄にすることはあるまい」


月の民の男は、そう吐き捨てた。


初老の男「―その短き命でも、此の所業を無視して助かろうとは思わない、な
     自身の心に逆らうことは嫌いだ
     人ではないようだが、たとえそんなやつだろうと、私は闘うよ」


初老の男と、月の民の男は互いに突っ込んだ。

303 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:10:12.49 ID:hWYwm.1U0
勝負は一瞬―。



初老の男が、月の民の男の首を、一刀両断した―。

304 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:11:03.72 ID:hWYwm.1U0
わたし「あ……」

わたしは、その男を見つめる。

人間の男は、血を拭き取って、わたしに太刀を返した。

初老の男「………
     危機は、去ったようだな
     ………死体は、川にでも流す」


初老の男は、背を向けて、死体を引っ掴んで、立ち去ろうとした。

305 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:11:34.69 ID:hWYwm.1U0
わたし「待って…」


人間の男「ん」
人間の男は、振り向き。


わたし「助けていただき、ありがとう、ございます…
    …あなたの、お名前は」

わたしは、礼を言い、名前を訊く。

306 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:13:59.68 ID:hWYwm.1U0
初老の男「……私の名は……
     ああ、一応ミヤツコと呼ばれている、な」

初老の男は、そう名乗った。


わたし「…わたしの名前は、カグヤ
    その、信じられないかもしれませんが、月の【姫】と言われています」


初老の男「月の【姫】か……
     なら、さっきの奴も月の者か?
     …それで、何故、私にそんなことを言う?」


カグヤ「…あの
    わたしのことを匿っていただけませんか………
    その、わたしを殺そうとする輩が―
    わたしの同胞の、行方もわかりませんから…」


ミヤツコ「………
     私は、ただの人間だ」


カグヤ「それでも、構いません」


ミヤツコ「……私の住処は、この竹林の向こうだ」

307 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:15:17.68 ID:hWYwm.1U0
―これは。

―この記憶は、わたしの、夢の中でいちど見たことのある母親の―。


カグヤと、ミヤツコが竹林の奥へ―――。


―そこで、光が強く。

308 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:17:03.58 ID:hWYwm.1U0
わたしは目を覚ました。


少女「……この者の中にある剣、おそらく神器のようなもの…
   聞いたことはありませんが、語られることなく作られたものでしょう
   …何にせよ、これは封じ込めなければなりません、この世から
   ―それに、右目の中には勾玉があるようですし」



お供「…この左腕の中に宿る剣が放つ瘴気が、この【魔女】…いいや、【百合神】を―」



少女「対策を練りましょう」

女の子と、そのお供が話し合いをしていた。



女の子「…もう、復活したのですか
    とりあえず、この剣がなければまだ話し合いは出来るようですね」


そんなことを言いながら、彼女はわたしを見つめた。


少女「対策を練りましょう」

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

309 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:18:30.96 ID:hWYwm.1U0
女の子「あなたの体に宿りしこの剣は、何かは分かりませんが、神にかかわるものです
    そして、この右目の勾玉も―
    こちらのほうは、わたしたちもその力は理解しています」


そう、淡々と述べた。

この身がやった禍は、身体が覚えている。


310 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:22:16.51 ID:hWYwm.1U0
少女「さて、何とかしなければ、なりません
   ―ここまでくると―」

ここまでくると―。

もう、わたしは死ぬことすらできぬとんでもない災厄。


ならば。

ああ、わたしが顕現しなければ、この災禍は消え去る―。



鈴鶴「―わたしのことを、封印してほしい」


―この中の神を消すことなどできない。

すでに、わたしとなってしまったから。



そして、また放置していれば再び、わたしが邪神と化すかもしれないから。


女の子「…わかりました」

311 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:23:59.00 ID:hWYwm.1U0
女の子は、神に仕えるその清廉さで、わたしを見つめる。


女の子「最期に、何か残す言葉は―」


鈴鶴「ないわ」


女の子「では、封じの儀式を――」

312 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:25:06.98 ID:hWYwm.1U0
女の子は鏡を構え、術を唱えた。

その途端、空間に、扉が現れた。

それは、すべての光よりもなお強いまぶしい光を放つ扉だった。


女の子「この扉の中に入れば、あなたは封じられます」

鈴鶴「分かったわ」


わたしは、空間に開かれた扉の中、この世とは切り離され場所の中に入った。


わたしが入ると、その空間につながる扉は閉まっていく。

313 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:25:48.45 ID:hWYwm.1U0
そして、閉じる前に。


女の子「…こんなことをいうのは、間違っているかもしれませんが
    もし……この封じすら、あなたの身体が破ってしまったときは…
    どうか……その邪なる力の神としてではなく…
    聖なる力の神として、顕現してくださいますよう」


女の子は、そうわたしに言った。


その言葉に、わたしは頷いて。



わたしは、この世からその身を消した。


314 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:28:10.61 ID:hWYwm.1U0
その扉の中は、まったくの光なき暗黒だった。


――その暗闇の中。


閉じゆく扉から入り込む光の残滓も、消え。


目を閉じ、わたしは永遠の闇に身体を預ける。


闇の静けさが、縁からわたしを飲み込んでゆく。



わたしの意識も、其れに飲み込まれた。

315 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:29:10.73 ID:hWYwm.1U0
わたしは、光のなき永遠の闇へ―。


永遠の夜へ――。



夜の神の力を飲み込みんだわたしは、永遠の夜へ消えた―。




百合神の彼方に―――。

316 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:29:34.20 ID:hWYwm.1U0



ユリガミノカナタニ 完

317 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:32:03.60 ID:hWYwm.1U0
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/538/c07.jpg
ミヤツコ
鈴鶴の父親。若くはない。
竹を取り、それをいろいろなものに加工するのが生業。
剣術の達人。


カグヤ
鈴鶴の母親。
月の神の血を引く、【姫】君。
鈴鶴と体形は酷似している。

318 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:35:33.91 ID:hWYwm.1U0
http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/541/c08.jpg
左からシャクハツ、ホーライ、カショ、シュウシュ、ショウアン


ショウアン
月の民。時間停止能力を持つ。
カショが負け、黄泉剣が鈴鶴に封印される可能性を考慮して、鈴鶴の父であるミヤツコを確保していた。
読み通りになったとき、鈴鶴たちが黄泉剣に封印されたから、修行するぞと騙し、そしてそれを達成。

だが、最期は鈴鶴に殺された。

319 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:37:59.46 ID:hWYwm.1U0
黄泉剣
月の女神の使った剣。
その鍔の目が開眼する度合いで、その呪いは異なる。

この剣は、刃を飛ばし、海の潮を操り、月の光を操る。
また、これに斬られた月の民は喰われて消滅する。

ただし、月の神の血を引くものだけは、その攻撃では傷を与えられない。

320 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:41:43.51 ID:hWYwm.1U0
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/540/c09.jpg
百合神

黄泉剣を体に飲み、邪神となった鈴鶴。
大本は月の神だが、黄泉剣に溶け込んだ月の民の能力も使える。

また、勾玉が右目に収まっている。
この勾玉は、黄泉剣についていたもの。
これには、とてつもないほどの魔力というべき力が溜まっている。

よって、刃を飛ばし、海の潮を操り、月の光を操る能力に加え、
ヤミの風の術、シズの剣術、フチの式神能力なども使える。

また、あらゆる攻撃を加えようと、その身体・服・太刀は再生する。


―最期は、神職の少女によって封印された。
闇の中に溶け消えた百合神―鈴鶴は、永遠に封印されたのか、それとも―。

321 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:58:45.12 ID:hWYwm.1U0
とりあえずこれで終了。
適当なところも多かったSSだと思うけれど読者に感謝。

322 名前:社長:2014/12/14 18:20:26.02 ID:QU65fgNg0
書き忘れ設定

魔女の囁き
百合神となった鈴鶴の守護霊。
例の反撃能力だけでなく、鈴鶴の意思で動かすことができる。
有効範囲は2m、攻撃に加え、掴み念じたものをドロドロに溶かすことができる。

323 名前:社長:2014/12/14 18:59:21.86 ID:QU65fgNg0
鈴鶴(すずる)

・生年月日:792年10月12日
・身長  :165cm
・体重  :45kg
・スリーサイズ:89-61-85
・髪色  :黒
・目の色 :黒
・血液型 :B型
・利き手 :両利き
・一人称 :わたし
・好きなもの:百合の太刀
・嫌いなもの:男
・好きなこと:読書、ヤミ・シズ・フチと過ごすこと
・嫌いなこと:男が迫ってくる
・好きな食べ物:和食、野菜や芋、甘いもの、魚料理
・苦手な食べ物:なし
・好きな色  :純白、漆黒
・嫌いな色  :なし
・得意なこと :剣術、古武道、茶道、華道、書道、料理、植物の栽培
・不得意なこと:水泳
・不得意なこと:運動(とくに水泳)
・好きな音楽 :プログレ、雅楽

324 名前:社長:2014/12/14 19:03:09.61 ID:QU65fgNg0
ヤミ(闇美)

・生年月日:782年5月6日
・身長  :170cm
・体重  :60kg
・スリーサイズ:72-62-78
・髪色  :黒と白(ブラック・ジャックのような感じ)
・目の色 :青
・利き手 :右
・一人称 :わたくし
・背中に翼が生えている
・左指の小指・薬指・中指と右目を失っている
・好きなもの:鈴鶴
・嫌いなもの:妖殺し
・好きなこと:鈴鶴たちと一緒にいること
・嫌いなこと:鈴鶴へ襲い掛かる敵
・好きな食べ物:鈴鶴の手料理
・苦手な食べ物:甘ったるいもの(鈴鶴と一緒に食べるときはその限りではない)
・好きな色 :緑
・嫌いな色 :蛍光色
・得意なこと:天の狗の風の術、それによる滑空、家事、古武道、茶道
・不得意なこと:自分ひとりで自由に過ごす
・好きな音楽:クラシック、ジャズ

325 名前:社長:2014/12/14 19:07:05.57 ID:QU65fgNg0
シズ

・生年月日:はるか昔、フチと同じ年に生まれた。
・身長  :178cm
・体重  :68kg
・スリーサイズ:94-65-92
・髪の色 :白
・目の色 :眼球は黒・虹彩は青
・利き手 :右
・一人称 :わたし
・好きなもの:武器全般、鈴鶴
・嫌いなもの:鈴鶴の敵
・好きなこと:武器の設計、改造、鍛冶
・嫌いなこと:家事全般
・好きな食べ物:精進料理、酒
・苦手な食べ物:パフェなどの可愛い系統のお菓子(味ではなく見た目がニガテ)
・好きな色 :金属系の色
・嫌いな色 :桃色
・得意なこと:武器の製造、武器の取り扱い、剣術
・不得意なこと:家事全般
・好きな音楽:テクノ・ポップ、ドラムンベース

326 名前:社長:2014/12/14 19:09:58.49 ID:QU65fgNg0
フチ

・生年月日:はるか昔、シズと同じ年に生まれた。
・身長  :118cm
・体重  :24kg
・スリーサイズ:60-42-60
・髪の色 :白
・目の色 :眼球は黒・虹彩は青
・利き手 :右
・一人称 :あたし
・火・水・風・土から式神を作り、呼び出す能力を持つ。
・好きなもの:鈴鶴、ヤミ、シズ
・嫌いなもの:男
・好きなこと:鈴鶴たちに絡んだりからかったりすること
・嫌いなこと:鈴鶴たちに嫌われること、鈴鶴たちへの危害
・好きな食べ物:和食
・苦手な食べ物:辛い食べ物
・好きな色 :薄い色
・嫌いな色 :はでな色(ショッキングピンク系)
・得意なこと:呪術、家事系統、芸道、和歌
・不得意なこと:格闘技、剣術(小学生程度の体系だから…)
・好きな音楽:ポップス、ヒップホップ、メタル

327 名前:社長:2015/04/19 20:58:36.555 ID:tsgmBjrA0
これは秘密だけどモッタイナイのでここで新しいssを投下するよ

328 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:00:02.651 ID:tsgmBjrA0




          百 合 ノ 季 節





329 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:02:41.858 ID:tsgmBjrA0


K.N.C.167年、きのこたけのこ会議所・wiki図書館―――。





きのこ軍兵士・集計班とたけのこ軍兵士・社長が、何か話し合っている。
集計班「……前回の大戦では、手酷くやられたものです」

社長「階級制は上手くはまれば大爆発する それが大戦の掟ジイ」

集計班「そうですね……というか、そういう世間話の為にあなたを呼んだのじゃなかった
    ―用件は、この兵士のことです」





集計班は、一枚の写真を社長に見せた。
そこには、ひとりの女性が写されている。


330 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:03:52.157 ID:tsgmBjrA0
社長「性別○」

集計班は、資料を見ながら語る。

集計班「この【たけのこ軍兵士】は……21年前の大戦―146次大戦で、軍神と対等に戦った兵士――
    それによってきのこ軍は逆襲できず、敗北しましたね…
    ―それはともかく、名前は【鈴鶴】…この大戦のみの参戦でした」



社長「こわいよお」




集計班「………そして、その大戦の後に何処かに姿をくらませました…
    一回きりの参戦だとはいえ、強烈な印象を残す女性です…
    ――鈴鶴について、先ほど述べたデータについての資料をどうぞ」



社長「るるるるるるるるるたるんだぞ!」

331 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:07:38.069 ID:tsgmBjrA0
その資料には、このようなことが書いてある――。

鈴鶴(すずる)――。女性。
K.N.C.146年、会議所教官であるたけのこ軍、山本に、近くの竹林で発見される。
その後、146次大戦に参戦。
きのこ軍・軍神と対等に戦い、そしてきのこ軍・軍神を戦死させる。
翌日、兵士登録を消して何処かへと消えた。

階級制の大戦しか参加しておらず、兵士適性検査は実施していないため、適正兵種の詳細は不明……。

332 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:08:35.570 ID:tsgmBjrA0
集計班「そして、この【鈴鶴】の参加した大戦の3年後の大戦…
    …あれは忘れられない大戦でした」


その大戦…K.N.C.149年に行われた149次大戦は、特殊ルールが設定された兵種制であった。
兵士の性別、その連携度で新たなる兵種―紅白兵・薔薇兵・百合兵にクラスチェンジするルールである。


集計班「普段の大戦も男性の参戦者が多かったので、大丈夫だろう、と思っていましたが…
    予想以上に女性が多く、そのうえ百合兵が大量に出現して大量の百合の花びらが舞い散る展開に…
    あの集計の恐ろしさは今でも覚えていますよ……」


集計班は、苦虫を噛み潰したような顔で言う。

333 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:08:55.024 ID:tsgmBjrA0
社長「本題ナンスカ」


集計班「おっと、話が長くなりました…
    用件というのは、その【鈴鶴】について調べてほしいのです……
    あの強大な力と、軍神と対面して打ち勝った鈴鶴には何かつながりがあるのではないか…
    そう感じたのです
    ―兵士でもないのに大戦に介入されるとなると、厄介ですからね…」



社長「いいぞ」



集計班「大規模規制の影響で、色々と暇になってしまってますからね…
    ―お願いしますよ、社長」



――そして社長は、謎の兵士――鈴鶴について、調べることになった。

334 名前:社長:2015/04/19 21:09:29.649 ID:tsgmBjrA0
これは秘密だけど本ssは滝本さんのssの設定を結構パクってたりするらしいよ
みんなには秘密だよ

335 名前:社長:2015/04/19 21:10:01.525 ID:tsgmBjrA0
続きはまたこんど

336 名前:きのこ軍:2015/04/19 23:52:00.771 ID:i3apyJLY0
これマジ?二次利用いいゾーこれ
百合兵…うっ あたまが

337 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:18:58.789 ID:VY8f1bFs0
社長は、鈴鶴と出会った兵士―山本の部屋を訪れた。

一人で【鈴鶴】を調査するというのでは、少々心細い。
そのために、社長自身の作成した自立式メイドアンドロイド―ブラックを連れている。


現在は消息不明のたけのこ軍兵士・スリッパのメイドロボ―サラに感銘を受けて作られたアンドロイドだ。

338 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:19:21.742 ID:VY8f1bFs0
社長「こんにちな!」
ブラック「おはようございます」


山本「おお社長とブラック!何の用かな」
コーヒーを淹れながら、珍しい客に質問をする。




社長「ここに村人たちが集めた5000セントの金貨があります ください!!」
ブラック「【鈴鶴】という兵士について、調べています
     ――山本さん、あなたが教官を担当したとあったのでやってきました
     集計さんに、鈴鶴さんの適正兵種が気になる…と言われまして」


ふたりは、本当の目的は伏せて、当たり障りのない訳を言う。

339 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:19:38.368 ID:VY8f1bFs0
山本「ふむ……【鈴鶴】か……
   彼女は、とても印象に残った兵士だったな……」


山本は、コーヒーを飲みながら、しみじみと語りはじめた。



山本「あれは20年ほど前……新人兵士とともに、竹林で訓練をしていた時だった……」


340 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:19:56.572 ID:VY8f1bFs0
K.N.C.146年、たけのこ軍領地・竹林―――。





山本「ペースを保てッ!そんなものではきのこ軍に勝てんぞっ!」

力自慢の新人兵士たちが、厳しい訓練に取り組んでいた。
新人兵士「はぁーっ…はぁーっ」
新人兵士「うおおおーっ」
新人兵士「ふっ、ふっ」


誇り高き兵士になるよう、きのこ軍・たけのこ軍関係なく――
新人兵士たちは、私の下で訓練を重ねていた―。

341 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:20:19.744 ID:VY8f1bFs0
そんなときだ。

山本「んッ?」
私は竹林の中に人影があるのを見て、立ち止まった。


新人兵士「――どうかしましたか、教官?」

山本「うむー……
   向こうに、人が倒れているのが見えた…」


新人兵士「本当ですかッ!?」

山本「ああ…私は、様子を見に行く
   訓練は、あの竹林の向こうに着いたら現地解散という予定に変更するッ!
   ―あとは、各自自主訓練を行ってくれ」

342 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:20:37.557 ID:VY8f1bFs0
私は訓練を切り上げ、その人影のある場所へと向かった。



そこには、一人の女性が眠るように、片膝を立てて座っていた……。

343 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:20:58.917 ID:VY8f1bFs0
その女性は巫女装束をまとい、その腰には太刀が携えられていた。

顔はとても美しく、閉じた瞼を飾る睫は長く、そして髪は美しいみどりの黒髪であった。
後髪は足まで伸びるほどの長さ―、横髪は黄色い髪留めで縛っていたが、それも長く。
――そして、胸や肩や背に広がっていた。

まるで、【姫】のような佇まいだったな。
―wiki図書館で読んだことのある、【竹取物語】のかぐや姫……そんな感じがした。



ともかく、私は、その女性が生きているのか確認するために、その肩を叩こうと手を伸ばした瞬間…。


手首を、掴まれた。

344 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:21:12.855 ID:VY8f1bFs0
山本「!?」
女性「…………」


女性は、瞑っていた目を開け、こちらを黒々とした目で見つめた。
私は、その瞳に冷たさを感じた。


女性「失礼………」
そして、詫びを入れると、握った手を放した。

345 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:22:11.388 ID:VY8f1bFs0
山本「…大丈夫か?」
私は、女性に容態を聞いた。


けれど、何ともない風で――。
女性「ええ……
   ―それにしても、ここはどこなのかしら?」


女性が質問したので、私は此処が【きのたけワールド】であることを伝えた。
しかし、その女性はきのたけワールド…というものを知らず、会議所のことも知らなかった…。



そのため、私はその女性を、とりあえず会議所へと連れて行ったのだ……。


当初、女性――鈴鶴は、大戦に参加するとは言わなかった…。

だが、その翌日に大戦に参加すると言ったため、私は担当教官として訓練をすることになったのだ…。

346 名前:社長:2015/04/21 00:23:40.968 ID:VY8f1bFs0
今日はここまで

347 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:04:41.756 ID:/mk7xrkw0
K.N.C.146年、きのこたけのこ会議所・教練所―――。





私は、鈴鶴の手首を掴む咄嗟の反応を見て、
ただものではないと感じていたため、担当教官に立候補したのだが……。

その判断の通り、鈴鶴はただものではなかった……。



座学として、きのこたけのこ大戦の知識などを教えようとしたものの……。

既に、wiki図書館などで調べていたようで、直ぐに終わってしまった……。

348 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:07:18.900 ID:/mk7xrkw0
次に、鈴鶴に素振りをしてもらった。

私の訓練に取り組む者の、通過儀礼だ。
新人兵からは厳しいなどと言われるが、あれぐらいは必要だと私は思っている。


…だが、その素振りのフォームはとても綺麗で、私が口を挟めるところがなかったのだ……。

数々の新人兵士を受け持ったが、これほどまでの兵士は見なかった。


しかも、幾度となく振っても、剣筋に―いや、太刀筋に迷いがなかった。

349 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:09:30.465 ID:/mk7xrkw0
――そこで、予定を変更し、私は腰に携えた太刀というところから、剣術を見せてもらった。

そして見せられた剣術の腕は抜群だった。


山本「では、この巻藁が的だ」


―-緊張した一瞬が、そこには流れていた…。

鈴鶴「はっ!」


そして、鈴鶴は瞬き…いや、それよりも短い一瞬で巻藁を斬った…。


その腕前は、まさに達人…。剣豪といってもいい、素晴らしい腕前だった。

350 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:10:41.967 ID:/mk7xrkw0
次に、銃火器の扱い―飛び道具の扱いを見たが、これも抜群の腕前だった。


弓はもちろん、銃の扱いも十分といっていいほどだった。


的に狙いをつけ、的確に命中させていった。


鈴鶴は、銃なんてろくに練習していない、そう言いながらも抜群の腕前を見せたのだ……。

351 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:13:12.313 ID:/mk7xrkw0
……そして、社長作のホログラム・トレーニング装置で戦闘テストをしてもらったのだが……。


襲いかかるホログラムに対し、的確に対処していった。

冷静に、対処する順番を見極め、太刀を振り銃を撃ち、時折体術を挟み込み……。


――鈴鶴は、訓練を始める前に水術―いわゆる水泳は不得意と言っていたが…。

ざっと見ただけでも、格闘技も数多くこなせているのが目にとれた。
―むしろ、なぜ水術だけができないのか…そう思ったほどだ。



―ともかく、鈴鶴は100体のホログラムをすばやく、すべて撃破したのだ。

352 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:14:39.628 ID:/mk7xrkw0
私は教官として教えることはなく、たった一日で訓練が終わってしまった…。
正確には、他の訓練コースもあったが、ここまで出来る人物は、態々訓練に参加させる必要はない。


戦いのコツというものを知っているうえ、その技術は長年の鍛錬からなる、そう感じられたからだ。


―そして、私は訓練を終わらせた……。


今でも、あのような優秀――いや、化け物のような兵士は見たことがない。

353 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:15:30.238 ID:/mk7xrkw0
訓練が終わったあと、私は鈴鶴と会話をしたのだが…。


山本「…いや、本当に悔しいが……
   私に教えられることは、ない!!」

鈴鶴「……………」

鈴鶴は、口数が少ないようで、何も言わなかった。
―応答ぐらいで、世間話はあまりしない性質のように見えた。



だが、どうしても気になることがあり、私は最後に一つだけ質問した。


山本「…その腕前、何処かで習ったのか?」

354 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:16:45.115 ID:/mk7xrkw0
鈴鶴「……ええ、そんなところよ…」
鈴鶴は、少し暗い声で答えた。



山本「なるほど…
   ならば、私が教えるまでもなかったというわけだな…
   ―良い活躍を期待してるぞ!」

私は、その答えに納得し、鈴鶴を見送った。
鈴鶴の答えは、少し暗い口調になっていて、それ以上は深入りできなかったのだ……。

―それは、鈴鶴の雰囲気によるものなのかは、わからなかったけれどもな。




山本「………と、これが私の語れるところだな」

山本は、コーヒーカップを机に置いて語り終えた。

355 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:19:10.634 ID:/mk7xrkw0

社長「べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜」
ブラック「……鈴鶴さんの、活躍を知っている人、はいないのでしょうか?」

まだ、情報が足りない。


山本「うむー…その大戦は、私は鈴鶴のいる部隊に居なかったからな…
   ―だが、たしか加古川さんが同じ部隊だったはずだ

   力になれなくてすまない」


―だが、めぼしい答えは出ず。
山本は、あごに手をやりながら、申し訳なさそうに言った。

ブラック「いえ、大変参考になりました」

山本「そういってもらえると、助かるな

   ―まぁ、頑張ってくれ」


社長「ありがとう、やっ」
ブラック「ありがとうございました」


山本の応援を聴きながら、ふたりは部屋から出て行った。

356 名前:社長:2015/04/23 19:19:21.290 ID:/mk7xrkw0
きょうはここまで

357 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/04/25 00:16:05.029 ID:Dr3bM.5Uo
加古川さん くる!?

358 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:29:52.847 ID:dFI0TBKI0
続いて社長は、加古川に鈴鶴の活躍を聞きに行った。




加古川「146次大戦、鈴鶴の活躍……
    ……ああ、あれは今でも覚えているよ
    

    ―何しろ、軍神と互角以上の戦いをしていたからね……
    私は、今でもあの大戦を忘れられない」


359 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:33:49.306 ID:dFI0TBKI0
K.N.C.146年、大戦場―――。



私たちは、たけのこ軍優勢の中、迫る敵を撃破する作戦を実行していた…。
私のいた部隊のひとりに、その女性―――鈴鶴が居た。


鈴鶴「……………」

ほかの兵士は戦果を挙げることにわくわくしたりしていたが、彼女は違ったのだ。

彼女は、非常に落ち着いていた。

もしかしたら、戦いに沸き立つ他の兵士を冷ややかな目で見ていたのかもしれない。


それに、口数も少なかった。
他の兵士は世間話もしていたが、鈴鶴は一切の無言―。


もっとも、その部隊には彼女しか女性がいなかった、ってのもあるかもしれない。


だが、兎も角彼女は素晴らしい活躍をしていったんだ。

360 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:39:15.564 ID:dFI0TBKI0
敵兵「うぎゃああーーッ」
敵兵「く、くそぉ…」
敵兵「うわあああああん!」
敵兵「びええええええん」


私もそれなりに撃破したが、何といっても彼女はその携える太刀さばきが素晴らしかった…。

銃を持った敵兵だろうと、それをかわしつつ斬り込み、
またあまりにも近すぎる敵には、手刀で対応し………。
――その上、銃の腕前も抜群だ……遠距離の敵も正確に射抜いていった。



だが、彼女の一番凄いところは、着々と戦果を挙げながらも、それでいて冷静だったところだ。
ふつう、兵士といえば撃破王に近づくために興奮するというのに…。


彼女は、地位などにこだわりなんてなかったのかもしれないな。


他の兵士が彼女に話しかけても、彼女は一切の無言だった………。

361 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:41:01.348 ID:dFI0TBKI0
それに、きのこ軍の仕掛けた罠も、即座に破壊していった……。
長年戦った私でも気づかない罠…聞くところによると、
他の部隊は引っかかって苦しんだという罠を、あっさりと見抜き、解除していったのだ。



加古川「…素晴らしいな、私だけなら引っかかったかもしれない……」

鈴鶴「……………」


けれども、彼女は私と無駄話はせず、黙々と侵攻していった……。

――そのころには、私の部隊は、私と彼女だけという、少し逼迫した状態。

だが、兵士を集めても敵うかどうかという実力の彼女がいること、
その時の状況はたけのこ軍が有利、勝ちを確信していた。

362 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:42:06.991 ID:dFI0TBKI0
きのこ軍に、軍神が現れた……。
しかも、目の前にな…。戦闘力の非常に高い軍神相手だ……。

当然ながら、部隊の構成人数はその時二人。近くの部隊と合流を考えたのだが………。




加古川「!?」


彼女は、軍神の方へ向かっていった……。
そのきのこ軍・軍神と、彼女は真向にぶつかり合ったのだ……。

363 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:44:34.932 ID:dFI0TBKI0
軍神「なにぃッ!この攻撃もかわすだと!」
鈴鶴「きぇーーーっ!」


――鈴鶴は、決して無謀者ではなかった。

軍神の素早い攻撃を、彼女は冷静に往なしていったのだ!

しかも、彼女は、受けるダメージは最小限に抑えつつ、的確な一撃を、反撃を加える。


軍神「うおおおりゃああああ!」
鈴鶴「ふん――!」

軍神の持つ剣と、彼女の持つ刀が金属音を発していた。
時折、軍神は蹴りなど体術を織り交ぜるが、それにも彼女は的確に対処していった。


――軍神ならば、その攻撃威力や攻撃速度や反応は凄まじいはずなのに…。

彼女は、それと互角、あるいはそれ以上だったのかもしれない…。



364 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:45:54.496 ID:dFI0TBKI0
――そして……。


軍神「ば…ばかな……」
彼女は軍神を撃破したのだ―――。



そして、神を撃破したばかりだというのに、彼女はただ前へと進んでいった。
それが凄まじいことだということを知らなかったのか、あるいはそれすらもただの戦いだと感じていたのか。



……そして、この大戦で、たけのこ軍が勝利した。

365 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:47:56.265 ID:dFI0TBKI0
加古川「今でも、あの冷静に進んでいく鈴鶴の姿は忘れられん
    ―だからこそ、その翌日に兵士として参加することを取り消したことは驚いたよ…
    止めはしなかったが、ね……」

加古川は、腕を組み目をつぶりながら、名残り惜しそうにそう戦いの記憶を話した。

社長「あーもーお前らうるさいよ!」
ブラック「……その理由や、何処に行ったかは教えてくれなかったのでしょうか?」

―おそらくは、Noであろう答えであろうと、念のために聞く。


加古川「一応聞いてみたが、答えはなかったな…
    ―――大戦に参加した理由も、だがな…


    ……どこぞの集落に居るのかもしれないが、それが皆目分からないんだ」

残念そうに加古川は言った。


366 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:48:34.907 ID:dFI0TBKI0
社長「星。」
ブラック「…ううむ、調査は難航しそうですね…」


加古川「そういや、なんで鈴鶴のことを調べているんだ?」


社長「えっとー…今何時?」
ブラック「集計班さんに頼まれて、鈴鶴さんの適正兵種を調べたいから――だと」

―山本の時と同様に、当たり障りのない理由を答える。


加古川「ふむ、どんな結果が出るのか期待しているぞ」

社長「はい いいえめ!もうくるな!」

367 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:51:52.787 ID:dFI0TBKI0
社長とブラックは、考える。


鈴鶴は、武芸に優れた人物であり、恐らく何処かで習っている…。
そして、ここがどこであったかを知らない……。

別世界からの来訪者……それも、武芸に優れた……。
――DBなる存在も、その説があるという。ならば、同じように???


軍神と遣り合えるだけの力がある――つまり、鈴鶴は神に近い存在……。
神に近いなら、大戦に介入することができる………。
圧倒的な実力が、それを物語る。


DBは、大戦に介入してきた。あの、邪悪なる存在―DBは、邪悪なる神……。


やはり、別世界にかかわりがあるのか?
そして、邪悪なる神なのか、化身なのか?






―そこで、鈴鶴の行方を追うことにした。

答えが見つかるかは分からないが、やれるだけのことはやりたいために。
どこかの集落で、話が聞けるかもしれないから。

368 名前:社長:2015/04/25 00:52:08.037 ID:dFI0TBKI0
今日はここまで

369 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/04/25 01:02:59.397 ID:Dr3bM.5Uo
乙乙。
鈴鶴さんの正体を追っていく流れいいぞー。

370 名前:百合ノ季節:2015/04/25 22:58:40.301 ID:dFI0TBKI0
けれど、姿は見たことがあっても、その居場所はつかめない。


ところどころで、その姿に関する証言は得られるも、肝心の居場所がつかめない。

女性「――この人は、わたしが襲われそうになったことを助けてくれたんです
   持ってた太刀の鞘で殴ったり、蹴りを入れて追っ払ってくれました――……」


男性「ヒィッ!……この女は怖いぜ…?
   なんてたってナンパしようとしたら睨みやがったんだ!あの目が…怖くてよぉ
   ごみを見つめるような……とても凍てつく怖い瞳だったんだよぉおお」


社長とブラックは、手分けして聞き込んだ。

371 名前:百合ノ季節:2015/04/25 22:59:03.567 ID:dFI0TBKI0
―そんな中、ブラックがとても気になる話を聞いた。

女性同士のカップルに、鈴鶴の写真を見せると、興味深い話をしたのだ。


ひとりの名はサツキ。もうひとりの名はリッカ。

372 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:01:04.335 ID:dFI0TBKI0
サツキ「鈴鶴さんは………
    わたしたちの恋、助けてをくれたんです…………」
感慨深そうに、語る。

ブラック「………どんな話ですか、差障りがなければ……」



サツキ「あれは、昔のお話です……」


――当時、わたしたちは、リッカと一緒にデートしていました。


わたしもリッカも、互いに女の子でしたけれど、互いを恋人として愛していました。
もっとも、それが分かったのは告白してからでしたけれどね。

373 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:01:26.805 ID:dFI0TBKI0
K.N.C.148年、フォレストリィ公園―――。

――けれど、やはり女の子同士。
世間一般的には、男女のつながりというものが当たり前ということで、わたしは先に進めないでいました。


その日も、リッカとのデートが終わった帰り道。

家の近くにある公園で、一体どうすればいいか………。そう、悩んでおりました。

374 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:01:53.758 ID:dFI0TBKI0
その日、その女性――鈴鶴さんがその公園に居たのです。
時刻はちょうど夕日が昇るときで、烏も鳴いておりました。

鈴鶴さんは、とても美しい顔と、とてもきれいなみどりの黒髪をしておりました。
とくに、あの髪は長く、足まである後髪、横髪も胸か腰ほどまでにあったことが印象に残っております。


鈴鶴「……………」
そして彼女は、夕日をじっと見つめて、四阿でお茶を飲んでいました。

375 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:02:05.493 ID:dFI0TBKI0
サツキ「こんばんは」

鈴鶴「……どうも」


サツキ「……きれいな、夕日ですね」

鈴鶴「そうね…」

わたしは、鈴鶴さんと、しばらく世間話をしていました。
なんでも、鈴鶴さんは旅をしているとか。

女の身一つで、さまざまな場所を歩いてきたこと驚きを隠せずにいました。
しかしながら、よく見れば彼女は太刀を携えていて、それがあるからこそなのか、と思いました。

376 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:02:18.337 ID:dFI0TBKI0
そして、季節のお茶―百合のお茶を飲みながら、話しているうちに、
わたしの恋について相談しました。


なぜか、その人に相談すれば、何かがつかめるかもしれないと感じたからです。

サツキ「わたしは、友達の……たいせつな友達のことが、恋人として好きなのです
    ―けれども……同じ性という心の壁が、どうしても先に進むことを―
    告白することを、躊躇させてしまうんです


    ………どうしたら、いいんでしょうか」

377 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:02:29.775 ID:dFI0TBKI0
鈴鶴「………
   確かに、世間の常識から外れてしまう…そのコトは怖いでしょうね


   ――けれども、生きることは、何か怖いということに手を突っ込まないといけないことがある
   ……それが闘争なのかもしれないし、あるいは自分の人生を賭けることなのかもしれない



   …けれど、貴女がその子を愛しているというのなら、其れは言うべきでしょう

   ――愛する人と、ずっといたいのなら……
   …愛する人と別れる悲しみは、何よりも悲しいことでしょうから」
鈴鶴さんは、少し考えてから、そう言いました。

どこか悲しく、切ない雰囲気を漂わせながら。
それは夕日のせいかもしれませんし、もしかしたら鈴鶴さんが体験したことなのかもしれません。

378 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:03:42.855 ID:dFI0TBKI0
サツキ「……わかりました

    ―――明日、告白しようと思います」

そして、わたしはその言葉を聞いて、告白することを決めました。


鈴鶴「うまくいくことを、祈っているわ…」

鈴鶴さんには、その様子を見てくれることになりました。

379 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:04:17.871 ID:dFI0TBKI0
――そして翌日、わたしはその公園でリッカに、自分の恋する気持ちを告白しました。

サツキ「…リッカ、わたしはあなたのことを……
    おなじ女の子だけれども、心から愛しているの」

リッカ「……先、越されちゃったな
    わたしも、あなたのこと……」

…リッカも、同じ気持ちのようで、それを受け入れてくれました。



そして、わたしとリッカはキスを―誓いの口づけを、互いに行いました。
――恋愛の聖地と呼ばれるこの公園は、愛する人が口づけをすると永遠に結ばれる伝説がある場所。
他にもカップルがキスをするのだとはいえ、少し恥ずかしかったですけれども…。



………そんなときです。


380 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:04:38.809 ID:dFI0TBKI0
そばにいた男性たちが、それにいちゃもんをつけたのです。

男性たち「おい!なんでキスしてるんだよ!女同士だろうが!!」
その声は脅すようで、とても恐ろしく。しかも、石を投げてきたのです……。



――そこに、鈴鶴さんが現れました。
そしてわたしたちの前に、わたしたちを護るように進んでいきました。

381 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:04:50.341 ID:dFI0TBKI0
男性たち「あ?なんだてめえは……」

鈴鶴「……あなたたちは、何が目的?嫌がらせ?それなら頭がおめでたいわね……
   何の罪もない子に、石を投げようとするなんて………」

男性たち「おいおいおい!同じ性別どうしなんかおかしいし気持ち悪いだろ!」

―その言葉に、わたしたちはショックを受けました。
やはり、一般から外れていることは、よくないことのなのだろうか――と。

382 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:05:06.373 ID:dFI0TBKI0
鈴鶴「貴様らは、随分と頭のおめでたい人間のようね……
   ――それとも、そう考える蛆のようなものはずうっと湧くものなの?

   …いつの世も、そんな蛆虫野郎はいるのね」

男性たち「はぁ?ふざけるなよ、このアマ……」


鈴鶴「人の生き方に、自分と合わないからとケチをつけて、その上それに攻撃する……
   ―で、何を考えていたの?強引に洗脳?その為に色々とするの?」


鈴鶴さんは、その男性たちに怒っている――そう、感じました。
最も、口調はわたしが出会った時のように、静かな口調でしたけれども。

383 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:06:01.374 ID:dFI0TBKI0

鈴鶴「………
   ――どうやら、貴様らは、此処で始末しなければならない存在のようね」


そう言うと、鈴鶴さんは石を拾い上げ、ひとりの目に投げつけたのです。


男性「うぎぇああああああああ!」

男性たち「ひい!」


鈴鶴「…どうしたの?
   ――さっきまで、石を投げていたじゃない

   こんな風に……ねぇ?」
その時の鈴鶴さんに、すこし怖い印象を抱きました。
わたしたちを助けてくれているはずなのに……。


男性たち「う、うわあああああああああああああああ」

…そして、男性たちは逃げていきました。

384 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:07:47.095 ID:dFI0TBKI0
――そして、鈴鶴さんはわたしたちに恋の成就を祝福すると、何処かへと去っていきました―――。

鈴鶴「決して、貴女達はおかしな存在ではないわ
   ――自分自身のあり方を、見失わないように、ね」

そう、言い残して。




サツキ「……以上が、鈴鶴さんのお話です」

リッカ「―鈴鶴さんのことは、サツキから詳しく教えてもらいました

    ………ずっとサツキといっしょだけれど、もういちどお礼がしたい

    ―自信も、つけてくれたし…」

サツキ「…うん」

―そして二人は、すこし赤面しながら手をぎゅっと握った。


ブラック「ありがとうございました」

ブラックはアンドロイドなれど、この邪魔をするのは悪い、と去って行った。

385 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:08:56.628 ID:dFI0TBKI0
―同時刻、社長は、K.N.C.147年の新聞記事を読み、気になる事件を見つけた。

男が、次々と殺害された事件が起きたというのだ。


―――其れについて調べたところ。

・男たちは、すべて拷問の末に殺されたと推定されている。
 死因としては刀傷だが、銃で撃たれたりなどしていたという。
・男たちは、婦女暴行犯として前科があるものもいた。
・そのうち一人は、右目に負ったばかりの大きな傷を負っていた。



―そのような情報を得ることができた。

386 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:10:34.334 ID:dFI0TBKI0
…そして、ブラックと合流し、見つけた情報を照らし合わせると、ひとつの事実が仮定された。


ブラック「もしかして、件の男たちってのは……」
社長「死ねよ」


ブラックの聞いた、サツキとリッカに出てきた男たち……。
時期も一致し、ひとりは片目に傷があるという。

そして、刀傷――。鈴鶴は太刀の達人だ。
銃も器用に扱えるなら、持っていたのかもしれないだろう。


しかしながら、証拠は何もない。
もし、出会えたとて、口を割らないだろう。

―鈴鶴は、そんな心の弱い人物ではない。
何より、戦いだろうとなんだろうと冷静に行ってきた人物だから。


――――そして、たくさんの場所を巡った。

387 名前:百合ノ季節:2015/04/25 23:11:16.757 ID:dFI0TBKI0
今日はここまで。鈴鶴さんは女の子だけどイケメン

388 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/04/25 23:55:15.900 ID:Dr3bM.5Uo
怖すぎィ

389 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:33:21.762 ID:wCUm8jOA0
数多くの場所を巡ったけれど、もう目ぼしい情報は見つからなかった。


―今回の調査は、【百
合兵】が関わっていて、百合兵は、女性同士の連携が関わっている。
……そして鈴鶴は、女性同士のカップルに対し、好意的であったと考えられる。

――軍神と遣り合える彼女が、其れに対し特別に思いがあるのなら、もしかすると……。


けれど、そうであったとして、一体何故干渉したのか?
………仮に干渉していた場合、どう対処すればいいのか?



………それは分からず、社長とブラックは調査を続ける。
しかし、何一つぐっとくるような情報は得られなかった。

390 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:36:32.766 ID:wCUm8jOA0
K.N.C.167年、どこかの森林―――。



その日、社長とブラックは森の奥にある集落へ向かおうとした。


―森の途中ほどにたどり着いたとき、不意に後ろから女性の声が聞こえた。

女性「…ねぇ」

―その声は、凛とした声。そして、その声には冷たさが宿っている。


社長「誰だお前は!?」
ブラック「…誰ですか」
―――ふたりは、後ろを振り向くことができなかった。



その、ただ一言の声に、凍てつくほどの恐ろしさを感じたからだ。

391 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:38:45.628 ID:wCUm8jOA0
女性「……どうして、わたしのことを、調べているの…?」
その声を聴くたびに、氷柱が眼前に落ちてくるような感覚を感じる。

社長とブラックは、どうしても振り向けない。



けれど、【わたしのことを調べている】――。

そう、言った。



その言葉から、恐らく、その女性は……。

もっとも、社長もブラックも、それを声に出すことはできなかった。
冷たい、凍える威圧感が、それを行わせまいとしている。

392 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:39:49.802 ID:wCUm8jOA0
社長(ぺろちょねふって言いたいけど、ここは我慢するね!)
ブラック「K.N.C.149年の大戦……、互いの性別の絆から新たな力が生まれる大戦―
     それに、女性同士から成る百合兵という兵士から異様な力を確認しました
     …その兵士と同じ枠に存在する、男女から成る紅白兵と…
     男性同士から成る薔薇兵からは其れを確認できなかったのに…

     
     ―――その要因は、何故なのか……それを探っていました
     
     …その大戦の3年前、146次大戦にのみ参加したとある人物が…

     ―――それに関わっているのかもしれない、それを調査しに来ました」



ブラックは、凍てつく空気に飲み込まれるのを我慢しながら、問いに答える。

――明確に、その人の名を出さず、けれど調査をしている理由を。

393 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:41:41.288 ID:wCUm8jOA0
女性「その人物が、関わっているとして
   ………どのような、問題があるの?

   ………いいや、問題があるんでしょうね…
   ―――――異様な力の要因を探らなければならない、その訳が………
   その口ぶりからすると…」


社長「死の遊!」

ブラック「………大戦をすることが、この世界のハシラなんです


     ――それは、誰も犯してはならない不可侵の事柄

     ……けれど、過去、DBなる存在――邪神と呼ばれた存在は、その行為を行いました
     ――無事に退治はされましたが、……その事柄に踏み入られることは……


     ――――――とてつもなく脅威になるのです」

394 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:42:14.586 ID:wCUm8jOA0
女性「……………」


女性は、何も言わない。
社長とブラックの後ろで、女性は何も言わなかった。




ブラック「………そして、149次大戦の事柄…

     ――もし、【何者か】によって干渉されたなら………
     それは、……………

     ――そして、その力が此処ではない【どこか】からの来訪者に因るものであれば……
     ……………」



395 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:43:14.306 ID:wCUm8jOA0
女性「……………」

――凍った空気が、その場を流れる。


沈黙は続き、緊張した空気の濃度が高くなる―――。


社長「……………」
ブラック「……………」





女性「……………成程」


――そして、その沈黙と緊張を女性は破った。

396 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:44:05.854 ID:wCUm8jOA0
女性「……………――この世界の秩序の為に、その禁忌に触れたかもしれないわたしを
   ――追いかけてきたというわけか…」

   ……………あなたの言うとおり……

   わたしは、こことはちがうどこかから来た存在であり……


   ―――邪悪なる神―――あながち、間違いではない」

淡々と、言葉を語り続ける。


ブラック「………」



女性「神としての力があるなら―――この世界の、禁忌に触れることだってできるでしょう………」


女性の淡々と語るその言葉に、ふたりの緊張は高まる。

397 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:46:32.686 ID:wCUm8jOA0
ブラック「……では」



女性「……けれど、わたしが【大戦】に関わったのは…
   ただの一回………、確か、階級制だった…」



―けれど、そこに返ってきたのは予想外の答え。
取りざたされている問題の大戦は、兵種制であり、階級制との関わりはない。

社長「ショップエスターク」
ブラック「……………え?」
その答えに、社長とブラックは困惑する。


女性「………この世界の【大戦】……
   ――其れがどのようなものなのかを、知るために戦った、ただ一回……」



女性は、当時を懐かしむような声で、そのことを言う。

398 名前:百合ノ季節:2015/04/26 18:47:55.359 ID:wCUm8jOA0
ブラック「…では、百合兵については………」

女性「………わたしは、あの一戦に参加して、【大戦】に込められた思いが分かった後は

   ―――――集落を旅し、大地を駆け抜け、そして誰も知らぬところを目指した……」


ブラック「……………つまり、私たちの予想は外れていたということですね
     百合兵の件には、関与していない…」


女性「…そういうことになるわね」



社長「何!それは本当かね!それは…気の毒に…ポポリポポ」

ブラック「………では、なぜ私たちの調べるその事項は起こったのでしょうか…」

399 名前:百合ノ季節:2015/04/26 19:02:26.426 ID:wCUm8jOA0
女性「………わたしにとって、考えられる要因は―――

   …その兵士の名前に宿る、コトダマ……」


ブラック「コトダマ?」



女性「万物には名前があり、その言葉にはそれぞれ【魂】が宿っている……
   ………百合に宿りしコトダマは、威厳であり、純潔―――――
   薔薇に宿りしコトダマは、愛であり、美――――
   紅白に宿りしコトダマは、出会いであり、別れ―――


   ………おそらく、その大戦に宿りしコトダマは、絆であり、愛であり、出会い―――


   ……その大戦に宿っているコトダマと同じならば、自然に見えるけれども、
   百合の威厳と純潔さは、そのコトダマにとって不自然なもの……



   ―――だからこそ、其れに反発するように……大いなる力が起きた…


   ……あるいは、百合―女の子どうしの絆に恨みを持つ者か…」

400 名前:百合ノ季節:2015/04/26 19:04:06.428 ID:wCUm8jOA0
社長「やはりそうでしたか!」
ブラック「………コトダマの違和感か、だれかの恨み…」


女性「……少なくとも、わたしの与り知らぬ領域よ…」



社長「すまない!やるだけのことはやったんだが…」
ブラック「………ご迷惑をおかけしました

     ―――疑ってしまい、申し訳ございません」



意外なる結論を聞いたふたりは、無礼を詫びた。
――きちんと向かい合ってするべきなのだろうけれど、その冷えた空気は未だ後ろを振り替えさせず。


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