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ユリガミノカナタニ

1 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:54:48.03 ID:XUiZ9x7c0
??「―――――――。」


―――声が聞こえる。



これは、わたしの一番古い記憶?


何も、見えない。


そこは、暗闇の中―。

901 名前:月夜見の遺産:2016/05/13 23:55:58.376 ID:XsKN/Qg20
破落戸3「ひ、ひッ………」
その様子を見て怯んだ破落戸は、其の場を動けない。
がたがたと、腰を抜かして震えていようと、お構いなく、思いっ切り殴打し殺した。

その力の差は、誰が見ても、一目瞭然。
鈴姫と破落戸では、闘いの勘が違うのだ。

最も、鈴姫は、歴戦の強者、と言うほど、何百、何千回と闘いを経験していない。
けれど、ずうっとずうっと、鍛冶屋が鉄を鍛えるように、鈴姫はたいせつなひとと技術を高めてきたのだ。

だからこそ、闘いに関する勘は、常人よりも遥かに遥かに―――。

902 名前:月夜見の遺産:2016/05/13 23:56:21.052 ID:XsKN/Qg20

破落戸4「俺、オレは、何も…」
破落戸5「逃げ…」
逃げようとする破落戸たちにも、鈴姫は疾風の如き素早さで、飛び、峰打ち――、
そして、その勢いを保ったまま、全力の踵落としに裏拳で殺した。



鈴姫「………」

村人たちは呆然としていた。
鈴姫自身には、迫り来る敵を殺すことに何の揺らぎもないけれど、
それでも、そのことがまともな人間のすることではないと知っていた。

903 名前:月夜見の遺産:2016/05/13 23:56:37.737 ID:XsKN/Qg20
鈴姫「流石に、人を殺すような人間は、こんな穏やかな村に居ていい道理はないでしょう」
鈴姫は、そう言うと、破落戸どもの死体を引き摺りながら、村を出て行った。

鈴姫「民宿の人には、わたしは消えたと伝えておいて―――」

904 名前:社長:2016/05/13 23:57:27.169 ID:XsKN/Qg20
鈴鶴を倒せる男などいない。
女なら倒せるやもしれない。

905 名前:791:2016/05/14 22:40:48.962 ID:kyv2rmvAo
更新おつ

906 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:06:37.717 ID:18vGAI1.0
―――鈴姫は死体をそこらに投げ捨て、さてどうするかと思いながら、村の近くの森の中に再び居た。

鈴姫「………」

鈴姫は、身から出た錆となって、破落戸どもの残党が報復に来ないかということを考え、
それがないように見張り、見張り―――。

そして、日が経ち続け、それがないことを確信すると―――。


907 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:08:11.ウンコ ID:18vGAI1.0
鈴姫は、目を見開き、自身の左腕と右目に、力を込めた。


―――鈴姫の左腕には神剣が、あの子の右目には神剣の飾り――いいや、神剣の本体である勾玉が在る。

神剣、そして勾玉に宿るその闇の力は、月女神の純なる血を持っているからこそ扱える。

908 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:08:43.636 ID:18vGAI1.0
鈴姫「どうやら、この力は、自在に操れるようだけど……」
禍々しい漆黒の瘴気、闇色に染まった右眼と、青白い瞳―――。

そして、その身体には、月女神の紋章が、刺青のように浮かび出ていた。
最も、其れは衣に隠れて見えないけれども、それは魔女と呼ばれて然るべき雰囲気を漂わせていた。


神の力を顕現させても、鈴姫は冷静だった。

909 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:09:33.875 ID:18vGAI1.0
鈴姫「―――!」

月女神は、闇の世界を統治している。
だからこそ、その女神の力を扱えるということは、闇へと潜れるということなのだ。

鈴姫「これは―――?」

鈴姫は、月女神の力を用いて、闇の中へと潜りこんだ。
星の瞬く、不思議な闇の中へ。

そこは、宇宙の中のような、幻想的で、そして寂しい空間だった。
しずかな、音もしない暗闇。

910 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:11:26.303 ID:18vGAI1.0
無限に広がる其の闇の中は、鈴姫自身の作り出した、狭間の世界だったのだ。

鈴姫「…………」

鈴姫は、自身の棲家をこの闇の中にしようと決めた。
それと同時に、如何して再び顕現したのかを考えていた。


嘗て魔女に堕ち、わけの分からぬままに男を殺しに行った業が、鈴姫にはある。
魔女となり殺した男どもは、鈴姫が嫌うような種類の男どもだとしても―――。

鈴姫に触れることが許されない―――わたしの力が吹き飛ばすに値する男どもだとしても。

鈴姫は、意思のない行動による業がある。
魔女の、操を護る本能の力ではない、ただの殺意によるそれが。

911 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:11:39.995 ID:18vGAI1.0

魔女の力は、世界を混乱させた。
そして魔女の引き起こす災禍を止めるために、鈴姫は封印された。


けれども、その封じが、解かれた――あるいは解けた意味を。


鈴姫「………………」
熟考の末、鈴姫は――。

自身が、悪しき魔女ではなく―――、
――善き魔女として、善き神としてやり直すために再顕したのだと考えた。

そう、鈴姫を封じた少女は言っていたから。

912 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:12:51.306 ID:18vGAI1.0
世界を混乱させた、自身にをやり直す―――。
そう考えて―――。


鈴姫「さて、それにしても、どうするか………」
鈴姫は、闇の中から出て、世界を彷徨い始めた。

913 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:15:03.239 ID:18vGAI1.0

道中、鈴姫はその日暮らしの旅烏を装いながら、様々なところを歩き廻った。

時には悪鬼を打倒し、時には恋の相談に乗り、時には自身の身に着けた技術で手伝をした。
それと同時に、闇の中にかつてあの子が住んでいた棲家と同じ構造のそれを作っていった。



時代を経るごとに、鈴姫は表には出ないけれども、力ある存在に―――百合神と書いて、ツクヨミと呼ぶ神となっていった。
時には恨みを晴らすための、尊厳を守るための殺人をし、時には恋人たちの橋渡し役に、時には技術をふるまう仕事を行って。


それは、いわば生と死をつかさどる女神―――。
恋を技術を生むことに関わり、そして逆に命を死す存在―――。

914 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:15:33.872 ID:18vGAI1.0
そうやって生きていくと、鈴姫には自然と路銀がたまりゆく。
いいや路銀と言うよりは、財産と言うべきか。


それは、闇の中に作った棲家以外にも、よそ行きの、大きな屋敷を持てるほどに。
鈴姫は出会いと別れを体験し、信頼できる人間と出会えば、信頼できる人間とも出会っていった。


鍛冶屋、孤児院、料亭、衣類店、家具屋、はたまたある趣味に秀でた者と、数えきれぬほどに――――。

鈴姫は彼ら彼女らを信頼し、自身の持つ技術を教え、援助し、
時には手伝いを要請することもあれば、そのとき彼ら彼女らは、鈴姫の期待に応えるように働いた。

915 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:16:00.825 ID:18vGAI1.0
そういう風に生きて行くと、鈴姫が稼ぐ財産は、専ら鈴姫が製造した品物を買い取って貰うことが、主となっていた。
人殺しや恋愛相談などは、その願いが来る時期が分からないからだ。
それに、恋愛相談は神頼みのような少額で聞いていたから、ほとんどそれでは稼げなかった。



鈴姫に在る技術は、一流の鍛冶屋の持つ技術であり、一流の世話役の持つ技術だからこそ、それは成り立つ。
武器であれ、家具であれ、衣類であれ―――様々な職人の得意とすることを成し得ることができるのだ。

そしてなにより、一方的な関係ではなく、それらの店の困りごとがあれば、鈴姫はその困りごとに対し真摯に対応していった。

916 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:16:18.590 ID:18vGAI1.0
それは、不老不死の肉体を持つ鈴姫からすれば、いずれ消えてしまう存在だけれど、
その一期一会の出会いは、鈴姫が善の魔女として生きる為の、見えないハシラとなっていった。

時には、店が続くように、人と人の繋がりを橋渡しも――ハシラを継ぎ足したりも。

917 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:18:07.570 ID:18vGAI1.0
ある日、孤児院に資金援助をした帰り、鈴姫は院長に呼ばれ応接室に居た。

院長「こんにちはぁ、いつも援助ありがとう、ね」
院長は、鈴姫と違い齢を重ねた老婆だ。
人だからこそ、こうして老いる。

鈴姫は、見知った人が老い死ぬことも多々経験したが、やはり普通に死ねるというのは幸せ者だと思っていた。
だからこそ、こうして技術や、それに心を込める人間には協力する。

鈴姫は、男という魄が嫌いでも、技術についての魂は嫌いにはならない。
協力者が男だとしても、その技術、心根までは吹き飛ばさない。

最も、操を狙うようなどうしようもない奴は、技術を奪い殺していたこともあるけれど――ー。

918 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:18:23.190 ID:18vGAI1.0
―――院長は、苦労を重ねてきたことが読み取れる風貌だけれども、その顔につらさというものは見えない。

鈴姫「いいや、援助は…単なる、気まぐれよ―――」

院長「気まぐれで、こんなに良くしてくれるかしら」

鈴姫「道楽よ、道楽…」

鈴姫が信頼するその人は、希望の塊である子供を羽ばたく鳥のように育てることを信念としていた。
鈴姫が時折、願いを叶えに行く際、身寄りのない子供に出会うことがある。

919 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:18:46.502 ID:18vGAI1.0
人に非ざる子供ならば、その種族の者に預けるが、人ならば人のところへと預けている。

とはいえただ預けるのではなく、絶対なる信頼の補強として、多額の資金援助もしている。
それ以外にも、困りごとがあればそれを解決している。

危険因子がいる―――と相談された時には、そいつをこの世から消し去ったことだってある。

920 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:19:07.519 ID:18vGAI1.0
鈴姫「…それで、用件は?」

院長「貴女にいつもお世話になっているから、お返しはできないか―――と思って」

鈴姫「いいえ……わたしにそれは必要ではないわ……」

院長「そんな、悪いわ―――」

鈴姫「わたしは、貴女がいつもその仕事をしてくれている――ただそれだけがお返しよ」

院長「………ならば、無理強いはしないでおきましょう
   けれども、無理はしないでね」

鈴姫「……そちらこそ」


鈴姫は、大きな礼やらお返しやらは苦手だった。
最も、それは、鈴姫が利用できること自体が、大きな礼と考えている、ということもあるからだけれども。

921 名前:月夜見の遺産:2016/05/21 01:21:49.383 ID:18vGAI1.0
鈴姫は、ずうっとずうっと、こうしてこの世界を生きてきた。

この世界は不可思議なところがあろうとも、ただ百合神として歩み続けた。


―――年月は過ぎて行った。

ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな、やあ、この、とお。

――――幾月、幾年も、過ぎて行く。

鈴姫の生き方は変わらない。

―――それまでは。
孤独に生きる鈴姫の生き方は、その時まで変わらなかった―――。

922 名前:社長:2016/05/21 01:28:20.265 ID:18vGAI1.0
次回、鈴姫を変えるものとは、その時とは―――。


ちなみに鈴姫様が願い事聞いてた神社的場所とか謎の森の奥は狭間の世界。

923 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:14:03.256 ID:WU6YT0SY0
―――そして、ある日。

雪降る、街灯が灯った夜の町を、鈴姫は静かに歩いていた。
積もった雪を踏みしめながら、ただただ前に進んでいた。

924 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:14:46.360 ID:WU6YT0SY0
すると、緑色の、猫のような小さな生き物を抱え、赤い衣を纏った少女がそこに居た。


少女「はぁ……はぁ……」
寒さに身を震わせ、白い息を吐きながら、少女は必死でその生き物を売ろうとしている。


しばらく様子を見ていても、少女に話しかける人はなし。

925 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:19:04.188 ID:WU6YT0SY0
少女「抹茶、抹茶はいりませんか――?」
か細い声で、切実に言っている少女――。

茶道も嗜んでいた鈴姫は、抹茶という言葉に興味を覚え、少女に歩み寄った。

その少女は、とても寂しそうに見えた。
――初めて出会った少女なのに、不思議と既視感のある少女だった。

ざ、ざ、ざ―――。
雪を踏み鳴らす足音が、静かな夜に響き、そして少女はその気配に気が付いた。


鈴姫は、何故だかとてもとても懐かしい気持ちを感じながら、こちらを見た少女へと話しかけた。

926 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:21:50.915 ID:WU6YT0SY0
鈴姫「…………これは?」

少女「抹茶です、かわいいでしょう?」

鈴姫は、その緑色の生き物が抹茶であることに驚愕した。
そんな存在は、今まで見たこともなかったからだ。

しかし、ただの人間からすれば月の民など想像もつかない存在だ、と考え直し――。


鈴姫「その……抹茶?売れてるの……?」
少女へ、問うた。

927 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:23:08.394 ID:WU6YT0SY0
少女「………っ」
少女は、口からなにか言の葉を出そうとしているけれど、言葉にならないのか、
あるいは寒さに動かせないのか、ただじっと、鈴姫を見つめていた。

その眼には涙が浮かび―。


鈴姫「……はぁ」
鈴姫は、その様子を見て溜息ひとつ。

928 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:23:31.438 ID:WU6YT0SY0
鈴姫「あなた、わたしの家に来なさい
   ―――食べるのにも、困っているんでしょう?」


鈴姫は、どうしてもその少女をほおっておけなかった。
今まで出会った幾多の、不幸な境遇の子は、すべて信頼できる者へ託したはずなのに。


気まぐれか、それとも運命がそうさせたのか。

929 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:23:55.754 ID:WU6YT0SY0
少女「なんで、そんなにやさしくしてくれるの……?」

少女の、もっともの問いは、鈴姫にとって答えることができない。

それは、鈴姫にとっても、そしてわたしでさえも分からない。
その言葉を濁すように、鈴姫は名を告げた。

鈴姫「わたしは鈴鶴―――よろしくね」

―――優しい顔で、少女に微笑みながら。

930 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:24:08.354 ID:WU6YT0SY0
そう―――。

わたしという存在は、鈴鶴という少女の魂其の物なのだ。
鈴鶴は、姫たる存在に値する血を持っているから、わたしはそう呼んでいる。

わたしだって、太陽の女神の血は引いてるし、わたしのほうが僅かに姉であるけれど…。
やっぱり鈴姫の方がふさわしい―――。

そう、わたしよりも姫と呼ばれるにふさわしい―――。

931 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:26:05.052 ID:WU6YT0SY0
鈴姫「そして、あなたの名は……?」
そして、少女の持った籠を、さっと抱え、少女に逆に問い返した。


少女「ヴェスタ……ヴェスタ、です」
震える―けれども、すこしほっとしたような声で少女は答えた。


鈴姫「――ヴェスタ…
   いい名ね、じゃあ、わたしの家に行きましょうか」


ヴェスタ「は、はい…」

鈴姫とは、先ほど語った家へと歩いて行った。
よそ行きの、この世に作った家へと。


ヴェスタの連れていた抹茶たちと共に。
鈴姫は、ヴェスタと手をがっちりと握って、雪降る街から遠ざかっていった―――。

932 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:26:18.225 ID:WU6YT0SY0
ヴェスタの魂魄を凍えさせるかのように降っていた雪は、鈴姫との出会いの祝福に変じたようだった。


けれども、その祝福は、永久のものではなかったのだ―――――。
最もそのことは、その時が来るまで、鈴姫も、ヴェスタも――そして、わたしも知ることはなかった。

933 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:26:29.763 ID:WU6YT0SY0
           月夜見の遺産 完

934 名前:月夜見の遺産:2016/05/26 01:31:03.116 ID:WU6YT0SY0
──────To be continued
            Eden of lily girl

935 名前:社長:2016/05/26 01:32:35.295 ID:WU6YT0SY0
霊歌ちゃんとの相談のもと、ヴェスタという名に決まりました。
色々と許可とか相談に協力してくれた霊歌ちゃんに感謝。


次回、集計班の遺言(予定)

936 名前:791:2016/05/26 17:19:17.349 ID:FSwFCE1so
緑色の猫みたいな生き物なんだろう?と思ったら抹茶で笑った
売れないだろうなぁ…

937 名前:社長:2016/07/04 21:38:27.652 ID:yNMvRWCw0
集計班の遺言(予定)はまだまだ。

とりあえずキャラクター設定追記だけ投下

938 名前:社長:2016/07/04 21:49:29.607 ID:yNMvRWCw0
・鈴鶴
この物語の主人公である。月女神の血を引き、剣術に優れ、その他戦闘に対する嗅覚も抜群、
美人で家事も抜群、その他鍛冶・建築など様々なこともでき、欠点は泳ぐことのみといった、ほぼ完璧超人。

しかしながら気立てはよいか――と言われればむしろ最悪の部類である。
彼女は生まれながらに、本当的に男を吹っ飛ばす『魔女の囁き』の力があるが、それは彼女の本能的な意思である。
そのため、男に触れない、極力近づかない、触れるか触れられれば吹っ飛ばす―――最も、彼女は男に興味がないから問題ないが。

男と接するのは、技術を見せる時―――それぐらいであり、その時でも彼女は触れようとはしない。
また、彼女は殺人に抵抗などない。最も、彼女は敵対する人物や、嫌いな者限定だが。
しかしそれでも、躊躇なく切り飛ばし、処理できる精神力は只者ではない。


ちなみに、彼女の好きなタイプは『自分より強い人』である。
一見すれば、『百合神伝説』で互角だった魔王791のように思えるが、そういう意味ではない。
彼女を支えられ、彼女を受け止める強さのある人―――最も、女性限定だが―――それが、彼女の好きな人。

だからヤミ、シズ、フチが好きなのだ。
―――ちなみに、彼女は受け止められたい、ニアリーイコール甘えん坊である。
だから彼女は、太刀の達人でありながら、猫なのだ―――。

939 名前:社長:2016/07/04 21:55:19.972 ID:yNMvRWCw0
・ヤミ
天狗の少女。隻眼で、左手の指が三本なかったりする。また、実は身体も傷跡だらけだったりする。
彼女は天狗であるため飛べるが、何にせよ身体が身体なため、天狗の中ではそこまで動ける方ではなかったりする。

彼女は、鈴鶴に、ヤミに、シズに尽くす感がある。はず。
最も、彼女の場合、7歳ぐらいの鈴鶴に血を飲ませていたのは果たして尽くす意味だけだったのかは知らぬ存ぜぬ。

彼女の好きなタイプは、ずばり『鈴鶴さま』であり、また『鈴鶴さまを守れる人』である。
鈴鶴は当然、また鈴鶴を守るシズとフチも好きである。

また、彼女は欠損した身体ではあるが、日常生活は意外と問題ない。
最も、鈴鶴やフチと比べると劣るが――、一般人と比べればむしろ上。
鈴鶴のおねえちゃんとして、頑張っているのだ。

940 名前:社長:2016/07/04 22:01:30.146 ID:yNMvRWCw0
・シズ
月の民。鈴鶴たちの中で一番身長が高い。
鍛冶屋であり、その技術は一級品。戦闘能力も、かなり高い。

彼女は、アナログ的な父親のような存在。仕事はできるが、家事はできない。
しかしながら、一応鍛冶屋の長とかだったりしてるので、きちんとした上の人的なタイプ。

彼女は、幼馴染であるフチと触れ合ううちに、それが愛に目覚めた。
――また、鈴鶴やヤミについても、それを守る愛に目覚めた。

もっとも彼女は、恋愛についての表現がダメダメなので、あまりそういうことを語らないが――。
そういう心があることは、鈴鶴たち皆知っているはずだ。

941 名前:社長:2016/07/04 22:05:47.678 ID:yNMvRWCw0
・フチ
月の民。幼い体のまま身体が育たなかった。
月の姫君の世話役と、実はけっこう凄い役職だったりする。

彼女は、アナログ的な母親――のようで、微妙に違ったりする。仕事も家事もできる。
ただし、戦闘能力は少なめ。式神召喚はあるが、身体能力がさすがに劣るのだ。

彼女は、自分の事を守ってくれたシズが好きだし、それに、自身の姿を見てもなんとも思わないカグヤも好きであり、
そのカグヤの面影のある鈴鶴が好きだし、その鈴鶴を育てたヤミが好き―――
言うなら、自身をあまりどうこう思わないタイプが好きだ。

最も、彼女の場合、自分が好きと思った人が、若干その判定から触れていても、我慢するけれど―――。

942 名前:社長:2016/07/04 22:06:19.918 ID:yNMvRWCw0
適当にイメージを書いたけど、表現できてるかとかそんなものは、う、うーん…。

943 名前:社長:2016/07/19 01:36:42.238 ID:oWq3o6Q.0
http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/806/Next+character.jpg
次回作に登場予定の女の子

944 名前:きのこ軍 プロ召喚士 撃破1:2016/07/20 23:18:44.384 ID:ARZ0NUP20
ローマ字の書き方に知性を感じる

945 名前:社長:2016/08/20 02:31:15.027 ID:ufdOp7qs0
次回作は【集計班の遺言】とキッパリ言ったばかりなのに…
スマン ありゃ ウソだった

でもまあこの次々回作は本当に【集計班の遺言】だって事でさ…こらえてくれ

946 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:31:53.490 ID:ufdOp7qs0




                邪神スピリットJ





947 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:34:28.670 ID:ufdOp7qs0
――――此れはずっと昔の、話。
此の世界の【理】が解明され、此の世界の中枢となる宮処が生まれるよりも、ずうっと……。


世界の【理】を見つけ、此の世界は先へ先へ進んでいったが―――。
其れが解る前からも――此の世界は、先に進んでいった。


最も―――其れは、宮処が出来る前の話であるから、誰も知覚せずも記録されていない。

948 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:34:46.358 ID:ufdOp7qs0
其の【理】とは―――茸と筍が争うこと。
其れが世界を進める【理】。

此の事が解るまでは、其の条件が偶然に満たされた時に歴史が動いていた。
ただし、其の事は何処にも記録されていない。

宮処は歴史の動きを記録する場処でもあるが、宮処が出来る前の事は記録できないからだ。
簡単に言えば―――記録されている歴史、K.N.C1年より前にも、歴史は動いていたということだ。

949 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:36:49.132 ID:ufdOp7qs0
――――遠い昔…一人の鬼の少女が生まれた。

名はディアナ。身長5尺ほどがほとんどである鬼の女には珍しく、6尺以上の身長を持ち、美しい金色の髪を持っていた。
鬼は力強く、長寿の存在であるが、ディアナの力は可もなく不可もなく普通そのものだった。

そんなディアナは、武器の扱いに手馴れていた。
特に弓、銃、アトラトル、ブーメラン等の、遠距離戦の武器に。

だからといって、ナイフなどの、近距離戦の武器や、格闘技なども上手く扱えないことはなく、むしろかなりの腕前であった。
だが、弓などの腕ほど、極めて優れている――という程では無かった。

最も―――ディアナの生まれた頃は、銃のような優れた武器はなかったが――。

950 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:37:48.598 ID:ufdOp7qs0
ディアナは、大人になるとやがてマタギの道へ進んだ。
その有り余る天性の才能、そして彼女自身は才能に溺れずに鍛錬も熟していた為、マタギとしての彼女の名声は高まっていった。

ディアナは、必要以上に殺さず―――生きることだけに最低限に必要なものか、害を為すものしか殺さなかった。
また、彼女は無駄に延命する事は好きではなく、ザンのような不老不死の身体を得られるものは殺さなかった。

951 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:39:00.266 ID:ufdOp7qs0
そんなある日、ディアナは一つの依頼を受けた。
依頼主は、ディアナがよく依頼を受ける、情報屋――通称、長老と呼ばれる男だ。
彼もまた鬼であり、ディアナが鬼であることも知っている。

長老「……ディアナよ、今回の対象は阿呆な狩人だ…人相は分からんが、4人…
   手馴れの槍使いで、【ザン】を狙っているらしい…」

ディアナ「何処に現れるかは、分かる…?」

長老「ああ、最近は【ワカクサ】の海岸だったか…其処あたりで目撃されたそうだ…
   もし、ザンが居るとして…其の肉は確かに素晴らしいものだろうが……」

ディアナ「毒であり、本来従うべき寿命から逃れている……」

長老「そういうことだ、頼む……」

ディアナは、長老からの依頼を受け、猛獣等を、時には同じ鬼を、或いは別の者を殺してきた。
そして今回は、まさに後者の―――猛獣以外の、ディアナの同胞であろう狩人を殺しに行くのだ。

952 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:39:21.490 ID:ufdOp7qs0



ディアナは、ボウガン、短刀、吹き矢等を携え、【ワカクサ】の海岸へと向かった。





953 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:41:11.330 ID:ufdOp7qs0
―――【ワカクサ】の海の底には、竜宮があった。
波の下の都――海の果て――ザンー人魚が住まう宮処。

人魚は、半身は人、もう半身が魚(うお)のようなものも居れば、人と寸分違わぬ者、あるいは身体のある一部分だけが魚のものなど多々居た。

特に宮処の長――所謂海原の王者は、人と寸分違わぬ見た目と、美しき見た目、海原の様に透き通る青色の髪をしていた。


その長の娘の一人――此れも人の姿をした――ネプトゥーンは海の外の世界が気になり、
禁じられてい行為とは知っていても、竜宮を抜け出し―水面まで、【ワカクサ】の海岸まで浮上した。

だが――前述した通り、阿呆な狩人達が丁度海岸へ居た。
言うならば、飛んで火に入る夏の虫―――彼女は獲物と成ろうとしていた。

954 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:41:57.129 ID:ufdOp7qs0
―――再び【ワカクサ】の海岸。
狩人達は、ネプトゥーンの存在を察知してか、手持ちの槍を構えて今か今かと待っていた。

そして、ネプトゥーンが其れに気が付いた時には――狩人達は槍をネプトゥーンに向けた。
ネプトゥーンの齢は3ほど―――必死に逃げようとするものの、運よくかわせているというだけで、今にも槍で刺されようとしていた。

955 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:42:25.889 ID:ufdOp7qs0
その最中――闇を翔る一筋の線が、一人の狩人の頭を貫いた。
狩人達がその方向を向くと、もう一人の眼窩を線が貫く―――。

其処には、冷徹な表情をし、クロスボウを構えたディアナが立っていた。

ディアナはクロスボウに次の矢を込め、さっさと残りの二人の狩人も殺した。
矢には致死性の毒を仕込んでいたため、狩人達は立ち上がらなかった。

956 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:44:08.868 ID:ufdOp7qs0
そしてディアナは、呆気にとられていたネプトゥーンに、淡々と言葉を告げた。

ディアナ「……【ザン】の肉というものは、狂わせる恐ろしいもの…
     俺が居なければ、お前は死んでいたかもしれない……

     俺は、【ザン】の肉を求めんが……同じ生業の奴らは、また狩りに来るかもしれない……
     危険に、あえて触れる必要は、ない……
     住処に、今のうちに帰ってほしい―――」


そして、ディアナは背中を向け、振り返りもせずに其の場を立ち去った。

957 名前:邪神スピリットJ:2016/08/20 02:45:42.501 ID:ufdOp7qs0
ネプトゥーンは、助かったことに安堵しながらディアナの背中を、ただ見つめていた。
そして、その立ち振る舞いに、恋心のようなものを覚えた。
二度と出会えることはないだろう、鬼の女性に―――。

ネプトゥーンは遠くへ消えていく、其の固い意志を抱えた背中を、見えなくなるまでいつまでも見ていた――。

958 名前:社長:2016/08/20 02:47:20.840 ID:ufdOp7qs0
勝手にきのたけ世界の設定を作る感じ。
ちなみにディアナは身長183cmと高身長の女の子の設定です。

959 名前:社長:2016/08/20 03:31:47.862 ID:ufdOp7qs0
あとこの話の途中で次スレに行きそう。その時はいいところで切る感じかな…。

960 名前:きのこ軍 エース滝 魂11シュート1:2016/08/24 20:58:12.157 ID:ISBjVOBM0
ふつくしい。鬼の女の子というジャンルいいぞ。

961 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:09:31.230 ID:lZt02eug0
それから数十年後―――。


ディアナは、再び――【ワカクサ】の海岸でザンの肉を得ようとする狩人達を殺す依頼を受けた。

ザンの見えない海の上、狩人達が乗った漆黒の大船が海に浮かんでいた。
夜であり、只の人間ならば見えない船を、ディアナは見つけた。


ディアナは鬼だ―――鬼というものは人間に比べればはるかに高い身体能力が有る。

たとえディアナが、鬼の中では力が平凡だったとしても、人間に比べればはるかに高いもので――。
だから、人間の肉眼では見落とすような漆黒の大船を見つけられたのだ。

962 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:13:35.057 ID:lZt02eug0
ディアナは、単身小舟で大舟へ近づき、揺れる小舟の上から弓矢、ボウガン、吹き矢等を用い、
きっちりと急所に的中させ―――粗方の狩人達を殺した。

そして、船の中に隠れた残りの狩人を殺す為、大船へと飛び乗った。

射程距離の関係で、ディアナは短刀を用い、冷静に狩人達の首を掻っ切り、淡々と始末していった。

そして最後の一人を殺そうとした瞬間――ディアナは或る事に気が付いた。
残り一人は、ディアナに負ける事を悟ったか、相打ち覚悟で船に仕掛けたらしい火薬を炸裂させ、自爆しようとしていたのだ。


963 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:15:45.455 ID:lZt02eug0
其れに気付いたディアナは、頭を庇いながら咄嗟に海に身を投げたが、それは最後の一人が自爆した瞬間と同じで―――。



ディアナは、身体に船の破片などが刺さり、爆発の衝撃で、骨を折る等の重い怪我を負って海の底へと沈んでいった―――。





964 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:18:12.858 ID:lZt02eug0

―――【ワカクサ】の海の底には、竜宮があった。
竜宮の民は、大怪我を負ったディアナが、海の底に沈んでいるのを見つけ、拾い、取り敢えず適当な庵へと移した。



初め、竜宮の民は、迷い人―――あるいは鬼か―――目を覚まさぬディアナの傷を癒していたが、
ディアナの持ち物から、彼女が狩りを行う存在であると確信した。


そういう存在は、人魚の肉を狙う――そういう固定観念が在ったから、
竜宮の民は他の同胞についても聞けやしないかと思い、ディアナを捕らえることにした。

965 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:20:55.232 ID:lZt02eug0
――――ディアナに助けられたネプトゥーンは、其の後竜宮に戻り、長に状況を話した。
長に叱られ、「ディアナが見逃したのも、お前が幼かったからだ」と、

まるでディアナがザンに興味があるように捉える発言をしていたことに、
心にしこりを残してはいたものの、普通の生活を送っていた。


そしてすくすくと育ち、美しい見た目の女人となっていた。


ネプトゥーンは、女のマタギが沈んできた噂を聞きつけ、在り得ないとは思いつつも、其の姿をこっそりと見に行った。
―――其の、まさかだった。


966 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:24:12.923 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンが運よく生還できたのは、ディアナの存在が在ったから。
ディアナが悪いマタギでないことは充分知っていたから、ネプトゥーンは竜宮の民に早速周知しようとした。


――だが、ネプトゥーンの言葉でも、竜宮の民達は考えを取り消そうとしなかった。
其の態度に、ネプトゥーンは、あの時―自分の言葉が信じられていないのだ、と確信し、悲しくなってしまった。


其の後、邪魔にならないように、ネプトゥーンは一時的に部屋に閉じ込められた。

967 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:24:47.765 ID:lZt02eug0
部屋に閉じ込められている時、ふとディアナを拷問にかけ、最終的には処刑しようとする声が聞こえた。

それを聞いたネプトゥーンは、自身の持っていた特別な【力】でディアナを助け、地上へ逃げようと思った。

968 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:27:27.471 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンの持つ【力】――それは、壁の中を泳げる力だ。
自分と自分が触れているものが、自分自身が【壁】と認識した壁の中を泳ぐことが出来る【力】―――。
海の宮処において、ネプトゥーンは自由に動き回れるも同然の【力】――。
最も――水のない場所が壁の向こうにあれば、泳げずに投げ出されてしまうが――。


其の【力】については、長を含め、誰にも知らせていなかった。
其れは、おそらく――ディアナの事を、認めない民への反抗心だったのだろう。

969 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:28:41.246 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンは【力】を使い、閉じ込められた部屋の壁をすり抜け、
ディアナの捕えられている部屋に行き、ディアナを担ごうとした。


けれども、ネプトゥーンよりも身長も高く、体格のいいディアナは持ちあがらない。
どうしようかと悩んでいると、ディアナは目を覚ました。


970 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:31:34.862 ID:lZt02eug0
ディアナ「……君は」

ディアナは、ネプトゥーンを見て―あの時見た顔だと言おうとしたが、その言葉をネプトゥーンは遮った。

ネプトゥーン「話は、後で、早く逃げないと、処刑されちゃう…
       わたしが担ごうとしたんだけど、その、持ち上げられなくて…」

ディアナ「………!」
ディアナは、その言葉に直ぐ反応し、身体を動かそうとしたが、身体がうまく立ち上がらなかった。
最低限の傷だけを治され、そのまま放置されていたからだ。

971 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:36:33.304 ID:lZt02eug0
ディアナは、其の時点で―此の侭、恐らく自身が朽ち果ててしまうのだろう、と考えた。

ディアナ「……俺が此処で死ぬのなら、其れも仕方のない事だ」
そして――落ち着いてネプトゥーンに告げた。

ディアナは、獣を、或いは鬼等を此の手で狩ってきた。
直接的な勝負もあれば、罠に嵌めたり、或いは偶発的なもの全てを利用して仕留めてきた。

だから、こうして怪我を負った自分が死ぬことについて、人魚が此方側を狩るものと捉え、仕方ないと考えたのだ。

972 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:38:18.895 ID:lZt02eug0
ディアナ「君は、此処からさっさと戻ったほうがいい……これ以上巻き込むつもりはない
     俺は、此処で死ぬことになるから――」


しかし――そのディアナの言葉に、ネプトゥーンは―。

ネプトゥーン「わたしは、貴女が好き…なのっ!
       好きな人を、殺されたくなんてないよっ……」

悲痛な泣き声をあげ、大粒の涙を零し、ディアナの身体にぎゅうっと抱きついた。

973 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:41:16.314 ID:lZt02eug0
ネプトゥーン「………
       それに、あの時命を助けてくれたのに、如何して、助けてはいけないの?
       恩返し、したいのにっ

       いいマタギだと思う、貴女を、殺させたくっ…」

ネプトゥーンは、さらにディアナの胸に顔を埋め、涙を流した。
其れと同時に――ネプトゥーンは、ディアナの大きな胸の感触に、少し心音を速くさせた。

974 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:42:59.722 ID:lZt02eug0

ディアナ「………」
ディアナは、此処まで独りで生きてきた。
そして、彼女は恋などしなかった。誰とも子を作ることもしなかった。


孤独に狩りをするマタギであった彼女は、此のような事は初めてであり、少し戸惑い、少し思考した後―――。



ディアナ「……分かった、俺は君について行こう
     最も、此の身体をどうにかしないといけないが……」
―――少々、初めての感情に戸惑いを覚えながらも、肯定の意思を示した。


其れは、ディアナの鋼のように硬く厚い心に、ネプトゥーンの優しい心が入り込み、融かしただからだろうか。


975 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:44:47.264 ID:lZt02eug0

ネプトゥーン「!……あ、あり、ありがとう…」
その言葉に、ネプトゥーンは顔を明るくし、たどたどしく感謝の言葉を告げた。


ネプトゥーン「その、傷を癒す方法……ひとつは、治癒の【力】を使うことだけど、その方法は、今なくて……
       だけど、もう一つ―――人魚の血を飲むことが、あるの」


ディアナ「ザンの肉を食うことと、同じというわけだ…」

ネプトゥーン「うん……その、不老長寿か不老不死かは分からないけれど――
       そういう肉体になってしまうけれど、それならば――」

ネプトゥーンは、言いづらそうに告げた。

976 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:46:02.626 ID:lZt02eug0
ディアナは、数秒考えていたが―。

ディアナ「………分かった、飲もう」
直ぐに、答えを出した。



もし、単なる気まぐれで血を貰うと言うのなら、ディアナは飲まなかっただろう。
自分自身を助けようとするネプトゥーンの心に、ディアナが初めて恋する感情を得たから―。
だから、ディアナは血を飲む事ほ決めた。


そして、ネプトゥーンは、自身の血をディアナに飲ませた。

977 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:48:13.950 ID:lZt02eug0
ザンの肉は素晴らしい。

ならば、その血も素晴らしいのは当たり前だ――。

ディアナの傷はたちまち治り、ディアナにネプトゥーンが掴まり、
【力】を使う事で、ネプトゥーンとディアナは竜宮から逃げ出すことに成功した。



―――見張りも追っ手も、気が付いた時には既に二人は水面まで逃げていた。
海の外へ出る事を望まない竜宮の民は、其処で追い掛けるのを諦めた。

978 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:48:35.486 ID:lZt02eug0
海岸に誰もいないのを確認し、ディアナとネプトゥーンは地上に手をかけた。
其処で、ディアナとネプトゥーンはようやく、逃走に成功したことを確信し、ほっとした。


979 名前:邪神スピリットJ:2016/08/26 03:51:13.554 ID:lZt02eug0
海岸に辿りつき――其処でようやく、二人は名前を教え合った。


ディアナ「俺は、ディアナ―――君は?」

ネプトゥーン「あ、あのっ、わたしは、ネプトゥーンっ
       そっか、ディアナって名前だったんだぁ―――綺麗な名前だね」
ネプトゥーンが、無邪気な表情でそう言葉を紡ぐ様子に、ディアナは何故か安らぎを覚えた。

ディアナ「ネプトゥーン――其の名も、悪くない―良い名前だ」
そして、ディアナも、微笑みながら、そう言った。

980 名前:社長:2016/08/26 03:54:15.034 ID:lZt02eug0
ネプトゥーンは身長157cmぐらいの人魚の設定。身長差が凄い百合ップルだ…。

981 名前:名無しのきのたけ兵士:2016/08/30 23:34:52.812 ID:KVOQ909.o
いいぞ。浦島伝説かミ

982 名前:社長:2016/09/04 00:22:34.492 ID:PNG5mMkE0
19レスしかないので一旦埋め

983 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:31:55.363 ID:PNG5mMkE0
フチ「んーっ…!やった、やったっ」

あたしに、シズと久々に一緒にいられる日が来た。

姫の御付の仕事の休みと、シズの鍛冶仕事の休みだ。

984 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:32:08.553 ID:PNG5mMkE0
あたしは、シズの家に来てみたら、シズは、布団の中でまだ眠っている。
その寝姿は、やっぱり可愛らしい。

985 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:33:45.484 ID:PNG5mMkE0
シズは、着ている衣をはだけさせて眠っていた。

シズは、あたしより、ずうっと女の子した見た目の癖に、女の子という自覚が薄くて、油断しているところがあって…。
まぁ、男の大半は男にしか興味がないからいいのだけれど、それでも一部の奴は気にするから…。

あたしはシズにもうちょっと、そのことに気に留めてもらわないと、恥ずかしくて死にそうだ。

986 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:34:03.926 ID:PNG5mMkE0
そんな油断の多い恰好に溜め息をつきながら、シズの家の中を見ている。

ああ、シズ、やっぱり…。

987 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:34:30.414 ID:PNG5mMkE0
シズに再三注意してるけど、シズはやっぱこう…家庭的なことが苦手なんだよねえ。
頑張ってるみたいだけども、やっぱり……。

あたし、一緒に過ごそうかなぁ…?
同棲―――幼なじみだし、昔から時々そうしたことはあるけれど、もしずうっといれたら……。

988 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:35:02.018 ID:PNG5mMkE0
でも、生業がそれをさせないから、なぁ…。
だから、ひと時だけ逢えるこの生き方だけでも、大切にしよう。

シズの部屋の掃除をして、シズのくしゃくしゃになっている衣を畳んで。
時間が経っても、シズはすぅすぅと寝息を立てている。

989 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:35:11.620 ID:PNG5mMkE0
フチ「………」
だめ、あたし――――。

あたしは、顔が真っ赤に赤くなるのを実感した。
何を、なにを想像しているんだ、あたしは……。


990 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:35:29.433 ID:PNG5mMkE0
―――。
けれども、やっぱりシズから目を逸らせられない。
そして、あたしはシズの眠る布団にもぐりこんだ。

フチ「は―――っ」
あたしは、シズの隣に寝転がり、シズの手を撫でた。

シズの手は、鍛冶仕事をしているだけあって、傷があったり、ざらざらとした手だ。
でも、この手がいい。

991 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:36:56.250 ID:PNG5mMkE0
そしていつかは、あたしは眠くなってしまった。
フチ「おやすみ――シズ―――」

あたしは、シズの、温かい、あたたかい手を握って、あたしは眠りについた―――。
適当に縛ったシズの髪も、ちゃんと結んであげなきゃ――と思いながら。

992 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:11.654 ID:PNG5mMkE0
―――わたしは、目覚めた。
久々にフチと居られる休みだけれど、日々の疲れか起きた時には、隣にフチが眠っていた。

993 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:31.866 ID:PNG5mMkE0
フチの小さな手は、わたしの右手を握っている。
わたしは、立ち上がれないので部屋を見渡すと、いつの間にか綺麗になっていることが分かった。

994 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:42.068 ID:PNG5mMkE0
…ああ、わたしが寝ている間に――
フチに感謝して、わたしは布団の中に再び入る。

995 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:37:53.467 ID:PNG5mMkE0
フチの髪を手で撫でてあげて、わたしはぼそっと「ありがとう」とフチに囁いた。
フチの手を、放すこともあるまい――と思ったからだ。

996 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:38:29.706 ID:PNG5mMkE0
フチの手は、まるで子供のように、柔らかな感触だ。
わたしとは違う、素敵な手だ―――。

997 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:38:49.812 ID:PNG5mMkE0
けれども、例えフチがわたしのようなざらざらの手だとしても、別に素敵ではないと――そうは思わない。
フチは何故だか童の姿ままで育ってしまったけれど、それが何だ。
わたしは、フチと一緒に居られる一時に安らぎを憶えられる。

998 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:38:59.644 ID:PNG5mMkE0
そしてわたしは、手持無沙汰になってしまったので、フチの寝顔をじいっと見ながら、休みを過ごすことにした。

999 名前:ひと時のすれちがい:2016/09/04 00:39:11.459 ID:PNG5mMkE0
―――そして、気が付けばわたしはまた眠っていたらしい。
気が付くと、フチは「そろそろ帰るね」という書置きを残して帰っていた。

今度からは、わたしは頑張って起きよう―――。そう思いながら、再び床についた。

1000 名前:社長:2016/09/04 00:44:58.565 ID:PNG5mMkE0
http://kinohinan4.s601.xrea.com/test/read.cgi/prayforkinotake/1472917464/

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