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ユリガミノカナタニ
- 1 名前:【第一章 人生きし昼】:2014/10/26 22:54:48.03 ID:XUiZ9x7c0
- ??「―――――――。」
―――声が聞こえる。
これは、わたしの一番古い記憶?
何も、見えない。
そこは、暗闇の中―。
- 267 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:07:23.77 ID:M5Zgnwdc0
- 再び、世界は色を取り戻す。
そして、わたしの目の前はなぜだか滲んでいた。
その目の前に。
ショウアンがいた。
ショウアン「残り一人だ
いくらわたしの能力が効かずとも―
逆に、それが見えているからこそ、おまえに効く」
ショウアンが、わたしに黄泉剣を振りかぶった。
わたしは、涙溢れる視界で。
ああ、せめて。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 268 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:09:26.49 ID:M5Zgnwdc0
- ショウアン「何故、食い込―」
ショウアンの首は飛んでいく。
そして、首と胴を離し、その場に倒れた。
わたしも―。
いや、わたしの首に刺さった黄泉剣は、なんともない。
血が溢れず。
わたしは、喰われず。
そして、左手で引き抜いても、別段何も起こる気配はなかった。
- 269 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:11:55.31 ID:M5Zgnwdc0
- ああ、わたしは守ることが出来なかった。
ああ、わたしはあいするひとをぜんいん―。
わたしの手元には黄泉剣が一振り、残っているだけ。
黄泉剣は、わたし以外を食い殺した。
ああ、もう、わたしはどうすればいいのか―――。
ああ、せめて死んでしまいたい。
せめて、この黄泉剣だけはなんとかしないと―。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 270 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:13:01.10 ID:M5Zgnwdc0
- ――わたしは、目覚めた。
何故か、あの砂浜に再び流れ着いた。
わたしは黄泉剣でわたしをめちゃくちゃに刺す。
けれど、その剣はわたしを殺さず。
逆に、何か得体の知れない何かが、わたしの中に流れてゆく。
- 271 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:13:33.70 ID:M5Zgnwdc0
- ああ、わたしも喰らわれれば良かったのに。
どうして、わたしだけ、喰らわれなかったのだろうか。
此処に残りしは、ヤミが編んだわたしの装束が。
此処に残りしは、シズが作った百合の太刀が。
此処に残りしは、フチが教えた守護霊が。
ああ、もう、形見だけしか残っていない―。
その悲しさが、後悔が、怨念が、溢れ込む力がさらに身体の中をぐるぐると回る、廻る。
- 272 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:14:09.61 ID:M5Zgnwdc0
- 頭痛――。
頭の中が、邪悪に邪悪に包まれる。
心の中が、なにかに染まってゆく。
左手が、はじめて触れたときのようにかたかた震え――。
わたしの目に映る景色は、反転した。
- 273 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:14:48.61 ID:M5Zgnwdc0
- 鈴鶴「あ―――」
わたしの身体に、神の剣―呪いの魔剣――黄泉剣の力が身体に流れ込む。
そして、力だけではなく――。
鈴鶴「ぐ…ぅああああああっ!」
黄泉剣は、わたしの左腕に飲み込まれた。
勾玉が、わたしの右目に飲み込まれた。
- 274 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:15:10.82 ID:M5Zgnwdc0
- 力が身体中に流れ込む。
月の女神の力が。
剣に飲み込まれた名も知らぬ月の民の力が。
そして、わたしの愛するたいせつなひとの力が――。
すべてをぐちゃぐちゃにどろどろにかき混ぜた力が、身体の隅まで埋め尽くす。
その力は、わたしはもう決して死ぬことが出来ないのだと実感させるほどで――。
- 275 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:16:29.34 ID:M5Zgnwdc0
- わたしはふらふら歩きだした。
わたしはふらふら町へ歩きだした。
闇から逃げるために。
町の明るさならば、このおかしい身体を何とかできるのかもしれないと、其処へと歩き出す。
此処にある、月を海を見たくないために。
- 276 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:17:46.22 ID:M5Zgnwdc0
- 溢れ込む力が気持ち悪い。
ふらふら、路地裏へと身体をあずけ、にじり歩く。
この身体に纏わり付く力は、疲れを感じさせないほどに強大で。
けれど、その強大さに飲まれてはならない。
飲まれれば、月を滅ぼした存在の如く――。
わたしは、その気持ち悪さに必死で耐えていた。
- 277 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:18:11.25 ID:M5Zgnwdc0
- その時――。
男どもの声が聞こえた。
その声の雰囲気は、何故だか嫌な予感を感じる声であり。
その声の在り処はすぐ近くだと、其処に向かう。
そこには。
ふたりの少女が、男たちに取り囲まれていた。
男どもが、私に気が付く。
男A「……んっ?」
男B「ちっ―
いいところで邪魔が…
いや、待て
この女、かなりの……」
男C「そうだな、この女も……」
- 278 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:19:36.30 ID:M5Zgnwdc0
- その言葉は、何の意味を持つ言葉なのか。
それはわからず。
けれどもそれは、とてもとても不快になる響きで。
鈴鶴「貴様ら……
ああ、憎い、憎いなァ……」
その光景は、わたしの憎しみを増した。
男D「あ?女など俺たちの…」
その言葉は続かず―――。
わたしの振るう太刀が、その男どもの首を刎ね飛ばした。
何人いたのだろうか。
その人数差など知らず、わたしはただその男どもの首を刎ね飛ばした。
- 279 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:20:35.08 ID:M5Zgnwdc0
- それは一瞬。
剣に流れ込む力のせいか、その一瞬すら鍛え上げた一瞬より速く、男どもの首を刎ね飛ばした。
少女A「え……」
少女B「ひ……」
少女たちは恐怖の目でわたしを見つめる。
鈴鶴「……どこかに行きなさい
どこかに行きなさいっ!」
けれどわたしは、その少女たちを追い払った。
ああ、人を殺した――。
どくん――。
- 280 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:21:21.69 ID:M5Zgnwdc0
- わたしの心が、なにかに蝕まれる。
どくん、どくん、どくん―。
鼓動が増す―。
わたしの心から、鬼――守護霊は飛び出した。
わたしの守護霊は、近くの死体をひっつかみ、ドロドロに溶かしてゴミ箱に叩き込んだ。
ああ、さっき憎しみを持ってしまったから――。
その剣の力は、わたしを守る守護霊の力も変容させた。
わたしを守るだけだった鬼は、触れるものを溶かすようになった。
わたしの意志で動かせるようになった。
ああ、この力があれば愛する人も守れたのに。
ふらふら路地裏から出る。
- 281 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:23:44.26 ID:M5Zgnwdc0
- 其処から六尺離れたあと、ゴミ箱が壊れる音が聞こえたけれど、それすら気にならない。
ああ、なんでこうなったんだろう?
――ああ、殺されてしまったんだ。男に。
――――――。
- 282 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:25:39.51 ID:M5Zgnwdc0
- ――――――。
ああ、男がいたからなんだ。
ああ、男なぞ滅びてしまえばいいんだ。
思考はすでに平常であろうとすることを離れだし。
それで未来が閉ざされようと、別に構わない―。
ああ、滅ぼしてしまえ―。
黄泉剣の力が、わたしの心を堕とした。
わたしの意識は、すでに飲まれてしまった。
わたしがわたしではなくなってしまった―。
- 283 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/12 01:25:52.15 ID:M5Zgnwdc0
- 今日はここまで。
- 284 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:01:25.98 ID:hWYwm.1U0
- 黄泉剣の、眼球のごとき宝玉が、完全に開いた感覚を覚えた。
すでに左腕に呑まれて、それを見ることはできないけれど。
――――――。
―――――――――。
わたしは、何も思わず、ただあてもなく歩き続けた。
- 285 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:06:49.24 ID:hWYwm.1U0
- ああ、わたしのこの思考をいらいらさせる男がいる。
わたし「はあああああ――――っ!」
わたし「死ねっ、死ねっ、死ねええええっ!!」
男を、男どもを、わたしは殺した。
右手に構える太刀でそれを切り刻む。
左手からは、すべてをかき混ぜたどす黒い斬撃が飛ばされる。
海の潮の満ち引きは荒ぶる―。
空に輝く月の輝きが、わたしを妖しくきらめつかせた。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 286 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:08:15.49 ID:hWYwm.1U0
- 剣に飲まれたフチの力が、シズの力が、ヤミの力がわたしのなかに流れ込む。
あるいは、それよりも前に剣に喰われた月の民の力が、流れ込む。
それらは合わさり、ぐちゃぐちゃに混ざりゆく。
わたし「あ…ははは…」
わたし「あははははははははっ…!」
少女の見た目をした式神が呼び寄せられ、男どもを掴み、引きちぎる。
剣の振りはさらに早く、隼のごとく男を切り裂く―。
呼び寄せた風は嵐となりて、何もかもを吹き飛ばす。
わたしの知る余地もない、だれかの力が男どもを殺し続ける。
- 287 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:10:50.16 ID:hWYwm.1U0
- 時を操る者が、わたしの前に立ち塞がる。
けれど、その時の呪縛すら、わたしは打ち破った。
月女神は夜という時を支配するのだから。
支配という行為は、それより上を支配できるものには敵わぬのだから。
ああ、あいつも時を操っていたんだ―。
けれど、それも、もうどうだっていい。
―多数の兵器がわたしを襲う。
其れが、わたしを傷つけても、わたしの身体は再生する。
わたしのたいせつな太刀も、服も、守護霊もわたしの意思とは無関係に再生する。
涙はとうに涸れつくし。
- 288 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:11:20.77 ID:hWYwm.1U0
- 心はとうにあるべき形を持たぬ。
何をしようとも、何も感じぬこの身となり。
――いつしか、わたしは、時代錯誤のようであるけれど―【魔女】として、追われはじめた。
- 289 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:13:02.24 ID:hWYwm.1U0
- その【魔女】の囁きが、守護霊を操る。
そいつは、触れるものを溶かすようになる。
―その力を持ってして、隠れ、逃げる男をも殺した。
その【魔女】が持つ太刀に咲くは、百合の花―。
そしてその【魔女】は百合のごとき威厳さを持ち、百合のごとき純潔な雰囲気であり、そして無垢なる邪のモノ―神の力を受け継ぎし、真なる神であった。
そして、【魔女】は、邪神は、真なる神は―――。
―――【百合神】と呼ばれた。
- 290 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:15:00.73 ID:hWYwm.1U0
- 【百合神】は、災禍となり、男を滅ぼすが如く動く。
それは、この青き星すべてを殺すがごとく、その手でひとりひとり殺す。
いくつもの時間が過ぎる―。
いくつもの月が沈み、浮かぶ―。
- 291 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 00:15:46.31 ID:hWYwm.1U0
- 今日はここまで。
次回で終了予定
- 292 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:00:43.79 ID:hWYwm.1U0
- 【百合神】「ぐっ、はァーっ…はァーッ…」
けれど、遂には【百合神】は、追い詰められた。
【百合神】は、とても強大な存在―。
神の力を持ち、この世を破壊する邪神。
けれども。
【百合神】は、災厄となっても、男しか殺さなかった。
そして、そのただ一つのこだわりこそが弱点となり―。
神職の少女と、そのお供に追い詰められた。
- 293 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:01:46.92 ID:hWYwm.1U0
- その少女は、ちいさな鏡を構えていた。
【百合神】「ん?その鏡は…
いや、気の迷いか…
どいて―」
少女の構える鏡に、一瞬何かの既視感を覚えたが、それもただの一瞬―。
わたしは、邪悪なる目でその少女を見つめる。
- 294 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:02:34.48 ID:hWYwm.1U0
- 少女「本来、持ち出すべきものではないですけれど、
事態が急を要しますから」
少女は、その瞳に負けない。
そして、淡々とわたしに告げる。
少女「あなたは、邪悪なる鬼神…
何があってこうなったかは分かりません
けれど、あなたは―」
鏡を振りかざし、そこから【百合神】の姿を移した。
- 295 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:04:00.50 ID:hWYwm.1U0
- 光が流れ込む。
光が【百合神】を包み込む。
その光は、【百合神】の中のなにかを刺激し―。
そしてそれは、わたしの意識を引きずり出して。
少女「―この鏡の神の、実の―――」
わたし「…っ―――」
わたしは、薄れ行く意識のなか、少女の声を聞きながら、地面に倒れた。
- 296 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:05:01.11 ID:hWYwm.1U0
- 夢を見た。
その暗闇の中で、わたしは、夢を見た。
ゆめをみた―。
夢というよりは、わたしではないわたしを、わたしは第三者の視点でそれを眺めていた。
わたしは、連れ去られていた―。
わたしは、月の民の男に、連れ去られていた。
わたしは太刀をその身体に携えていた。
- 297 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:06:08.59 ID:hWYwm.1U0
- 太刀を携えたわたしは、連れ去られている。
その太刀は、百合の花が鞘に巻きつく――。
ああ、あの太刀は。
月の民の男「指定の場所まで届ける―前に…」
月の民の男が、わたしを乱暴に地面に叩き付けた。
月の民の男「ふふ、いただいておこう」
わたし「い……や…」
わたしに、その月の民の男は近づいてきた。
- 298 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:06:28.62 ID:hWYwm.1U0
- 後ずさりしようとしても、身体ががちがちに震えて動かない―。
ああ―。
ここは、竹林の中。
助けを呼ぼうにも、誰も来ない――。
追い詰められれた―。
- 299 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:06:58.33 ID:hWYwm.1U0
- 月の民の男「さあ―
おとなしく、諦めろ」
月の民の男は迫ってくる。
月の民の男「…月の【姫】よ、いい加減に諦めろ」
その顔には、怒りが見てとれる。
距離が詰められる―。
ああ、もう―。
- 300 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:07:37.41 ID:hWYwm.1U0
- ああ、もう―。
その時、後ろから、声が聞こえる―。
それは、人間の男の声ー。
その男は、切った竹を入れた籠を背負っていた。
若くは見えない、初老の男―。
初老の男「何をしている?」
- 301 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:08:43.14 ID:hWYwm.1U0
- 月の民の男「お前には関係ない
殺されたくないのならどこかに行け―」
初老の男「…そうか」
一瞬、顔を下に逸らし。
そして、その初老の男は―。
初老の男「そこの娘よ、その得物を貸せ」
そう、わたしに言った。
わたしは、言われるがまま初老の男に太刀を渡した。
- 302 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:09:44.31 ID:hWYwm.1U0
- そして、初老の男は、その太刀を抜いた。
月の民の男「ふん、歯向かう気か―
人間なぞ100年も生きぬ存在なら、こんな下らぬことは無視しては良かったのにな
命を無駄にすることはあるまい」
月の民の男は、そう吐き捨てた。
初老の男「―その短き命でも、此の所業を無視して助かろうとは思わない、な
自身の心に逆らうことは嫌いだ
人ではないようだが、たとえそんなやつだろうと、私は闘うよ」
初老の男と、月の民の男は互いに突っ込んだ。
- 303 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:10:12.49 ID:hWYwm.1U0
- 勝負は一瞬―。
初老の男が、月の民の男の首を、一刀両断した―。
- 304 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:11:03.72 ID:hWYwm.1U0
- わたし「あ……」
わたしは、その男を見つめる。
人間の男は、血を拭き取って、わたしに太刀を返した。
初老の男「………
危機は、去ったようだな
………死体は、川にでも流す」
初老の男は、背を向けて、死体を引っ掴んで、立ち去ろうとした。
- 305 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:11:34.69 ID:hWYwm.1U0
- わたし「待って…」
人間の男「ん」
人間の男は、振り向き。
わたし「助けていただき、ありがとう、ございます…
…あなたの、お名前は」
わたしは、礼を言い、名前を訊く。
- 306 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:13:59.68 ID:hWYwm.1U0
- 初老の男「……私の名は……
ああ、一応ミヤツコと呼ばれている、な」
初老の男は、そう名乗った。
わたし「…わたしの名前は、カグヤ
その、信じられないかもしれませんが、月の【姫】と言われています」
初老の男「月の【姫】か……
なら、さっきの奴も月の者か?
…それで、何故、私にそんなことを言う?」
カグヤ「…あの
わたしのことを匿っていただけませんか………
その、わたしを殺そうとする輩が―
わたしの同胞の、行方もわかりませんから…」
ミヤツコ「………
私は、ただの人間だ」
カグヤ「それでも、構いません」
ミヤツコ「……私の住処は、この竹林の向こうだ」
- 307 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:15:17.68 ID:hWYwm.1U0
- ―これは。
―この記憶は、わたしの、夢の中でいちど見たことのある母親の―。
カグヤと、ミヤツコが竹林の奥へ―――。
―そこで、光が強く。
- 308 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:17:03.58 ID:hWYwm.1U0
- わたしは目を覚ました。
少女「……この者の中にある剣、おそらく神器のようなもの…
聞いたことはありませんが、語られることなく作られたものでしょう
…何にせよ、これは封じ込めなければなりません、この世から
―それに、右目の中には勾玉があるようですし」
お供「…この左腕の中に宿る剣が放つ瘴気が、この【魔女】…いいや、【百合神】を―」
少女「対策を練りましょう」
女の子と、そのお供が話し合いをしていた。
女の子「…もう、復活したのですか
とりあえず、この剣がなければまだ話し合いは出来るようですね」
そんなことを言いながら、彼女はわたしを見つめた。
少女「対策を練りましょう」
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- 309 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:18:30.96 ID:hWYwm.1U0
- 女の子「あなたの体に宿りしこの剣は、何かは分かりませんが、神にかかわるものです
そして、この右目の勾玉も―
こちらのほうは、わたしたちもその力は理解しています」
そう、淡々と述べた。
この身がやった禍は、身体が覚えている。
- 310 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:22:16.51 ID:hWYwm.1U0
- 少女「さて、何とかしなければ、なりません
―ここまでくると―」
ここまでくると―。
もう、わたしは死ぬことすらできぬとんでもない災厄。
ならば。
ああ、わたしが顕現しなければ、この災禍は消え去る―。
鈴鶴「―わたしのことを、封印してほしい」
―この中の神を消すことなどできない。
すでに、わたしとなってしまったから。
そして、また放置していれば再び、わたしが邪神と化すかもしれないから。
女の子「…わかりました」
- 311 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:23:59.00 ID:hWYwm.1U0
- 女の子は、神に仕えるその清廉さで、わたしを見つめる。
女の子「最期に、何か残す言葉は―」
鈴鶴「ないわ」
女の子「では、封じの儀式を――」
- 312 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:25:06.98 ID:hWYwm.1U0
- 女の子は鏡を構え、術を唱えた。
その途端、空間に、扉が現れた。
それは、すべての光よりもなお強いまぶしい光を放つ扉だった。
女の子「この扉の中に入れば、あなたは封じられます」
鈴鶴「分かったわ」
わたしは、空間に開かれた扉の中、この世とは切り離され場所の中に入った。
わたしが入ると、その空間につながる扉は閉まっていく。
- 313 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:25:48.45 ID:hWYwm.1U0
- そして、閉じる前に。
女の子「…こんなことをいうのは、間違っているかもしれませんが
もし……この封じすら、あなたの身体が破ってしまったときは…
どうか……その邪なる力の神としてではなく…
聖なる力の神として、顕現してくださいますよう」
女の子は、そうわたしに言った。
その言葉に、わたしは頷いて。
わたしは、この世からその身を消した。
- 314 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:28:10.61 ID:hWYwm.1U0
- その扉の中は、まったくの光なき暗黒だった。
――その暗闇の中。
閉じゆく扉から入り込む光の残滓も、消え。
目を閉じ、わたしは永遠の闇に身体を預ける。
闇の静けさが、縁からわたしを飲み込んでゆく。
わたしの意識も、其れに飲み込まれた。
- 315 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:29:10.73 ID:hWYwm.1U0
- わたしは、光のなき永遠の闇へ―。
永遠の夜へ――。
夜の神の力を飲み込みんだわたしは、永遠の夜へ消えた―。
百合神の彼方に―――。
- 316 名前:【第四章 百合神の彼方に】:2014/12/13 19:29:34.20 ID:hWYwm.1U0
ユリガミノカナタニ 完
- 317 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:32:03.60 ID:hWYwm.1U0
- http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/538/c07.jpg
ミヤツコ
鈴鶴の父親。若くはない。
竹を取り、それをいろいろなものに加工するのが生業。
剣術の達人。
カグヤ
鈴鶴の母親。
月の神の血を引く、【姫】君。
鈴鶴と体形は酷似している。
- 318 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:35:33.91 ID:hWYwm.1U0
- http://download1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/541/c08.jpg
左からシャクハツ、ホーライ、カショ、シュウシュ、ショウアン
ショウアン
月の民。時間停止能力を持つ。
カショが負け、黄泉剣が鈴鶴に封印される可能性を考慮して、鈴鶴の父であるミヤツコを確保していた。
読み通りになったとき、鈴鶴たちが黄泉剣に封印されたから、修行するぞと騙し、そしてそれを達成。
だが、最期は鈴鶴に殺された。
- 319 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:37:59.46 ID:hWYwm.1U0
- 黄泉剣
月の女神の使った剣。
その鍔の目が開眼する度合いで、その呪いは異なる。
この剣は、刃を飛ばし、海の潮を操り、月の光を操る。
また、これに斬られた月の民は喰われて消滅する。
ただし、月の神の血を引くものだけは、その攻撃では傷を与えられない。
- 320 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:41:43.51 ID:hWYwm.1U0
- http://dl1.getuploader.com/g/kinotakeuproloader/540/c09.jpg
百合神
黄泉剣を体に飲み、邪神となった鈴鶴。
大本は月の神だが、黄泉剣に溶け込んだ月の民の能力も使える。
また、勾玉が右目に収まっている。
この勾玉は、黄泉剣についていたもの。
これには、とてつもないほどの魔力というべき力が溜まっている。
よって、刃を飛ばし、海の潮を操り、月の光を操る能力に加え、
ヤミの風の術、シズの剣術、フチの式神能力なども使える。
また、あらゆる攻撃を加えようと、その身体・服・太刀は再生する。
―最期は、神職の少女によって封印された。
闇の中に溶け消えた百合神―鈴鶴は、永遠に封印されたのか、それとも―。
- 321 名前:【残りの設定】:2014/12/13 19:58:45.12 ID:hWYwm.1U0
- とりあえずこれで終了。
適当なところも多かったSSだと思うけれど読者に感謝。
- 322 名前:社長:2014/12/14 18:20:26.02 ID:QU65fgNg0
- 書き忘れ設定
魔女の囁き
百合神となった鈴鶴の守護霊。
例の反撃能力だけでなく、鈴鶴の意思で動かすことができる。
有効範囲は2m、攻撃に加え、掴み念じたものをドロドロに溶かすことができる。
- 323 名前:社長:2014/12/14 18:59:21.86 ID:QU65fgNg0
- 鈴鶴(すずる)
・生年月日:792年10月12日
・身長 :165cm
・体重 :45kg
・スリーサイズ:89-61-85
・髪色 :黒
・目の色 :黒
・血液型 :B型
・利き手 :両利き
・一人称 :わたし
・好きなもの:百合の太刀
・嫌いなもの:男
・好きなこと:読書、ヤミ・シズ・フチと過ごすこと
・嫌いなこと:男が迫ってくる
・好きな食べ物:和食、野菜や芋、甘いもの、魚料理
・苦手な食べ物:なし
・好きな色 :純白、漆黒
・嫌いな色 :なし
・得意なこと :剣術、古武道、茶道、華道、書道、料理、植物の栽培
・不得意なこと:水泳
・不得意なこと:運動(とくに水泳)
・好きな音楽 :プログレ、雅楽
- 324 名前:社長:2014/12/14 19:03:09.61 ID:QU65fgNg0
- ヤミ(闇美)
・生年月日:782年5月6日
・身長 :170cm
・体重 :60kg
・スリーサイズ:72-62-78
・髪色 :黒と白(ブラック・ジャックのような感じ)
・目の色 :青
・利き手 :右
・一人称 :わたくし
・背中に翼が生えている
・左指の小指・薬指・中指と右目を失っている
・好きなもの:鈴鶴
・嫌いなもの:妖殺し
・好きなこと:鈴鶴たちと一緒にいること
・嫌いなこと:鈴鶴へ襲い掛かる敵
・好きな食べ物:鈴鶴の手料理
・苦手な食べ物:甘ったるいもの(鈴鶴と一緒に食べるときはその限りではない)
・好きな色 :緑
・嫌いな色 :蛍光色
・得意なこと:天の狗の風の術、それによる滑空、家事、古武道、茶道
・不得意なこと:自分ひとりで自由に過ごす
・好きな音楽:クラシック、ジャズ
- 325 名前:社長:2014/12/14 19:07:05.57 ID:QU65fgNg0
- シズ
・生年月日:はるか昔、フチと同じ年に生まれた。
・身長 :178cm
・体重 :68kg
・スリーサイズ:94-65-92
・髪の色 :白
・目の色 :眼球は黒・虹彩は青
・利き手 :右
・一人称 :わたし
・好きなもの:武器全般、鈴鶴
・嫌いなもの:鈴鶴の敵
・好きなこと:武器の設計、改造、鍛冶
・嫌いなこと:家事全般
・好きな食べ物:精進料理、酒
・苦手な食べ物:パフェなどの可愛い系統のお菓子(味ではなく見た目がニガテ)
・好きな色 :金属系の色
・嫌いな色 :桃色
・得意なこと:武器の製造、武器の取り扱い、剣術
・不得意なこと:家事全般
・好きな音楽:テクノ・ポップ、ドラムンベース
- 326 名前:社長:2014/12/14 19:09:58.49 ID:QU65fgNg0
- フチ
・生年月日:はるか昔、シズと同じ年に生まれた。
・身長 :118cm
・体重 :24kg
・スリーサイズ:60-42-60
・髪の色 :白
・目の色 :眼球は黒・虹彩は青
・利き手 :右
・一人称 :あたし
・火・水・風・土から式神を作り、呼び出す能力を持つ。
・好きなもの:鈴鶴、ヤミ、シズ
・嫌いなもの:男
・好きなこと:鈴鶴たちに絡んだりからかったりすること
・嫌いなこと:鈴鶴たちに嫌われること、鈴鶴たちへの危害
・好きな食べ物:和食
・苦手な食べ物:辛い食べ物
・好きな色 :薄い色
・嫌いな色 :はでな色(ショッキングピンク系)
・得意なこと:呪術、家事系統、芸道、和歌
・不得意なこと:格闘技、剣術(小学生程度の体系だから…)
・好きな音楽:ポップス、ヒップホップ、メタル
- 327 名前:社長:2015/04/19 20:58:36.555 ID:tsgmBjrA0
- これは秘密だけどモッタイナイのでここで新しいssを投下するよ
- 328 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:00:02.651 ID:tsgmBjrA0
百 合 ノ 季 節
- 329 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:02:41.858 ID:tsgmBjrA0
K.N.C.167年、きのこたけのこ会議所・wiki図書館―――。
きのこ軍兵士・集計班とたけのこ軍兵士・社長が、何か話し合っている。
集計班「……前回の大戦では、手酷くやられたものです」
社長「階級制は上手くはまれば大爆発する それが大戦の掟ジイ」
集計班「そうですね……というか、そういう世間話の為にあなたを呼んだのじゃなかった
―用件は、この兵士のことです」
集計班は、一枚の写真を社長に見せた。
そこには、ひとりの女性が写されている。
- 330 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:03:52.157 ID:tsgmBjrA0
- 社長「性別○」
集計班は、資料を見ながら語る。
集計班「この【たけのこ軍兵士】は……21年前の大戦―146次大戦で、軍神と対等に戦った兵士――
それによってきのこ軍は逆襲できず、敗北しましたね…
―それはともかく、名前は【鈴鶴】…この大戦のみの参戦でした」
社長「こわいよお」
集計班「………そして、その大戦の後に何処かに姿をくらませました…
一回きりの参戦だとはいえ、強烈な印象を残す女性です…
――鈴鶴について、先ほど述べたデータについての資料をどうぞ」
社長「るるるるるるるるるたるんだぞ!」
- 331 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:07:38.069 ID:tsgmBjrA0
- その資料には、このようなことが書いてある――。
鈴鶴(すずる)――。女性。
K.N.C.146年、会議所教官であるたけのこ軍、山本に、近くの竹林で発見される。
その後、146次大戦に参戦。
きのこ軍・軍神と対等に戦い、そしてきのこ軍・軍神を戦死させる。
翌日、兵士登録を消して何処かへと消えた。
階級制の大戦しか参加しておらず、兵士適性検査は実施していないため、適正兵種の詳細は不明……。
- 332 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:08:35.570 ID:tsgmBjrA0
- 集計班「そして、この【鈴鶴】の参加した大戦の3年後の大戦…
…あれは忘れられない大戦でした」
その大戦…K.N.C.149年に行われた149次大戦は、特殊ルールが設定された兵種制であった。
兵士の性別、その連携度で新たなる兵種―紅白兵・薔薇兵・百合兵にクラスチェンジするルールである。
集計班「普段の大戦も男性の参戦者が多かったので、大丈夫だろう、と思っていましたが…
予想以上に女性が多く、そのうえ百合兵が大量に出現して大量の百合の花びらが舞い散る展開に…
あの集計の恐ろしさは今でも覚えていますよ……」
集計班は、苦虫を噛み潰したような顔で言う。
- 333 名前:百合ノ季節:2015/04/19 21:08:55.024 ID:tsgmBjrA0
- 社長「本題ナンスカ」
集計班「おっと、話が長くなりました…
用件というのは、その【鈴鶴】について調べてほしいのです……
あの強大な力と、軍神と対面して打ち勝った鈴鶴には何かつながりがあるのではないか…
そう感じたのです
―兵士でもないのに大戦に介入されるとなると、厄介ですからね…」
社長「いいぞ」
集計班「大規模規制の影響で、色々と暇になってしまってますからね…
―お願いしますよ、社長」
――そして社長は、謎の兵士――鈴鶴について、調べることになった。
- 334 名前:社長:2015/04/19 21:09:29.649 ID:tsgmBjrA0
- これは秘密だけど本ssは滝本さんのssの設定を結構パクってたりするらしいよ
みんなには秘密だよ
- 335 名前:社長:2015/04/19 21:10:01.525 ID:tsgmBjrA0
- 続きはまたこんど
- 336 名前:きのこ軍:2015/04/19 23:52:00.771 ID:i3apyJLY0
- これマジ?二次利用いいゾーこれ
百合兵…うっ あたまが
- 337 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:18:58.789 ID:VY8f1bFs0
- 社長は、鈴鶴と出会った兵士―山本の部屋を訪れた。
一人で【鈴鶴】を調査するというのでは、少々心細い。
そのために、社長自身の作成した自立式メイドアンドロイド―ブラックを連れている。
現在は消息不明のたけのこ軍兵士・スリッパのメイドロボ―サラに感銘を受けて作られたアンドロイドだ。
- 338 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:19:21.742 ID:VY8f1bFs0
- 社長「こんにちな!」
ブラック「おはようございます」
山本「おお社長とブラック!何の用かな」
コーヒーを淹れながら、珍しい客に質問をする。
社長「ここに村人たちが集めた5000セントの金貨があります ください!!」
ブラック「【鈴鶴】という兵士について、調べています
――山本さん、あなたが教官を担当したとあったのでやってきました
集計さんに、鈴鶴さんの適正兵種が気になる…と言われまして」
ふたりは、本当の目的は伏せて、当たり障りのない訳を言う。
- 339 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:19:38.368 ID:VY8f1bFs0
- 山本「ふむ……【鈴鶴】か……
彼女は、とても印象に残った兵士だったな……」
山本は、コーヒーを飲みながら、しみじみと語りはじめた。
山本「あれは20年ほど前……新人兵士とともに、竹林で訓練をしていた時だった……」
- 340 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:19:56.572 ID:VY8f1bFs0
- K.N.C.146年、たけのこ軍領地・竹林―――。
山本「ペースを保てッ!そんなものではきのこ軍に勝てんぞっ!」
力自慢の新人兵士たちが、厳しい訓練に取り組んでいた。
新人兵士「はぁーっ…はぁーっ」
新人兵士「うおおおーっ」
新人兵士「ふっ、ふっ」
誇り高き兵士になるよう、きのこ軍・たけのこ軍関係なく――
新人兵士たちは、私の下で訓練を重ねていた―。
- 341 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:20:19.744 ID:VY8f1bFs0
- そんなときだ。
山本「んッ?」
私は竹林の中に人影があるのを見て、立ち止まった。
新人兵士「――どうかしましたか、教官?」
山本「うむー……
向こうに、人が倒れているのが見えた…」
新人兵士「本当ですかッ!?」
山本「ああ…私は、様子を見に行く
訓練は、あの竹林の向こうに着いたら現地解散という予定に変更するッ!
―あとは、各自自主訓練を行ってくれ」
- 342 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:20:37.557 ID:VY8f1bFs0
- 私は訓練を切り上げ、その人影のある場所へと向かった。
そこには、一人の女性が眠るように、片膝を立てて座っていた……。
- 343 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:20:58.917 ID:VY8f1bFs0
- その女性は巫女装束をまとい、その腰には太刀が携えられていた。
顔はとても美しく、閉じた瞼を飾る睫は長く、そして髪は美しいみどりの黒髪であった。
後髪は足まで伸びるほどの長さ―、横髪は黄色い髪留めで縛っていたが、それも長く。
――そして、胸や肩や背に広がっていた。
まるで、【姫】のような佇まいだったな。
―wiki図書館で読んだことのある、【竹取物語】のかぐや姫……そんな感じがした。
ともかく、私は、その女性が生きているのか確認するために、その肩を叩こうと手を伸ばした瞬間…。
手首を、掴まれた。
- 344 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:21:12.855 ID:VY8f1bFs0
- 山本「!?」
女性「…………」
女性は、瞑っていた目を開け、こちらを黒々とした目で見つめた。
私は、その瞳に冷たさを感じた。
女性「失礼………」
そして、詫びを入れると、握った手を放した。
- 345 名前:百合ノ季節:2015/04/21 00:22:11.388 ID:VY8f1bFs0
- 山本「…大丈夫か?」
私は、女性に容態を聞いた。
けれど、何ともない風で――。
女性「ええ……
―それにしても、ここはどこなのかしら?」
女性が質問したので、私は此処が【きのたけワールド】であることを伝えた。
しかし、その女性はきのたけワールド…というものを知らず、会議所のことも知らなかった…。
そのため、私はその女性を、とりあえず会議所へと連れて行ったのだ……。
当初、女性――鈴鶴は、大戦に参加するとは言わなかった…。
だが、その翌日に大戦に参加すると言ったため、私は担当教官として訓練をすることになったのだ…。
- 346 名前:社長:2015/04/21 00:23:40.968 ID:VY8f1bFs0
- 今日はここまで
- 347 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:04:41.756 ID:/mk7xrkw0
- K.N.C.146年、きのこたけのこ会議所・教練所―――。
私は、鈴鶴の手首を掴む咄嗟の反応を見て、
ただものではないと感じていたため、担当教官に立候補したのだが……。
その判断の通り、鈴鶴はただものではなかった……。
座学として、きのこたけのこ大戦の知識などを教えようとしたものの……。
既に、wiki図書館などで調べていたようで、直ぐに終わってしまった……。
- 348 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:07:18.900 ID:/mk7xrkw0
- 次に、鈴鶴に素振りをしてもらった。
私の訓練に取り組む者の、通過儀礼だ。
新人兵からは厳しいなどと言われるが、あれぐらいは必要だと私は思っている。
…だが、その素振りのフォームはとても綺麗で、私が口を挟めるところがなかったのだ……。
数々の新人兵士を受け持ったが、これほどまでの兵士は見なかった。
しかも、幾度となく振っても、剣筋に―いや、太刀筋に迷いがなかった。
- 349 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:09:30.465 ID:/mk7xrkw0
- ――そこで、予定を変更し、私は腰に携えた太刀というところから、剣術を見せてもらった。
そして見せられた剣術の腕は抜群だった。
山本「では、この巻藁が的だ」
―-緊張した一瞬が、そこには流れていた…。
鈴鶴「はっ!」
そして、鈴鶴は瞬き…いや、それよりも短い一瞬で巻藁を斬った…。
その腕前は、まさに達人…。剣豪といってもいい、素晴らしい腕前だった。
- 350 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:10:41.967 ID:/mk7xrkw0
- 次に、銃火器の扱い―飛び道具の扱いを見たが、これも抜群の腕前だった。
弓はもちろん、銃の扱いも十分といっていいほどだった。
的に狙いをつけ、的確に命中させていった。
鈴鶴は、銃なんてろくに練習していない、そう言いながらも抜群の腕前を見せたのだ……。
- 351 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:13:12.313 ID:/mk7xrkw0
- ……そして、社長作のホログラム・トレーニング装置で戦闘テストをしてもらったのだが……。
襲いかかるホログラムに対し、的確に対処していった。
冷静に、対処する順番を見極め、太刀を振り銃を撃ち、時折体術を挟み込み……。
――鈴鶴は、訓練を始める前に水術―いわゆる水泳は不得意と言っていたが…。
ざっと見ただけでも、格闘技も数多くこなせているのが目にとれた。
―むしろ、なぜ水術だけができないのか…そう思ったほどだ。
―ともかく、鈴鶴は100体のホログラムをすばやく、すべて撃破したのだ。
- 352 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:14:39.628 ID:/mk7xrkw0
- 私は教官として教えることはなく、たった一日で訓練が終わってしまった…。
正確には、他の訓練コースもあったが、ここまで出来る人物は、態々訓練に参加させる必要はない。
戦いのコツというものを知っているうえ、その技術は長年の鍛錬からなる、そう感じられたからだ。
―そして、私は訓練を終わらせた……。
今でも、あのような優秀――いや、化け物のような兵士は見たことがない。
- 353 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:15:30.238 ID:/mk7xrkw0
- 訓練が終わったあと、私は鈴鶴と会話をしたのだが…。
山本「…いや、本当に悔しいが……
私に教えられることは、ない!!」
鈴鶴「……………」
鈴鶴は、口数が少ないようで、何も言わなかった。
―応答ぐらいで、世間話はあまりしない性質のように見えた。
だが、どうしても気になることがあり、私は最後に一つだけ質問した。
山本「…その腕前、何処かで習ったのか?」
- 354 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:16:45.115 ID:/mk7xrkw0
- 鈴鶴「……ええ、そんなところよ…」
鈴鶴は、少し暗い声で答えた。
山本「なるほど…
ならば、私が教えるまでもなかったというわけだな…
―良い活躍を期待してるぞ!」
私は、その答えに納得し、鈴鶴を見送った。
鈴鶴の答えは、少し暗い口調になっていて、それ以上は深入りできなかったのだ……。
―それは、鈴鶴の雰囲気によるものなのかは、わからなかったけれどもな。
山本「………と、これが私の語れるところだな」
山本は、コーヒーカップを机に置いて語り終えた。
- 355 名前:百合ノ季節:2015/04/23 19:19:10.634 ID:/mk7xrkw0
社長「べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜べぇ〜」
ブラック「……鈴鶴さんの、活躍を知っている人、はいないのでしょうか?」
まだ、情報が足りない。
山本「うむー…その大戦は、私は鈴鶴のいる部隊に居なかったからな…
―だが、たしか加古川さんが同じ部隊だったはずだ
力になれなくてすまない」
―だが、めぼしい答えは出ず。
山本は、あごに手をやりながら、申し訳なさそうに言った。
ブラック「いえ、大変参考になりました」
山本「そういってもらえると、助かるな
―まぁ、頑張ってくれ」
社長「ありがとう、やっ」
ブラック「ありがとうございました」
山本の応援を聴きながら、ふたりは部屋から出て行った。
- 356 名前:社長:2015/04/23 19:19:21.290 ID:/mk7xrkw0
- きょうはここまで
- 357 名前:名無しのきのたけ兵士:2015/04/25 00:16:05.029 ID:Dr3bM.5Uo
- 加古川さん くる!?
- 358 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:29:52.847 ID:dFI0TBKI0
- 続いて社長は、加古川に鈴鶴の活躍を聞きに行った。
加古川「146次大戦、鈴鶴の活躍……
……ああ、あれは今でも覚えているよ
―何しろ、軍神と互角以上の戦いをしていたからね……
私は、今でもあの大戦を忘れられない」
- 359 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:33:49.306 ID:dFI0TBKI0
- K.N.C.146年、大戦場―――。
私たちは、たけのこ軍優勢の中、迫る敵を撃破する作戦を実行していた…。
私のいた部隊のひとりに、その女性―――鈴鶴が居た。
鈴鶴「……………」
ほかの兵士は戦果を挙げることにわくわくしたりしていたが、彼女は違ったのだ。
彼女は、非常に落ち着いていた。
もしかしたら、戦いに沸き立つ他の兵士を冷ややかな目で見ていたのかもしれない。
それに、口数も少なかった。
他の兵士は世間話もしていたが、鈴鶴は一切の無言―。
もっとも、その部隊には彼女しか女性がいなかった、ってのもあるかもしれない。
だが、兎も角彼女は素晴らしい活躍をしていったんだ。
- 360 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:39:15.564 ID:dFI0TBKI0
- 敵兵「うぎゃああーーッ」
敵兵「く、くそぉ…」
敵兵「うわあああああん!」
敵兵「びええええええん」
私もそれなりに撃破したが、何といっても彼女はその携える太刀さばきが素晴らしかった…。
銃を持った敵兵だろうと、それをかわしつつ斬り込み、
またあまりにも近すぎる敵には、手刀で対応し………。
――その上、銃の腕前も抜群だ……遠距離の敵も正確に射抜いていった。
だが、彼女の一番凄いところは、着々と戦果を挙げながらも、それでいて冷静だったところだ。
ふつう、兵士といえば撃破王に近づくために興奮するというのに…。
彼女は、地位などにこだわりなんてなかったのかもしれないな。
他の兵士が彼女に話しかけても、彼女は一切の無言だった………。
- 361 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:41:01.348 ID:dFI0TBKI0
- それに、きのこ軍の仕掛けた罠も、即座に破壊していった……。
長年戦った私でも気づかない罠…聞くところによると、
他の部隊は引っかかって苦しんだという罠を、あっさりと見抜き、解除していったのだ。
加古川「…素晴らしいな、私だけなら引っかかったかもしれない……」
鈴鶴「……………」
けれども、彼女は私と無駄話はせず、黙々と侵攻していった……。
――そのころには、私の部隊は、私と彼女だけという、少し逼迫した状態。
だが、兵士を集めても敵うかどうかという実力の彼女がいること、
その時の状況はたけのこ軍が有利、勝ちを確信していた。
- 362 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:42:06.991 ID:dFI0TBKI0
- きのこ軍に、軍神が現れた……。
しかも、目の前にな…。戦闘力の非常に高い軍神相手だ……。
当然ながら、部隊の構成人数はその時二人。近くの部隊と合流を考えたのだが………。
加古川「!?」
彼女は、軍神の方へ向かっていった……。
そのきのこ軍・軍神と、彼女は真向にぶつかり合ったのだ……。
- 363 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:44:34.932 ID:dFI0TBKI0
- 軍神「なにぃッ!この攻撃もかわすだと!」
鈴鶴「きぇーーーっ!」
――鈴鶴は、決して無謀者ではなかった。
軍神の素早い攻撃を、彼女は冷静に往なしていったのだ!
しかも、彼女は、受けるダメージは最小限に抑えつつ、的確な一撃を、反撃を加える。
軍神「うおおおりゃああああ!」
鈴鶴「ふん――!」
軍神の持つ剣と、彼女の持つ刀が金属音を発していた。
時折、軍神は蹴りなど体術を織り交ぜるが、それにも彼女は的確に対処していった。
――軍神ならば、その攻撃威力や攻撃速度や反応は凄まじいはずなのに…。
彼女は、それと互角、あるいはそれ以上だったのかもしれない…。
- 364 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:45:54.496 ID:dFI0TBKI0
- ――そして……。
軍神「ば…ばかな……」
彼女は軍神を撃破したのだ―――。
そして、神を撃破したばかりだというのに、彼女はただ前へと進んでいった。
それが凄まじいことだということを知らなかったのか、あるいはそれすらもただの戦いだと感じていたのか。
……そして、この大戦で、たけのこ軍が勝利した。
- 365 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:47:56.265 ID:dFI0TBKI0
- 加古川「今でも、あの冷静に進んでいく鈴鶴の姿は忘れられん
―だからこそ、その翌日に兵士として参加することを取り消したことは驚いたよ…
止めはしなかったが、ね……」
加古川は、腕を組み目をつぶりながら、名残り惜しそうにそう戦いの記憶を話した。
社長「あーもーお前らうるさいよ!」
ブラック「……その理由や、何処に行ったかは教えてくれなかったのでしょうか?」
―おそらくは、Noであろう答えであろうと、念のために聞く。
加古川「一応聞いてみたが、答えはなかったな…
―――大戦に参加した理由も、だがな…
……どこぞの集落に居るのかもしれないが、それが皆目分からないんだ」
残念そうに加古川は言った。
- 366 名前:百合ノ季節:2015/04/25 00:48:34.907 ID:dFI0TBKI0
- 社長「星。」
ブラック「…ううむ、調査は難航しそうですね…」
加古川「そういや、なんで鈴鶴のことを調べているんだ?」
社長「えっとー…今何時?」
ブラック「集計班さんに頼まれて、鈴鶴さんの適正兵種を調べたいから――だと」
―山本の時と同様に、当たり障りのない理由を答える。
加古川「ふむ、どんな結果が出るのか期待しているぞ」
社長「はい いいえめ!もうくるな!」
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