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S-N-O The upheaval of iteration
- 1 名前:SNO:2020/08/14(金) 23:03:59.555 ID:nQ7ybU.E0
- 数多くの国が生み出す世界。
かつては個々の国が独自に作り上げた文化は、やがて国々が混じり合うことで発展と変容を遂げた。
やがて……世界の理は、とある研究者によって見出されることになる。
きのことたけのこのような、二つの陣営が争うことによって世界が発展する物理法則を……。
初めは懐疑的に見られていたその理論は、ある出来事を経て証明されることになり、
この物理法則は、世界を発展する礎となった。
――その法則をコントロールする組織は【会議所】と呼ばれ、
――その法則をコントロールする行事は【大戦】と呼ばれていた。
【大戦】では、人々が兵士となり日々戦いを続け…【会議所】では、さらなる世界の発展のための活動が行われていた。
――また、【大戦】の内外で、様々な思惑が働いていた。すべてを把握することができないほどに……。
これは、世界に翻弄されながらも、真実に向かう4人の女性の物語。
目覚めた乙女たちの見る世界は――光か、陰か、あるいはその狭間か。
様々な要素が複雑に織り成す世界で、彼女らが辿り着くのは実か虚か。
交差する陰陽の中で、今乙女たちが目覚める……。
ワタシガ 見ルノハ
真 偽 ト
虚 実 ノ
世 界
- 914 名前:Route:D-3 節制:2020/12/24(木) 23:54:32.571 ID:IpHWips20
- 弦夜
「もう、それ以上は言うな……
――敗者は何も言わず立ち去る……それだけだ」
女
「わかりましたわ……
では、弦夜……鈴鶴様が完全に目覚めたその時は、貴方のことを私が殺してあげます
貴方の命を奪っていいのは、私だけしか、いないのだから……」
ぎらりと光る女性の眼は、私にも伝わるぐらいに震えていた。
彼女は――もしかしたら――弦夜と、心中するつもりなの――?
弦夜
「……昔から、君はそうだったな」
女
「――当り前ですわ
【力】が目覚める前から――そして目覚めたときも、弦夜のことが好きだから
……お願いだから、私と……最期の時までを……」
女
「この崩れ落ちそうな世界でも――逢瀬も夜伽も――まだできる余地はあるでしょう?」
女性はすでに泣いていた。鋼の義肢を持つ姿にこぼれて光る涙は、
儚いガラス細工のように夜空を抜けていた。
……その仕草は、声色は、表情は……彼らが間もなく死の運命へ誘われることを示していた。
弦夜
「ああ……」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 915 名前:Route:D-3 節制:2020/12/24(木) 23:57:20.215 ID:IpHWips20
- 私が目を開けたとき、【鏡】の中の景色は薄れ、
そこには――銀色の鏡面と、私の顔だけが映っていた。
……これは、どういうことなの?
あの悲劇を……二人は知っているの?
――分からない。わからない。ワカラナイ……。
彼らはも死を受け容れようとしている。まるで、寿命の終わりを悟ったかのように。
彼らの仕草は、声色は、表情は……彼らが間もなく死の運命へ誘われることを示していた。
……あの凶兆が、原因なのだろうか。
――私は、彼らの姿勢が、彼らにとっての幸福のようにも思えた。
同時に――それが間違っているようにも思えた。
この矛盾した、あやふやで、あいまいな感覚。その原因は何?
私はその意味も分からずに……ただ、【鏡】を抱きしめて……。
- 916 名前:SNO:2020/12/24(木) 23:58:01.839 ID:IpHWips20
- 夜伽の意味はググってしらべてみてね!
- 917 名前:きのこ軍:2020/12/25(金) 09:19:27.093 ID:fAyENffMo
- わからないです!(純粋)
展開は前章と同じだな
- 918 名前:Route:D-4:2020/12/25(金) 20:16:11.307 ID:R3YSSkEw0
- Route:D
Chapter4
- 919 名前:Route:D-4 隠者:2020/12/25(金) 20:18:00.268 ID:R3YSSkEw0
- ――――――。
気が付くと、私の隣には、ひとりの少女が座っていた。
後ろで束ねた紺碧色の髪と、翡翠色の瞳をした女性は、恐る恐る――といった表情で私の顔を覗いていた。
――女性についての記憶は曖昧で、名前もすぐには出てこない。
それでも、私の中には引っかかるものがあった。
記憶は欠落していても、身体は覚えている――ということだろうか。
???
「バラガミ、大丈夫?」
自然に話しかけてきた少女の様子から、彼女は自分自身の事を知っていると読み取れるが、
どういった関係性なのか……、それは私にはわからない。
――彼女はバラガミと私を呼んだ。それが私の名前なの?
バラガミ
「……ええ」
少女の出したバラガミという呼び名。
その呼び名に思い当たる節はないものの、欠けた破片がはまったように、
しっくりと受け止められ、流されるままにその名前に頷いた。
- 920 名前:Route:D-4 隠者:2020/12/25(金) 20:24:28.404 ID:R3YSSkEw0
- バラガミ
「ええと……貴女は……?」
それでも、目の前の女性が何者かはわからない――。
……困惑しながらも、私は訊ねた。
???
「また、記憶の欠落があるのね――」
……特別、私の発言に疑問符を浮かべなかった女性の発言から、
彼女と私とは少なからず付き合いがあったことが伺えた。
悲劇的な光景から今に至るまでの過程を、思い出すことができない。
そして、自分自身の過去すらも思い出せない。
理由も知らないまま、【鏡】を通して世界を見る事で何かを感じただけ。
そんな私に、女性は優しく答えを返した。
細波
「じゃあ、もう一度伝えるわ
私は細波(さざなみ)――」
細波。穏やかな波を意味する言葉は、静かな彼女の振る舞いと口調に相応しい名前だった。
- 921 名前:Route:D-4 隠者:2020/12/25(金) 20:29:33.429 ID:R3YSSkEw0
- バラガミ
「……細波、色々と聞きたいことがあるのだけれど」
細波
「私が答えられる内容のものならいいけれど」
――不安が胸を過る。それでも私に訊ねなくてはいけない。
バラガミ
「……その、白い花びらを纏った花吹雪がこの辺りを舞ったことを覚えている?」
――あの、恐ろしい凶兆を……。思い返して、身体が少し震える。
細波
「……白い花びら……花吹雪……?
ごめんなさい……ここに花びらなんて舞ってはいないわ……」
――しかし、私の感情とは裏腹にきょとんとした表情で、細波は答えた。
バラガミ
「……え?」
細波
「……貴女も女神の血を引いているから、予知夢を見たのかもしれないけれど
……少なくとも、私はここで花吹雪は見ていないわ……もちろん、夢の中でも」
きっぱりと断言した細波の言葉に、私は呆然としていた。
少女が斬られた場面は、脳裏に深く刻み込まれているし、あの紅い月は見たら忘れる事なんて出来ない。
それなのに……あの光景は、夢幻の世界での出来事だった――というの?
- 922 名前:Route:D-4 隠者:2020/12/25(金) 20:30:56.018 ID:R3YSSkEw0
- 細波
「……大丈夫?顔色が悪いけれど」
バラガミ
「……いえ、大丈夫」
心配そうに顔を覗き込む細波の言葉を、わたしは手で制した。
……あの出来事は、少なくとも私の中で留めておくべきだ、と感じたから。
細波
「なら、いいけれど……
他に、私に訊きたいことはある?」
バラガミ
「――いいえ、大丈夫
また、尋ねることはあるかもしれないけれど」
細波
「分かったわ……私は、いつもの場所に居るから……」
立ち去る細波の、後ろで結わえられた髪が揺れる様子を、私はぼうっと眺めていた。
- 923 名前:Route:D-4 隠者:2020/12/25(金) 20:40:43.303 ID:R3YSSkEw0
- バラガミ
「……女神の血」
細波はそう言った。自分の中には女神の血が流れている――と。
正直なところ、身に覚えがないが、彼女に嘘を言っている気配は感じ取れなかった。
彼女の言葉を信じるならば、予知夢という結論になるが……。
どうしても、その答えは違うような気がする。
身体が感じ取った凶兆は、確実に現実の出来事だった。
花吹雪が自分自身の周りにも表れ、紅い光が見え、身体の変質を感じ取った記憶。これが夢であるはずはない。
バラガミ
「わからない……わからない……」
もし、凶行が現実に起こっていたのなら、細波も覚えているはずだ……。
――もしかしあら、あの悲劇は、【鏡】を通して見ていたから、私だけが知りうる事柄なのかもしれないけれど。
……だが、あの凶兆までを忘れるとは考え難い。それは、私の周囲にまで来ていたから。
矛盾した情報が、どう結び付くのか。
それを思い出そうと、目をつぶっているうち、私は自然と【鏡】を抱きしめていて――。
- 924 名前:SNO:2020/12/25(金) 20:41:16.263 ID:R3YSSkEw0
- 誰かの予想は当たったのかなぁ?
- 925 名前:きのこ軍:2020/12/26(土) 12:25:37.073 ID:ORB7yMpoo
- バラガミ伝説が関わってくるという予想までは当っていた。
- 926 名前:Route:D-5:2020/12/26(土) 13:12:14.501 ID:vXvv.fQI0
- Route:D
Chapter5
- 927 名前:Route:D-5 塔:2020/12/26(土) 13:13:29.029 ID:vXvv.fQI0
- ――――――。
私が祈っている間に、いつの間にか、【鏡】の向こうでは、どこかの荒野での戦いが写っていた。
バラガミ
「これは……?」
そこには、茸の傘のような頭頂部をした、浅黒い肌の醜悪な見た目の生物が、緑や黄色の軍服を着た兵士たちを薙ぎ倒していた。
その生物の胴と比べると極めて短い手足が虫のように地面を這いずり回るしぐさは、【鏡】の向こうから見ても気持ち悪さを覚えるほどだ。
バラガミ
「……そんな」
悲劇を食い止める祈りは通じなかったのか――私は、落胆した気持ちでその惨劇をただ見ていた。
兵士
「ひるむな、DBを倒すぞーーーッ!」
兵士たち
「了解です、山本さん…!ウォオオーーーーーッ!!」
リーダーと思わしき屈強な兵士――山本の表情は鉛のように重々しく、しかしどこか諦観の念も感じさせる表情をしていた。
それでも、その感情を声に出さないように活力を振り絞っており、軍人としての意地を感じられた。
その声を皮切りに、兵士たちは鼓舞しあい、辺りは大歓声で沸いた。
――まだ、希望は……あるの……?
わたしは、祈るようにその光景を見ていた。
- 928 名前:Route:D-5 塔:2020/12/26(土) 13:17:39.129 ID:vXvv.fQI0
- だが、DBと呼ばれた生物は、どうやら身体から悪臭を放っているらしく、
近寄るだけで兵士たちの表情が苦悶に歪み、昏倒する者までいた。
DB
「ヴォーーーーーッ、大量撃破、大量撃破……」
DBのしわがれた老人のような声は、【鏡】の向こうからでも嫌悪感を覚える。
つまりは……DBは、徹底して不快感を与えさせる生物ということだろうか。
バラガミ
「……どうか、彼らに幾ばくかの加護を」
私はただ祈るだけだった。
それが直ぐに結びつかなくとも――祈り続けることが、自身の存在意義なのだと思えたから。
兵士
「グフフ……俺は強い方が好きだ!会議所なんていられるかっ!」
が……その祈りもむなしく、戦況は悪化するばかり。
兵士たちの攻撃は当たれど、致命傷になっていない……。
バラガミ
「あ……ぁあぁぁぁ……」
私の口からは、絶望に染まった声が漏れた。
そこにあるのは……DBによる、蹂躙だったから……。
- 929 名前:Route:D-5 塔:2020/12/26(土) 13:20:22.033 ID:vXvv.fQI0
- それどころか、DBと対抗しているはずの兵士たち――恐らくは、【会議所】という場所に属するであろう兵士たち――
彼らが、洗脳されたかのように裏切り始めた。
残酷な現実――先程までの熱意はとうに消え、兵士はひとり――また一人と崩れ落ちてゆく。
DB
「コレデ、終戦だァアアアあアアアアア」
山本
「ぐあアアアーーーッ!!」
そして、最後まで立ち向かっていた兵士が朽ち果てる様子を見て――
DBと、死体の山の重なる荒野を見て――
バラガミ
「……っ」
私は、【鏡】を抱きしめながら、ふらりと地面に倒れ込んだ。
その悪夢のような光景――現実を、変える事すらできない悲しみに包まれながら……。
私は……ひどく悲しい気持ちになっていた。
私の無力さが浮き出るようにも思えた。それほどに……私の心はズタズタだった。
私は、不意にぎゅっと目を閉じた。その光景から逃れるために……。
あるいは、何かに祈りをささげるために……。
世界は暗黒に染まる。一つの光もない闇で私は――――
- 930 名前:SNO:2020/12/26(土) 13:20:57.097 ID:vXvv.fQI0
- 章題の意味するところとは……
- 931 名前:きのこ軍:2020/12/26(土) 22:11:43.839 ID:ORB7yMpoo
- タロットか
- 932 名前:Route:D-6:2020/12/26(土) 22:41:20.951 ID:vXvv.fQI0
- Route:D
Chapter6
- 933 名前:Route:D-6 愚者:2020/12/26(土) 23:05:13.100 ID:vXvv.fQI0
- ――――――。
気が付くと、私は、【鏡】の向こうで起きる出来事を見つめていた。
やはりその過程は分からない――だが、そのことすらも考えさせない光景が【鏡】の向こうに写っていた。
それは、またしても悲劇。
自分が出来ることは、【鏡】を通してその光景を見るだけで、その事実に介入することはできない。
???
「これで……残りは、ひとり……
あはははは、それにしても、私はほんとうに愚かだねぇ、ほんとうに……あはははは……」
呆然と……心を失ったように、嗤う女性の声が聞こえた。
角を生やし、紫紺色のローブに包んだ彼女の手には……
片手に翡翠色に輝く三叉槍のような剣と、もう片方の手にレモン色の魔法弾があった。
剣からはぬめぬめと輝く血がどろどろにこびりついていた。
何人も斬ったのか……辺りにはバラバラにされた男たちの死体も転がっていた。
男
「ま、待ってくれ……た、たすけ……」
ブルブルと震える男が、腰を抜かして後ずさりながら女性を見ていた。
あまりの恐怖に失禁し、がたがたと歯を鳴らして震える様は、憐れにも思えるほどだった……。
その向こうでは、恐らくは店舗であったであろう家屋が、業火に包まれていた。
???
「は?何、冗談言ってるの?あははははっ、イラない存在だからまともに考えられないのかな?
そっかぁ……エレガントでハッピーな二人の関係を破壊したのにそんなこと言えるんだぁ……
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 934 名前:Route:D-6 愚者:2020/12/26(土) 23:06:14.719 ID:vXvv.fQI0
- その隣では――泣き叫ぶ少女の声があった。
女神の血を引いている――と細波は言ったが、それが何だと言うのだろうか。
ここにあるのは絶望だ……。私は、悔しさに唇を噛んでいた。
???
「シズ!シズーーーーっ!」
シズと呼ばれた長身の白髪の女性は、地面に崩れ落ちていた。
銃弾が胸を貫いたことが、致命傷になったらしい。すでに赤黒く変色した血は、時間の経過を思わせた。
シズの身体に、小柄な白髪の少女が縋りつき、泣き叫んでいた。
少女の悲愴な声が胸をきゅっと締め付ける。その光景は、紅い月の時のように、私の心を深くえぐった。
辺りにも死体が散らばっており、軍服を着た男たちが折り重なるように倒れ伏していた。
白い髪に黒い髪――金色の髪――さまざまな種族の者たちが崩れ落ちている。
シルクハットに、拳銃に、軍帽に……様々な装飾品も散らばっていた。
- 935 名前:Route:D-6 愚者:2020/12/26(土) 23:13:55.120 ID:vXvv.fQI0
- そして……紫紺色のローブを着た女性は、先ほどとはうって変わって、
慈しみを浮かべた儚げな表情で、泣き叫ぶ少女を抱きしめていた。
少女
「……な、なく、ちゃん」
絞り出すような少女の声は、蚊の鳴くほどに小さかった。
なくちゃん
「――フチちゃん、守れなくて……ごめんね」
なくちゃん――と呼ばれた女性は、その場に広がる死体を見つめながら、口惜しそうにそう呟いた。
フチ
「なくちゃんは……謝らなくていい
……義兄さんも加勢してくれたけれど、多勢に無勢で――貴女が来てくれなかったら……あたしも……」
フチは折り重なる死体の一角に目線を動かし……再びなくちゃんと呼んだ女性を見た。
フチ
「……シズが死んじゃった
シズが、シズが……」
フチにとってシズは大切な存在だったのだろう。その取り乱しようは、ヒビの入った硝子細工のようだった。
そして、耐えきれなくなったのか、魔族の女性の胸にすがりつき、泣きじゃくっていた。
なくちゃん
「……ごめんね
私が、遅かったばかりに……【嵐】からふたりを守れなかった……」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 936 名前:Route:D-6 愚者:2020/12/26(土) 23:17:30.190 ID:vXvv.fQI0
- 二人はとても儚い存在に思えた。
同時に私の心はひどく衝撃を受けていた。悲しみが胸を包み、目頭が焼かれたように熱い。
フチ
「あ……ぁぁぁ……」
フチの涙が流れ落ちる。体が震える。
そして私もまた――涙をあふれさせていた。
心がずきずきと痛んだ。悲しみにむせぶ二人の姿が、私の心を押しつぶさんとしていた。
その、悲愴な光景を見ながら、私は――再び祈った。
この悲劇に巻き込まれた女性への救いを。この景色を観測している私にできることはそれしかないのだから。
私は、涙を浮かべながら……。
バラガミ
「私に、悲劇を食い止めるためのいくばくかの【力】を――」
【鏡】越しの景色に重なるように映った私の表情は真剣そのものだった。
涙に滲んだ視界に映る私の姿を見て、確かに私には女神の血が流れているのだと、客観的に感じ取っていた。
そして深く祈りを捧げる私の思考は、現から徐々に乖離し始めて……。
- 937 名前:SNO TIPS:2020/12/26(土) 23:26:27.439 ID:vXvv.fQI0
- -愚者
タロットの大アルカナに属するカードの1枚。
カード番号は0や、あるいは無番号で表記される。
正位置は自由、無邪気、天真爛漫、天才
逆位置はわがまま、ネガティブ焦り、意気消沈などを示す。
無計画に旅を始めようとする足元の危機に気が付かぬ危うさはあれど――
……純真無垢で前へ進める自由な可能性を秘めた存在なのかもしれない。
- 938 名前:きのこ軍:2020/12/27(日) 09:34:06.394 ID:ReflaknAo
- 魔王が愚者だったかはえー 続々と明らかになっていくし悲しい
- 939 名前:Route:D-7:2020/12/27(日) 20:29:26.119 ID:eHtH7kKg0
- Route:D
Chapter7
- 940 名前:Route:D-7 苦難:2020/12/27(日) 20:31:34.274 ID:eHtH7kKg0
- ――――――。
気が付くと、私は寝台の上で横たわっていた。
バラガミ
「――【鏡】、【鏡】はどこ?」
【鏡】は胸の中に――何事もなかったように治まっていた。
……まるで子供を撫でるように、私はほっとした表情で鏡を見つめていた。
バラガミ
「はぁーっ……」
そして、溜め息を一つ落とした。
死の運命に抗うことなく受け入れる男女の姿は――
先程のDBに蹂躙される兵士たちの光景は――
泣き叫ぶ少女の声は――
すべて、私の心を苦しめんと締め付け、私の表情に暗く陰を落とした。
透き通る白い肌に浮かぶ陰影は、まるで、つくりもののように綺麗で――そして、淋しく見えた。
……これは私なのだとわかっていても……いまだ、現実感はなかった。
- 941 名前:Route:D-7 苦難:2020/12/27(日) 20:40:06.962 ID:eHtH7kKg0
- ふと、私は部屋を見渡した。
自分は何処にいるのだろうか。これまで【鏡】を通して絶望的な光景を目にしていたが、
自分自身やその周りを――もっとも近くにあるものを見ていないということに思い至ったからだ。
部屋の壁や床には、赤を起点とした豪華絢爛な飾りがされており、寝台もよく見れば高貴な者の使う特別なのものだ。
装飾は8つの首を持つ龍をあしらえたものだ。とても丁寧な、雲に囲まれるその姿は……
神を祀る――それほどまでに大きな存在なのだと、なぜだか感じ取っていた。
……私には記憶はなくても、その神々しさは本能で感じとったのかもしれない。
次に、窓の外に目をやった。
……しかしその世界は暗黒で包まれていた。夜――ということ?
――ふと、私の身体がぶるぶると震えた。不意にあの凶兆を思い出してしまったからだ。
……それでも、震える身体に鞭を打ち、壁にしがみつくように手をかけ、窓の向こうへと目を向けた。
その世界では……泡が立っては空へと消えていた。
ここは一体……。
バラガミ
「わからない……ここは……いったい」
ここも――夢幻の世界の一部なのだろうか?
バラガミ
「ここは――どこ――?」
呆然としながら、私は呟いていた。
行き場を失った声が部屋へと充満していく。空気は重く、私の心もそれに併せて重くなってゆく。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 942 名前:Route:D-7 苦難:2020/12/27(日) 20:42:33.305 ID:eHtH7kKg0
- バラガミ
「さざ…なみ……そうだ、彼女に……」
そこで私は思い出す……細波は、近くにいるはずだ。
彼女を呼んで、身の回りのことを、聞いて……今の状況を判断しなくては!
――そう思ったが、考えようとした途端に頭痛が私を襲った。
バラガミ
「――っ!」
その痛みは、まるで周りのことを考えさせないようとばかりに、ずきずきと脳内に響いた。
バラガミ
「痛い――はぁ、はぁ、はぁ……」
考えることをやめる、息を荒くしながら寝台に身を投げた。
……すると途端に痛みが引いた。
まるで、考えないようにを指示されているかのように――。
バラガミ
「……この痛みは、意味のある痛みなのかもしれない」
――突然、閃きとともに私は一つの仮説に至った。
それは突拍子もないものだった。無から突然生まれたものでもあった。
- 943 名前:Route:D-7 苦難:2020/12/27(日) 20:48:19.823 ID:eHtH7kKg0
- バラガミ
「理由は分からないけれど、私は、女神と呼ばれている」
――その事実だけは、嘘偽りではない。
確実に……私は女神なのだ。そう言えるだけの根拠は、ない。
しかし――私の何かが……それを認めていた。
バラガミ
「私が女神だというのなら、女神として、この苦難を受け容れる――」
……救われない悲劇に、周りのことが分からない。
私はまさに籠の中の鳥のように……何も知らない白鷺のようにまっしろな存在だった。
そして【鏡】越しの光景に心を痛め、白は黒に染まってゆく。
何も――私にできることはない。それでも……
バラガミ
「――私の周りに訪れた……あるいは訪れる苦難に、私は目を逸らさない」
私は、そう決意した。
バラガミ
「それが、絶望しか見えない今、私の出来る唯一の行動だから」
鼓舞するように、私は呟く。
鏡面に映る私の顔は真剣そのもので、赤い瞳は、まるで焔が宿ったかのように燃えていた。
そして、再び【鏡】を抱いて祈りを捧げ始めた……。
心は祈りというひとつの行動に集約されていた。
やがて、私の視る景色は揺れる水面のように流れて行って……。
- 944 名前:SNO:2020/12/27(日) 20:48:50.996 ID:eHtH7kKg0
- 表現むずいんよ。
- 945 名前:きのこ軍:2020/12/27(日) 21:22:19.976 ID:ReflaknAo
- でも書きながら成長している感ある
- 946 名前:Route:D-8:2020/12/28(月) 18:38:31.871 ID:k8gQLupY0
- Route:D
Chapter8
- 947 名前:Route:D-8 正義:2020/12/28(月) 18:42:22.830 ID:k8gQLupY0
- ――――――。
【鏡】の向こうでは、再びどこかの景色が写っていた。
巨大な城の後ろにそびえる険しい山の頂上で、一人の天狗の女性が座っていた。
背中に生えた翼は、左は黒、右は白――髪も、正中線を境に左は黒、右は白と分かれていた。
その顔は、右目を縦に、と左頬を横に走る傷が刻まれ、さらに右目がつぶれていることも相まって、いやがおうにも威圧感を覚えさせる。
頬を撫でる左手も、中指は第一関節より上から――薬指と小指は、第二関節よりも上からを欠損していた。
天狗
「――あの人は、ひと月もしないうちに目覚めるでしょう」
寂しそうな天狗の声。
あの人とは誰のことなのだろうか――【鏡】越しに対話する事もできないから、私には分かりようもない。
天狗
「――わたくしに出来ることは、彼女を導くことだけ……」
ぽつりと零れた言葉は、苦難を受け容れようと決意した私のように、決意に溢れていた。
天狗の女性は、ばさりと翼を広げると、山頂から飛び立ち、城から少し離れた所に広がる荒野に降り立った。
孤独に佇む背中は、何かを背負っているような重さを感じられた。
- 948 名前:Route:D-8 正義:2020/12/28(月) 18:44:44.423 ID:k8gQLupY0
- その時、天狗の前に、屈強な数十人の兵士たちが武器を持って詰め寄った。
兵士
「ネエチャン、確か――ブラック……だったな?目障りなので仕留めてやるよ」
――ブラック。その名前には聞き覚えがあった。
……弦夜と一緒に居た女性が語っていた名前だ。
弦夜
「そうか……それより、彼女たちの方はどうだ?」
女
「ブラック……いいや、ヤミに一任していますわ」
――しかし、彼女の言い方からして、天狗の名前はヤミが正しいようだ。
少なくとも――彼らにとっては、天狗の名はブラック……そういうことなのだろうか。
……私には、ヤミという名前の方がしっくりと来た。
兵士
「待て待て……捕まえようぜ、仮にも天狗の女だぞぉ?初めて見る女じゃないか」
兵士
「確かに、天狗なんて見たこともないからなぁ……」
にやついた口元と、漏れる言葉は品性を感じられない。
下劣そのもので、吐き気を催しそうなぐらいに醜い。
腐臭に塗れた欲望という名の塊。
それらは大地をも汚さんとばかりに……辺りに浸食していた……。
- 949 名前:Route:D-8 正義:2020/12/28(月) 18:46:18.770 ID:k8gQLupY0
- ヤミ
「……お前らのような奴が、あの人を不快にさせる……
蛆虫よりも醜い……生物とも物質とも認めたくない、悍ましい存在が……
お前らのような存在が……あの人を……繭から目覚めさせた……」
天狗――ヤミは、冷たい言葉を吐き捨てた。
恨みが篭ったかのように、その目元は怒りでつり上がっているようにも見えた。
兵士
「ハン、生意気なアバズレがぁ!」
ヤミの言葉にいきり立った兵士たちは、剣や杖を構えて天狗に襲い掛かった。
その勢いはまるで吹きすさぶ嵐のよう。彼女はそれに耐えることができるのか……じわりと汗が流れるのを感じていた。
ヤミ
「すぅうううう――――――っ」
……一方の天狗は、ただ一呼吸してその場に立ち尽くすばかり。
バラガミ
「――――!」
この後に起こる光景――それは、再び絶望なのだろうか。目を覆いたくなるような惨劇なのか。
私は、ぎゅっと目を瞑りながら、天狗の無事を祈った。
ヤミ
「――はっ」
私の祈りが通じたのか――あるいは、天狗の実力なのか。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 950 名前:Route:D-8 正義:2020/12/28(月) 18:48:29.122 ID:k8gQLupY0
- 兵士たち
「うぐぁああーッ!」
断末魔と血しぶきをあげ、兵士たちはその場で倒れた。
兵士
「く、くそっ!マジックジャマーだ!起動しろ!」
遅れて、標的ではなかった兵士が何やら機械を弄り始めた。
――その瞬間、辺りには空気を震わす波のようなものが渦巻いていた。
兵士
「……よし、お前のそのよくわからん魔術は封じ込めた!
消させてもらうッ!」
ヤミ
「………」
――ヤミは、風の刃を続けて放とうとはしなかった。
まさか……これは……彼女の攻撃を封じた、ということ……?
これから……彼女は一体……。
私の心は不安に浸食される。しかし続くヤミの言葉は……
ヤミ
「思考が汚らしいから、実力もそれと同じ……
あの人なら、もっときれいに処分してくれることでしょうに……
わたくしは――やっぱり、あの人には敵わないですね」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 951 名前:Route:D-8 正義:2020/12/28(月) 18:49:27.223 ID:k8gQLupY0
- ――ヤミは、いともたやすく……男たちを消し去った。
……さらに、追い打ちのように、あるいは蘇らないように、風の刃で兵士たちの死体をバラバラにした。
彼女は、もはや肉塊と化した兵士たちには目もくれず、その場を立ち去っていった……。
バラガミ
「……数十人も居たのに、たった一人で切り抜けた?」
その光景はこれまで見た絶望的な風景ではなく、希望と言ってもよかった。
バラガミ
「……まだ、世界は絶望で包まれていないの?」
少なくとも、今この瞬間は、希望はある。
私は、なにか報われたようなものを感じた……。
バラガミ
「……ならば、私は祈ってみせる
希望が見えるようになる、その時まで……たとえ、希望がこの一瞬だったとしても……」
私が選んだ道――苦難に立ち向かうという決意は、さらに固まった。私は、再び【鏡】を抱いて祈り始める。
まるで母が赤子を守るかのように――まるで愛しい子供を抱きしめるかのように……
私は、【鏡】に自分全てを捧げるかのように、祈りを捧げた……。
- 952 名前:SNO:2020/12/28(月) 18:50:30.295 ID:k8gQLupY0
- 強いんよ?
- 953 名前:きのこ軍:2020/12/28(月) 19:33:25.002 ID:kVcr9gl2o
- 祈り系主人公
- 954 名前:Route:D-9:2020/12/29(火) 19:25:25.960 ID:kdHxTSNY0
- Route:D
Chapter9
- 955 名前:Route:D-9 神託:2020/12/29(火) 19:27:48.923 ID:kdHxTSNY0
- ――――――。
どれだけの、時間が経ったのだろうか……長い時間が経った気もするし、たった数分の短い刻かもしれない。
それでも、私は祈り続ける。たった一つの希望だけで、絶望に立ち向かう決意が高まってゆく。
同時に、女神と言われるようになった理由についても思いを馳せる。
女神と言われるからには、それ相応の理由があるのだから。
バラガミ
(ひとつは――私が女神を降ろす器――巫女であるという可能性)
それが一番妥当な結論かもしれない。
遠くの景色を映す【鏡】は、ただの鏡ではないことは明らかだ。
そんな特別な鏡と、それを抱く己自身が女神の憑代である――とても単純で妥当な理由。
バラガミ
(でも、もう一つ――私そのものが、女神という可能性)
しかし自身への細波の言葉は、単に女神の憑代への態度には思えなかった。
女神そのものへの態度……。私は特別な存在なのだと……神々しい存在なのだと……。
しかし……。
バラガミ
「でも――私に出来る事は祈ることだけ」
どちらにせよ、今はただ【鏡】と共に祈るだけだった。
絶望だけが蔓延る――たとえ私の視る世界が絶望しかなくとも……。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 956 名前:Route:D-9 神託:2020/12/29(火) 19:29:36.646 ID:kdHxTSNY0
- 【鏡】に映る光景。
眼前に広がる景色ではでは疲弊した人々が、神への祈りを捧げている。
暗雲が空を纏い、恐らくはDBが原因だろうか、枯れた草花の残骸が大地に広がっている。
住民
「――お願いします、ユリガミサマ……どうか、【会議所】の……」
ユリガミ――その単語に、私は目を丸くして驚いた。
その言葉を聞くまで、不思議と意識することはなかったが……バラガミのバラは、茨を持つあの薔薇の事だろうか。
ならばユリガミのユリは、幾重にも合わさる葉を持つ百合の事なのだろうか……?
バラガミ
「ユリガミ――ユリガミ――」
何故か引っかかるものがあった。住民の一人は、丁寧に折りたたまれた紙を取り出し、ユリガミに祈っていた。
【鏡】の映す光景は、私が念じるとともにその住民のもとへと移った。
そして、その紙には――
白い花びらが世界を包んだ時に見た――忘れることなどできやしない、
あの、黒い髪の女性の絵が描かれていた。
バラガミ
「――!」
やがて、私は――納得した。
白百合の花びらを纏う巫女は、ユリガミと呼ばれている。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 957 名前:Route:D-9 神託:2020/12/29(火) 19:30:20.948 ID:kdHxTSNY0
- 住人を映し出したことは、私にそう結論付けさせるがための、【鏡】の神託のようにも思えた。
――が、同時に……新たな疑問が生まれた。
あの少女は――?
赤い薔薇の花びらを纏っていた、とてもたいせつなそんざいの少女。
黒髪の女性がユリガミなら……その少女こそが、バラガミなのではないのか?
……いいや、少女はあの時死んだのだ。
ユリガミの太刀で斬られたのを……この眼がはっきりと捉えたのだから。
だから、仮に少女がバラガミだとしても、自分がバラガミではないという証拠にはならない。
少女の役目を引き継ぐ――そういった出来事があったのかもしれない。
断片として存在する記憶のために、そう言い切れるわけではないけれど……。
バラガミ
「ともかく、今は私に出来ることをするだけ――」
私は、納得できない何かを……違和感を覚えながらも、
それを振り切って、祈りを続けることにした。
己の存在や、少女のことは気にならないといえば嘘になる――が、それを追い求めている場合ではない。
ただ、祈り続ける。
疲弊する住民のために――あるいは、自分の中で希望を失わないために。
――絶望に立ち向かう。希望へとたどり着く。
それが――今ここに居る理由だから。
私は、再び【鏡】と共に祈り続け…………。
- 958 名前:SNO:2020/12/29(火) 19:30:39.270 ID:kdHxTSNY0
- 書き込む前タイトルが信託になってたんよあぶないんよ
- 959 名前:きのこ軍:2020/12/29(火) 22:01:07.322 ID:m1zWBMqko
- そっかバラとユリの関係か 気づかなかった
- 960 名前:Route:D-10:2020/12/29(火) 22:45:43.254 ID:kdHxTSNY0
- Route:D
Chapter10
- 961 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:47:09.729 ID:kdHxTSNY0
- ――――――。
再び、私が【鏡】を見た時――それは、何処かの地下室だった。
そこに居たのは、端正な顔つきの蒼い長髪の男性と、これまた整った顔の――少し気弱そうな表情の、黒い短髪の男性。
何故か、その顔を見ると私の心臓は脈打ち始めた。
バラガミ
「え……」
記憶の何処かで、その男性に心当たりがある。だが、どうしてかは思い出せない。
どうにか思い出そうとすると、少女の亡骸が脳裏をよぎった。彼らは少女と関わりがあるのか?
バラガミ
「っ……」
失われた記憶の中に、答えはあるのだろう……。
だが、思い出せない。そしてわたしは思い出すことを放棄した。
……それを考えようとすると、また、頭痛が私を襲うからだ。私が為すべきことは記憶を取り戻すことではないから……。
【鏡】に広がる向こうの景色では、突然――頭髪を剃り落した大柄の男が現れた。
黒髪の男性
「シューさん、誰かいるッ!」
蒼髪の男性
「――誰だっ!」
- 962 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:51:16.479 ID:kdHxTSNY0
- 大柄の男
「どうも――¢さんに、集計班さん――」
……大柄の男は、舐める様にふたりを見つめてそう呟いた。
その会話と視線の方向から察するに、黒髪の男性が¢で、蒼髪の男性が集計班のようだ。
なぜか……彼らを見るたびに、わたしの胸はばくばくと高鳴っていた。
なぜ――どうして――こんなにも――。
欠落した記憶の中で何かが叫んでいるようにも思えた。それは本能的な感覚でもあった……。
大柄の男
「DBを生み出した張本人がたに会えて、うれしいですねぇ……」
DB――あの恐ろしい生物のことだ……。
……そんな、まさか――うそでしょう?
大柄な男
「誰が発案したかは知りませんが、ともかくあなた方は自作自演を行ったんです
DBという名の架空の化け物を生み出し――それを撃退することで、【会議所】の士気を高めていた」
まさか、彼らが――そんな――。
わたしは首を振り必死に否定しようとするけれど、続く言葉は――。
¢
「ど、どうして……どこから……掴んだんよ……」
¢の、がっくりとうなだれた様子からは――痛いところを突かれたと言っているようなものだった。
- 963 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:52:31.066 ID:kdHxTSNY0
- 彼らは――あのバケモノに関わっていたというの――。
大柄な男
「フフフ……【会議所】も大変ですね……世界の中枢であり、見かけは善でも……
内部はどの組織でもあるように、魑魅魍魎が渦巻く裏がある
あなた方がDBを作らなければ、我々がDBを作り出すこともできなかった……」
肩をすくめ、見下すように笑う大柄な男……。
余裕綽々の表情で彼らを見つめている……しかし、集計班が手をかざし、何かを呟いた。
集計班
「――マグラビティ!」
その声とともに、大柄な男の足元には土色の紋章が刻まれていた。
どうやら……集計班の唱えた術式に依るものか。大柄な男の動きを封じようとしていた。
¢
「…!、動くなっ!手を挙げるんよ!」
¢は、うなだれた感情を切り替え、二丁の銃を構えた。
それは戦士の眼でもあった……。
大柄な男
「おやおや……流石はエースに、情報解析のプロ――
私をどうにかしようというわけですね?」
大柄な男は、両手を挙げながらも、くつくつと笑いをこぼしながら余裕たっぷりに答えていた。
- 964 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:53:56.524 ID:kdHxTSNY0
- 集計班
「……お前は、【嵐】の孟覚眠(モン・ジェイミン)だな――貴様は兵士狩りをしているが……何故だ?
【嵐】は何を目的としている?どうしてお前がここにいる?答えてもらおう――
――答えなければ、銃の引き金を引いて始末する」
覚眠
「おやおや、怖いですねぇ……
フフフ……まぁ、いいでしょう……」
覚眠――と呼ばれた男は、おどけた風にぺらぺらと喋り始めた。
覚眠
「一つ目の質問ですが――まぁ、これは私の任務なんです
有望な強者を消し去らないと、活動が満足にできないですからね……」
¢
「そ、そのために……乙海や、魂さん……ほかにも、集落で暮らす兵士を……」
¢は震えた声で答えた。しかし……その手は震えていない。
感情と肉体の動きを完全に分けているようだった。
……乙海……オトメ……その単語には、聞き覚えがあった。
しかし……どこで?わたしの記憶のどこかで引っかかっているけれど、それが何なのかは分からなかった。
覚眠
「まぁ、強者を放っておくと、私にとっても色々と邪魔なんですよねぇ
さて、第二の質問――【嵐】の目的は……」
――困惑する私の見る景色では、勿体ぶりながら、覚眠が言葉を続けていた。
- 965 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:55:15.406 ID:kdHxTSNY0
- 覚眠
「なんてことはない、ひどくありきたりな目的――簡単に言えば、世界征服です」
覚眠
「きのたけ理論――あの理論は、コルヴォ=フェルミが見つけたというのが世界共通の認識ですが……
それよりも前に、【嵐】のリーダーはそれに辿り着いていた
しかし、その理論を活かすには膨大な組織力が必要だったから、待っていたんですよ……表の人間が理論に辿り着くのを」
覚眠
「そしてコルヴォ=フェルミが理論を見つけてくれたおかげで、大衆に理論が知られ
――理論に関わる施設も、各国の協力で作られ……世界は発展していった
そして我々は、その世界をハイエナのように横取りするという、ひどく単純なことをするだけなんですよ、フフフ」
集計班
「……」
集計班は、苦虫をかみつぶした表情で、おかしげに話す覚眠の言葉を聞いていた。
¢
「じゃ、じゃあ……企業への襲撃も……」
覚眠
「なかなか鋭いようですね、貴方の想像している通りですよ……
そして第三の質問ですが――私は貴方達がここに行くのを尾けていた、ただそれだけです」
¢
「そんな……、誰の気配も……なかったはずなのに……」
¢は、銃を構えながらも、その心はぶるぶると震えているようでもあった。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 966 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:55:54.230 ID:kdHxTSNY0
- 覚眠
「気に病むことはありません……戦闘術【魂】を応用しただけですから……
さて、私はいろいろと教えてあげましたが……いかがでしたか?
冥途の土産の言葉に――満足してくれたところで――」
――そして、覚眠は、ふうっと息を吹いた。
¢
「――!」
集計班
「っ――!」
その動きに、¢は素早く銃の引き金を引いた。
同時に集計班も覚眠を縛り付けた紋章に【力】を込めていた。
覚眠
「――戦闘術【魂】、コールドフレア」
――しかし、覚眠は……
その動きよりも早く……何処から呼び出したかもわからない、吹雪を二人にぶつけた。
¢
「――ぐはッ」
集計班
「がは――ッ」
銃弾も紋章も、吹雪にかき消されて消え去り――
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- 967 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:57:58.559 ID:kdHxTSNY0
- 覚眠
「初めから、私に攻撃すればよかったんです
【嵐】の目的――そんな、戯言を聞くよりも早く――
そうしていれば、あるいは――勝ち目があったかもしれないのに――」
嘲り笑う覚眠の姿を見て、絶望の単語が私の脳裏を過った。
それは、何度目かは分からないが――心をズタズタにするような感覚であることは違いない。
バラガミ
「やめて――お願い――」
涙を流しながら、私は【鏡】越しに、懇願するようにそう呟いていた……。
覚眠
「それにしても空しいものです、情報処理能力に長けた集計班ともあろうお方でも――
機敏さと二刀流を活かしたエース兵士の¢ともあろうお方でも――
私の力の前には、なすすべもなく……抵抗する前に敗北してしまう――」
集計班と、¢は、氷像と化し、地面に這いつくばっていた。
砕けた身体の欠片が散らばり、その体の中に宿る紅を散らして。
その光景は私の心はひどく揺さぶられる。
紅い月の凶兆や、少女が斬られた時の光景が眼前を過った――。
集計班
「あ、ぐ……き、さ、ま――」
絞り出すような苦しい声は、一言ごとに刺されたような感覚になる。
苦しむ二人の様子に、私はひどく動揺していた。
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- 968 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 22:59:34.735 ID:kdHxTSNY0
- その光景を見て、私の口の中はからからに乾き、顔に汗の粒が浮かんだ。
心臓はばくばくと脈打ち、張り裂けそうな悲しみが全身に響いた。
覚眠
「ああ、最期に教えてあげましょう
私は、世界征服なんてどうでもいいんです……ほかのメンバーから尋問すべきでしたね?
そうすれば長生きできたでしょうに」
覚眠
「――世界を獲るなんてくだらないことは……
他の人がやるでしょう……
フフフ……それでは、さようなら――」
集計班
「ま――て――」
飄々とした口調で立ち去った覚眠と、その足を掴もうとする集計班――。
しかし凍り付いた身体は動かない。手を伸ばそうとする仕草が……私の心をズタズタに傷つけた。
……そして、集計班も悔しさを浮かべた顔で力尽き果てた。
ふたりの亡骸は、少女の亡骸と重なるところがあった。
バラガミ
「――」
呆然と、その光景を見つめる私……。どうしてもこんなに悲しいのだろう。
この二人の男性は、自分にとって大切な存在だったということなのだろうか?
……あるいは、その光景そのものに、心をずきずきと痛めているのかもしれない。
- 969 名前:Route:D-10 悪魔:2020/12/29(火) 23:00:10.053 ID:kdHxTSNY0
- バラガミ
「わからない――わからない――
心が揺さぶられるのに、その理由がわからない――
あの女の子も――そして、この男の子も――」
涙を流しながら、【鏡】の向こうで死んだふたりを見つめながら祈った。
バラガミ
「どうか――これまで不幸になった人が救われるように――
私は祈りを捧げる――」
バラガミ
「――とても悲しいし、心が張り裂けそうでも
私にできることは、これしかないのだから――」
言い聞かせるように――まるで現実から目を背けるように、私は祈った。
閉じた目からは未だ涙があふれている。
それでも――私は祈り続けた。
- 970 名前:SNO:2020/12/29(火) 23:01:20.399 ID:kdHxTSNY0
- 溜め技でなんか強そうな奴を適当に選びましたんよ。
- 971 名前:きのこ軍:2020/12/29(火) 23:30:22.273 ID:m1zWBMqko
- コールドフレアなんてポケモンのワザあったっけと思ったら、伝説ポケモンの専用技か
それはそうと固有兵士が死んでいくのは悲しいなあ。
- 972 名前:Route:D-11:2020/12/30(水) 18:22:46.240 ID:VOze98Lg0
- Route:D
Chapter11
- 973 名前:Route:D-11 奇跡:2020/12/30(水) 18:23:58.マオウ ID:VOze98Lg0
- ――――――。
再び、私が目を開けた時……【鏡】の中には、先程の地下室が映し出されていた。
バラガミ
「ここは……」
先程の情景を思い出し、私は顔をしかめていたが、ある事実に気がついて目を丸くして驚いていた。
バラガミ
「えっ……?」
集計班
「………」
¢
「………」
そこには――先程の男性――集計班と¢が、何事もなかったかのように佇んでいたからだ。
集計班は、薄暗い地下室の、ロッキングチェアに揺られながら考え事をしていた。
¢は、椅子に足を組んで、きょろきょろしながら本を読んでいた。
二人の向こうには、たくさんの本が無造作に積み上がっている。
その様子に、なぜか懐かしさを覚えながらも――
バラガミ
「………二人は、今……命が在るの?」
私は、ぽつりと言葉を呟いて、この光景が意味することについて考えていた。
- 974 名前:Route:D-11 奇跡:2020/12/30(水) 18:25:54.030 ID:VOze98Lg0
- 胸を貫かれ、致命傷を負ったはずなのに……、傷ひとつなく、ふたりはそこに居た。
それは私が祈った事に起因するの?
少なくとも――私にはある言葉が頭の中にあった。
バラガミ
「これは、奇跡――?」
この現象は、奇跡……神の与えたもうた奇跡……。
私が目を閉じ、そして開けるまでに何があったか――それは分からない。
あるいは、その間に目を開けていたのかもしれないが、記憶が失われたのかもしれない。
ただ一つ言える事は、人智を越えた何かが……そこで起きたということだった。
¢
「大戦はまだやり直せると思うんよ――だから今はひたすら耐える……」
集計班
「ええ……いろいろな【死】はあれど――まだ、完全に崩壊したわけではないですから……」
¢は、ぐっとこぶしを握って呟いた。その言葉に集計班もうなずいている。
何かへの希望。そのために、苦難を耐えようとする言葉。
――それは……この、不可思議な現象を目にしたわたしにとって、心強い言葉でもあった。
- 975 名前:Route:D-11 奇跡:2020/12/30(水) 18:27:33.633 ID:VOze98Lg0
- 集計班
「花は季節になればまた咲くように……終わらぬ絶望はない……」
集計班は、先程の出来事などなかったかのように、感慨深く、遠くを見つめながら、誰に伝えるわけでもない独り言を零した。
¢
「――シューさんの言葉通りなんよ
まだまだぼくらは戦える、できる範囲で人助けや、治安維持をしながら、大戦の再開を持つんよ」
近くには、花の図鑑があり……私の視線はその一点に注がれた。
その表紙にはスミレの花が描かれている――スミレの花言葉は色によっても異なるけれど、
全般的なもので言えば「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」――。
……その意味が、すっと記憶の中から引きだされた。
どうしてだろうか……私は、スミレの花言葉に、深い思い入れがあるのだろうか。
心をこめて、丁寧に向き合うほどに……。
集計班
「DB計画が、こんな形で仇となったのは、まったくもって想像外だったが――」
¢
「……シューさん、もともとぼくが持ち出したプランだから、責任はぼくが……」
集計班
「いや……これは表ざたにはしないほうがいいでしょう」
集計班
「【嵐】が、われわれの作り出したDBという架空の存在をもとに、別のDBをけしかけたのは事実です
しかし――われわれの計画の細部までは知りえないでしょう……
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 976 名前:Route:D-11 奇跡:2020/12/30(水) 18:28:54.361 ID:VOze98Lg0
- ¢
「……確かに、話し合ったのは、ぼくとシューさんしかいないから、計画は知りえないわけだ」
集計班
「最も……われわれのDBに詳しい人物は、私と¢さんを含め3人で――
今や私とあなたを含め2人になってしまった……
もちろん、どこかで漏れた可能性はあるが、それについて考えてもらちがあかない」
¢
「……確かに、そうなんよ
今は……目の前のことを見ないと」
……DBという化け物は、彼らの手で生み出された存在らしい。
しかし会話の内容から察するに、それを悪用された――それがあの惨劇の事実ということ、だろうか。
……私は、少しほっとしていた。
どうしてだろうか……彼らが、破壊衝動に目覚めていないから……?
ふたりの話し合う真剣な表情に、私は不思議と希望の存在を実感していた。
奇跡が生み出した希望……本当に不思議な光景でもあった……。
バラガミ
「――どうして、奇跡が起きたのだろう」
私は鏡面に指を這わせた。
そのしぐさは我が子をあやすような―あるいは恋人同士のスキンシップのようでもあった。
やがて、【鏡】の向こうの景色は薄れ、銀色の鏡面と、反射した私の顔がそこにはあった。
- 977 名前:Route:D-11 奇跡:2020/12/30(水) 18:29:19.542 ID:VOze98Lg0
- バラガミ
「――スミレ」
ふと、わたしは花の名前を呟いた。
バラガミ
「私は知っているはず――知っている――」
どうしても、私の中でひっかかるそんな単語だった――
けれど、思い出そうとすると――。
バラガミ
「うぁっ……」
頭痛が私を襲う。
今、思い出してはいけない――考えてはいけない――そう誰かから言われているようにも思えた。
バラガミ
「そうだ――私は、祈ることだけを考えればいい」
少なくとも――祈ることで希望が生まれ、祈る事で奇跡が生まれた。
完全な絶望が広がるわけではない。私にだって、できることがある。
そう思うと、頭痛はすぐに引いた。――すなわち、そういうことなのだろう。
だから――私は【鏡】を抱いて祈った。
更なる奇跡のために……希望を捨てないために……。
- 978 名前:SNO:2020/12/30(水) 18:30:03.088 ID:VOze98Lg0
- ¢さんの語尾は●●なんよにするかしないかで迷ったけどつけることにしたなんよ
- 979 名前:きのこ軍:2020/12/30(水) 21:12:06.886 ID:3CRJ15A2o
- なんにでもんよんよ付けても阿呆っぽさが出るので、ここぞというときに使えばむしろ効果的。
そういう語尾フェチです。
- 980 名前:Route:D-12:2020/12/31(木) 00:29:24.536 ID:6u4F60iE0
- Route:D
Chapter12
- 981 名前:Route:D-12 神勅:2020/12/31(木) 00:33:10.016 ID:6u4F60iE0
- ――――――。
気が付くと、細波が私の隣に座っていた。
何時の間に――彼女はここに?
いいや、それを考えるのは無駄だ。私は記憶が飛ぶのだから。
それを追及するよりも、私には優先すべき事があるのだ――。
そう、思っていると……。
細波
「バラガミ――運命の時はあと少し……」
細波の言葉が響く。
運命の時――意味深な言葉を呟いた細波は、表情を変えずに私を見つめていた。
バラガミ
「運命の――時――」
……その単語に、心当たりがあるような気がする。
だが、その意味合いはどうしても思い出せない。
けれども、とても大切なことである――
それは、忘れてはならない重要な要素なのだと……心の奥底で理解していた。
細波
「あらかじめ釘を刺しておくけれど
――私は貴女にこれ以上は教える事はできない……」
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 982 名前:Route:D-12 神勅:2020/12/31(木) 00:38:27.200 ID:6u4F60iE0
- バラガミ
「……どうして、何も教える事ができないの?」
細波
「ほかでもない、貴女がそう仰ったから――
記憶を失っても、その時に、運命の時が来ること以外は、貴女自身に教えてはいけない――と」
バラガミ
「私が、私に言伝を――?」
細波
「ええ……貴女が、そう言ったの」
――私が、そう……言ったのか……。
彼女の口ぶりからは嘘というものは感じ取れない。
……失われた記憶の断片に、私がそう言った場面があるのだろう。
そして――逆に言えば、この時期(とき)に、運命の時についてを教えることに意味があるともいえた。
バラガミ
「ありがとう――私に教えてくれて――」
――私は記憶を失っていても何かの準備をしていた……そういうことなのか。
そう思うと、不思議と納得がいった。
細波
「いえ――
貴女の祈りが通じることを、私たちも望んでいるから
それでは、お願いね、バラガミ――」
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- 983 名前:Route:D-12 神勅:2020/12/31(木) 00:41:25.409 ID:6u4F60iE0
- ……私たちという単語から、細波をはじめとした何者かが、私に期待しているらしい。
確かに、先程奇跡は起きた。私の祈りが、集計班と¢を蘇らせることに繋がっていた……。
バラガミ
「……私が、私への言伝を」
そして誰にも届かない言葉を呟きながら、【鏡】に映る私の顔を見た。
白い髪。赤い瞳。黒い衣装――それは何度見ても変わることはない。
だが、その表情は――まるで雲に隠れた太陽が、切れ目から顔を覗かせたように明るくなっていた。
……それにしても、バラガミと呼ばれた私が、私自身に言伝をするなんて。
まさに、神勅というべきなのかもしれない。
【運命の時】――とやらが、近づいている。
その時、私は何を見るのか……その時私は、どうすべきなのか……。
その具体的な内容がわからないことに、一抹の不安もあるが……いいや、大丈夫。
……私はその時に祈りを捧げる。それを私自身が指示している。
……恐らく、そのために私はここまで【鏡】を通して景色を見、祈りを捧げて来たのだ。
私がその時まで祈りを捧げ続けるために、余計な記憶が欠損されているのだろう。
純粋な、まっしろな――祈りだけに神経を注げるように――。
……心の中に、相変らず不安という名の火は燃え、煙をあげている。
けれども、大丈夫。私は祈りを捧げてみせる。
私は、心の中でそう繰り返しながら【鏡】に祈りを捧げ始め……。
- 984 名前:SNO:2020/12/31(木) 00:41:44.981 ID:6u4F60iE0
- どこで埋めよう。
- 985 名前:D-13:2020/12/31(木) 09:25:18.607 ID:6u4F60iE0
- Route:D
Chapter13
- 986 名前:D-13 運命の輪:2020/12/31(木) 09:26:46.372 ID:6u4F60iE0
- ――――――。
【鏡】の向こうでは、白髪の人物と、神父姿の人物が血まみれで倒れ伏せていた。
バラガミ
「…………一体、これはどういうこと」
――視界の果てで誰かが駆け抜けた気がするが……今、私にとってはそれよりも眼前の光景の方が大切だった。
二人ともすでに息はない。ぴくりとも体は動かずに……地面に紅の花を散らしている
それは凶兆の余波のようにも思えて、私の心はがくがくと震えはじめる感覚があった……。
バラガミ
「えっ――」
唖然としているうちに、映された景色は霞むように消え――【鏡】には私の顔だけが映っていた。
しばらく、呆然としていたが――やがて、わたしはめまいにも似た感覚を覚えていた。
バラガミ
「どういうこと――いったい、これは――」
私の中で何かが失われていくような感覚……心と体が乖離していくような、不気味な感覚……。
先ほど【鏡】に広がっていた光景は、自分への神託である運命の時、そのものであると……わたしの中で言っていた。
泥濘に沈んでいくような感覚の中、私の思考はとても鮮明に思案し始めた。
私は、この運命の時をどうすればいい……?
私に――バラガミに定められた責務は、一体何なの?
しかし、それを求めてもわかるわけではない。だが、解き明かさなくてはいけない。
私自身が――運命の時――そう告げたことには、恐らく理由があるのだから…。
- 987 名前:D-13 運命の輪:2020/12/31(木) 09:29:13.643 ID:6u4F60iE0
- バラガミ
「……私は、誰かを救わなければ……いけない?」
――私の中には……凶兆の景色が広がった。
その凶兆のさなか、ユリガミが斬ったあの少女が、舞い散る花びらが頭をよぎった。
バラガミ
「もし――もし、私にその【力】があるのなら――」
……その時、私は、集計班と¢が蘇った出来事を……私が奇跡としたその出来事を思い出した。
……祈って奇跡が起こせるのなら、血まみれで倒れていたふたりを――蘇らせることができる?
……そこで私は思い至った。少女のことを救うことはできないのか、と。
私の見た凶兆からは時間が経っている――少女の死体があるかどうかも定かではない。
それでも――可能性はある。
バラガミ
「悩んでいる場合では、ない……私は、祈ることだけしかできない……」
……そう、悩むべきではない。
どうせ考えても、その答えに直ぐにはたどり着くことはない。ならば、私に出来ることをすることが最善策だろう。
奇跡によって少女が生き返る――その可能性がわずかにでもあるのなら。
私は、祈ってみせる。
だから――。
私は、【鏡】を抱いて、奇跡を願って祈りを捧げた。
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- 988 名前:D-13 運命の輪:2020/12/31(木) 09:29:46.344 ID:6u4F60iE0
- 私の声が、私に呼びかけていた――。
バラガミ
「私の【力】で、ふたりを救って――」
その声は、とても凛々しく、神々しく――私は、バラガミという女神と言われるに相応しいものだと……なぜだか他人事のように認識した。
そう……。
運命の時に祈りを捧げることが――。
神託の通りに、私は祈ろう――。
バラガミ
「バラガミとして、私は祈りを捧げる――
ふたりを救う――それがすべてを救うことに繋がるから――」
すらすらと口をついた言葉は、私のこの意識とは違う存在に言わされたかのように発せられた。
同時に――私の目の前の景色はぐらりと歪んだ。
波に呑まれるような感覚。何かに引きずり込まれるような感覚。
……この感覚を、私は味わったことがあるような気がする。
だが、私はそれに抗ってみせる。私は祈りを捧げる。
その感覚に全身がつつまれても、意思を変えない。諦めない。奇跡のために……。
そして………………。
- 989 名前:SNO:2020/12/31(木) 09:30:00.136 ID:6u4F60iE0
- 運命?
- 990 名前:Route:D-14:2020/12/31(木) 12:14:16.615 ID:6u4F60iE0
- Route:D
Chapter14
- 991 名前:Route:D-14 太陽:2020/12/31(木) 12:17:56.302 ID:6u4F60iE0
- ――――――。
再び、景色が元に戻った。
【鏡】の向こうでは――私が見た――神父姿の人物と白髪の人物が死闘を繰り広げていた。
バラガミ
「……これは、どういうこと?」
再びの奇跡に、私は少し狼狽したが――すぐに、此処が【運命の時】なのだと認識することができた。
同時に――二人の戦いを見つめる私の中に、今までの記憶が津波のように流れ込んだ。
少女の死。DBに蹂躙される人々。天狗のヤミ。ユリガミへ祈りを捧げる人々。集計班と¢の死と復活……。
そして、運命の時、神父姿の人物と白髪の人物が相打ちになったことに――。
ああ、そうか……と私は思う。
様々な情報や情景が、逆回しとなって私の中を巡った。
同時に、私は納得。
バラガミ
「そうか――私は、時を遡っていた――」
女神の【力】――、私は時を遡ることができる【力】を持っていた……。
私はその【力】を操り、何度も何度も、繰り返し繰り返し、無限に時を戻っていた。
どうして?それは――
バラガミ
「絶望の景色を――紅い月の凶兆を防ぐため――」
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- 992 名前:Route:D-14 太陽:2020/12/31(木) 12:20:15.356 ID:6u4F60iE0
- しかし、どうすればいい――?
ふと、視線を二人から逸らした。……誰かがそこには居たから。
――そこには、二人の死闘を眺める少女が一人居た。
肩まで伸びた黒い髪。白と赤の巫女装束。腰には白百合の太刀……。
首に掛けられた【勾玉】からは神々しさの一片があった。
――彼女は、息苦しそうな表情を浮かべていた。まるで溺れる者のように……。
しかし……彼女は……あの子は……。
……私は、彼女をとても、よく知っていた。
……どうして……どうして……あなたが、ここに……いるの……?
――――――。
――――――。
――――――。
……それと同時に、私の記憶が徐々に修復されていくのを感じていた。
失われた記憶の断片は、ぽっかりとあいた隙間を埋めるように……やがてそれは完全に取り戻されていった。
そうだ……私がどうして時を戻していたのか。
――この瞬間の運命を切り替えるために……。
だが、幾度もなく失敗し、二人は相打ちとなってしまった。
二人の死を呼び水として、あの絶望の結末に繋がるということも、幾度もなく理解――いいや、体験していた。
何度も世界はに凶兆に飲み込まれていったのだ……。私はどうすればいい――?
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- 993 名前:Route:D-14 太陽:2020/12/31(木) 12:21:10.683 ID:6u4F60iE0
- バラガミ
「貴女にはやるべきことがある」
バラガミ
「それは――この戦いを止めること」
バラガミ
「この戦いを止めることが――貴女が真に為すべきこと」
愛しい我が子に――瞿麦に――私はゆっくりと語り掛けた。
その光景は……私にとってとても馴染み深いものだった。
瞿麦
「……」
瞿麦は、少し考える素振りを見せて……納得するように頷いた。
私の声は、届いたらしい。
バラガミ・瞿麦
「戦いを、やめ、て――!」
わたしは、まるで、子供を叱るように強い口調で、言い聞かせるように――【鏡】の向こうの瞿麦に向けて、語り掛けた。
――その言葉もまた、瞿麦に届き、私と同じ言葉を、息を切らしながら続ける。
神父姿の人物
「――!?」
白髪の人物
「…………!」
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- 994 名前:Route:D-14 太陽:2020/12/31(木) 12:22:56.884 ID:6u4F60iE0
- ふたりは……困惑したように瞿麦を見ていた。
同時に、その視線は私にも重なった。二人は私のことを認識はしていないだろうが、
私は、止まるわけにはいかない……。すぐに、瞿麦を通じて語り掛けた。
バラガミ・瞿麦
「あなたたちが争って得られることはない――
今なすべきことではないことは、二人とも分かっているでしょう?」
――わたしは諭すような声で、そして瞿麦も同じ口調で……一言一句同じ言葉を語った。
神父姿の人物
「……きみは誰だ
太刀を腰にぶらさげたきみも……私にとっての敵なのか?」
神父姿の人物は、真剣なまなざしで瞿麦に剣の刃を突きつけた。
その顔にも既視感はあった。――でも、今、それに思いを馳せる必要はない。
バラガミ・瞿麦
「違う――わたしが為すべきことは――」
瞿麦の表情は見えない。しかし――身体は震えていなかった。恐怖の感情も読み取れない。
恐らく……瞿麦と私の目的は同じなのだろう。私はまたも言葉を紡ぎ――それを同じく、瞿麦が語った……。
バラガミ・瞿麦
「絶望の未来を回避する行動――」
神父姿の人物への答え……それは初めから言うと決めていたかのようにすらすらと口をついて出た。
……大丈夫。私の言葉は、そして瞿麦の想いは……きっと届いている。
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 995 名前:Route:D-14 太陽:2020/12/31(木) 12:23:35.691 ID:6u4F60iE0
- 白髪の人物
「彼女は――少なくとも、私や君の敵ではない勢力だ」
黒砂糖
「……そのようだ」
黒砂糖
「……私は、この少女に手を出せとは言われていない
一旦は退かせてもらおう……」
黒砂糖は、不服そうにつぶやきながら、その場を立ち去って行った。
とにかく、私は――この争いを、止めることができたのだ……。
運命の時で――為すべきことを、成し遂げたのだ……。
いつしか、【鏡】の中の光景は薄れ始めた。
おそらく――もう、私が何かをする必要はない……そういうことなのだろう。
バラガミ
「――それでいいの
あとは貴女がすべてを……思い出すことができれば……」
だから、私は最後に瞿麦に言葉を残した。
……彼女もまた、私の【力】に巻き込まれていたからだ。
- 996 名前:Route:D-14 太陽:2020/12/31(木) 12:26:03.273 ID:6u4F60iE0
- 私が記憶を失っていた理由――それは単純明快だ。
何度も時を戻しているうちに、積み重なる記憶が心の負担になる。
それを防ぐために――運命の時までの時の環だけを記憶するようにしていたのだ。
――それは、瞿麦にも同じようなことが言えるだろう。彼女も私と同じ境遇にあった……そんな気がする。
だからこそ……私はその言葉を瞿麦に残したのだ。
――そして今、凶兆が起きる未来はなくなったのだ。
私の目的は果たした。だから、記憶も戻り、色々な事実も認識できるようになった。
時を戻す【力】で、黒砂糖と白髪の人物の命を救ったのだ。
……いや、終わってはいない。
まだ、やるべきことがある。それは、凶兆の時に死んだあの子を……澄鴒を救わなければならない。
澄鴒は【会議所】で目覚める時を待っているはずだ。
今までは――白髪の人物と黒砂糖のふたりを死なせたことによって運命が狂い、凶兆の未来に繋がることになっていた。
その未来の過程では、見知らぬ人から、血を分けた息子まで……死の運命を背負っていた。
- 997 名前:Route:D-14 太陽:2020/12/31(木) 12:27:31.401 ID:6u4F60iE0
- だが――今回は違う。
ふたりは死ななかった。それを起点に、あの絶望を回避できる――私はそう確信していた。
だから、行こう。
此処で祈る役目は終わり、私は向かわなくてはいけない――。
澄鴒を救うために、【会議所】へ――。
私は、この空間から出なければならない。
私は、いつまでもここにいてはいけない。
――なぜなら、私は……海神の世界で眠り続けるわけにはいけないのだから……。
深淵の中に広がる世界に私は居た。暗くて深い場所に私はいた。
しかし私は目覚めなければいけない。戻らなければいけない。空の広がる大地へと……。
私に流れる血に宿る女神が治める世界へと。
眠り姫たる澄鴒を起こすために――私の血を引く、愛しき我が子のために……。
- 998 名前:Route:D Ending:2020/12/31(木) 12:28:33.057 ID:6u4F60iE0
- ――Revealed the sun card.
But This story hasn't finished yet.
Haven't reached the truth.
Go ahead the another Route.
―――Route:D Fin.
- 999 名前:???:2020/12/31(木) 12:35:34.353 ID:6u4F60iE0
- ――すべての鍵は、ひとつの点に辿り着いた。
陰陽の重なり合う場所に……。
彼女たちを遮るを苦難を越え、各々のたどり着くべき場所を見つけた。
――――
乙 女 は 今 目 覚 め な け れ ば な ら な い 。
世 界 の あ る べ き 場 所 へ と 。
――――To be continued Route:E.
- 1000 名前:SNO:2020/12/31(木) 12:38:31.826 ID:6u4F60iE0
- 次スレに続く。
http://kinohinan4.s601.xrea.com/test/read.cgi/prayforkinotake/1609385851/
- 1001 名前:1001:Over 1000 Thread
- ∧
ノ ヽ
/ ヽ
, ‐' ー- 、 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ ノ ヽ ヽ <うーん…難しいですね…
/ ─ ─ | \__________
_/ ω \_
(_/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\__γ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
\_________/ |@獅ソは嫌だ…dat落ちは嫌だ… |
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_ト、 |:::::::::●::::::::::::,::●::::::::| |:::::≦ =@ノ ノ ̄丁フ  ̄フ | / ヽ○  ̄丁フ  ̄丁フ  ̄丁フ  ̄フヽヽ
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ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ 今後も用法用量を守って節度ある正しいスレ立てを行いましょう。
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